説明

計測装置

スラストフレームおよび計測フレームを含む、ヘキサポッド型座標計測機のような位置計測装置が記述される。計測フレームは、複数の駆動される伸張可能な脚(8)によって可動プラットフォーム(6)に結合された荷重支持ベース(10)を含む。計測ベース(14)を含む計測フレームは、キネマチックマウント16のようなベース取付け機構によって荷重支持ベース(10)に取り付けられる。ベース取付け機構は、計測ベース(14)に伝達される荷重支持ベース(10)のいかなるひずみも阻止するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、計測装置、および、特に、分離したスラストおよび計測フレームを有する非デカルト座標計測機械のような、座標計測機械に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の非デカルト型機械が知られている。例えば、種々のヘキサポッド型の配置が特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載されている。
【0003】
特許文献1は、六本の油圧式の伸張可能な脚によってベースに取り付けられた上方の可動プラットフォームを含む、ヘキサポッド型の工作機械を記述している。各々の駆動される脚は、プラットフォームおよびベース間に設けられた、一体の長さ計測手段または分離した計測脚の配置を含む。
【0004】
特許文献2は、種々のヘキサポッド型の座標計測機械を記述している。一つの実施例において、ヘキサポッドは、コーナー支持要素に結合された三本の堅いストラットを有する三角形のベース構造を含む。六つの駆動される脚の第一端は、コーナー支持要素に取り付けられ、他方、六つの駆動される脚の第二端は、プラットフォームに取付けられる。プラットフォームは、したがって、駆動される脚の伸張または収縮により、ベース構造に対して動かされる。脚の長さは、ベースの近辺で駆動される脚に、または、ベースのコーナー支持要素に、直接取り付けられたレーザー干渉計を用いて計測される。
【0005】
特許文献3は、六本の予め較正された計測バーを含む、別のヘキサポッド型の計測構造を記述している。構造はそれの較正のために座標計測機械に置かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5028180号明細書
【特許文献2】米国特許第5604593号明細書
【特許文献3】米国特許第6226884号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、したがって、上述したタイプの従来装置と比較して高い精度の計測を提供できる。特に、そのような計測は、計測装置のスラストフレームに存在する避けられないひずみによって実質的に影響されない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第一の特徴によれば、位置計測装置は、スラストフレームおよび計測フレームを含み、スラストまたは荷重支持フレームは、複数の駆動される伸張可能な脚によって可動プラットフォームに結合された荷重支持ベースを含み、計測フレームは、計測ベースを含み、計測ベースは、ベース取付け手段によって荷重支持ベースに取り付けられており、ベース取付け手段は、計測ベースに伝達される荷重支持ベースのひずみを阻止するように配置される。
【0009】
この発明は、したがって、スラストフレームおよび分離した計測フレームを有する位置計測装置を提供する。スラストフレームは、荷重支持ベースに対する可動プラットフォームの制御された運動を提供するための複数の駆動される脚を含む。計測フレームのベースは、ベース取付け手段によってスラストフレームのベースに取り付けられる。ベース取付け手段は、荷重支持ベースから計測ベースへ伝達される、いかなる変形力も阻止する。
【0010】
この発明は、したがって、荷重支持構造に生じるいかなる負荷力も計測構造に伝達されない位置計測装置を提供する。例えば、可動プラットフォームが方向転換されるとき、または、重い対象が荷重支持ベースに置かれたとき、スラストフレームに力が存在する。この発明は、また、スラストフレームの膨張または収縮を生じさせる熱膨張作用が計測構造のひずみをもたらさないことを確実にする。この態様におけるスラストフレームからの計測フレームの分離は、したがって、計測フレームのいかなる実質的なひずみも阻止し、計測精度が低下されないことを確実にする。
【0011】
有利には、ベース取付け手段は、荷重支持ベースと計測ベースとの間の少なくとも三点の接触を提供する。便利には、ベース取付け手段は、キネマチックマウントを含む。キネマチックマウントは、決して本質的ではないが、いかなる余分の拘束も提供することなく、計測ベースと荷重支持ベースの間の六自由度を拘束するので好ましい。
【0012】
