説明

計量ポンプ用の膨張駆動装置と潤滑剤容器とを有する、特に潤滑剤用の計量ポンプ、及び注油方法

本発明は、特に潤滑剤用の計量ポンプ(1)と、好ましくは数年間にわたる潤滑箇所(16)の長期注油の方法とに関する。上記計量ポンプ(1)には、作動手段(5)によって駆動される少なくとも1つの計量ピストンが設けられる。設計をできる限り小型にするために、作動手段(5)は、少なくとも1つの加熱要素(8)と、当該加熱要素(8)によって加熱される膨張要素(6、7)とを備える。膨張要素は、加熱要素に供給されるエネルギーによって加熱され、膨張材料が膨張することにより計量ピストン(4)を変位させる。本発明は、計量ポンプに気密に固定される潤滑剤容器(18)にも関する。気密固定により、計量ポンプ内での潤滑剤が古くなることが回避され、潤滑剤の実際の貯蔵寿命を超えて注油点(16)に潤滑剤を連続供給することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に潤滑剤用の、少なくとも1つの作動手段によって駆動される少なくとも1つの計量ピストンを備える計量ポンプと、潤滑剤が所定の時間間隔で計量ピストンによって計量式に少なくとも1つの潤滑箇所に送り出される、好ましくは少なくとも1つの潤滑箇所の長期注油のための注油方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの計量ポンプは、例えば、工作機械のリニアガイドユニット及びボールねじ等の機械要素に、油、低粘度の潤滑油、すなわち潤滑油等の潤滑剤を注油するために用いられる。しかしながら、集中注油ユニットの欠点は、中央計量ポンプから機械要素内の潤滑箇所までのラインが非常に長いことである。非常に少量の潤滑油量が長い時間間隔でしか注油されないことにより、潤滑剤は潤滑箇所に達する途中で古くなる場合がある。これを防止するために、機械要素には局所的に潤滑剤が供給されることがある。
【0003】
機械要素へのこのような局所的供給は、いわゆるアタッチメント要素によって特にリニアガイドで行われる。アタッチメント要素は、潤滑剤容器を備え、ここから潤滑剤がリニアガイドの動作中にポンプ不要な方法で供給される。アタッチメント要素は、最長で3年間の作動時間にわたって潤滑剤を供給するため、この3年間はリニアガイドが整備される必要がない。アタッチメント要素の使用により、取得原価に関して高価である集中注油ユニットをなくすことができる。他方、潤滑剤は、アタッチメント要素から潤滑箇所まで続く短いラインでは古くなることはない。しかしながら、アタッチメント要素の欠点は、限られた注油作業にしか対応できないことである。例えば、冷却エマルジョンが用いられる工作機械において、冷却エマルジョンがリニアガイド上の潤滑剤を多少多く洗い流してしまった場合は、問題となる。
【0004】
局所的又は分散的な注油に関して、従来技術でも、作動手段としてソレノイドを有する局所的計量ポンプにも言及している。しかしながら、これらの計量ポンプは、高価であり、機械要素に組み込むには大きすぎる場合が多い。
【0005】
計量ポンプを備える自動注油装置は、例えば英国特許第1,187,637号に記載されている。さらなる潤滑剤ポンプは欧州特許第0376815号に記載されており、作動手段は米国特許第3,686,857号に記載されている。
【0006】
アタッチメント要素において以前用いられていた計量ポンプの欠点は、計量ポンプに必要な設置スペースが比較的大きいことである。したがって、局所的計量ポンプが設けられたリニアガイドユニット及びボールねじは、工作機械でさらなる設置スペースを必要とし、これも望ましくない。
【発明の開示】
【0007】
したがって、本発明の目的は、より小型の構成を有する計量すなわち定量ポンプ及び注油方法を生み出すことにより、局所的な注油と、注油されるべき機械要素への計量ポンプの組み込みとを可能にすることである。
【0008】
本発明によれば、この目的は、作動手段が少なくとも1つの加熱要素と、加熱要素で加熱することができる1つの膨張要素とを備えることで、上述の計量ポンプに関して解決される。
【0009】
この目的は、膨張要素を加熱して計量ピストンを移動させることで、本発明による上述の方法に関して解決される。
【0010】
この驚くほど単純な設計措置により、アクチュエータである膨張要素が非常に高い出力密度、すなわち発生する出力単位当たり小さいサイズを有するため、計量ポンプのサイズを大幅に縮小することができる。これにより、本発明による計量ポンプによって、計量ポンプをさらに小さな設置スペースに設置すること、及び以前は集中注油システムによってしか注油されなかった、小さなリニアガイドユニット又はボールねじを取り付けることが可能になる。膨張要素を用いた駆動のさらなる利点は、加熱要素の加熱のために、実質的な変更を加えずに、例えば従来のソレノイドを駆動するのに用いられる駆動電流を用いることができることである。したがって、本発明による計量ポンプは、計量ポンプを制御する制御ユニットの側での必要となる適合なしで、従来の計量ポンプを完全に取り替えることができる。
【0011】
膨張要素で用いられる膨張材料は、高い熱膨張係数を有するため、加熱されると、計量ピストンを移動させるほど大きく膨張する。例えば、加熱要素が加熱されると溶融して膨張するワックスを膨張材料として用いてもよい。膨張材料は、計量ピストン又は作動ピストンがその中に突き出る膨張要素の室内に収容され、作動ピストンは計量ピストンに運動伝達式に固定して接続されて、膨張材料が膨張しているときにその室から押し出される。製造コストを節減するために、自動車のサーモスタットで用いられるように、従来の膨張要素が計量ポンプに挿入されてもよい。
【0012】
さらなる実施形態では、計量ポンプは、計量ピストンが変位可能に収容される少なくとも1つのシリンダを備える。シリンダは、例えば射出成形によって作製されてもよい。シリンダは、特にポンプのハウジングと一体成形することができ、ハウジングに組み込むことができるため、用いられる部品の数が減って設置時間が短縮される。シリンダ、及び場合によってハウジングは、特に、ガラス繊維強化ポリマー、例えばポリアミド、又は別の適当な材料で作られてもよい。代替的に、例えば装置の各凹部に挿入され、ピストンを変位可能に収容する、シリンダを形成するプラスチックブッシュを用いてもよい。ブッシュは、ガラス繊維強化ポリアミド又は別の適当な材料等のプラスチック材料から形成され得ることが好ましい。
【0013】
作動中に潤滑剤が充填され、膨張要素が加熱されると計量ピストンが移動するシリンダの部分は、計量すべき潤滑剤量が収容される計量室としての役割を果たす。
【0014】
