説明

記録材搬送装置、画像形成装置、並びに、記録材搬送装置の制御方法

【課題】構造を複雑化させずに十分な摩擦搬送力を確保しながら、記録材の厚みを精度良く計測できるようにする。
【解決手段】記録材Pを挟持搬送するための一対の回転ローラ24と、両回転ローラ24間の距離を測定する測定手段43と、測定手段43の測定情報を用いて、記録材Pの厚みを演算する演算手段とを有する。両回転ローラ24のうち少なくとも一方のローラ部41aを弾性材製とする。演算手段は、記録材Pの通紙幅xに基づき測定手段43の測定情報を補正することによって、記録材Pの厚みを演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、記録材搬送装置、これを備えた画像形成装置、並びに、記録材搬送装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式やインクジェット方式の画像形成装置の普及が拡大しており、その用途が多方面に広がっている。特に、フルカラータイプの画像形成装置では、これまで使用されてきた以上の厚手の記録材にも、画質を維持して支障なく記録できることが要望されている。厚手の記録材への記録は、普通紙の場合と比較して、定着熱量や転写条件といった画像形成条件が大きく異なることが知られている。従って、画質を維持した記録には、様々な厚みの記録材に対応して画像形成条件を変化させることが必要であり、記録材の厚みを測定する種々の技術が提案されている。
【0003】
記録材の厚みを測定する技術としては、記録材搬送のための搬送ローラ対とは別に、厚み測定専用の剛体ローラ対を備え、剛体ローラ対間の距離から記録材の厚みを測定するというものが知られている(例えば特許文献1等参照)。搬送ローラ対は通常、摩擦による搬送力確保の目的で、少なくとも一方のローラ部が弾性体にて構成されている。このため、搬送ローラ対にて記録材を挟持した状態ではローラ部が弾性変形して、搬送ローラ対間の距離と記録材の厚みとが一致しなくなる。そこで、挟持搬送時に変形しない剛体ローラ対を用いて、剛体ローラ対間の距離から記録材の厚みを測定するのである。
【0004】
上記の構成では、搬送ローラ対と別に、搬送に寄与しない厚み測定専用の剛体ローラ対が必要なため、部品点数増によるコストアップの問題や配置スペースの問題を招来する。この点、特許文献2及び3には、搬送ローラ対に厚み測定の機能を持たせるため(剛体ローラ対を省くため)、一方の搬送ローラのローラ部を剛体製とする一方、他方の搬送ローラのローラ部を3分割して、中央側が弾性体製で長手方向両側が剛体製という複合型に構成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−237208号公報(段落0025参照)
【特許文献2】特開昭60−15337号公報
【特許文献3】特開平7−117890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2及び3の構成では、他方の搬送ローラを複合型に構成するため、当該複合型の搬送ローラ自体の構造が複雑化すると共に部品点数が増加することになり、コストダウンの妨げになるという問題があった。また、記録材の通紙幅によっては、中央側にある弾性体製ローラ部だけで十分な搬送力を確保するのが難しく、搬送不良を招く可能性を否定できないという問題もあった。
【0007】
そこで、本願発明は上記の問題を解消することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、記録材を挟持搬送するための一対の回転ローラと、前記両回転ローラ間の距離を測定する測定手段と、前記測定手段の測定情報を用いて前記記録材の厚みを演算する演算手段とを有している記録材搬送装置であって、前記両回転ローラのうち少なくとも一方のローラ部が弾性材製であり、前記演算手段は、前記記録材の通紙幅に基づき前記測定手段の測定情報を補正することによって、前記記録材の厚みを演算するというものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載した記録材搬送装置において、他方の前記回転ローラのローラ部は剛体製であり、前記他方の回転ローラは、前記一方の回転ローラに対して、挟持搬送される前記記録材の厚み方向に接離動可能に構成されており、前記測定手段は、前記他方の回転ローラの変位量を測定するように構成されているというものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載した記録材搬送装置において、前記他方の回転ローラにおいて、前記記録材と接触可能な搬送領域から外れた非搬送領域の表面粗さは、前記搬送領域の表面粗さより大きく設定されており、前記測定手段としての反射型光学センサが、前記他方の回転ローラの前記非搬送領域に対峙した状態で配置されているというものである。
【0011】
請求項4の発明は、画像形成装置に係るものであり、請求項1〜3のうちいずれかに記載した記録材搬送装置を備えていることを特徴としている。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4に記載した画像形成装置において、給紙前の前記記録材をセンター基準に幅寄せする規制手段を備えており、前記演算手段は前記規制手段の位置情報から前記記録材の通紙幅を検知するというものである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項4又は5に記載した画像形成装置において、前記両回転ローラが、像担持体上に形成されたトナー像を前記記録材に転写する画像プロセス装置より搬送上流側に配置されているというものである。
【0014】
請求項7の発明は、記録材を挟持搬送するための一対の回転ローラと、前記両回転ローラ間の距離を測定する測定手段と、前記測定手段の測定情報を用いて前記記録材の厚みを演算する演算手段とを有しており、前記両回転ローラのうち少なくとも一方のローラ部が弾性材製になっている記録材搬送装置の制御方法において、前記記録材の通紙幅に応じて決定される厚み補正係数を前記両回転ローラ間の距離に乗ずることによって、前記両回転ローラ間の距離を補正して前記記録材の厚みを演算するステップを備えているというものである。
【発明の効果】
【0015】
本願の請求項に記載された発明によると、記録材を挟持搬送する両回転ローラのうち少なくとも一方のローラ部が弾性材製であり、演算手段は、前記記録材の通紙幅に基づき測定手段の測定情報を補正することによって、前記記録材の厚みを演算するから、搬送に寄与しない厚み測定専用の剛体ローラ対が不要なばかりか、前記一方の回転ローラを複合型にする必要もない。すなわち、少なくとも一方の回転ローラにて十分な摩擦搬送力を確保できるものでありながら、前記回転ローラ対の構造を複雑化させずに(コストアップを抑制して)、前記記録材の厚みを精度良く計測できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態におけるプリンタの概略説明図である。
【図2】タイミングローラ対の概略斜視図である。
【図3】通紙幅が広めの記録材を挟持した状態のタイミングローラ対の概略平面図である。
【図4】厚みが厚めの記録材を挟持した状態のタイミングローラ対の概略平面図である。
【図5】コントローラの機能ブロック図である。
【図6】通紙幅の関数である厚み補正係数のグラフである。
【図7】通紙幅と剛体ローラの変位量との関係を示すグラフである。
【図8】厚み計測制御の一例を示すフローチャートである。
【図9】厚み補正係数を用いた記録材の厚みの演算結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本願発明を画像形成装置の一例であるタンデム方式のカラーデジタルプリンタ(以下、プリンタと称する)に適用した実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「上下」等)を用いる場合は、図1において紙面に直交した方向を正面視とし、これを基準にしている。これらの用語は説明の便宜のために用いたものであり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
(1).プリンタの概要
