説明

記録ヘッド保護機構、インクジェット記録装置

【課題】インクジェット記録装置の用紙の給紙容量を確保しつつ、記録ヘッドのメンテナンスを行うことを可能とする。
【解決手段】用紙にインクによる記録を行う記録ヘッド31a〜31dのインク吐出口を覆うキャップ41a〜44dを有し、記録ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンスユニット40と、メンテナンスユニット40を、記録ヘッドに対向する位置と、用紙を搬送する搬送ベルト24及び搬送ベルトを駆動する駆動ローラ21を有する搬送機構20の配置位置より外側の待機位置との間で用紙の搬送経路に平行して移動させるメンテナンスユニット移動機構50とを備え、メンテナンスユニット40の待機位置は、搬送ベルト24により搬送される用紙が収納される給紙デッキ10の上方である、記録ヘッド保護機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置において記録ヘッドの保護又はメンテナンスに用いられる記録ヘッド保護機構及びそれを用いたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に、従来のインクジェット記録装置100を示す。インクジェット記録装置100は、トレイ101に載置された用紙102を一枚毎に装置内部へ導く用紙分離ローラ対103と、用紙分離ローラ対103により導かれた用紙を搬送する搬送機構110と、搬送機構110上を搬送される用紙102にインクを吐出して画像を形成する画像形成部120と、画像形成後の用紙102を装置外へ排出するための排出ローラ104等を備える。
【0003】
搬送機構110は、駆動ローラ111、従動ローラ112及びこれらローラに掛け渡された環状の搬送ベルト113、レジストローラ114等を有しており、駆動ローラ111の自転により搬送ベルト113を駆動させる。従動ローラ112は、搬送ベルト113の駆動に応じて回転する。
【0004】
画像形成部120はラインヘッド型の記録ヘッド121a〜121dを備えた、いわゆるラインヘッド型であるが、それぞれ用紙102の搬送方向に直交する方向に沿って縦列して配置されている。
【0005】
このようなインクジェット記録装置100においては、用紙102が搬送ベルト113に沿って移動する際に、画像形成部120の記録ヘッド121a〜121dからそれぞれの色のインクの吐出を受けることにより、カラー画像が形成される。カラー画像が形成された用紙102は、排出ローラ104から装置外部へ排出され、トレイ105上に蓄積される。
【0006】
ところで、インクジェット記録装置においては、記録ヘッドのメンテナンスが従来より課題となっている。上記インクジェット記録装置100の場合、記録ヘッド121a〜121dが動作しない状態が長時間連続すると、記録ヘッド121a〜121dの各インク吐出口に形成されたインクのメニスカス表面が乾燥し、適切なインクの吐出ができなくなってしまう。
【0007】
そこでインクジェット記録装置においては、記録ヘッドのメンテナンスを行っている。つまり、用紙に対し記録動作を行わない時に記録ヘッド121a〜121dを強制動作させ、インク吐出口からインクを吐出させて、乾燥によって粘度が上昇したインクを除去する。
【0008】
このとき、記録ヘッドが用紙の搬送方向と直交する方向に往復移動するシリアル式インクジェット形式の装置であれば、メンテナンスの動作は、記録ヘッドを用紙搬送経路から外れた位置に移動させてから行うことができる。
【0009】
一方、記録ヘッド121a〜121dが搬送ベルト113上に固定配置されたラインヘッド型の上記インクジェット記録装置100の場合は、メンテナンス専用のユニットを別途用意し、記録ヘッド121a〜121d側に移動させてメンテナンスを行わせている。
【0010】
すなわち、図10に示すように、インクジェット記録装置100においては、各記録ヘッド121a〜121dに対応した4つのキャップ131a〜131d及びキャップ131a〜131dから滴下する排インクを溜め込む本体部132を有するメンテナンスユニット130を備えた構成としている。メンテナンス時には、図中矢印Aに示すように、図示しない昇降機構によって搬送機構110を画像形成部120直下に離隔させ(図中点線にて示す)、次いで図中矢印Bに示すように、画像形成部120と搬送機構110との間にメンテナンスユニット130を移動させ(図中点線にて示す)、記録ヘッド121a〜121dとキャップ131a〜131dとを当接させて、メンテナンスユニット130内にてインクの強制吐出を実行するようにしている。通常の印刷動作時には、上記と逆の動作を行い、メンテナンスユニット130はトレイ101直下に収納される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−102945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来のインクジェット記録装置100においては、以下のような課題があった。
