説明

触媒反応により形成するインドール構造を備えた化合物の形成方法及びその抗ガン剤における応用

【課題】触媒反応により形成するインドール構造を備えた化合物の方法及びその抗ガン剤における応用の提供。
【解決手段】触媒反応を含み、しかも上記の触媒反応は少なくとも一種のルイス酸を触媒とし、α、β不飽和ケトンとインドール或いはその派生物に対して反応を行い、或いは触媒α、β不飽和アルデヒドとインドール或いはその派生物に対して反応を行う。上記のルイス酸は以下のグループ、すなわち金属ハロイド物、ハロゲン、無機塩化アンモニウム、有機硫酸(塩)類中の一つを含む。また本発明は3インドール構造 (3-indole based)を備えた化合物の抗ガン剤における応用も掲示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一種の触媒反応により形成するインドール構造を備えた化合物の形成方法に関する。特に一種のルイス酸を触媒としインドール構造を備えた化合物を形成する方法及びその抗ガン剤における応用に係る。
【背景技術】
【0002】
いわゆるガン細胞とは体内細胞の多数のガン関連遺伝子(ガン抑制遺伝子、ガン原発遺伝子等)が変異し変形しできるものである。分子レベル上は一般の正常細胞が受ける死亡と生長の調整制御メカニズムから離れるため、ガン細胞は老衰、死亡しにくく、しかも急速に増殖する能力を備える。過去の研究では、多くの生長を刺激するerb-B、HER-2とKi-ras、c-mycなどの受容体と情報分子、及びBcl−XLなどの抗細胞アポトーシスの分子が、ガン細胞中において大量に発生し或いは過度に活化する現象が発見された。これら分子を我々は発ガン遺伝子 (oncogenes)と呼ぶ。またある細胞周期中で重要なp53、p16 とpRbなどの調整制御分子が遺伝子排列上の序列がすべて削除され、或いはDNA序列促進端 (promotor) 上において厳重にメチル化され、また突然変異が発生する可能性もあり、こうしてこれら分子は正常な機能を執行できなくなってしまい、細胞周期は乱れてしまう。これによりガン細胞は絶えず分裂増殖するため、これら分子は腫瘍抑制遺伝子 (tumor suppressor genes)と呼ばれる。もちろんガン細胞の形成は単純にいくつかの分子が調整制御を失うことだけが原因ではなく、多くの知己の、さらには未知の分子がその形成には関わっているため、ガン細胞そのものの複雑性もあり、ガン治療における困難を高めている。
【0003】
従来の研究では化学治療の作用は腫瘍細胞を壊死させることになると考えられて来たが、近年では、多くの抗ガン剤は細胞生理の混乱を招き、これにより細胞の計画性死亡 (programmed cell death)を引き起こすと文献で発表されている。いわゆる計画性死亡とはほとんどすべての組織細胞に存在するもので、細胞が老化、損傷を受ける、或いは機能を失うと、多数の細胞は自殺行為によりこれら無用の細胞を消去する。このような死亡方式は一般の壊死とは異なり、細胞アポトーシス(apoptosis)と呼ばれる。正に、細胞アポトーシスは壊死とは違い炎症反応 (inflammation)を起こし、しかもアポトーシスの細胞は非常に急速に近隣の細胞に飲み込まれ分解される。よって細胞死亡による近隣細胞の壊死或いは免疫システムの失調を起こすことはない。
哺乳動物で最も早く分離された細胞アポトーシス分子はbcl-2 遺伝子で、bcl-2 geneが過度に発現するとapoptosisの進行を抑制する。あるガンは正にbcl-2及び関連遺伝子に頼り細胞死亡を防止している。また前立腺ガン、大腸ガンの予後 (prognosis) もbcl-2の発現と関連がある。
さらに、p53 geneも広く研究されており、DNAが損傷を受けると、p53が大量に発現し、細胞はG1/S期に停留しDNAの修復後に正常周期に入る。しかし、DNAが受けた損傷が非常に重大である時、p53は細胞を細胞アポトーシス状態にする。多くのガンでは、p53 geneの欠陥が観察されており、p53 遺伝子も現在文献中ではガン細胞において最も広範に変異が発生する遺伝子とされている。
【0004】
一方、インドール及びその派生物は生物活性を備えることで知られる。例えば、ガン細胞に対して細胞アポトーシス(apoptosis)の誘導作用を備え、有機化学者の長期間の研究により、2インドールメタン、β-インドール硝基化合物、β-インドールケトンとβ-インドールアルコール類等化合物を含む多種のインドール構造を備えた化合物の合成に成功している。
しかし現在のところでは、極めてわずかな文献だけに、上記化合物と関連がある研究が発表されており、例1としてはKeer等化学者が高圧条件下で主産物以外に産出率わずかに6%の別の次要産物である3インドールシクロヘキサンの分離を認めたことが示されている(Harrington、 P.、 Keer、 M. A. Can. J. Chem. 1998、 76、 1256.)。また例2として、Shi等化学者がこのしばらく後に、金属トリフラート(metal triflate)を触媒剤として使用する時、相同の産物を得たことが報道されている(Shi、 M.、 Cui、 S.-C.、 Li、 Q.-J. Tetrahedron 2004、 60、 6679)。
だが、上記2つの合成法は共に、反応条件が[13 キロバール(kilobar)の高圧]と厳しく、長時間反応(1-3日間)及び高価な金属トリフラートを触媒剤として使用する必要がある等の欠点を備える。これに鑑み、低コスト、低毒性、環境を汚染せず、操作が容易な製造工程を開発することによりインドール構造を備えた化合物を形成し、同時に新たな触媒を採用することで、産出率を高め、迅速に求められる産物を生産することが現在産業界で非常に重視されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は新たな触媒反応により形成するインドール構造を備えた化合物の方法及びその抗ガン剤における応用を提供し、
すなわちそれはルイス酸を触媒剤として使用し、操作が容易で安定した製造工程を提供し、これによりインドール構造を備えた化合物を形成し、本発明が使用する触媒剤の長所は反応効率が高く、反応後の混合液の処理が容易で、しかも反応はすべて室温などの温和或いは適温の条件下で行うことができ、その極めて高い産出率の単一産物を産出可能で、このように本発明は経済上の効果及び利益と産業上の利用性に符合するものである。
【0006】
さらにそれガン治療を必要とする病人に対してガンを治療する医薬組合せ物で、3インドール構造 (3-indole based) を備える化合物を含み、その対掌異性体、ジアステレオ異性体は医薬上受け入れ可能なの塩類或いはその任意の組合せで、腫瘍抑制遺伝子p53に変異が発生するガン細胞に特に適用する。
【0007】
