説明

記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及びプログラム

【課題】磁気インク文字の認識に際し、誤認識を抑制する。
【解決手段】パーソナルチェック100に記録された複数の磁気バー121によって構成されるCMC7文字112を磁気的に読み取る磁気波形取得部202と、CMC7文字112を読み取って得られる文字波形145におけるピーク間隔パターンからCMC7文字112の文字認識を行うCPU230とを備えた小切手読取装置200の制御部203は、CPU230に、文字波形145におけるプラスピーク間隔パターンからCMC7文字112に対して第1の文字認識を実行させるとともに、マイナスピーク間隔パターンからCMC7文字112に対して第2の文字認識を実行させ、第1の文字認識の結果と第2の文字認識の結果とに基づいて、CMC7文字112の文字種類を確定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気インク文字(MICR文字)は、磁性物質を含んだインクを用いて小切手やパーソナルチェック等の記録媒体に記録された文字や記号である。磁気インク文字の一つのフォントであるCMC7文字は、文字として視認可能な磁気バーコードによって表されており、店舗や銀行の決済システムにおいては、磁気インク文字認識が可能な記録媒体処理装置を用いて認識されている。
【0003】
記録媒体処理装置として、例えば、磁気インク文字列を磁気ヘッドで磁気的に読取って得られた検出磁気波形から1文字分の磁気波形を切り出して、その磁気波形における7つのプラスピーク(値がプラス側の変曲点)同士の間隔である6つのピーク間隔の広狭の組み合わせによって表されるピーク間隔パターンに基づいて、CMC7文字の文字種類を認識するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−157982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、磁気インク文字の印刷状態や記録媒体の折れ等に起因して、得られる検出磁気波形に乱れが生じ、認識対象とする文字の磁気波形における7つのプラスピークのうちのいずれかがつぶれてしまうことがある。このような場合に、本来のプラスピークではない波形の突出部や次の文字の磁気波形の先頭のプラスピークを、対象とする文字の7つのプラスピークの一つとして含めて文字認識を行ってしまうと、誤認識を招くおそれがある。パーソナルチェック等に印刷されている銀行番号、口座番号等を誤認識した場合、誤った精算処理が行われることとなるため、磁気インク文字認識において誤認識を抑制することが課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る記録媒体処理装置は、記録媒体に記録された複数のバーによって構成される磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる磁気波形における複数のピーク同士の間隔を測定して、測定した前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせであるピーク間隔パターンから前記磁気インク文字の文字認識を行う認識部と、前記読取部と前記認識部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記認識部に、前記磁気波形におけるプラス側の前記ピーク間隔パターンから前記磁気インク文字に対して第1の文字認識を実行させるとともに、マイナス側の前記ピーク間隔パターンから前記磁気インク文字に対して第2の文字認識を実行させ、前記第1の文字認識の結果と前記第2の文字認識の結果とに基づいて、前記磁気インク文字の文字種類を確定することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、磁気インク文字を磁気的に読み取った磁気波形において、プラス側の複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせ(ピーク間隔パターン)から第1の文字認識を実行するだけでなく、マイナス側のピーク間隔パターンから第2の文字認識を実行し、双方の結果に基づいて、磁気インク文字の文字種類を確定する。このとき、双方の文字認識の結果が異なれば少なくとも一方の結果は誤りであると考えられるが、双方の文字認識の結果が一致すればその結果が正しい可能性が高いと考えられる。したがって、2通りのピーク間隔パターンによる文字認識の結果に基づいて、磁気インク文字の文字種類を確定することにより、文字認識における誤認識を抑制することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記第1の文字認識の結果と前記第2の文字認識の結果とに基づいて、前記磁気インク文字の文字種類を確定できなかった場合、前記磁気波形を積分して得られる積分波形に基づいて、前記磁気インク文字に対して第3の文字認識を行うことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、ピーク間隔パターンによる第1の文字認識の結果と第2の文字認識の結果とから磁気インク文字の文字種類を確定できなかった場合に、磁気波形を積分して得られる積分波形から積分方式による第3の文字認識を行う。このとき、第1の文字認識の結果又は第2の文字認識の結果のいずれかが第3の文字認識の結果と一致すれば、その結果が正しい可能性が高いと考えられる。したがって、異なる認識方式を実行しそれらの結果を比較して文字種類を判定することにより、文字認識における誤認識を抑制することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記第1の文字認識の結果、前記第2の文字認識の結果、及び前記第3の文字認識の結果が一致しなかった場合、各文字認識の結果得られた文字種類の中から前記磁気インク文字の文字種類を確定することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第1の文字認識、第2の文字認識、及び第3の文字認識の結果が一致しなかった場合は、いずれかの認識結果が誤りであることが考えられるので、3通りの文字認識の結果から文字種類を確定することにより、文字認識における誤認識を抑制することができる。
