説明

触覚センサー装置およびそれを用いたロボット

【課題】より正確な力の検出が可能な触覚センサー装置およびそれを用いた構造が簡単で小型のロボットを得ること。
【解決手段】触覚センサー81,82の検出期間がそれぞれ異なるので、他の触覚センサー81または82の振動の伝達による検出時のSN比の低下を抑えることができる。したがって、より正確な力の検出が可能な触覚センサー装置1000を得ることができる。また、触覚センサー81,82を順次駆動するので配線が少なくてすみ、前述の効果を備え、構造が簡単で小型のロボット100を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の触覚センサーを備えた触覚センサー装置およびそれを用いたロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットには、種々のセンサーが用いられている。触覚センサーは、例えば、ロボットのアーム部の先にあるハンド部の把持部としての指部に装着され、指部に加わる力を検出するために使用されている。
ハンド部は、対象物を把持するために指部を複数備え、それぞれの指部に触覚センサーが設けられる。これら複数の触覚センサーは、触覚センサー装置を構成する。
触覚センサーとして、振動体素子の共振周波数の変化に基づいて接触情報を検出する触覚センサーが知られている。このような触覚センサーを複数用いると、それぞれの触覚センサーが振動による干渉を起こし、正確な力の検出が難しい。
振動体素子を用いた触覚センサーを複数備えたセンサー装置として、伝達振動低減手段を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、伝達振動低減手段として、振動吸収部材として弾性材料を用いたり、振動体素子の駆動電圧の位相を互いにずらしたりする。振動体素子としては、圧電体素子を用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−171059号公報(3頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、振動吸収部材を用いたり、振動体素子の駆動電圧の位相を互いにずらしたりしても、振動の伝達を完全になくすことが困難である。したがって、より正確な力の検出が難しい。
また、複数の指部にそれぞれ触覚センサーを備えたロボットでは、触覚センサーで挟んだ対象物を伝わって振動が伝達し、より正確な力の検出が難しい。さらに、複数の触覚センサーを備えたロボットでは、各触覚センサーの配線の数が増えるために、配線スペースが増大し、ロボットの構造が複雑で大型になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
接触による共振周波数の変化に基づいて力を検出する複数の触覚センサーと、前記触覚センサーの検出期間を異ならせる制御部とを備えたことを特徴とする触覚センサー装置。
【0007】
この適用例によれば、触覚センサーの検出期間がそれぞれ異なるので、他の触覚センサーの振動の伝達による検出時のSN比の低下が抑えられる。したがって、より正確な力の検出が可能な触覚センサー装置が得られる。
【0008】
[適用例2]
上記触覚センサー装置において、前記制御部は、前記触覚センサーの前記検出期間の間に休止期間を設けることを特徴とする触覚センサー装置。
この適用例では、検出期間の間に設けられた休止期間に、共振していた触覚センサーの振動が減衰し、より他の触覚センサーの振動の伝達による影響が少なくなる。したがって、より正確な力の検出が可能な触覚センサー装置が得られる。
【0009】
[適用例3]
上記触覚センサー装置において、前記触覚センサーは、弾性体を介して前記力を検出することを特徴とする触覚センサー装置。
この適用例では、弾性体を介して力を検出するので、対象物に応じて、弾性体の材質、形状を選択することにより、摩擦係数、力の検出範囲が変化する。したがって、対象物に応じて、より正確な力の検出が可能な触覚センサー装置が得られる。
【0010】
[適用例4]
上記触覚センサー装置において、前記共振周波数は、圧電体素子を駆動することによって得られることを特徴とする触覚センサー装置。
この適用例では、圧電体素子は圧電体と電極で構成され、小型化の可能な圧電体素子を触覚センサーに用いている。したがって、より正確な力の検出が可能で小型の触覚センサー装置が得られる。
【0011】
[適用例5]
上記触覚センサー装置において、前記圧電体素子の温度を検出する温度センサーを備え、前記温度に基づいて、検出された前記力を補正することを特徴とする触覚センサー装置。
この適用例では、圧電体素子の温度を検出する温度センサーを備えているので、温度変化によって圧電体素子の共振周波数が変化しても、検出された温度に基づいて検出された力が補正される。したがって、より正確な力の検出が可能な触覚センサー装置が得られる。
【0012】
[適用例6]
上記触覚センサー装置を備えたロボットであって、前記触覚センサーが設けられた複数の指部と、前記指部を備えたハンド部と、前記ハンド部に配設され、ロボット制御部の信号に基づいて、前記触覚センサーを順次駆動する前記制御部とを備えたことを特徴とするロボット。
【0013】