上記のように本発明のインドール構造を備えた化合物の形成方法は触媒反応を含み、しかも上記の触媒反応は少なくとも一種のルイス酸を触媒とし、α、β-不飽和ケトンとインドール或いはその派生物に対して反応を行い、或いは触媒α、β-不飽和アルデヒドとインドール或いはその派生物に対して反応を行い、上記のルイス酸は以下のグループ、すなわち金属ハロイド物、ハロゲン、無機塩化アンモニウムと有機硫酸(塩)類中の一つを含み、また、本発明は3インドール構造 (3-indole based)を備えた化合物の抗ガン剤上への応用を提供することを特徴とする触媒反応により形成するインドール構造を備えた化合物の方法及びその抗ガン剤における応用である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、触媒反応を含み、該触媒反応は少なくとも一種のルイス酸を触媒とし、α、β-不飽和ケトンとインドール或いはその派生物に対して反応を行い、或いは少なくとも一種のルイス酸を触媒とし、α、β不飽和アルデヒドとインドール或いはその派生物に対して反応を行い、
その内、該ルイス酸は以下のグループ、すなわち有機硫酸類、ハロゲン、無機塩化アンモニウムと金属ハロイド物中の一つを含み、上記のインドール或いはその派生物は以下の化学構造式1に示すグループ中の一つを含み、
その内、Xはハロゲンで、R4、R5とR6は以下のグループ、すなわち水素原子と直鎖アルキル中から一つを単独で選択することを特徴とするインドール構造を備えた化合物の形成方法としている。
【化1】

請求項2の発明は、請求項1記載のインドール構造を備えた化合物の形成方法において、前記有機硫酸類は以下のグループ、すなわちアルキル硫酸、芳香基硫酸、アルキル芳香基硫酸、硫酸化スチレンディビニルベンゼンコーポリマー、ナフィオン樹脂中の一つを含むことを特徴とするインドール構造を備えた化合物の形成方法としている。
請求項3の発明は、請求項1記載のインドール構造を備えた化合物の形成方法において、前記無機塩化アンモニウムはCANを含むことを特徴とするインドール構造を備えた化合物の形成方法としている。
請求項4の発明は、請求項1記載のインドール構造を備えた化合物の形成方法において、前記金属ハロイド物は以下のグループすなわち、3塩化インジウム、3塩化セリウム、3塩化アルミニウム中の一つを含むことを特徴とするインドール構造を備えた化合物の形成方法としている。
請求項5の発明は、請求項1記載のインドール構造を備えた化合物の形成方法において、前記α、β不飽和ケトンは以下化学構造式2、3、4、5、6に示すグループ中の一つを含むことを特徴とするインドール構造を備えた化合物の形成方法としている。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

請求項6の発明は、請求項1記載のインドール構造を備えた化合物の形成方法において、前記α、β不飽和アルデヒドは以下化学構造式7、8、9、10、11、12に示すグループ中の一つを含むことを特徴とするインドール構造を備えた化合物の形成方法としている。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【0009】
請求項7の発明は、以下化学構造式13に示す一般式の化合物を備え、
その対掌異性体、ジアステレオ異性体は医薬上受け入れ可能な塩類或いはその任意の組合せで、その内、R1、R2、R3とR4は以下のグループすなわち、水素原子、アルキル、代替型アルキル、芳香基、代替型芳香基、或いはR1、R2、R3とR4任意の両者のサイクロ中の一つであることを特徴とするガン治療を必要とする病人に対してガンを治療する医薬組合せ物としている。
【化13】

請求項8の発明は、請求項7記載の医薬組合せ物において、前記化合物は以下化学構造式14、15、16、17、18、19、20、21、22に示すグループ中の一つを含むことを特徴とする医薬組合せ物としている。
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

請求項9の発明は、請求項7記載の医薬組合せ物において、前記ガン細胞内の腫瘍抑制遺伝子p53に変異が発生することを特徴とする医薬組合せ物としている。
請求項10の発明は、請求項7記載の医薬組合せ物において、前記ガンは以下のグループ、すなわち肺ガン、食道ガン、卵巣ガン、乳ガン、リンパガン、すい臓ガン、結腸直腸ガン、頭頚部ガン、膀胱ガン中の一つ、或いはその任意の組合せであることを特徴とする医薬組合せ物としている。
請求項11の発明は、請求項7記載の医薬組合せ物において、前記ガンは小細胞肺ガンではないことを特徴とする医薬組合せ物としている。
請求項12の発明は、請求項7記載の医薬組合せ物において、前記ガン細胞死亡は細胞アポトーシスにより発生することを特徴とする医薬組合せ物としている。
請求項13の発明は、請求項7記載の医薬組合せ物において、前記医薬組合せ物はガン細胞分裂抑制に使用することを特徴とする医薬組合せ物としている。
請求項14の発明は、請求項7記載の医薬組合せ物において、前記医薬組合せ物は哺乳類のガンを治療する方法で、使用有効量を含むことを特徴とする医薬組合せ物としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明はphytochemical機能性のindole構造を経て、細胞アポトーシス機能の誘発を備える化学物質3-indoleの研究開発に成功した。p53 wild-typeのA549 細胞、p53 mutantのH1437、H1435とCL1-1細胞とp53 nullのH1299細胞中すべて極めて高い毒殺作用を示し、しかも動物実験中では明確に腫瘍生長抑制作用を示している。さらに活体外 (in vitro)細胞方式情報伝達ルートにおける分析が示すように、3-indole薬物はBcl-2情報伝達ルートにより、細胞アポトーシス(apoptosis)を誘発し、しかも各類p53変異のガン細胞に対して、皆、生長抑制効果の作用を備える。こうしてインドール構造の化合物3-indoleが新たな抗ガン剤となる潜在能力を備え、異なる形式のガン患者に対する治癒率を向上させることができるのを確かめられた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第一実施例が示すインドール構造を備えた化合物の形成方法は室温触媒反応を含む。ここでの室温和は30℃以下を指し、しかも上記の触媒反応は少なくとも一種のルイス酸を触媒とし、α、β-不飽和ケトンとインドール或いはその派生物の反応を行う。上記のルイス酸は以下のグループ、すなわち金属ハロイド物、ハロゲン、無機塩化アンモニウムと有機硫酸(塩)類中の一つを含む。その内、上記の金属ハロイド物は以下のグループ、すなわち3塩化インジウム(InCl3)、3塩化セリウム(CeCl3)と3塩化アルミニウム(AlCl3)中の一つを含む。次に、上記の無機アンモニア塩はCAN(cerium ammonium nitrate、CAN)を含む。
【0012】
さらに、上記の有機硫酸(塩)類は以下のグループ、すなわちアルキル硫酸(塩) [12アルキル硫酸(塩)など]、芳香基硫酸(塩) [メチルベンゼン硫酸(4-methylbenzenesulfonic acid)]、アルキル芳香基硫酸(塩) [12アルキルベンゼン硫酸(塩)]、硫酸化スチレンディビニルベンゼンコーポリマーとナフィオン樹脂(Nafion)中の一つを含む。上記の硫酸化スチレンディビニルベンゼンコーポリマーは一種の酸性イオン交換樹脂で、工業触媒剤上に既に広く使用されており、現在商業化されている製品にはAmberlyst-15、Amberlyst XN-1005、Amberlyst XN-1010、Amberlyst XN-1011、Amberlyst XN-1008、 Amberlite 200等がある。
