説明

触媒及び排ガス浄化方法

【課題】本発明は、従来よりも触媒活性に優れ、NOx浄化性能の高い触媒の提供、及びその触媒を用いた排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
【解決手段】排ガス中の窒素化合物を燃焼させるための触媒において、第1触媒層と第2触媒層とからなり、前記第1触媒層は、酸化物系セラミックからなる担体に、触媒成分として、平均粒径が150〜250nmであり、粒子径分布における小粒径側からの積算分布20%の粒径D20が100nm以上で、且つ、積算分布90%の粒径D90が350nm以下の白金粒子が担持されており、前記第2触媒層は、酸化物系セラミックからなる担体に、触媒成分として、平均粒径が300〜500nmであり、粒子径分布における小粒径側からの積算分布20%の粒径D20が200nm以上で、且つ、積算分布90%の粒径D90が700nm以下の白金粒子が担持されていることを特徴とする排ガス浄化触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒及び排ガス浄化方法に関し、特に排ガス中に含まれる窒素酸化物(以下、NOxとする場合がある)を浄化する触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等より排出される排ガスには、有害物質として窒素酸化物が含まれ、環境に悪影響を与える原因となっている。そのため、排ガス中の窒素酸化物を除去する触媒について、これまで種々検討がなされている。
【0003】
例えばディーゼルエンジンの排ガスの場合、尿素SCR(選択触媒還元)触媒や、軽油を用いたSCR触媒(以下、軽油SCR触媒とする場合がある)により、窒素酸化物を削減する方法が挙げられる。
【0004】
まず、尿素SCR触媒のメカニズムについて説明すると、排ガス中のNOxを選択的に触媒に吸着させ、そこに尿素水溶液を噴霧し、還元作用によりNOxを窒素と水とに分解し排出させるものである(例えば、特許文献1)。このようなメカニズムにおいては、NOx分解率は9割程度と高いため、NOx分解用触媒として注目されている。しかし、自動車や船舶等において燃料(還元剤)とは別に尿素水溶液を搭載しなければならず、搭載スペースの確保が困難であるという問題点がある。更に、尿素水溶液を噴霧後、NOxを浄化するまでの応答遅れが生じてしまい、NOx転換率が安定しないという問題がある。
【0005】
次に、軽油SCR触媒について説明する。このメカニズムは、第1段階として排ガスを窒素酸化物酸化触媒に接触させて、排ガスに含まれる一酸化窒素(以下、NOとする場合がある)を二酸化窒素(以下、NOとする場合がある)に酸化し、次いで、炭化水素(軽油等の還元剤)を加え、第2段階としてこの排ガスをロジウム金属及びロジウム酸化物から選ばれる窒素酸化物還元触媒に接触させて、窒素酸化物を窒素に還元するものである(例えば特許文献2)。
【0006】
このように、まず排ガスに含まれるNOをNOに酸化するのは、NOに比べてNOは、窒素酸化物還元触媒による還元作用において、還元剤である軽油等との選択反応性により優れるからである。従って、窒素酸化物の接触還元に先立って、予めNOをNOに酸化することによって、排ガスに含まれるNOxの除去率を高めることができる。
【0007】
そして、軽油SCR触媒であれば、尿素SCR触媒のように尿素水溶液を搭載する必要も無く、また、NOxを浄化するまでの応答遅れという問題も生じないので、近年は軽油SCR触媒が用いられる傾向にある。
【0008】
しかしながら、従来の軽油SCR触媒は、NOxの浄化率が低く、特に、還元剤に軽油を用いた場合、200℃〜250℃条件下にて最高でも20%程度の浄化率に留まってしまう(特許文献2)。しかも、還元剤(軽油)の量を増やしても、NOxを還元する前に還元剤が酸化燃焼してしまいNOxとの反応に用いられず、NOxの浄化率は向上しない。
【0009】
【特許文献1】特開2005−334681号明細書
【特許文献2】特許第3791968号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
軽油SCR触媒は、最近の環境問題への高い関心から、その触媒活性の向上が強く期待されている。そこで、本発明は、従来よりも触媒活性に優れ、NOx浄化性能の高い触媒の提供、及びその触媒を用いた排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
NOxを浄化するには、上記のように、NOからNOへの酸化作用と、NOからNへの還元作用という2段階の反応を用いることが効果的である。そこで、NOxの浄化率を更に向上させる手段として、酸化作用活性の高い触媒や還元作用活性の高い触媒を見出すべく、本発明者等は鋭意検討を行った。
【0012】
その結果、所定の平均粒径を有する白金粒子を担体に担持させれば、NOxの酸化作用が向上し、又、これよりも更に平均粒径の大きい白金粒子を用いると、還元作用が向上することを見出した。そして、排ガスを軽油と共に、まず酸化作用の高い白金粒子を有する触媒層へ通過させ、更に、上記還元作用の高い白金粒子を有する触媒層へ通過させれば、従来よりも高いNOx浄化性能が得られることを見出し、本発明を想到するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、排ガス中の窒素化合物を燃焼させるための触媒において、第1触媒層と第2触媒層とからなり、前記第1触媒層は、酸化物系セラミックからなる担体に、触媒成分として、平均粒径が150〜250nmであり、粒子径分布における小粒径側からの積算分布20%の粒径D20が100nm以上で、且つ、積算分布90%の粒径D90が350nm以下の白金粒子が担持されており、前記第2触媒層は、酸化物系セラミックからなる担体に、触媒成分として、平均粒径が300〜500nmであり、粒子径分布における小粒径側からの積算分布20%の粒径D20が200nm以上で、且つ、積算分布90%の粒径D90が700nm以下の白金粒子が担持されている、ことを特徴とする触媒に関するものである。