キネマチックマウントは、例えば、円錐、V溝および平面の配置を含む。このタイプのキネマチックマウントは、荷重支持ベースのいかなる変形力も計測ベースに伝達されないという態様で、計測ベースが荷重支持ベースに取り付けられることを可能にする。さらに、そのようなキネマチックマウントは、荷重支持ベースに対する計測ベースの正確かつ再現可能な位置決めを可能にする。有利には、ベース取付け手段は、計測ベースを荷重支持ベースに実質的に平行に維持する。
【0013】
計測ベースは、便利には、荷重支持ベースの下方に装架される。このことは、計測ベースが装置への接近に干渉することを防止する。計測ベースと荷重支持ベースを接触下に保つために、ベース取付け手段は、便利には、少なくとも一つの磁石を含む。一またはそれ以上の磁石が、必要に応じて、計測ベースおよび/または荷重支持ベースに固定され、ベースは、磁石の吸引作用によって互いに強く引かれる。そのような配置において、計測ベースおよび荷重支持ベースの少なくとも一つは、有利には、適切な磁気材料を含む。代わりに、ベース取付け手段は、計測ベースと荷重支持ベースを接触下に保つために、柔軟性の接着剤または柔軟性の機械的構成要素を含む。有利には、一つの軸に沿って柔軟であり、他の二つの軸に沿って堅固である柔軟性の機械的構成要素が、計測フレームとスラストフレームのキネマチックカップリングを創生するような配置で使用される。
【0014】
有利には、計測ベースは、複数の相互に連結されるストラットを含む。例えば、そのようなストラットの三角形の配置が設けられる。
【0015】
有利には、計測フレームは、スラストフレームと異なった熱膨張係数を有する。好ましくは、計測フレームは、スラストフレームより小さな熱膨張係数を有する。計測フレームは、有利には、小さい熱膨張係数を有する。有利には、計測フレームは、15ppm/℃より小さい、さらに好ましくは、10ppm/℃より小さい、さらに好ましくは、5ppm/℃小さい、さらに好ましくは、3ppm/℃より小さい、さらに好ましくは、2ppm/℃より小さい、または、さらに好ましくは、1ppm/℃より小さい熱膨張係数を有する。
【0016】
計測フレームは、便利には、その正確な組成に依存する、ほぼ0.5〜1.5ppm/℃の熱膨張係数を有する、ニッケル−鉄合金であるINVAR(登録商標)から形成される。代わりに、計測フレームは、ZERODUR(登録商標)のようなガラスセラミック材料から形成される。ZERODURは、正確な組成に依存する、ほぼ0.02ppm/℃またはそれより小さい熱膨張係数を有する。そのような低い熱膨張係数は、スラストフレームを形成するのに用いられるアルミニウム(23ppm/℃)または黄銅(19ppm/℃)のような従来の材料のそれよりも一桁以上小さいことが理解される。
【0017】
低い熱膨張係数を有する材料(例えば、INVAR)から作られる計測フレームを提供することは、温度の変化で導入される、いかなる実質的な計測エラーも防止する。しかしながら、そのような材料は、多くの場合機械加工が難しく、典型的に、アルミニウムのような標準の工場材料より実質的により高価である。この発明は、したがって、INVARのような材料の計測上の利点と、アルミニウムと結びついた製造の容易さを結合しており、例えば、INVARの計測フレームは、アルミニウムのような伝統的な材料から作られるトラストフレームと結合される。
【0018】
便利には、計測ベースは、複数の伸張可能な計測脚によって可動計測プラットフォームに結合される。計測プラットフォームは、便利には、プラットフォーム取付け手段によって可動プラットフォームに取り付けられる。プラットフォーム取付け手段は、好ましくは、計測プラットフォームに伝達される可動プラットフォームのひずみを阻止するように配置される。このことは、計測フレームの計測プラットフォームに伝達される、スラストフレームの可動プラットフォームからのいかなる変形力も阻止する。プラットフォーム取付け手段は、便利には、荷重支持プラットフォームと計測プラットフォームとの間に少なくとも三つの接触点を設ける。有利には、プラットフォーム取付け手段は、キネマチックマウントを含む。
【0019】
この態様において、計測プラットフォームは、スラストフレームの可動プラットフォームと共に動くように配置される。プラットフォーム取付け手段は、ベース取付け手段と同様のタイプであり、計測プラットフォームに伝達される可動プラットフォームのいかなるひずみまたは力も阻止する。この態様において、計測プラットフォームは、また、荷重支持プラットフォームのいかなるひずみからも分離される。計測プラットフォームおよびスラストフレームの可動(荷重支持)プラットフォームは、プラットフォーム取付け手段によって実質的に平行に維持される。
【0020】