【0013】
本実施例中で、上記のα、β-不飽和ケトンは以下の化学構造式23、24、25、26、27に示すグループ中の一つを含む。
【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【0014】
この他、上記のインドール或いはその派生物は以下の化学構造式28に示すグループ中の一つを含む。
その内、Xはハロゲンで、R4、R5とR6は以下のグループ中の一つから単独で選択する。水素原子と直鎖アルキル(メチル、乙基など)。
【化28】

【0015】
本発明の第二実施例に示すインドール構造を備えた化合物の形成方法は室温触媒反応を含む。ここでの室温は30℃以下で、しかも上記の触媒反応は少なくとも一種のルイス酸を触媒とし、α、β-不飽和アルデヒド(α、β-unsaturated aldehyde)とインドール或いはその派生物に反応を行う。その内、上記のルイス酸、インドール或いはその派生物の選択は第一実施例と相同である。この他、上記のα、β-不飽和アルデヒドは以下化学構造式29、30、31、32、33、34に示すグループ中の一つを含む。
【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【0016】
[範例 1]
セリウムアンモニウムニトレート(CAN)の触媒効果を観察するため、室温条件下でジメチルスルホキシド (DMSO)/水 (体積比5/1)を溶剤として使用する時、以下を発見した(発見1)。すなわち、等量の2-シクロヘキセン-1-オン(2-cyclohexen-1-one)1aと4個の等量(equiv)のインドール 2a はそれぞれ異なる触媒量のセリウムアンモニウムニトレートを使用する条件下で反応を行った(結果は図8の反応1と表1に示す)。先ず、触媒剤を加えてない条件下で反応を行った。混合システムにより20時間の撹拌を経過したが、結果は1、4-付加反応の産物4aaは生成されなかった。また先に1、4-付加反応を行わず、さらに継続し1、2-付加反応を行った最終産物5aaは産生された [実験1(entry1)]。つまり、反応システム中に0.1等量のセリウムアンモニウムニトレート(CAN)を加えた後、12 時間反応を行った後、結果は明らかに改善され、14%の4aa と85%の5aa 産物が得られた(実験2)。奇妙な点は、相同反応を20時間行った後にさらに93% の単一産物5aaが得られたことである(実験3)。
【0017】
さらに優良な結果を得るために、セリウムアンモニウムニトレート(CAN)の量を0.3 等量まで増加した。予測通りに、6時間経過後4aaの産出率は8%まで減少し、5aaは92%まで増加した(実験4)。幸運なことに、相同反応を13時間行った後にさらに99%の単一産物5aaが得られた(実験 5)。セリウムアンモニウムニトレートの量を0.5等量まで増加後に、明らかに反応速度は速くなったが、2時間の反応経過後の結果は産物4aa と5aaの産出率はそれぞれ11% と77%まで低下し(実験6)、しかも4時間反応後には85%の5aaのみが得られた(実験7)。これはいささか過量であるセリウムアンモニウムニトレート(CAN)は明確な触媒作用を備えるが、反応の発生を過度に速め或いは過度に劇烈にし、反応システムの安定性に影響を及ぼし、起始物の一部或いは産物が反応過程において破壊され産出率が低下したためであると解釈される。上記結果に基づき、セリウムアンモニウムニトレート(CAN)が確かに高効率の触媒効果を備え、しかも使用する触媒量が0.3等量である時、最良の触媒効果を備えることを確認した。1a の他に、1b-e等のその他の起始物もそれぞれ相似の状況テストを行った。実験結果は実験8-11中に示す。
【0018】
図8の表1の数値データに基づき、あるおもしろい現象、特に関連がある反応物1a と1b-e の差異点が観察された。例えば、反応物1aに対して先に1、4-付加反応を行い、4aaを産出し、続いて4aaはさらにインドール 2a と反応を継続し5aaを得る。しかし、反応物1b-eは1、4-付加反応だけを行い、高産出率の4ba-4eaを産出することができるが、1、2-付加反応等のその他反応を継続し行うことはできない。1a と1bがそれぞれ異なる産物を産出する原因は、推測される。“ねじれ張力効果”(torsional strain effect)の影響によるもので、この効果は反応期間において産物或いは中間産物に対して非常に重要な性格を持つ。例えば、第一等量の2aに先に1、4-付加反応を行い、1a 或いは1bまで付加後に3-インドールシクロヘキサノン(3-indolylcyclohexanone)4aa或いは3-インドールシクロペンタノン(3-indolylcyclopentanone)4baを形成することができる。1、2-付加反応を継続して行うと、4aa中の炭基である炭原子の混成軌域はsp2によりsp3軌域に転換され、六環産物 5aaを産出する。この種の改変の結果により5aaは交錯(staggered)を備え、或いは椅状構造形状の構造と呼ばれ、この構造は明らかに化合物内のねじれ張力を減少させ、5aaの安定性を増強することができる。反対の状況で、もし五環の産物5baを形成し、重なり(eclipsed)の構造形状が産出され化合物のエネルギーを上昇させたなら、かえって五環産物5baはより不安定となる。
【0019】
[範例2]
さらに進んだ研究では、ケトンと相似構造を備えたアルデヒド [α、β-不飽和アルデヒド(α、β-unsaturated aldehyde)6]の2aとの反応を示す。実験結果は図9の反応2と表2に示す。例えば、2-クロトンアルデヒド(crotonaldehyde)6aと2a は0.1等量のセリウムアンモニウムニトレート(CAN)を触媒剤として使用する条件において、室温で1時間反応後、99%の単一産物 7aaを産出することができる(実験1はNMRの鑑定及び分析を経る)。混合物は分析を経た後も、やはり2インドールメタン [bis(indolyl)methane] 8aaの生成が発見されない(GCMSの鑑定及び分析を経た)。しかし、起始物に3-メチル-2-クロトンアルデヒド(β-methylcrotonaldehyde)6bを使用すると、64% の7ba と29% の 8baを産出する(実験2)。一方、6c或いは6dの反応結果と6a或いは6bは相似しており、それぞれ32%の7ca と66%の8ca(実験3)及び20%の7da と80%の8daを産出することができる(実験4)。奇妙な点は、6eを起始物とした時、99% の単一産物8eaを産出することである(実験5)。
【0020】
