説明

記録再生装置

【課題】
本発明の課題は、コンピュータにおいてユーザ作業を支援するための本来の処理以外の処理を、ユーザ作業に影響することなく、効率よく実行することに関する。
【解決手段】
記録再生装置に、上位装置(コンピュータ)からのアクセス要求を検知する検知部と、記録再生装置の記録領域に記録されたデータに対してデータの書き込み及び読み出し制御可能な内蔵型ホストコントローラを備え、また、OSを搭載することで、上位装置から記録再生装置にアクセス要求が無いタイミングで、記録再生装置に記録されたデータに対してデータ処理を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2003-216445号公報(特許文献1)には、
「コンピュータウイルスのデータベースを用いてウイルスチェックを行うハードウェアに、大きな負荷をかけることのないウイルスチェック方法。」という課題に対し、「FATに格納されたデータリストを用い、1回目にウイルスチェックが済んだファイルのデータにチェック済みのフラグを付けておき、2回目は前述のフラグが付いていないファイルのデータのみについてウイルスチェックを行うようにする。また、ウイルスチェックが済んだデータが書き換えられた場合、そのフラグを外してウイルスチェックが行われるようにする。さらに、ファイル更新日時を示すタイムスタンプの新しいデータからソートしてウイルスチェックを行うようにすることもできる。」という解決手段を用いることが記載されている。
【0003】
特開2003-288224号公報(特許文献2)には、
「処理装置においてユーザ作業を支援する本来の処理以外の処理を処理装置の空き時間に実行させる技術を提供する。」という課題に対し、「所定の処理を実行する処理装置であり、処理装置を使用するユーザのスケジュール情報を参照する手段と、そのスケジュール情報に基づきユーザが上記処理装置を使用しない、そのような処理装置の空き時間を判定する手段と、その空き時間において所定の処理を実行する実行手段とを備える。」という解決手段を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-216445号公報
【特許文献2】特開2003-288224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今日、コンピュータが普及し、ユーザの業務や日常生活を支援している。コンピュータの性能は大きく向上しているが、処理するデータ量も増大しているため、ユーザ作業に対して処理能力が必ずしも間に合っているとは言えない。さらに、ユーザ作業を支援するための本来の作業以外に、コンピュータを適正に維持するための様々な処理が実行される。例えば、インターネットの普及により、様々な情報がインターネット上で交換できる一方、コンピュータウイルスによる被害は後を絶たない。これに対し、コンピュータウイルスをチェックし、除去するソフトウェアが利用されており、ユーザは定期的なウイルスチェック処理とウイルスチェック処理に用いるウイルスパターンファイルの更新といった作業が要求される。ウイルスチェック処理では、検査対象であるデータとコンピュータウイルスのデータパターンを比較するなどして検査を行っている。この処理では日々発見されるウイルス情報に対応するため、ウイルスパターン数は常に増大している。また、巨大化したコンピュータウイルスのデータベースを必要とし、ハードウェアにかかる処理負荷が大きなものとなる。コンピュータに負荷の大きな処理をさせた場合、そのコンピュータを使用するユーザの本来の作業への応答速度が低下し、ユーザの作業効率を低下させる事が多々ある。これに対する負荷低減手法として従来技術では、例えば、特許文献1や特許文献2がある。
【0006】
特許文献1では、ウイルスチェックを行う回数を減らすことで、コンピュータの処理量の削減となり、全体としてコンピュータへの負荷は低減される。しかし、ウイルスチェック処理をコンピュータの持つCPU(中央演算処理装置)を用いて行っているため、ウイルスチェック処理中はコンピュータへの負荷が大きくなり、その時にコンピュータを使用する場合は、ユーザ作業への影響が発生する。
【0007】
また、特許文献2はコンピュータの空き時間にウイルスチェックなどの処理を実行するものである。そのため、例えばそのコンピュータが複数の記録再生装置を有しており一方の記録再生装置にのみアクセスしていた場合であったとしても、コンピュータは使用中となるため他方のアクセスされていない記録再生装置に対してウィルスチェックを行うことが出来ない。
【0008】