【0013】
[適用例4]本適用例に係る記録媒体処理装置の制御方法は、記録媒体に記録された複数のバーによって構成される磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる磁気波形における複数のピーク同士の間隔を測定して、測定した前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせであるピーク間隔パターンから前記磁気インク文字の文字認識を行う認識部と、を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、前記認識部に、前記磁気波形におけるプラス側の前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせから前記磁気インク文字に対して第1の文字認識を実行させるとともに、マイナス側の前記複数のピーク同士の間隔の組み合わせから前記磁気インク文字に対して第2の文字認識を実行させ、前記第1の文字認識の結果と前記第2の文字認識の結果とに基づいて、前記磁気インク文字の文字種類を確定することを特徴とする。
【0014】
この方法によれば、磁気インク文字を磁気的に読み取った磁気波形において、プラス側のピーク間隔パターンから第1の文字認識を実行するだけでなく、マイナス側のピーク間隔パターンから第2の文字認識を実行して、双方の結果に基づいて、磁気インク文字の文字種類を確定する。このとき、双方の文字認識の結果が異なれば少なくとも一方の結果は誤りであると考えられるが、双方の文字認識の結果が一致すればその結果が正しい可能性が高いと考えられる。したがって、2通りのピーク間隔パターンによる文字認識の結果に基づいて、磁気インク文字の文字種類を確定することにより、文字認識における誤認識を抑制することができる。
【0015】
[適用例5]本適用例に係るプログラムは、記録媒体に記録された複数のバーによって構成される磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる磁気波形における複数のピーク同士の間隔を測定して、測定した前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせであるピーク間隔パターンから前記磁気インク文字の文字認識を行う認識部と、を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、前記制御部を、前記認識部に、前記磁気波形におけるプラス側の前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせから前記磁気インク文字に対して第1の文字認識を実行させるとともに、マイナス側の前記複数のピーク同士の間隔の組み合わせから前記磁気インク文字に対して第2の文字認識を実行させ、前記第1の文字認識の結果と前記第2の文字認識の結果とに基づいて、前記磁気インク文字の文字種類を確定する手段として機能させることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、磁気インク文字を磁気的に読み取った磁気波形において、プラス側のピーク間隔パターンから第1の文字認識を実行するだけでなく、マイナス側のピーク間隔パターンから第2の文字認識を実行して、双方の結果に基づいて、磁気インク文字の文字種類を確定する。このとき、双方の文字認識の結果が異なれば少なくとも一方の結果は誤りであると考えられるが、双方の文字認識の結果が一致すればその結果が正しい可能性が高いと考えられる。したがって、2通りのピーク間隔パターンによる文字認識の結果に基づいて、磁気インク文字の文字種類を確定することにより、文字認識における誤認識を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】パーソナルチェック及び磁気インク文字列を示す図である。
【図2】CMC7文字の構成を示す図である。
【図3】本実施形態に係る小切手読取装置の概略構成を模式的に示す図である。
【図4】本実施形態に係る小切手読取装置における磁気文字認識の機能ブロック図である。
【図5】CMC7文字と磁気波形との関係を説明する図である。
【図6】文字波形に乱れが生じた場合の例を示す図である。
【図7】本実施形態に係る小切手読取装置における磁気文字認識処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態である記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムについて図面を参照して説明する。本実施形態に係る記録媒体処理装置は、パーソナルチェック等の記録媒体の有効性を確認するために、記録媒体に印刷された磁気インク文字列の認識処理を行う装置である。
【0019】
<パーソナルチェック及びCMC7文字>
まず、記録媒体の一つであるパーソナルチェック、及び、磁気インク文字(MICR文字:Magnetic Ink Character Recognition)の一つのフォントであるCMC7文字について説明する。図1は、パーソナルチェック及び磁気インク文字列を示す図である。詳しくは、図1(a)は磁気インク文字列がチェック用紙に印刷されたパーソナルチェックを示す図であり、図1(b)はチェック用紙に印刷された磁気インク文字列の一部を拡大して示す図である。また、図2は、CMC7文字の構成を示す図である。
【0020】
パーソナルチェックは、個人用小切手として特に欧州や米国等において広く用いられているものである。図1(a)に示すように、パーソナルチェック100は、チェック用紙101に、発行日欄102、支払先店名欄103、支払金額欄104、署名欄105等を設けたものである。なお、図1(a)には、各欄102,103,104,105が記入される前の状態が示されている。チェック用紙101の下部には、複数のCMC7文字112によって構成され、銀行番号、口座番号、及び小切手番号の各データを表す磁気インク文字列106が印刷されている。