図8の表1と図9の表2の結果に基づき、異なる状況においてα、β-不飽和ケトン1は単一産物4だけを生産可能で、或いは5も同時に産物4と5を生産可能であることが分かる(略述すれば、産物4或いは/及び5とすることができる)。同様な状況で、α、β-不飽和のアルデヒド6もまた単一産物7或いは8だけを生産可能で、或いは同時に産物7と8を生産可能である。産物7生成の反応機構と産物5の反応機構は類似している。先ず、反応物6に1、4-付加反応を行った後、さらに1、2-付加反応を継続し、最終産物7を産出する。しかし、産物8と4の反応機構は不相同である。内、産物4は1、4-付加反応の途中で産出され、産物8は1、2-付加反応により産出する。上記異なる実験結果はアルデヒドとケトンの間には異なる立体障害を備えるためと考えられる。アルデヒド基の立体障害はケトン基よりはるかに小さいため、アルデヒドはケトンに比べ1、2-付加反応の進行が容易である。上記において仮にアルデヒドにより反応を行った時、0.1等量のセリウムアンモニウムニトレート(CAN)を使用するだけで触媒反応を行うことができるとすれば、類似の触媒反応を起こすためにはケトンでは少なくとも0.3等量が必要であることが証明された。この他、アルデヒド分子構造内部に異なる立体障害を備える時、産物7或いは/及び8を得ることができ、しかも相互間の比例差異は非常に大きい。例えば、6aを使用する時には7aaだけを得ることができ(表2の実験1)、6b-dを使用する時には同時に7と8(entries2-4)を得ることができる。6eを使用する場合には、8eaだけを得ることができる(実験5)。
【0021】
[範例3]
ヨードを触媒剤として使用した結果、その反応プロセスと範例1は相似であった。1等量のα、β-不飽和ケトン1と4等量のインドール2a が1リットルのジエチルエチル(diethyl ether、Et2O)溶液中においてヨードを触媒剤として反応を行う時、同時に産物4 と5を生成し、或いは単一産物4或いは5だけを生成する。結果は図10の反応3と表3に示す。0.15等量のヨードを触媒剤として使用した結果、同時に4aa と5aaを生産した(実験1)。図10のヨード9の用量を0.3 或いは0.5 等量まで増やし、2時間或いは1時間の反応を経た後にが、さらに93% 或いは99% の単一産物 5aaを得ることができる(実験3と4)。しかし、ヨードの用量を1等量まで増やした時には、62%の5aaだけが生産される(実験5)。上記結果は、0.3 等量のヨードを使用すれば十分に効率的に反応全体を触媒することができることを示している。同様に、それぞれ1a-dと2a 或いは2b を使用し反応を行うなら、異なる種類の産物4を得ることができる(実験6-10)。図8の表1中の触媒剤CANの数値データと比較すると、ヨードを触媒剤とする条件においては、1dの他の大部分の起始物は極めて高い産出率の産物4を産出することができる。1dに対しては、ヨードを触媒とすると、49%の4daが生産され、CANを触媒とすると、62%の産出率となり、唯一の差はCANが触媒剤ではジメチルスルホキシド (DMSO)/H2O溶剤を使用する必要があり、ヨード触媒剤ではエタノール類溶剤を使用する必要がある点である。
【0022】
関連がある産物4aa と5aaの反応機構の説明は以下の通りである。先ず1aに1、4-付加反応を行い4aaを生産し、続いて4aaを2aと共に1、2-付加反応を継続し5aaを生産する。上記推測の反応機構を証明するため、1等量の4aaと3等量の2a及び0.3 等量のヨードを1リットルのエタノール中に混合し反応を行い、1時間経過後87%の 5aaを得ることができる (図10の反応4)。上記結果はなぜ相同の反応がより短い反応時間内で同時に産物4 と5を産出できるかを説明することができるが、より長い時間経過後には産物5だけが得られる。
【0023】
[範例4]
範例1から範例3の結果に基づき、起始物6と2を反応させ、0.1 等量のヨードを触媒剤として使用した実験結果は図11の反応5 と表4に示す。ヨードを触媒剤とする時、起始物6a-cと6f-gは共に単一産物7aa-cb 及び7fa-gbだけを生産し、その他産物8などの生成はない(図11の表4中entries1-6及び9-12)。図9の表2と図11の表4の結果を比較し、セリウムアンモニウムニトレート(CAN)或いはヨードを触媒剤として使用する時、微妙に異なる実験結果が現れることを発見した。考えられる原因は、セリウムアンモニウムニトレート(CAN)は比較的強いルイス酸に属するため、活性がより大きいが、ヨードは比較的弱いルイス酸に属するため、活性が温和なためである。両者のルイス酸度には差異があるため、反応に対する影響も不相同である。例えば、相同の反応がヨードを触媒剤として使用する時、起始物6a-c と6f-g は共に先に1、4-付加反応を行い、続いて1、2-付加反応を継続し、単一産物7を産出する。この現象は起始物6bと6cに対する影響は特に明確である(entries 3-6)。しかし、もし起始物6bと6cはセリウムアンモニウムニトレート(CAN)を触媒剤とすると、混合物7と 8を産出する(図9の表2中entries 3-4)。けれども起始物6dと6eにおいて、1、2-付加反応を経過し生産する8da及び 8eaは主要産物(実験7)及び唯一の産物 (実験8)で、この結果はヨードを用いようと、或いはセリウムアンモニウムニトレート(CAN)を用いようと、触媒剤の結果は皆相似していることを示す。これら特別の結果は、ルイス酸度の差異に関連がある他、使用する起始物そのものが備える異なる立体障害が原因であると解釈することができる。
【0024】
[範例5]
範例1から範例4の結果に基づき、その他の触媒剤を使用し起始物1aと2aに触媒反応を行った実験結果は図12の反応6と表5に示す。0.1等量の金属ハロイド物を触媒剤として使用した時、3塩化インジウム(InCl3)と3塩化セリウム(CeCl3)の触媒生成産物4aaの量はより多い。しかし、3塩化アルミニウム(AlCl3)は触媒生成産物5aaが主で、しかもその産出率は90%に達する(図12の表5中entries1-3)。次に、有機硫酸(塩)類の触媒効果差異は非常に大きく、0.1等量の12アルキルベンゼン硫酸(dodecylbenzene sulfonic acid)を使用すると、99% の単一産物5aaを得ることができ(実験4)、0.1等量のメチルベンゼン硫酸(4-methylbenzenesulfonic acid)を使用すると、85%の単一産物5aa(実験 5)を生産することができる。対して、0.1g酸性イオン交換樹脂Amberlyst-15は19%の産物4aa と11%の産物5aaだけを生成することができる(実験6)。この他、触媒剤2、4、6-トリクロ-1、3、5-トリアジン(2、4、6-trichloro-1、3、5-triazine、TCT)を使用した効果はかなり良く、5%の産物4aa と91%の産物5aaを生成することができる(実験7)。触媒剤N-ブロモスクシンイミド(N-Bromosuccinimide、NBS)は7%の産物4aa と24%の産物5aaを生成することができる(実験8)。
【0025】
[範例6]
1等量のα、β-不飽和ケトン1と4等量のインドール及びその派生物2a-2e を使用し、1リットルのジエチルエチル(diethyl ether、Et2O)溶液中において、0.15或いは0.3等量ヨード(iodine)を触媒剤とし反応を行った時には、単一産物5だけが得られた。結果は図13の表6に示す。
