説明

触媒用の改質担持材

本発明は、アルケニルアルカノエートの製造に役立つ適当な触媒またはプレ触媒を製造する方法に関する。本発明の方法は、改質剤前駆体を担持材に接触させて、改質担持材を作ることを含む。1種以上の触媒成分前駆体(パラジウムまたは金)を改質担持材に接触させることができる。金のパラジウムに対する原子比は、好ましくは約0.3:1〜約0.90:1である。次いで、触媒成分を有する担持材を、還元環境を使用して還元することができる。パラジウムおよび金と一緒に改質担体材料を含む、アルケニルアルカノエートの製造を触媒するための組成物も本発明の範囲に包含される。本発明の触媒は、一般的にはアルケニルアルカノエート、特に酢酸ビニルを製造するために使用でき、また、CO選択率を維持または改善しながら低EA/VA比をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
優先権の請求
[0001] 本出願は、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする2004年12月20日に出願された米国特許出願第60/637,529号の利益を請求する。
【0002】
発明の分野
[0002] 本発明は、触媒、触媒を製造する方法、およびアルケニルアルカノエートを製造する方法に関する。更に詳しくは、本発明は、触媒、触媒を製造する方法、および酢酸ビニルを製造する方法に関する。
【0003】
発明の背景
[0003] 特定のアルケニルアルカノエート、例えば酢酸ビニル(VA)は、それらのモノマー形態に関して高い需要がある汎用化学製品である。例えば、VAは、ポリビニルアセテート(PVAc)を作るために使用され、そしてそれは接着剤に一般的に使用されており、VAの用途の大きな割合を占めている。VAの他の用途としては、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、酢酸ビニルエチレン(VAE)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリビニルホルマール(PVF)および塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマーが挙げられる。PVOHは、典型的には、織物、フィルム、接着剤および感光性コーティングに使用される。フィルムおよびワイヤおよびケーブル絶縁材は、しばしば若干の割合でEVAを使用している。塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマーの主用途としては、コーティング、ペイント、および接着剤が挙げられ、若干の割合で、VAを有するVAEをしばしば使用している。
50パーセント超でVAを含むVAEは、主として、セメント添加剤、ペイントおよび接着剤として使用されている。PVBは、主に、積層スクリーン、コーティングおよびインクなどにおける下層用に使用されている。EVOHは、バリヤーフィルムおよびエンジニアリングポリマーに使用される。PVFは、ワイヤエナメルおよび磁気テープに使用される。
[0004] VAは非常に多くの商業的に重要な材料および製品のための基材であるので、VAに関する需要は大きく、VAの生産は、しばしば、比較的大規模で、例えば1年あたり50,000メートルトン以上の規模で行われている。このような大規模生産は、重要な規模の経済が可能であること、また、プロセス、プロセス条件または触媒特性における比較的微妙な変化がVAの生産コストに重要な経済的影響を及ぼし得ることを意味している。
[0005] アルケニルアルカノエートの製造に関しては多くの技術が報告されてきた。例えば、VAを製造する場合、広範に使用されている技術としては、以下の反応:
【0004】
【化1】

【0005】
において認められるようなエチレンと酢酸および酸素との接触気相反応が挙げられる。
例えばCOの形成を含むいくつかの副反応が起こる場合がある。この反応の結果は、反応系の空時収量(STY)に関して検討される。その場合、STYとは、反応時間1時間あたり且つ触媒1リットルあたりに製造されるVAのグラム数である(g/l*h)。
[0006] 出発原料供給の組成は、広い範囲で変えることができる。典型的には、出発原料供給は、30〜70%のエチレン、10〜30%の酢酸および4〜16%の酸素を含む。また、出発原料供給は、不活性材料、例えばCO、窒素、メタン、エタン、プロパン、アルゴンおよび/またはヘリウムも含むことができる。供給組成物に関しては、反応器から出てくる流出物流における酸素レベルが、着火領域外にあるように充分に低いレベルでなければならないという第一の制限がある。流出物における酸素レベルは、出発原料流における酸素レベル、反応のO転化速度、流出物における任意の不活性材料の量によって影響を受ける。
[0007] 固定床反応器の上または中を出発原料の供給が通過する気相反応が行われてきた。好成績は、125℃〜200℃の反応温度および典型的には1〜15atmの反応圧力を使用することによって得られた。
[0008] これらの系は充分な収率を提供してきたが、副産物の減少、より高いVA製造速度、および製造中のエネルギー使用率の低減に関するニーズが絶えずある。一つの方法は、触媒特性、特に触媒のCO選択性および/または活性を向上させる方法である。別の方法は、反応条件、例えば各出発原料の割合、反応のO転化率、出発原料供給の空間速度(SV))および運転温度と運転圧力を改良する方法である。
[0009] COの形成は、改良触媒の使用によって低減できる一つの面である。
CO選択率とは、COへと転化されるエチレンの百分率である。CO選択率を低減させることによって、あらゆる他の反応条件を変えなくても、既存のプラントにおいて単位体積および単位時間あたりより大量のVAの製造が可能になる。
[0010] 酢酸エチル(EA)の形成は、改良触媒の使用によって低減できる別の面である。EA選択率は、通常は、EA/VA wt/wt比としてppmで表される。EA選択率を低下させると、VAの製造後精製を減らすかまたは省くことができるようになる。触媒のEA選択率を低下させると、EAの除去と関連のある処理工程を省くことができると考えられ、コスト削減につながる。触媒のCO選択率またはその活性を犠牲にすることなく、典型的な割合約700ppmを下回る、好ましくは約200ppmを下回るEA/VA比を達成することが望ましいと考えられる。
[0011] EA製造量を減らす試みは、米国特許第5,185,308号に記載されているように、触媒における金のパラジウムに対する割合を高めることを含んでいた。
前記特許は、金のパラジウムに対する割合が充分に高いとEA/VA比が最終的にはゼロとなることを指摘しているが、実験的試験では、この結果は再現されなかった。更に、金のパラジウムに対する割合を大きくすると、CO選択率が損なわれる。結果として、別の方法が必要である。
[0012] 特定の反応系のVA製造量は、触媒、各出発原料の割合、反応のO転化率、出発原料供給の空間速度(SV)、および運転温度と運転圧力を含むいくつかの他の因子による影響を受ける。全てのこれらの因子が作用し合って反応系の空時収量(STY)が決定される。その場合、STYは、触媒1リットルあたり且つ反応時間1時間あたりに製造されるVAのグラム数、すなわちg/l*hに関して検討される。
[0013] 一般的に、活性は、STYを決定する場合に重要な因子であるが、他の因子もSTYに関して有意な影響を及ぼす場合がある。典型的には、触媒の活性が高くなると、触媒がもたらすことができるSTYも高くなる。
[0014] O転化率は、触媒の存在下でどのくらいの酸素が反応するかを示す尺度である。O転化率は、温度依存性であり、転化率は一般的に反応温度と共に上昇する。
しかしながら、CO選択率も、温度上昇と共に増加する。而して、O転化率は、生成されるCO量に対してバランスをとった所望のVA製造量を与えるように選択する。より高い活性を有する触媒とは、同じO転化率を維持しつつ、全体の反応温度を低下させることができる触媒を意味している。または、より高い活性を有する触媒は、所定の温度および空間速度において、より高いO転化率を与える。
[0015] 比較的不活性な担持材上に担持された1種以上の触媒成分を触媒が使用することは一般的である。VA触媒の場合、触媒成分は、典型的には、担持材全体に均一に(「オールスルーアウト触媒(all through−out catalyst)」)、担持材の表面のみに(「シェル触媒」)、担持材のシェルよりも下のみに(「卵白触媒(egg white catalyst)」)、または担持材の核に(「卵黄触媒(egg yolk catalyst)」)分配できる金属の混合物である。好ましいタイプの金属分配は、反応器システムおよび触媒の大きさ/形状を含む多くのファクターに左右される。
[0016] VA触媒で使用するために、シリカ、セリウムでドープされたシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアおよび酸化物混合物を含む多数の異なるタイプの担持材が提案されてきた。しかしながら、担持材間の違いに関する調査は殆ど行われてこなかった。殆どの場合、シリカおよびアルミナのみが、実際に担持材として商品化されてきた。
