説明

計測装置

エンジンでシリンダー(17)の直径を計測する計測装置(1)において、少なくとも2つのラック支持部材(5,6,7)を備え、それぞれのラック支持部材(5,6,7)は内側端を有し、内側端で互いに対して接続されている計測ラック(2)と、シリンダー(17)の中心軸に垂直な平面上を回転する状態に適応される回転可能な計測ホルダ(3)であって、少なくとも1つの計測ユニット(9)を備え、計測ユニット(9)は前記平面上でシリンダー(17)の略径方向についての計測を行う状態に適応されている回転可能な計測ホルダ(3)と、回転モータ(4)と、を備え、計測ラック(2)及び回転可能な計測ホルダ(3)は、互いに対して取付けられ、回転可能な計測ホルダ(3)は、回転モータ(4)によって計測ラック(2)に対して回転可能であることを特徴とする計測装置(1)。エンジンのシリンダー(17)の直径の計測方法も、示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置、この計測装置の使用方法(use)、及び、エンジンのシリンダーの直径の計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船用エンジンの操作状態の最適化し、停止が最大範囲(largest extent)になる可能性を防止するように、エンジンの操作状態は定期的な間隔で検査される。不対(impaired)エンジン状態又は停止の1つの主な原因として、ピストンリングが破損又は焦げて(burnt)ことがあり、これによりピンストンリンブを取り替える必要がある。しかし、実際の使用では、すす(soot)又は研磨剤(abrasive)の析出又はシリンダーライナ上での腐食性の(corrosive)浸食が原因で、磨耗した状態又はもはや滑らかな表面でない状態が、使用されたシリンダーライナにも同様に示される。この種の侵食はエンジンの操作に使用される硫黄燃料が原因で起こり、硫黄燃料は蒸気と化合してエンジン内で所定の温度及び圧力レベルで凝縮する硫酸を発生する。ピストンリングとシリンダーライナとの間の通路等の開口を介してのシリンダーオイル、ガスの漏れ分布の不均一、及び/又は、シリンダー壁の温度の変化が原因で、研磨剤又は腐食性侵食のシリンダーへの影響は局所的である。
【0003】
シリンダーライナの検査は、現段階では全体的に手動で行われている。このような計測操作に先行して行われる準備作業は、比較的に広範囲にわたる(extensive)。まず、シリンダー内に下げられるはしご(ladder)を用いて操作者がシリンダーの内部に入る前に、エンジンのシリンダーヘッドを取り外す。また、事前に空けられた(pre-punched)孔を有する定規が、シリンダー内に鉛直に、シリンダーライナの内壁に平行に挿入される。計測ロッドの補助をともなって、船の動く方向である前後方向についての異なる直径の計測が多数回だけ、通常は約10回だけ、鉛直方向に沿って行われる。
【0004】
以上のようにして、すすの析出量、及び、研磨剤又は腐食による損傷の数及び大きさに関する、シリンダーライナの不備な(incomplete)状態の評価を基準として作成することが可能となる。しかし、この方法では、例えば熱応力又はその他の損傷があるか、シリンダーライナが変形にさらされ、上端が大径のオーバル状又はトランペット状にライナがなっているか等の、円筒状からのシリンダーライナのいかなる変形(deviation)を規定する際には、不十分である。
【0005】
特許文献1には、シリンダーライナの内部計測を規定する装置が開示されている。船又は発電所のエンジンで用いられるシリンダーライナは、主に大きいサイズのシリンダーライナに関連する。装置は、鉛直に直立したシリンダーライナの上方に配置されるサスペンションユニットを備える。装置は、サスペンションユニットからシリンダー内へ下ろされる状態で配置される計測ユニットをさらに備える。計測ユニットには、一連の計測操作を行い、複数の高さにおいて、それぞれの高さで様々な異なる径方向について、サスペンションユニットと計測ユニットとの間に延設される基準線からシリンダーの内壁までの距離を規定する手段が設けられている。
【0006】
上述の及び従来の装置に関連する課題がある。現在において利用可能な装置を用いて計測結果を得るために、計測装置をシリンダー内に配置する前に、又は、シリンダー内に人が上って計測を行う前に、いくつかのエンジン部品を取り外さなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第99/15853号パンフレット