【0012】
すなわち、上記構成では、メンテナンスユニット130は、通常使用時には、トレイ101の下部に設けられた空間内に収納されることとなるが、この場合、汎用の画像形成装置においては、外部給紙デッキと接続するのに用いられる空間がメンテナンスユニット130に占有されることとなり、給紙可能な場所はトレイ101に限定されてしまう。トレイ101の積載量が少ない場合は、処理内容によっては、用紙を頻繁に追加しなければならない。
【0013】
なお、トレイ101下部の空間を確保すべく、各記録ヘッド121a〜121d間に、ヘッド毎に独立したメンテナンスユニットを設けることも考えられるが、この場合、各記録ヘッド121a〜121dの間隔が大きくなり、搬送ベルト113の長さが長くなってしまう。このとき、ヘッド−ベルト間の隙間は1mm程度の大きさを保つ必要があるのに対し、記録ヘッド121a〜121dまでの用紙搬送方向の間隔が増えると、その寸法の確保も難しくなる。
【0014】
すなわち、従来のインクジェット記録装置においては、用紙の給紙容量を確保しつつ、メンテナンスを行う構成を両立させることは困難であった。
【0015】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、インクジェット記録装置の用紙の給紙容量を確保しつつ、記録ヘッドのメンテナンスを行うことを可能とする記録ヘッド保護機構及びそれを用いたインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、第1の本発明は、記録媒体にインクによる記録を行う記録ヘッドのインク吐出口を覆うキャップを有するキャップユニットと、
前記記録媒体を前記記録ヘッド側に搬送する搬送ベルト及び前記搬送ベルトを駆動する駆動ローラを有する記録媒体搬送ユニットと前記記録ヘッドとの相対的な移動と連動して、前記キャップユニットを、前記記録ヘッドに対向する位置と前記搬送ベルトの上流側にある待機位置との間で移動させるキャップユニット移動部とを備え、
前記キャップユニットの前記待機位置は、前記搬送ベルトにより搬送するための前記記録媒体が収納される収納空間の上方である、記録ヘッド保護機構である。
【0017】
又、第2の本発明は、上昇させた時に前記記録ヘッドが前記記録媒体に記録可能な状態となり、下降させたときに前記キャップユニットが前記記録媒体搬送ユニットと前記記録ヘッドとに挟まれる位置に移動できるように、前記記録媒体搬送ユニットを前記記録ヘッドに対向する方向にて昇降させる記録媒体搬送ユニット昇降部と、
上昇させた時に前記キャップが前記記録ヘッドの前記インク吐出口を覆うように前記記録ヘッドと前記キャップユニットとを当接し、下降させたときに前記記録ヘッドと前記キャップユニットとが離間するように、前記キャップユニットを昇降させるキャップユニット昇降部とを備えた、第1の本発明の記録ヘッド保護機構である。
【0018】
又、第3の本発明は、前記待機位置に設けられた、前記キャップユニットを覆うユニットカバーを備えた、第1又は第2の本発明の記録ヘッド保護機構である。
【0019】
又、第4の本発明は、記録媒体を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトを駆動する駆動ローラとを有する記録媒体搬送ユニットと、
前記記録媒体にインクによる記録を行う記録ヘッドと、
前記記録媒体を収納する収納ユニットと、
前記記録媒体搬送ユニット及び前記記録ヘッドと協働する、第1から第3のいずれかの本発明の記録ヘッド保護機構とを備えた、インクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0020】
以上のような本発明によれば、用紙の給紙容量を確保しつつ、記録ヘッドのメンテナンスを行うことを可能とする記録ヘッド保護機構及びそれを用いたインクジェット記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態の、記録ヘッド保護機構を搭載したインクジェット記録装置の要部正面図であり、図2(a)は、図1の要部左側面図であり、図2(b)及び図3は同上面図である。ただし図2(a)(b)及び図3においては、説明の簡単のため、図1に示した構成のいくつかを省略して示した。