[0017] VA触媒用金属の一つの有用な組み合わせは、パラジウムと金である。Pd/Au触媒は、充分なCO選択率および活性を提供するが、VAの製造において可能な規模の経済を付与する改良触媒に関するニーズが常にある。
[0018] 典型的には、Pd/Au触媒を製造するための一つの方法は、担体にパラジウムおよび金の水溶性塩の水溶液を含浸させる工程;含浸させた水溶性塩を、適当なアルカリ化合物、例えば水酸化ナトリウムと反応させて、水不溶性化合物として、例えば水酸化物として金属元素を沈殿させる(しばしば固定と称する)工程;固定された担持材を洗浄して固定されていない化合物を除去し、また、任意の潜在的な毒の触媒、例えば塩化物を浄化する工程;水不溶性化合物を、典型的な還元剤、例えば水素、エチレンまたはヒドラジンで還元する工程、およびアルカリ金属化合物、例えば酢酸カリウムまたは酢酸ナトリウムを加える工程を含む。
[0019] この基礎的な方法に関して様々な改良が提案されてきた。例えば、米国特許第5,990,344号では、パラジウムの焼結を、その遊離金属形態を還元した後に行うことを提案している。米国特許第6,022,823号では、パラジウム塩および金塩両方の含浸後に、非還元雰囲気下で担体を焼成することは有利であり得ることを示唆している。W094/21374では、還元および活性化の後、しかし、その最初の使用前に、触媒は、酸化雰囲気、不活性雰囲気、および還元雰囲気の下で連続加熱することによって前処理できることを示唆している。
[0020] 米国特許第5,466,652号は、ヒドロキシル、ハロゲン化物およびバリウムを含んでおらず且つ酢酸中で可溶性であるパラジウムおよび金の塩は、担持材を含浸するのに有用であり得ることを示唆している。類似の示唆は、米国特許第4,902,823号でもなされている。すなわち、2〜10個の炭素を有する非置換カルボン酸中に可溶性であるパラジウムのハロゲン化物と硫黄とを含有していない塩および錯体の使用が提案されている。
[0021] 米国特許第6,486,370号は、内層担持材が外層担持材と異なっている層状触媒を脱水素化法で使用できることを示唆した。同様に、米国特許第5,935,889号は、層状触媒が酸触媒として有用であり得ることを示唆している。しかしながら、どちらも、アルケニルアルカノエートを製造する場合に層状触媒を使用することを提案していない。米国特許公報第2005/0181940号では、酢酸ビニル用の層状触媒は記載されているが、改質担持材は記載されていない。
[0022] 米国特許第5,808,136号は、チタンまたはジルコニウムを使用して、シリカまたはアルミナ担持材を前処理して、触媒の活性および/またはCO選択率を向上させ得ることを示唆した。
[0023] 以上のことを考慮して、本発明者は、より低コストで改良されたVA製造を提供するVA触媒分野での継続的な改良に関するニーズを認め対処した。
【0006】
発明の概要
[0024] 本発明は、アルケニルアルカノエートの製造に役立つ適当な触媒またはプレ触媒を製造する方法に関する。本発明の方法は、改質剤前駆体を担持材に接触させて、改質担持材を作ることを含む。1種以上の触媒成分前駆体(パラジウムおよび/または金)を改質担持材に接触させてもよい。金のパラジウムに対する原子比は、好ましくは約0.3:1〜約0.90:1である。次いで、触媒成分を有する担持材を、還元環境を使用して還元且つ/または例えばKOAcのような活性化剤を使用して活性化させてもよい。
パラジウムおよび金と一緒に改質担持材を含む、アルケニルアルカノエートの製造を触媒するための組成物も本発明の範囲内に包含される。本発明の触媒は、一般的にはアルケニルアルカノエート、特に酢酸ビニルを製造するために使用できる。
【0007】
詳細な説明
[0025] 触媒
[0026] 本発明の目的のために、触媒は、少なくとも1つの触媒成分を含んでいて且つ反応を触媒できる任意の担持材であり、一方、プレ触媒は、本明細書で検討される触媒製造工程のいずれかから得られる任意の材料である。
[0027] 本発明の触媒およびプレ触媒は、改質担持材を有するものを含むことができる。而して、触媒を効果的に使用すると、特にVA製造に関して、CO選択率および活性またはその両方を維持または向上させながらEA選択率を向上させるのに役立つ。更に、CO選択率を維持または向上させつつEA選択率を向上させるという組み合わせは、たとえ活性が悪影響を受けるとしても、望ましいと考えられる。
[0028] 本発明は、特定の実施態様の文脈で説明されるが、特定の用途のニーズにしたがう多くの面のいずれかにおいて変更できることを了解すべきである。例えば、限定するものではないが、触媒は、担持材の全体にわたって均一に分配された触媒成分を有することができるか、または、触媒成分が担持材コアの周囲の比較的薄いシェルにおいて見出されるシェル触媒であることができる。触媒成分が担持材の中心から実質的に離れて存在する卵白触媒も適し得る。卵黄触媒も適する場合がある。好ましいタイプの金属分配は、反応器システムおよび触媒の大きさ/形状、そしてシェル触媒および層状触媒を含む多くのファクターに左右される。
[0029] 触媒成分
[0030] 一般的に、本発明の触媒およびプレ触媒は、金属を含み、特に、少なくとも2種の金属の組み合わせを含む。特に、金属の組み合わせは、VIIIB族から少なくとも1種とIB族から少なくとも1種とを含む。「触媒成分」という用語は、触媒に触媒機能を最終的に付与する金属を示すために使用されるが、様々な状態の金属、例えば塩、溶液、ゾルゲル、懸濁液、コロイド懸濁液、遊離金属、合金、またはそれらの組み合わせを含むことが了解される。好ましい触媒は、触媒成分としてパラジウムおよび金を含む。
[0031] 触媒の別の好ましい実施態様は、1リットルあたり約1〜約10グラムのパラジウムおよび好ましくは約1〜約10グラムのパラジウムを含む。
[0032] 触媒に関する一つの実施態様では、AuのPdに対する原子比は、約0.1:1〜約1.25:1であることが触媒には好ましいと考えられる。最も好ましいAu:Pd原子比は0.3:1〜0.9:1である。原子比は、EA/VA選択率とCO選択率とのバランスをとるように調整できる。より高いAu/Pd重量比または原子比を使用すると、比較的より低いEA/VA比でより高いCO選択率が有利に得られる傾向がある。
[0033] 一つの実施態様では、触媒組成物をふるい分けするために粉砕触媒または粉末触媒を使用する。粉砕触媒は、触媒成分を担持材に接触させ、次いで(例えば粉砕またはボールミル粉砕によって)粒径を小さくした触媒であるか、または、担持材の大きさを小さくした後に担持材に触媒成分を接触させる触媒であることができる。一つの実施態様では、粉砕触媒または粉末触媒を使用してシェル触媒をシミュレートする。シミュレートされたシェル触媒では、以下で検討しているように、比較的高濃度の改質剤および/または触媒成分を有する担持材のアリコートを、実質的に改質剤および/または触媒成分を有していない担持材で希釈するが、活性化剤(例えば酢酸カリウム)で活性化させた。
そのとき、希釈された担持材は、好ましい量の改質剤および/または触媒中触媒成分を有する。
[0034] シェル触媒では、担持材上の触媒成分のシェル厚は、約5μm〜約500μmである。更に好ましい範囲としては約5μm〜約300μmが挙げられる。
[0035] 担持材
[0036] 本発明の一つの面では、本発明の触媒成分は、一般的に、担持材によって運ばれる。適当な担持材は、典型的には、素性が実質的に均一な材料または材料の混合物を含む。概して、担持材は、実行される反応において典型的には不活性である。担持材は、好ましくは担持材が単位質量または単位体積あたり比較的大きな表面積を有するように選択される任意の適当な物質、例えば多孔質構造、モレキュラーシーブ構造、ハニカム構造、または他の適当な構造から成ることができる。例えば、担持材は、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、チタニア、チタノ・シリケート、ジルコニア、ジルコノ・シリケート、ニオビア、シリケート、アルミノシリケート、チタネート、スピネル、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭素、コージライト、ステアタイト、ベントナイト、クレー、金属、ガラス、石英、軽石、ゼオライト、非ゼオライト系モレキュラーシーブ、およびそれらの組み合わせなどを含むことができる。その材料の異なる結晶形のうちのいずれか、例えばα−またはγ−アルミナも適し得る。担持材を含むジルコニア、ジルコノ・シリケートおよびチタノ・シリケートが最も好ましい。更に、多層担持材も、本発明での使用に適する。
[0037] 本発明の触媒における担持材は、様々な規則的または不規則な形状、例えば球体、錠剤、円筒、ディスク、リング、星形、または他の形状のうちのいずれかを有する粒子から成ることができる。担持材は、約1〜約10mm、好ましくは約3〜約9mmの寸法、例えば直径、長さまたは幅を有することができる。特に規則的な形状(例えば球形)は、約4mm〜約8mmのその好適な最大寸法を有する。更に、担持材が、約10ミクロン〜約1000ミクロン、好ましくは約10〜約700ミクロン、最も好ましくは約180ミクロン〜約450ミクロンの直径を有する規則的または不規則な形状を有するような粉砕触媒または粉末触媒も好適であり得る。より大きいまたはより小さいサイズ、ならびに粒径の多分散系集合(polydisperse collection)を使用してもよい。例えば、流動床触媒のためには、好ましい大きさとして10〜150ミクロンが挙げられる。層状触媒で使用される前駆体のためには、10〜250ミクロンの粒度範囲が好ましい。