【0026】
上記本発明の実施例中において、本発明が異なる産物を生成する原因は起始物或いは反応物そのものが備える異なる立体障害が原因、或いは/及び触媒剤相互のルイス酸度にわずかにある差異が引き起こしたと推測できる。本発明が使用する触媒剤の長所は反応効率が高く、反応後の混合液の処理が容易で、しかも反応はすべて室温などの温和或いは適温の条件下で行うことができる点である。この他、上記触媒剤は価格が安くしかも簡単に入手でき、環境への影響が低く、世界的な環境保護のトレンドに符合している。
【0027】
細胞には増殖、分化及びアポトーシスという3つの特性がある。正常組織の生長バランスを維持する過程において、細胞増殖、分化とアポトーシス三者は相互に協調し、共同で調節している。その内、細胞アポトーシスは細胞衰亡と更新、細胞数保持のホメオスタシス面に対して重要な作用を担っている。長く学者達は腫瘍増殖活性と分化の特徴方面の研究を重視し、実験方法と手段を制限して来たため、腫瘍細胞死亡面の研究は多くはない。しかしますます多くの資料が示すように、細胞アポトーシス失調と腫瘍の形成には密切な関係がある。つまり、腫瘍は増殖と分化異常の疾病であると同時にアポトーシス異常の疾病でもあると言うことができるのである。現在腫瘍細胞アポトーシス研究は既に最も注目される生命科学領域中の焦点の一つである。
【0028】
公知技術(prior art)中で記載したように、細胞アポトーシス(apoptosis)はまた計画性細胞死亡(programmed cell death)とも呼ばれる。Kerr、Wyllie及びCurrieの記述に基づけば、遺伝子制御により細胞内環境の維持のための安定した自主的で秩序だった死亡である。それは細胞壊死(necrosis)とは異なり、細胞アポトーシスは受動の過程ではなく、主動の過程である。それはある系列遺伝子の起動、表達及び調整制御等作用に関わり、病理条件下での自体損傷の現象で、生存環境により良く適応するための、主動的に選ぶ一種の死亡過程である。細胞アポトーシスの突出変化は内源性核酸内エンドヌクレアーゼ(endogenous endonuclease)触媒の細胞染色体DNAが核小体間において断裂し、約180-200 bp整数倍の染色体DNA片段、つまり染色体DNAの片断化(DNA fragmentation)を形成することである。細胞アポトーシスが発生した細胞は、細胞膜にしわ(shrinkage)、陥没が生じ、染色体の変質し緻密(condensation)となり、最後にはこなごなに断裂する。細胞膜は細胞質を分割包囲し、包囲した細胞質の断片は多数の膜構造が完全な泡状小体を形成し、これをアポトーシス小体(apoptotic body)と呼ぶ。細胞はアポトーシス発生過程中に細胞質が濃縮され、細胞骨架蛋白はプロテアーゼにより破壊される。しかし、粒線体、酵素溶解体等の主要胞器の構造と機能はアポトーシスの末期まで維持され、内質網は早期には蛋白質合成の機能も持つが、後には拡張し泡状となり、細胞膜と接触融合し、胞質気泡を形成する。細胞膜は完璧を保持し、細胞内容物は溢れ出てこないため、炎症反応を起こすことはない。
【0029】
よって、細胞アポトーシスは極めて特殊で自然な細胞過程で、pro-apoptotic gene:p53、Bax、Bad、Bak、及び anti-apoptotic gene:Bcl-2、Bcl-xL、Bcl-w等多種の遺伝子が関わっており、細胞は自身が設定したプロセスに従い細胞が破壊されるまで進める。その目的は細胞と組織のホメオスタシス保持である。細胞アポトーシスはさらに四個の重要な外在特殊と備える。
それは、(1)細胞質皺縮、(2)染色体濃縮、(3)DNA片断化、(4)アポトーシス小体の形成である。その特性は細胞膜が破裂せず、細胞内容物が流出しないため、炎症反応が起こらないことである。細胞アポトーシス過程中において、細胞内Bifilar DNAは内エンドヌクレアーゼ(caspase)により切断され、先ず約300 bp大に形成され、さらに約185 bpの核小体に分割される。最後にはアポトーシス小体を形成し、細胞に包囲され清除される。細胞アポトーシスは動物の発育において、形態改変、不要構造の消去、細胞数の制御、異常な或いは機能を失った或いは有害な細胞の消去、及び細胞文化の形成等の多くの重要な機能を備える。
細胞死亡を探知する実験分析方法は以下のステップを含む。
(1)電気泳動分離技術:アポトーシス細胞からDNAを取り出した後、電気泳動分離技術を利用し、DNA laddersマップを観察し、DNA分解程度を知る。
(2)フローサイトメトリー技術:各細胞周期 (cell cycle)が占める割合を分析し、もし細胞に死亡現象が発生していれば、フローサイトメトリーはG1 (Gap 1、 間期1)、S (Synthesis、 DNA合成期)、G2 (Gap 2、 間期2) とM (mitosis、 糸状分裂期) の正常な細胞周期における他に、副G1前期 (sub-G1) の細胞を探知し、細胞に細胞アポトーシスが出現し得る状況を示す。
【0030】
本発明の第三実施例が示すガンを治療する医薬組合せ物は以下化学構造式35に示す一般式の化合物を備える。
その対掌異性体、ジアステレオ異性体は医薬上受け入れ可能な塩類或いはその任意の組合せで、その内、R1、R2、R3とR4は以下のグループ、すなわち水素原子、アルキル、代替型アルキル、芳香基、代替型芳香基、或いはR1、R2、R3とR4中の任意の両者のサイクロである。
【化35】

【0031】
本実施例の最適範例中において、上記の化合物は以下化学構造式36、37、38、39、40、41、42、43、44に示すグループ中の一つを含む。
【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【0032】
本実施例中において、上記のガンは以下のグループ、すなわち肺ガン、食道ガン、卵巣ガン、乳ガン、リンパガン、すい臓ガン、結腸直腸ガン、頭頚部ガンと膀胱ガン中の一つ、或いはその任意の組合せである。上記の3インドール構造 (3-indole based) を備える化合物は特に肺ガン等の腫瘍抑制遺伝子p53に変異が発生するガン細胞に適用される。臨床上、肺ガンは小細胞ガン (Small Cell Lung Cancers、SCLCs)と非小細胞ガン (Non-Small Cell Lung Cancers、NSCLCs)の2種に分類され、多くの患者は非小細胞ガンに属する。非小細胞肺ガンはまた肺腺ガン(adenocarcinoma lung cancer)、肺鱗状細胞ガン (squamous cell lung cancer)、肺大細胞ガン (1arge cell lung cancer)に分類される。内、該肺腺ガンは肺ガン患者中最も多く見られ、非喫煙者が罹患する肺ガンは通常この類に分類される。肺鱗状細胞ガンは喫煙者に見られるガンである。
【0033】
[範例7]
材料と方法
1.細胞株 (Cell lines)
