説明

計測情報収集システム、計測情報収集方法、中継装置及びプログラム

【課題】列車に搭載された収集装置300に少ない消費電力で計測情報を送信する。
【解決手段】計測装置100−1〜100−N及び中継装置200は、同期してそれぞれの装置を所定の電力量で動作させる稼動状態に切り替え、計測装置100−1〜100−N、中継装置200間で計測情報の伝送を行う。そして伝送終了後、計測装置100−1〜100−Nの切替部101及び中継装置200の切替部201は、それぞれの装置を所定の電力量より小さい電力量で動作させる省電力状態に切り替える。また、中継装置200は、検出部204が収集装置300を搭載した列車の近接を検出した場合に、切替部201は、自装置を稼動状態に切り替えて中継装置200、収集装置300間で計測情報の伝送を行う。そして伝送終了後、中継装置200の切替部201は、自装置の状態を、省電力状態に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道沿線の各種設備に関する計測情報の計測情報収集システム、計測情報収集方法、中継装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道沿線のトンネル、橋、レールなどの各種設備の状態を監視するため、通信機能を有する複数のセンサ(計測装置)を用いてこれら設備の計測情報を収集する計測情報収集システムが提案されている(非特許文献1を参照)。このようなシステムを運用する場合、システムの設置場所において必ずしも外部電源が利用できるとは限らない。そのため、計測情報収集システムには省電力性が求められている。
計測情報収拾システムの消費電力を抑える方法として、それぞれのセンサが同期して省電力状態と稼動状態との状態遷移を繰り返す方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、センサから計測情報を収集する手段として、車両などの移動体を用いる方法が提案されている。この方法によれば、計測情報の収集装置を移動体に搭載し、当該移動体がセンサまたは計測情報を集約したゲートウェイ装置に接近したか否かを検知する検知装置を備える。そして、検知装置が、移動体がセンサまたはゲートウェイ装置に接近したことを検知したときに、センサまたはゲートウェイ装置が、計測情報を移動体に搭載された収集装置に送信する。そして、収集装置は、移動体によって計測情報の利用箇所に受信した計測情報を運搬する。
この方法は、センサまたはゲートウェイ装置が設置された場所において携帯電話回線を用いた通信など他の通信手段が利用できない場合に特に効果を発揮する。
【0004】
また、特許文献2には、監視対象の構造物上を車両が走行することにより、構造物の疲労の検査を補完する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−306472号公報
【特許文献2】特開2008−209283号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】小林裕介、平井力、センサネットワークで構造物を監視する、「Railway Research Review」、財団法人研友社、2009年11月、p.p.2−5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように移動体を用いて計測情報を収集する場合、センサまたはゲートウェイ装置は、いつ移動体が通過するかを予測することが困難であるという問題がある。なお、移動体が一定のスケジュールにしたがって移動するもの(例えば、ダイヤグラムに従って移動する列車など)であったとしても、様々な要因によって通過タイミングがずれる可能性がある。
従来は、移動体が無線電波を発し、センサまたはゲートウェイ装置が当該無線電波を捕捉することで移動体の到着を監視する手法が用いられている。しかし、この方法では、無線通信により消費電力が増えてしまい、バッテリが短時間で枯渇してしまうという問題がある。
【0008】