【0014】
ここで、第1触媒層の触媒成分は、酸化作用を高めるために、その平均粒径が150〜250nmであることがより好ましく、D20が100nm以上で、且つ、D90が350nm以下であることがより好ましい。一方、第2触媒層の触媒成分は、還元作用を高めるために、その平均粒径が300〜500nmであることがより好ましく、D20が200nm以上で、且つ、D90が700nm以下であることがより好ましい。また、最小粒子径(Dmin)から最大粒子径(Dmax)における最高頻径(ピークトップ)は、第1触媒層の触媒成分の場合では180〜220nmであることが好ましく、第2触媒層の触媒成分の場合は380〜420nmであることが好ましい。
【0015】
そして、第1触媒層の触媒成分の担持量は、担体に対する白金質量で0.1g/L〜5.0g/Lの割合であることが好ましい。担持量が0.1g/Lより少ないと、NOを十分に酸化することが出来ず、また、5.0g/Lより多くても酸化機能を発揮しない白金粒子が増えるのみでNO酸化性能が向上しないからである。第2触媒層の触媒成分の担持量は、担体に対する白金質量で0.1g/L〜5.0g/Lの割合であることが好ましい。担持量が0.1g/Lより少ないと、NOxを十分に還元することが出来ず、また、5.0g/Lより多くても還元機能を発揮しない白金粒子が増えるのみでNO還元性能が向上しないからである。より好ましくは、第1触媒層の触媒成分の担持量が0.5g/L〜3.0g/Lの割合であり、第2触媒層の触媒成分の担持量が0.5g/L〜3.0g/Lの割合である。
【0016】
次に、酸化物系セラミックからなる担体は、セラミックハニカム、メタルハニカム又は不織布の構造体の少なくとも一部にウォッシュコートされたものが好ましい。ウォッシュコートとは、表面積の大きな酸化物系セラミックをコーティングすることであり、これを行うことにより、担体の表面積を充分に大きくすることができ、排ガスと触媒成分とを充分に接触させることができるからである。
【0017】
また、第1触媒層の酸化物系セラミックからなる担体は、アルミナ、ゼオライト、シリカのいずれか1つであることが好ましく、第2触媒層の酸化物系セラミックからなる担体は、アルミナ、又はゼオライトであることが好ましい。特に、第2触媒層の担体にゼオライトを用いることが好ましく、ZSM−5型のゼオライトを用いれば、排ガス浄化性能がより高まる。そして、担体は、セラミックハニカム、メタルハニカム又は不織布の構造体に対して5g/L〜150g/Lコーティングすることが好ましく、より好ましくは20g/L〜80g/Lコーティングすることが好適である。この範囲内であれば、セラミックハニカム又はメタルハニカムの構造体の圧力損失を過大とすることなく、充分な表面積を確保できるからである。
【0018】
尚、第1触媒層と第2触媒層は、排ガスが第1触媒層を通過することでNOがNOに酸化され、その後に第2触媒層を通過することでNOがNに還元されるように構成されているものであればよい。例えば、第1触媒層と第2触媒層がウォッシュコートされた一つの支持体により構成されるものであってもよく、また、別々の支持体にそれぞれ第1触媒層と第2触媒層を構成して組み合わせてもよい。
【0019】
ここで、従来技術による触媒層の製造方法と、本願発明に係る触媒層の製造方法について言及する。
【0020】
従来技術としては、触媒の粒径をナノサイズに揃えることのできる前記の吸着法の他、含浸法やコロイド法が挙げられる。
【0021】
まず、吸着法とは、担体の飽和吸着量未満の白金を含む白金塩溶液等に、平衡状態となるまで担体に吸着し、その後、乾燥、焼成して担持させる方法である。通常の吸着法では数Å〜数十nmサイズと広い範囲の粒度分布となってしまうので、NOの酸化作用やNOの還元作用に好適な白金粒子を得ることは出来ない。
【0022】
次に、含浸法とは、担体の飽和吸着量以上の白金を含む白金塩溶液等に、担体を浸漬し、白金塩溶液中の水分を蒸発させ、乾燥、焼成して担持させる方法である。含浸法によれば、吸着法に比べて触媒の担持量を増やすことができるが、白金粒子の粒径を制御することが難しく、製造中に近接する白金粒子同士が接触して一体化する結果、数nm〜数μmサイズと広い範囲の粒度分布となってしまう。その結果、反応に全く寄与しない白金粒子が存在することとなり、NOx浄化性能は低下することとなる。
【0023】
一方、コロイド法とは、白金塩溶液を還元剤により還元させて得られる白金コロイドを担体に担持させて、乾燥、焼成して担持させる方法である。この方法によれば、数nm〜十数nm程度の粒子径の白金粒子を作製することが可能となるとともに、白金粒子の粒子径のばらつきを制御することができる。しかしながら、一般的なコロイド製造法では、本願発明に好適な大きさの白金粒子を作ることは困難である。
【0024】
そこで、上記問題点に鑑み、酸化性能又は還元性能の高い所定の平均粒径を有する白金粒子からなる本願発明に係る触媒は、次の工程により作製する。まず、白金塩溶液に還元剤と保護剤を投入後、pHを調整し、更に超音波で攪拌しコロイド溶液を作成する。次に、所定の粒子径に成長させた白金コロイドを担体に接触させ、乾燥後、焼成する。