膨張要素の加熱中に温度差が生じるため、計量ピストン及びシリンダの異なる熱膨張を考慮に入れて計量ピストンにおける隙間寸法を大きくする必要がある。さらに、膨張材料の反応時間が進むこと、そして、このようにてシリンダ内での圧力発生がストロークシリンダを用いた駆動と比較して非常に遅いことから、潤滑剤が計量ピストンとシリンダとの間の隙間を通って流れ、是正措置を取らなければ計量精度に影響を及ぼす。したがって、計量ポンプで従来用いられており小さな公差を有する隙間シールは、もはや用いることができない。有利な一実施形態では、ピストンの半径方向での弾力性のあるシール要素を、計量ピストンとシリンダとの間の隙間に設けることで、異なる温度での漏れ損失を回避する。このような設計は同時に、隙間シールと比較して、より粗い公差をピストン及びシリンダに用いることができ、このため、同様に製造コストが減るという利点を有する。代替的に、計量ピストンに対してシリンダを潤滑剤漏れしない方法でロックする隙間シール、すなわち互いに対する公差を、計量ピストン及びシリンダに形成することもできる。
【0015】
複数の潤滑箇所に同時に供給を行うことができるように、さらなる有利な一実施形態では、計量ポンプは、作動手段によって共通に駆動可能に配置される形で、複数の計量ポンプで構成される。これは、例えば、伝達要素が複数の計量ピストンを運動伝達式に接続し、且つ作動手段と計量ピストンとの間に配置されるという開発において実現することができる。別の実施形態では、1つの計量ピストンが、計量手段によって制御される制御ボアを介して各潤滑箇所に計量ピストンのストローク量を分配することによって、複数の潤滑箇所への供給を行ってもよい。例えば1つの潤滑箇所が、計量ピストンの送出量の複数回分の潤滑剤を必要とする場合、複数の計量ピストンが1つの潤滑箇所に関連付けられてもよい。
【0016】
計量ピストンに潤滑剤を供給するために、開口部に入口外形が設けられる供給ラインを、ピストンストローク領域に開けることができる。供給ラインのこの開口を介して計量ピストンとともに移動するシールが磨耗することが、この入口外形によって防止される。入口外形は放射状のものとして、すなわち局面のものとして設計され得る。複数の計量ピストンが用いられる場合、異なる計量ピストンに通じる供給ラインが共通の潤滑剤室、すなわち分配室で終端してもよい。ピストンストロークの領域、好ましくはピストンストロークの開始領域に開口が配置されることにより、供給ラインは潤滑剤圧力が発生すると計量ピストンによって自動的にロックされる。さもなければ計測量を減り潤滑箇所での不十分な注油をもたらしてしまうが、この措置により、潤滑剤が供給ラインに逆流できなくなる。ピストンストローク中に潤滑箇所に供給される潤滑油の計測量は、ピストンストロークにおいて、供給ラインと排出部との間の接続が閉じられる点から計量ポンプの最終位置までの、計量ピストンのストローク量の部分から定められる。
【0017】
さらなる実施形態によれば、戻し弁は、そこを通って潤滑剤が計量ポンプから放出される潤滑剤出口に配置されてもよく、ここでは、この戻し弁は、計量ピストンが作動手段によって移動させられると運ばれる潤滑剤によって間接的に、開放状態に移行可能であるように構成されている。戻し弁は、潤滑箇所において増加する圧力が潤滑剤を計量ピストンの方向に送り戻すこと、及びピストンの戻りストローク中に潤滑剤が吸い戻されることがないようにする。
【0018】
膨張要素内の膨張材料の損傷が過熱によって生じないようにするために、PTC要素が加熱要素として特に用いられてもよい。PTC要素の弾性曲線は、PTC要素の組成に応じた限界温度から始まって急上昇する形で上昇するため、PTC要素はこの限界温度までしか加熱されない。本発明のさらなる実施形態によれば、PTC要素の限界温度が膨張材料の熱特性に適応させられ、高すぎる加熱温度によって生じる膨張材料の燃焼又は分解が、複雑な温度制御が行われる必要なく、簡単に回避され得る。
【0019】
膨張要素の作動後に計量ピストンをその元の位置に戻すために、それを通して作動手段に反作用するリセット力が生成される、リセット手段がさらに設けられてもよい。このようなリセット手段は、例えば、ばね要素から構成されてもよい。作動手段がリセット力に対抗して作動しなければならないことを防止するために、さらなる有利な一実施形態においてリセット手段は、好ましくは、そのアクチュエータに反作用する、さらなる膨張材料駆動装置の形態のアクチュエータを含む。このアクチュエータは、計量ピストンをその開始位置に戻す作動手段の代わりに用いられる。
【0020】
計量ピストンの移動を正確に行わせるために、ピストン移動の任意の方向に、ピストンストロークを制限する当接部が設けられてもよい。作動手段の、及び場合によってはリセット手段の可能な限りの最大限の作用ストロークは、それぞれが当接部を越えるような寸法にされる。このことにより、計量ピストンが当接部にも達することが確実になる。当接部は、作動ピストン、計量ピストン、又はこれらの間に配置される移動伝達要素と協働してもよい。
【0021】
以下の実施の形態は計量ポンプの改良に関し、これを通して、製造業者により保証される潤滑剤の貯蔵寿命を越えて、計量ポンプの整備間隔の延長が可能となる。
【0022】
以前用いられていたアタッチメント要素付きの給油装置では、遅くとも3年後にアタッチメント要素が交換されなければならないということが欠点である。この継続時間は、潤滑剤の貯蔵寿命にほぼ対応する。
【0023】
しかしながら、アタッチメント要素を交換するには工作機械を分解する必要がある。アタッチメント要素の交換中の機械の停止と、高い人件費及び予備部品費とのため、これは3年の保証期間の終了後の高いコストにつながる。
【0024】
この問題を解決するために、本発明はさらに、上述の実施形態の1つでの計量ポンプと共に用いることができ、計量ポンプに交換可能且つ気密に取り付けることができる、潤滑剤容器に関する。潤滑剤容器は、潤滑剤が部分的に充填される少なくとも1つの貯留容積部を備える。
【0025】
計量ポンプに貯留容積部が気密に取り付けられるため、計量ポンプ又は計量ポンプを用いる機械要素の整備間隔は、潤滑剤の実際の貯蔵寿命を越えることができる。貯留容積部の気密閉鎖により、潤滑剤が環境の影響を受けることはあり得ず、特に酸化も分解もしない。このために、貯留容積部は、その内部に収容される潤滑剤量が、少なくとも5年間の通常作動中で、介入不要な潤滑剤注入動作に十分な寸法にされてもよい。代替的に、例えば軸受を少なくとも3年間整備不要で作動させるには、より小さな貯留容積部を有する標準的な潤滑剤容器が用いられてもよい。
【0026】
さらに、例えば貯留容積部を加圧するばねによって付勢されるピストンの形態の、貯留容積部に入っている潤滑剤を加圧する搬送手段が、潤滑剤容器に組み込まれてもよい。この措置により、ピストンの戻りストローク中に発生する減圧を通じて潤滑剤の自動吸入が補助される。
【0027】