また、移動体の通過タイミングにあわせてセンサの状態を稼動状態に切り替えることで計測情報の送信を行うことも考えられる。しかし、省電力状態と稼動状態とを切り替える頻度が低い場合、すなわち省電力状態の時間が長い場合、システムの省電力を図ることはできるが、省電力状態の間に移動体がセンサまたはゲートウェイ装置の設置箇所を通過してしまう可能性が高い。他方、省電力状態と稼動状態とを切り替える頻度が高い場合、すなわち省電力状態の時間が長い場合、省電力状態の間に移動体が通過してしまう可能性が低くなるが、消費電力が増大してしまうという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の方法を用いて計測情報を収集することも考えられるが、特許文献2に記載の方法では、圧電素子による発電時に計測を行うため、移動体の通過時刻以外の計測情報が収集できない。また、圧電素子を用いなければ計測を行うことができない。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、列車に搭載された収集装置に少ない消費電力で計測情報を送信する計測情報収集システム、計測情報収集方法、中継装置及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、計測対象物の物理量を計測する複数の計測装置と、列車に搭載され、前記計測装置による計測情報を収集する収集装置と、前記計測装置による計測結果を前記収集装置に送信する中継装置とを備える計測情報収集システムであって、前記計測装置は、他の計測装置及び中継装置と同期して、自装置を所定の電力量で動作させる稼動状態に切り替える稼動部と、前記稼動部が自装置を前記稼動状態に切り替えた場合に、計測対象物の物理量を計測し、当該物理量を示す計測情報を生成する計測部と、前記計測部が生成した計測情報を前記中継装置に送信する送信部と、前記送信部が前記計測情報を送信した後に、自装置を所定の電力量より低い電力量で動作させる省電力状態に切り替える省電力部とを備え、前記中継装置は、前記計測装置と同期して、自装置を前記稼動状態に切り替える第1の稼動部と、前記第1の稼動部が自装置を前記稼動状態に切り替えた場合に、前記計測装置から計測情報を受信する受信部と、前記収集装置を搭載された列車の近接を検出する検出部と、前記検出部が前記列車の近接を検出した場合に、自装置を前記稼動状態に切り替える第2の稼動部と、前記第2の稼動部が自装置を稼動状態に切り替えた場合に、前記受信部が受信した計測情報を前記収集装置に送信する送信部と、前記受信部が前記計測情報を受信した後、及び前記送信部が前記計測情報を送信した後に、自装置を前記省電力状態に切り替える省電力部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明において、前記中継装置の検出部は、列車の走行による振動を検出する圧電素子により列車の近接を検出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記中継装置の検出部の圧電素子に生じた起電力を自装置の駆動に用いることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、計測対象物の物理量を計測する複数の計測装置と、列車に搭載され、前記計測装置による計測情報を収集する収集装置と、前記計測装置による計測結果を前記収集装置に送信する中継装置とを備える計測情報収集システムを用いた計測情報収集方法であって、前記計測装置の稼動部及び前記中継装置の第1の稼動部は、同期して自装置を所定の電力量で動作させる稼動状態に切り替え、前記計測装置の計測部は、計測対象物の物理量を計測して当該物理量を示す計測情報を生成し、前記計測装置の送信部は、前記計測装置の計測部が生成した計測情報を前記中継装置に送信し、前記中継装置の受信部は、前記計測装置から計測情報を受信し、前記計測装置の省電力部は、前記計測装置の送信部が前記計測情報を送信した後に、自装置を所定の電力量より低い電力量で動作させる省電力状態に切り替え、前記中継装置の省電力部は、前記中継装置の受信部が前記計測情報を受信した後に、自装置を前記省電力状態に切り替え、前記中継装置の検出部は、前記収集装置を搭載された列車の近接を検出し、前記中継装置の第2の稼動部は、前記中継装置の検出部が前記列車の近接を検出した場合に、自装置を前記稼動状態に切り替え、前記中継装置の送信部は、前記中継装置の第2の稼動部が自装置を稼動状態に切り替えた場合に、前記中継装置の受信部が受信した計測情報を前記収集装置に送信し、前記中継装置の省電力部は、前記中継装置の送信部が前記計測情報を送信した後に、自装置を前記省電力状態に切り替えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