説明

記録用支持体

本発明によれば、一つ以上の湿潤時紙力増強剤を含む紙基材、および前記紙基材の少なくとも表面に、結合剤および顔料を特定の結合剤/顔料重量比(好ましくは、40/100〜150/100である)で含む顔料塗布膜とを含む顔料塗布紙基材が提供される。この顔料塗布紙は、ポリマー樹脂塗布膜を裏面に設けることができ、広範囲のインクジェット印刷用途での使用に適している。さらに本発明は、ポリマー樹脂塗布膜が表面上に、必要により裏面上に設けられ、広範囲の記録媒体の支持体として使用するのに適した顔料塗布紙に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用途で使用するための支持体材料に関する。具体的には、本発明の支持体材料は、その表面(すなわち、印刷すべき面)上に、必要により、その裏面上にも樹脂塗布層が設けられた顔料塗布紙基材を含んでいる。さらに、本発明は、顔料塗布紙基材を含み、必要により、裏面上に樹脂塗布層が設けられた印刷用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録媒体に使用される支持体材料は、少なくとも一つの樹脂層が塗布されている基材を含んでいる。この樹脂層の上には、受容媒体を塗布することができ、使用される記録方法により、例えば、(従来の)写真用途用の乳剤層、またはインクジェット用途用のインク受容層、または熱または電子写真紙用途用の層を塗布することができる。
【0003】
これらの記録媒体の支持体は、異なる組成を必要とする場合があるが、紙基材メーカーが、単一の紙基材を支持体として製造し、次いで、これを異なる記録プロセスで使用できれば、非常に能率的であろう。すなわち、紙基材は、頻繁に製造工程を開始または停止したり、あるいは、製造工程における処方を調整したりする必要なしに、単一の製造工程で、作り出すことができる。前提条件としては、この支持体は、物理的性質に関して高い品質を有していなければならず、かつ、原材料の価格が安くなければならない、ということであろう。重要な特性の一つは、支持体の平滑度である。かなり滑らかな紙基材の表面は、顔料塗布していない紙基材をカレンダリングまたはスーパーカレンダリングすることによって得られるが、滑らかで光沢のある表面を得る最良のやり方は、顔料塗布層を少なくとも紙基材の表面上に使用し、必要により、その後、塗布材料をカレンダリングすることである。防水紙が必要とされる場合は、ポリマー樹脂を顔料塗布紙基材の表面および裏面の両方に塗布することができ、これは、一般に、酸化チタン充填ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート樹脂等である。ポリマー樹脂層の適用は、一般に、溶融(共)押出し法によって行なわれる。
【0004】
写真および印刷用途における支持体の重要な観点は、支持体は、既存の処理システムに関連する多くの条件に対して耐性がなければならない、ということである。縁部からの現像液または水の浸透に対する耐性に関する特性および(または)現像工程または印刷工程における引掻抵抗力等の搬送性に関する特性は、十分に考慮しなければならない。
【0005】
最近、我々は、周知のミニラボ等の自動画像処理装置における耐性についての問題を観察した。具体的には、顔料塗布紙基材を含む写真用途用の樹脂塗布支持体の搬送性は、不十分であり、より具体的には、我々は、これらの製品をある種のミニラボによって処理した後に、縁部におけるひどい損傷を観察した。
【0006】
従来技術では、記録媒体用の支持体としての顔料塗布紙基材の使用について記述している例が、いくつかある。
【0007】
米国特許(US-A)第6,726,981号は、インクジェット印刷法用の記録材に対する支持体としての、高い光沢を有し、斑点が極めて少ない顔料含有ポリエーテルアミドのブロック共重合体を塗布した基材紙について記述している。
【0008】
欧州特許出願公開(EP-A)第1048479号は、優れた光沢を有するインクジェット記録材としての顔料含有基材紙材料について記述している。
【0009】
欧州特許出願公開(EP-A)第1126081号は、密着性および表面特性を向上させるため特定の顔料粒子サイズを有する顔料塗布紙である。
【0010】
米国特許出願公開(US-A)第2005/0032644号および米国特許出願公開(US-A)第2005/0031805号は、よりよい平滑度および安定性をもたらすため、特定の結合剤および顔料を有している顔料塗布紙基材について記述している。しかしながら、これら全ての文献は、縁部損傷の現象については、何も言及していない。