潤滑剤容器の保管中に貯留容積部内の潤滑剤を有害な環境の影響に曝さないようにするために、作動中にそこを通って潤滑剤が計量ポンプに放出され得る、貯留容積の放出開口が、計量ポンプへの潤滑剤容器の取り付け中に自動的に開く閉鎖手段によってロックされてもよい。この閉鎖手段は、例えば、引き裂き可能な隔膜、鋳肌の形態で、圧力発生手段の圧力に対して計量ポンプによって開かれるフラップの形態で、又は放出開口に確実に保持される閉鎖体、例えば球として設計され得る。搬送手段によって生成される力によって閉位置に押しやられる戻し弁が、放出開口に組み込まれてもよい。
【0028】
開放手段の各々は計量ポンプに設けられてもよく、そこを通してこの開放手段は、好ましくは潤滑剤槽内の搬送手段によって発生される圧力に対して、開位置に移行される。開放手段は、特に、放出開口内に突き出るマンドレル又はピンの形態で設計され得る。
【0029】
最後に、潤滑剤容器のさらなる有利な一実施形態では、貯留容積部は、交換可能なカートリッジの形態で形成されてもよい。カートリッジは、実質的に弾性の容器、弾性的に伸縮可能な材料又はアコーディオンに似た方法で折り畳むことができる材料から作られてもよいため、排出過程の増加で空気の入った空洞が形成されない。この実施形態によれば、カートリッジは、潤滑剤容器に挿入されてもよく、空になった後で交換されることが可能である。潤滑剤容器は、カートリッジの収容部を有することができるが、この収容部は、カートリッジを加圧する搬送剤によって制限され得る。
【0030】
特に利用可能な設置スペースがほとんどないときの用途では、本発明による計量ポンプは、計量ポンプのハウジング内に組み込まれる潤滑剤容器を有してもよい。潤滑剤容器の貯留容積部が計量ポンプのシリンダに接続されることにより、貯留容積部内にある潤滑剤をシリンダに導入することができる。計量ピストンが潤滑剤容器に囲まれる場合、特に小型のユニットが作製される。計量ポンプのハウジング、シリンダハウジングの円周面、及び潤滑剤容器は、例えば、円筒状に形成され、かつ/または互いに同心状に配置されることが可能であるため、小型のカートリッジ状計量ポンプが作製される。
【0031】
作動後に計量ポンプのシリンダに潤滑剤を確実に再充填するために、実質的に貯留容積部の方向に付勢されるピストンが、潤滑剤容器内に可動に配置されてもよい。ピストンは、例えばばね要素を用いて貯留容積部を加圧することができるため、潤滑剤が貯留容積部からシリンダへ流れることができる。
【0032】
ピストンは、シリンダハウジングの周りで可動に配置されてもよい。これには、シリンダハウジングが、同時に潤滑剤容器のピストンのための構成的に単純なガイド要素として形成されるという利点がある。ピストンとシリンダハウジングとの間の隣接するガイド面のサイズは、非常に大きく設計されるため、ピストンが傾くことはない。ピストンのさらなるガイド面を外径に形成するために、ピストンを、計量ポンプのハウジングの内側に可動に配置してもよい。さらに、ピストンは、リングピストンとして形成することができ、これは、回転対称の回転部品であるため特に低コストで製造できる。
【0033】
潤滑剤容器の貯留容積部に外部からの潤滑剤を充填することができるように、計量ポンプは、そこを通して潤滑剤が貯留容積部に導入される潤滑剤入口を有してもよい。計量ポンプのこの実施形態は、所定の塗布持続時間後又は所定回数の作動後に、貯留容積部が実質的に空になると再び充填して用いることができる。貯留容積部からの潤滑剤の漏れを防止するとともに充填を容易にする戻し弁が、潤滑剤入口に配置されれば特に有利である。この戻し弁は、例えば注油ニップルとして形成されてもよい。代替的に、留められた閉鎖プラグによって、作動中に潤滑剤入口がロックされてもよい。
【0034】
次に、図面を参照して種々の実施形態を用いて本発明を例示的に説明する。上述のように、個々の実施形態の異なる特徴は、互いに組み合わされてもよく、又は各特徴に関連する利点が特定の用途において重要ではない場合は、いかなる形でも完全に省かれてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
まず初めに、本発明による計量ポンプ1の構造を、計量ポンプ1を縦断面で概略的に示す図1を用いて説明する。
【0036】
計量ポンプ1は、1つ又は複数のシリンダ3が配置されるハウジング2を備える。ここで、1つのシリンダ3のみの例を用いて構造を説明する。計量ピストン4の一端が、シリンダ3に変位可能に収容される。
【0037】
ハウジング2は、熱伝導率の低いプラスチック材料でできていることが好ましい。シリンダ3は、ポリアミド等のガラス繊維強化ポリマーで作られている。シリンダ3は、特に、例えば射出成形プロセスによってハウジング1と一体的に形成され得る。シリンダ内壁の仕上げは必要ない。
【0038】
計量ピストン4の他端には作動力Kが作用し、この力は計量ピストン4をシリンダ3内に押し込む。作動力Kは、作動手段5によって発生される。
【0039】
本発明によれば、作動手段5は、膨張材料駆動装置として形成され、室6内に収容される膨張材料、例えばワックス材料を含む。図1に示す実施形態では、シリンダ3とは反対側にある、計量ピストン4の端は、膨張材料室6内に突き出ている。室6内の膨張材料は、高い熱膨張係数を有するため、加熱されると大きく膨張する。膨張材料は、加熱プロセスにより固−液相転移後の著しい容量増加を特に示し得る。
【0040】
膨張室6は、そこを通して計量ピストン4が膨張材料室6内に突き出る際に通る開口を除いて、ハウジング7によって囲まれる。ハウジング7は、少なくとも一部が金属又は金属合金等の熱伝導性材料で作られていることが好ましい。さらに、ハウジング7は、計量ピストン4に対してシールされるため、それが液相に転移している場合、膨張材料自体が膨張材料室6から漏れることはあり得ない。
【0041】
電気加熱要素8が、ハウジング7の少なくとも一面に配置され、この加熱要素は、熱伝導式にハウジング7に接続されるため、加熱要素8によって生成される熱が膨張材料室6内の膨張材料に作用する。加熱要素は、例えば、電熱線を有する加熱コイルを含みことができる。膨張材料室6内の膨張材料への加熱要素8の熱伝達の損失をできる限り少なく保つために、加熱要素8は、ハウジング7の実質的に全面に存在する。ハウジング2の熱伝導係数が小さいことで、加熱要素8の熱が周囲に放出されてそこでの損傷を引き起こすことが防止される。したがって、ハウジング2は断熱材としての役割を果たす。代替的に、作動手段5は、ハウジング2に収容されて、ハウジング7及び加熱要素8を囲む断熱筐体(図示せず)に収容されてもよい。
【0042】
加熱要素8は、電線9を介して電気エネルギーを供給される。電気エネルギーが加熱電流の形態で電線9を介して供給される場合、加熱要素8は自動的に熱くなり、それにより膨張材料室6内の膨張材料が加熱される。
【0043】
計量ポンプ1にはさらに、作動力Kに反作用するリセット力Rを発生させるリセット手段10が設けられる。リセット手段10は、ハウジング2と計量ピストン4との間に支持されるばね要素の形態で設計され得る。