有利には、計測脚の端部が、複数の計測継手によって、計測ベースおよび計測プラットフォームに取り付けられる。好ましくは、上述の計測継手はボール継手を含む。ボール継手は、計測目的にとって好ましい、高度に正確な位置決めを提供する。
【0021】
好ましくは、駆動される伸張可能な脚の端部は、複数の荷重支持継手を介して荷重支持ベースおよび可動プラットフォームに取り付けられる。荷重支持継手は、便利には、フック継手のような多軸回転継手である。フック継手は、高い荷重支持、低い摩擦能力を備える。
【0022】
便利には、旋回継手の結合組立体が、計測継手および荷重支持継手の双方を提供する。旋回継手組立体は、有利には、二またはそれ以上の回転軸の周りに回転運動を提供する多軸回転継手部を含み、該二またはそれ以上の回転軸は、実質的に交点で交差しており、および、該交点の近辺に位置されるボールを含むボール継手部を含む。有利には、旋回継手の結合組立体は、ボール継手の回転中心が、実質的に、多軸回転継手の回転中心と一致するように配置される。そのような旋回継手の結合組立体は、この出願と共通の優先権を主張している、出願人の同時係属の国際(PCT)特許出願(代理人参照番号;731)により詳細に記述される。そのような結合継手が使用されるなら、装置は、便利には、複数の結合脚を含み、各々の結合脚は、計測構造および機械的に分離している荷重支持構造を含む。このタイプの伸張可能な脚組立体は、英国特許出願第0611985.3(代理人参照番号;693)から優先権を主張している出願人の同時係属の国際(PCT)特許出願に、より詳細に記述される。
【0023】
好ましくは、装置は、較正装置を含み、較正装置は、荷重支持ベースに取り付けられる。好ましくは、較正装置は、荷重支持ベースに対して、再現可能に置くことができる。装置は、少なくとも一つの突出する較正メンバー、例えば、その遠位端にボールを有するシャフトを含む。双方が荷重支持ベースに再現可能に(例えば、キネマチックに)取り付けられる較正装置および計測ベースを有することは、計測ベースに対して既知の位置を有する較正装置を提供する。このことは、計測フレームを用いて行なわれる計測の較正を可能にする。
【0024】
有利には、伸張可能な脚の伸張を制御するために制御器が設けられる。制御器は、適切にプログラムされるコンピュータである。
【0025】
有利には、スラストフレームの可動プラットフォームは、それに堅固に固定されたクイルを有する。クイルは、それに取り付けられたか、または取り付けうる計測プローブを有するように配置される。計測プローブは、任意の既知のタイプのものである。有利には、計測プローブは、スライラスの運動の少なくとも一つの付加的な回転軸を提供するための連接するヘッドを含む。
【0026】
有利には、荷重支持ベースは、測定される対象を支持するためのワークピーステーブルトップ(例えば、花崗岩の厚板)を含む。荷重支持ベースは、便利には、例えば、ワークピーステーブルトップが取り付けられる支持フレームを含む。
【0027】
荷重支持ベースは、直接または適切な脚を介して、床に置かれ、荷重支持プラットフォームは、その上に置かれる。代わりに、荷重支持ベースは、プラットフォームが荷重支持ベースの下方に置かれる場合において、さらなる支持構造(例えば、堅固なフレーム)によって支持される。
【0028】
好ましくは、装置は、三本またはそれ以上の駆動される伸張可能脚を含む。例えば、ヘキサポッド型の配置は、六本の駆動される伸張可能脚を有するように提供される。これらの脚は、上述のような一体の長さ計測手段を含むか、または、複数の分離した計測脚が設けられる。
【0029】
この発明の更なる特徴によれば、位置計測装置は、スラストフレームおよび計測フレームを含み、スラストフレームは、複数の駆動される伸縮可能脚によって可動プラットフォームに結合される荷重支持ベースを含み、計測フレームは、計測ベースを含み、取付け器具が、計測ベースを荷重支持ベースに取り付けるために設けられ、取付け器具は、計測ベースに伝達される荷重支持ベースのひずみを阻止するように配置される。
【0030】
この発明のさらなる特徴によれば、位置計測装置は、スラストフレームおよび計測フレームを含み、計測フレームは、スラストフレームより低い熱膨張係数を有する。
【0031】
この発明の更なる特徴によれば、位置計測機械は、スラストフレームおよび計測フレームを含み、スラストフレームは、一またはそれ以上の支持脚を介して基部に接しており、計測フレームが、直接、該一またはそれ以上の支持脚に取り付けられることで特徴づけられる。計測フレームは、したがって、スラストフレームには取り付けられず、基部から(例えば、床から)離れて計測フレームを保持する支持脚に取り付けられる。この配置は、スラストフレームに置かれる荷重による計測フレームのいかなる意味のある変形も阻止する。
【0032】