[0038] BET(Brunauer、EmmettおよびTeller)法で測定した場合に、触媒成分を担持するのに利用可能な表面積は、一般的に約1m/g〜約500m/g、好ましくは約20m/g〜約200m/gであることができる。
例えば、多孔質担体のために、担持材の細孔容積は、一般的に約0.1〜約2ml/g、そして好ましくは約0.4〜約1.2ml/gであることができる。例えば約50〜約2000オングストロームの範囲における平均気孔サイズが望ましいが、必須ではない。
[0039] 適当なシリカ含有担持材としては、例えば、Sud Chemieから市販されているKA160、Degussaから市販されているAerolyst350および約1mm〜約10mmの粒径を有する他の熱分解法シリカまたは微多孔質無含有シリカが挙げられる。
[0040] 適当なジルコニア含有担持材としては、例えば、NorPro、Zirconia Sales(America)Inc.、Daichi Kigenso Kagaku Kogyo、EngelhardおよびMagnesium Elektron Inc.(MEI)から市販されているものが挙げられる。適当なジルコニア担持材は、約5m/g未満から300m/gを超えるまでの広範な表面積を有する。好ましいジルコニア担持材は、約20m/g〜約150m/gの表面積を有し、より好ましくは約30m/g〜約100m/gである。担持材は、未使用の担持材を加熱する焼成工程によって処理された表面を有することができる。加熱によって、担持材の表面積が減少する(例えば焼成)。これによって、供給元から容易には入手できない特定の表面積を有する担持材を作製する方法が提供される。
[0041] 他の適当な担持材の例としては、Graceから市販されているチタノ・シリケート、例えばSP18−9534(0.61%のTiOを有するシリカ)、またはGraceから市販されているジルコノ・シリケート、例えばSP189043(1.69%のZrOを有するシリカ)が挙げられる。更に一般的には、適当な担持材は、TiOを約50%以下;好ましくは約0.01%〜約25%;そして最も好ましくは約0.1〜約5%含むことができる。また、適当な担持材は、ZrOを約50%以下;より好ましくは約0.01%〜約25%;そして最も好ましくは約0.1〜約5%含むことができる。
[0042] 別の実施態様では、それぞれが異なる特徴を有する担持材の少なくとも複数の組み合わせを使用することが企図される。例えば、異なる特徴を有する少なくとも2種の担持材(例えばジルコニアおよびシリカ)は、異なる活性およびCO選択性を示すことができ、而して、特徴の所望の一組を有する触媒を製造することが可能になる。すなわち、触媒の活性と触媒のCO選択性とのバランスをとることができる。
[0043] 層状担持材
[0044] 一つの実施態様では、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許公報第2005/0181940号で検討されているように、複数の異なる担体を、層状構成で使用する。層化(layering)は、多くの異なるアプローチのいずれか、例えば、一般的に、平坦であるか、波状であるか、またはそれらの組み合わせである複数のラメラで達成できる。一つの特定の方法は、最初のコア層に関して被覆層を順々に施用する方法である。一般的に、本明細書では、層状担持材は、典型的には、少なくとも、内層と、内層を少なくとも部分的に取り囲んでいる外層とを含む。層状触媒の全ての層は、以下で検討しているように改質することができ、少なくとも外層は好ましく改質される。外層は、好ましくは、内層に比べて、実質的により多くの触媒成分を含む。一つの実施態様では、内層および外層は異なる材料で作られているが;その材料は同じであってもよい。内層は非多孔性であってもよいが、他の実施態様は多孔質である内層を含む。
[0045] 層状担持材は、好ましくは、結果的にシェル触媒の形態となる。しかしながら、層状担持材は、触媒成分を有する担持材の領域と、そうでない領域との間に明確な境界線を提供する。また、外層は、一貫して所望の厚さで作ることができる。境界線と、外層の均一な厚さとが一緒になって、均一で公知の厚さの触媒成分から成るシェルであるシェル触媒となる。
[0046] 層状担持材を作るための公知のいくつかの技術としては、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第6,486,370号;第5,935,889号;および第5,200,382号に記載されている技術が挙げられる。一つの実施態様では、内層の材料も、液体によって、例えばアルミニウム、チタンおよびジルコニウムを含むがそれらに限定されない金属によって実質的に浸入されない。内層用の他の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、チタニア、チタノ・シリケート、ジルコニア、ジルコノ・シリケート、ニオビア、シリケート、アルミノシリケート、チタネート、スピネル、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭素、コージライト、ステアタイト、ベントナイト、クレー、金属、ガラス、石英、軽石、ゼオライト、非ゼオライト系モレキュラーシーブ、およびそれらの組み合わせなどが挙げられるが、それらに限定されない。好ましい内層は、シリカであり、詳しくはKA160である。
[0047] 内層を構成するこれらの材料は、様々な形態、例えば規則的に造形された微粒子、不規則に造形された微粒子、ペレット、ディスク、リング、星形、貨車の車輪(wagon wheel)、ハニカムまたは他の造形体であることができる。好ましくは、球状微粒子内層である。内層は、球状であるか否かにかかわらず、約0.02mm〜約10.0mm、好ましくは約0.04mm〜約8.0mmの有効径を有する。
[0048] 任意の多重層構造の最外層は、多孔質であって且つ約5m/g〜約300m/gの表面積を有する。外層の材料は、金属、セラミック、またはそれらの組み合わせであり、そして一つの実施態様では、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリケート、アルミノシリケート、チタネート、スピネル、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭素、コージライト、ステアタイト、ベントナイト、クレー、金属、ガラス、石英、軽石、ゼオライト、非ゼオライト系モレキュラーシーブおよびそれらの組み合わせから選択され、好ましくは、アルミナ、シリカ、シリカ/アルミナ、ゼオライト、非ゼオライト系モレキュラーシーブ(NZMS)、チタニア、ジルコニアおよびそれらの組み合わせが挙げられる。特定の例としては、ジルコニア、シリカおよびアルミナまたはそれらの組み合わせが挙げられる。
[0049] 外層は、典型的には、内層全体を実質的に取り囲むが、それは必ずしも必須ではなく、外層による内層上の選択的なコーティングを使用してもよい。
[0050] 外層は、適当な方法で下地層の上に塗布できる。一つの実施態様では、外層材料のスラリーを使用する。スラリーによる内層のコーティングは、例えばロール塗り、浸し塗り、吹き付け塗り、ウオッシュコーティング、他のスラリーコーティングの技術、またはそれらの組み合わせなどの方法によって達成できる。一つの好ましい技術は、内層粒子の固定床または流動床を使用すること、およびその床中にスラリーを吹き付けて粒子を均一にコートすることを含む。スラリーは、少量を塗布して乾燥させ、それを繰り返して、厚さが高度に均一な外層を提供できる。
[0051] 内層をコートするために使用されるスラリーは、多くの添加剤、例えば界面活性剤、下地層に対する外層の接着を助ける有機または無機の結合剤、またはそれらの組み合わせのいずれかを含むことができる。この有機結合剤としては、例えば、PVA、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースが挙げられるが、それらに限定されない。スラリーに加えられる有機結合剤の量は、例えば、外層と結合剤との総重量を基準として約1重量%〜約15重量%の範囲で変えることができる。無機結合剤は、例えば、アルミナ結合剤(例えばBohmite)、シリカ結合剤(例えばLudox、Teos)、ジルコニア結合剤(例えばジルコニアアセテートまたはコロイド状ジルコニア)またはそれらの組み合わせから選択する。シリカ結合剤としては、例えばシリカゾルおよびシリカゲルが挙げられ、アルミナ結合剤としては、例えばアルミナゾル、ベントナイト、Bohmite、および硝酸アルミニウムが挙げられる。
無機結合剤の量は、外層と結合剤との総重量を基準として約2重量%〜約15重量%の範囲で変えることができる。外層の厚さは、約5ミクロン〜約500ミクロン、好ましくは約20ミクロン〜約250ミクロンであることができる。