【0025】
上記製造方法において、白金コロイドの形成に用いる白金塩としては、塩化白金、塩化第二白金、ジニトロアンミン白金、酸化白金、エタノールアミン白金、アセチルアセトナト白金、ヘキサアンミン白金クロライド、テトラアンミン白金クロライド等が使用できる。
【0026】
また、コロイドを形成する工程における還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、アンモニア、ヒドラジン化合物等の他、アルコール、水素ガスや一酸化炭素ガス、糖類や脂肪類、超音波の還元作用等を用いることが可能であるが、特にヒドラジン化合物を用いることが好ましい。
【0027】
そして、コロイドを形成する工程においては、保護剤として界面活性剤を添加することが効果的である。界面活性剤としては、分子量が300〜50000のポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレングリコール(PEG)等を使用することができる。特に分子量が1000〜20000のポリエチレングリコールが好ましい。更に4000〜10000がより好ましい。
【0028】
上記コロイド形成過程におけるPHは3.0〜8.0であることが好ましい。PHが3.0よりも低いと核の形成が不十分でコロイドを生成することができない。PHが8.0よりも高いとコロイドが沈殿してしまい担持することが困難となるからである。そして、酸化性能の高い白金粒子を作製するにあたり、pHは3.0〜5.0であることが好ましく、一方、還元性能の高い白金粒子を作製する場合には、pHは7.0〜8.0であることが好ましい。
【0029】
そして、超音波は20KHz〜400KHzの周波数で行うことが好ましく、より好ましくは30KHz〜40KHzの周波数である。照射時間は1分〜120分が好ましく、より好ましくは5分〜40分である。
【0030】
また、白金コロイドの粒子径は、白金と還元剤の比率によって種々の白金粒子を調整することが可能であり、白金と還元剤の質量比は、4:1〜0.25:1とするのが好ましい。本願発明では、特に白金と還元剤の質量比を1:1〜0.5:1の範囲とするのが好ましい。白金の比率がこれよりも小さくなると白金粒子径が600nm以上となり、白金の比率がこれよりも大きいと白金粒子径が100nm以下となるため、本願発明に適さないからである。
【0031】
次に、排ガス浄化方法に係る発明について説明すると、上記に記載の本願発明に係る触媒と還元剤を用いた排ガス浄化方法であって、排ガスを第1触媒層に導入し、第1触媒層を通過した排ガスを第2触媒層に導入することを特徴とする排ガス浄化方法である。このように平均粒径の異なる白金粒子からなる触媒層を通過させて、まずはNOを酸化し、次にNOを還元させる段階を経ることにより、高いNOx浄化効果が得られるからである。
【0032】
尚、排ガス中には、NOxの他、C〜C14の不飽和炭化水素からなる炭化水素も含まれており、このような炭化水素は、触媒存在下でNOxの分解反応に寄与することとなる。しかしながら、NOxを十分に分解するためには排ガス中の炭化水素だけでは不十分である。そこで、炭化水素源として還元剤を加え、十分にNOxと分解させる必要がある。使用する還元剤としては、軽油の他、ガソリン、LPG等が挙げられる。これらの中でも、NOxの分解効率を考慮すれば、軽油を用いることが好ましい。
【0033】
この場合、還元剤は、排ガスとともに第1触媒層に導入することが望ましい。炭化水素が十分に存在する条件下において、NOxの酸化還元作用が行われれば、NOxの浄化効率が向上するからである。尚、還元剤の導入量を、排ガス中のNOxに対して重量比で0.5〜4(より好ましくは、1〜2)の割合とすれば、NOxの浄化効率を安定させることができる。
【発明の効果】
【0034】
以上で説明したように、本発明に係る触媒は、排ガス浄化の触媒活性が高く、特にNOxの分解性能の高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明における最良の実施形態について説明する。まず、本発明を実施するにあたり、以下に示す方法により実施形態に用いる触媒を作製した。
【0036】
第1触媒層の作製:白金含有率8.5wt%のジニトロジアンミン白金水溶液36.8gに水368gを加えて希釈し、分子量10000のポリエチレングリコールを9.2g加え、ポリエチレングリコールが十分に溶解するまで連続攪拌した。
【0037】
その後、還元剤として98%ヒドラジン一水和物水溶液3.8gを攪拌投入し、pH3.0の条件下でコロイドを形成し、超音波で30KHzの条件下にて10分処理した。その後、直径28.5mm、長さ25.4mm、容量0.156Lのコージェライト(セラミック)ハニカムに白金コロイドを担持させ、120℃で一晩乾燥させた後、500℃で2時間焼成し、触媒成分の担持量が担体に対する白金質量で2g/Lの触媒を作製した。
【0038】
尚、コージェライト(セラミック)ハニカムは、γ‐アルミナ、ゼオライト、シリカのいずれかをウォッシュコートし、120℃で一晩乾燥させた後、500℃で2時間焼成することにより40g/L付着させたものを用いた。このようにして作製したNOx酸化触媒をSEM写真により観察を行い、500個前後の白金粒子について、粒子数基準の粒子径分布を測定したところ、表1の200A、200B、200Cに示す触媒層であることを確認した。
【0039】
【表1】

