説明

触媒充填方法及び触媒充填装置

【課題】内部に触媒を充填する触媒充填容器において、当該触媒充填容器に略均一な密度で触媒を充填することができる触媒充填方法、及び触媒充填装置を提供する。
【解決手段】対向する平面1を有する中空扁平状の触媒充填容器2に、粒状の触媒3を充填する触媒充填装置であって、平面1に設けられた触媒供給口4から触媒充填容器2の内部に触媒3を供給する触媒供給手段5と、触媒供給口4とは別に設けられた気体吸引口26a、26bから触媒充填容器2の内部の気体を、平面1に沿う方向Xに流動させて吸引する吸引手段7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向する平面を有する中空扁平状の触媒充填容器に、粒状の触媒を充填する触媒充填方法、及び触媒充填装置に関する。より詳しくは、本発明は、燃料電池システムにおいて、原料ガスを改質するための改質装置等に使用される触媒充填容器に触媒を充填するための触媒充填方法、及びその方法の実施に用いる触媒充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、水蒸気を用いて原料ガスを水素に改質する改質器、改質器の出口ガス(水素)中の一酸化炭素を二酸化炭素に編成するCO変成器、CO変成器の出口ガス(二酸化炭素)中に存在する一酸化炭素を高度に除去するCO除去器等を備えており、改質器、CO変成器、及びCO除去器の夫々は、その反応を進行させるため、触媒を触媒充填容器に充填して構成されている。尚、上述の複数の触媒充填容器にて、燃料電池システムを構成し、一連の反応を行う場合、反応効率を高める目的で、一の触媒充填容器にて生成する熱を、他の触媒充填容器へ効率よく伝達する必要がある。そこで、燃料電池システムでは、触媒充填容器間の熱伝達効率を高めるため、触媒充填容器の形状が、対向する平面を有する中空扁平形状とされ、触媒充填容器同士がその平面を対向させて配設される。
【0003】
当該触媒充填容器に触媒を充填する触媒充填方法及び触媒充填装置としては、触媒充填容器の平面に触媒供給口を設け、当該触媒供給口から触媒を供給しながら、触媒充填容器を触媒供給口を中心として回転装置により回転させ、当該回転により生じる遠心力により、触媒を触媒充填容器の外縁へ向けて移動させて充填させるものが知られている(特許文献1を参照)。
【0004】
また、上述の対向する平面を有する中空扁平状の触媒充填容器に触媒を充填するものではないが、所定の触媒充填容器に対し、対向する一方の平面に触媒供給口を設けると共に、他方の平面に気体吸引口を設け、当該気体吸引口に連接された吸引ポンプにより触媒充填容器の内部の気体を吸引することで、触媒供給口から気体吸引口へ向けて、気体を流動させて、当該気体の流動により、触媒充填容器へ触媒を充填する触媒充填方法、及び触媒充填装置が知られている(特許文献2を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2007−261932号公報
【特許文献2】特開2004−231496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に開示の技術では、触媒充填容器に触媒を充填する際、触媒充填容器を触媒供給口を中心として回転させ、当該回転による遠心力により触媒を充填しているため、触媒供給口の近傍では、回転中心に近いため触媒にかかる遠心力が小さく、当該触媒供給口から離れた触媒充填容器の回転の径方向外側である触媒充填容器の外縁では、触媒にかかる遠心力が大きい。このため、触媒は、回転中心近傍の触媒供給口では、小さい遠心力にて疎に充填され、回転の径方向外側の触媒充填容器の外縁では、大きい遠心力にて密に充填される。このため、触媒は、触媒充填容器へ不均一な密度で充填される問題があった。
また、特許文献1に開示の技術では、触媒の触媒充填容器への充填時に発生する触媒粉が、触媒充填容器に貯まることとなる。このため、充填後、別途触媒粉を除去する工程を実行する必要があった。