【0044】
シリンダ3には供給ライン11が通じており、供給ライン11の口12は、作動手段5によって生成される、そのストロークHの間に計量ピストン4が通過する領域に配置される。
【0045】
シリンダ3は、計量ピストン4とは反対のその端で、計量ポンプの出口開口13に接続される。出口開口13は、戻し弁14によってロックされることが可能であり、戻し弁14は、出口13に向かう方向でシリンダ3からの流れ方向に開くように設計される。消費点16、特に潤滑箇所に通じるライン15が、戻し弁14の流れ方向下流に接続され得る。ライン15は、スナップコネクタを用いて計量ポンプ1に取り付けることができる。戻し弁14は、当然ながらハウジング2に組み込まれることが可能である。
【0046】
計量ポンプ1には、潤滑剤容器18が着脱可能又は着脱不可能に取り付けられる、アタッチメント装置17も設けられる。図1に示すように、アタッチメント手段17は、計量ポンプにおいて潤滑剤容器を保持する止め金を有し得る。製造業者により規定される潤滑剤の貯蔵寿命を越えた利用期間後でも、潤滑剤容器18内の潤滑剤の質が悪化しないようにするために、計量ポンプ1上に潤滑剤容器18を気密に保持するシール手段19が、アタッチメント装置17又は潤滑剤容器18に設けられる。潤滑剤容器18の簡単な交換を可能にするために、潤滑剤容器は、注油されるべき機械要素に、好ましくは外部からアクセス可能な形で配置される。
【0047】
潤滑剤容器18は、透明材料でできていることが好ましいか、又は充填レベルを視覚的に制御するための覗きスロットが設けられる。
【0048】
図1で見ることができるように、計量ポンプ側の供給ライン11は潤滑剤容器側の放出開口と一直線になり、これは、壁21、例えば潤滑剤容器18の底部又はカバーに形成されて、貯留容積部22に接続される。
【0049】
搬送手段23が潤滑剤容器18に組み込まれ、この搬送手段によって貯留容積部22内に入っている潤滑剤が加圧される。搬送手段23は、例えば、ピストン24、及びピストン24を貯留容積部22に向かう方向に押すばね要素25を備え得る。ばね要素のストロークは、ピストン24が貯留容積部22を完全に空にすることができるような寸法にされる。潤滑剤容積部22内の潤滑剤の酸化を回避するために、ピストン24は潤滑剤容積部を気密にシールする。
【0050】
開口20の領域において、潤滑剤容器は、潤滑剤容器18が計量ポンプ1に取り付けられると自動的に開く閉鎖手段26を有し得る。放出開口20は、少なくとも最初の使用前、すなわち潤滑剤容器18を計量ポンプ1に最初に取り付ける前に、閉鎖要素26によって気密にロックされる。閉鎖要素26は、引き裂き可能なフォイル、鋳肌の、ばね付勢式の球、又はフラップの形態で設計することができる。
【0051】
潤滑剤容器18を計量ポンプ1に取り付けると閉鎖要素26を自動的に開くために、計量ポンプ1に開放手段27、例えばマンドレル又はピンが設けられ得る。
【0052】
次に、図1の実施形態の機能を簡単に説明する。
【0053】
計量ポンプ1は潤滑剤容器18とともに、数年間にわたって、好ましくは少なくとも5年間にわたって、少なくとも1つの潤滑箇所16の長期注油を行う役割を果たす。このために、計量ポンプ1は所定の間隔で作動され、消費点すなわち潤滑箇所16の各作動時に所定の潤滑剤容量がライン15を通して供給される。潤滑剤容量の容積は、シリンダ3内でのピストンのストロークH及び計量ピストン4の断面Aから、式A×Hに従って求められる。ストロークHは、計量ピストンの総ストロークH’のうち、シリンダ3の閉鎖後に、供給ライン11に対してシリンダ3内で計量ピストン4が後退される部分である。供給ライン11のロック後は、潤滑剤が供給ラインに逆流できないため、潤滑剤は出口13に強制的に供給される。シリンダ3は、計量室としての役割を果たし、その容積が、消費点すなわち潤滑箇所16に送り出される所定の潤滑剤量を決定する。
【0054】
計量ピストン4を作動させるために、電線9には、時間tにわたって変化する電気作動信号30が取り込まれる。図1に示す作動信号30では、時間tにわたる電圧と電流との積である電気エネルギーPが加えられる。分かるように、電気エネルギーP0がまず期間TSの間に電線9を介して供給される。次に、期間TPの間はエネルギーが供給されず、続いて期間TSにわたってエネルギーP0が供給される。期間TPは、潤滑箇所16に潤滑剤が供給される注油間隔を決める。
【0055】
作動信号30は、SPS制御部によって生成することができ、計量ポンプのソレノイドを作動させるのに以前用いられていたような信号に対応する。制御部は、ハウジングに組み込むこともできる。
【0056】
期間TSの間、電気エネルギーP0は作動手段8に供給され、このエネルギーは加熱要素8を加熱して計量ピストン4を移動させる。時間TSの経過後、計量ピストン4がその最終位置に達すると、エネルギーP0が切られて、休止時間TPの終了後にのみ再び接続される。長期注油の場合、注油は週間隔でしか行わなくてよいため、時間間隔TPは約1週間又は数週間である。短期の場合、休止時間TPは、膨張要素5のリセット時間によって制限される。
【0057】
持続時間TSの長さは、作動手段の応答時間に従って決められ、これは、計量ピストン4を図1に点線で示す最終位置までほぼストロークHだけ移動させるのと同じだけ必要である。図1に示すシステムでは、持続時間TSは、数分、例えば2分になる。この時間は、加熱要素8の加熱力を高めることによって短縮することもできる。期間TSの間、電線9に供給されるエネルギーP0は、加熱要素によって熱エネルギーに変換され、これが膨張材料室6内の膨張材料に伝達される。膨張材料は、熱くなることによって膨張する。例えばワックスが膨張材料として用いられる場合、ワックスはその容量を増やしながら溶融する。計量ピストン4は、これにより膨張材料室6からシリンダ3に押し込まれ、シリンダ3に入っている潤滑剤を出口13及び戻し弁14を通して消費点16に運ぶ。
【0058】
時間TSが経過して供給エネルギーP0が切られた後、膨張室6内の膨張材料及び加熱要素が冷める。計量ピストン4は、リセット手段10の影響下で、その開始位置に戻る。戻し弁14により、潤滑剤が消費点16からシリンダ3に逆流できなくなる。貯留容積部22からの新たな潤滑剤が、供給ライン11を通って流れる。
【0059】
貯留容積部22と計量ポンプ1との間の気密接続により、貯留容積部22、供給ライン11、及びシリンダ3内の潤滑剤は、全容量から戻し弁14に至るまで古くなる可能性はないため、潤滑剤の通常の貯蔵寿命を超える期間にわたって潤滑剤容器18を交換せずに計量ポンプを用いることができる。次により詳細に説明するように、貯留容積部22が計量ポンプ1に組み込まれる場合にも、この利点が得られる。
【0060】