【0021】
ここで、パーソナルチェック100を用いた商取引の手順を簡単に説明する。商品等の購入者は、チェック用紙101の各欄102,103,104,105に、発行日、支払先、支払金額、自分の署名を記入の上、パーソナルチェック100を支払先の店舗に渡す。店舗では、後述する小切手読取装置200(図3参照)により、磁気インク文字列106を認識してパーソナルチェック100の有効性を確認し、パーソナルチェック100の裏書として振込先等の情報を記入する。
【0022】
振込先等の情報の記入は、手書きやスタンプで行われる他、小切手読取装置とプリンターとが一体となった複合処理装置を使用して行われることもある。裏書きされたパーソナルチェック100には、その店舗で、又は銀行等の金額入力センターで、右下欄にCMC7文字112により支払金額が印刷される。このパーソナルチェック100が銀行の決済システムで処理され、CMC7文字112で指定された金額が裏書きされた振込先に振り込まれる。
【0023】
図1(a)に示すように、磁気インク文字列106は、列方向(文字列方向)に複数配列された段落文字列111(111a,111b,111c)で構成されている。段落文字列111a,111b,111cは、それぞれ複数の磁気インク文字(CMC7文字112)で構成されており、例えば、列方向の左側から順に銀行番号、口座番号、小切手番号に対応している。なお、本実施形態では、図1(a),(b)における左側を磁気インク文字列106の列方向の前方と呼ぶ。
【0024】
図1(a)に破線で示すように、段落文字列111a,111bの中間には空白文字116aが配置され、段落文字列111b,111cの中間には空白文字116bが配置されている。空白文字116a,116bは、小切手読取装置200によって空白文字として認識される。
【0025】
図1(b)に示すように、磁気インク文字列106において、各CMC7文字112は、所定の文字幅wを有しており、所定の文字間隔dを置いて配列されている。なお、文字幅w及び文字間隔dは、後述するように、各CMC7文字112を構成する磁気バー121の磁気バー後端部123を基準とした距離である。文字幅wは、例えば2.20±0.24mmと定められており、文字間隔dは、例えば0.67mmと定められている。
【0026】
また、空白文字116a,116bは、CMC7文字112の文字幅wと同じ幅を有しており、段落文字列111(CMC7文字112)との間に文字間隔dと同じ間隔を置いて配置されている。
【0027】
図2に示すように、CMC7文字112は、文字として視認可能な磁気バーコードによって表されている。CMC7文字112の形状や磁気特性、特に、磁気ヘッド221(図3参照)で磁気読取りした場合の磁束の波形の形状は、CMC7規格によって定められている。CMC7規格においては、フォントとして、10種類の数字「0〜9」、5種類の記号「SI〜SV」及び26種類のアルファベット「A〜Z」が存在する。なお、図2には、数字及び記号のみを示している。
【0028】
CMC7文字112は、各文字が7列の磁気バー121で構成される。そして、隣り合う磁気バー121同士の磁気バー後端部123間の距離である、6個のバー間隔122の「広い間隔(=1)」及び「狭い間隔(=0)」の組み合わせ(以下、「バー間隔パターン」という)によって、CMC7文字112の文字種類が認識される。
【0029】
例えば、数字の「0」を表すCMC7文字112のバー間隔パターンは、文字の左側から「狭い間隔、狭い間隔、広い間隔、広い間隔、狭い間隔、狭い間隔」、すなわち「001100」となっている。また、数字の「1」を表すCMC7文字112のバー間隔パターンは、文字の左側から「広い間隔、狭い間隔、狭い間隔、狭い間隔、広い間隔、狭い間隔」、すなわち「100010」となっている。
【0030】
バー間隔122の「広い間隔」は、例えば0.50±0.04mmと定められており、「狭い間隔」は、例えば0.30±0.04mmと定められている。この寸法公差は、チェック用紙101への印刷精度等を考慮して定められたものである。したがって、数字及び記号を表すCMC7文字112の所定の文字幅wは、2個の広い間隔及び4個の狭い間隔の和分、すなわち、2.20±0.24mmとなる。
【0031】
なお、6個のバー間隔122のうち広い間隔の数をN1、狭い間隔の数をN0とすると、数字及び記号は、N1:N0=2:4であり、アルファベットは、N1:N0=1:5又はN1: N0=3:3である。なお、市場に一般に流通しているパーソナルチェック100に使用されるCMC7文字112は、数字及び記号のみである。
【0032】
<小切手読取装置>
次に、記録媒体処理装置としての小切手読取装置200の構成について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る小切手読取装置の概略構成を模式的に示す図である。図4は、本実施形態に係る小切手読取装置における磁気文字認識の機能ブロック図である。
【0033】
図3に示すように、小切手読取装置200は、チェック用紙搬送部201と、読取部としての磁気波形取得部202と、制御部203と、入力装置204とを備えている。
【0034】
チェック用紙搬送部201は、駆動源となるステッピングモーター211と、ステッピングモーター211の駆動を制御するモーター制御回路212と、ステッピングモーター211の駆動力を伝達する動力伝達機構213と、動力伝達機構213を介してステッピングモーター211により回転する送りローラー214と、搬送されるチェック用紙101の送りを案内する搬送路(図示省略)とを有している。チェック用紙搬送部201は、チェック用紙101を、例えば、1/144インチ(約0.176mm)単位でステップ送りして搬送する。
【0035】