【0007】
一方、上述した特許文献2に開示の技術は、特に、対向する平面を有する中空扁平形状の触媒充填容器に触媒を充填することを意識したものではなかった。例えば、対向する平面の一方に設けられた触媒供給口から供給された触媒は、対向する平面の他方に設けられた気体吸引口へ向けて、気体の流動に伴って移動するが、当該気体の流動と触媒充填容器への触媒の充填密度の関係について、開示及び示唆するものではなかった。
また、特許文献2に開示の技術では、対向する平面の一方側から他方側に向けて気体が流動するため、例えば、平面に沿う方向の端部等においては、気体の流動が少なく、触媒粉が貯まる虞があった。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、内部に触媒を充填する触媒充填容器において、当該触媒充填容器に略均一な密度で触媒を充填することができる触媒充填方法、及び触媒充填装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の触媒充填方法は、対向する平面を有する中空扁平状の触媒充填容器に、粒状の触媒を充填する触媒充填方法であって、その特徴構成は、
前記平面に設けられた触媒供給口から前記触媒充填容器の内部に前記触媒を供給しながら、
前記触媒供給口とは別に設けられた気体吸引口から前記触媒充填容器の内部の気体を、前記平面に沿う方向で流動させて吸引し前記触媒を前記触媒充填容器に充填する点にある。
【0010】
上記触媒充填方法に対応する触媒充填装置は、対向する平面を有する中空扁平状の触媒充填容器に、粒状の触媒を充填する触媒充填装置であって、その特徴構成は、
前記平面に設けられた触媒供給口から前記触媒充填容器の内部に触媒を供給する触媒供給手段と、
前記触媒供給口とは別に設けられた気体吸引口から前記触媒充填容器の内部の前記気体を、前記平面に沿う方向に流動させて吸引する吸引手段を備える点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、触媒充填容器の内部の気体は、吸引手段にて所定の吸引力で吸引される。これにより、気体は、触媒充填容器の平面に沿う方向に流動して、気体吸引口を介して外部へ導かれる。触媒は、当該気体の平面に沿う方向での気体の流動による作用により押圧されて、触媒充填容器の平面に沿って充填される。このとき、例えば、気体が、吸引手段により所定の吸引力で吸引されていれば、触媒は、触媒充填容器の平面に沿う方向において、略均一な密度で充填できる。
また、触媒の触媒充填容器への充填により生成される触媒粉は、吸引手段による吸引により触媒充填容器の平面に沿う方向に流動する気体によって、触媒充填容器の内部から除去することができる。これにより、触媒充填容器に触媒を充填しながらも、触媒充填容器から触媒粉を適切に除去できる。
以上から、本発明により、内部に触媒を充填する触媒充填容器において、当該触媒充填容器に略均一な密度で触媒を充填しながらも、触媒充填容器内から触媒粉を除去できる触媒充填方法を実現できる。
【0012】
本発明の触媒充填方法の更なる特徴構成は、
前記触媒充填容器の前記平面の中央部位に設けられた前記触媒供給口から前記触媒を前記触媒充填容器へ供給しながら、
前記触媒充填容器の前記平面に沿う方向の外縁にある外縁部位のうち、前記触媒供給口を挟んで対向する対向部位の夫々に設けられた前記気体吸引口から前記触媒充填容器の内部の前記気体を吸引する点にある。
【0013】
上記触媒充填方法に対応する触媒充填装置の特徴構成は、前記触媒供給手段は、前記平面の中央部位に設けられた前記触媒供給口から前記触媒を前記触媒充填容器へ供給するものであり、