まず、図1を参照しながら、プリンタ1の概要について説明する。図1に示すように、プリンタ1は、その筐体2内に、画像プロセス装置3、給紙装置4、及び定着装置5等を備えている。詳細は図示していないが、プリンタ1は、例えばLANといったネットワークに接続されていて、外部端末(図示省略)からの印刷指令を受け付けると、当該指令に基づいて印刷を実行するように構成されている。
【0019】
筺体2内の下部に位置する給紙装置4は、記録材Pを収容する給紙カセット21、給紙カセット21内の記録材Pを最上層から繰り出すピックアップローラ22、繰り出された記録材Pを1枚ずつに分離する一対の分離ローラ23、及び、1枚に分離された記録材Pを所定のタイミングにて画像プロセス装置3に搬送する一対のタイミングローラ24等を備えている。各給紙カセット21内の記録材Pは、ピックアップローラ22及び分離ローラ対23の回転にて、最上層のものから1枚ずつ搬送経路30に送り出される。搬送経路30は、給紙装置4の給紙カセット21から、タイミングローラ対24のニップ部、画像プロセス装置3の二次転写ニップ部、及び定着装置5の定着ニップ部を経て、筐体2上部にある排出ローラ対26に至る。タイミングローラ対24は、記録材Pを挟持搬送する一対の回転ローラを構成している。
【0020】
給紙カセット21内の記録材Pは、その通紙幅x(搬送方向Sと直交する幅寸法)の中央を基準にして、搬送経路30に向けて矢印S方向に搬送するセンター基準にセットされる。実施形態では、給紙カセット21内に、給紙前の記録材Pをセンター基準に幅寄せする規制手段としての一対の側部規制板25を備えている。一対の側部規制板25は、通紙幅方向(搬送方向Sと直交する方向)に互いに連動して遠近移動するように構成されている。給紙カセット21内の記録材Pを一対の側部規制板25にて通紙幅方向両側から挟持することによって、給紙カセット21内の記録材Pがその規格に拘らずセンター基準にセットされる。従って、画像プロセス装置3での転写処理や、定着装置5での定着処理もセンター基準で実行される。なお、図2には説明の便宜のため、記録材Pの通紙幅xの中央を通る仮想線を中央基準線CLとして表記している。
【0021】
給紙装置4の上方に位置する画像プロセス装置3は、像担持体の一例である感光体13上に形成されたトナー像を記録材Pに転写する役割を担うものであり、中間転写ベルト6、及びイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色に対応する計4つの作像部7等を備えている。中間転写ベルト6は、筐体2内の中央部右側に位置する駆動ローラ8と、同じく中央部左側に位置する従動ローラ9とに巻き掛けられている。中間転写ベルト6のうち駆動ローラ8に巻き掛けられた部分の外側に二次転写ローラ10が配置されている。中間転写ベルト6と二次転写ローラ10との当接部分は二次転写領域である二次転写ニップ部になっている。中間転写ベルト6のうち従動ローラ9に巻き掛けられた部分の外側には、中間転写ベルト6上の未転写トナーを除去する転写ベルトクリーナ12が配置されている。筐体2内部のうち画像プロセス装置3と給紙装置4との間には、プリンタ1の制御全般を司る制御部28が配置されている。制御部28には後述するコントローラ44が内蔵されている。
【0022】
4つの作像部7は、中間転写ベルト6の下方において、図1の左からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、中間転写ベルト6に沿って並べて配置されている。なお、図1では説明の便宜上、各作像部7に、再現色に応じて符号Y,M,C,Bを添えている。各作像部7は感光体13を備えている。感光体13の周囲には、図1における時計回りの回転方向に沿って順に、帯電器14、露光部19、現像部15、一次転写ローラ16、及び感光体クリーナ17が配置されている。
【0023】
各作像部7において、帯電器14にて帯電される感光体13に、露光部19からレーザービームが投射されると、静電潜像が形成される。静電潜像は、現像部15から供給されるトナーにて反転現像されて各色のトナー像となり、一次転写ニップ部において、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で、感光体13から中間転写ベルト6の外周面に一次転写されて重ねられる。感光体13に残った未転写トナーは感光体クリーナ17にて掻き取られ、感光体13上から取り除かれる。そして、記録材Pが二次転写ニップ部を通過する際に、重ね合わされた4色のトナー像が記録材Pに一括して二次転写される。中間転写ベルト6に残った未転写トナーは転写ベルトクリーナ12にて掻き取られ、中間転写ベルト6上から取り除かれる。