消費点16に近接して計量ポンプ1を配置することにより、ライン15もそれに対応して短くなるため、潤滑剤の劣化はライン15でも生じることはない。期間TSと注油間隔間にある休止期間TPとの期間に、計量ポンプ1によって運ばれる潤滑剤容量で特に連続的な注油動作が達成され、特に計量ポンプ1がリニアガイドに組み込まれる場合ではアタッチメント要素を用いる場合よりも長く整備不要な利用が達成されるような寸法に、貯留容積部22がされる。
【0061】
図1に示すように、計量ポンプ1において複数の計量ピストン4を同時に作動されてもよく、この場合、個々の計量ピストン4のシリンダ3は、1つ又は複数の供給ライン11を介して貯留容積部22に接続される。個々の計量ピストン4はそれぞれ、注油点16の出口13に関連付けられ、それらに、これらに関連するライン15を介して、挿入された戻し弁14が設けられる。
【0062】
図2は、本発明による計量ポンプ1のさらなる実施形態を示す。図1の実施形態の要素と同一又は同様の機能及び/又は構造を有する要素は、図1と同じ参照符号で特徴付けられる。
【0063】
次に、図2の実施形態の構造を説明するが、ここでは図1の実施形態との相違点のみ説明する。
【0064】
シリンダ3及び計量ポンプ4の2つの異なる実施形態を、図2において計量ポンプ1の中心線Mの上下で示す。
【0065】
まず、2つの変形形態に共通の特徴を説明する。
【0066】
図1の実施形態とは対照的に、計量ポンプ2の加熱要素8は、加熱コイルではなくPTC加熱要素を含み、これは、図2に示されていない膨張材料室6のハウジング7と熱伝導接触している。
【0067】
図1の実施形態とは対照的に、計量ピストンはまた、作動手段5によって直接駆動されない。むしろ、作動手段5は作動ピストン35を備え、これは、膨張材料室6内に突き出し、膨張材料室6内の膨張材料の膨張によって生成される作動力Kの作用を受ける。移動伝達要素36が作動ピストン35に取り付けられ、この移動伝達要素に計量ピストン4が保持される。図2に示すように、移動伝達要素36は、ディスク状に設計され得る。移動伝達要素36より、複数の計量ピストン4又は1つの計量ピストン4が作動手段5に、動かないように固定されてもよい。作動ピストン35の移動中、複数の計量ピストン4が移動伝達要素36を通じて同時に移動させられる。断熱性及び/又は電気絶縁性を高めるために、作動要素36が、プラスチック材料等の低い熱伝導率及び/又は導電率を有する材料で作られてもよい。
【0068】
図1の実施形態とは対照的に、図2の2つの変形形態のリセット手段10は、計量ピストン4ではなく作動手段5に配置されるため、複数の計量ピストン4を用いる場合でも1つのリセット手段10しか設けられない。リセット手段10は、作動手段5に直接作用し、計量ポンプ1のハウジング2と移動伝達手段36、又は一変形形態では作動ピストン35との間に支持される。
【0069】
図2の中心線Mの上側に示される変形形態は、図1の実施形態とは異なる以下の特徴を備える。
【0070】
この変形形態では、計量ピストン4のストロークを制限し、それにより計量ピストン4の最終位置を画定するために、当接部37が設けられる。当接部37は、作動手段5及びリセット手段10の最大限可能なストローク内に配置されるため、当接部37によって画定される最終位置は、計量ピストン4によって確実に到達される。図2の上側の変形形態に示すように、当接部は移動伝達要素36と協働することができるか、又は代替的な一実施形態では、それは各計量ピストン4と協働することもできる。
【0071】
ハウジング2には、ブッシュ38が挿入される凹部又はボアが設けられる。計量ピストン4が数μmという低公差でブッシュ38に嵌め込まれる場合、ブッシュ38は、固体すなわち摺動可能なプラスチック材料で、又は鋼若しくは真鍮等の金属ででも作られていることが好ましい。後者の場合、ブッシュ38と計量ピストン4との間の付加的なシールをなくすことができる。計量ピストン4は、軸方向に延びてシリンダ3を形成するブッシュ38のボアに収容される。軸方向ボアを通って延びる半径方向ボア39が、供給ライン11に接続される。
【0072】
ブッシュ38には、計量ピストン4と軸方向ボアとの間の隙間をシールするシール手段40と、ブッシュ38をハウジング2に対してシールするシール手段41とが設けられる。シール手段40は、作動手段5の方向で計量ピストン4をシールすることにより、計量ピストン4とシリンダとの間の隙間を通して潤滑剤が流れるができないようにし、膨張材料駆動装置の遅い反応時間とその結果生じる計量ピストン4の遅い送り速度とに起因して潤滑剤が計量ピストン4とシリンダとの間の隙間を通って流れて所定の計測量を変えることができないようにする。
【0073】
加熱手段8を作動させたときの計量ピストン4の熱膨張を補償するとともに、製造上の理由から防止することができない隙間を補償するために、シール手段40、41は半径方向に弾性があることが好ましい。さらなるシール手段42が、出口13を向いた方向を指すブシュの端の、ストロークHの間に計量ピストン4によって通過される領域に配置される。計量ピストン4が、その上を通過するときに、シール手段42の損傷を回避するために、計量ピストン4は、シリンダ3内に突き出て、その端で放射状のものとして、すなわち局面のものとしての形態の入口外形を有する。
【0074】
図2の上側の変形形態の戻し弁14は、作動手段5を作動させたときの計量ピストン4の最終位置の近くに配置され、1つの構造を成して設計される。シリンダ3に面する弁ディスク43のシール面に、エラストマー材料のシール部44が設けられる。
【0075】
その機能に関しては、図2の上側の変形形態は実施形態1の機能に対応する。
【0076】
次に、図2のうち中心線Mの下側に示す変形形態を説明する。簡略のために、図2の上側の変形形態及び図1の実施形態との相違点のみに言及する。
【0077】
図2の下側の変形形態では、シリンダ3も、射出成形法でのハウジング2の製造中にハウジングに直接形成されたものでもある。シール手段45が、作動手段5に向かう方向でハウジング2に対して計量ピストン4をシールする。シール手段45の機能は、図2の上側の変形形態のシール手段30の機能に対応する。
【0078】
図2の下側の変形形態では、計量ピストン4には、計量ピストン4と連動するシール手段46も設けられる。計量ピストン4のシール手段46は、作動手段5を作動させると、供給ライン11の口を超えてシリンダ3内へ移動する。シール手段2の磨耗を防止するために、供給ライン11の口の領域には、局面のものとしての、すなわち放射状のものとしての入口外形が設けられる。
【0079】
図2の下側の変形形態の残りの構造及び機能は、上側の変形形態の残りの構造及び機能に対応する。
【0080】
図3は、計量ポンプ1のさらなる変形形態を示し、計量ピストン4及びシリンダ3の構造のみが示されている。
【0081】