【0023】
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、記録対象となる記録媒体である用紙を収納する給紙デッキ10、給紙デッキ10内の用紙10aを一枚毎に摘出するピックアップローラ10b、ピックアップローラ10bが摘出した用紙10aを一枚毎に分離するための用紙分離ローラ対10cと、用紙分離ローラ対10cから導かれた用紙を搬送する搬送機構20と、搬送機構20上を搬送される用紙にインクを吐出して画像を形成する画像形成部30とを備える。
【0024】
搬送機構20は、レジストローラ11、駆動ローラ21、従動ローラ22、テンションローラ23、及びこれらローラに掛け渡された環状の搬送ベルト24等から構成され、駆動ローラ21の自転により、用紙分離ローラ対10cから導かれた用紙を載置した搬送ベルト24を駆動させる。従動ローラ22は搬送ベルト24の駆動に応じて回転し、テンションローラ23は搬送ベルト24に一定の張力を与える。又、駆動ローラ21、従動ローラ22、テンションローラ23、及び搬送ベルト24が筐体部25内に収納されることにより搬送機構20はユニット化されている。
【0025】
又、図2(a)及び(b)に示すように、画像形成部30はラインヘッド型の記録ヘッド31a〜31dを備えたラインヘッド型であり、それぞれ用紙の搬送方向に直交する方向に沿って縦列して配置される。
【0026】
本実施の形態のインクジェット記録装置1は、上記各構成に加えて、メンテナンスユニット40、メンテナンスユニット移動機構50、及び搬送機構昇降器60を備えたことを特徴とする。
【0027】
メンテナンスユニット40は、各記録ヘッド31a〜31dに対応した4つのキャップ41a〜41d及びキャップ41a〜41dから滴下する廃インクを溜め込む不図示の廃インクタンクを有する本体部42、本体部42に設けられた移動用コロ43を備える。
【0028】
又、メンテナンスユニット移動機構50は、図1及び図3に示すように、それぞれ自転可能なプーリ51及び52、プーリ51及び52に掛け渡されたワイヤ53、レール54及びメンテナンスユニット昇降器55を備える。ワイヤ53は搬送機構20の両側に隣接して配置され、レール54は更にワイヤ53の外側に隣接して配置される。
【0029】
ワイヤ53はメンテナンスユニット40の本体部42内を貫通し、これに結合しており、プーリ51及び52の駆動によってワイヤ53が移動すると、メンテナンスユニット40は、ワイヤ53の挙動に応じてレール54上を移動用コロ43によって移動する。メンテナンスユニット昇降器55は、図示しない外部駆動力により回動する、偏心した回動軸55aを有する円形カムである。画像形成部30とレール54との間隙内に配置され、後述のようにメンテナンスユニット40を昇降させる。
【0030】
又、搬送機構昇降器60は、メンテナンスユニット昇降器55と同様、図示しない外部駆動力により回動する偏心した回動軸60aを有する円形カムである。カムの縁部は筐体部25と接しており、後述のように搬送機構20を昇降させる。
【0031】
なお、以上の構成において、メンテナンスユニット40は本発明のキャップユニットに相当し、メンテナンスユニット移動機構50の構成は、本発明のキャップユニット移動部に相当し、メンテナンスユニット昇降器55は本発明のキャップユニット昇降部に相当する。又、搬送機構昇降器60は、本発明の記録媒体搬送ユニット昇降部に相当する。又、キャップ41a〜41dは本発明のキャップに相当する。
【0032】
又、メンテナンスユニット40、メンテナンスユニット移動機構50及び搬送機構昇降器60は本発明の記録ヘッド保護機構を構成する。
【0033】
又、搬送機構20は本発明の記録媒体搬送ユニットに相当し、搬送ベルト24は本発明の搬送ベルトに相当し、駆動ローラ21は本発明の駆動ローラに相当する。又、記録ヘッド31a〜31dは本発明の記録ヘッドに相当し、給紙デッキ10は本発明の収納ユニットに相当する。
【0034】
以上の構成を備えた本発明の実施の形態の記録ヘッド保護機構の動作を、図1〜図7を参照して説明する。
【0035】