この適用例によれば、触覚センサーを順次駆動するので、配線が少なくてすみ、前述の効果を備え、構造が簡単で小型のロボットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ロボットの概略図。
【図2】ロボットによる部品の挿入作業を示す概略断面図。
【図3】ハンド部を説明する概略図。
【図4】触覚センサーの概略断面図。
【図5】荷重と共振周波数との関係を説明する図。
【図6】検出タイミングを説明する図。
【図7】検出タイミングを説明する図。
【図8】変形例1における触覚センサーの概略断面図。
【図9】温度ドリフトによる共振周波数ズレを説明する図。
【図10】温度センサー付き触覚センサーの概略断面図。
【図11】円柱形の対象物を把持する様子を示す概略断面図。
【図12】(a)は、指部が対象物を把持していない状態の平面図、(b)は、対象物を把持している状態の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1に、実施形態におけるロボット100の概略図を示した。
図1において、床200には、ロボット100や図示しない組み立て装置本体が設置され、その作業エリアには、組立を行う作業台300や対象物である部品400を搬送する図示しない装置や治具などが設置されている。
【0016】
ロボット100は、ベースとなる台10とロボット制御部20と第1のアーム30と第2のアーム40と第3のアーム50とハンド部60とを備えている。台10には、第1のアーム30が設けられ、第1のアーム30には第2のアーム40が、第2のアーム40には第3のアーム50が回転可能に取り付けられている。
ハンド部60は、第3のアーム50の先端に回転可能に取り付けられている。また、ロボット制御部20は、台10に接続されている。
なお、アームの数は、3つに限らず、2つ、4つ以上であってもよい。また、ロボット制御部20は、台10に組み込まれていてもよい。
ハンド部60は複数の指部70を備えており、複数の指部70で第1の部品410を把持することができる。指部70として、触覚センサー80を一つ以上有している。
【0017】
ロボット100の作業プロセスとしては、原点位置からハンド部60を第1の部品410のある位置まで移動させる。指部70を開いて、ハンド部60と第1の部品410との位置をより近づける。
次に、ハンド部60を第1の部品410のところまで降下させ、指部70を閉じることによって第1の部品410を把持できる位置に保持する。次に、指部70を閉じて、第1の部品410を適切な力で把持する。
指部70が閉じた状態でアームを移動させて、ハンド部60を作業台300上のもう1つの第2の部品420まで近づける。
【0018】
ここで、第2の部品420に第1の部品410を挿入する作業では、第2の部品420の挿入位置に第1の部品410を降下させ挿入する。その際に、ハンド部60の指部70のそれぞれの触覚センサー80が、第1の部品410にかかる荷重を検出し、挿入が正常に行われているかを判断する。
【0019】
図2(a)〜(f)に、ロボットによる部品の挿入作業を示す概略断面図を示した。
図2は、第1の部品410を指部70で把持して、第2の部品420の穴に挿入する作業を示している。
(a)は、挿入前の状態を示している。
(b)は、挿入作業が良好にいき、うまく第1の部品410が挿入される状態を示している。
(c)は、第1の部品410と第2の部品420の位置が少しズレており、両者が接触して指部70と第1の部品410との間で滑りを生じている状態を示している。
(d)は、(c)よりも位置のズレが更に大きくて、同様に両者が接触して指部70と第1の部品410との間で滑りを生じている状態を示している。
(e)は、第1の部品410と第2の部品420とが少し斜めに挿入されている状態を示している。
(f)は、(e)よりも第1の部品410と第2の部品420とが更に斜めに挿入されている状態を示している。
(c)〜(f)の状態で、正常に挿入作業が行われていない場合には、ハンド部60の位置を修正するか、第1の部品410の挿入角度を修正するなどを行って挿入する。
【0020】
図3に、ハンド部60を詳しく説明する概略図を示した。図3に示したハンド部60は、図1に示したハンド部60と、触覚センサーの数や配置について異なるが、ここに示すものに限定されない。触覚センサーの数や配置は、第1の部品410の形状に応じて工夫することができる。
ロボット100のハンド部60は、指部71,72を備え、1対の触覚センサー81,82が、指部71,72の内側に対向して設けられている。
ハンド部60には、図示しないモーターからのトルクが減速機を経由して伝達し、第1の部品410を指部71,72で把持する構造になっている。その際に、実際に第1の部品410が把持されているかを検知するために、触覚センサー81,82を利用している。
【0021】
図4に、例として触覚センサー81の概略断面図を示した。触覚センサー82も同様の構造である。
図3および図4において、触覚センサー81は、センサー容器811と、振動体素子としての圧電体素子812と、弾性体813とを備えている。圧電体素子812は、積層型であり、センサー容器811に収められている。
触覚センサー82は、センサー容器821と、圧電体素子822と、弾性体823とを備えている。
【0022】