[0052] 内層を外層でコートしたら、得られた層状担体を、約100℃〜約320℃の温度で(例えば約1〜約24時間)加熱することによって乾燥させ、そして次に、約300℃〜約900℃の温度で(例えば約0.5〜約10時間)任意に焼成して、下地層の少なくとも一部分にわたって下地層に対する外層の結合を増強して、層状触媒担体を提供できる。乾燥工程および焼成工程を組み合わせて一工程とすることができる。得られた層状担持材は、後述のように、触媒製造における任意の他の担持材と同様に、触媒成分と接触させることができる。別法として、外層担持材を下地層の上にコートする前に、外層担持材を触媒成分と接触させる。
[0053] 層状担体の別の実施態様では、第二の外層を加えて初期外層を取り囲み、少なくとも3つの層を作る。第二外層のための材料は、第一外層と同じかまたは異なっていてもよい。適当な材料としては、第一外層に関して検討されたものが挙げられる。第二外層を施用する方法は、中間層を施用するために使用された方法と同じかまたは異なっていてもよく、適当な方法としては、第一外層に関して検討された方法が挙げられる。既に述べた有機または無機の結合剤は、第二外層の形成において適当に使用できる。
[0054] 初期外層は、触媒成分を含んでいてもまたは含んでいなくてもよい。同様に、第二外層は、触媒成分を含んでいてもまたは含んでいなくてもよい。両方の外層が触媒成分を含む場合、好ましくは異なる触媒成分が各層で使用されるが、それは必須ではない。一つの好ましい実施態様では、初期外層は触媒成分を含まない。後述するように、外層に対する触媒成分の接触は、含浸またはスプレーコーティングによって達成できる。
[0055] 初期外層が触媒成分を含む実施態様では、これを達成する一つの方法は、初期外層の材料を内層に施用する前に、触媒成分を初期外層の材料に接触させる方法である。第二外層は、触媒成分を含んでいないかまたは含んでいる初期外層に施用できる。
[0056] 他の適当な技術を使用して、外層のうちの1つ以上が触媒成分を含む3つの層状担持材を得ることができる。実際に、層状担持材は、3つの層に限定されないが、4層、5層またはそれ以上の層を含むことができ、そのいくつかまたは全ては触媒成分を含むことができる。
[0057] 更に、触媒成分の数およびタイプは層状担持材の層間で異なっていてもよく、また、担持材の他の特徴(例えば多孔性、粒径、表面積、細孔容積など)も層間で異なっていてもよい。
[0058] 改質担持材
[0059] 別の実施態様では、担持材は、改質担持材であってもよい。改質担持材は、改質剤を含む担持材である。改質剤は、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属およびランタノイドから選択される金属である。更に好ましくは、改質剤は、1族〜6族元素から選択される。それらの元素の中では、バリウム、マグネシウム、セリウム、カリウム、カルシウム、ニオブ、タンタル、チタン、イットリウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ランタン、プラセオジム、バナジウム、モリブデンおよびルビジウムがより好ましい。ニオブ、チタン、マグネシウムおよびジルコニウムは、好ましい改質剤であり、ジルコニウムはいささか劣る。これらの元素の組み合わせ、例えば2種の組み合わせ、好ましいタイプの組み合わせも適する。例えば、適当な2種の組み合わせとしては、Ti−Zr、Mg−Nb、Nb−Zr、Mg−Ti、Nb−Ti、Mg−Zrなどが挙げられる。2種の組み合わせにおける金属比は、約4:1〜約1:4である。
[0060] 担持材は、典型的には、触媒成分を担持材に加える前に、改質される。一つの好ましい実施形態では、担持材を、改質剤の1種以上の水溶液(改質剤前駆体溶液と称する)で含浸する。接触工程中の担持材の物理的状態は、乾燥固体、スラリー、ゾル・ゲル、コロイド懸濁系などであることができる。
[0061] 一つの実施態様では、前駆体溶液中に含まれる改質剤は、塩化物、他のハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、水酸化物、酸化物、シュウ酸塩、乳酸塩、酢酸塩(OAc)、アンモニウムおよびアミン(それらに限定されない)を含む改質剤から作られた水溶性塩であり、好ましくは塩化物を含有していない塩であり、最も好ましくは乳酸塩、シュウ酸塩および硝酸塩である。改質剤前駆体溶液で使用するのに適する改質剤塩としては、例えば、Ba(NO、Mg(NO・6HO、Ce(NO・6HO、KNO、Ca(NO・4HO、(NH1.35Nb(C2.73、Ta(C2.5、Ti(CHCH(O)CONH(OH)、Y(NO・6HO、ZrO(NO・xHOが挙げられる。
[0062] 更に、所定の改質剤前駆体溶液では複数の塩を使用してもよい。前駆体溶液は、典型的には、溶解度調節剤、例えば酸、塩基または他の溶媒を使用してまたは使用せずに、選択した塩(1種または複数種)を溶かすことによって作ることができる。他の非水溶媒も適する場合がある。
[0063] 改質剤前駆体溶液は、一回の含浸で担持材上へ含浸させるが、低い原子量(例えばMg)または水中での限定された溶解度(例えばNbまたはBa)を有する改質剤は複数回含浸させてもよい。複数種の改質剤を使用する場合、含浸は同時に(例えば共含浸)または順々に行うことができ、また、担持材は、1つまたは複数の前駆体溶液を使用することによって含浸させることができる。好適には、担持材に含浸される改質剤の量は、担持材の約0.01重量%〜約5.0重量%であり、好ましくは約0.1重量%〜約4.0重量%である。
[0064] 含浸工程のためには、前駆体溶液の体積は、担持材の細孔容積の約110%以下に相当するように選択できる。前駆体溶液の体積は、担持材の細孔容積の約95%〜約100%が好ましい。
[0065] 典型的には、改質剤前駆体溶液は担持材に加えられ、そして担持材は前駆体溶液を吸収することができる。これは、担持材の初期湿潤が実質的に達成されるまで、滴下して行うことができる。あるいは、担持材は、前駆体溶液中にアリコートでまたは回分式で配置できる。回転浸漬または他の補助的装置を使用して、担持材と前駆体溶液との間の完全な接触を達成できる。更に、担持材(前駆体溶液が吸収される)上にノズルから前駆体溶液が吹き付けられるように、スプレー装置を使用できる。固定工程は、担持材上に改質剤を固定するために典型的には使用されないが、常に使用されないわけではない。
[0066] 改質剤は、担持材全体に分配することができ、シェルとして、そして卵白として、または卵黄として分配できる。他の接触技術を使用してもよい。例えば、改質剤は、参照によりその内容を本明細書に引用したものとするUS2001/0048970に記載されている化学蒸着法によって担持材に接触させてもよい。また、内層の上に外層として均質に予備含浸された担持材をスプレーコーティングするかまたは層化させることも好適であり得る。
[0067] 改質剤前駆体溶液が担持材と接触した後、担持材によって吸収されなかったあらゆる過剰な液体を除去するために、または、担持材を乾燥させるために、デカンティング、加熱または減圧を使用できる。
[0068] 少なくとも1種の改質剤を担持材に接触させた後、焼成工程を使用できる。焼成工程は、典型的には、触媒成分を改質担持材に接触させる前に行う。焼成工程は、非還元雰囲気(すなわち酸化または不活性な雰囲気)下で担持材を加熱することを含む。
焼成中、担持材上の改質剤は、それらの塩から、それらの酸化物と遊離金属形態との混合物へと、少なくとも部分的に分解される。
[0069] 例えば、焼成工程は、約100℃〜約900℃、好ましくは約300℃〜約700℃の温度で行う。焼成用に使用される非還元ガスとしては、1種以上の不活性ガスまたは酸化性ガス、例えばヘリウム、窒素、アルゴン、ネオン、窒素酸化物、酸素、空気、二酸化炭素またはそれらの組み合わせなどが挙げられる。一つの実施態様では、焼成工程は、実質的に純粋な窒素、酸素、空気またはそれらを組み合わせた雰囲気下で行う。
焼成時間は、変えることができるが、好ましくは約1〜5時間である。改質剤塩(modifier salt)の分解度は、使用される温度および改質担持材が焼成される時間の長さに依存し、そして揮発分解生成物をモニターすることによって追跡できる。
[0070] 触媒の製造法
[0071] 一般的に、本方法は、改質担持材を触媒成分と接触させる工程、およびその触媒成分を還元する工程を含む。本発明の好ましい方法は、触媒成分を担持材中に含浸させる工程、触媒成分含有担持材を焼成する工程、触媒成分を還元する工程、および担持材上の還元された触媒成分を活性化させる工程を含む。追加の工程、例えば触媒成分を担持材上に固定する工程およびその固定された触媒成分を洗浄する工程も、触媒またはプレ触媒を製造する方法に含むことができる。上記工程のうちのいくつかは、任意であり、そして他の工程(例えば洗浄工程/固定工程)は省略する場合もある。更に、いくつかの工程(例えば複数の含浸工程または固定工程)は繰り返すことができ、また、工程の順序は、上記とは異なっていてもよい(例えば、還元工程を焼成工程の前に行う)。触媒を形成するには後にどのような工程が必要であるかは接触工程によってある程度まで決まる。