、計測対象物の物理量を計測する複数の計測装置が送信する計測結果を、列車に搭載され、前記計測装置による計測情報を収集する収集装置に送信する中継装置であって、前記計測装置と同期して、自装置を前記稼動状態に切り替える第1の稼動部と、前記第1の稼動部が自装置を前記稼動状態に切り替えた場合に、前記計測装置から計測情報を受信する受信部と、前記収集装置を搭載された列車の近接を検出する検出部と、前記検出部が前記列車の近接を検出した場合に、自装置を前記稼動状態に切り替える第2の稼動部と、前記第2の稼動部が自装置を稼動状態に切り替えた場合に、前記受信部が受信した計測情報を前記収集装置に送信する送信部と、前記受信部が前記計測情報を受信した後、及び前記送信部が前記計測情報を送信した後に、自装置を前記省電力状態に切り替える省電力部とを備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、計測対象物の物理量を計測する複数の計測装置が送信する計測結果を、列車に搭載され、前記計測装置による計測情報を収集する収集装置に送信する中継装置を、前記計測装置と同期して、自装置を前記稼動状態に切り替える第1の稼動部、前記第1の稼動部が自装置を前記稼動状態に切り替えた場合に、前記計測装置から計測情報を受信する受信部、前記収集装置を搭載された列車の近接を検出する検出部、前記検出部が前記列車の近接を検出した場合に、自装置を前記稼動状態に切り替える第2の稼動部、前記第2の稼動部が自装置を稼動状態に切り替えた場合に、前記受信部が受信した計測情報を前記収集装置に送信する送信部、前記受信部が前記計測情報を受信した後、及び前記送信部が前記計測情報を送信した後に、自装置を前記省電力状態に切り替える省電力部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、計測装置及び中継装置は、同期してそれぞれの装置を所定の電力量で動作させる稼動状態に切り替え、計測装置及び中継装置の間で計測情報の伝送を行う。そして伝送終了後、計測装置及び中継装置は、それぞれの装置を所定の電力量より小さい電力量で動作させる省電力状態に切り替える。これにより、計測装置及び中継装置は、少ない消費電力で計測情報の伝送を行うことができる。
また、中継装置は、検出部が収集装置を搭載した列車の近接を検出した場合に、自装置を所定の電力量で動作させる稼動状態に切り替えて中継装置、収集装置間で計測情報の伝送を行う。これにより、中継装置は、確実に収集装置に計測信号の伝送ができるときに、稼動状態に切り替わり、計測信号の送信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による計測情報収集システムの構成図である。
【図2】計測情報収集システムの動作を示すシーケンス図である。
【図3】計測装置及び中継装置の状態の遷移を示す図である。
【図4】電力消費レベルの推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による計測情報収集システムの構成図である。
計測情報収集システムは、計測装置100−1〜100−N(以下、計測装置100−1〜100−Nを総称する場合は計測装置100と表記する)、中継装置200、収集装置300を備える。
計測装置100は、計測対象物の物理量を計測して計測情報を生成し、当該計測情報を中継装置200に送信する。
中継装置200は、計測装置100から計測情報を受信し、当該計測情報を無線で収集装置300に送信する。
収集装置300は、列車に搭載され、中継装置200から無線で計測情報を受信する。
【0019】
計測装置100は、切替部101(稼動部、省電力部)、計測部102、送信部103を備える。
切替部101は、予め決められた時刻(以下、稼動時刻と呼ぶ)に、自装置の状態を所定の電力量で動作させる稼動状態に切り替える。具体的には、切替部101は、内部メモリに1つまたは複数の稼動時刻を記憶しており、当該稼動時刻と自装置の内蔵時計が示す時刻とを比較し、一致するものが存在した場合に状態を稼動状態に切り替える。なお、全ての計測装置100の切替部101は、それぞれ同期して同時刻に自装置を稼動状態に切り替える。すなわち、計測装置100それぞれの切替部101の内部メモリは、稼動時刻として同一の時刻を記憶する。