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上述の技術及び先行技術の改善を目的とする。特に、本発明は、シリンダーカバー、排気バルブ本体等のエンジン部品を取り外すことなく、エンジンのシリンダーの直径を計測する計測装置及び計測方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の以下の発明の詳細な説明から明らかになる上記及びその他の目的及び利点は、独立請求項に係るシリンダーの直径を計測する計測装置及び計測方法によって、達成される。
【0010】
計測装置は、エンジンでシリンダーの直径を計測するために用いられる。計測装置は、 少なくとも2つのラック支持部材を備え、それぞれの前記ラック支持部材は内側端を有し、前記内側端で互いに対して接続されている計測ラックと、前記シリンダーの中心軸に垂直な平面上を回転する状態に適応される回転可能な計測ホルダであって、少なくとも1つの計測ユニットを備え、前記計測ユニットは前記平面上で前記シリンダーの略径方向についての計測を行う状態に適応されている回転可能な計測ホルダと、回転モータと、を備え、 前記計測ラック及び前記回転可能な計測ホルダは、互いに対して取付けられ、前記回転可能な計測ホルダは、前記回転モータによって前記計測ラックに対して回転可能であることを特徴とする。これにより、シリンダー内に配置及び固定する際に、この装置の融通が利き(flexible)、異なる形態(profiles)で装着される状態に適応可能となる。
【0011】
この計測装置は、シリンダー壁の孔を通して、前記シリンダーに挿入する状態に適応されてもよい。これにより、シリンダー内に計測装置を配置する際に、シリンダーヘッド、排気バルブ本体等のエンジン部品を取り外す必要はない。
【0012】
前記回転モータは、前記計測ラックの内部に取付けられてもよく、これにより十分に操作し易くなる。
【0013】
前記回転モータは、前記回転可能な計測ホルダの内部に取付けられてもよく、これにより十分に操作し易くなる。
【0014】
前記計測ラック及び前記回転可能な計測ホルダは、互いに対して着脱可能であってもよい。これにより、異なる回転可能な計測ホルダを用いて異なる種類の計測ユニットを実現して(carrying)もよく、同一の計測ラックに対して計測ホルダを交換してもよい。しかし、このことは他の方法によっても可能である。
【0015】
シリンダー直径が少なくとも300mmのエンジンで用いられる状態に計測装置が配置されてもよく、これにより、大きな(main)シリンダーの直径を計測してもよい。
【0016】
ディーゼルエンジンで用いられる状態に計測装置が配置されてもよく、ディーゼルエンジンの大きなシリンダーの直径を計測してもよい。
【0017】
それぞれの前記ラック支持部材は外側端を有し、少なくとも1つの前記ラック支持部材の前記外側端にボールベアリングが取付けられてもよい。
【0018】
それぞれの前記ラック支持部材は外側端を有し、少なくとも1つの前記ラック支持部材の前記外側端にスライドベアリングが取付けられてもよい。これにより、計測ユニットがシリンダー内をスライド可能に取付けられる。また、シリンダーに対して計測装置を中心に配置(centre)可能となる。
【0019】
少なくとも1つの前記ラック支持部材は、ラックモータと、内側ラック支持部材とを備え、前記ラック支持部材は、前記少なくとも1つの前記ラック支持部材内に移動可能に取付けられ、前記ラックモータによって前記平面上を前記シリンダーの略径方向に移動する状態に適応されてもよい。これにより、計測ユニットは、前記平面上を移動可能となり、前記ラックモータによりシリンダー壁に固定される。
【0020】
少なくとも2つの前記ラック支持部材は、操作装置に接続され、前記操作装置は、前記少なくとも2つの前記ラック支持部材を前記平面上で互いに対して離れる状態に移動するように構成されてもよい。これにより、計測装置は、異なる形状を構成する(constitute)状態に適応される。
【0021】
前記操作装置はねじ付ロッドであってもよく、これにより、ラック支持部材は手動で操作される。
【0022】
前記操作装置はモータであってもよく、これにより、前記モータによりラック支持部材が所定の距離(distance)だけ移動する。
【0023】
少なくとも2つの前記ラック支持部材は、前記平面上で異なる角度位置でロック可能であってもよい。これにより、異なる形状を構成する状態で、計測装置がロック及び固定される。
【0024】
前記計測ラックは、前記平面に垂直な方向に沿って高度を示す状態に構成されるセンサをさらに備えてもよい。これにより、前記平面に垂直な方向についての計測装置の位置が、認識される。また、位置の不均一(unevenness)に対して計測結果を補償する(compensate)ことが可能となる。
【0025】
前記回転可能な計測ホルダは、温度センサをさらに備えてもよく、これにより、温度が認識される。また、温度変化に対して計測結果を補償することが可能となる。
【0026】