磁気波形取得部202は、搬送路上のチェック用紙101に臨むように配置された磁気ヘッド221と、磁気ヘッド221に対して送り方向の手前に位置し、CMC7文字112を磁化するための永久磁石222と、磁気−電気変換された電気信号を検出磁気波形131(図5参照)として後述するCPU230に送るCMC7文字検出回路223とを備えている。
【0036】
磁気ヘッド221は、CMC7文字112を構成する磁気バー121における磁束密度の変化を検出して電気信号に変換する。磁気ヘッド221は、例えば、磁気インク文字列106の後端(図1では、段落文字列111cの列方向後方の最外端のCMC7文字112「SI」)から列方向の後方に、例えば40mmの距離を隔てた位置より検出を開始する。磁気ヘッド221による磁束密度の測定は、例えば、チェック用紙101の搬送の1ステップ(約0.176mm)当り15回行われ、4回毎に測定値の平均をとり、この波形データ列が制御部203のRAM240に記憶される。1波形データは、磁気インク文字列106上では約0.047mmに相当する。
【0037】
CMC7文字検出回路223は、磁気ヘッド221により読み取られた電気信号を増幅する増幅回路226と、増幅された電気信号中の様々なノイズを除去するフィルター回路227と、フィルター回路227を通過したアナログ信号をA/D変換してデジタル値を出力するA/D変換回路228とを有している。
【0038】
制御部203は、検出磁気波形131からCMC7文字112を認識する認識部としてのCPU230と、CMC7文字検出回路223から送られた検出磁気波形131の波形データ等を一時的に保管するRAM240と、CMC7文字112を認識するための判定条件を記憶するROM250とを備えている。また、制御部203は、チェック用紙搬送部201、磁気波形取得部202、入力装置204の駆動及び制御を行う。
【0039】
入力装置204は、CMC7文字112を認識するための判定条件を変更する場合に、CPU230の判定条件変更部231(図4参照)に対して、入力操作を行う装置である。
【0040】
小切手読取装置200では、チェック用紙搬送部201によって、磁気インク文字列106が印刷されたチェック用紙101が、磁気インク文字列106の列方向の後方を先頭にして搬送される。そして、チェック用紙101が磁気波形取得部202を通過することで、磁気インク文字列106の複数のCMC7文字112が磁化された後、列方向の後方から磁気読取りされて検出磁気波形131が取得される。そして、取得された検出磁気波形131に基づいて、CPU230により文字認識処理が行われ、CMC7文字112の文字種類が認識される。
【0041】
図4に示すように、ROM250は、認識判定条件記憶部251を有している。認識判定条件記憶部251には、上述したCMC7文字112を認識するための判定条件が記憶されている。
【0042】
RAM240は、判定条件変更記憶部241と、磁気波形記憶部242と、認識結果記憶部243とを備えている。判定条件変更記憶部241は、CPU230の判定条件変更部231により変更された判定条件を記憶する。磁気波形記憶部242は、検出磁気波形131の波形データ及び検出条件を記憶する。認識結果記憶部243は、CPU230の磁気パターン認識部237によりCMC7文字112の文字種類が一義的に認識された場合に、その認識結果を記憶する。
【0043】
また、図示を省略するが、RAM240は、後述する文字認識処理における文字波形開始位置cspを記憶する文字波形開始位置記憶部や、各種フラグの設定、切出し直しカウンター、認識不可能文字数カウンター等をそれぞれ記憶する各種記憶部等をさらに備えている。
【0044】
CPU230は、判定条件変更部231と、搬送制御部232と、磁気波形記憶指示部233と、磁気波形切出し部234と、ピーク間隔測定部235と、パターン変換部236と、磁気パターン認識部237と、認識制御部238とを備えている。判定条件変更部231は、入力装置204からの入力操作に基づいて、CMC7文字112を認識するための判定条件を変更する。
【0045】
搬送制御部232は、上記のモーター制御回路212を介して、チェック用紙101の搬送を制御する。磁気波形記憶指示部233は、上記のCMC7文字検出回路223から送られた検出磁気波形131及び検出条件を、磁気波形記憶部242に記憶させる。磁気波形切出し部234は、記憶された検出磁気波形131から切出し開始基準位置である文字波形開始位置cspを検出し、文字単位で文字波形145の切り出しを行う(図5参照)。
【0046】
ピーク間隔測定部235は、切り出された文字波形145の6個のピーク間隔142を測定する。パターン変換部236は、認識判定条件記憶部251又は判定条件変更記憶部241に記憶された判定条件にしたがって、6個のピーク間隔142a〜142f(図5参照)をそれぞれ、広い間隔(=1)又は狭い間隔(=0)のピーク間隔パターンに変換する。
【0047】
磁気パターン認識部237は、認識判定条件記憶部251又は判定条件変更記憶部241に記憶された判定条件に基づいて、CMC7文字112の文字種類を認識する。認識制御部238は、これら判定条件変更部231、搬送制御部232、磁気波形記憶指示部233、磁気波形切出し部234、ピーク間隔測定部235、パターン変換部236及び磁気パターン認識部237を関連付けて制御する。
【0048】
<磁気波形>
次に、記録媒体に印刷された磁気インク文字(CMC7文字112)と、磁気波形取得部202により取得された磁気波形(検出磁気波形131及び文字波形145)との関係を、図5を参照して説明する。図5は、CMC7文字と磁気波形との関係を説明する図である。
【0049】
検出磁気波形131は、図5ではその一部のみを図示しているが、図1(a)に示す磁気インク文字列106から取得された磁気波形であり、磁気インク文字列106を構成する複数のCMC7文字112に対応するものである。また、文字波形145は、検出磁気波形131から文字単位で切り出された磁気波形であり、CMC7文字112の1つの文字に対応するものである。図5には、記号の「SV」を表すCMC7文字112の磁気波形を示している。図5の例では、X軸が時間、Y軸が電圧を示すものとしている。