この発明のさらなる特徴によると、座標計測機械のベース部は、計測ベースおよび荷重支持ベースを含み、計測ベースは、複数の計測脚に取り付け可能であり、荷重支持ベースは、複数の駆動される脚に取付け可能であり、計測ベースは、荷重支持ベースから計測ベースに伝達されるいかなる変形力も阻止するベース取付け手段によって荷重支持ベースに取り付けられている。
【0033】
次に、この発明は、添付した図面を参照して、実施例のみによって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明のヘキサポッド型座標計測機の側面図である。
【図2】図1に示されたヘキサポッドの平面図である。
【図3】図1および図2に示された種類の伸張可能な駆動脚を詳細に示す図である。
【図4】分離した荷重支持および計測経路を有する継手を示す図である。
【図5】分離した荷重支持および計測経路を有する別の継手を示す図である。
【図6】この発明の別のヘキサポッド型座標計測機を示す図である。
【図7】空間的に離れた荷重支持および計測フレームを有する、この発明のヘキサポッド型座標計測機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1および図2を参照すると、この発明のヘキサポッド型座標計測機2が図示される。特に、図1および図2は、それぞれ、ヘキサポッド型座標計測機2の側面および平面図である。
【0036】
ヘキサポッド型座標計測機2は、ベース部4および六本の伸張可能な脚8によって空間的に隔たる可動プラットフォーム部6を含む。
【0037】
ベース部4は、複数の支持脚12を介して設置された、花崗岩の厚板のような荷重支持ベース10を含む。INVAR製のストラット15からなる三角形の枠組みを含む計測ベース14は、マウント16によって荷重支持ベース10の下方に装架される。各々のマウントは、磁石またはキネマチックな位置決め手段を含む。マウント16は、荷重支持ベース10から計測ベース14へ、力および荷重が伝達されないような態様で、計測ベース14が、荷重支持ベース10に対して、よく定められた、再現可能な位置に維持されることを確実にするように配置される。三つの継手18が、荷重支持ベース10および計測ベース14を伸張脚8に分離して結合するように設けられる。
【0038】
可動プラットフォーム部6は、荷重支持プラットフォーム20および計測プラットフォーム22を含む。計測プラットフォーム22は、INVAR製のストラット23からなる三角形の枠組みを含み、マウント30を介して荷重支持プラットフォーム20に取り付けられる。マウント30は、計測プラットフォーム22に対して荷重支持プラットフォーム20を位置づけるが、荷重が荷重支持プラットフォーム20から計測プラットフォーム22に伝達されないように配置される。三つの継手32が、荷重支持プラットフォーム20および計測プラットフォーム22を伸張脚8に分離して結合するように設けられる。この実施例においては、マウント30および継手32は、ベースのマウント16および継手18と同じタイプである。
【0039】
クイル24が荷重支持プラットフォーム20の下方に取り付けられ、球状のスタイラスチップを備えるスタイラス28を有する計測プローブ26を保持するように配置される。計測プローブは、タッチトリガープローブまたは既知のタイプの任意の計測プローブである。
【0040】
ベース部4および可動プラットフォーム部6を結合する六本の伸張可能な脚8は、それぞれ、荷重支持構造(点線32で示される)および計測構造(実線34で示される)を有する。脚8の計測構造34は、荷重支持構造32から機械的に分離されている。伸張可能な脚8は、また、脚を伸張/収縮するための駆動手段(例えば、モータ)を含む。脚8の計測構造34は、INVARから形成され、また、脚の長さを計測するための手段(例えば、光学エンコーダ)を含む。伸張可能な脚8の構造は、図3を参照して以下に詳細に説明される。
【0041】
ベース部4の継手18および可動プラットフォーム部6の継手32は、荷重支持ベース10が、伸張脚の荷重支持構造32を介して荷重支持プットフォーム20に結合されることを可能にする。同じ継手18は、また、計測ベース14が、脚の計測構造を介して計測プラットフォーム22に結合されることを可能にする。継手および脚の配置は、分離した荷重および計測フレームが設けられるというものであり、それによって、荷重支持要素のいかなるひずみも計測フレームのひずみを起こさないことを確実にする。さらに、計測フレーム(すなわち、計測ベース14、計測プラットフォーム22および伸張脚の計測構造34)は、全て、INVAR(登録商標)から形成される。INVARは、低い熱膨張係数を有し、計測フレームは、したがって、熱環境のいかなる変化によっても実質的に影響を受けない。計測フレームおよび荷重支持フレームの間のキネマチックマウント16および30は、また、計測フレームのひずみが、装置の荷重支持経路の熱膨張によって引き起こされないことを確実にする。
【0042】
