説明

触媒及びその製造方法

本発明の触媒は、ニッケル、コバルト、鉄及び銅からなる群から選択される、少なくとも一つの骨格多孔質スポンジ金属を、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される第一の助触媒金属、及び、鉄、ニッケル、コバルト、亜鉛、バナジウム、セリウム、銅、タングステン、モリブデン、チタン、ニオブ、マンガン、銀、カドミウム、プラセオジム及びネオジムからなる群から選択される第二の助触媒金属といっしょに含む、スポンジ金属触媒である。その触媒の製造方法は、助触媒金属のスポンジ金属触媒への含浸または沈殿を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、改良されたスポンジ金属触媒(sponge metal catalyst)とその製造方法に関する。
【0002】
スポンジ金属触媒は、水素化、例えば、芳香族ニトロ化合物またはニトリルの有機アミンへの水素化、における使用において周知である。スポンジ金属触媒は、典型的には、触媒金属(例えば、ニッケルまたはコバルト)とアルミニウムのような浸出可能な金属(leachable metal)との合金を形成し、そして、そのアルミニウムを除去することによって作製される。アルミニウムは、通常、水酸化ナトリウム溶液中でのアルミニウムの反応と溶解によって除去される。そして、得られた触媒金属は、高い表面積と、多くの商業的水素化方法のための高い活性及び選択性を有する、スポンジ構造の形態である。
【0003】
第二またはそれ以上の金属を助触媒(promoter)として取り込むことによって、スポンジ金属触媒の活性及び選択性を修飾することが知られている。例えば、米国特許3997478は、クロム、コバルト、モリブデン及びマンガンからなる群から選択される少なくとも二つの金属を助触媒として含有するスポンジ−ニッケル触媒を開示している。仏国特許2722710は、IVB、VB及びVIB族から選択される少なくとも一つの追加の金属元素でドープされた、ニトリルのアミンへの水素化のための、ラネーニッケル型の触媒を記載している。ラネーニッケルは、追加の元素の溶液中に懸濁される。米国特許5840989は、錯体の形態のドーピング金属をアルカリ攻撃媒体(alkaline attack medium)に取り込むことによるラネーTMニッケル触媒を金属でドープする方法を開示している。ドーピング金属は、好ましくは、チタン、クロム、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、マンガンまたは亜鉛から選択される。それはまた、その触媒を用いたニトリルのアミンへの水素化の方法を記載している。米国特許6309758は、貴金属でドープされた多孔質金属触媒を開示しており、そこでは、その貴金属は0.01〜1.5重量パーセントで存在し、そして、多孔質金属の粒子中に分散して60より大きくない、全体に対する表面の比の分布(a surface to bulk ratio distribution)を与えている。欧州特許0880996は、0.1〜0.6ml/gの総孔体積と0.1〜2.0mm厚の表面殻を有する、抽出可能な合金成分の完全なまたは部分的な浸出によって活性化されている、触媒合金(助触媒として、クロム、鉄、コバルト、タンタル、モリブデン及び/またはチタンを15重量%まで含む)からなる、成形された金属固体床触媒を開示している。
【0004】
本発明者らは、改良されたスポンジ金属触媒とその製造方法を見出した。
【0005】
本発明によって、ニッケル、コバルト、鉄及び銅からなる群から選択される少なくとも一種の骨格多孔質スポンジ金属、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される第一の助触媒金属、及び、鉄、ニッケル、コバルト、亜鉛、バナジウム、セリウム、銅、タングステン、モリブデン、チタン、ニオブ、マンガン、銀、カドミウム、プラセオジム及びネオジムからなる群から選択される第二の助触媒金属、を含む触媒組成物を提供する。本発明者らは、第一と第二の助触媒金属の組み合わせの使用が、驚くべきことに、同様の助触媒の単独の使用より効果的であることを発見した。
【0006】
本発明者らはさらに、以下の工程:
(a)活性骨格金属(active skeletal metal)が、ニッケル、コバルト、鉄及び銅の少なくとも一つから選択される、スポンジ金属触媒を形成すること、
(b)前記スポンジ金属触媒の表面に、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される金属の少なくとも一つの化合物を沈積すること、及び、
(c)前記スポンジ金属触媒の表面に、鉄、ニッケル、コバルト、亜鉛、バナジウム、セリウム、銅、タングステン、モリブデン、チタン、ニオブ、マンガン、銀、カドミウム、プラセオジム及びネオジムからなる群から選択される金属の少なくとも一つの化合物を沈積すること、