【0050】
図5において、CMC7文字112を構成する7列の磁気バー121を、磁気インク文字列106の列方向の前方から後方(図1及び図5の左方から右方)の順に121a〜121gとする。また、磁気ヘッド221(図3参照)による磁気インク文字列106の読取り方向を矢印224とする。矢印224で示す読取り方向は、磁気インク文字列106の列方向の後方から前方(図1及び図5の右方から左方)に向かう方向である。
【0051】
また、読取り方向と交差する方向に沿って延在する磁気バー121の読取り開始側の端部を、列方向の前方から順に磁気バー後端部123a〜123gとし、磁気バー121の読取り終了側の端部を、列方向の前方から順に磁気バー前端部124a〜124gとする。さらに、隣り合う磁気バー121同士の磁気バー後端部123間の距離である6個のバー間隔122を、列方向の前方から順に122a〜122fとする。
【0052】
文字波形145(検出磁気波形131)は、各磁気バー121による磁束密度の変化を電圧変化として検出したものである。そのため、文字波形145は微分波形となり、各磁気バー121による磁束密度の変化量に対応してY軸方向の値が上下すると共に、磁束密度の変化量がプラスであるのかマイナスであるのかに応じてY軸方向の値の正負が変化する。
【0053】
文字波形145は、磁気バー後端部123a〜123gの位置において、値がプラス側の変曲点である極大値(以下、「プラスピーク」という)141となり、磁気バー前端部124a〜124gの位置において、値がマイナス側の変曲点である極小値(以下、「マイナスピーク」という)143となる。したがって、文字波形145は、7列の磁気バー121a〜121gのそれぞれに対応して、7個のプラスピーク141a〜141gと、7個のマイナスピーク143a〜143gとを有している。
【0054】
文字波形145における6個のプラスピーク間隔142a〜142fは、隣り合うプラスピーク141a〜141g同士の間隔であり、CMC7文字112の6個のバー間隔122a〜122fに対応している。そのため、6個のプラスピーク間隔142a〜142fの広狭の組み合わせ(以下、「プラスピーク間隔パターン」という)は、CMC7文字112のバー間隔パターンに対応している。したがって、取得された文字波形145(検出磁気波形131)におけるプラスピーク間隔パターンから、CMC7文字112の文字種類を認識することができる。
【0055】
例えば、記号「SV」を表すCMC7文字112のバー間隔パターンは、記号の左側(読取り方向の逆)から順に、狭い間隔、狭い間隔、狭い間隔、狭い間隔、広い間隔、広い間隔、すなわち「000011」である。文字波形145におけるプラスピーク間隔142a〜142fのピーク間隔パターンは、読取り方向から順に、広い間隔、広い間隔、狭い間隔、狭い間隔、狭い間隔、狭い間隔、すなわち「110000」となり、読取り方向を反転させれば「000011」となる。これにより、ピーク間隔パターンに基づいて、CMC7文字112の文字種類が記号「SV」であると認識される。
【0056】
また、隣り合うマイナスピーク143a〜143g同士の間隔である6個のマイナスピーク間隔144a〜144fは、隣り合う磁気バー121同士の磁気バー前端部124間の6個のバー間隔125に対応している(図5では、バー間隔125aのみを図示し、他の5個のバー間隔の図示を省略)。したがって、6個のマイナスピーク間隔144a〜144fの広狭の組み合わせ(以下、「マイナスピーク間隔パターン」という)によっても、CMC7文字112の文字種類を認識することができる。なお、「プラスピーク間隔パターン」及び「マイナスピーク間隔パターン」の双方を総称して、「ピーク間隔パターン」ともいう。
【0057】
ところで、磁気インク文字列106の印刷状態やチェック用紙101の折れ等に起因して、磁気波形取得部202により取得される文字波形145(検出磁気波形131)に乱れが生じることがある。図6は、乱れが生じた場合の文字波形の例を示す図である。
【0058】
図6に示す文字波形145Aでは、7個のプラスピーク141a〜141gのうちプラスピーク141eがつぶれてしまっており、プラスピーク141eの位置における値は負の値となっている。したがって、文字波形145Aにおけるプラスピーク141eは、値が正側の変曲点であるプラスピークとして検出されないため、このままではプラスピーク間隔が5つとなってしまい、文字種類を認識することは困難である。
【0059】
また、図示しないが、本来のプラスピーク141ではない波形の突出部や次の文字波形の先頭のプラスピークを、誤って文字波形145Aにおける7つのプラスピークの一つとして含めて、処理対象文字の認識を行ってしまうと、認識不可能となる場合だけでなく、本来の文字種類とは異なる文字種類として誤認識しまう場合があり得る。認識不可能の場合はそのまま精算処理が行われることはないが、銀行番号、口座番号等を誤認識してしまった場合、対象とするパーソナルチェックに対して誤った精算処理が行われてしまうこととなる。したがって、磁気インク文字列106(CMC7文字112)の文字種類を正しく認識することは重要である。
【0060】
一方、図6に示す文字波形145Aにおいて、7個のマイナスピーク143a〜143gのうちマイナスピーク143eもつぶれているが、マイナスピーク143eの位置における値は負の値となっている。そのため、マイナスピーク143eはマイナスピークとして検出可能である。したがって、6個のマイナスピーク間隔144a〜144fのマイナスピーク間隔パターンから、文字種類の認識処理を行うことが可能である。このように、プラスピーク間隔から文字種類を認識することが困難であっても、マイナスピーク間隔から文字種類を認識することが可能となる場合がある。
【0061】
これを踏まえ、本実施形態では、磁気文字認識処理において、プラスピーク間隔に基づく第1の文字認識を実行するだけでなく、マイナスピーク間隔に基づく第2の文字認識を実行し、双方の文字認識の結果に基づいて磁気インク文字(CMC7文字112)の文字種類を判定することを特徴とする。