前記吸引手段は、前記触媒充填容器の前記平面に沿う方向の外縁にある外縁部位のうち、前記触媒供給口を挟んで対向する対向部位に、夫々設けられた気体吸引口から前記気体を吸引する点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、触媒供給口は、触媒充填容器の中央部位に設けられ、気体吸引口は、触媒充填容器の平面に沿う方向の外縁にある外縁部位に設けられる。これにより、触媒充填容器の内部を流動する気体は、触媒充填容器の平面に沿う方向で、触媒充填容器の中央から外縁に向けて流動する。これにより、触媒供給口から供給された触媒は、触媒充填容器の中央から外縁へ向けて、当該気体の平面に沿う方向での気体の流動による作用により押圧されて、触媒充填容器の平面に沿って充填される。この結果、触媒充填容器の全域に亘って、略均一な密度で触媒を充填することができる。
【0015】
本発明の触媒充填方法の更なる特徴構成は、
前記触媒充填容器内の前記気体を吸引しながら、前記触媒充填容器の内部に前記触媒を供給して充填する充填時に、前記触媒充填容器に振動を加える点にある。
【0016】
上記触媒充填方法に対応する触媒充填装置の特徴構成は、前記触媒充填容器に振動を加える加振手段を備えている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、触媒は触媒充填容器内に気体を吸引しながら触媒を供給して充填する充填時に、触媒充填容器に振動が加えられるので、その振動によって触媒が分散され、触媒間に空隙が形成され難くなり、触媒の密度を高めながら充填できる。
【0018】
本発明の触媒充填方法の更なる特徴構成は、
単一の吸引手段により吸引力を発生させ、複数の前記触媒充填容器の内部の前記気体を、同時に吸引すると共に、個々の前記触媒充填容器に前記触媒を供給して充填する点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、個々の触媒充填容器に触媒を供給しているときに、単一の吸引手段により、複数の触媒充填容器の内部の気体を、同時に吸引できる。即ち、触媒充填容器を大量生産する場合であっても、本願の触媒充填方法は、良好に機能する。
【0020】
本発明の触媒充填方法の更なる特徴構成は、
前記触媒充填容器から前記気体を吸引する吸引力を、吸引開始時から吸引終了時までの間において徐々に高める点にある。
【0021】
一般的に、触媒充填容器に触媒が充填されるに伴って、触媒充填容器の内部を流動する気体の圧力損失が徐々に大きくなる。この結果、触媒充填容器の内部に充填される触媒は、吸引開始時から吸引終了時まで、均一な密度で充填されなくなる虞がある。
上記特徴構成によれば、触媒充填容器から気体を吸引するときの吸引力を、吸引開始時から吸引終了時までの間において徐々に高めるので、触媒の充填に伴って増大する圧力損失を補って、吸引開始時から吸引終了時まで、触媒を略均一な密度で充填することができる。
【0022】
本発明の触媒充填装置の更なる特徴構成は、
前記吸引手段は、
前記気体の流れ方向で前記気体吸引口の下流側において、前記触媒の充填により生成される触媒粉を内部に貯留する触媒粉貯留部を有する点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、気体の流れ方向で気体吸引口の下流側において、触媒の充填により生成される触媒粉を内部に貯留する触媒粉貯留部が設けられているので、気体の流れの中から触媒粉を分離して触媒粉貯留部へ貯留することができる。これにより、触媒粉が外部へ漏出することのないクリーンな触媒充填装置を実現できる。
【0024】
本発明の触媒充填装置の更なる特徴構成は、
前記気体吸引口の口径は、前記触媒の粒径よりも小さい点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、気体吸引口の口径は、触媒の粒径よりも小さく形成されているので、特に触媒が外部へ漏出することを防止するフィルタ等を配置しなくても、触媒が、気体吸引口へ流入して、外部へ漏出することを防止できる。