を含む触媒組成物の製造方法を提供する。
【0007】
活性骨格金属、によって、浸出可能な金属と合金にされ、そして、その浸出可能な金属が合金材料から溶解、除去され後に残存する、触媒的に活性な金属、を意味する。活性骨格金属は、大きい表面積を有する非常に多孔質なスポンジ構造の形態である。活性骨格金属は、ニッケル、銅、コバルト及び鉄から選択され、そして、一つより多いこれら金属を含んでいてもよい。
【0008】
好ましい第一の助触媒金属は、Pt、Pd及びRhを含む。
【0009】
好ましい第二の助触媒は、V、Fe、Ce及びZnを含む。
【0010】
本発明の触媒は、当技術分野で周知の型であり、そして既知の方法によって形成される、スポンジ金属触媒に基づいている。スポンジ金属触媒を形成するために、最初に、約30〜60(好ましくは、約42〜56)重量パーセントの活性骨格金属(すなわち、ニッケル、コバルト、鉄及び/または銅)と、約70〜40(好ましくは、約58〜44)重量パーセントの浸出可能な金属を含む合金が形成される。その浸出可能な金属は好ましくは、アルミニウムまたはケイ素から選択され、もっとも好ましくはアルミニウムである。チタン、クロム、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、マンガンまたは亜鉛のような他の金属も、骨格金属の重量の約20%まで、好ましくは5〜15%で存在することができる。その合金が粉砕され、直径500μm未満、好ましくは直径75μm未満、より好ましくは50μm未満、の平均粒子径を有する粒子にされる。得られた触媒前駆体を、水酸化ナトリウム水溶液(好ましい)または水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液で合金からアルミニウムを浸出することによって活性化する。15〜35重量パーセント、好ましくは20〜35重量パーセント、一般的には約30%の濃度のアルカリが使用される。アルミニウムはアルカリに溶解して、水に溶解するアルカリ金属アルミン酸塩を形成する。浸出は周囲温度で実施することができるが、好ましくは、高い温度、例えば、約40℃〜110℃、具体的には、合金からのアルミニウム金属の浸出、除去の高い速度を促進する90℃で実施され、高活性形態の骨格金属を与える。浸出は通常、数時間で、例えば約2時間〜約8時間で実施される。しかしながら、必要な時間は選択された条件に依存する。この方法は、当業者には周知である。
【0011】
本発明の触媒が固定床反応器での使用が想定される場合、多孔質の粒子ベースの金属生成物は約0.1〜0.8cmの平均粒子直径(または最大の寸法)を有することができる。上述のように、約5〜35重量パーセント、好ましくは5〜20重量パーセントのアルカリ濃度を有するアルカリ溶液によって、合金は浸出される。浸出は、通常、約30℃〜約90℃、好ましくは約30℃〜50℃の、高い温度で実施される。
【0012】
そのため、得られるスポンジ金属触媒粒子は80〜95%の活性骨格金属を含み、そして、さらに、いくらかの浸出可能な金属(例えば、アルミニウム)を含むことができる。好ましくは、スポンジ金属触媒は1〜30%、より好ましくは1〜15%の浸出可能な金属を含む。骨格金属がニッケルを主成分として含む場合、完成した触媒中の浸出可能な金属含有量としては、通例、約15重量%までである。他の骨格金属が使用される場合、完成した触媒中の浸出可能な金属の含有量は通例、より少なく、例えば、骨格金属が銅またはコバルトの場合、5%未満とすることができる。上述のように、骨格金属の20重量%まで、追加の骨格金属を存在させることができる。
【0013】
アルカリ金属アルミン酸塩を除くために、スポンジ金属触媒粒子は水で洗浄される。洗浄は通例、約9〜約12.5のpHが達成されるまで継続される。不活性(例えばNまたはAr)雰囲気下で、または希釈濃度(2〜8%、好ましくは3〜5%)の水素を含む不活性雰囲気下で、洗浄を行なうことが好ましい。そして、触媒は、通常、空気との接触を避けるために水中で保存される。これは、スポンジ金属触媒が高い金属表面積を有し、そのために自然発火性であるからである。スポンジ金属触媒生成物は、通常、約0.05〜約0.3cc/gの孔容積(窒素−BET)、約10〜500オングストロームの平均孔直径、少なくとも10m/g、好ましくは約20〜150m/gの表面積(BET)、を有する。
【0014】
好ましくは、触媒は、0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜2重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%の第一の助触媒金属を含む。好ましくは、触媒は、0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜2重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%の第二の助触媒金属を含む。