[0072] 接触工程
[0073] 接触に関する一つの特定の方法は、卵黄触媒またはプレ触媒が形成される方法、卵白触媒またはプレ触媒が形成される方法、オールスルーアウトの触媒またはプレ触媒が形成される方法、シェル触媒またはプレ触媒が形成される方法、またはそれらの組み合わせによる方法である。一つの実施態様では、シェル触媒を形成する技術が好ましい。
[0074] 接触工程は、上記の改質担持材のいずれかを使用して行うことができ、最も好ましくは、ジルコニアを含む担持材上ニオブ、チタンおよびマグネシウム改質剤である。接触工程は、周囲温度および周囲圧力の条件下で行うが;周囲温度および周囲圧力よりも低いまたは高い温度または圧力を使用してもよい。
[0075] 一つの好ましい接触工程では、改質担持材には、1種以上の触媒成分水溶液(触媒前駆体溶液と称する)を含浸させる。接触工程中の担持材の物理的状態は、乾燥固体、スラリー、ゾル・ゲル、コロイド懸濁系などであることができる。
[0076] 一つの実施態様では、前駆体溶液中に含まれる触媒成分は、塩化物、他のハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、水酸化物、酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩(OAc)、およびアミン(それらに限定されない)を含む触媒成分から作られた水溶性塩であり、好ましくはハロゲン化物を含んでいない塩であり、更に好ましくは塩化物を含有していない塩である。前駆体溶液中で使用するのに適するパラジウム塩としては、例えば、PdCl、NaPdCl、Pd(NH(NO、Pd(NH(OH)、Pd(NH(NO、Pd(NO、Pd(NH(OAc)、Pd(NH(OAc)、KOHおよび/またはNMeOHおよび/またはNaOH中Pd(OAc)、Pd(NH(HCOおよびシュウ酸パラジウムが挙げられる。塩化物含有パラジウム前駆体の中では、最も好ましくはNaPdClである。塩化物を含有していないパラジウム前駆体塩の中では、最も好ましくは、次の4つ:すなわち、Pd(NH(NO、Pd(NO、Pd(NH(NO、Pd(NH(OH)である。前駆体溶液での使用に適する金塩としては、例えば、AuCl、HAuCl、NaAuCl、KAuO、NaAuO、NMeAuO、KOHおよび/またはNMeOH中Au(OAc)ならびに硝酸中HAu(NOが挙げられ、その塩化物を含有していない金前駆体の中で最も好ましいのはKAuOである。
[0077] 更に、所定の前駆体溶液では複数の塩を使用してもよい。例えば、パラジウム塩は、金塩と組み合わせることができ、または2種の異なるパラジウム塩を、単一の前駆体溶液中で一緒に組み合わせることができる。前駆体溶液は、典型的には、溶解調節剤、例えば酸、塩基または他の溶媒を使用してまたは使用せずに、水中に選択した塩(1種または複数種)を溶解させることによって作ることができる。他の非水溶媒も適し得る。
[0078] 前駆体溶液は、同時に(例えば共含浸)または順々に担持材上に含浸させることができ、また、1種もしくは多種の前駆体溶液を使用することによって含浸させることができる。更に、触媒成分を、多数の工程で担持材上に含浸させることができ、その工程ごとに、触媒成分の一部を接触させる。例えば、1つの適当なプロトコルは、Pdを含浸させ、次いで、Auを含浸させ、更に続いてAuを含浸させる工程を含むことができる。別のプロトコルでは、PdおよびAuを、好ましくは共含浸させる。
[0079] 改質担持材に触媒前駆体溶液を含浸させる順序は重要ではないが;焼成工程に関して以下で検討しているように、特定の順序にはいくつかの利点が認められる場合がある。好ましくは、パラジウム触媒成分を、まず最初に担持材上へ含浸させ、パラジウムの後または最後に、金を含浸させる。また、担持材には、複数回、同じ触媒成分を含浸させることができる。例えば、触媒に含まれる金の総量の一部を最初に接触させることができ、次いで、前記金の第二の部分を接触させることができる。もう一つの他の工程、例えば焼成、還元および/または固定の工程を、金を担持材に接触させる工程の間にはさんでもよい。
[0080] 前駆体溶液の酸塩基プロフィールは、共含浸を利用するかまたは連続含浸を利用するかに関して影響を与える場合がある。而して、共含浸工程では、同様な酸塩基プロフィールを有する前駆体溶液のみを一緒に使用すべきであり;それによって、前駆体溶液を汚染する可能性がある任意の酸塩基反応が排除される。
[0081] 含浸工程のために、前駆体溶液の体積は、担持材の細孔容積の約85%〜約110%に相当するように選択する。前駆体溶液の体積は、担持材の細孔容積の約95%〜約100%が好ましい。更に、以下で検討している一工程の固定および改質では、改質剤前駆体溶液は、細孔容積に比べてより低いパーセンテージであってもよい。例えば、細孔容積の50%未満、25%未満または10%未満であってもよい。
[0082] 典型的には、前駆体溶液は担持材に加えられ、そして担持材は前駆体溶液を吸収することができる。これは、担持材の初期湿潤が実質的に達成されるまで、滴下して行うことができる。あるいは、担持材は、前駆体溶液中にアリコートでまたは回分式で配置できる。回転浸漬または他の補助的装置を使用して、担持材と前駆体溶液との間の完全な接触を達成できる。更に、担持材上にノズルから前駆体溶液が吹き付けられ、そして前駆体溶液が吸収されるように、スプレー装置を使用できる。任意には、担持材によって吸収されなかったあらゆる過剰な液体を除去するために、または、含浸後に担持材を乾燥させるために、デカンティング、加熱または減圧を使用できる。
[0083] 他の接触技術を使用して、固定工程を回避できるが、それでもなおシェル触媒が得られる。例えば、触媒成分は、参照によりその内容を本明細書に引用したものとするUS2001/0048970に記載されている化学蒸着法によって担持材に接触させることができる。また、均一に予備含浸された担持材を、内層の上に外層としてスプレーコーティングするかまたは層化させることによっても、層状担持材として記述することもできるシェル触媒が効果的に形成される。別の技術では、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第5,700,753号に記載されているように、触媒成分の有機金属前駆体、特に金の有機金属前駆体を使用して、シェル触媒を形成できる。
[0084] 物理的なシェル形成技術も、シェル触媒の製造に適し得る。その場合、前駆体溶液を、加熱された改質担持材または層状改質担持材の上にスプレーすることができ、その前駆体溶液の溶媒は、その加熱された担持材と接触すると蒸発するので、その担持材上のシェル中に触媒成分が堆積する。好ましくは、約40〜140℃の温度を使用できる。シェルの厚さは、担持材の温度およびスプレーノズルを通る溶液の流量を選択することによって、調節できる。例えば、約100℃を超える温度を使用すると、比較的薄いシェルが形成される。この実施態様は、塩化物を含んでいない前駆体を利用して担持材上でのシェル形成の増強を助けるときに、特に有用であり得る。例えば米国特許公報第20050181940号を参照されたい。
[0085] 当業者は、接触工程の組み合わせが接触担持材を形成する適当な方法であり得ることを了解するであろう。
[0086] 固定工程
[0087] 接触し且つ改質した担持材上の触媒成分の少なくとも一部分を、水溶性形態から水不溶性形態へと変えることは望ましいであろう。この種の工程は固定工程と呼ぶことができる。固定工程は、固定剤(例えば、液体中分散、例えば溶液)を、含浸された担持材に塗布して触媒成分の少なくとも一部分を沈殿させることによって達成できる。この固定工程は、シェル触媒を形成するのに役立つが、シェル触媒の形成に必須な工程ではない。
[0088] 任意の適当な固定剤を使用でき、好ましくは、水溶液中の水酸化物(例えばアルカリ金属水酸化物)、シリケート、ボレート、カルボネートおよびバイカーボネートである。好ましい固定剤はNaOHである。固定は、前駆体溶液を担持材に含浸させる前、含浸させている間または含浸させた後に、固定剤を担持材に加えることによって達成できる。典型的には、接触担持材を固定剤液中に約1〜約24時間浸漬できるように、固定剤は接触工程後に使用する。規定の時間は、前駆体溶液と固定剤との組み合わせに左右される。含浸工程と同様に、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第5,332,710号に記載されている回転浸漬装置のような補助的装置を、固定工程で有利に使用できる。
[0089] 固定工程は、共固定(co−fix)または分離固定(separate fix)と称される一工程または複数の工程で達成できる。共固定では、接触が、1つまたは複数の溶液によって達成されたかどうかに関係なく、すべての関連のある前駆体溶液を担持材に接触させた後に、固定剤の1つ以上の体積を接触担持材に施用する。例えば、パラジウム前駆体溶液および金前駆体溶液による連続含浸後の固定は共固定であろう。
共固定の例は、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第5,314,888号において見出すことができる。