また、切替部101は、送信部103が測定情報を中継装置200に送信すると、自装置の状態を稼動状態の電力量より低い電力量で動作させる省電力状態に切り替える。
計測部102は、切替部101が自装置の状態を稼動状態に切り替えると、計測対象物の物理量を計測し、当該物理量を示す計測情報を生成する。ここで、計測部102が計測する計測対象物の物理量としては、例えば、トンネルの内空変位やひび割れ、レールの温度などが挙げられる。
送信部103は、計測部102が生成した計測情報を中継装置200に送信する。
【0020】
中継装置200は、切替部201(第1の稼動部、第2の稼動部、省電力部)、受信部202、記憶部203、検出部204、送信部205を備える。
切替部201は、現在時刻が稼動時刻になったとき、及び検出部204が列車の近接を検知したときに、自装置の状態を所定の電力量で動作させる稼動状態に切り替える。なお、切替部201は、計測装置100の切替部101と同様に、内部メモリに1つまたは複数の稼動時刻を記憶しており、当該稼動時刻に基づいて状態を切り替える。このとき、切替部201の内部メモリが記憶する稼動時刻は、計測装置100の切替部101が記憶する稼動時刻と同一の時刻である。
また、切替部201は、受信部202が全ての計測装置から計測情報を受信し終えたとき、及び送信部205が計測情報を収集装置300に送信したときに、自装置の状態を稼動状態の電力量より低い電力量で動作させる省電力状態に切り替える。
受信部202は、切替部201が時刻に基づいて自装置の状態を稼動状態に切り替えると、計測装置100のそれぞれから計測情報を受信し、当該計測情報を記憶部203に記録する。
記憶部203は、計測装置100が計測した計測情報を記憶する。
【0021】
検出部204は、列車の近接を検出し、切替部201及び送信部205に列車の近接を通知する。本実施形態では、検出部204は、圧電素子を備え、当該圧電素子が列車の走行による振動を検出することで、列車の近接を検出する。また、圧電素子は、電力の供給無しで動作するため、検出部204は、自装置の状態が省電力状態のときにも列車の近接を検出することができる。
送信部205は、切替部201が列車の近接により自装置の状態を稼動状態に切り替えると、記憶部203が記憶する計測情報を収集装置300に送信する。
【0022】
そして、本実施形態による計測情報収集システムは、概略以下に示す動作を実行する。
まず、計測装置100の切替部101及び中継装置200切替部201は、同期してそれぞれの装置を所定の電力量で動作させる稼動状態に切り替える。次に、計測装置100の計測部102は、計測対象物の物理量を計測して当該物理量を示す計測情報を生成し、送信部103は、計測部102が生成した計測情報を中継装置200に送信する。次に、切替部101は、送信部103が計測情報を送信した後に、自装置を所定の電力量より低い電力量で動作させる省電力状態に切り替える。
他方、中継装置200の受信部202は、計測装置100から計測情報を受信する。そして、切替部201は、受信部202が計測情報を受信した後に、自装置を前記省電力状態に切り替える。
【0023】
また、中継装置200の検出部204は、収集装置300を搭載された列車の近接を検出し、これにより切替部201は、自装置を前記稼動状態に切り替える。次に、送信部205は、切替部201が自装置を稼動状態に切り替えた場合に、受信部202が受信した計測情報を収集装置300に送信する。そして、切替部201は、送信部205が計測情報を送信した後に、自装置を省電力状態に切り替える。
これにより、列車に搭載された収集装置300に、少ない消費電力で計測情報を送信することができる。
【0024】
次に、本実施形態による計測情報収集システムの具体的な動作を説明する。
まず、通常時の計測情報収集システムの動作を説明する。
図2は、計測情報収集システムの動作を示すシーケンス図である。
計測情報収集システムの運用を開始すると、計測装置100の切替部101は、内部メモリから稼動時刻を読み出し、当該稼動時刻と自装置の内蔵時計が示す現在時刻とが一致するか否かを判定する(ステップS101)。切替部101は、稼動時刻と現在時刻とが一致しないと判定した場合(ステップS101:NO)、稼動時刻と現在時刻とが一致するまでステップS101の判定処理を繰り返し実行する。他方、切替部101は、稼動時刻と現在時刻とが一致すると判定した場合(ステップS101:YES)、自装置の状態を稼動状態に切り替える(ステップS102)。なお、計測装置100の稼動状態への切り替えは、切替部101が自装置のCPUのクロック周波数及び電源電圧を所定の値に上げ、無線通信機能及びセンシング機能を稼動することで行う。