使用にあたり、計測される物体(例えば、ワークピース)が荷重支持ベース10に置かれる。各々の伸張可能な脚8の長さは、関連したコンピュータ制御器25によって制御される。種々の脚の長さの変更は、可動プラットフォーム部6、および、それゆえに、クイル24がベースに対して動かされることを可能にする。この配置は物体の形状が計測されることを可能にする。
【0043】
図3を参照すると、上述したヘキサポッドの伸張可能な脚8が図示される。
【0044】
伸張可能な脚8は、外部管状部40および内部管状部42を含む。内部管状部42は、外部管状部40内をスライド可能であり、それによって、伸縮自在な伸張可能脚を形成する。内部および外部管状部が図3に示されるが、任意の種類の伸縮配置が設けられるということが留意されるべきである。駆動手段44は、要求に応じて、脚の展開および収縮を可能にする。駆動手段44は、図3に模式的に図示され、内部および外部の管状部の間の相対的な軸方向の運動を導く任意の配置を含む。例えば、駆動手段は、油圧ピストン、ねじジャッキであり、または、電気的な駆動配置を含む。使用にあたって、駆動手段44は、要求に応じて、伸張可能な脚の展開および収縮を生ぜしめ、それにより、ベース部4および可動プラットフォーム部6を離れさせ、または、同時に引き寄せる。荷重は管状部を介し伸張可能な脚8を通して伝達される。
【0045】
管状(荷重支持)部40および42に加えて、伸張可能な脚8は、また、分離した計測構造を含む。計測構造は、第一計測メンバー46および第二計測メンバー48を含む。
【0046】
第一計測メンバー46は、光学スケールが形成される長尺のメンバーである。脚8の軸に沿った第一計測メンバー46の第一端の運動は、継手32の近辺のみに制限される。第一計測メンバー46の第二端は、横方向の動きを妨げるために囲繞する内部管状部42によって支持されているが、縦方向に移動するのは自由である。
【0047】
第二計測メンバー48は、また、長尺メンバーの形状である。脚8の軸に沿った第二計測メンバー48の第一端の運動は、継手18の近辺のみに制限される。第二計測メンバー48の第二端は、したがって、放射方向の動きを妨げるために囲繞する外部管状部40によって支持されているが、縦方向に移動するのは自由である。第二計測メンバー48の第二端は、第一計測メンバー46の光学スケールを読み取るために好適な光学読取ヘッド50を支持する。この態様で、第一および第二メンバーの間のいかなる相対的な運動も計測される。図3に光学スケールおよび読取ヘッドが図示されるけれども、非光学的位置エンコーダ(例えば、磁気式または静電容量式システム)が代替的に使用されることが留意されるべきである。
【0048】
第一および第二計測メンバー46および48は、上述したように、低い熱膨張係数を有する材料であるINVARで形成される。また、第一および第二計測メンバー46および48は、脚の内部および外部管状部40および42によって、軸方向に拘束されないことが記憶されるべきである。したがって、いかなる熱膨張または内部および外部の管状部40および42のひずみも、第一および第二の計測メンバー46および48に伝達されない。
【0049】
各々の伸張可能な脚8は、したがって、その脚の荷重支持構造のいかなる熱膨張または収縮によっても影響されない、長さの計測のための一体の計測手段を有する。配置は、したがって、荷重が伝達されない計測構造を提供する。換言すると、伸張可能な脚8は、計測構造(すなわち、計測メンバー46および48)から分離した荷重支持構造(すなわち、管状部分40および42)を含むといえる。
【0050】
次に図4を参照すると、上述のヘキサポッドの継手32がより詳細に示される。上に概説されたように、継手32は、二本の伸張可能な脚8aおよび8bの荷重支持および計測構造が、それぞれ、荷重支持プラットフォーム20および計測プラットフォーム22に連結されることを可能にする。
【0051】
継手32は、伸張可能な脚8aの内部管状部42の端部に位置される第一荷重支持端部メンバー60aを受け入れるように配置される。脚8aの計測メンバー46aは、また、継手32によって受け入れられる。第二荷重支持端部メンバー60bおよび計測メンバー46bは、また、第二の伸張可能な脚8bから受け入れられる。
【0052】
継手32は、荷重支持プラットフォーム20に固定される中央荷重構造64を含む。第一キャリッジ66が、第一回転軸Aの周りを回転できるような態様で、ベアリング68を介して中央荷重構造64に装架される。第一荷重支持端部メンバー60aは、それが、ベアリング70を介して第一キャリッジ66に回転可能に装架されることを可能にする突出部を有し、その結果、それは第二回転軸Bの周りを回転することができる。軸AおよびBは、C点で実質的に交差し、第一荷重支持端部メンバー60aが交点または中心点Cの周りを二回転自由度で回転することを可能にする。
【0053】