【0015】
スポンジ金属触媒は好ましくは、1〜150ミクロンの大きさの粒子の形態である。第一及び第二の助触媒金属は触媒塊(catalyst mass)中に均一に分散されることができるが、好ましくは、助触媒金属は触媒塊の表面に集中される。
【0016】
米国特許6309758は、貴金属でドープされた多孔質金属触媒を開示しており、そこでは、貴金属は0.01〜1.5重量%で存在し、そして、多孔質金属の粒子中に分散して60以下の全体に対する表面の比率(surface to bulk ratio)を与えている。全体に対する表面の比率(S/B)は、全体のドーパント濃度に対する表面のドーパント濃度の比を指す。ここで、表面のドーパント濃度は、触媒粒子の表面体積(surface volume)内の骨格金属に対する第一の助触媒金属の原子比であり、そして、全体のドーパント濃度は、触媒粒子全体についての骨格金属に対する第一の助触媒金属の原子比を指す。表面体積は、本発明の触媒粒子の外殻体積(outer volume)または殻(shell)を指し、それは、概略、粒子半径の外側50オングストロームである(すなわち、粒子の外側表面から粒子の中心の方向に約50Å、広がっている)。
【0017】
本発明の好ましい態様において、S/B比は60より大きく、より好ましくは100より大きく(例えば、100〜500)、さらに好ましくは200より大きい(例えば、200〜500)。
【0018】
スポンジ金属触媒の表面への第一の金属化合物及び第二の金属化合物の沈積は、好ましくは、助触媒金属化合物の溶液へのスポンジ金属の含浸の方法によって行なわれ、また、金属化合物の溶液からの助触媒金属化合物の沈殿の方法によって行なうこともできる。第一の金属化合物及び第二の金属化合物のそれぞれの沈積は、同様の方法によって、または異なった方法によって行なうことができる。本発明の好ましい方法において、助触媒金属は、後含浸(post-impregnation)によって触媒に加えることができる、すなわち、形成されたスポンジ金属触媒を、各助触媒金属の塩または錯体の溶液に一緒に、または別個に含浸することによって助触媒金属を加えることができる。また、助触媒金属または助触媒金属化合物は、各助触媒金属の塩または錯体の溶液から一緒に、または別個に、骨格金属上に沈殿させることができる。沈殿法は当技術分野では周知であり、その方法は、沈殿剤(典型的にはアルカリ)を混合することによる可溶性化合物の溶液からの不溶性化合物の形成によるpH−制御沈殿を含む。また、助触媒金属は、浸出可能な金属との合金に、骨格金属と組み合わせることができる。さらに別の方法として、助触媒金属は、スポンジ金属の製造に使用される腐食性の浸出液に加えることもできる。これらの方法はすべて、当技術分野で既知である。本発明の触媒は、第一及び第二の助触媒金属の双方を含有する。第一及び第二の助触媒金属は、触媒製造プロセスの異なった段階で、異なった方法によって触媒に加えることができる。また、第一及び第二の助触媒金属は、類似の方法を用いて、触媒製造の同じまたはほぼ同じ段階で加えることができる。金属塩及び金属錯体の溶液は好ましくは水溶液であるが、有機溶媒を用いることもできる。
【0019】
本発明の好ましい方法において、第一及び第二の助触媒金属は、スポンジ金属触媒に含浸される。第二の助触媒金属は、第一の助触媒金属の前に、後に、または同時に、スポンジ金属触媒に含浸することができる。助触媒金属は、助触媒金属塩の溶液から含浸される。それら金属塩の溶液が相溶性でない場合は、各助触媒金属の含浸は別個の工程として実施されなければならない。それらの溶液が相溶性であり混合できる場合、含浸は、混合溶液を用いて同一の工程として行なうことができ、また、それぞれの溶液を用いて、別個の工程で行なうこともできる。通常、水溶液が用いられる。適切な塩は、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩等の無機塩、及び有機塩(特に、金属酢酸塩)を含む。第一の助触媒金属の溶液の調製に使用される適する塩の例は、Pd(NO及びNaPdClを含む。第二の助触媒金属の溶液の調製に使用される適する塩の例は、NaVO、ZnCl、FeCl・6HO、Ce(C、AgNO及びNaVOを含む。スポンジ金属触媒は、一定の撹拌下、好ましくは少なくとも5分間、通常は15〜60分間、含浸溶液と接触させられる。含浸中、スラリーのpHは、好ましくは8より大きく、より好ましくは9より大きく維持される。含浸は通常、室温で行なわれるが、必要である場合は、加熱または冷却することもできる。含浸後、含浸溶液から触媒をデカントし、そして、洗浄して遊離の含浸塩を除くことができる。触媒は非酸化性雰囲気、例えば、Nのような不活性ガス下、または水中、に保存される。