【0025】
また、中継装置200の切替部201は、計測装置100の切替部101と同様に、内部メモリから稼動時刻を読み出し、当該稼動時刻と自装置の内蔵時計が示す現在時刻とが一致するか否かを判定する(ステップS201)。切替部201は、稼動時刻と現在時刻とが一致すると判定した場合(ステップS201:YES)、自装置の状態を稼動状態に切り替える(ステップS202)。なお、中継装置200の稼動状態への切り替えは、切替部201が自装置のCPUのクロック周波数及び電源電圧を所定の値に上げ、無線通信機能を稼動することで行う。次に、受信部202は、計測装置100からの計測情報の受信を待機する(ステップS203)。
【0026】
ステップS102で計測装置100が稼動状態となると、計測装置100の計測部102は、計測対象物の物理量を電気信号に変換することで、計測対象物の物理量を計測する(ステップS103)。次に、計測部102は、変換して得られた電気信号の電圧値または電流値から計測対象物の物理量を算出し、当該物理量を示す計測情報を生成する(ステップS104)。
【0027】
次に、送信部103は、計測部102が生成した計測情報を中継装置に送信する(ステップS105)。このとき、送信部103は、自装置が他の計測装置100を介して中継装置200と接続している場合、当該他の計測装置100を介して中継装置に計測情報を送信する。次に、切替部101は、自装置の状態を省電力状態に切り替える(ステップS106)。なお、計測装置100の省電力状態への切り替えは、切替部101が自装置のCPUのクロック周波数及び電源電圧を下げ、無線通信機能及びセンシング機能を停止することで行っても良いし、CPU及びセンサへの給電を停止することで行っても良い。
【0028】
他方、ステップS203で中継装置200の受信部202が受信待機を開始し、ステップS105で計測装置100が計測情報を送信すると、受信部202は、計測装置100から計測情報を受信する(ステップS204)。次に、受信部202は、受信した計測情報を記憶部203に記録する(ステップS205)。このとき、受信部202は、受信元の計測装置の識別情報及び受信日時に関連付けて計測情報を記録しておくことが望ましい。
【0029】
次に、受信部202は、計測情報を全ての計測装置100から受信したか否かを判定する(ステップS206)。当該判定は、例えば、受信部202が予め全ての計測装置100の識別情報を示すリストを記憶しておき、計測情報の受信毎に当該リストから受信元の識別情報を削除し、当該リストが空であるか否かを判定することで実行することができる。
【0030】
受信部202は、計測情報を受信していない計測装置100が存在すると判定した場合(ステップS206:NO)、ステップS204に戻り、残りの計測情報の受信を行う。他方、受信部202が計測情報を全ての計測装置100から受信したと判定した場合(ステップS206:YES)、切替部201は、自装置の状態を省電力状態に切り替える(ステップS207)。なお、中継装置200の省電力状態への切り替えは、切替部201が自装置のCPUのクロック周波数及び電源電圧を下げ、無線通信機能を停止することで行う。なお、中継装置200は、列車接近を検知してただちに稼動状態に遷移する必要があるため、計測装置100のように、CPUへの給電を停止することで省電力状態に遷移することは好ましくない。
これにより、中継装置200は、計測装置100が測定した計測情報を集約することができる。
【0031】
他方、切替部201がステップS201で、稼動時刻と現在時刻とが一致しないと判定した場合、検出部204は、収集装置300を搭載した列車が自装置に近接しているか否かを判定する(ステップS211)。具体的には、検出部204は、レールの側面に設けられた圧電素子に接続され、当該圧電素子から列車の走行による振動により発生する起電力を入力する。そして、圧電素子の起電力が所定の閾値を上回ったときに、検出部204は、収集装置300を搭載した列車が自装置に近接していると判定する。
また、検出部204は、圧電素子から入力された起電力を二次電池またはコンデンサに充電し、充電された電力を以降の自装置の駆動の補助に用いる。これにより、中継装置200は、電源からの消費電力量を削減することができる。