【0026】
本発明の触媒充填装置の更なる特徴構成は、
前記気体吸引口は、前記触媒充填容器が触媒反応容器として働く場合、前記触媒充填容器の内部を流通する原料流体が流入する原料流体流入口、又は前記原料流体が流出する原料流体流出口となる点にある。
【0027】
上記特徴構成によれば、触媒充填容器が触媒反応容器として働く場合、触媒充填容器の内部を流通する原料流体が流入する原料流体流入口、又は原料流体が流出する原料流体流出口を気体吸引口として用いることができる。これにより、別途、気体吸引口を設ける必要がなく、製造コストを低減できる。
【0028】
本発明の触媒充填装置の更なる特徴構成は、
前記触媒供給口と前記気体吸引口との間に、前記触媒の粒径よりも小さい口径の穿孔を複数有する仕切板が介在されている点にある。
【0029】
上記特徴構成によれば、触媒充填容器に触媒を供給しているときに、仕切板は、触媒が気体吸引口へ流入することを防止するので、触媒が気体吸引口から外部へ漏出することを適切に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の触媒充填装置の斜視図
【図2】本発明の触媒供給口の封止工程を示す図
【図3】本発明の吸引ポンプ及び触媒粉貯留部と触媒充填容器との関係を示す図
【図4】本発明の触媒充填方法の工程を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、まず本発明の触媒充填装置を図1〜3に基づいて説明し、その後、本発明の触媒充填方法を、図4を用いて説明する。
【0032】
本発明の触媒充填装置は、図1に示す様に、対向する平面1を有する中空扁平状の触媒充填容器2に、粒状の触媒3を充填する触媒充填装置であって、平面1に設けられた触媒供給口4から触媒充填容器2の内部に触媒3を供給する触媒供給手段5と、触媒供給口4とは別に設けられた気体吸引口26a、26bから触媒充填容器2の内部の気体(空気等)を、平面1に沿う方向(図1でX方向)に流動させて吸引する吸引手段7を備えている。
触媒3は、例えば、白金触媒、パラジウム触媒、ルテニウム触媒等の触媒であって、粒状のものが好適に用いられる。当該触媒3の粒径は、例えば、0.5mm以上9.0mm以下のものが用いられる。
【0033】
〔触媒充填容器〕
本発明の触媒充填装置の説明に先立って、触媒3が充填される触媒充填容器2について、図1に基づいて説明する。
触媒充填容器2は、底部に平面1を有し当該平面1の対向する側が開放した開放部10を有する皿状容器形成部8、9を、互いの開放部10を対向させるように接続することで形成される。当該一対の皿状容器形成部8、9は、開放部10の外縁に沿う鍔部11、12を有し、当該鍔部11、12を溶接等により接続することで、対向する平面1を有する中空扁平形状の触媒充填容器2として機能する。尚、一対の皿状容器形成部8、9の間には、外縁の形状が鍔部11、12に沿う形状の仕切板13が設けられている。当該仕切板13が、触媒充填容器2の内部の空間を、平面1に沿う方向(図1でX方向)にて、区画している。当該仕切板13は、触媒充填容器2の内部の一方の触媒充填空間14から、他方の触媒充填空間15へ、良好に熱が伝わる構造となっている。
尚、以下の説明では、皿状容器形成部8、及び当該皿状容器形成部8により形成される触媒充填空間14に、触媒3を充填する構成、及び方法について説明するが、通常、触媒充填容器2は、皿状容器形成部9、及び当該皿状容器形成部9により形成される触媒充填空間15にも触媒3が充填される。
【0034】
触媒充填容器2は、触媒反応容器として働くときに、内部に原料流体を導く原料流体流入口16と、反応後の原料流体を外部へ導く原料流体流出口17とを、各触媒充填空間14に対して一対備えている。尚、図1では、説明の都合上、皿状容器形成部8に対して、原料流体流入口16と原料流体流出口17とを備えたものを例示している。通常、皿状容器形成部9に対しても、原料流体流入口16及び原料流体流出口17が備えられている。