【0040】
第2触媒層の作製:白金含有率8.5wt%のジニトロジアンミン白金水溶液36.8gに水368gを加えて希釈し、保護剤に分子量4000のポリエチレングリコールを4.6g使用し、還元剤として98%ヒドラジン一水和物水溶液を5.5g攪拌投入し、pH7.0の条件下でコロイドを形成し、超音波で30KHzの条件下にて10分処理した。
【0041】
尚、コージェライト(セラミック)ハニカムは、γ‐アルミナ、ゼオライト、シリカのいずれかをウォッシュコートし、120℃で一晩乾燥させた後、500℃で2時間焼成することにより40g/L付着させたものを用いた。その他の条件は、第1触媒と同様の条件として、触媒成分の担持量が担体に対する白金質量で2g/Lの第2触媒を作製した。SEM写真により観察を行ったところ、表2の400A、400B、400Cに示す触媒層であることを確認した。
【0042】
【表2】

【0043】
含浸法による触媒層の作製:白金含有量15wt%の塩化白金水溶液2.08gに水10gを加えた白金溶液を、ウォッシュコート済みのコージェライト(セラミック)ハニカムに全吸水させ、120℃で一晩乾燥後、900℃で2時間焼成して、触媒成分の担持量が担体に対する白金質量で2g/Lの触媒層を作製した。SEM写真により観察を行ったところ、表3のD〜Gに示す触媒層であることを確認した。
【0044】
【表3】