[0090] 一方、分離固定は、前駆体溶液による各含浸の間または後に、固定剤溶液を塗布することを含む。例えば、以下のプロトコルは、分離固定である:すなわち、a)パラジウムを含浸させ、次いで固定し、次いで金を含浸させ、次いで固定する;または
b)パラジウムを共含浸させ、次いで固定し、次いで金を含浸させ、次いで固定する。
固定とそれに続く含浸との間で、あらゆる過剰な液体を除去し、担持材を乾燥させることができるが、常にそのようにするとは限らない。分離固定の例は、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第6,034,030号において見出すことができる。
[0091] 別の実施態様では、固定工程および接触工程は、同時に行われる。その一つの例は、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第4,048,096号に記載されている。例えば、同時固定は:パラジウムの含浸、次いで固定、次いで金および固定剤の含浸であることができる。この実施態様に関するバリエーションでは、固定は、触媒成分に関して二回行うことができる。触媒成分は、担持材に接触すると部分的に固定され(「予備固定と称する)、次いで、追加の最終的な固定が行われる。例えば:パラジウムを含浸させ、次いで金と予備固定剤を含浸させ、次いで最終固定剤で固定する。この技術を使用して、オールスルーアウト触媒とは対照的なシェル型触媒を確実に形成するのに役立てることができる。
[0092] 固定工程と接触工程を同時に行う別の実施態様では、約25〜約95%の細孔容積が充填されるように、固定液を改質担持材中に含浸させる。好ましくは、約70〜約90%の細孔容積を、固定液で充填する。残りの細孔容積は、触媒前駆体溶液で充填する。触媒前駆体の階段的含浸または共含浸を使用してもよい。この固定工程と接触工程を同時に行うと、乾燥剤工程の必要性が回避されるので、プロセスが単純化される。固定液としては、例えば、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属カーボネート、アルカリ金属バイカーボネートまたはそれらの混合物を含む固定液が挙げられる。固定液を緩衝処理して、溶液pHの維持を助けることもできる。
[0093] 塩化物を含んでいない前駆体と一緒に使用するのに特に適する別の実施態様では、改質担持材を固定剤で前処理して改質担持材の特性を調整する。この実施態様では、まず最初に、担持材に、酸性または塩基性の溶液(典型的には金属を含有していない)を含浸させる。乾燥後、その乾燥した担持材に、その担持材とは反対の酸性度/アルカリ度を有する前駆体溶液を含浸させる。続いて起こる酸塩基反応により、触媒成分のシェルが担持材の上に形成される。例えば、硝酸を使用して担持材を前処理することができ、そして次に、Pd(OH)またはAu(OH)のような塩基性前駆体溶液を含浸させる。この形成技術では、固定工程を行い、次いで接触工程を行うと考えることができる。
[0094] 別の実施態様では、シェル触媒の形成を低下させる可能性のある担持材上に存在する潜在的に化学的に反応性のサイトを中和させるために、Pdおよび/またはAuを含浸させる前に改質担体を前処理できる。例えば、基礎担体(例えばジルコニア)をHClで前処理して、選択したサイトを中和し、次いでPdおよびAuを含浸させ、そして塩基で固定できる。
[0095] 溶液中の固定剤濃度は、典型的には、担持材に含浸させた触媒成分の量のモル過剰である。固定剤の量は、水溶性塩中に存在する触媒的に活性なカチオンと反応させるのに必要な量の約1.0〜約3.0倍、好ましくは約1.1〜約2.0倍であるべきである。
[0096] 供給される固定剤溶液の体積は、一般的に、含浸された担持材の利用可能な自由表面を隠蔽するのに充分な量でなければならない。これは、例えば、接触させた担持材の細孔容積に比べて大きい体積を導入することによって達成できる。
[0097] 含浸工程および固定工程の組み合わせは、シェル型触媒を形成できる。しかしながら、ハロゲン化物を含んでいない前駆体溶液を使用すると、任意に固定工程を省いても、シェル触媒を形成できる。塩化物前駆体が存在していない場合には、洗浄工程は、以下で検討しているように、省くことができる。更に、その方法では、洗浄工程を必要とする触媒成分を固定する工程を無くすことができる。洗浄工程は不要なので、触媒成分を固定して洗浄工程を残す必要はない。触媒を製造する方法における次の工程は、固定される触媒成分を要求しないので、工程の残りは、追加の予備工程無しで実施できる。概して、塩化物を含んでいない前駆体を使用すると、洗浄工程の無い触媒またはプレ触媒の製造法が可能になるので、触媒を製造するのに必要とされる工程数が減り、また、塩化物含有廃棄物を処理する必要性が無くなる。
[0098] 洗浄工程
[0099] 特に、ハロゲン化物含有前駆体溶液を利用するとき、および所望の他の用途では、固定工程後に、固定された担持材を洗浄して担体上の任意のハロゲン化物の残留物を除去することができるか、または、担持材上の汚染物質の潜在的な悪影響を排除するために処理することができる。洗浄工程は、水で、好ましくは脱イオン水で固定担持材をすすぐことを含んでいた。洗浄は、回分モードまたは連続モードで行うことができる。室温での洗浄は、流出洗浄水が約1000ppm未満のハロゲン化物イオン含量を有するまで、そして更に好ましくは、最終的な流出物が硝酸銀試験に対して陰性結果を与えるまで続けるべきである。洗浄工程は、以下で検討する還元工程の後にまたは還元工程と同時に行ってもよいが、好ましくは、その前に行う。上記したように、ハロゲン化物を含んでいない前駆体溶液を使用すると、洗浄工程を除くことが可能になる。
[00100] 触媒成分の焼成工程
[00101] 少なくとも1種の触媒成分を担持材に接触させた後、1つ以上の焼成工程を使用することができるが、必ず必要な工程ではなく、場合によっては好ましくない。
焼成工程は、典型的には、還元工程の前且つ固定工程の後に行うが(前記の工程が使用される場合)、プロセスのどこかで行うことができる。別の実施態様では、焼成工程は、還元工程後に行われる。焼成工程は、非還元雰囲気(すなわち酸化または不活性な雰囲気)下で担持材を加熱することを含む。焼成中、改質担持材上の触媒成分は、それらの塩から、それらの酸化物と遊離金属形態との混合物へと、少なくとも部分的に分解される。
[00102] 例えば、焼成工程は、約100℃〜約700℃、好ましくは約200℃〜約500℃の温度で行う。焼成用に使用される非還元ガスとしては、1種以上の不活性ガスまたは酸化性ガス、例えばヘリウム、窒素、アルゴン、ネオン、窒素酸化物、酸素、空気、二酸化炭素またはそれらの組み合わせなどが挙げられる。一つの実施態様では、焼成工程は、実質的に純粋な窒素、酸素、空気またはそれらを組み合わせた雰囲気下で行う。焼成時間は、変えることができるが、好ましくは約1〜5時間である。触媒成分塩の分解度は、使用される温度および含浸触媒が焼成される時間の長さに依存し、そして揮発分解生成物をモニターすることによって追跡できる。選択的に、ジルコニア担持材では、Pdのみが焼成される。
[00103] 還元工程
[00104] 本明細書で一般的に使用される別の工程、例えば還元工程によって、任意の残留触媒成分を、塩または酸化物の形態から触媒活性状態へと少なくとも部分的に変化させる。典型的には、これは、塩または酸化物を還元剤に曝露することによって行う。還元剤としては、例えばアンモニア、一酸化炭素、水素、炭化水素、オレフィン、アルデヒド、アルコール、ヒドラジン、第一級アミン、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステルおよびそれらの組み合わせが挙げられる。水素、エチレン、プロピレン、アルカリ性ヒドラジンおよびアルカリ性ホルムアルデヒドおよびそれらの組み合わせは、好ましい還元剤であり、特に好ましくは、不活性ガスとブレンドされたエチレンおよび水素である。ガス環境を使用する還元が好ましいが、液体環境で行われる還元工程を用いてもよい(例えば還元性溶液を使用する)。還元のために選択される温度は、周囲温度から約550℃までであることができる。還元時間は、典型的には約1〜約10時間の範囲で変えることができ、好ましくは5時間である。
[00105] 触媒成分を還元するために使用される方法は、最終触媒の特性に影響を及ぼし得るので、還元に使用される条件は、高度な活性、高度な選択性またはそれらの特性のある程度のバランスが所望されるか否かによって変えることができる。
[00106] 一つの実施態様では、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第6,486,093号、第6,015,769号および関連特許に記載されているように、金を接触させ、そして還元する前に、パラジウムを担持材に接触させ、固定し還元する。
[00107] 還元工程を含む例示的なプロトコルとしては:a)パラジウムを含浸させ、次いで任意に焼成し、次いで金を含浸させ、次いで還元する;b)パラジウムおよび金を共含浸させ、次いで任意に焼成し、次いで還元する;またはc)パラジウムを含浸させ、任意に焼成し、還元し、次いで金を含浸させる、が挙げられる。