【0024】
画像プロセス装置3における二次転写ローラ10の上方に位置する定着装置5は、ハロゲンランプヒータ等の熱源を内蔵した定着ローラ31と、定着ローラ31に対峙する加圧ローラ32とを備えている。定着ローラ31と加圧ローラ32との当接部分が定着領域である定着ニップ部になっている。二次転写ニップ部を通過して未定着トナー像を載せた記録材Pは、定着ローラ31と加圧ローラ32との間の定着ニップ部を通過する際に加熱・加圧され、記録材P上に未定着トナー像を定着される。その後、記録材Pは、一対の排出ローラ26の回転にて排紙トレイ27上に排出される。
【0025】
(2).タイミングローラ対及びその周辺の詳細構造
次に、図2〜図5を参照しながら、タイミングローラ対24及びその周辺の詳細構造について説明する。タイミングローラ対24は、給紙カセット21から送られてきた記録材Pを、斜行(スキュー)解消のために、記録材Pの先端がタイミングローラ対24のニップ部に当接した状態で一旦停止させ、中間転写ベルト6上のトナー像と同期するタイミングで二次転写ニップ部に向けて搬送するためのものである。タイミングローラ対24のうち少なくとも一方のローラ部41aは弾性体製になっている。
【0026】
実施形態では、一方のタイミングローラ(弾性体ローラ24a)のローラ部41aを弾性体製とし、他方のタイミングローラ(剛体ローラ24b)のローラ部41bを金属等の剛体製としている。なお、実施形態中の説明では便宜上、弾性体製のローラ部41aを有するタイミングローラを弾性体ローラ24a、剛体製のローラ部41bを有するタイミングローラを剛体ローラ24bと称している。各ローラ24a,24bの軸部は金属等の剛体製である。弾性体としては、エチレン、プロピレン及びジエン系モノマーの三元共重合体であるEPDM(エチレンプロピレンゴム)が採用されている。タイミングローラ対24の各ローラ部41a,41bは双方が弾性材製でもよい。
【0027】
弾性体ローラ24aは、筐体2の内部に、回転可能だが位置ずれ不能な状態で軸支されている一方、剛体ローラ24bは、弾性体ローラ24aに対して、挟持搬送される記録材Pの厚み方向(矢印A方向)に接離動可能に構成されている。すなわち、剛体ローラ24bは、挟持搬送される記録材Pの厚みに応じて、矢印A方向に沿って弾性体ローラ24aに近付いたり遠ざかったりすることが可能になっている。剛体ローラ24bにおける軸部の両端側には、付勢手段としてのばね部材42が設けられている。ばね部材42の弾性付勢力によって、剛体ローラ24bは弾性体ローラ24aに近接又は当接する方向に常時付勢されている。ばね部材42にて剛体ローラ24bが弾性体ローラ24a側に押し付けられることにより、タイミングローラ対24の間に到達した記録材Pに対して、弾性体ローラ24aにおけるローラ部41aの摩擦搬送力が確保される。ローラ部41aの摩擦搬送力を利用して、記録材Pはタイミングローラ対24の回転に伴い二次転写ニップ部に向けて搬送されることになる。
【0028】
タイミングローラ対24における各ローラ部41a,41bの通紙幅方向の長さは、最大通紙幅(例えばA3サイズの短辺、297mm等)より十分長い長さになっている。図2〜図4に示すローラ部41a,41bに表記した二点鎖線の内側は、記録材Pと接触可能な搬送領域Ecに設定されている。ローラ部41a,41bにおける二点鎖線の外側(長手方向両端側)は、搬送領域Ecから外れた非搬送領域Eacに設定されている。図2〜図4に示すように、剛体ローラ24bにおけるローラ部41bの一方の非搬送領域Eacの近傍で、且つ、剛体ローラ24bが接離動する矢印A方向の延長上の位置には、タイミングローラ対24の間の距離を測定する測定手段としての反射型光学センサ43が配置されている。反射型光学センサ43の発光部及び受光部は、剛体ローラ24bにおけるローラ部41bの非搬送領域Eacに対峙している。実施形態の反射型光学センサ43は、自身が発光してローラ部41bの非搬送領域Eacで乱反射した光を受光し、三角測量の原理で剛体ローラ24bまでの距離(反射型光学センサ43に対する剛体ローラ24bの位置u,u0)を測定するように構成されている。