前記回転可能な計測ホルダは、前記計測ユニットをキャリブレーションする(calibration)手段を備えてもよい。これにより、計測ユニットのキャリブレーションを常時行うことが可能となり、計測結果の正確性が保証される。
【0027】
前記回転可能な計測ホルダは、前記平面に垂直な方向に沿って高度を示す状態に構成されるセンサをさらに備えてもよい。これにより、前記平面に垂直な方向についての計測装置の位置が、認識される。また、シリンダー内の異なる高度で、計測を行うことが可能となる。
【0028】
前記回転可能な計測ホルダはカメラを備えてもよく、これにより、オペレータに可視化状態が示される。また、シリンダー内の可視化検査が可能となる。
【0029】
前記カメラは光源を備えてもよく、これにより、カメラにより良好な光が提供され、可視化が改善される。
【0030】
前記回転可能な計測ホルダ、蓄積パッケージと、エレクトロ二クスとをさらに備えてもよい。
【0031】
前記計測ラックは、蓄積パッケージと、エレクトロ二クスとをさらに備えてもよい。これにより、計測装置に電荷が供給される。
【0032】
前記計測ユニットはレーザー装置であってもよく、これにより、迅速かつ正確な計測が行われる。
【0033】
前記計測ユニットはプローブであってもよく、これにより、迅速かつ正確な計測が行われる。
【0034】
計測装置は、そりをさらに備え、前記そり及び前記プローブは、互いに対して装着されるとともに、前記回転可能な計測ホルダ内に移動可能に取付けられ、前記平面上を前記シリンダーの略径方向に移動する状態に適応されてもよい。これにより、迅速かつ正確な計測が行われる。
【0035】
前記回転可能な計測ホルダは、前記平面状で前記シリンダーの略径方向に前記そり及び前記プローブを移動させる状態に適応されている計測モータをさらに備えてもよい。これにより、計測モータによって計測ユニットが前記平面上を移動可能となる。
【0036】
前記プローブは弾性チップを備えてもよく、これにより、プローブがより柔軟(flexible)となり、衝突(impingement)に対する感受性がより小さくなる。
【0037】
エンジンのシリンダーの直径の計測方法を提供する。計測方法は、直径が計測される前記シリンダー内に位置する位置に計測装置を適用することと、前記シリンダーに対して前記計測装置を固定することと、前記計測装置に装着される回転可能なホルダを初期位置に配置することと、前記回転可能なホルダの零位置を規定することと、計測を開始することと、少なくとも1つの計測値を記録することと、前記少なくとも1つの計測値を制御ユニットに送ること、前記回転可能な計測ホルダを前記平面上で前記零位置からの角度位置における新たな位置まで回転することと、記録すること、送ること、及び回転することを複数回繰り返すことと、前記少なくとも1つの計測値に基づいて、前記制御ユニットでシリンダーの少なくとも1つの直径値を計算することと、前記シリンダーの前記少なくとも1つの直径値を表示スクリーンに示すことと、を備えることを特徴とする。また、この計測方法は、他の配置での計測にも適用可能である。
【0038】
計測方法は、前記回転可能な計測ホルダに装着される少なくとも1つの計測ユニットを、前記シリンダーの中心軸に垂直な平面上を前記シリンダーの略径方向について、前記計測ユニットのチップがシリンダー壁に接触するまで、初期位置から前記シリンダー壁に向かって移動することと、前記計測ユニットを前記初期位置まで戻る状態まで移動することと、を備え、繰り返すことは、前記プローブを前記初期位置から移動すること及び前記初期位置へ戻すことを備えてもよい。これにより、迅速かつ正確な計測が行われる。
【0039】
第1の計測値を前記制御ユニットに送ることは、無線通信により行われてもよく、これにより、ケーブルが不要となる。
【0040】
第1の計測値を前記制御ユニットに送ることは、ケーブルにより行われてもよい。
【0041】
直径が計測される前記シリンダー内に位置する位置に前記計測装置を適用することは、前記シリンダー壁の孔を通して行われてもよい。これにより、シリンダー内に計測装置を配置する際に、シリンダーヘッド、排気バルブ本体等のエンジン部品を取り外す必要はない。
【0042】
本発明の上述の及び追加の目的、特徴及び利点は、以下の例示的かつ非制限的な発明の詳細な説明から、添付の図面をともなって、より理解される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】エンジンでシリンダーの直径を計測する計測装置の斜視図。
【図2】直径が計測されるシリンダー内に配置された計測装置を示す斜視図。
【図3】エンジンでシリンダーの直径を計測する本発明に係るシステムの斜視図。
【図4】シリンダーに挿入するために、シリンダー壁の孔を通して装着される状態に適応された形状の計測装置の斜視図。
【図5】
【発明の詳細な説明】
【0044】