はじめに、図1に示す状態は、画像形成部30の記録ヘッド31a〜31dは、搬送機構20の搬送ベルト24と対向しており、用紙への記録動作が可能な通常動作状態である。このとき、給紙デッキ10から摘出された用紙は搬送ベルト24上を移動して、記録ヘッド31a〜31dによりインクの吐出をうけ、画像が形成されると、図示しない外部排出の機構へ更に搬送される。又、メンテナンスユニット40は、給紙デッキ10の真上に設けられたユニットカバー70内に収納されている。なお、ユニットカバー70は本発明のユニットカバーに相当し、給紙デッキ10上のメンテナンスユニット40の待機位置は、本発明の待機位置に相当する。ユニットカバー70によってキャップ41に埃等が付着するのが防止される。すなわち、キャップ41を清潔に保つことで、記録ヘッド31にキャップを当接した際にキャップ41と記録ヘッドの間に埃等が入り込んで、記録ヘッド31とキャップ41の密着が不完全になり、記録ヘッドのノズル内のインクが乾燥してしまうという現象の発生を防ぐことができる。
【0036】
次に、メンテナンス動作を行う場合の動作を、図4〜図7を参照して説明する。
【0037】
図4に示すように、搬送機構昇降器60の円形カムが回動軸60aを中心に搬送機構20が画像形成位置から退避位置に移動するように回動する。図1の通常動作状態にある搬送機構昇降器60は回動軸60aとカムの縁部との距離が大きい側を搬送機構20に対向させているが、図4に示す回動後においては回動軸60aとカムの縁部との距離が小さい側が搬送機構20に対向するため、搬送機構20は固定位置にある記録ヘッド31a〜31dに対して図中矢印に示す対比位置に向かって下降し、搬送ベルト24と大きく離隔する。
【0038】
次に、図5に示すように、プーリ51及び52が回転駆動して、ワイヤ53を図中矢印A方向に牽引する。ワイヤ53に接続されたメンテナンスユニット40はユニットカバー70から牽引されレール54上を移動し、図6に示すように、画像形成部30の記録ヘッド31a〜31dとキャップ41a〜41dとが正対する位置で停止する。
【0039】
次に、図7に示すように、画像形成部30とメンテナンスユニット40とが対向する位置で、メンテナンスユニット昇降器55の円形カムが回動軸55aを中心に、メンテナンスユニット40が画像形成部30に向かって移動するように回動する。図1の通常動作状態、及び図4〜図6に示すレール54上を移動する状態にあってンテナンスユニット昇降器55は回動軸55aとカムの縁部との距離が小さい側を画像形成部30側に対向させており、カムの縁部はレール54に対して下側に位置している。
【0040】
一方、回動後は回動軸55aとメンテナンスユニット昇降器55のカムの縁部との距離が大きい側が画像形成部30側に対向する。このとき、縁部はレール54に対して上側に位置することとなり、レール54に載置されていたメンテナンスユニット40はメンテナンスユニット昇降器55の回動にしたがってカムの縁部と接触し、レール54から持ち上げられる。
【0041】
持ち上げられたメンテナンスユニット40は、キャップ41a〜41dが記録ヘッド31a〜31dを覆うように、画像形成部30と結合する。キャップ41a〜41dは記録ヘッド31a〜31dの底面全体を覆うため、それぞれのインク吐出口は封止され、従来例と同様、インクの強制吐出等のメンテナンスを行うことができる。なお、本発明のキャップユニットは、本体部42の機能を省略して、単に記録ヘッド31a〜31dを封止する構成としてもよい。インクジェット記録装置の非使用時に記録ヘッドの乾燥を防ぐことができる。
【0042】
以上のように、本実施の形態の記録ヘッド保護機構においては、メンテナンス時には画像形成部30と当接するよう移動させるためのメンテナンスユニット移動機構50を備え、通常動作時には、従来技術のようにトレイ101の下方にメンテナンスユニット130が配置されているため大容量の給紙デッキをインクジェット記録装置の図10において右側に横付けできないという不便さを生じることなく、本実施例では給紙デッキ10の上部にメンテナンスユニット40を格納する場所を設けたことにより、汎用の画像形成装置と同様に、給紙デッキ10として大きな用紙積載量を確保することができる。又、メンテナンスユニット40は従来例と同様各ヘッドが集積したものを用いることができるため、搬送機構20の各部の寸法も従来例と同様に抑えることができる。
【0043】
したがって、装置全体を大型化することなく給紙空間を確保しつつ、記録ヘッドに対しメンテナンスを実行することが可能なインクジェット記録装置を構成することが可能となる効果を得ることができる。
【0044】