【0020】
本発明の触媒は、多様な水素化反応において有用である。特に、本発明の触媒は、ニトロベンゼンのアニリンへの水素化、ジニトロトルエンのトルエンジアミンへの水素化に有用であり、また、脂肪族ニトリルの一級アミンへの水素化または脂肪族ジニトリルのジアミンへの水素化等の有機ニトリルのアミンへの水素化に有用である。
【0021】
本発明の具体的態様を示す以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲がそのような実施例に限定されることを意図するものではない。
【0022】
分析
スポンジ金属触媒の全体の組成を、誘導結合プラズマ原子発光分析法(ICP−AES)によって決定した。試料は王水に溶解した。Ni含有量は、元素の全含有量を100%と仮定して、差により決定した。
【0023】
触媒の粒子径は、レーザー散乱法により測定した。触媒の表面近傍の組成は、X線光電子分光法(XPS)で測定した。スポンジ金属触媒は非常に活性であり、そして自然発火性であるので、乾燥された場合、空気に曝すことで自然発火し、そのため、表面組成は変化することがある。試料の移動及び測定中の触媒の酸化を避けるために、すべての試料は、前処理チャンバーの流体中の銅製試料ホルダー中に置かれた。そして、乾燥N気流下、3×10−7Torrの真空下、2時間にわたって水を蒸発させた。そして、空気に曝すことなく、試料を分析チャンバーに移した。スペクトルを得るために、150W電力で、500μmスポットのAl K照射が使用された。結合エネルギーは炭素1sの284.8eVを参照した。製造者によって提供された感度因子を用いて組成を決定した。
【0024】
表面組成を決定するためのXPS測定と全体の組成を決定するためのICP−AESを用いて、米国特許6309758に説明されているのと同じ方法によってS/B比を求めた。S/B比は、表面Pd/Niを全体のPd/Niで割ったものである。結果を表1に示す。
【0025】
実施例1 スポンジニッケル触媒の製造
アルミニウム金属及びニッケル金属を加熱、溶融し、そして、いっしょに注いで、約50%のNiと50%のAlを含むAl−Ni合金の形成を行なった。そして、形成された合金を冷却し、破砕し、粉にし、そして分別した。その粉末の平均粒径は約20〜25μmであった。そして、その粉末を約30%のNaOH溶液を含む反応器に少しずつ加えた。得られたスラリーを約90℃で4時間、撹拌した。デカントによってスラリーから上澄みを除き、そして、pHが11.5より小さくなるまで水で洗浄した。得られた活性化された触媒を、水媒体中で保存した。触媒の評価結果を表1に示す。
【0026】
実施例2 パラジウム及びバナジウムでドープされた触媒
実施例1で製造したスポンジNi触媒を用いて、本発明の促進触媒(promoted catalyst)を製造した。0.2774gのNaPdCl塩(35.75重量%のPd)と0.2375gのNaVOを50cmの脱イオン水に溶解した。ベースのスポンジNi触媒49.48gを2リットルのステンレス製ビーカーに加えた。その触媒を覆っている水をデカントにより除いて、500cmの脱イオン水で置き換え、その混合物を室温で5分間撹拌してpHが10.3のスラリーを形成した。激しく撹拌しながら、金属塩の溶液をスポンジNi触媒スラリーに加えた。スポンジNiスラリーのpHを9.3より高く維持した。得られた触媒を、連続的に30分間撹拌した。上澄みをデカントし、誘導結合プラズマ分析法(ICP)で分析してそのPd含有量を測定した。ICPでは、上澄み中にPdは検出されなかった。AgNO溶液を用いた試験で塩化物が検出されなくなるまで、得られた触媒を脱イオン水で洗浄した。最終的な触媒のpHを約9.5に調節した。そして、触媒を水中に保存した。
【0027】
実施例3〜5
それぞれ、塩化亜鉛、塩化鉄(III)及び酢酸セリウムをPdと共に含浸させたことを除いて、実施例2に記載の方法と同様にして各触媒を製造した。触媒は、約0.2%のPdと0.2%の第二の金属助触媒を含んでいた。触媒の評価データ(ICPによる)を表1に示す。
【0028】
実施例6
AgNOとPd(NOの混合溶液を用いて、実施例2の一般的方法によって触媒試料を製造した。触媒は、名目、0.2%のPdと0.2%のAgを含んでいた。
【0029】
実施例7〜10(比較)
比較として、実施例1で製造されたものと同様のスポンジNi触媒を、パラジウムのみ、または第二の金属のみでドープした。Pdまたは第二の金属助触媒は、名目、約0.2重量%であった。一つの金属塩を用いたことを除いて、実施例2に記載の方法と同様にして各触媒を製造した。実施例8では、スポンジNiスラリーに酢酸を添加することによって、pH6でPd塩を導入した。組成を表1に示す。
【0030】
実施例11〜12