本実験が使用した5個の肺ガン細胞株のp53遺伝子型は、H1299 (p53 null type)、CL1-1 (p53 mutant type)、H1435 (p53 mutant)、H1437 (p53 mutant)、A549 (p53 wild-type)である。別に、正常肺細胞株IMR90は制御組とし、2個の食道ガン細胞株はそれぞれKYSE170とKYSE510である。その内、H1299、CL1-1、H1437、A549とIMR90はすべて10% 牛胎児血清を含むDulbecco's Modified Eagle's Medium (DMEM) 培養液において培養し、而H1435、KYSE170とKYSE510は10% 牛胎児血清を含むRPMI-1640培養液において培養する。
【0034】
2.薬物処理 (Drug treatment)
薬物溶剤はdimethy sulphoxide (DMSO)である。細胞をその專用培養基により37℃、5% CO2 培養箱中で培養し、定量細胞 (約3×105個)を取り6孔培養盤culture dishを利用し、12〜16hr培養する。翌日には異なる濃度の抗ガン薬3-indoleを含む培養基により37℃で24hr培養する。次に、細胞の薬物処理後の生存率を数え、抗ガン薬3-indoleの腫瘍細胞に対する死亡が50%に達し必要な濃度 (IC50)がどうであるかを得た。
【0035】
3. 細胞生存率試験 (MTT assay)
細胞をその專用培養基により37℃、5% CO2 の培養箱中で培養する。定量細胞 (約3×105個)を取り、6孔培養盤のculture dishを利用し12〜16hr培養する。翌日、異なる濃度3-indoleを含む培養基により37℃で24hr培養後、培養基を取り除き、MTT [3- (4、5-cimethyl thiazol-2-yl)-2、5-diphenyl tetrazolium bromide] 1 ml / wellを含む培養基を加え、培養箱中に1時間置く。MTTを含む培養基を除去し、DMSO 600μl/wellを加え、さらに水平オシレーター上で光振盪作用を5分間避け、各200μl/wellを96孔培養盤に取り、570 nm吸光値を測定する。さらに得られた吸光値を細胞数に換算し細胞の生存率を得る。
【0036】
4. DNA片断化分析 (DNA ladder assay)
細胞を培養盤上から約200μl取り、20μl protease Kと200μl AL bufferを加え、15秒細胞を拡散させ、56℃加熱器に10秒置く。その後、99% のアルコール 200μlを加え、混合液をQIAGEN Kitの管柱 (column) 中に写し、8000回転の遠心処理を1分間行い、下層の廃液を除去する。500μl QIAGEN Kit のAW1 bufferを加え8000回転の遠心処理を1分間行い、下層廃液を除去する。500μl QIAGEN KitのAW2 bufferを加え14000回転の遠心処理を3分間行い、上層columnを新たな1.5 ml遠心小管 (eppendorf)に移す。200μl AE bufferを加え、室温に1分間置き、8000回転の遠心処理を1分間行い、最後に收集されたDNAを電気泳動し、DNA ladderの状況を観察する。
【0037】
5. 細胞周期 (Cell cycle) の検査測定
定量細胞(約2×106個)を取り、70% アルコールにより細胞を靜かに固定し-20℃の冷蔵庫中に24時間置いた後、低速遠心900回転により5分間処理し、上澄み液を除去し、約50 ulの溶液を残す。細胞団塊を均一に拡散され、5 ml phosphate-based saline (PBS)を加え、細胞を洗浄し、PBSにより三回洗浄する。1.0 ml propidium iodide (PI) / Triton X-100 染色液を加え、細胞団塊を均一に拡散し、軽くゆすり混合し、室温下の暗室中で30 分間作用させる (最終濃度はTriton-X 0.1%、 RNase A 0.2 mg/ml、 & PI 20 μg/ml)。先ずサンプルを均一に混合し、35-μm ナイロン網によりサンプルを濾過する。フローサイトメトリー (FACScan flow cytometry、 BD、 MountainView、 CA)により、細胞中PIの蛍光強度を測定し、約一万個の細胞DNA細胞周期DNA分布含量を推算し、細胞周期の各段階を区画し、Mofit LT Ver2.0ソフトウエアを利用し、各周期細胞が占める割合及び分析作図を演算する。もし細胞が薬物処理により元の細胞周期に影響を及ぼすなら、機器で探知されたDNA分布含量と未処理薬物のサンプルは異なり、G1、S、G2、Mを含む。G1は“Gap 1” (間期1)を表し、Sは“Synthesis”(DNA合成)を表し、DNAが複製の段階を行っている。G2は“Gap 2” (間期2)を表し、Mは“mitosis”(糸状分裂)を表し、核裂(染色体分離)と質裂(細胞質分裂)の段階にある。もし、G1前期に探知された細胞はこの細胞は細胞アポトーシス中でDNA片断化の状況にあることを示す。
【0038】
6. ウェスタンブロット法 (Western Blot)
細胞を適量のRIPA [5OmM Tris pH8.0、 15OmM NaCl、 0.5% sodium deoxycholate、 0.1% SDS、 1% Triton X-100、 5mM phenylmethylsulphonyl fluoride (PMSF)、 10mg/ml leupeptin、 20mM sodium phosphate pH7.0] 入れ溶解後、細胞スクラッパー (scrapper)を使用しすべての細胞を取り、4℃遠心で10、000rpm 30分間回転し、上澄み液4μ1を取り、蛋白質定量を行い、残った蛋白を分け-20℃で保存する。
蛋白質定量:Bio-Rad DC (Detergent- Compatible) Protein Assay の方法を採用し、5μl standard或いはsample溶液を取り、96 well培養盤中に入れ、25μl 反応試剤A (alkaline copper tartrate solution)を加える。続いてさらに200μl 反応試剤B (Folin reagent)を加え、15分間630nm測吸光値で混合作用する。さらに0.5、1.0、1.5、2.0mg/mlの牛血清蛋白 (bovine serum albumin standard)を標準蛋白とし標準曲線を求め、回帰後直線方程式を求め、サンプル中蛋白質濃度 (mg/ml)を換算する。
電気泳動ブロット:30μg蛋白質を取りサンプル緩衝液 (3倍sample buffer、包括350mM Tris-HCl pH 6.8、 12% SDS、 0.02% bromophenol blue、 35% glycero1、 30% mercaptoethnol) に加え、5分間煮沸後、SDS-PAGE (4% stacking gel及び10% 或いは15% resolving gel) により先に80ボルト電圧で10分間行った後、電圧を130ボルトに調整し、さらに電気泳動を70分間行う。