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点を解決し、ユーザの作業に影響することなく、効率良く記録再生装置に記録されたデータに対してデータ処理を実行することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、一例として特許請求の範囲に記載の発明により達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザの作業に影響することなく、ウイルスチェック処理など負荷の大きなデータ処理が実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】記録再生装置のブロック図である。
【図2】記録再生装置の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の第一の実施例を示す記録再生装置のブロック図である。はじめに、ブロック図で示す構成について説明する。000は上位装置であるホストPCを示し、100はデータの書き込み及び読み出しが可能である記録再生装置を示す。001はホストPC000が記録再生装置100に対してデータの書き込み及び読み出しを制御するホストコントローラを示す。また、図示していないが、ホストPC000はOS(Operating System)を搭載しており、各種演算を行う。
【0014】
記録再生装置100は、CPU101、CPU101用のメモリ102、ホストPC000と通信を行う外部インタフェース部(外部I/F)103、記録再生装置100への書き込み及び読み出しを内部で制御する内蔵型ホストコントローラ104、ホストPC000の持つホストコントローラ001と内蔵型ホストコントローラ104のふたつのホストコントローラから、一つのホストコントローラを選択するホストコントローラ選択部105、データを記録する記録領域106、ホストコントローラ選択部105が選択したホストコントローラによって指示されたデータ転送を、記録領域106に行うストレージインタフェース部(ストレージI/F)107、CPUバス108、ホストコントローラ001からのアクセス要求有無を検知する検知部109から構成されている。なお、CPU101は記録再生装置100内の各ユニットを制御し、図の矢印は各ユニット間のデータ通信を示している。また、図示していないが、記録再生装置100にもOS(Operating System)を搭載しており、ホストPC000を介さずに記録再生装置100が単独で各種演算をすることが可能である。
【0015】
次に、記録再生装置100の動作について説明する。ホストPC000から記録再生装置100にアクセス要求がある場合は、ホストコントローラ選択部105はホストコントローラ001をホストコントローラとして選択し、記録領域106は、ホストコントローラ001の要求に応じたデータ転送を行う。すなわち、ホストPCに接続された通常の記録再生装置として動作する。
【0016】
ホストPC000から記録再生装置100にアクセス要求がない場合は、記録再生装置100はホストPC000を介さない単独のデータ処理を記録領域106に対して実施する。アクセス要求がない場合、直ちにデータ処理を行ってもよいし、所定時間経過後にデータ処理を行うようにしてもよい。制御容易性やユーザ利便性が向上するためである。続いて、このデータ処理が例えばウイルスチェック処理である場合を例にとって動作を説明する。検知部109がホストPC000からアクセス要求が出ていないことを検知すると、ホストコントローラ選択部105は内蔵型ホストコントローラ104をホストコントローラとして選択する。そして、内蔵型ホストコントローラ104は、ウイルスチェック処理に応じたアクセス要求を記録領域106に出し、必要なデータをメモリ102に読み出す。そして、記録再生装置100は読み出したデータに対してウイルスチェック処理を実施する。ウイルスチェック処理の結果は、記録領域106の所定の領域に出力するなどして、ユーザに通知する。ここで、記録再生装置100が単独でウイルスチェック処理中に、ホストPC000から記録再生装置100にアクセス要求が発生した場合は、単独でのウイルスチェック処理を中断あるいは中止し、ホストコントローラ選択部105では、内蔵型ホストコントローラ104ではなく、ホストコントローラ001をホストコントローラとして選択するように制御する。
【0017】
図2に記録再生装置100の動作フローチャートを示す。まず、検知部109でホストPC100から記録再生装置100に対するアクセス要求の有無を検知する(S201)。アクセス要求があった場合、次にホストコントローラ選択部105では、ホストコントローラ001をホストコントローラとして選択する(S202)。次に、選択したホストコントローラの要求に従って、記録領域106に記録されたデータの転送を行う(S203)。次のS204では、ユーザ作業に必要な全データの転送が完了していれば終了、未完であれば、S203に戻り、必要なデータ転送を行う。以後、S203、S204を繰り返す。
【0018】