また、当該原料流体流入口16及び原料流体流出口17の触媒充填空間14側には、通気性仕切板35が設けられている。当該通気性仕切板35は、原料流体流入口16から触媒充填容器2内へ流入する原料流体を整流して、触媒充填容器2に充填された触媒3へ導くと共に、触媒充填容器2の内部の触媒3を適切な位置に保持する目的で設けられている。
本発明では、当該通気性仕切板35として、触媒3の粒径よりも小さい穿孔が多数設けられているものを用いる。これにより、それを介した触媒充填空間14の内部に充填された触媒3の原料流体流入口16及び原料流体流出口17への移動を禁止し、且つ、気体の流通は許容する。当該通気性仕切板35により、触媒充填空間14に充填された触媒3は、原料流体流入口16及び原料流体流出口17から外部へ漏出することが防止される。
【0035】
〔触媒供給手段〕
触媒供給手段5は、図示しない触媒導入部から触媒3を受ける漏斗状受部19と、当該漏斗状受部19の出口側に接続され、触媒3を漏斗状受部19から触媒充填容器2へ導く触媒供給管20とから構成されている。
触媒充填容器2の平面1の中央部位には、触媒供給口4が設けられている。触媒供給口4は、平面1に対して、触媒充填容器2の内側へ凹欠した環状凹部22と、当該環状凹部22から触媒充填容器2の外側へ突出した円筒状の触媒供給ノズル23とから構成されている。
上記触媒供給管20は、当該触媒供給ノズル23に外嵌している状態で、その外側から締結バンド24により締結されることにより、触媒供給ノズル23へ接続される。以上から、触媒供給手段5は、漏斗状受部19が触媒導入部(図示せず)から触媒3を受け入れると、触媒供給管20及び触媒供給口4を介して、触媒3を触媒充填容器2の内部へ導くように機能する。
尚、触媒充填容器2の平面1の中央部位は、触媒充填容器2の対向する外縁からの距離が略等しい部位である。
【0036】
触媒供給口4は、触媒充填容器2に触媒3を充填した後、図2に示す様に封止される。まず、図2(a)に示すように、円筒状の触媒供給ノズル23から、触媒供給管20が外される。この後、触媒供給ノズル23は、触媒充填容器2の平面1と環状凹部22の底面32との間の水平位置(図2(b)でYで示す位置)にて切断される。その後、図2(c)に示す様に、当該切断にて形成された開口部33は、封止蓋34により封止される。封止蓋34の外径は、開口部33の内径と略同一であり、封止蓋34の径方向で外側の端には、環状の淵部36が開口部33の内縁に沿う方向(図2でYと垂直な方向)へ、延びるように設けられている。最後に、封止蓋34の環状の淵部36と、開口部33とが溶接される。尚、このとき、環状凹部22が形成されていることで、封止蓋34と開口部33との溶接時に、溶接箇所の近傍に触媒3が位置しないことになる。これにより、触媒3が、溶接による熱によって損傷することを防止できる。
【0037】
〔吸引手段〕
図1に戻り、吸引手段7は、触媒供給口4に設けられた気体吸引口26a、26bに接続された気体吸引管29と、当該気体吸引管29を介して触媒充填容器2の内部の気体を吸引する吸引ポンプ27と、気体の流れ方向で気体吸引口26a、26bの下流側で吸引ポンプ27の上流側にて、触媒粉を捕捉して貯留する触媒粉貯留部28とから構成されている。尚、上記気体吸引管29は、気体吸引口26a、26bを外嵌して、その外側を締結バンド30により締結することにより、気体吸引口26a、26bに接続されている。
【0038】