免疫呈色:SDS-PAGE上の蛋白質をPVDF膜上にブロットし、この後、膜を取り出し、blocking solution (10% skim milk in PBS-T)に漬ける。室温で1時間の作用後、PBS-T (phosphate-based saline-0.5% Tween-20)で各10分間2回洗浄する。それぞれ一級抗体Bcl-2 (Cell Signaling Technology、 Beverly、 MA 01915、 USA)を加え、室温で2時間の作用後、PBS-Tにより3回、各10分間洗浄する。また二級抗体HRP-goat anti-rabbit IgGを加え、室温で1時間の作用後、さらにPBS-Tにより3回、各10分間洗浄する。最後にはECL Chemiluminescent Western System (Amersham、 Arlington Height、 IL、 USA) 試剤を用い膜上に載せ、5分間の避光作用後、暗室においてX線により現像する。
【0039】
7. 原位腫瘍方式動物試験
細胞カウンターにより転殖した細胞数量を計算し、5 X 106個細胞を取り、2倍のPBSにより洗浄する。さらに、Hanks’ Balanced Salt Solution (HBSS)により2回洗浄し、100μl HBSSの細胞サスペンション液を取り四週齢のヌードマウス(Nude mice) (ICR-Foxn1 nude mice、 国家動物実験センター) の背部皮下に注入する。腫瘍細胞注射後約10〜14日で腫瘍が50mm3大に成長した時、新抗ガン剤3-indole或いは臨床化学治療薬物Taxolをヌードマウスの腹部皮下に注射する。2日毎に一回注射し (0、 2、 4、 6、 8 day)、一度の剤量は0.2mgで計5回注射する (総剤量は50mg/Kg)。30日を単位とし、
(1)腫瘍の大きさの変化を観察し記録し、腫瘍最長の一辺aと最短の一辺bを取り、腫瘍体積の大きさを (a x b2)/2と定める。
(2)薬物注射後のマウスの血液を採り生物化学及び血液の分析を行う。
(3)肝臓及び腎臓を取り切片観察を行う。
【0040】
[範例8]
結果
1. 細胞毒性試験
インドール構造の化合物 (indole compounds) 3-indoleの各型式腫瘍細胞に対する毒殺作用実験の結果が示すように、肺ガン細胞株:H1299 (p53 null type)、CL1-1 (p53 mutant type)、H1435 (p53 mutant)、H1437 (p53 mutant)、A549 (p53 wild-type) 細胞と2個の食道ガン細胞株共に、それぞれKYSE170とKYSE510の極めて高い毒殺作用が見られ、低剤量の処理においてもガン細胞生長を抑制する状況が達成された。正常な肺細胞IMR90中においては同様の剤量処理における、明確な毒殺作用はなく(図1参照)、インドール構造を備えた化合物は新たな抗ガン剤となり得る潜在能力を備えることが示された。
【0041】
2. 動物試験
動物実験研究及び体内薬物代謝鑑定分析において、肺ガン細胞A549をヌードマウス (ICR-Foxn1) 背部皮下に注射し、細胞団塊が腫瘍を形成し50mm3に達した時、3-indoleの注射を開始する。公知の化学治療薬Taxolを正制御組とし、3-indoleの溶剤DMSOを制御組とする。図2に示すように、制御組と比較した結果、3-indole注射の後、肺ガン細胞A549が形成する腫瘍は30%〜50%生長が抑制される現象が確かに観察された。また、図3に示すように、血液及び生物化学検査の結果分析において、臨床医師が立会い検査科人員が判定したところ、3-indole注射の後に現れる血液生物化学数値は皆正常範囲内 [Glutamic oxaiacetic transaminase (GOT)、 glutamic pyvuvic transaminase (GPT)]であった。組織切片染色結果を病理科医師が判読したところ、3-indole注射の後にマウスの関連臓器には傷害がなかったことが確認された(図4参照)。
【0042】
3. 細胞周期及びプロセス性細胞死亡鑑定
3-indoleの腫瘍細胞生長抑制の作用メカニズムを理解するためそれぞれフローサイトメトリー (FLOW cytometry)、DNA片断化分析 (DNA ladder assay) 及びウェスタンブロット法(Western blot)の実験を経て、細胞周期中の各時期の細胞分布及びプロセス性細胞死亡進行の鑑定を行った。図5に示すように、FLOW cytometryの実験を通して、3-indoleの細胞周期の影響に対して異なる剤量の効果があることが分かった。肺ガン細胞 (A549、H1299、H1437、H1435、CL1-1) では10 μM剤量で24時間処理後に、細胞周期はG1期に停滞し、30 μM剤量の処理ではさらに細胞周期sub-G1増加が起きていた。sub-G1増加は細胞に死亡現象が現れていることを示す。図6のDNA ladder assayの実験結果が示すように、肺ガン細胞 (A549、H1299、H1435、H1437、CL1-1) の死亡メカニズムは細胞プロセス性アポトーシス(apoptosis)によるため、DNA規則性セグメント化の状況がある。現在既に知られているように、細胞アポトーシス連続反応にはBcl-2 (B-cell leukemia/ lymphoma)等の数個のアポトーシス関連の分子が関わっている。図7に示すように、ウェスタンブロット法分析により、3-indoleが細胞アポトーシス誘発とBcl-2家族発現に関連があることが確認された。
【0043】
上記のように、本発明はphytochemical機能性のindole構造を経て、細胞アポトーシス機能の誘発を備える化学物質3-indoleの研究開発に成功した。p53 wild-typeのA549 細胞、p53 mutantのH1437、H1435とCL1-1細胞とp53 nullのH1299細胞中すべて極めて高い毒殺作用を示し、しかも動物実験中では明確に腫瘍生長抑制作用を示している。さらに活体外 (in vitro)細胞方式情報伝達ルートにおける分析が示すように、3-indole薬物はBcl-2情報伝達ルートにより、細胞アポトーシス(apoptosis)を誘発し、しかも各類p53変異のガン細胞に対して、皆生長抑制効果の作用を備える。こうしてインドール構造の化合物3-indoleが新たな抗ガン剤となる潜在能力を備え、異なる形式のガン患者に対する治癒率を向上させることができるのを確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例3中における3-indole薬物各種ガン細胞を処理し24時間後の細胞生存率結果で、約10μMの3-indole薬物を使用するとIC50の毒殺効果があることを示す図である。
【図2】本発明の実施例3中における3-indole薬物の原位腫瘍方式動物試験の抑制効果を示す図である。5 X 106個の肺ガン細胞A549を取り、ヌードマウス背部皮下に注射し、細胞団塊が形成され腫瘍が50mm3に達した時、3-indoleの注射を開始し、伝統的化学治療薬Taxolを正制御組とし、3-indoleの溶剤DMSOを制御組とする。操作条件は2日毎に一回注射 (0、 2、 4、 6、 8 day)とし、毎回の剤量は0.2mgである。