圧電体素子812の材質としては、水晶(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr、Ti)O3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リチウムテトラボレート(Li247)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)などの材質から、圧電定数、形状寸法、加工性、電極加工性などを総合して、適切なものを選択することができる。
【0023】
弾性体813は、圧電体素子812に接触するように配置されている。実施形態では、弾性体813は、センサー容器811の蓋としての役割も果たしている。弾性体813の形状は、第1の部品410と直接接触する中心部が凸形状になっている。
ここで、弾性体813は、圧電体素子812に接触しないようにしておき、弾性体813に力が加わったときに変形して、ある力以上の力が加わったときに圧電体素子812と接触するようにしてもよい。
【0024】
弾性体813の材質としては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムスチレンブタジエンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ニトリルゴム、多硫化ゴム、天然ゴムなどのゴム類、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミドなどの樹脂類、ガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックなどの複合材料等から、第1の部品410の材質、形状によって適正な材質を選択することができる。
また、指部71,72の一方と他方で材質を異なるものを選択したり、弾性体813を2分割して夫々を異なる材質で構成したりすることもできる。
【0025】
図5に、触覚センサー81を一例として、荷重と共振周波数との関係を説明する図を示す。横軸は荷重(kg)を、縦軸は共振周波数(Hz)を示している。
荷重がない時にf0で共振しているとすると、触覚センサー81に与えられる荷重が増加するに連れて共振周波数は低下する。したがって、触覚センサー81の共振周波数を検出することで、どの位の荷重が加えられたかを知ることができる。
【0026】
図3および図5において、弾性体813が、第1の部品410と接触すると弾性体813を経由して、圧電体素子812に荷重W1が加わり、圧電体素子812の共振周波数f0が、それより低い共振周波数f1に変化することで検出できる。より大きな荷重が加われば、更に共振周波数は低く変化することになる。指部71,72や触覚センサー81,82の許容荷重を超えた場合には、指部71,72の把持力を制限するという制御がなされる。
【0027】
詳しくは、図3において、第1の部品410の質量をm、重力加速度をg、触覚センサー81,82と第1の部品410との摩擦係数をμ、指部71,72の把持力をN0とすれば、指部71,72が第1の部品410を把持するために必要な力の釣り合い条件は、mg=μN0となる。
これ以上の把持力を与えれば、第1の部品410は把持できることになるが、安全係数αと保護係数βを見込んで、実際の把持力Nは、α×N0≦N≦β×N0とするのが好ましい。通常、安全係数αは触覚センサー81,82の表面にある弾性体813,823の摩擦係数の経時変化を考慮し1.5〜3程度である。また、保護係数βは、第1の部品410や指部71,72の強度および第1の部品410の挿入作業であればその挿入力を考慮し、2.5〜10程度である。
第1の部品410を把持する動作においては、それぞれの触覚センサー81,82が検知する力は、β×N0を超えないように制御することになる。具体的には指部71,72の位置をフィードバックしてより適切な位置に移動したり、指部71,72の把持力を弱めたりする。
【0028】
以下に、触覚センサー81,82を例にとって、触覚センサー80の制御について詳しく述べる。
図3において、触覚センサー81,82のそれぞれに対して発振回路91,92が対応して接続され、周波数検出回路93へそれぞれの発振回路91,92が接続されている。
周波数検出回路93は制御部94を備え、順次触覚センサー81,82を切り替えて周波数を検出し、決められた順に信号を第1のアーム30と第2のアーム40と第3のアーム50を経由して、ロボット制御部20へ送信する。それによって、各発振回路91,92の配線を全てロボット制御部20に接続する必要がなくなる。
触覚センサー81,82、発振回路91,92、周波数検出回路93、制御部94を備えたものが、触覚センサー装置1000を構成する。
【0029】
図6に、例えば、1本の指に3つの触覚センサーがある場合の検出タイミングを説明する図を示す。横軸は時間を示している。
図6において、第1の触覚センサー、第2の触覚センサー、第3の触覚センサーと順番に検出する。各センサーの検出期間はt1、t2、t3であり、各センサーの検出期間の間には、休止期間tcが設けられている。
各センサーの検出期間t1、t2、t3の間に休止期間tcを設け、順番に検出するので、1つの触覚センサーを検出している検出期間や切替時間である休止期間tcにおいては、他の触覚センサーの圧電体素子の駆動および検出は行われていない。