上記気体吸引口26a、26bは、触媒充填容器2の平面1に沿う方向にある外縁にある外縁部位31のうち、触媒供給口4を挟んで対向する対向部位に、一対設けられることが好ましい。このように気体吸引口26a、26bを設ける場合、触媒充填容器2の内部を流動する気体は、触媒充填容器2の平面1に沿う方向(図1でX方向)で、平面1の中央部位に設けられた触媒供給口4から、触媒充填容器2の平面1に沿う方向の外側にある外縁へ向けて流動する。特に、一対の気体吸引口26a、26bは、触媒供給口4を挟んで対向する対向部位に設けられているから、気体は、触媒供給口4から対向部位の一方側と他方側とへ、均等に流動する。これにより、触媒3は、気体の流動に伴って、触媒供給口4から外縁へ押圧され移動する。この結果、触媒3は、触媒充填容器2の外縁のうち気体吸引口26a、26bの側から、触媒充填容器2の平面1に沿う方向において、均一な密度で充填されることとなる。
【0039】
尚、気体吸引口26a、26bの口径は、触媒3の粒径よりも小さいことが好ましい。これにより、触媒3が気体吸引口26a、26bに流入して外部へ漏出することを適切に防止できる。尚、上述の如く、触媒充填容器2に、触媒供給口4と気体吸引口26a、26bとの間にて、触媒供給口4側から気体吸引口26a、26b側への触媒3の流動を禁止する通気性仕切板35を設ける場合、触媒3が、気体吸引口26a、26bから外部へ漏出することはないため、気体吸引口26a、26bの口径は、触媒3の粒径に制限されることなく、自由に設定することができる。
また、当該気体吸引口26a、26bは、触媒充填容器2が触媒反応容器として働く場合、触媒充填容器2の内部を流通する原料流体が流入する原料流体流入口16、及び、又は原料流体が流出する原料流体流出口17を気体吸引口26a、26bとして用いることが好ましい。これにより、触媒充填容器2の製造工程を短縮できると共に、製造コストを抑制できる。
【0040】
また、気体吸引口26a、26bは、触媒充填容器2の平面1に沿う方向(図1のX方向)で流動している気体が、その流動方向に沿う方向(図1のX方向)で触媒充填容器2から流出するように、触媒充填容器2の平面1に沿う方向(図1のX方向)の外縁にある外縁部位31のうち、平面1と略垂直に交わる側壁部38に設けられることが好ましい。
【0041】
触媒粉貯留部28は、上述した様に、気体の流れ方向で気体吸引口26a、26bの下流側で吸引ポンプ27の上流側に設けられ、触媒3の触媒充填容器2への充填にて形成される触媒粉を捕捉して貯留するように構成されている。これにより、触媒粉貯留部28の下流側の気体には、触媒粉が含まれることはなくなり、外部へ触媒粉が漏出することを防止できる。
【0042】
ところで、単一の上記吸引手段7は、図3に示す様に、複数の触媒充填容器2と連通接続することができ、複数の触媒充填容器2の内部の気体を同時に吸引することができる。具体的には、触媒充填容器2の気体吸引口26a、26bに接続されている気体吸引管29が、すべて、触媒粉貯留部28に連通接続され、当該触媒粉貯留部28の下流側にて吸引ポンプ27が、触媒充填容器2の気体を吸引するように構成することができる。このとき、吸引ポンプ27の吸引力は、吸引する触媒充填容器2の数が増加するに連れて大きくすることが好ましい。
【0043】
また、上記吸引ポンプ27の吸引力は、触媒充填開始時から触媒充填終了時までの間において、徐々に増大するように設定されていることが好ましい。これにより、触媒充填容器2に触媒3が充填されるのに伴う圧力損失を補うことができる。
【0044】
〔加振手段〕
本発明の触媒充填装置は、触媒充填容器2に振動を加えるバイブレーター37が、触媒充填容器2を載置可能に設けられている。これにより、触媒3が、触媒充填容器2に供給されながら、吸引手段7により触媒容器2の気体が吸引されて触媒3が充填されているときに、触媒充填容器2の内部の触媒3を、振動により分散させることができる。これにより、触媒3の粒子同士の間に、隙間が生じることを好適に防止することができる。
【0045】
〔触媒充填方法〕
次に、本発明の触媒充填方法について、図4のフロー図に基づいて説明する。
(♯01)作業者は、触媒充填容器2に予め設けられた触媒供給口4の触媒供給ノズル23に、触媒供給管20を外嵌し、締結バンド24等にて締結して、連通接続する。