次に、S201でホストPC000からアクセス要求が無かった場合、直ちにまたは所定時間経過後にホストコントローラ選択部105では、ホストコントローラとして内蔵型ホストコントローラ104を選択する(S205)。次に、記録再生装置100は、内部でデータ処理を実施するために必要なデータを内蔵型ホストコントローラ104を介して記録領域106に要求し、記録再生装置100のメモリ102へとデータ転送を行う(S206)。そして、メモリ102に読み出したデータに対して内部処理を実施する(S207)。次に、S208では記録再生装置100が内部処理実施中に新たにホストPC000から記録再生装置100に対してアクセス要求があったかどうかを判断する。アクセス要求が有った場合には、S209で内部処理を停止又は中断し、S202の処理へと移る。ホストPC000からのアクセス要求が無ければ、S210で内部処理が全て終了したかどうかを判定し、終了していなければ、S206に移って再度、内蔵型ホストコントローラ104が記録領域106に必要なデータを要求し、内部処理を実施する。S210で処理が終了していれば、このフローでの処理は完了となる。
【0019】
このようにして、記録再生装置100は、通常はホストPC000に接続された記録再生装置として動作し、上位装置からアクセス要求が無い場合は、空き時間を利用して単独で記録領域106に対してウイルスチェック処理などデータ処理を実施可能である。また、データ処理中にホストPC000からアクセス要求が生じた場合には、その要求を優先することが出来る。また、このデータ処理はホストPC000を介さない処理となるため、ユーザがホストPC000で別の処理を行っていたとしても、ユーザ作業に影響することなく実施可能である。特に、ホストPC000がHDD(Hard Disc Drive)またはSSD(Solid State Drive)など複数の記録再生装置を搭載しているケースでは、ユーザがアクセスしている記録再生装置が限られており、ユーザからアクセス要求を受けていてない記録再生装置が存在し、提案手法を用いたデータ処理を行う機会が多々あると考えられる。
【0020】
なお、本実施例ではウイルスチェック処理を例として挙げたが、ウイルスチェック処理以外にも、削除されたコンピュータファイルの実態をクリアする処理、データの検索性能向上のため、データをスキャンし日付、種類、データサイズなどインデックスを作成する処理など、様々な処理への応用が可能である。なお、記録領域106のデータ構成を変更した場合、ホストPC000からは正常に読み込めない可能性があるため、記録再生装置100の記録領域106に読み出しのみ可能な領域を設け、そこに単独処理の結果を格納し、次回ホストPC000が起動した時に上位装置に提示する方法などが考えられる。
【0021】
また、ホストPC000と記録再生装置100間の接続としては、ATA(Advanced Technology Attachment)、ATAPI(Advanced Technology Attachment Packet Interface)、SATA(Serial Advanced Technology Attachment)に準拠した通信手段などが考えられる。これらに対応することで、ATA、ATAPI、SATAコマンドをホストPC000から直接記録再生装置100に発行することが出来る。もちろん、それ以外の通信規格に準拠した手段で接続しても良い。
【実施例2】
【0022】
次に、ホストPC000の電源が入っていない時に記録再生装置100を動作させる場合について説明する。まず、記録再生装置100は、電源をホストPC000からではなく、外部から取得する。そして、外部I/F103でホストPC000の電源が入っているかどうかを判断する。判断の方法としては、例えばSATAあるいはUSB(Universal Serial Bus)の規格では、各ケーブルを通じた電源の供給手段がある。その電源供給の有無を確認する事で、ホストPC000の電源が入っているかどうかを判断することができる。そして、ホストPC000の電源が入っていなければ、記録再生装置100にホストPC000からはアクセス要求がこない為、ホストコントローラ選択部105は、内蔵型ホストコントローラ104をホストコントローラとして選択し、実施例1同様に、記録再生装置100内でのデータ処理を行うことが可能である。また、ホストPC000と記録再生装置100が接続されていないので、検知部109への電源供給を止め、省電力化を図ることも可能である。
【0023】
こうすることで、ホストPC000の電源が入っていない場合でも、記録再生装置100は単独でデータ処理を行うことができる。
【0024】
なお、ホストPC000の電源が入っているかどうかの判断については外部I/F103で行うのではなく別な方法で判断しても良い。
【実施例3】
【0025】