なお、検出のタイミングについては、ここに示したパターンのみならず、順番を変えたり、検出の頻度を変えたりすることも可能である。
【0030】
図7に、例えば、第1、第2、第3の3本の指にそれぞれ3つの触覚センサーA,B,Cがある場合の検出タイミングの例を説明する図を示す。横軸は、図6と同様に時間を示している。
この場合には、触覚センサーが合計9つある。第1A触覚センサーから第3C触覚センサーへと順番に検出しており、1つの触覚センサーの検出期間においては、他の触覚センサーの圧電体素子は共振していない。
検出のタイミングについては、ここに示したパターンのみならず、順番を変えたり、検出の頻度を変えたりすることも容易に可能である。この場合でも、ロボット制御部20への配線は1つで済むことになる。
【0031】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)触覚センサー81,82の検出期間がそれぞれ異なるので、他の触覚センサー81または82の振動の伝達による検出時のSN比の低下を抑えることができる。したがって、より正確な力の検出が可能な触覚センサー装置1000を得ることができる。
【0032】
(2)検出期間の間に設けられた休止期間に、共振していた触覚センサー81,82の振動が減衰し、より他の触覚センサー81または82の振動の伝達による影響を少なくできる。したがって、より正確な力の検出が可能な触覚センサー装置1000を得ることができる。
【0033】
(3)弾性体813,823を介して力を検出するので、対象物に応じて、弾性体813,823の材質、形状を選択することにより、摩擦係数、力の検出範囲を変化させることができる。したがって、第1の部品410に応じて、より正確な力の検出が可能な触覚センサー装置1000を得ることができる。
【0034】
(4)圧電体素子812,822は圧電体と電極で構成され、小型化の可能な圧電体素子812,822を触覚センサー81,82に用いている。したがって、より正確な力の検出が可能で小型の触覚センサー装置1000を得ることができる。
【0035】
(5)触覚センサー81,82を順次駆動するので、配線が少なくてすみ、前述の効果を備え、構造が簡単で小型のロボット100を得ることができる。
【0036】
(変形例1)
圧電体素子812には、積層型のほか、単層型、バイモルフ型などがあり、使用する荷重範囲や触覚センサー81の形状によって使い分けをすることができる。
【0037】
図8に、単層型の圧電体素子814を備えた触覚センサー85の概略断面図を示した。
基本的には、触覚センサー81と同様の構造であるが、弾性体815の中心部が平らである点が異なる。
【0038】
このような変形例によれば、以下の効果がある。
(6)積層型では、大きな荷重を発生することができるので、比較的荷重範囲の高い領域に適しているのに対し、単層型では、比較的荷重範囲の低い領域に適している。また、圧電体素子814をより小型にすることで触覚センサー85をより小さくでき、より小型の触覚センサー装置1000を得ることができる。
【0039】
図9に、温度ドリフトによる共振周波数ズレを説明する図を示す。
図5と同様に、横軸は荷重(kg)を、縦軸は共振周波数(Hz)を示している。
触覚センサーの圧電体素子の駆動方法や圧電体素子の温度係数によって、温度ドリフトが生じることがある。
図9において、圧電体素子に加えられる荷重を増やしていき、荷重を元に戻していくと、元の共振周波数f0にならずf2になっている。こういう場合には、圧電体素子を駆動および検出する時間、つまり共振させている時間をできるだけ短くすることで改善される。しかし、それでも不十分な場合には、検出期間の後の非検出時間を温度が低下するまで長く設定する方法や温度補償をする方法がある。
【0040】
(変形例2)
図10(a)に、圧電体素子812が積層型で温度センサー816付きの触覚センサー86、(b)に、圧電体素子814が単層型で温度センサー816付の触覚センサー87の概略断面図を示す。
図10(a)において、温度センサー816付きの触覚センサー86は、図4に示した触覚センサー81とほぼ同じ構造で、異なる点は、圧電体素子812の中央部付近に、サーミスタなどの温度センサー816が圧電体素子812に密着して固定されている。圧電体素子812を共振させると、圧電体素子812内部で発生した熱によって圧電体素子812の温度は徐々に上昇していき、その温度変化を検出することができ、その温度情報によって、触覚センサー86の検出期間や非検出期間を制御することが可能性になる。
【0041】
図10(b)において、温度センサー816付きの触覚センサー87は、図8に示した触覚センサー85とほぼ同じ構造で、異なる点は、圧電体素子814の中央部付近に、サーミスタなどの温度センサー816が圧電体素子814に密着して固定されている。
【0042】
このような変形例によれば、以下の効果がある。
(7)圧電体素子812,814の温度を検出する温度センサー816を備えているので、温度変化によって圧電体素子812,814の共振周波数が変化しても、検出された温度に基づいて検出された力を補正できる。したがって、より正確な力の検出が可能な触覚センサー装置1000を得ることができる。