なお、圧電素子の設置場所は、レールの側面に限られず、例えば、まくら木や軌道路盤など、列車の走行による振動を検知できる場所であれば良い。
【0032】
検出部204が、収集装置300を搭載した列車が自装置に近接していないと判定した場合(ステップS211:NO)、ステップS201に戻り、現在時刻と稼動時刻との比較を継続する。
他方、検出部204が、収集装置300を搭載した列車が自装置に近接していると判定した場合(ステップS211:YES)、切替部201は、自装置の状態を稼動状態に切り替える(ステップS212)。
【0033】
次に、送信部205は、記憶部203が記憶する計測情報を、収集装置300に送信する(ステップS213)。送信部205が、計測情報の送信を完了すると、切替部201は、自装置の状態を省電力状態に切り替える(ステップS214)。
また、ステップS213で送信部205が計測情報を送信すると、収集装置300は、当該計測情報を受信する(ステップS301)。これにより、中継装置200は、計測装置100から受信した情報を収集装置300に転送することができる。
そして、収集装置300は、列車の移動に伴い、計測情報の利用箇所(例えば、センターサーバなど)に受信した計測情報を運搬する。これにより、計測装置100及び中継装置200が設置された場所において携帯電話回線を用いた通信など他の通信手段が利用できない場合にも、計測情報の利用箇所へ確実に計測情報を出力することができる。
【0034】
次に、本実施形態における計測装置100及び中継装置200の状態の遷移について説明する。
図3は、計測装置及び中継装置の状態の遷移を示す図である。
図3に示すように、計測装置100、中継装置200ともに、現在時刻が所定の稼動時刻になった時点で省電力状態から稼動状態に遷移し、計測装置100から中継装置200に計測情報を送信する。そして、計測情報の送受信が終了した時点で、計測装置100、中継装置200ともに、省電力状態に遷移する。
また、中継装置200は、上述した稼動時刻に基づく状態遷移に加え、列車検知により稼動状態に遷移する。このときは、各計測装置100から事前に(一定周期毎の稼動状態時に)受信して記憶部203に記録した計測情報を、収集装置300に送信する。そして、計測情報の送信が終了した時点で、中継装置は省電力状態に遷移する。
【0035】
図4は、電力消費レベルの推移を示す図である。
図4に示すように、列車が近接していない場合は、計測装置100及び中継装置200は、稼動時刻毎に計測装置100から中継装置200への計測情報の伝送が行われ、これにより消費電力が上がる。列車が近接した場合は、計測装置100から収集した計測情報をまとめて収集装置300に送信するため、中継装置200のみ消費電力が上がる。
【0036】
このように、本実施形態によれば、計測装置100及び中継装置200は、同期してそれぞれの装置を所定の電力量で動作させる稼動状態に切り替え、計測装置100及び中継装置200間で計測情報の伝送を行う。そして伝送終了後、計測装置100及び中継装置200は、それぞれの装置を所定の電力量より小さい電力量で動作させる省電力状態に切り替える。これにより、計測装置100及び中継装置200は、少ない消費電力で計測情報の伝送を行うことができる。
また、中継装置200は、検出部204が収集装置300を搭載した列車の近接を検出した場合に、自装置を所定の電力量で動作させる稼動状態に切り替えて中継装置200及び収集装置300間で計測情報の伝送を行う。これにより、中継装置200は、確実に収集装置300に計測信号の伝送ができるときに、稼動状態に切り替わり、計測信号の送信を行うことができる。
【0037】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態では、計測装置100の切替部101及び中継装置200の切替部201が、それぞれ内部メモリに1つまたは複数の稼動時刻を記憶し、当該稼動時刻に基づいて状態を稼動状態に切り替える例を説明した。しかし、これに限られず、例えば、計測装置100の切替部101及び中継装置200の切替部201は、前回自装置の状態を稼動状態に切り替えた時刻からの経過時間を計時し、当該経過時間が所定のインターバル時間と一致したときに再度稼動状態に切り替えるようにしても良い。
【0038】