【0029】
剛体ローラ24bにおけるローラ部41bの搬送領域Ecは、記録材Pと接触する領域であるため、記録材Pの傷付き(ダメージ)防止や汚れ防止の目的でできるだけ平滑面に仕上げられている。これに対してローラ部41bの非搬送領域Eacには、表面を粗くするブラスト等の表面加工が施されていて、ローラ部41bの非搬送領域Eacの表面粗さは、搬送領域Ecの表面粗さより大きく設定されている(粗くなっている)。このため、反射型光学センサ43から非搬送領域Eacに当たった光が乱反射することになり、反射型光学センサ43を用いた三角測量を確実に実行できる。その結果、剛体ローラ24bの位置u,u0測定を精度よく実行できることになる。
【0030】
図5に示すように、反射型光学センサ43は演算手段としてのコントローラ44に電気的に接続されている。コントローラ44は、反射型光学センサ43の測定情報からタイミングローラ対24の間の距離Δuを計測し、記録材Pの通紙幅xに応じて決定される厚み補正係数f(x)を距離Δuに乗ずることによって、距離Δuを補正して記録材Pの厚みyを近似的に演算する厚み計測制御を実行するものである。図示は省略するが、コントローラ44は、各種演算処理や制御を実行するCPUの他、記憶手段を構成するEEPROMやフラッシュメモリ、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるRAM、及び入出力インターフェイス等を備えている。コントローラ44には、前述した反射型光学センサ43以外に、タイミングローラ対24を回転駆動させるタイミングモータ45のモータ駆動回路46や、側部規制板25の位置を検出する通紙幅検出センサ47等も電気的に接続されている。従って、実施形態のコントローラ44は、通紙幅検出センサ47の検出情報(側部規制板25の位置情報)から、記録材Pの通紙幅xを検知することになる。なお、通紙幅検出センサ47としては、例えば側部規制板25に設けられたスリットの移動を読み取る光学的なセンサや、側部規制板25が接触移動する導体の抵抗値を測定するセンサ等を採用できる。
【0031】
コントローラ44の記憶手段(フラッシュメモリやEEPROM)には、記録材Pの通紙幅xに応じて決定される厚み補正係数f(x)が、例えばマップ形式又は関数表形式にて予め記憶されている(図6参照)。厚み補正係数f(x)は記録材Pの通紙幅xの関数であり、図6では、通紙幅xが小さいときに大きく、通紙幅xが大きいときには小さくなる反比例の曲線を呈している。厚み補正係数f(x)は、弾性体ローラ24aのローラ部41a材質(実施形態ではEPDM)毎に決めるものであり、実験等にて求められる。図6中で白抜きの丸、三角及び四角(○、△及び□)にて示したデータは、図7の実験結果から得られた厚み補正係数f(x)の算出データである。図6に示す厚み補正係数f(x)は、これらのデータに基づいて曲線回帰(カーブフィッティング)して設定されている。図7の実験結果のグラフは、実際の記録材Pの厚みに対して、記録材Pの通紙幅xと剛体ローラ24bの変位量Δuとがどのように関連しているのかを示している。ここで、剛体ローラ24bの変位量Δuは、記録材Pを挟持した場合の反射型光学センサ43の検出値u(剛体ローラ24bの位置u)から、記録材Pを挟持しない場合の反射型光学センサ43の検出値u0(剛体ローラ24bの位置u0)を差し引いた値であり、記録材P挟持状態でのタイミングローラ対24の間の距離に相当する。
【0032】
(3).厚み計測制御の説明
次に、図8のフローチャートと図9のグラフとを参照しながら、コントローラ44による厚み計測制御の一例について説明する。なお、図8のフローチャートにて示されるアルゴリズムは、コントローラ44の記憶手段(EEPROMやフラッシュメモリ等)にプログラムとして記憶されており、RAMに読み出されてからCPUにて実行される。
【0033】