【0043】
上述した実施形態および変形例以外にも、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、複数の触覚センサーを備えた触覚センサー装置では、圧電体素子にはばらつきがあり、全ての触覚センサーが同じ周波数で発振する訳ではない。
そこで、1つ1つの触覚センサーに周波数と荷重の関係(ルックアップテーブルなど)を予め記憶させておき、順次触覚センサーから検出された周波数信号を、その触覚センサーのルックアップテーブルに基づいて荷重に変換して制御を行うことで、どの触覚センサーでも正確な荷重の検出が可能になる。
さらに、このルックアップテーブルに、使用温度範囲に応じたテーブルを用意しておけば、使用温度が変わっても対応でき、より正確な力の検出が可能になる。
【0044】
図11は、ハンド部61の指部73,74で、例えば、円柱形の部品430を把持する様子を示す概略断面図である。図11(a)は、把持する前の状態を示す概略断面図、図11(b)は、把持後の概略断面図である。
図11において、ハンド部61は、指部73,74を備えている。指部73には、円柱形の部品430の側面が当たって収まるように、V字型の溝731が形成されている。指部73の溝731には2つの図8に示した触覚センサー85が、指部74には1つの触覚センサー85が設けられている。
触覚センサー85は、振動するとともに力を検出しながら部品430を把持する。したがって、図11(a)のように部品430と指部73,74の位置がややずれている場合であっても、触覚センサー85が接触した部分から振動が部品430に伝わり、徐々に溝731の中心部に収まり、図11(b)に示すように部品430が溝731に収まって把持できる。
【0045】
また、金属などの硬くて変形し難い対象物と比較して、比較的柔らかい対象物も安定に把持するためには、部品430が直接接触する部分に摩擦係数が比較的高い弾性体815を用いることが望ましい。このように、部品430と弾性体815との摩擦力が大きい場合は、うまく部品430が中心に収まり難い場合もあるが、触覚センサー85を振動させて力を検出しながら部品430を把持することによって、部品430が溝731に収まって把持できる。
【0046】
図12(a)は、ハンド部62の指部75,76,77が対象物を把持していない状態の平面図で、(b)は、部品440を把持している状態の側面図である。
図12において、指部76が人間の親指に相当し、両側の2本の指部75,77が人間の人差し指と中指に相当する。それぞれの指部には、部品440を把持するときに部品440と接触する側に図示しない触覚センサーを備えており、部品440との接触力を検出することにより把持する力を適正に制御している。指部75,77と指部76とが対向するように部品440を挟んでおり、部品440の大きさや形が変わっても把持することが比較的容易になっている。
【符号の説明】
【0047】
20…ロボット制御部、60,61,62…ハンド部、70,71,72,75,76,77…指部、81,82,85,86,87…触覚センサー、94…制御部、100…ロボット、812,814…圧電体素子、813,815…弾性体、816…温度センサー、1000…触覚センサー装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触による共振周波数の変化に基づいて力を検出する複数の触覚センサーと、
前記触覚センサーの検出期間を異ならせる制御部とを備えた
ことを特徴とする触覚センサー装置。
【請求項2】
請求項1に記載の触覚センサー装置において、
前記制御部は、前記触覚センサーの前記検出期間の間に休止期間を設ける
ことを特徴とする触覚センサー装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の触覚センサー装置において、
前記触覚センサーは、弾性体を介して前記力を検出する
ことを特徴とする触覚センサー装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の触覚センサー装置において、
前記共振周波数は、圧電体素子を駆動することによって得られる
ことを特徴とする触覚センサー装置。
【請求項5】
請求項4に記載の触覚センサー装置において、
前記圧電体素子の温度を検出する温度センサーを備え、
前記温度に基づいて、検出された前記力を補正する
ことを特徴とする触覚センサー装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の触覚センサー装置を備えたロボットであって、
前記触覚センサーが設けられた複数の指部と、
前記指部を備えたハンド部と、
前記ハンド部に配設され、ロボット制御部の信号に基づいて、前記触覚センサーを順次駆動する前記制御部とを備えた
ことを特徴とするロボット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−286254(P2010−286254A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137997(P2009−137997)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】