【0045】
吸着法による触媒層の作製:白金含有量8.5wt%のジニトロジアミン白金水溶液3.67gに水200gを加えた白金溶液に、ウォッシュコート済みのコージェライト(セラミック)ハニカムを浸漬させ、4時間撹拌することでウォッシュコートに白金を全量吸着させた。水溶液から取り出したハニカムは120℃で一晩乾燥後、500℃で2時間焼成し、触媒成分の担持量が担体に対する白金質量で2g/Lの触媒層を作製した。SEM写真により観察を行ったところ、表4のH〜Kに示す触媒層であることを確認した。
【0046】
【表4】

【0047】
PVPコロイドを用いた触媒層の作製:白金平均粒子径が2nmで、白金含有率0.16wt%の白金−PVPコロイド水溶液200gに、ウォッシュコート済みのコージェライト(セラミック)ハニカムを浸漬させ、4時間撹拌することでウォッシュコートに白金−PVPコロイドを全量吸着させた。水溶液から取り出したハニカムは120℃で一晩乾燥後、500℃で2時間焼成し、触媒成分の担持量が担体に対する白金質量で2g/Lの触媒層を作製した。SEM写真により観察を行ったところ、表5のLに示す触媒層であることを確認した。
【0048】
【表5】

【0049】
比較触媒層の作製:白金含有率8.5wt%のジニトロジアンミン白金水溶液36.8gに水184gを加えて希釈し、保護剤に分子量4000のポリエチレングリコールを4.6g使用し、還元剤として98%ヒドラジン一水和物水溶液を9.0g攪拌投入し、pH8.0の条件下でコロイドを形成した。そのコロイドをウォッシュコート済みのコージェライト(セラミック)ハニカムに担持し、120℃で一晩乾燥後、500℃で2時間焼成し、触媒成分の担持量が担体に対する白金質量で2g/Lの比較触媒5を作製した。SEM写真により観察を行ったところ、表6のMに示す触媒層であることを確認した。
【0050】
【表6】

【0051】
銅触媒を用いた触媒層の作製:銅含有率32wt%の酢酸銅0.98gに水200gを加えた酢酸銅水溶液に、既にウォッシュコートしたコージェライト(セラミック)ハニカムを浸漬させ、4時間撹拌することでウォッシュコートに銅を全量吸着させた。水溶液から取り出したハニカムは120℃で一晩乾燥後、水素気流下450℃で1時間還元し、触媒成分の担持量が担体に対する銅質量で2g/Lの触媒を作製した。かかる触媒を使用したNOx浄化率の測定結果は、表9の従来例8に該当する。
【0052】
白金を用いた第1触媒層とロジウムを用いた第2触媒層の作製:特許文献2に記載の実施例2と本願発明を比較するべく、触媒層を以下のように作製した。
【0053】
白金含有量8.5wt%の塩化白金酸5.31gをイオン交換水100mlに溶解させた。予め120℃にて24時間乾燥させた平均粒径3mmのγ−アルミナ100mlを上記塩化白金酸水溶液に投入し、30分間攪拌して、アルミナの細孔内に塩化白金酸水溶液を十分に含浸させた。次いで、γ−アルミナを塩化白金酸水溶液から分離し、表面に付着した過剰の水溶液を除去した後、100℃で12時間乾燥させ、更に、空気中、500℃で焼成して、白金をγ−アルミナに1重量%の担持量で担持させた触媒を得た。
【0054】
ロジウム含有量8.21wt%の硝酸ロジウム0.64gをイオン交換水100mlに溶解させた。予め120℃で24時間乾燥させた平均粒径3mmのγ−アルミナ100mlを上記硝酸ロジウム水溶液に投入し、30分間攪拌して、アルミナの細孔内に硝酸ロジウム水溶液を十分に含浸させた。次いで、γ―アルミナを硝酸ロジウム水溶液から分離し、表面に付着した過剰の水溶液を除去した後、100℃で12時間乾燥させ、さらに、空気中、500℃で焼成して、白金をγ−アルミナに1重量%の担持量で担持させた触媒を得た。かかる触媒を使用したNOx浄化率の測定結果は、表9の従来例9に該当する。
【0055】
第1実施形態:作製した触媒を直列に配置し、予め排ガスに還元剤を加えた混合物を、固定床流通装置により第1触媒層から第2触媒層へ通過させ、排ガス中のNOxの浄化率を測定した。還元剤は軽油を使用し、測定時のガス組成は、NO 600ppm(軽油/NO=2/1)、HO 5vol%、O 10vol%、残部Nとし、反応温度230℃、空間速度は29700h−1とした。実施例、比較例、従来例の結果をそれぞれ表7、表8、表9に示す。
【0056】
【表7】