図1は、エンジンでシリンダーの直径を計測する計測装置1を示している。計測装置1は、計測ラック2と、回転可能な計測ホルダ3と、回転モータ4とを有する。計測ラック2及び回転可能な計測ホルダ3は互いに対して着脱可能に取付けられる。計測ラック2は、3つのラック支持部材5,6,7を有する。ラック支持部材5,6,7は、内側端で互いに対して接続されている。それぞれのラック支持部材5,6,7の外側端には、スライドベアリング8が配置されている。回転可能な計測ホルダ3は、計測装置1によって計測されるシリンダーの中心軸に垂直な平面上を回転可能である。回転可能な計測ホルダ3は、弾性チップ10を備えるプローブ9と、そり(sled)11と、回転可能な計測ホルダ3内に配置される計測モータ12とを有する。そり11及びプローブ9は、互いに対して接続されていて、計測モータ12によって前述の平面上をシリンダーの略径方向に移動可能である。回転モータ4は、回転可能な計測ホルダ3内に配置されていて、前述の平面上で回転可能な計測ホルダ3を計測ラック2に対して回転することが可能である。また、計測装置1は、ねじ付ロッドから構成される操作装置13を備える。操作装置13は、2つのラック支持部材5,6に接続され、2つのラック支持部材5,6の外側端を前述の平面上で互いに対して離れる状態に移動することが可能である。1つのラック支持部材7は、ラックモータ14と、ラック支持部材7内に移動可能に取付けられる内側ラック支持部材15とを備える。内側ラック支持部材15は、ラックモータ14によって前述の平面上をシリンダーの略径方向に移動可能である。
【0045】
図2は、計測されるシリンダー17内の位置16に配置される計測装置1を示している。計測装置1は、シリンダー壁19の孔18を通して、シリンダー17内に配置されている。
【0046】
図3は、エンジンでシリンダー17の直径を計測するシステム20を示している。システム20は、計測装置1と、発信/受信器21と、制御ユニット22と、ハンドユニット(hand unit)23と、位置センサ24とを備える。計測装置1は、制御ユニット22に接続される発信/受信器21に無線接続されている。ハンドユニット23及び位置センサ24は、無線又はケーブルで制御ユニット22に接続されている。
【0047】
シリンダー17の直径を計測する際には、計測装置1をシリンダー17内でシリンダー17の位置16に配置する。これはシリンダー壁19の孔18を通して計測装置を挿入することにより行われ、この際、位置16はシリンダー17の底部に位置している。これにより、このステップでは計測装置1がシリンダー壁19の小孔18を通して装着される状態に適合され、例えばラック支持部材5,6は操作装置13によって一体化され、ラック支持部材5,6の外側端は第3のラック支持部材7に対して180°の角度を有する。また、回転可能な計測ホルダ3の長手方向は計測ラック2の長手方向に対応する状態に調整され、図4に示す細長い(long narrow)計測装置1が形成されている。しかし、計測装置1はシリンダー17の位置16に他の方法で配置されてもよく、例えばエンジン部分を取り外し、上方向から位置16に計測装置1を配置してもよい。また、計測ラック2及び回転可能な計測ホルダ3を別体でシリンダー17内に配置し、シリンダー17の内部で互いに対して取付けてもよい。
【0048】
計測装置をシリンダー17内の位置16に適用した際に、計測装置1はシリンダー17に対して固定されている。ラック支持部5,6の外側端は、3つのラック支持部材5,
6,7の間に十分な角度距離が生じるまで、例えばラック支持部材5,6,7の間の角度距離が120°になるまで、離れる状態に移動する。そして、この位置でラック支持部材5,6,7がロックされる。しかし、ラック支持部材は他の異なる角度位置で、ロック可能であってもよい。そして計測装置1は、ラック支持部材7のラックモータ14によって、シリンダー壁19に対して固定される。ラックモータ7は、内側ラック支持部材15を前述の平面上でシリンダー17の略径方向に、シリンダー壁19に向かう方向及び離れる方向に移動させる。これにより、それぞれのラック支持部材5,6,7の外側端のスライドベアリング8がシリンダー壁19に接触するまで、計測装置1全体が移動する。これにより、シリンダー17に対して計測装置1が固定される。
【0049】