[00108] 活性化工程
[00109] 通常は、還元工程の後且つ触媒を使用する前に、活性化工程を行うのが好ましい。触媒は、活性化工程を行わずに使用してもよいが、活性化工程は、触媒の運転寿命を長くすることを含むいくつかの有益な結果を有する。活性化工程は、従来の実行法にしたがって達成できる。すなわち、還元された担持材を、使用前に、活性化剤、例えばアルカリ金属塩(例えばカルボン酸塩および/または水酸化アルカリ金属)と接触させる。従来のアルカリ金属カルボキシレート、例えばC2−4脂肪族カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩およびセシウム塩はこの目的に使用される。VAの製造で好ましい活性化剤は、酢酸アルカリであり、最も好ましくは酢酸カリウム(KOAc)である。
[00110] 担持材には、任意に、活性化剤の溶液を含浸させることができる。乾燥後、触媒は、例えば、触媒1リットルあたり約10〜約70g、好ましくは約20〜約60gの活性化剤を含むことができる。
[00111] アルケニルアルカノエートを製造する方法
[00112] 本発明を使用して、触媒の存在下で、アルケン、アルカン酸および酸素含有ガスから、アルケニルアルカノエートを製造できる。好ましいアルケン出発原料は、2〜4個の炭素原子を含む(例えばエチレン、プロピレンおよびn−ブテン)。アルケニルアルカノエートを製造するための本発明方法で使用される好ましいアルカン酸出発原料は、2〜4個の炭素原子を含む(例えば酢酸、プロピオン酸および酪酸)。本発明方法の好ましい生成物は、VA、ビニルプロピオネート、ビニルブチレートおよびアリルアセテートである。最も好ましい出発原料は、エチレンおよび酢酸であり、最も好ましい生成物はVAである。而して、本発明は、触媒の存在下で、オレフィン不飽和化合物、カルボン酸および酸素からオレフィン不飽和カルボン酸エステルを製造する場合に有用である。本明細書の残りの部分ではもっぱらVAについて検討するが、触媒、触媒を作る方法および製造法は、他のアルケニルアルカノエートに等しく適用可能であり、また、その記述は本発明の用途をVAに限定することを意図していないことを了解すべきである。
[00113] VAを、本発明の触媒を使用して製造する場合、エチレン、酸素または空気を含むガス流と酢酸とを触媒の上に流す。ガス流の組成は、流出物の着火領域を考慮しながら、広範な制限内で変えることができる。例えば、エチレン対酸素のモル比は約80:20〜約98:2であることができ、酢酸対エチレンのモル比は約100:1〜約1:100、好ましくは約10:1〜約1:10、最も好ましくは約1:1〜約1:8であることができる。ガス流は、ガス状のアルカリ金属アセテートおよび/または不活性ガス、例えば窒素、二酸化炭素および/または飽和炭化水素を含むこともできる。使用できる反応温度は、高温であり、好ましくは約125〜220℃である。使用される圧力は、やや減圧された圧力、常圧または高圧、好ましくは最大で約20気圧(ゲージ圧)の圧力であることができる。
[00114] 固定床反応器に加えて、アルケニルアルカノエートおよび本発明の触媒を製造する方法は、他のタイプの反応で、例えば流動床反応器で最適に使用することもできる。
[00115] VA製造法は、好ましくは約800ppm未満、より好ましくは約400ppm未満、より好ましくは約250ppm未満および最も好ましくは約200ppm未満のEA/VA比を達成する。また、VA製造法は、O転化率が45%であるとき、好ましくは約10%未満、より好ましくは約9%および最も好ましくは8%未満のCO選択率も達成する。最も好ましくは、触媒は、上で検討したEA/VA比およびCO選択率を有する。
[00116] 更に、VA製造の本発明方法では、好ましくは、同様の処理条件で使用される基準触媒と比較して、維持または改良されたCO選択率が得られる。基準触媒は、対照として使用することができ且つ好ましくは改質担持材を含まない任意の触媒である。比較するために、改質担持材触媒のための処理条件と同じまたは同様の処理条件において対照として基準触媒を使用する。改質担持材上の触媒は、所定のO転化率において、基準触媒のCO選択率に匹敵する(または基準触媒のCO選択率を上回る)必要がある。基準触媒として使用できる触媒の一つの例は、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第5,332,710号に記載されている。
[00117] 改質担持材上触媒の実例
[00118] コンビナトリアルケミストリー/ハイスループットケミストリーおよび分析技術によって、改質担持材を有する触媒をふるい分けた。ふるい分けられた触媒に関する組成空間は、触媒成分として金とパラジウムを有する触媒を含んでいた。その場合、金のパラジウムに対する原子比は0.3:1〜1.2:1である。含まれる担持材としては:KA−160(シリカ・アルミナ)、Norpro XZ 16052(ジルコニア)、Aerolyst 350(シリカ)、Grace SP−9600(シリカ)、Grace SP−9601(シリカ)、Grace SP−9599(シリカ)、Grace SP−9602(シリカ)、Grace SP189043、USA3 (ジルコノ・シリカ)、Grace SP18−9534(チタノ・シリケート)、Norpro XZ 16075(ジルコニア)およびNorpro XZ 16052(ジルコニア)が挙げられる。上記の担持材は、Ba、Mg、Ce、K、Ca、Nb、Ta、Ti、Y、Sr、Z、La、Pr、V、Mo、Rb、および上で検討した選択されたバイメタルな組み合わせで改質した。未改質の担持材も、対照として試験した。
[00119] ジルコニア以外の改質担持材は、0.5gの担体サンプル(少なくとも2時間120℃で乾燥させた)に改質剤前駆体溶液を初期湿潤まで含浸させて3つのレベル、すなわち1.0、2.0および4.0重量%の1つを達成することによって、調製した。次いで、105℃で少なくとも2時間乾燥させ、そして2℃/分の加熱速度で500℃で焼成した。Hamiltonから入手したロボットを使用して全ての液体分配を実施した。
[00120] 改質担持材に対して、Pd(NH(OH)溶液を初期湿潤まで含浸させた(Pd充填量は触媒1リットルあたり42.6gのPd)。含浸中と後に、担持材を、少なくとも1時間、均質化させた。含浸後、担持材を、105℃の空気中で少なくとも2時間乾燥させ、次いで、350℃(加熱速度2℃/分)の空気中で2時間焼成した。
[00121] 次いで、改質担持材に対して、新たに調製した1M[KOH + Au(OH)] 溶液を初期湿潤まで含浸させて、0.45:1、0.6:1、0.9:1および1.2:1のAu:Pd比を達成した。含浸中と含浸後に、含浸された担持材を、少なくとも1時間均質化し、次いで、105℃の空気中で少なくとも2時間乾燥させた。
[00122] 触媒成分を有する改質担持材を、窒素中7%水素で還元した。そのサンプルを、触媒床が深さ約1〜3mmの小さな坩堝に配置した。還元中は100mLの流量を維持し、2℃/分の加熱速度で、350℃で5時間保持した。還元後、触媒1リットルあたり40gのKOAcとなるようにKOAc溶液を含浸させることによって、そのサンプルを活性化し、105℃で少なくとも2時間乾燥させた。
[00123] Pd含浸後に焼成を行わず、還元では150℃の窒素中5%エチレンを使用した以外は、既に上で検討したのと実質的に同じ手順で改質ジルコニア担持材を作った。
[00124] このプロトコルにしたがって調製された触媒を、触媒1リットルあたり40gのKOAcを含む担持材で均一に希釈して、7g/リットルの総Pd充填量とした。シミュレートしたシェル触媒を、並行反応システムを使用して、触媒のCO選択率およびEA/VA比を試験するための標準的なライン入力プロトコル(line−in protocol)で試験した。標準的なプロトコルは、145℃において普通供給(normal feed)下で触媒を8時間試験することを含んでいた(13.8%のHOAc、40%のC、7.9%のOおよび38%のN、P=10気圧、SV=138cc/分/cc触媒)。次いで、155℃、165℃、175℃および145℃の温度勾配(temperature ramp)を使用して、各触媒に関する情報を得た。45%のO転化率および800ppm未満のEA/VA比において約9.0%未満のCO選択率を示した触媒は、許容可能であると認めた。
[00125] 許容可能なCO選択率とEA/VA比を示した改質担持材上触媒を以下の表に示す:
【0008】
【表1】

【0009】
[00126] 上記の結果に基づいて、改質剤の他のレベル(例えば0.1重量%および0.4重量%)および/または他のAu:Pd比を試験して、CO選択率とEA/VA比を最適化した。更に、触媒調製条件のバリエーションも試験した(例えば、異なる焼成温度、含浸法および/または異なる還元条件)。