【0062】
<磁気文字認識処理>
次に、小切手読取装置200における磁気文字認識処理動作の概略を、図7を参照して説明する。図7は、本実施形態に係る小切手読取装置における磁気文字認識処理を説明するフローチャートである。磁気文字認識とは、取得した検出磁気波形131から、磁気インク文字のそれぞれについて文字種類を決定し、又は、当該磁気インク文字の文字種類を決定できないことを検出することである。
【0063】
まず、図7のステップSA1では、磁気波形切出し部234により、検出磁気波形131から、CMC7文字112の1文字に対応する文字波形145の切り出しを行う。ここでは、まず、磁気波形記憶部242に記憶されている磁気波形データに基づいて、文字波形開始位置cspを検索する。
【0064】
文字波形開始位置cspは、図5に示すように、検出磁気波形131の読取方向における先頭のピーク(先に文字波形145が切り出されている場合は、前回切り出された文字波形145から数えて1番目のピーク)141gから右方に、例えば11波形データ分戻った位置とする。この文字波形開始位置cspは、磁気インク文字列106上では、磁気バー121gの磁気バー後端部123gから後方約0.52mmの位置に相当する。
【0065】
続いて、文字波形開始位置cspから80波形データ分を1文字分として、検出磁気波形131から文字波形145を切り出す。これにより、磁気インク文字列106上では、各CMC7文字112の列方向後方の磁気バー121gの磁気バー後端部123gから後方約0.52mmの位置から、約3.76mm分が切り出されることとなる。以下、ステップSA1において切り出された文字波形145に対応する磁気インク文字(CMC7文字112)のことを「処理対象文字」という。
【0066】
次に、図7のステップSA2では、ピーク間隔測定部235により、処理対象文字の文字波形145において、文字波形開始位置cspから70波形データ分(約3.29mmに相当)について、ピークの検出及びピーク間隔の測定を行う。ここでは、図5に示すように、処理対象文字の文字波形145において、7個のプラスピーク141a〜141g及び7個のマイナスピーク143a〜143gが検出され、6個のプラスピーク間隔142a〜142f及び6個のマイナスピーク間隔144a〜144fが測定される。
【0067】
次に、図7のステップSA3では、磁気パターン認識部237により、処理対象文字の文字波形145に対してプラスピーク間隔に基づく第1の文字認識を実行する。第1の文字認識では、ステップSA2で測定された6個のプラスピーク間隔142a〜142fのプラスピーク間隔パターンから、処理対象文字の認識処理を行う。
【0068】
次に、ステップSA4では、ステップSA3の第1の文字認識によって処理対象文字の文字種類が認識できたか否かを判定する。処理対象文字の文字種類が認識できた場合(ステップSA4:YES)、認識制御部238は、処理手順をステップSA5に移行する。一方、処理対象文字の文字種類が認識できなかった場合(ステップSA4:NO)、認識制御部238は、処理手順をステップSA8に移行する。
【0069】
次に、ステップSA5では、磁気パターン認識部237により、処理対象文字の文字波形145に対してマイナスピーク間隔に基づく第2の文字認識を実行する。第2の文字認識では、ステップSA2で測定された6個のマイナスピーク間隔144a〜144fのマイナスピーク間隔パターンから、処理対象文字の認識処理を行う。
【0070】
次に、ステップSA6では、ステップSA5の第2の文字認識によって処理対象文字の文字種類が認識できたか否かを判定する。処理対象文字の文字種類が認識できた場合(ステップSA6:YES)、認識制御部238は、処理手順をステップSA7に移行する。一方、処理対象文字の文字種類が認識できなかった場合(ステップSA6:NO)、認識制御部238は、処理手順をステップSA8に移行する。
【0071】
次に、ステップSA7では、ステップSA3の第1の文字認識において認識された処理対象文字の文字種類と、ステップSA5の第2の文字認識において認識された処理対象文字の文字種類とを比較し、双方の文字種類が一致するか否かを判定する。双方の文字種類が一致する場合(ステップSA7:YES)、認識制御部238は、処理手順をステップSA9に移行する。一方、双方の文字種類が一致しない場合(ステップSA7:NO)、認識制御部238は、処理手順をステップSA8に移行する。
【0072】
次に、ステップSA8では、磁気パターン認識部237は、公知の積分方式による第3の文字認識を実行する。詳しい説明は省略するが、第3の文字認識では、処理対象文字の文字波形145から生成した積分波形における凹曲線の位置に基づいて、凹曲線により形成される谷形状の深浅から処理対象文字の認識処理を行う。
【0073】
なお、凹曲線とは、積分波形における一つの極小点と、その極小点を挟む2つの極大点との間に形成される曲線を指す。極小点は文字波形145におけるマイナスピーク(負の値)からプラスピーク(正の値)に向かう途中で値がゼロとなる点に対応し、極大点は文字波形145におけるプラスピーク(正の値)からマイナスピーク(負の値)に向かう途中で値がゼロとなる点に対応する。
【0074】
次に、ステップSA9では、第1の文字認識から第3の文字認識までの認識結果から処理対象文字の文字種類を確定できるか否かを判定する。ステップSA9においては、以下の(1)から(3)の場合に処理対象文字の文字種類を確定できると判定し、(4)の場合に処理対象文字の文字種類を確定できないと判定する。
【0075】
(1)ステップSA3の第1の文字認識及びステップSA5の第2の文字認識の双方の認識処理において処理対象文字の文字種類が認識でき、かつ双方の文字認識で認識された文字種類が一致する場合は、誤認識している可能性が低いと判断して、その文字種類を処理対象文字の文字種類として確定する。
【0076】