コントローラ44は、画像形成動作が開始されると、タイミングローラ対24の回転を開始させ(ステップS1)、記録材Pを挟持しない状態で、適宜回転位相間隔毎(例えば36°の回転位相間隔(1回転当り10回)毎)に、反射型光学センサ43にて剛体ローラ24bまでの距離を検出し、その検出値u0を読み込む(ステップS2)。タイミングローラ対24が1回転したら(S3:YES)、反射型光学センサ43の検出値u0の平均を演算する(ステップS4)。ステップS4において、反射型光学センサ43の検出値u0の平均を演算するのは、タイミングローラ対24の偏心の影響を極力排除するためである。次いで、通紙幅検出センサ47の検出値(記録材Pの通紙幅x)を読み込み(ステップS5)、タイミングローラ対24に向けて記録材Pの搬送を開始する(ステップS6)。次いで、記録材Pがタイミングローラ対24のニップ部に到達したら(ステップS7:YES)、適宜回転位相間隔毎に、反射型光学センサ43にて剛体ローラ24bまでの距離を検出し、その検出値uを読み込む(ステップS8)。次いで、タイミングローラ対24が1回転したら(ステップS9:YES)、反射型光学センサ43の検出値uの平均を演算し(S10)、剛体ローラ24bの変位量Δu(=u−u0)を演算する(S11)。そして、ステップS5にて読み込まれた通紙幅xに応じた厚み補正係数f(x)を、剛体ローラ24bの変位量Δuに乗ずることによって、変位量Δuを補正して記録材Pの厚みy(=f(x)×Δu)を演算するのである(S12)。
【0034】
図9に示すグラフは、剛体ローラ24bの変位量Δuに厚み補正係数f(x)を乗じて算出された記録材Pの厚みyの演算値である。図9中において形状が同じ記号同士(○同士や△同士等)は、同一厚みで通紙幅xの異なる記録材Pの組合せになっている。図9のグラフに示すように、形状が同じ記号同士(同一厚みで通紙幅xの異なる記録材P)は大まかに言って横並びに並んでいて、実際の記録材Pの厚みと、演算にて得られた厚みyとが程良く一致することがわかった。すなわち、厚み補正係数f(x)にて補正すれば、通紙幅xの大小に拘らず、剛体ローラ24bの変位量Δuから記録材Pの厚みyを近似的に求められるのである。
【0035】
(4).まとめ
以上の説明から明らかなように、本願発明によると、記録材Pを挟持搬送する両回転ローラ24のうち少なくとも一方のローラ部41aが弾性材製であり、演算手段44は、前記記録材Pの通紙幅xに基づき測定手段43の測定情報を補正することによって、前記記録材Pの厚みyを演算するから、搬送に寄与しない厚み測定専用の剛体ローラ対が不要なばかりか、前記一方の回転ローラ24aを複合型にする必要もない。すなわち、少なくとも一方の回転ローラ24aにて十分な摩擦搬送力を確保できるものでありながら、前記回転ローラ対24の構造を複雑化させずに(コストアップを抑制して)、前記記録材Pの厚みyを精度良く計測できる。
【0036】
また、前記他方の回転ローラ24bのローラ部41bは剛体製であり、前記他方の回転ローラ24bは、前記一方の回転ローラ24aに対して、挟持搬送される前記記録材Pの厚み方向に接離動可能に構成されており、前記測定手段43は、前記他方の回転ローラ24bの変位量Δuを測定するように構成されているから、前記記録材Pの厚みy計測の際に、経年使用に起因する影響、例えば、前記回転ローラ対24における各ローラ部41a,41bの汚れや摩耗等の影響で生ずる誤差を確実に打ち消しできることになる。このため、仮に長年使用したとしても、高精度に前記記録材Pの厚みy計測を実行でき、演算結果の信頼性を十分に確保できる。
【0037】
更に、前記他方の回転ローラ24bにおいて、前記記録材Pと接触可能な搬送領域Ecから外れた非搬送領域Eacの表面粗さは、前記搬送領域Ecの表面粗さより大きく設定されており、前記測定手段としての反射型光学センサ43が、前記他方の回転ローラ24bの前記非搬送領域Eacに対峙した状態で配置されているから、前記反射型光学センサ43が前記非搬送領域Eacからの乱反射光を簡単に得られる。その結果、前記反射型光学センサ43を用いて、前記他方の回転ローラ24bの変位量Δuを精度良く測定できる。
【0038】