(♯02)次に、作業者は、触媒充填容器2の気体吸引口26a、26bに、気体吸引管29を外嵌し、締結バンド30等にて締結して、連通接続する。このとき、気体吸引口26a、26bの何れか一方を封止し、他方からのみ気体を吸引することもできる。
(♯03)そして、触媒充填容器2の内部へ触媒供給管20を介して、触媒3の供給を開始する。触媒3は、この時点において、触媒供給口4付近にて滞積するのみであり、触媒充填容器2の全体へ移動することはない。
(♯04)作業者は、触媒3の供給を続けながら、吸引ポンプ27を作動させる。これにより、触媒充填容器2の内部の気体は、気体吸引口26a、26bより吸引されることとなり、触媒充填容器2の平面1に沿う方向(図1でX方向)において、気体が流動する。触媒3は、当該気体の流動により、触媒充填容器2の平面1に沿う方向において、押圧されて移動する。そして、触媒3は、触媒充填容器2の平面1に沿う方向で、中央から外縁へ向けて充填される。
このとき、吸引ポンプ2が気体を吸引する力は、触媒充填開始時から触媒充填終了時までの間に、徐々に強くするように設定することが好ましい。これにより、触媒充填容器2に触媒3が充填されていくことに伴い増大する気体の圧力損失を補うことができる。尚、吸引ポンプ27は、触媒3の供給が開始される前から作動していてもよい。
(♯05)次に、作業者は、触媒充填容器2に振動を加えるバイブレーター37を作動させる。これにより、触媒充填容器2の内部の触媒3が振動によって分散され、充填された触媒3同士の間に隙間が形成されることを抑制できる。尚、バイブレーター37は、触媒3の充填が開始される前に作動されていてもよい。
(♯06)作業者は、触媒3の供給量や、触媒充填容器2の重量、触媒3の供給時間、触媒供給管20の内部を目視する事等により、触媒3の充填が完了したか否かを判断する。
(♯07)触媒3の充填が完了している場合、作業者は、触媒3の供給を停止し、吸引ポンプ27を停止する。
(♯08)次に、触媒供給管20を触媒供給口4から取り外すと共に、気体吸引管29を気体吸引口26a、26bから取り外す。
(♯09)作業者は、切断工具により、触媒供給ノズル23を切断する。当該切断位置は、触媒充填容器2の平面1に沿う方向(図1のXに沿う方向)において、平面1より触媒充填容器2の内側であることが好ましい。
(♯10)触媒供給口4の開口33に封止蓋34を嵌め込み、溶接により固定する。
【0046】
〔別実施形態〕
(A)上記実施形態において、気体吸引口26a、26bは、触媒充填容器2の外縁に2つ設けられるものとしたが、別に単一であってもよい。また、2つより多く設けられていてもよく、例えば、触媒充填容器2の平面1の2対の対向する外縁の夫々に、1対の気体吸引口26a、26bを設けるように構成してもよい。
【0047】
(B)上記実施形態において、触媒供給口4は、触媒充填容器2の平面1の中央部位に設けられているとしたが、別に、触媒充填容器2の平面1であれば、どこに設けられていてもよい。尚、触媒3を、触媒充填容器2の全域に亘って適切に行うという観点からは、触媒充填容器2の外縁部位31に対向して設けられた気体吸引口26a、26bを結ぶ直線に沿う位置に設けることが好ましい。
【0048】
(C)触媒供給口4は、触媒充填容器2の対向する平面1の双方に設けることができ、双方の触媒供給口4から触媒充填容器2の触媒充填空間14、15の両方に、同時に触媒3を充填することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の触媒充填方法及びは、内部に触媒を充填する触媒充填容器において、当該触媒充填容器に略均一な密度で触媒を充填することができる触媒充填方法、及び触媒充填装置として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 :平面
2 :触媒充填容器
3 :触媒
4 :触媒供給口
5 :触媒供給手段
7 :吸引手段