但し、この場合、中継装置200の切替部201は、計測装置100と同時刻に状態の切り替えを行うために、列車の近接により状態を切り替えた時刻からの経過時間の計時を行わない。つまり、上述したステップS202によって稼動状態となった場合には経過時間の計時を行い、ステップS212によって稼動状態となった場合には経過時間の計時を行わない。
【0039】
また、本実施形態では、中継装置200の検出部204が受動型センサである圧電素子を備える場合を説明したが、これに限られない。例えば、検出部204が圧電素子の代わりに、例えば車軸センサなどの能動型センサを備え、中継装置200に供給される電源と別の電源から当該能動型センサへ電力を供給することで、同様の効果を得ることができる。
【0040】
このとき、検出部204が備える能動型センサは、計測装置100や中継装置200の消費電力より少ない消費電力で動作するものを用いることが望ましい。また、能動型センサを用いる場合、検出部204は、列車の運行情報を記憶しておき、列車が通過すると見込まれる時刻より所定の時間前の時刻から能動型センサを動作させることで、能動型センサの消費電力を削減することができる。
また、検出部204が備えるセンサとしては、圧電素子や車軸センサに限られず、加速度センサなどの他の機械式センサなどを用いても良い。但し、検出部204が備えるセンサとしては、圧電素子を用いることが好ましい。その理由は、列車の走行による振動を検出することから他のセンサより早く列車の近接を検出でき、さらに、受動型センサであり、発生した起電力を自装置の駆動に用いることができるためである。
【0041】
また、本実施形態では、計測装置100と中継装置200とがそれぞれ正確な時計を有し、時刻のズレが生じない前提で説明を行ったが、実際には装置間で時刻のズレが生じる。そのため実際には、中継装置200は、稼動状態中に所定の通信の終了後、計測装置100に時刻情報を送信し、計測装置100は、中継装置200から受信した時刻情報に基づいて時刻あわせを行う。なお、ネットワークを介した時刻あわせには、NTP(Network Time Protocol)などを用いられることが多いが、これに限られず、より簡易なプロトコルを用いて時刻合わせを行っても良い。
【0042】
また、本実施形態では、収集装置300が、列車の移動に伴い、計測情報の利用箇所に受信した計測情報を運搬する場合を説明したが、これに限られず、例えば、収集装置300は、鉄道沿線のうち携帯電話圏外で計測情報を受信し、列車の移動に伴い、携帯電話圏内に移動した際に、当該計測情報をすみやかに送信するようにしても良い。
【0043】
上述の計測装置100、中継装置200、収集装置300は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0044】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0045】
100、100−1〜100−N…計測装置 101…切替部 102…計測部 103…送信部 200…中継装置 201…切替部 202…受信部 203…記憶部 204…検出部 205…送信部 300…収集装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物の物理量を計測する複数の計測装置と、列車に搭載され、前記計測装置による計測情報を収集する収集装置と、前記計測装置による計測結果を前記収集装置に送信する中継装置とを備える計測情報収集システムであって、
前記計測装置は、
他の計測装置及び中継装置と同期して、自装置を所定の電力量で動作させる稼動状態に切り替える稼動部と、
前記稼動部が自装置を前記稼動状態に切り替えた場合に、計測対象物の物理量を計測し、当該物理量を示す計測情報を生成する計測部と、
前記計測部が生成した計測情報を前記中継装置に送信する送信部と、
前記送信部が前記計測情報を送信した後に、自装置を所定の電力量より低い電力量で動作させる省電力状態に切り替える省電力部と
を備え、
前記中継装置は、
前記計測装置と同期して、自装置を前記稼動状態に切り替える第1の稼動部と、
前記第1の稼動部が自装置を前記稼動状態に切り替えた場合に、前記計測装置から計測情報を受信する受信部と、
前記収集装置を搭載された列車の近接を検出する検出部と、
前記検出部が前記列車の近接を検出した場合に、自装置を前記稼動状態に切り替える第2の稼動部と、