(2)ステップSA3の第1の文字認識において文字種類が認識できなかった場合は、ステップSA8の第3の文字認識において認識された文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。また、ステップSA3の第1の文字認識において文字種類が認識できたがステップSA5の第2の文字認識において文字種類が認識できなかった場合も、第1の文字認識において誤認識している可能性が高いと判断して、ステップSA8の第3の文字認識において認識された文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。
【0077】
(3)ステップSA3の第1の文字認識及びステップSA5の第2の文字認識において処理対象文字の文字種類が認識できたが双方の文字種類が異なる場合は、いずれか一方で誤認識している可能性が高いと判断して、いずれか一方で認識された文字種類がステップSA8の第3の文字認識において認識された文字種類と一致すれば、第3の文字認識において認識された文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。
【0078】
(4)ステップSA3の第1の文字認識、ステップSA5の第2の文字認識、及びステップSA8の第3の文字認識において認識された文字種類が全て異なる場合は、いずれの文字認識においても誤認識している可能性が高いと判断して、処理対象文字の文字種類を確定しない、すなわち、処理対象文字が認識できなかったものとする。
【0079】
ステップSA9において、処理対象文字の文字種類を確定できると判定した場合(ステップSA9:YES)、認識制御部238は、処理手順をステップSA10に移行する。一方、処理対象文字の文字種類が確定できないと判定した場合(ステップSA9:NO)、認識制御部238は、処理手順をステップSA11に移行する。
【0080】
次に、ステップSA10では、確定した処理対象文字の文字種類をRAM240の認識結果記憶部243に記憶して、処理手順をステップSA12に移行する。
また、ステップSA11では、確定できなかった文字は認識不可を示す文字種類をRAM240の認識結果記憶部243に記憶して、処理手順をステップSA12に移行する。
【0081】
次に、ステップSA12では、磁気インク文字列106に含まれる全ての磁気インク文字について、検出磁気波形131から文字波形145の切り出しが行われ、処理対象文字として文字認識が実行されたか否かを判定する。全ての磁気インク文字について文字認識が実行されていない場合(ステップSA12:NO)、認識制御部238は、処理手順をステップSA1へ戻して、次の磁気インク文字についてステップSA1以降の処理を実行する。一方、全ての磁気インク文字について文字認識が実行された場合(ステップSA12:YES)、認識制御部238は、文字認識処理を終了する。
【0082】
以上の文字認識処理の結果、磁気インク文字列106に含まれる全ての磁気インク文字(CMC7文字112)の文字種類が確定された場合は、認識された磁気インク文字列106のCMC7文字112のデータが、インターフェイスを介して、ホストコンピューターに送信される。ホストコンピューターは、送信された磁気インク文字列106のデータに基づいて、銀行等の決済機関のサーバーへパーソナルチェック100の有効性を問い合わせる。このようにして、例えば店舗において、購入者から受け取ったパーソナルチェック100の有効性を確認することができる。
【0083】
ところで、従来の文字認識処理方法では、プラスピーク間隔に基づく第1の文字認識を行い、その結果、処理対象文字の文字種類が認識できた場合はその文字種類を処理対象文字の文字種類として確定し、第1の文字認識で処理対象文字の文字種類が認識できなかった場合に、積分方式による第3の文字認識を行っていた。すなわち、従来の文字認識処理方法では、マイナスピーク間隔に基づく第2の文字認識は行われていなかった。
【0084】
そのため、プラスピーク間隔に基づく第1の文字認識を行って文字種類を認識できればその結果で文字種類が確定されるので、図6に示す文字波形145Aのように文字波形の乱れ等によりプラスピークのつぶれが発生したことにより、プラスピーク間隔に基づく第1の文字認識で文字種類を誤認識してしまった場合でも、そのままの認識結果で確定されることとなる。そうすると、誤った銀行番号、口座番号等のデータに基づいて、パーソナルチェック100の精算処理が行われてしまうおそれがあった。
【0085】
なお、積分方式による第3の文字認識では、プラスピーク及びマイナスピークのピーク間隔に基づく第1の文字認識及び第2の文字認識に比べて、文字波形の乱れ等に起因する誤認識のリスクは小さいが認識率が低い。そのため、第1の文字認識及び第3の文字認識の双方を常に実行し双方の認識結果に基づいて判定するようにした場合、認識率の低下を招くこととなる。
【0086】
また、図6に示す文字波形145Aのように、プラスピーク141eの部分における値がゼロを超えない場合、積分方式による第3の文字認識を行っても、文字波形145Aから生成される積分波形においてプラスピーク141eの前後で極小点及び極大点が形成されないので、認識不可能や誤認識を招くこととなる。
【0087】
これに対して、本実施形態の文字認識処理では、文字波形145において、プラスピーク間隔に基づく第1の文字認識を実行するだけでなく、マイナスピーク間隔に基づく第2の文字認識を実行し、双方の認識結果が一致した場合に文字種類を確定するので、認識率を低下させることなく誤認識を抑制することができる。
【0088】
また、第1の文字認識及び第2の文字認識の結果から磁気インク文字の文字種類を確定できなかった場合でも、文字波形145を積分して積分方式による第3の文字認識を実行し、それらの結果を比較して文字種類を判定するので、誤認識を抑制することができる。さらに、第1の文字認識、第2の文字認識、及び第3の文字認識の結果が全て異なる場合には、誤認識している可能性が高いとして文字種類を確定しないので、誤認識を抑制することができる。
【0089】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形及び応用が可能である。
【0090】