ここで、回転可能な計測ホルダ3は現在、初期位置に配置されており、回転可能な計測ホルダ3の零位置が規定されている。この状態で、計測が開始される。この際、回転可能な計測ホルダ3は異なる位置へ回転し、それぞれの位置で計測が行われる。計測は、回転可能な計測ホルダ3のそり11を計測モータ12によって前述の平面上をシリンダー17の略径方向にシリンダー壁19に向かって移動させることにより、行われる。これにより、プローブ9の弾性チップ10がシリンダー壁19に接触し、計測が行われる。計測結果が記録された際には、そり11は初期位置に戻り、記録された計測結果が制御ユニット22に送られる。また、プローブ9は、計測の間は常時、シリンダー壁19に接触してもよい。この場合、回転可能な計測ホルダ3は、零位置から所定の角度量だけ、例えば零位置に戻るまで360°だけ回転するまで、連続的に回転し、軌道(way)に沿って計測を行う。記録された計測結果は、無線通信又はケーブルを介して制御ユニット22に送信可能である。この際、回転可能な計測ホルダ3は、零位置からの角度位置における新たな位置まで回転し、新たな計測結果が記録され、制御ユニット23に送信される。十分な回数の計測結果が記録され、制御ユニット22に送信されるまで、計測過程を繰り返すことが可能である。最後に、記録された計測結果に基づいて、制御ユニット22でシリンダー直径の数値が計算され、ハンドユニット23上の表示スクリーンに示される。なお、表示スクリーンは、ハンドユニット上に設ける必要はなく、他の場所に位置してもよい。
【0050】
また、計測ユニットはレーザーユニットから構成されてもよく、回転可能な計測ホルダ3を計測ラックに着脱可能に配置し、計測ユニットを所望時に取替え可能としてもよい。しかし、レーザーユニットを用いる場合、基本的には前述した方法と同様の計測方法が用いられる。もちろん、レーザーユニットを用いる場合、プローブ9、そり11及び計測モータ12は余分である。プローブ9の弾性チップ10がシリンダー壁19に接触するまでシリンダー壁19に向かってそり11を移動する代わりに、レーザーユニットは、壁に対してレーザービームを送ることにより、計測を行う。
【0051】
計測装置1は、様々な態様に変形してもよい。回転モータ4は、計測ラック2の表面又は内部又は回転可能な計測ホルダ3の表面又は内部に配置してもよい。計測ラック2は、例えば2つ又は4つ等の、いかなる数のラック支持部材を備えてもよい。スライド可能なベアリング8は、例えばボールベアリング等の周知のいかなるベアリングに置き換えてもよい。また、操作装置13は、例えば、ねじ付ロッド又はある種のモータ等の周知のいかなる種類であってもよい。センサは、計測ラック2の表面又は内部又は回転可能な計測ホルダ3の表面又は内部に配置してもよい。また、センサは、シリンダー17内の計測装置1から独立した位置、又は、シリンダー17の外部に配置されてもよい。センサは、シリンダー17内で計測が実施されている位置を決定するように、前述の平面に垂直な方向に沿って高度を示す構成となっている。また、示される高度が所定の値を超えた場合に、警告信号が発生してもよい。計測装置1は、計測ラック2の表面又は内部又は回転可能な計測ホルダ3の表面又は内部に配置される温度センサを有してもよい。この温度センサは、記録された計測結果を温度変化に対して補償するために用いられる。上述の態様では、計測ラック2は、ラックモータ7によって異なる直径のシリンダー17内で計測装置1を固定することを可能としている。別の態様では、手動又は周知の制御手段によって異なる直径のシリンダーに装着するように、計測ラック2を適応してもよい。また、異なる大きさの計測ラック2を製造し、異なる直径のシリンダーに装着してもよい。回転可能な計測ホルダ3も、異なる直径のシリンダーに適応可能である。計測ラック2又は計測ホルダ3は、蓄積パッケージ(accumulator package)と、エレクトロ二クス(electronics)とを備えてもよい。ある実施形態では、蓄積パッケージ及びエレクトロニクスは、計測ホルダ3のカウンタウエイト(counterweight)として作用する。内径が少なくとも300mmの大きいシリンダーを計測装置1が主に意図する場合でも、計測装置1を内径が300mm以下のシリンダーに適用可能である。
【0052】
当業者は、添付の請求項で規定される発明の趣旨から逸脱することなく、上述の実施形態の変形例を想到することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンでシリンダー(17)の直径を計測する計測装置(1)において、
少なくとも2つのラック支持部材(5,6,7)を備え、それぞれの前記ラック支持部材(5,6,7)は内側端を有し、前記内側端で互いに対して接続されている計測ラック(2)と、
前記シリンダー(17)の中心軸に垂直な平面上を回転する状態に適応される回転可能な計測ホルダ(3)であって、少なくとも1つの計測ユニット(9)を備え、前記計測ユニット(9)は前記平面上で前記シリンダー(17)の略径方向についての計測を行う状態に適応されている回転可能な計測ホルダ(3)と、
回転モータ(4)と、
を具備し、
前記計測ラック(2)及び前記回転可能な計測ホルダ(3)は、互いに対して取付けられ、
前記回転可能な計測ホルダ(3)は、前記回転モータ(4)によって前記計測ラック(2)に対して回転可能であることを特徴とする計測装置(1)。
【請求項2】