次に、ホストPC000がキャッシュメモリを使用している場合について説明する。なお、キャッシュメモリとは、使用頻度の高いデータを高速な記憶装置に蓄えておくことで、低速な装置から読み出す無駄を省いて高速化するためのメモリである。このキャッシュメモリを使用している場合、記録再生装置100に記録されたデータを直接アクセスすることなく、ホストPC000はキャッシュメモリに記録された記録再生装置100のデータに対してデータの編集を行う可能性がある。そのため、最新データはキャッシュメモリ上に記録されており、記録再生装置100に記録されたデータが最新とは限らない。そこで、記録再生装置に、ホストPC000のキャッシュメモリ状況を確認する手段を持たせる。確認方法としては、ホストPC000から特殊コマンドを発行してもらい、それを外部I/F103で受信し、認識しても良い。記録再生装置100が単独でのデータ処理を開始する前に、ホストPC000のキャッシュメモリの状態を確認し、キャッシュメモリ上に記録再生装置100のデータが存在していなければ、記録領域106に記録されたデータに対して、実施例1に記載したように、データ処理を行う。逆に、キャッシュメモリ上に記録再生装置100のデータが存在していれば、データ処理を実行しない。
【0026】
これにより、ホストPC000側のキャッシュメモリの状態を確認することで、キャッシュメモリ内に更新されたデータが記録されているにもかかわらず、記録再生装置100の記録領域106に記録されている古いデータに対してデータ処理をしてしまうという状況を避けることが出来る。
【0027】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、様々な発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0028】
000 ホストPC
001 ホストコントローラ
100 記録再生装置
101 CPU
102 メモリ
103 外部インタフェース部(外部I/F)
104 内蔵型ホストコントローラ
105 ホストコントローラ選択部
106 記録領域
107 ストレージインタフェース部(ストレージI/F)
108 CPUバス
109 検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録領域に情報を記録または前記記録領域から情報を再生する記録再生装置であって、
外部装置との間で情報の送受信を行う外部インタフェース部と、
前記外部装置からのアクセスの有無を検知する検知部と、
前記記録領域への記録または再生を制御する内蔵型ホストコントローラ部と、
前記外部装置が有するホストコントローラと前記内蔵型ホストコントローラを選択するコントローラ選択部とを有し、
前記アクセスの有無に応じて前記選択部がコントローラを選択することを特徴とする記録再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録再生装置であって、
前記外部インタフェース部がATA(Advanced Technology Attachment)及びまたはATAPI(Advanced Technology Attachment Packet Interface)及びまたはSATA(Serial Advanced Technology Attachment)に準拠したデータ通信を行うことを特徴とした記録再生装置。
【請求項3】
請求項1または2いずれか一項に記載の記録再生装置であって、
前記記録再生装置は、OSを搭載しており、
前記OSによって前記記録領域に記録された情報に対してデータ処理を行うことを特徴とする記録再生装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれか一項に記載の記録再生装置であって、
前記記録再生装置は、前記外部装置からではなく、外部から電源を取得することで、前記記録領域に記録されたデータに対してデータ処理が可能であることを特徴とする記録再生装置。
【請求項5】
請求項4に記載の記録再生装置であって、
前記記録再生装置は、前記外部装置とのデータ通信に必要なユニットに対して電源供給を停止することを特徴とする記録再生装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれか一項に記載の記録再生装置であって、
前記外部装置はキャッシュメモリを有し、
前記記録再生装置は前記キャッシュメモリの状況を確認する手段を有することを特徴とする記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−113625(P2011−113625A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270983(P2009−270983)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】