シリンダ3における供給ライン11の口の入口外形の製造を複雑にしないために、計量ピストン4は、部分4a及び部分4bに軸方向に分割され、部分4aの直径は部分4bの直径よりも大きい。
【0082】
部分4bは、部分4aと出口13との間に配置される。シリンダ3は、大きな径を有する部分3a及び小さな径を有する部分3bに軸方向に分割され、供給ラインは領域3aで開口する。
【0083】
計量ピストンの部分4bの直径は、部分4bが、シリンダの部分3bに収容できるような寸法にされる。出口13の方向に位置する部分4bの端にはシールが取り付けられ、部分4bがシリンダ部分に入ると、このシールが部分3aに対してこの部分をシールして、出口13と供給ライン11との間の接続部をロックする。
【0084】
図3に示す計量ピストンの実施形態では、計量ピストンの部分4bは、シリンダ部分3bから出るとシリンダ部分3aの内壁から半径方向に離れているため、シールは部分3aのシリンダ内壁と接触しない。傾斜面の形態の入口外形3cは、シリンダ部分3aとシリンダ部分3bとの間の移行部に位置するため、シール手段46はシリンダ部分3b内に緩やかに挿入される。計量ピストンのうち出口13とは反対側の端にさらなるシール40(図2を参照)が設けられ得ることは、図3には示されていない。
【0085】
この実施形態により、作動中にシール46が供給ライン11の入口に延びることが回避される。
【0086】
出口13の方を向いた内側シリンダ部分3bの端面は、計量ピストン4との当接部37を形成するため、計測量の正確な決定が可能である。代替的に、当接部37は、入口外形3cの領域に設けられてもよい。
【0087】
図3の変形形態では、計測量に関連するストロークHは、当接部37に対して移動するときの、シリンダ部分3b内に入って最終位置までのシール46のストロークから、計算される。
【0088】
図4は、図2の上側の変形形態の線III−IIIに沿った断面を示す。
【0089】
分かるように、供給ライン11は、貯留容積部22に向かって開いており残りの側面がハウジング2に囲まれているシャフトの形態で設計される。ブッシュ38のボア39はシャフトに通じているため、矢印46で示すように、供給ライン11とブシュ38のボア39とを介した、計量室としての役割を果たすシリンダ3への中央供給が可能となる。
【0090】
図5は、潤滑剤容器18のさらなる実施形態を示し、それらの機能又はそれらの構造に関して、前述の実施形態から既知の要素には同じ参照符号が用いられる。事項を簡単にするために、図1の計量ポンプ1は、供給ライン11の入口の領域のみが示される。
【0091】
図5の潤滑剤容器18は、潤滑剤容器18に挿入されて、その内部に貯留容積部22が形成される交換可能なカートリッジ40を有する。カートリッジ40は、出口開口22の方向に圧縮可能なアコーディオン状のベローズ体でできている。図5で見ることができるように、カートリッジ40は、搬送手段23と潤滑剤容器18の取り外し可能な底板41との間に配置され、この底板は例えば、ねじ式又はクリップ式であるため、搬送手段18によって発生される圧力がカートリッジ40を底板に押し付けて、カートリッジの容量を減らそうとする。
【0092】
アタッチメント手段17は、バイオネットロックの形態で底板41に取り付けられる。
【0093】
図5の実施形態の放出開口20は、カートリッジ40によって形成される。これは、カートリッジ40又は潤滑剤容器18から計量ポンプ1に向かう方向に延びる管状アタッチメント42の端に設けられ、この管状アタッチメントには、シール手段19も配置される。
【0094】
最初の使用前、すなわち計量ポンプ1に始めて取り付けられる前の、配送状態の放出開口20は、プラグ形の閉鎖体で気密にロックされている。
【0095】
供給ライン11の入口内には圧力ピン44が配置され、この圧力ピンは、供給ライン11と平行に延び、潤滑剤容器18が計量ポンプ1に取り付けられると、放出開口20を通って、配送状態で閉鎖体43が配置されている点の奥まで延びる。これにより、潤滑剤容器18が計量ポンプに取り付けられると閉鎖体43が自動的に押しやられて、放出開口20が開かれる。
【0096】
管状アタッチメント42及び圧力ピンの長さは、カートリッジ40が取り付けられるときに、圧力ピン44が管状アタッチメント42を通って貯留容積部22内にわずかに延びるような寸法にされることで、閉鎖体が放出開口に被さったままとなることが防止される。
【0097】
図6は、例えばアタッチメント42のねじの形態の、図4に示すアタッチメント装置17のカートリッジ40の一変形形態を示し、シール手段90が計量ポンプ1の供給ライン11の入口の領域に配置される。シール手段19は、アタッチメント42に形成されるシール面上で支えられており、貯留容積部22を気密にシールする。
【0098】
図6の変形形態の閉鎖体43は、放出開口20内に押し込まれる球として形成される。供給ライン11の中心軸に沿ってその入口まで延びるマンドレル44によって、カートリッジを取り付けるときに、その球が貯留容積部22内に自動的に押し込まれる。
【0099】
図7は、本発明による計量ポンプ1のさらなる実施形態を示す。前の図の実施形態の要素と同一又は同様の機能及び/又は構造を有する要素は、同じ参照符号で示される。
【0100】
次に、図7の実施形態の構造を説明するが、前の実施形態との相違点のみ説明する。
【0101】
図7において、潤滑剤容器18は、計量ポンプ1のハウジング2に組み込まれる。貯留容積部22、ピストン24、及びばね要素25から成る潤滑剤容器18は、少なくとも一部が計量ピストン4及びシリンダ3を囲む。シリンダハウジング54の円周面、計量ポンプ1のハウジング2、及び潤滑剤容器18は、ほぼ円筒形に形成され、互いに同心状に配置される。
【0102】
貯留容積部22は、シリンダハウジング54を囲み、ハウジング2、シリンダハウジング21、及びリングピストンとして形成されるピストン24によって制限される。貯留容積部22は、供給ライン11を介してシリンダ3に接続される。
【0103】
環状ピストン24は、シリンダハウジング54の周りに軸方向に可動に配置される。シリンダハウジング54の円周面及びハウジング2の内側は、ピストン24が軸方向に案内されて、沿って摺動することができるガイド面を形成する。これらのガイド面は、貯留容積部22(点で示す)内にある潤滑剤によってストロークごとに自動的に注油されることで、磨耗を減らす。貯留容積部22から意図しない潤滑剤が漏れるのを防止するために、シール要素50がピストン24の内径及び外径に配置され、これらのシール要素は、ばね要素25の設置スペース55に対して貯留容積部22をシールする。シール要素50は、例えば、Oリング若しくは環状シールリング、又は他の従来のシールでよい。ピストン24は、貯留容積部22をばね要素25の設置スペース55から隔てる。ばね要素25は、ピストン24と作動手段5との間の設置スペース55に装着されるため、可動のピストン24は貯留容積部22に向かう方向に押される。図7に示す実施形態のばね要素25は、圧縮つる巻きばねとして形成される。代替的に、いかなる付勢要素を用いてもよい。ばね要素25は、貯留容積部22内に配置してもよく、引張ばねとして形成してもよい。