シリンダー壁(19)の孔(18)を通して、前記シリンダー(17)に挿入する状態に適応されている請求項1の計測装置(1)。
【請求項3】
前記回転モータ(4)は、前記計測ラック(2)の内部に取付けられている請求項1又は請求項2の計測装置(1)。
【請求項4】
前記回転モータ(4)は、前記回転可能な計測ホルダ(3)の内部に取付けられている請求項1又は請求項2の計測装置(1)。
【請求項5】
前記計測ラック(5)及び前記回転可能な計測ホルダ(3)は、互いに対して着脱可能である請求項1乃至請求項4のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項6】
シリンダー直径が少なくとも300mmのエンジンで用いられる状態に配置されている請求項1乃至請求項5のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項7】
ディーゼルエンジンで用いられる状態に配置されている請求項1乃至請求項6のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項8】
それぞれの前記ラック支持部材(5,6,7)は外側端を有し、少なくとも1つの前記ラック支持部材(5,6,7)の前記外側端にボールベアリングが取付けられている請求項1乃至請求項7のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項9】
それぞれの前記ラック支持部材(5,6,7)は外側端を有し、少なくとも1つの前記ラック支持部材(5,6,7)の前記外側端にスライドベアリング(8)が取付けられている請求項1乃至請求項8のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの前記ラック支持部材(5,6,7)は、ラックモータ(14)と、内側ラック支持部材(15)とを備え、
前記ラック支持部材(15)は、前記少なくとも1つの前記ラック支持部材(5,6,7)内に移動可能に取付けられ、前記ラックモータ(14)によって前記平面上を前記シリンダー(17)の略径方向に移動する状態に適応されている請求項1乃至請求項9のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項11】
少なくとも2つの前記ラック支持部材(5,6,7)は、操作装置(13)に接続され、
前記操作装置(13)は、前記少なくとも2つの前記ラック支持部材(13)を前記平面上で互いに対して離れる状態に移動するように構成されている請求項1乃至請求項10のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項12】
前記操作装置(13)はねじ付ロッドである請求項11の計測装置(1)。
【請求項13】
前記操作装置(13)はモータである請求項11の計測装置(1)。
【請求項14】
少なくとも2つの前記ラック支持部材(5,6,7)は、前記平面上で異なる角度位置でロック可能な請求項1乃至請求項13のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項15】
前記計測ラック(2)は、前記平面に垂直な方向に沿って高度を示す状態に構成されるセンサをさらに備える請求項1乃至請求項14のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項16】
前記回転可能な計測ホルダ(3)は、温度センサをさらに備える請求項1乃至請求項15のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項17】
前記回転可能な計測ホルダ(3)は、前記計測ユニット(9)をキャリブレーションする手段を備える請求項1乃至請求項16のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項18】
前記回転可能な計測ホルダ(3)は、前記平面に垂直な方向に沿って高度を示す状態に構成されるセンサをさらに備える請求項1乃至請求項17のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項19】
前記回転可能な計測ホルダ(3)はカメラを備える請求項1乃至請求項18のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項20】
前記カメラは光源を備える請求項19の計測装置(1)。
【請求項21】
前記回転可能な計測ホルダ(3)は、蓄積パッケージと、エレクトロ二クスとをさらに備える請求項1乃至請求項20のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項22】
前記計測ラック(2)は、蓄積パッケージと、エレクトロ二クスとをさらに備える請求項1乃至請求項21のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項23】