給紙前の前記記録材Pをセンター基準に幅寄せする規制手段25を備えており、前記演算手段44は前記規制手段25の位置情報から前記記録材Pの通紙幅xを検知するから、給紙前の前記記録材Pの位置合せのための規制手段25を、前記記録材Pの通紙幅xを検知する部材として兼用でき、コストアップを抑制する一助になる。
【0039】
(5).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、画像形成装置としてプリンタを例に説明したが、これに限らず、複写機、ファクシミリ又はこれらの機能を複合的に備えた複合機等でもよい。回転ローラ対はタイミングローラ対24に限らず、分離ローラ対23でもよい。測定手段は反射型光学センサ43に限らず、接触式のリミットスイッチでもよいし、その他非接触式のセンサも採用できる。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 プリンタ(画像形成装置)
3 画像プロセス装置
4 給紙装置
21 給紙カセット
23 分離ローラ
24 タイミングローラ対(回転ローラ対)
24a 弾性体ローラ(一方の回転ローラ)
24b 剛体ローラ(他方の回転ローラ)
25 側部規制板(規制手段)
41a 弾性体ローラのローラ部
41b 剛体ローラのローラ部
43 反射型光学センサ(測定手段)
44 コントローラ(演算手段)
47 通紙幅検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材を挟持搬送するための一対の回転ローラと、前記両回転ローラ間の距離を測定する測定手段と、前記測定手段の測定情報を用いて前記記録材の厚みを演算する演算手段とを有している記録材搬送装置であって、
前記両回転ローラのうち少なくとも一方のローラ部が弾性材製であり、
前記演算手段は、前記記録材の通紙幅に基づき前記測定手段の測定情報を補正することによって、前記記録材の厚みを演算する、
記録材搬送装置。
【請求項2】
他方の前記回転ローラのローラ部は剛体製であり、前記他方の回転ローラは、前記一方の回転ローラに対して、挟持搬送される前記記録材の厚み方向に接離動可能に構成されており、前記測定手段は、前記他方の回転ローラの変位量を測定するように構成されている、
請求項1に記載した記録材搬送装置。
【請求項3】
前記他方の回転ローラにおいて、前記記録材と接触可能な搬送領域から外れた非搬送領域の表面粗さは、前記搬送領域の表面粗さより大きく設定されており、前記測定手段としての反射型光学センサが、前記他方の回転ローラの前記非搬送領域に対峙した状態で配置されている、
請求項2に記載した記録材搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれかに記載した記録材搬送装置を備えている、
画像形成装置。
【請求項5】
給紙前の前記記録材をセンター基準に幅寄せする規制手段を備えており、前記演算手段は前記規制手段の位置情報から前記記録材の通紙幅を検知する、
請求項4に記載した画像形成装置。
【請求項6】
前記両回転ローラが、像担持体上に形成されたトナー像を前記記録材に転写する画像プロセス装置より搬送上流側に配置されている、
請求項4又は5に記載した画像形成装置。
【請求項7】
記録材を挟持搬送するための一対の回転ローラと、前記両回転ローラ間の距離を測定する測定手段と、前記測定手段の測定情報を用いて前記記録材の厚みを演算する演算手段とを有しており、前記両回転ローラのうち少なくとも一方のローラ部が弾性材製になっている記録材搬送装置の制御方法において、
前記記録材の通紙幅に応じて決定される厚み補正係数を前記両回転ローラ間の距離に乗ずることによって、前記両回転ローラ間の距離を補正して前記記録材の厚みを演算するステップを備えている、
記録材搬送装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−63413(P2011−63413A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217349(P2009−217349)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】