【図3】本発明の実施例3中における3-indole薬物の原位腫瘍方式動物試験の抑制効果を示す図である。注射薬物後のマウス血液を採り、肝/腎機能が正常であるかどうか血液及び生物化学検査を行う。
【図4】本発明の実施例3中における3-indole薬物の原位腫瘍方式動物試験の抑制効果を示す図である。注射薬物後のマウス肝臓、腎臓を取り切片とし細胞型態を観察する。
【図5】本発明の範例3中における、3-indole薬物を与えた、或いは与えなかった各種肺ガン細胞24時間後の細胞周期分布図で、内、G1は細胞に2セットの染色体 (2N)があることを示し、G2/Mは細胞に4セットの染色体 (4N)があることを示し、SはG1とG2/Mの間にあり、DNA合成期を示し、染色体数は2Nと4N間にある。sub-G1は細胞染色体が2セットより少ないことを示し、細胞にDNA片断化状況が発生し、細胞アポトーシスが発生し得ることを示す。この他、実線の矢印はsub-G1 peakの強度増加を示し、中空の矢印はG2/M peakの強度増加を示す。
【図6】本発明の範例3中において、DNA 電気泳動法を利用しDNA断裂の状況を検査測定する。30μMの3-indole薬物でそれぞれ各種肺ガン細胞株を処理し、(A) 24時間、(B) 48時間である。
【図7】本発明の範例3中において、ウェスタンブロット法を利用し、30 μM の3-indole薬物によりそれぞれA549とH1437ガン細胞を処理し、そのGAPDHとBcl-2の発現量を観察する。
【図8】セリウムアンモニウムニトレート(cerium ammonium nitrate、CAN)触媒における、α、β不飽和ケトン1とインドール2aの反応数値データである。
【図9】セリウムアンモニウムニトレート(cerium ammonium nitrate、CAN)触媒における、α、β不飽和アルデヒド6とインドール2aの反応数値データである。
【図10】ヨード(iodine)触媒における、α、β-不飽和ケトン1とインドール2a/2bの反応数値データである。
【図11】ヨード(iodine)触媒における、α、β-不飽和アルデヒド6とインドール2の反応数値データである。
【図12】その他の触媒剤を使用する条件下で、α、β-不飽和ケトン1aとインドール2aの反応数値データである。
【図13】0.3等量ヨード(iodine)を触媒としたα、β不飽和ケトン1と各種インドール及びその派生物の反応数値データである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒反応を含み、該触媒反応は少なくとも一種のルイス酸を触媒とし、α、β-不飽和ケトンとインドール或いはその派生物に対して反応を行い、或いは少なくとも一種のルイス酸を触媒とし、α、β不飽和アルデヒドとインドール或いはその派生物に対して反応を行い、
その内、該ルイス酸は以下のグループ、すなわち有機硫酸類、ハロゲン、無機塩化アンモニウムと金属ハロイド物中の一つを含み、上記のインドール或いはその派生物は以下の化学構造式1に示すグループ中の一つを含み、
その内、Xはハロゲンで、R4、R5とR6は以下のグループ、すなわち水素原子と直鎖アルキル中から一つを単独で選択することを特徴とするインドール構造を備えた化合物の形成方法。
【化1】

【請求項2】
請求項1記載のインドール構造を備えた化合物の形成方法において、前記有機硫酸類は以下のグループ、すなわちアルキル硫酸、芳香基硫酸、アルキル芳香基硫酸、硫酸化スチレンディビニルベンゼンコーポリマー、ナフィオン樹脂中の一つを含むことを特徴とするインドール構造を備えた化合物の形成方法。
【請求項3】
請求項1記載のインドール構造を備えた化合物の形成方法において、前記無機塩化アンモニウムはCANを含むことを特徴とするインドール構造を備えた化合物の形成方法。
【請求項4】
請求項1記載のインドール構造を備えた化合物の形成方法において、前記金属ハロイド物は以下のグループすなわち、3塩化インジウム、3塩化セリウム、3塩化アルミニウム中の一つを含むことを特徴とするインドール構造を備えた化合物の形成方法。
【請求項5】
請求項1記載のインドール構造を備えた化合物の形成方法において、前記α、β不飽和ケトンは以下化学構造式2、3、4、5、6に示すグループ中の一つを含むことを特徴とするインドール構造を備えた化合物の形成方法。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【請求項6】
請求項1記載のインドール構造を備えた化合物の形成方法において、前記α、β不飽和アルデヒドは以下化学構造式7、8、9、10、11、12に示すグループ中の一つを含むことを特徴とするインドール構造を備えた化合物の形成方法。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【請求項7】
以下化学構造式13に示す一般式の化合物を備え、
その対掌異性体、ジアステレオ異性体は医薬上受け入れ可能な塩類或いはその任意の組合せで、その内、R1、R2、R3とR4は以下のグループすなわち、水素原子、アルキル、代替型アルキル、芳香基、代替型芳香基、或いはR1、R2、R3とR4任意の両者のサイクロ中の一つであることを特徴とするガン治療を必要とする病人に対してガンを治療する医薬組合せ物。
【化13】

【請求項8】
請求項7記載の医薬組合せ物において、前記化合物は以下化学構造式14、15、16、17、18、19、20、21、22に示すグループ中の一つを含むことを特徴とする医薬組合せ物。
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【請求項9】
請求項7記載の医薬組合せ物において、前記ガン細胞内の腫瘍抑制遺伝子p53に変異が発生することを特徴とする医薬組合せ物。
【請求項10】
請求項7記載の医薬組合せ物において、前記ガンは以下のグループ、すなわち肺ガン、食道ガン、卵巣ガン、乳ガン、リンパガン、すい臓ガン、結腸直腸ガン、頭頚部ガン、膀胱ガン中の一つ、或いはその任意の組合せであることを特徴とする医薬組合せ物。
【請求項11】
請求項7記載の医薬組合せ物において、前記ガンは小細胞肺ガンではないことを特徴とする医薬組合せ物。
【請求項12】
請求項7記載の医薬組合せ物において、前記ガン細胞死亡は細胞アポトーシスにより発生することを特徴とする医薬組合せ物。
【請求項13】
請求項7記載の医薬組合せ物において、前記医薬組合せ物はガン細胞分裂抑制に使用することを特徴とする医薬組合せ物。
【請求項14】
請求項7記載の医薬組合せ物において、前記医薬組合せ物は哺乳類のガンを治療する方法で、使用有効量を含むことを特徴とする医薬組合せ物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−195671(P2008−195671A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33995(P2007−33995)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(506027251)國立台湾師範大学 (2)
【Fターム(参考)】