【0057】
【表8】

【0058】
【表9】

【0059】
表7〜9より、本願発明に係る第1触媒層のNOx酸化効果と、第2触媒層のNOx還元効果により、NOx浄化性能は比較例や従来例に比べて顕著に向上した。特に、第2触媒層のウォッシュコートにゼオライトを用いれば、より浄化性能が高くなることは明らかである。
【0060】
第2実施形態:ここでは、還元剤の導入順序が与えるNOx浄化率への影響を評価した。第1実施形態と異なる点は、還元剤(軽油)を予め排ガスと混合せず、第1触媒層を通過して排出された排ガスに混合し、これら混合物を第2触媒層に導入した(実施例10)点である。第1触媒層と第2触媒層の配置や、測定時のガス組成、反応温度、空間速度等の測定条件は、第1実施形態と同様とした。このようにして行った場合のNOx浄化率を、予め排ガスに還元剤を加えた混合物を第1触媒層から第2触媒層へ通過させた場合(実施例1)と比較した結果を、表10に示す。
【0061】
【表10】

【0062】
表10の結果から、還元剤を予め排ガスと混合させた後、これらの混合物を第1触媒層に導入する方が、NOx浄化率が向上することを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の窒素化合物を燃焼させるための触媒において、
第1触媒層と第2触媒層とからなり、
前記第1触媒層は、酸化物系セラミックからなる担体に、触媒成分として、平均粒径が150〜250nmであり、粒子径分布における小粒径側からの積算分布20%の粒径D20が100nm以上で、且つ、積算分布90%の粒径D90が350nm以下の白金粒子が担持されており、
前記第2触媒層は、酸化物系セラミックからなる担体に、触媒成分として、平均粒径が300〜500nmであり、粒子径分布における小粒径側からの積算分布20%の粒径D20が200nm以上で、且つ、積算分布90%の粒径D90が700nm以下の白金粒子が担持されていることを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項2】
第1触媒層の触媒成分の担持量は、担体に対する白金質量で0.1g〜5.0g/Lの割合であり、
第2触媒層の触媒成分の担持量は、担体に対する白金質量で0.1g〜5.0g/Lの割合である請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
酸化物系セラミックからなる担体は、セラミックハニカム、メタルハニカム又は不織布の構造体の少なくとも一部にウォッシュコートされたものである請求項1又は請求項2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
第1触媒層の酸化物系セラミックからなる担体は、アルミナ、ゼオライト、シリカのいずれか1つである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の排ガス浄化触媒。
【請求項5】
第2触媒層の酸化物系セラミックからなる担体は、アルミナ、又はゼオライトである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の排ガス浄化触媒。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の触媒と還元剤を用いた排ガス浄化方法であって、
排ガスを第1触媒層に導入し、第1触媒層を通過した排ガスを第2触媒層に導入することを特徴とする排ガス浄化方法。
【請求項7】
還元剤は、排ガスとともに第1触媒層に導入する請求項6に記載の排ガス浄化方法。

【公開番号】特開2010−149097(P2010−149097A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333236(P2008−333236)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(509352945)田中貴金属工業株式会社 (99)
【Fターム(参考)】