13 :仕切板
16 :原料流体流入口
17 :原料流体流出口
26 :気体吸引口
27 :吸引ポンプ
28 :触媒粉貯留部
31 :外縁部位
35 :通気性仕切板
37 :バイブレーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する平面を有する中空扁平状の触媒充填容器に、粒状の触媒を充填する触媒充填方法であって、
前記平面に設けられた触媒供給口から前記触媒充填容器の内部に前記触媒を供給しながら、
前記触媒供給口とは別に設けられた気体吸引口から前記触媒充填容器の内部の気体を、前記平面に沿う方向で流動させて吸引し前記触媒を前記触媒充填容器に充填する触媒充填方法。
【請求項2】
前記触媒充填容器の前記平面の中央部位に設けられた前記触媒供給口から前記触媒を前記触媒充填容器へ供給しながら、
前記触媒充填容器の前記平面に沿う方向の外縁にある外縁部位のうち、前記触媒供給口を挟んで対向する対向部位の夫々に設けられた前記気体吸引口から前記触媒充填容器の内部の前記気体を吸引する請求項1に記載の触媒充填方法。
【請求項3】
前記触媒充填容器内の前記気体を吸引しながら、前記触媒充填容器の内部に前記触媒を供給して充填する充填時に、前記触媒充填容器に振動を加える請求項1又は2に記載の触媒充填方法。
【請求項4】
単一の吸引手段により吸引力を発生させ、複数の前記触媒充填容器の内部の前記気体を、同時に吸引すると共に、個々の前記触媒充填容器に前記触媒を供給して充填する請求項1乃至3の何れか一項に記載の触媒充填方法。
【請求項5】
前記触媒充填容器から前記気体を吸引する吸引力を、吸引開始時から吸引終了時までの間において徐々に高める請求項1乃至4の何れか一項に記載の触媒充填方法。
【請求項6】
対向する平面を有する中空扁平状の触媒充填容器に、粒状の触媒を充填する触媒充填装置であって、
前記平面に設けられた触媒供給口から前記触媒充填容器の内部に触媒を供給する触媒供給手段と、
前記触媒供給口とは別に設けられた気体吸引口から前記触媒充填容器の内部の前記気体を、前記平面に沿う方向に流動させて吸引する吸引手段とを備える触媒充填装置。
【請求項7】
前記触媒供給手段は、前記平面の中央部位に設けられた前記触媒供給口から前記触媒を前記触媒充填容器へ供給するものであり、
前記吸引手段は、前記触媒充填容器の前記平面に沿う方向の外縁にある外縁部位のうち、前記触媒供給口を挟んで対向する対向部位に、夫々設けられた気体吸引口から前記気体を吸引する請求項6に記載の触媒充填装置。
【請求項8】
前記触媒充填容器に振動を加える加振手段を備えている請求項6又は7に記載の触媒充填装置。
【請求項9】
前記吸引手段は、
前記気体の流れ方向で前記気体吸引口の下流側において、前記触媒の充填により生成される触媒粉を内部に貯留する触媒粉貯留部を有する請求項6乃至8の何れか一項に記載の触媒充填装置。
【請求項10】
前記気体吸引口の口径は、前記触媒の粒径よりも小さい請求項6乃至9の何れか一項に記載の触媒充填装置。
【請求項11】
前記気体吸引口は、前記触媒充填容器が触媒反応容器として働く場合、前記触媒充填容器の内部を流通する原料流体が流入する原料流体流入口、又は前記原料流体が流出する原料流体流出口となる請求項6乃至10の何れか一項に記載の触媒充填装置。
【請求項12】
前記触媒供給口と前記気体吸引口との間に、前記触媒の粒径よりも小さい口径の穿孔を複数有する仕切板が介在されている請求項6乃至11の何れか一項に記載の触媒充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−92839(P2011−92839A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248049(P2009−248049)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】