[00127] 許容可能な触媒を見分けるために、高温失活試験を行った。普通供給(13.8%のHOAc、40%のC、7.9%のOおよび38%のN;P=10atm、SV=138cc/分/cc触媒)を、ライン入力プロトコル(line−in protocol)として180℃で8時間使用した。ライン入力後に、165℃、175℃、185℃、195℃および165℃の温度勾配を使用して、各触媒に関する情報を得た。より厳しいガイドラインのセット(例えば、45%のO転化率において許容可能なCO選択率を有する約250ppm未満のEA/VA比)下で許容可能な特性を示した触媒は、最も好ましい改質担持材上触媒であると考えられる。このプロトコルの下で、最も好ましい改質担体としては、ジルコニア担持材上のニオブ、チタンおよびマグネシウムが挙げられる。また、チタノ・シリケート上のチタンおよびジルコニウム改質剤も好ましかった。
[00128] 改質担持材を有するおよび有していない触媒の比較を、両方のタイプの触媒を試験するために同じ手順を使用する限りは、任意のVA合成手順を使用して行うことができる。複数の構成要素もしくは工程の機能または構造を結合させて、単一の構成要素もしくは工程にしてもよく、または、一つの工程もしくは構成要素の機能もしくは構造を、複数の工程もしくは構成要素へと分割してもよいことが更に了解されるだろう。本発明は、これらの組み合わせのすべてを企図している。特に断りがない場合は、本明細書に記載してある様々な構造の寸法およびジオメトリーは、本発明を限定することを意図しておらず、他の寸法またはジオメトリーも可能である。複数の構成要素または工程は、単一の統合された構造または工程によって提供することができる。あるいは、単一の統合された構造または工程は、別々の複数の構成要素または工程へと分割できる。更に、本発明の特徴を、例示態様のうちのただ一つの文脈で説明してきたが、前記特徴は、任意の所定の用途のために、他の実施態様の一つ以上の他の特徴と組み合わせることができる。また、本明細書に記載してあるユニークな構造の作製およびそれらの運転が、本発明による方法を構成することも上記説明から了解されるだろう。
[00129] 本明細書で提示してある説明および実例は、他の当業者に、本発明、本発明の原則および本発明の実用的な用途を知らせることを目的としている。当業者は、特定用途の要求条件に最も適し得るように、本発明を、その多くの形態で採用且つ適用できる。而して、記載したような本発明の特定の実施態様は、本発明を網羅または限定することを目的としていない。而して、本発明の範囲は、上記の説明によって決定されるべきではなく、添付の請求の範囲と、前記請求の範囲が権利を付与している等価物の全範囲とによって決定されるべきである。特許出願および刊行物を含む物品および引例の開示は、あらゆる目的のために引用したものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:すなわち、
アルケン、アルカン酸および酸化剤を含む供給原料を、改質担持材上に形成された触媒またはプレ触媒に対して接触させる工程
を含むアルケニルアルカノエートを製造する方法。
【請求項2】
該アルケンがエチレンであり、該アルカン酸が酢酸であり、そして該酸化剤が酸素含有ガスである請求項1記載の方法。
【請求項3】
該改質担持材が、触媒成分と接触させる前に焼成された請求項2記載の方法。
【請求項4】
酢酸エチルの得られたアルケニルアルカノエートに対する割合が約800ppm未満である請求項3記載の方法。
【請求項5】
酢酸エチルの得られたアルケニルアルカノエートに対する割合が約250ppm未満である請求項3記載の方法。
【請求項6】
該改質担持材上に形成された触媒またはプレ触媒が、基準触媒と同様なCO選択率を有する請求項3記載の方法。
【請求項7】
該改質担持材上に形成された触媒またはプレ触媒を基準触媒と比較する工程を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
該改質担持材上に形成された触媒またはプレ触媒が、該基準触媒のCO選択率を下回るかまたは該基準触媒のCO選択率に等しいCO選択率を有する請求項7記載の方法。
【請求項9】
触媒またはプレ触媒が約9.0%未満のCO選択率を有する請求項3の方法。
【請求項10】
該触媒またはプレ触媒が、45%のO転化率で約9.0%未満のCO選択率を有する請求項9記載の方法。
【請求項11】
酢酸エチルの得られたアルケニルアルカノエートに対する割合が約800ppm未満であって、該触媒またはプレ触媒が約9.0%未満のCO選択率を有する請求項3記載の方法。
【請求項12】
酢酸エチルの得られたアルケニルアルカノエートに対する割合が約800ppm未満であって、該触媒またはプレ触媒が、45%のO転化率で約9.0%未満のCO選択率を有する請求項11記載の方法。
【請求項13】
酢酸エチルの得られたアルケニルアルカノエートに対する割合が約250ppm未満であって、該触媒またはプレ触媒が約9.0%未満のCO選択率を有する請求項3記載の方法。
【請求項14】
酢酸エチルの得られたアルケニルアルカノエートに対する割合が約250ppm未満であって、該触媒またはプレ触媒が、45%のO転化率で約9.0%未満のCO選択率を有する請求項13記載の方法。
【請求項15】
該担持材が、改質剤としてニオブ、チタン、マグネシウムまたはそれらの組み合わせをを含む請求項1記載の方法。
【請求項16】
該担持材がジルコニアである請求項1記載の方法。
【請求項17】
該担持材がチタノ・シリケートまたはジルコノ・シリケートである請求項1記載の方法。
【請求項18】
該担持材が層状担持材である請求項1の方法。
【請求項19】
以下の工程:すなわち、
改質剤前駆体を担持材に接触させる工程;
少なくとも1種の触媒成分前駆体を該改質担持材に接触させる工程;そして
還元環境を該担持材に接触させることによって該触媒成分前駆体を還元する工程
を含むアルケニルアルカノエートの製造を促進するのに適する触媒またはプレ触媒を製造する方法。
【請求項20】
該少なくとも1種の触媒成分前駆体を該改質担持材に接触させる前に、非還元雰囲気下で改質担持材を焼成する工程を更に含む請求項19記載の方法。
【請求項21】
該改質剤前駆体が、バリウム、マグネシウム、セリウム、カリウム、カルシウム、ニオブ、タンタル、チタン、イットリウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ランタン、プラセオジム、バナジウム、モリブデン、ルビジウムまたはそれらの2種の組み合わせを含む請求項20記載の方法。
【請求項22】
該改質剤前駆体が、ニオブ、チタン、マグネシウム、ジルコニウムまたはそれらの組み合わせを含む請求項21記載の方法。
【請求項23】
該改質剤前駆体が、ニオブ、チタン、マグネシウムまたはそれらの組み合わせを含む請求項22記載の方法。
【請求項24】
該改質剤前駆体が、塩化物、硝酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩またはそれらの組み合わせを含む請求項20記載の方法。
【請求項25】
該担持材がジルコニアを含む請求項20記載の方法。
【請求項26】
該担持材がチタノ・シリケートまたはジルコノ・シリケートを含む請求項20記載の方法。
【請求項27】
該担持材が層状担持材である請求項20記載の方法。
【請求項28】
該第一接触工程が、該担持材に水性改質剤前駆体溶液を含浸させる工程を含む請求項19記載の方法。
【請求項29】
該第一接触工程が、該担持材に対して、該担持材の重量を基準として約0.1重量%〜約4.0重量%の改質剤を接触させる工程を含む請求項28記載の方法。
【請求項30】
該第二接触工程が、該担持材に水性触媒成分前駆体溶液を含浸させる工程を含む請求項19記載の方法。
【請求項31】
該改質剤焼成工程が、約300℃〜約700℃の温度で焼成する工程を含む請求項21記載の方法。
【請求項32】
該担持材に対して該触媒成分前駆体を接触させた後に焼成する工程を更に含む請求項19記載の方法。
【請求項33】
該触媒成分前駆体が、金、パラジウムまたはそれらの組み合わせを含む請求項19記載の方法。
【請求項34】
該金のパラジウムに対する原子比が、約0.1〜約1.25である請求項33記載の方法。
【請求項35】
該金のパラジウムに対する原子比が、約0.3〜約0.90である請求項34記載の方法。
【請求項36】
該触媒またはプレ触媒を活性化剤と接触させる工程を更に含む請求項19記載の方法。
【請求項37】
該アルカリ金属アセテートを、触媒1リットルあたり約10〜70gの量で該担持材に接触させる工程を更に含む請求項36記載の方法。
【請求項38】
該触媒成分接触工程が、触媒1リットルあたり約1〜約10gのパラジウムおよび触媒1リットルあたり約0.5〜約10gの金を接触させることを含み、且つ、該金の量が、パラジウムの重量を基準として約10〜約125重量%である請求項33記載の方法。
【請求項39】
請求項19〜38記載の方法にしたがって作られる触媒またはプレ触媒。

【公表番号】特表2008−524217(P2008−524217A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546694(P2007−546694)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/042651
【国際公開番号】WO2006/068764
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】