NaPdCl塩(35.75重量%のPd)と0.2375gのNaVOを50cmの脱イオン水に別々に溶解し、そして、実施例1で製造したスポンジニッケル触媒を用いたスポンジニッケルスラリーに順々に加えた。実施例11では、最初にパラジウム溶液をスポンジNi触媒に加え、その後、バナジウム溶液を加えた。実施例12では、最初にバナジウム溶液をスポンジNi触媒に加え、その後、パラジウム塩溶液を加えた。実施例2と同様にして、得られたスラリーをデカントし、洗浄した。評価結果を表1に示す。
【0031】
実施例13
実施例1〜10の触媒を用いて、室温、50psiのHで、ニトロベンゼンのアニリンへの水素化を実施した。各触媒の活性を、ml H/分/g 触媒、で表されるものとして表1に示した。助触媒を含まない触媒、または一つのみの助触媒金属を含む触媒と比較して、Pdと第二の金属塩をドープした場合に、すなわち本発明の触媒を用いた場合に、この反応での増強された活性が達成されたことが明らかである。
【0032】
実施例14〜23
触媒のpHを表2に示したように変化させたことを除いて、実施例2〜5で用いた方法によって、実施例1に記載の方法によって製造されたスポンジ金属触媒にパラジウム及び第二の金属助触媒を共に含浸した。実施例13に記載の方法を用いたニトロベンゼンの水素化における活性を、各触媒について試験した。活性を表2に示す。すべての分析において、S/B比及び活性は、上述のようにして測定及び計算した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

実施例24
ジニトロトルエン(DNT)のトルエンジアミン(TDA)への水素化について、実施例1及び2の触媒を試験した。41mgの触媒、及び1mlあたり53mgのDNTを含むDNTのメタノール中の仕込み溶液を用いて、温度143℃、水素圧220psig、で連続撹拌タンク反応器中、反応を実施した。表3に示した試験結果は、触媒1gあたり677gのDNTの生産性レベルでの、対照である実施例1の非促進触媒の失活を示している。対照的に、実施例2の0.2/0.2 Pd/V共促進触媒は、触媒1gあたり3060gのDNTを超える生産性を示している。これは、寿命の4.5倍の改良を表している。
【0035】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ニッケル、コバルト、鉄及び銅からなる群から選択される、少なくとも一つの骨格多孔質スポンジ金属、
(ii)パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される第一の助触媒金属、及び
(iii)鉄、ニッケル、コバルト、亜鉛、バナジウム、セリウム、銅、タングステン、モリブデン、チタン、ニオブ、マンガン、銀、カドミウム、プラセオジム及びネオジムからなる群から選択される第二の助触媒金属、
を含む触媒組成物。
【請求項2】
第一の助触媒金属が、Pt、Pd及びRhからなる群から選択される、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
第二の助触媒金属が、V、Fe、Ce及びZnからなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
骨格金属が、さらに、チタン、クロム、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、マンガン及び亜鉛からなる群から選択される金属を、全骨格金属の0〜20重量%で含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
第一の助触媒金属を0.01〜5重量%で含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
第二の助触媒金属を0.01〜5重量%で含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
1〜150ミクロンの平均直径を有する粒子の形態である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
触媒粒子への助触媒金属の分散が、100〜500のS/B比を与え、
ここで、S/B比は、全体のドーパント濃度に対する表面ドーパント濃度の比を表し、表面ドーパント濃度は、触媒粒子の表面体積中の、骨格金属に対する第一の助触媒金属の原子比であり、全体のドーパント濃度は、全体の触媒粒子についての骨格金属に対する第一の助触媒金属の原子比を意味し、そして、表面体積は、触媒粒子の外側表面から粒子の中心の方向に50Åで広がっている、触媒粒子の外側の体積を意味する、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項9】
以下の工程:
(a)ニッケル、コバルト、鉄及び銅の少なくとも一つから選択される活性骨格金属と、0〜20重量%のチタン、クロム、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、マンガン及び亜鉛からなる群から選択される金属との、スポンジ金属触媒を形成すること、