なお、上記の説明においては、メンテナンスユニット移動機構50がメンテナンスユニット40を画像形成部30の直下に移動させる際に、搬送機構昇降器60を用い、固定配置されたメンテナンスユニット移動機構50に対して搬送機構20を昇降させる構成としたが、搬送機構20は昇降させず、画像形成部30及びメンテナンスユニット40を昇降させて、画像形成部30の直下にメンテナンスユニット40が移動可能な空間を作る構成としてもよい。要するに、記録ヘッドの直下にキャップユニットが移動可能な空間を作ることができればよく、そのための具体的な手順によって本発明は限定されるものではない。
【0045】
又、メンテナンスユニット40と画像形成部30とを結合させるために、メンテナンスユニット昇降器55を用い、固定配置された画像形成部30に対してメンテナンスユニット40を昇降させる構成としたが、メンテナンスユニット40は昇降させず、画像形成部30を昇降させる構成としてもよい。要するに、記録ヘッドとキャップユニットの各キャップとが当接できればよく、そのための具体的な手順によって本発明は限定されるものではない。
【0046】
又、上記の構成においては、搬送機構昇降器60は偏心した回動軸60aを有する円形カムであるとして説明を行ったが、本発明の用紙搬送ユニット昇降部は、これに限定されるものではない。
【0047】
図8は、用紙搬送ユニット昇降部の他の実施例としての搬送機構昇降器80の構成図である。図に示すように、搬送機構昇降器80は、回動軸81、回動軸81からの距離が、符号アルファベット順で徐々に短く変化する5つのベアリング82a、82b、82c、82d及び82e、及びこれらベアリングを挟持した2枚の板部材83a、83bによって構成される。
【0048】
このような搬送機構昇降器80の動作は、基本的には円形カムを用いた搬送機構昇降器60と同様、回動軸81回りに回転することによって板部材の縁部が搬送機構20の筐体部25を持ち上げるものであるが、図9(a)(b)に示すように、回動軸81の回動に従って、筐体部25には、ベアリング82e、82d、82c、82b、及び82aがこの順で段階的に当接することとなる。このような搬送機構昇降器80によれば、筐体部25との摩擦を軽減でき、又、回動軸81や回動軸81を駆動させる図示しないモータ等の駆動部に印加される負荷の変化を滑らかにすることが可能となる。なお、搬送機構昇降器80の構成は、メンテナンスユニット昇降器55において実施してもよい。
【0049】
又、本発明の用紙搬送ユニット昇降部又はキャップユニット昇降部の構成は、カムを利用した構成でなくともよい。ギアとラックレールの組み合わせ、プーリとワイヤの組み合わせ、リニアモータを利用したものであってもよい。要するに、用紙搬送ユニット又はキャップユニットを昇降できるものであれば、その具体的な構成によって限定されるものではない。
【0050】
同様に、本発明のキャップユニット移動部は、プーリ51、52、ワイヤ53及びレール54によってキャップユニットとしてのメンテナンスユニット40を移動させる構成としたが、ギアとラックレールの組み合わせ等であってもよい。要するに、キャップユニットを用紙の搬送経路に平行して移動させることができるものであれば、その具体的な構成によって限定されるものではない。
【0051】
又、図1や図10に示すインクジェット記録装置であって、本発明の記録ヘッド保護機構を内蔵したインクジェット記録装置も本発明に含まれる。用紙に画像を形成する画像形成部としては、図1に示すラインヘッド型のインクジェット記録ヘッドが好適であるが、シリアル型のインクジェット記録装置に対して適用してもよい。又、上記の構成においては複数の記録ヘッド31a〜31dを備えた構成としたが、それぞれの記録ヘッドが異なる色のインクを用いたカラー画像を形成するためのものであってもよいし、同色インクを用いたモノクロ画像を形成するものであってもよい。又、記録ヘッドの個数は1つでも良いし、5つ以上であってもよく、個数によって本発明は限定されるものではない。
【0052】
なお、本発明の記録媒体とは、インクジェット記録装置の画像形成対象となるものであればその組成に限定されるものでなく、紙、布、ディスク、樹脂フィルム等の任意の材料が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、用紙の給紙効率を確保しつつ、記録ヘッドのメンテナンスを行うことを可能とする効果を有し、記録ヘッド保護機構及びそれを用いたインクジェット記録装置等において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態の、記録ヘッド保護機構を搭載したインクジェット記録装置の要部正面図である。