前記計測ユニットはレーザー装置である請求項1乃至請求項22のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項24】
前記計測ユニットはプローブ(9)である請求項1乃至請求項22のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項25】
そり(11)をさらに具備し、
前記そり(11)及び前記プローブ(9)は、互いに対して装着されるとともに、前記回転可能な計測ホルダ(3)内に移動可能に取付けられ、前記平面上を前記シリンダー(17)の略径方向に移動する状態に適応されている請求項23の計測装置(1)。
【請求項26】
前記回転可能な計測ホルダ(3)は、前記平面状で前記シリンダー(17)の略径方向に前記そり(11)及び前記プローブ(9)を移動させる状態に適応されている計測モータ(12)をさらに備える請求項25の計測装置(1)。
【請求項27】
前記プローブは弾性チップ(10)を備える請求項24乃至請求項26のいずれか1の計測装置(1)。
【請求項28】
エンジンのシリンダー(17)の直径の計測での請求項1乃至請求項27のいずれか1の計測装置(1)の使用方法。
【請求項29】
エンジンのシリンダー(17)の直径の計測方法において、
直径が計測される前記シリンダー(17)内に位置する位置(16)に計測装置(1)を適用することと、
前記シリンダー(17)に対して前記計測装置(1)を固定することと、
前記計測装置(1)に装着される回転可能なホルダ(3)を初期位置に配置することと、
前記回転可能なホルダ(3)の零位置を規定することと、
計測を開始することと、
少なくとも1つの計測値を記録することと、
前記少なくとも1つの計測値を制御ユニット(22)に送ること、
前記回転可能な計測ホルダ(3)を前記平面上で前記零位置からの角度位置における新たな位置まで回転することと、
記録すること、送ること、及び回転することを複数回繰り返すことと、
前記少なくとも1つの計測値に基づいて、前記制御ユニット(22)でシリンダーの少なくとも1つの直径値を計算することと、
前記シリンダー(17)の前記少なくとも1つの直径値を表示スクリーンに示すことと、
を具備することを特徴とする計測方法。
【請求項30】
前記回転可能な計測ホルダ(3)に装着される少なくとも1つのプローブ(9)を、前記シリンダー(17)の中心軸に垂直な平面上を前記シリンダー(17)の略径方向について、前記プローブ(9)のチップ(10)がシリンダー壁(19)に接触するまで、初期位置から前記シリンダー壁(19)に向かって移動することと、
前記プローブ(9)を前記初期位置まで戻る状態まで移動することと、
を具備し、
繰り返すことは、前記プローブ(9)を前記初期位置から移動すること及び前記初期位置へ戻すことを備える請求項29の計測方法。
【請求項31】
第1の計測値を前記制御ユニット(22)に送ることは、無線通信により行われる請求項29又は請求項30の計測方法。
【請求項32】
第1の計測値を前記制御ユニット(22)に送ることは、ケーブルにより行われる請求項29又は請求項30の計測方法。
【請求項33】
直径が計測される前記シリンダー(17)内に位置する位置(16)に前記計測装置(1)を適用することは、前記シリンダー壁(19)の孔(18)を通して行われる請求項29乃至請求項32のいずれか1の計測方法。
【請求項34】
エンジンでシリンダー(17)の直径を計測するシステム(20)において、
請求項1乃至請求項27のいずれか1の計測装置(1)と、
制御ユニット(22)と、
ハンドユニット(23)と、
前記計測装置(1)、前記制御ユニット(22)及び前記ハンドユニット(23)の間で情報及び操作信号を送る手段と、
を具備することを特徴とするシステム(20)。
【請求項35】
位置センサをさらに具備する請求項34のシステム(20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−524528(P2011−524528A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513884(P2011−513884)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057662
【国際公開番号】WO2009/152851
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510335339)クリス−マリネ・エービー (1)
【氏名又は名称原語表記】CHRIS−MARINE AB
【住所又は居所原語表記】P.O.Box 9025, SE−200 39 MALMO, Sweden
【Fターム(参考)】