前記第2の稼動部が自装置を稼動状態に切り替えた場合に、前記受信部が受信した計測情報を前記収集装置に送信する送信部と、
前記受信部が前記計測情報を受信した後、及び前記送信部が前記計測情報を送信した後に、自装置を前記省電力状態に切り替える省電力部と
を備えることを特徴とする計測情報収集システム。
【請求項2】
前記中継装置の検出部は、列車の走行による振動を検出する圧電素子により列車の近接を検出することを特徴とする請求項1に記載の計測情報収集システム。
【請求項3】
前記中継装置の検出部の圧電素子に生じた起電力を自装置の駆動に用いることを特徴とする請求項2に記載の計測情報収集システム。
【請求項4】
計測対象物の物理量を計測する複数の計測装置と、列車に搭載され、前記計測装置による計測情報を収集する収集装置と、前記計測装置による計測結果を前記収集装置に送信する中継装置とを備える計測情報収集システムを用いた計測情報収集方法であって、
前記計測装置の稼動部及び前記中継装置の第1の稼動部は、同期して自装置を所定の電力量で動作させる稼動状態に切り替え、
前記計測装置の計測部は、計測対象物の物理量を計測して当該物理量を示す計測情報を生成し、
前記計測装置の送信部は、前記計測装置の計測部が生成した計測情報を前記中継装置に送信し、
前記中継装置の受信部は、前記計測装置から計測情報を受信し、
前記計測装置の省電力部は、前記計測装置の送信部が前記計測情報を送信した後に、自装置を所定の電力量より低い電力量で動作させる省電力状態に切り替え、
前記中継装置の省電力部は、前記中継装置の受信部が前記計測情報を受信した後に、自装置を前記省電力状態に切り替え、
前記中継装置の検出部は、前記収集装置を搭載された列車の近接を検出し、
前記中継装置の第2の稼動部は、前記中継装置の検出部が前記列車の近接を検出した場合に、自装置を前記稼動状態に切り替え、
前記中継装置の送信部は、前記中継装置の第2の稼動部が自装置を稼動状態に切り替えた場合に、前記中継装置の受信部が受信した計測情報を前記収集装置に送信し、
前記中継装置の省電力部は、前記中継装置の送信部が前記計測情報を送信した後に、自装置を前記省電力状態に切り替える
ことを特徴とする計測情報収集方法。
【請求項5】
計測対象物の物理量を計測する複数の計測装置が送信する計測結果を、列車に搭載され、前記計測装置による計測情報を収集する収集装置に送信する中継装置であって、
前記計測装置と同期して、自装置を前記稼動状態に切り替える第1の稼動部と、
前記第1の稼動部が自装置を前記稼動状態に切り替えた場合に、前記計測装置から計測情報を受信する受信部と、
前記収集装置を搭載された列車の近接を検出する検出部と、
前記検出部が前記列車の近接を検出した場合に、自装置を前記稼動状態に切り替える第2の稼動部と、
前記第2の稼動部が自装置を稼動状態に切り替えた場合に、前記受信部が受信した計測情報を前記収集装置に送信する送信部と、
前記受信部が前記計測情報を受信した後、及び前記送信部が前記計測情報を送信した後に、自装置を前記省電力状態に切り替える省電力部と
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項6】
計測対象物の物理量を計測する複数の計測装置が送信する計測結果を、列車に搭載され、前記計測装置による計測情報を収集する収集装置に送信する中継装置を、
前記計測装置と同期して、自装置を前記稼動状態に切り替える第1の稼動部、
前記第1の稼動部が自装置を前記稼動状態に切り替えた場合に、前記計測装置から計測情報を受信する受信部、
前記収集装置を搭載された列車の近接を検出する検出部、
前記検出部が前記列車の近接を検出した場合に、自装置を前記稼動状態に切り替える第2の稼動部、
前記第2の稼動部が自装置を稼動状態に切り替えた場合に、前記受信部が受信した計測情報を前記収集装置に送信する送信部、
前記受信部が前記計測情報を受信した後、及び前記送信部が前記計測情報を送信した後に、自装置を前記省電力状態に切り替える省電力部
として機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−193254(P2011−193254A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57917(P2010−57917)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】