【図2】(a)本発明の実施の形態の、記録ヘッド保護機構を搭載したインクジェット記録装置の要部左側面図である。(b)本発明の実施の形態の、記録ヘッド保護機構を搭載したインクジェット記録装置の要部上面図である。
【図3】本発明の実施の形態の、記録ヘッド保護機構を搭載したインクジェット記録装置の要部平面図である。
【図4】本発明の実施の形態の、記録ヘッド保護機構を搭載したインクジェット記録装置の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態の、記録ヘッド保護機構を搭載したインクジェット記録装置の動作を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態の、記録ヘッド保護機構を搭載したインクジェット記録装置の動作を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態の、記録ヘッド保護機構を搭載したインクジェット記録装置の動作を説明するための図である。
【図8】搬送機構昇降器80の構成図である。
【図9】(a)搬送機構昇降器80の動作を説明するための図である。(b)搬送機構昇降器80の動作を説明するための図である。
【図10】従来の技術によるインクジェット記録装置100の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 インクジェット記録装置
10 給紙デッキ
10a 用紙
10b ピックアップローラ
10c 用紙分離ローラ対
11 レジストローラ
20 搬送機構
21 駆動ローラ
22 従動ローラ
23 テンションローラ
24 搬送ベルト
25 筐体部
30 画像形成部
31a〜31d 記録ヘッド
40 メンテナンスユニット
41a〜41d キャップ
42 本体部
43 移動用コロ
50 メンテナンスユニット移動機構
51、52 プーリ
53 ワイヤ
54 レール
55 メンテナンスユニット昇降器
55a 回動軸
60 搬送機構昇降器
60a 回動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクによる記録を行う記録ヘッドのインク吐出口を覆うキャップを有するキャップユニットと、
前記記録媒体を前記記録ヘッド側に搬送する搬送ベルト及び前記搬送ベルトを駆動する駆動ローラを有する記録媒体搬送ユニットと前記記録ヘッドとの相対的な移動と連動して、前記キャップユニットを、前記記録ヘッドに対向する位置と前記搬送ベルトの上流側にある待機位置との間で移動させるキャップユニット移動部とを備え、
前記キャップユニットの前記待機位置は、前記搬送ベルトにより搬送するための前記記録媒体が収納される収納空間の上方である、記録ヘッド保護機構。
【請求項2】
上昇させた時に前記記録ヘッドが前記記録媒体に記録可能な状態となり、下降させたときに前記キャップユニットが前記記録媒体搬送ユニットと前記記録ヘッドとに挟まれる位置に移動できるように、前記記録媒体搬送ユニットを前記記録ヘッドに対向する方向にて昇降させる記録媒体搬送ユニット昇降部と、
上昇させた時に前記キャップが前記記録ヘッドの前記インク吐出口を覆うように前記記録ヘッドと前記キャップユニットとを当接し、下降させたときに前記記録ヘッドと前記キャップユニットとが離間するように、前記キャップユニットを昇降させるキャップユニット昇降部とを備えた、請求項1に記載の記録ヘッド保護機構。
【請求項3】
前記待機位置に設けられた、前記キャップユニットを覆うユニットカバーを備えた、請求項1又は2に記載の記録ヘッド保護機構。
【請求項4】
記録媒体を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトを駆動する駆動ローラとを有する記録媒体搬送ユニットと、
前記記録媒体にインクによる記録を行う記録ヘッドと、
前記記録媒体を収納する収納ユニットと、
前記記録媒体搬送ユニット及び前記記録ヘッドと協働する、請求項1から3のいずれかに記載の記録ヘッド保護機構とを備えた、インクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−132014(P2009−132014A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309450(P2007−309450)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】