例えば、上述の実施形態では、プラスピーク間隔に基づく第1の文字認識を実行した後に、マイナスピーク間隔に基づく第2の文字認識を実行する構成であったが、このような構成に限定されない。第1の文字認識を実行する前に、第2の文字認識を実行する構成としてもよい。
【0091】
また、上述の実施形態に示した小切手読取装置200における各部の機能は、コンピューターを機能させるプログラムとして提供することも可能である。さらに、そのプログラムをフレキシブルディスク、コンパクトディスク、フラッシュROM等の記憶媒体に格納し、パーソナルコンピューター等にインストールすることで、記録媒体処理装置を実現することも可能である。
【符号の説明】
【0092】
100…パーソナルチェック(記録媒体)、112…CMC7文字(磁気インク文字)、121…磁気バー(バー)、131…検出磁気波形(磁気波形)、141…プラスピーク(ピーク)、143…マイナスピーク(ピーク)、145…文字波形(磁気波形)、200…小切手読取装置(記録媒体処理装置)、202…磁気波形取得部(読取部)、203…制御部、230…CPU(認識部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録された複数のバーによって構成される磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、
前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる磁気波形における複数のピーク同士の間隔を測定して、測定した前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせであるピーク間隔パターンから前記磁気インク文字の文字認識を行う認識部と、
前記読取部と前記認識部とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記認識部に、前記磁気波形におけるプラス側の前記ピーク間隔パターンから前記磁気インク文字に対して第1の文字認識を実行させるとともに、マイナス側の前記ピーク間隔パターンから前記磁気インク文字に対して第2の文字認識を実行させ、
前記第1の文字認識の結果と前記第2の文字認識の結果とに基づいて、前記磁気インク文字の文字種類を確定することを特徴とする記録媒体処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1の文字認識の結果と前記第2の文字認識の結果とに基づいて、前記磁気インク文字の文字種類を確定できなかった場合、
前記磁気波形を積分して得られる積分波形に基づいて、前記磁気インク文字に対して第3の文字認識を行うことを特徴とする請求項1に記載の記録媒体処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1の文字認識の結果、前記第2の文字認識の結果、及び前記第3の文字認識の結果が一致しなかった場合、
各文字認識の結果得られた文字種類の中から前記磁気インク文字の文字種類を確定することを特徴とする請求項2に記載の記録媒体処理装置。
【請求項4】
記録媒体に記録された複数のバーによって構成される磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、
前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる磁気波形における複数のピーク同士の間隔を測定して、測定した前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせであるピーク間隔パターンから前記磁気インク文字の文字認識を行う認識部と、を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、
前記認識部に、前記磁気波形におけるプラス側の前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせから前記磁気インク文字に対して第1の文字認識を実行させるとともに、マイナス側の前記複数のピーク同士の間隔の組み合わせから前記磁気インク文字に対して第2の文字認識を実行させ、
前記第1の文字認識の結果と前記第2の文字認識の結果とに基づいて、前記磁気インク文字の文字種類を確定することを特徴とする記録媒体処理装置の制御方法。
【請求項5】
記録媒体に記録された複数のバーによって構成される磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、
前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる磁気波形における複数のピーク同士の間隔を測定して、測定した前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせであるピーク間隔パターンから前記磁気インク文字の文字認識を行う認識部と、を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、
前記制御部を、
前記認識部に、前記磁気波形におけるプラス側の前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせから前記磁気インク文字に対して第1の文字認識を実行させるとともに、マイナス側の前記複数のピーク同士の間隔の組み合わせから前記磁気インク文字に対して第2の文字認識を実行させ、
前記第1の文字認識の結果と前記第2の文字認識の結果とに基づいて、前記磁気インク文字の文字種類を確定する手段として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−41441(P2013−41441A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178271(P2011−178271)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】