(b)前記スポンジ金属触媒の表面に、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される金属の少なくとも一つの化合物を沈積すること、及び、
(c)前記スポンジ金属触媒の表面に、鉄、ニッケル、コバルト、亜鉛、バナジウム、セリウム、銅、タングステン、モリブデン、チタン、ニオブ、マンガン、銀、カドミウム、プラセオジム及びネオジムからなる群から選択される金属の少なくとも一つの化合物を沈積すること、
を含む、触媒組成物の製造方法。
【請求項10】
工程(b)を工程(c)の前に実施する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(c)を工程(b)の前に実施する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)と工程(c)を同じ段階に実施する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)及び(c)が、前記スポンジ金属触媒の前記金属の化合物の溶液での含浸を含む、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)及び(c)が、前記金属の化合物の溶液からの、金属化合物の沈殿を含む、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
以下の工程:
(a)70〜40重量%の浸出可能な金属、
30〜60重量%の、ニッケル、コバルト、鉄及び銅の少なくも一つからなる群から選択される少なくとも一つの活性骨格金属、及び、以下、
(i)パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される第一の助触媒金属、及び
(ii)鉄、ニッケル、コバルト、亜鉛、バナジウム、セリウム、銅、タングステン、モリブデン、チタン、ニオブ、マンガン、銀、カドミウム、プラセオジム及びネオジムからなる群から選択される第二の助触媒金属、
の少なくとも一つ、
を含む合金を形成すること、
(b)前記合金を、1〜500μmの平均粒径を有する粒子に粉砕すること、
(c)前記粒子を、前記合金から前記浸出可能な金属の少なくとも80%の浸出をもたらすに十分な時間及び十分な条件下、アルカリ金属水酸化物の溶液と接触させて、スポンジ金属触媒を形成すること、及び、
任意に、
(d)前記スポンジ金属触媒の表面に、
(i)パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムからなる群から選択される第一の助触媒金属、及び/または
(ii)鉄、ニッケル、コバルト、亜鉛、バナジウム、セリウム、銅、タングステン、モリブデン、チタン、ニオブ、マンガン、銀、カドミウム、プラセオジム及びネオジムからなる群から選択される第二の助触媒金属、
の少なくとも一つの化合物を沈積すること、
を含む、触媒組成物の製造方法。
【請求項16】
(d)(i)及び(d)(ii)の工程の少なくとも一つが、前記スポンジ金属触媒の前記金属の化合物の溶液での含浸を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(d)(i)及び(d)(ii)の工程の少なくとも一つが、前記金属の化合物の溶液からの前記金属化合物の沈殿を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
有機ニトロ化合物またはニトリル化合物の対応するアミンへの水素化方法であって、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の触媒、または請求項9乃至17のいずれか一項に記載の方法によって製造される触媒、の存在下に実施することを特徴とする、水素化方法。
【請求項19】
ニトロベンゼンのアニリンへの水素化、ニトロトルエンの対応するアミノトルエンへの水素化、ジニトロトルエンのトルエンジアミンへの水素化、脂肪族ニトリルの脂肪族一級アミンへの水素化、または脂肪族ジニトリルの脂肪族ジアミンへの水素化、を含む、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2008−546519(P2008−546519A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516418(P2008−516418)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050157
【国際公開番号】WO2006/134403
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】