第二キャリッジ80は、また、第一回転軸Aと実質的に一致する軸の周りを回転できるような態様で、ベアリング82を介して中央荷重構造64に装架される。第二荷重支持端部メンバー60bは突出部を有し、ベアリング84を介して第二キャリッジ80に回転可能に装架されており、その結果、実質的に中心点Cと交差する別の回転軸Dの周りを回転することができる。この態様において、継手32は、また、第二荷重支持端部メンバーが中心Cの周りを二回転自由度で回転することを可能にする。
【0054】
中央荷重構造64は、長尺メンバー90が通される孔を有する。長尺メンバー90の一端部は計測プラットフォーム22に取り付けられ、一方、他端部は、ボール92を有する。ボール92の中心は実質的に中心Cに一致するように配置される。二本の伸張可能な脚の計測メンバー46aおよび46bは、ボール92と直接接触する。適切なソケット(図示されない)が計測メンバー46aおよび46bの端部をボール92との接触下に維持するために用意され、または、計測メンバーは、そのような接触を提供するためにバネ付勢される。長尺メンバー90は中央構造64の孔を通されるが、継手構造の任意の適切な部分を通ることが留意されるべきである。
【0055】
継手32は、したがって、図3に関連して上述されたタイプの二本の伸張可能な腕が荷重支持および計測プラットフォームに取り付けられることを可能にする。外方のフック継手配置は、荷重支持カップリングを提供し、一方、計測経路はボールジョイントを介して提供される。
【0056】
この実施例において、ベース部4の継手18の構造は、可動プラットフォーム部6の継手32の構造に類似しており、継手18は、荷重支持ベース10および計測ベース14に分離したカップリングを提供する。
【0057】
図5を参照すると、図4を参照して説明された継手の変形例が図示される。図5に示された継手100は、単一の伸張可能な脚を荷重支持および計測プラットフォームに接続するのに適している。これは、図1から図4を参照して説明されたヘキサポッド設計の変形例が実施される場合に、例えば、英国特許出願第0611979.6号(代理人参照番号691)の優先権を主張する我々の国際(PCT)特許出願に記載されているタイプのヘキサポッドにおいて要求される。
【0058】
継手100は、第一回転軸Aの周りを回転できる態様で、ベアリング106を介して中央荷重構造104に装架されるキャリッジ102を含む。荷重支持構造104は、荷重支持プラットフォーム105に装架される。伸張可能な腕からの荷重支持端部メンバー108は突出部を有し、ベアリング110を介してキャリッジ102に回転可能に装架され、その結果、第二回転軸Bの周りを回転可能であり、軸Aおよび軸Bは実質的に点Cで交差する。この態様において、継手100は、荷重支持端部メンバー108が二回転自由度で中心Cの周りを回転するのを可能にする。
【0059】
中央荷重構造104は、長尺メンバー112が通される孔を有する。長尺メンバー112の一端は、結合させられる計測プラットフォーム114に取り付けられ、一方、他端は、ボール116を担持する。ボール116の中心は、実質的に中心Cに一致するように配置される。伸張可能な脚の計測メンバー46は、ボール116と直接接触する。適切なソケット(図示されない)が、計測メンバー46の端部をボール116との接触下に維持するために用意され、または、計測メンバーは、そのような接触を提供するためにばね付勢される。
【0060】
図6を参照すると、この発明の代わりのヘキサポッド構造130が図示される。ヘキサポッド130は、上述されたと同様の可動プラットフォーム6および伸張可能な脚8を含む。ヘキサポッド130は、また、上述のものに対して変形された構造を有するベース部134を含む。
【0061】
ベース部134は、三本の突出支持腕138を有する荷重支持ベースフレーム136を含む。ベースフレーム136は、支持脚142を介してワークピーステーブルトップ140を支持する。計測ベース144は、ワークピーステーブルトップ140の下方に、磁石およびキネマチック位置決め手段を含むマウント146によって取り付けられる。マウント146は、計測ベースが、荷重支持ベースのテーブルトップ140に対するよく定められた位置に、いかなる荷重もそれへ伝達されることなく保持されることを確実にする。
【0062】
荷重支持ベースフレーム136の突出支持腕138は、それぞれ、継手148を備える。継手148は、図4を参照して上述された継手と類似のタイプのものである。支持ストラットの三角形配置として形成された計測ベース144は、また、継手148に終端する腕150を含む。上述と同様の態様において、荷重支持フレーム136および計測フレーム144は、したがって、腕8の荷重支持および計測構造に分離して結合される。
【0063】