【0104】
ピストン24は、2つの肩部56、57を有し、一方の肩部57は貯留容積部22に面する側に形成され、他方の肩部56は貯留容積部22とは反対側に形成される。
【0105】
ピストン24は肩部57によって形成されるため、供給ライン11の口がピストン24の各位置で貯留容積部22に接続される。
【0106】
肩部56は、ばね要素25の座部を形成する。軸方向での肩部56の長さは、ピストン24が最大貯留容積部22の位置(図7では左側)にある場合に、設置スペース55の軸方向の長さが、完全に圧縮されたばね要素25の長さより長いか、又は同等となるような寸法にされる。
【0107】
計量ポンプ1のハウジング2には、潤滑剤入口51が形成される。潤滑剤入口51は、貯留容積部22に通じており、戻し弁52、又は球若しくは閉鎖ねじ等のロックによって閉じられる。戻し弁52は、例えば注油ニップルとして形成され、貯留容積部22を外部に対して液密にロックする。
【0108】
図7ではOリングとして形成されるシール手段53が、ハウジング2の円周方向に配置される。
【0109】
図7に示す計量ポンプ1の実施形態の作動中、計量ピストン4は、前述の実施形態のように、作動手段5の作動によって潤滑剤出口13に向かう方向で、軸方向に移動させられる。シリンダ3内にある潤滑剤は、潤滑剤出口13に接続された潤滑箇所に導かれる。次に、上述のように作動手段5を停止させる。続いて計量ピストン4をリセット手段10によって開始位置に後退させると、次の動作のために潤滑剤が貯留容積部22からシリンダ3に流れ込む。ピストン24は、シリンダ3が完全に充填されるまで、ばね要素25によって貯留容積部22に向かう方向に移動させられる。
【0110】
戻し弁又は注油ニップルを有するように設計される場合、貯留容積部22には、空であれば必要に応じて新たな潤滑剤を外部から潤滑剤入口51を通して充填することができる。外部から充填される潤滑剤は、充填プロセスの間に圧力で付勢されるため、ばね要素25にあらかじめ付された力を克服することができ、ピストン24を貯留容積部22に対して軸方向に移動させることができる。
【0111】
計量ポンプ1が一体型の潤滑剤容器18を有する設計であるため、簡単に装着できる、特に小型のカートリッジ状モジュールユニットが生み出される。このような計量ポンプ1は、例えば、潤滑箇所に通じるボアに挿入されてもよい。シール手段53によって、計量ポンプ1はボア内に密閉配置され、意図しない潤滑剤の漏れが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明による計量ポンプの第1の実施形態の概略断面図を示す図である。
【図2】本発明による計量ポンプの2つの変形形態の概略断面図を示す図である。
【図3】本発明による計量ポンプのさらなる変形形態の概略断面図を示す図である。
【図4】図2の断面III−IIIに沿った図で、図2の計量ポンプを示す図である。
【図5】カートリッジを有する潤滑剤容器の概略断面図を示す図である。
【図6】カートリッジのさらなる変形形態の概略断面図を示す図である。
【図7】本発明による計量ポンプのさらなる変形形態の概略断面図を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動手段(5)によって駆動することができる少なくとも1つの計量ピストン(4)を備える、特に潤滑剤用の計量ポンプ(1)であって、前記作動手段(5)は、少なくとも1つの加熱要素(8)と、前記加熱要素(8)によって加熱することができる1つの膨張要素(6、7)とを備えることを特徴とする計量ポンプ(1)。
【請求項2】
前記作動手段(5)に反作用するリセット力(R)を発生させることができるリセット手段(10)が設けられることを特徴とする請求項1に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項3】
前記リセット手段(10)は少なくとも1つのばね要素を含むことを特徴とする請求項2に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項4】
前記リセット手段(10)は膨張要素を含むことを特徴とする請求項2に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項5】
前記加熱要素(8)は少なくとも1つのPTC要素を含むことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項6】
前記計量ピストン(4)は、シリンダ(3)内に変位可能に、且つ前記シリンダ(3)を潤滑剤漏れしない方法でシールする公差で収容されることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項7】
前記計量ピストン(4)は、シリンダ(3)内に変位可能に収容され、半径方向に弾性のある少なくとも1つのシール要素(40、42、45、46)が、前記計量ピストンと前記シリンダの内壁との間に配置されることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項8】
前記シール要素(40)は、前記シリンダ(3)に通じる供給ライン(11)の開口と作動手段(5)との間に配置されることを特徴とする請求項7に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項9】
前記計量ピストン(4)は、射出成形によって作製されるシリンダ(3)内に変位可能に収容されることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項10】
前記シリンダ(3)及び前記計量ピストン(4)は、異なる直径の部分(3a、3b、4a、4b)に軸方向に分割されることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項11】
前記供給ラインは、大径を有する前記シリンダ(3)の前記部分(3a)に配置され、シール手段が、小径を有する前記計量ピストン(4)の前記部分(4b)に配置されることを特徴とする請求項10に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項12】
前記シリンダ(3)は、前記計量ポンプのハウジング(2)と一体的に形成されることを特徴とする請求項9から請求項11までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項13】
前記作動手段(5)によって共通に作動されるように配置される複数の計量ピストン(4)が設けられることを特徴とする請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項14】
前記計量ピストン(4)に運動伝達式に接続する移動伝達要素(36)が、前記作動手段(5)と前記複数の計量ピストンとの間に配置されることを特徴とする請求項13に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項15】
供給ライン(11)が、前記計量ピストンのストローク(H)の領域で前記シリンダの前記内壁に開口しており、開口部で前記供給ラインに入口外形が設けられることを特徴とする請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項16】
前記計量ポンプ(1)が少なくとも1つの潤滑剤出口(13)を備え、戻し弁(14)が前記少なくとも1つの潤滑剤出口(13)の領域に配置され、前記戻し弁は、前記計量ピストン(4)が前記作動手段(5)によって移動されるときに、開放状態に移行することができるように設計されることを特徴とする請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項17】
前記計量ポンプ(1)が構成ユニットになるように潤滑剤容器と一体化可能に設計されることを特徴とする請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項18】
前記潤滑剤容器(18)は、前記計量ポンプ(1)に交換可能に取り付けられることを特徴とする請求項17に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項19】
前記潤滑剤容器(18)は、前記計量ポンプ(1)に気密に取り付けられることを特徴とする請求項17又は請求項18に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項20】
前記潤滑剤容器(18)は、少なくとも5年間にわたってほぼ連続する計量プロセスを可能にするサイズである貯留容積部(22)を備えることを特徴とする請求項17から請求項19までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項21】
前記計量ポンプ(1)は、前記計量ポンプ(1)の前記ハウジング(2)内に組み込まれる潤滑剤容器(18)を備えることを特徴とする請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項22】
前記潤滑剤容器(18)は、前記シリンダ(3)に接続される貯留容積部(22)を備えることを特徴とする請求項21に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項23】
前記計量ピストン(4)は、前記潤滑剤容器(18)によって少なくとも部分的に囲まれることを特徴とする請求項21又は請求項22に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項24】
ほぼ前記貯留容積部(22)の方向に付勢されるピストン(24)が、前記潤滑剤容器(18)内に移動可能に配置されることを特徴とする請求項21から請求項23までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項25】
前記ピストン(24)はシリンダハウジング(54)の周りに移動可能に配置されることを特徴とする請求項21から請求項24までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項26】
前記ピストン(24)はリングピストンとして形成されることを特徴とする請求項21から請求項25までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項27】
前記計量ポンプ(1)が、そこを通して潤滑剤を外部から前記貯留容積部(22)内に導くことができる潤滑剤入口(51)を備えることを特徴とする請求項21から請求項26までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)。
【請求項28】
潤滑剤によって少なくとも部分的に充填される貯留容積部(22)を備え、保持手段(17)を備える潤滑剤容器(18)であって、前記貯留容積部(22)は、アタッチメント装置(17)によって請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の計量ポンプ(1)にほぼ気密に交換可能に取り付けられるように設計されることを特徴とする潤滑剤容器(18)。
【請求項29】
前記保持手段(17)はバイオネットとして形成されることを特徴とする請求項28に記載の潤滑剤容器(18)。
【請求項30】
ばね要素(25)によって前記貯留容積部(22)の方向に付勢されるピストン(24)が、前記潤滑剤容器(18)に組み込まれることを特徴とする請求項28又は請求項29に記載の潤滑剤容器(18)。
【請求項31】
潤滑剤量が前記貯留容積部(22)に収容され、前記潤滑剤量は、少なくとも5年間の前記計量ポンプ(1)の作動を可能にすることを特徴とする請求項28から請求項30までのいずれか1項に記載の潤滑剤容器(18)。
【請求項32】
前記貯留容積部(22)の放出開口(20)が、前記計量ポンプ(1)の最初の使用前に閉鎖要素(26)によってロックされ、前記閉鎖要素(26)は、前記計量ポンプの開放手段(27)と協働して、前記潤滑剤容器(18)が前記計量ポンプ(1)に設置されると前記放出開口(20)を露出させることを特徴とする請求項28から請求項31までのいずれか1項に記載の潤滑剤容器(18)。
【請求項33】
潤滑剤が所定の時間間隔で計量ピストン(4)によって計量式に潤滑箇所(16)に送り出される、特に1つ又は複数の潤滑箇所の長期注油の方法であって、前記計量ピストン(4)は、少なくとも1つの膨張要素(6、7)の加熱によって移動させられることを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−536464(P2007−536464A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512000(P2007−512000)
【出願日】平成17年5月3日(2005.5.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004791
【国際公開番号】WO2005/108849
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(504238150)ヴィリー フォーゲル アクティエンゲゼルシャフト (5)
【Fターム(参考)】