較正装置152が、また、図示され、マウント154を介してワークピーステーブルトップ140にキネマチックに位置される。較正装置152は、その遠位端に較正用の球を有する直立する較正メンバー156を含む。較正装置152は、計測ベース144に対する再現可能な基準位置が決定されることを可能とする。使用において、較正装置152は、装置から除去され、対象がワークピーステーブルトップ140に直接置かれる。
【0064】
一体化された荷重支持および支持脚を提供することが上述されたが、同様な配置が、また、空間的に分離された計測および荷重支持フレームを用いて実施される。そのような装置は、図7を参照して説明される。
【0065】
図7を参照すると、ヘキサポッド型座標計測機が示され、ベース部170および可動プラットフォーム部172を有する。
【0066】
ベース部170は、計測ベース174および荷重支持ベース176を含む。荷重支持ベースは、支持材178により設置され、計測ベース174は、マウント180によって荷重支持ベース176に取り付けられる。マウントは磁石またはキネマチックな位置決め手段を含み、その結果、計測ベース174は、荷重支持ベース176に対して定められた位置に保持されるが、荷重支持ベース176から計測ベース174への荷重は伝達されない。
【0067】
可動プラットフォーム部172は、マウント190によって荷重支持プラットフォーム188に取り付けられた計測プラットフォーム186を含む。マウント190は、キネマチックな位置決め手段を含み、その結果、計測プラットフォーム186は、荷重支持プラットフォーム188に対して定められた位置に保持されるが、荷重支持プラットフォーム188から計測プラットフォーム186への荷重は伝達されない。クイル192が、荷重支持プラットフォーム188の下方に装架され、スタイラス196を有する計測プローブ194を備える。
【0068】
三つのフック継手182が荷重支持ベース176に設けられ、三つのフック継手198が、荷重支持プラットフォーム188に設けられる。伸張可能な、駆動される脚184が、ベースのフック継手182と可動プラットフォームのフック継手198の間に設けられる。各々のフック継手は、ヘキサポットのスラストフレームを提供するため、駆動される二本の脚184を受け入れるように配置される。駆動される脚184は、したがって、ベース部174に対する可動プラットフォーム部172の位置を動かす。
【0069】
三つのボール継手200が、計測ベース174に設けられ、三つの別のボール継手202が、計測プラットフォーム186に設けられる。六本の計測脚204が、計測ベース174および計測プラットフォーム186のボール継手間に延びる。各々の計測脚204は、その長さを計測するための手段を含む。各計測脚204の長さの計測は、したがって、計測ベース176および計測プラットフォーム186の相対的位置が決定されることを可能にする。このことは、言い換えると、ベース部174に対する可動プラットフォーム部172の位置の計測を可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラストフレームが、複数の駆動される伸張可能な脚によって可動プラットフォームに結合された荷重支持ベースを含み、計測フレームが、計測ベースを含む、スラストフレームおよび計測フレームを含んだ位置計測装置であって、計測ベースは、ベース取付け手段によって荷重支持ベースに取り付けられており、ベース取付け手段は、荷重支持ベースから計測ベースへ伝達されるひずみを阻止するように配置されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1の装置であって、ベース取付け手段が、荷重支持ベースと計測ベースの間に少なくとも三つの接触点を備えることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1または2の装置であって、ベース取付け手段が、キネマチックマウントを含むことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかの装置であって、ベース取付け手段が、少なくとも一つの磁石を含むことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかの装置であって、計測ベースが、複数の相互に連結されたストラットを含むことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかの装置であって、計測フレームが、スラストフレームよりも低い熱膨張係数を有していることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかの装置であって、計測ベースが、複数の伸張可能な計測脚によって可動計測プラットフォームに結合され、計測プラットフォームが、計測プラットフォームへ伝達される可動プラットフォームのひずみを阻止するプラットフォーム取付け手段によって取り付けられていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7の装置であって、プラットフォーム取付け手段が、荷重支持プラットフォームおよび計測プットフォーム間に少なくとも三つの接触点を備えることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8の装置であって、プラットフォーム取付け手段が、キネマチックマウントを含むことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれかの装置であって、計測脚の端部が、複数の計測継手によって計測ベースおよび計測プラットフォームに取り付けられていることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10の装置であって、上述の計測継手が、ボール継手を含むことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかの装置であって、駆動される伸張可能な脚の端部が、複数の荷重支持継手によって荷重支持ベースおよび可動プラットフォームに取り付けられていることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12の装置であって、上述の荷重支持継手が、フック継手であることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項10または11のいずれか一つを引用する場合の請求項12または13のいずれか一つの装置であって、結合継手が、計測継手および荷重支持継手の双方を提供することを特徴とする装置。
【請求項15】
各々の結合脚が計測構造および機械的に分離した荷重支持構造を含む、複数の結合脚を含んだ請求項14の装置。
【請求項16】
荷重支持ベースに取付けられる較正装置を含む、請求項1ないし15のいずれかの装置であって、較正装置が荷重支持ベースに対して再現可能に位置できることを特徴とする装置。
【請求項17】
伸張可能な脚の伸張制御のための制御装置を含む、請求項1ないし16のいずれかの装置。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれかの装置であって、可動プラットフォームが、それに堅固に固定されたクイルを有し、計測プローブがクイルに取り付けられていることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれかの装置であって、荷重支持ベースが、ワークピーステーブルトップを含むことを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項1ないし19のいずれかの装置であって、荷重支持ベースが、支持フレームを含むことを特徴とする装置。
【請求項21】
三本またはそれ以上の駆動される伸張可能な脚を含む、請求項1ないし20のいずれかの装置。
【請求項22】
六本の駆動される伸張可能な脚を含む、請求項1ないし21のいずれかの装置。
【請求項23】
スラストフレームが、複数の駆動される伸張可能な脚によって可動プラットフォームに結合された荷重支持ベースを含み、計測フレームが、計測ベースを含む、スラストフレームおよび計測フレームを含んだ位置計測装置であって、取付け装置が、計測ベースを荷重支持ベースに取り付けるために設けられ、取付け装置は、計測ベースに伝達される荷重支持ベースのひずみを阻止するように配置されていることを特徴とする装置。
【請求項24】
スラストフレームおよび計測フレームを含む位置計測装置であって、計測フレームが、スラストフレームよりも低い熱膨張係数を有することを特徴とする装置。
【請求項25】
スラストフレームおよび計測フレームを含む位置計測装置であって、スラストフレームが、一またはそれ以上の支持脚を介して基部に接しており、計測フレームが、上述の一またはそれ以上の支持脚に直接取り付けられていることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−540315(P2009−540315A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514876(P2009−514876)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002102
【国際公開番号】WO2007/144573
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(391002306)レニショウ パブリック リミテッド カンパニー (166)
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】