【特許文献1】米国特許第6,726,981号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1048479号
【特許文献3】欧州特許出願公開第1126081号
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0032644号
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0031805号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、広範囲の記録媒体用の支持体として使用するのに適した支持体を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、高い平滑度を有する記録媒体用の支持体を提供することであり、これは記録用の高い光沢度を与える。
【0013】
本発明のさらなる目的は、処理装置による処理後において、許容できる縁部損傷特性を有している記録媒体用の支持体を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、処理装置による処理後において、許容できる縁部浸透特性を有している記録媒体用の支持体を提供することである
【0015】
本発明の別の目的は、広範囲の印刷用途での使用に適した多目的の顔料塗布紙基材を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、処理中、良好な走行特性を有している顔料塗布紙基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの目的は、紙基材および前記紙基材の少なくとも表面上に顔料塗布層を含む顔料塗布紙基材であって、前記紙基材は、一つ以上の湿潤時紙力増強剤および一つ以上のサイズ剤(好ましくは、アルキルケテンダイマー(AKD)およびエポキシ化された脂肪酸アミドから選択されたもの)を含み、かつ、前記顔料塗布層は、下記の事項、すなわち、
− 自動化された写真印刷工程の処理中の縁部損傷を回避すること
− インクジェット用紙として使用した場合の引掻耐性を向上させること、および
− 印刷後のプリント上の塵埃堆積を減らすこと、
のうちの少なくとも一つを達成するのに十分な重量比で結合剤および顔料を含む顔料塗布紙基材を提供することによって、少なくとも一部は達成されることが、見出された。
【0018】
本発明によれば、結合剤対顔料重量比は、好ましくは、40/100〜150/100であり、より好ましくは、この比は、50/100〜120/100である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明によれば、顔料塗布紙基材であって、前記顔料塗布紙基材は、紙基材(基体ともいう)(前記紙基材は、一つ以上の湿潤時紙力増強剤および一つ以上のサイズ剤(これらは、好ましくは、アルキルケテンダイマー(AKD)および(または)エポキシ化された脂肪酸アミド(EFA)である)を含む)、および前記紙基材の少なくとも表面(すなわち、印刷を施すべき面)上における顔料塗布層(前記顔料塗布層は、結合剤および顔料を特定の結合剤/顔料重量比(これは、好ましくは40/100〜150/100である)で含む)を含む顔料塗布紙基材が提供される。必要により、紙基材の裏面上にも、顔料塗布層(これは、表面上の顔料塗布層と同じか、あるいは異なる組成のものとすることができる)が、存在する。このように、本発明の具体的な実施形態は、P−BおよびP−B−Pを含んでおり、ここで、上から下に順に、「P」は、顔料塗布層を指し、「B」は、紙基材を指す。
【0020】
本発明によれば、顔料塗布紙基材は、それ自体を印刷用紙として使用することができる。本発明によれば、顔料塗布紙は、一つ以上のポリマー樹脂塗布層を裏面上に設けることができ、同様に印刷用紙として使用することができる。このように、本発明のさらなる具体的な実施形態は、P−B−RおよびP−B−P−Rを含み、ここで、上から下に順に、「P」および「B」は、上記と同じ意味を有し、「R」は、樹脂層を指す。
【0021】
さらに、顔料塗布紙基材は、その表面(すなわち、印刷を施すべき面、すなわち、前記顔料塗布層)の上に、ポリマー樹脂層を塗布することができる。表面の樹脂ポリマー塗布層は、裏面の樹脂ポリマー塗布層と共に、あるいは、裏面の樹脂ポリマー塗布層無しで、顔料塗布紙基材上に塗布することができる。表面および裏面の樹脂ポリマー層は、同じか、あるいは異なる重合体とすることができる。表面上に、および必要により、裏面上に、一つ以上のポリマー樹脂層が設けられた顔料塗布紙基材は、他の記録用途、具体的には、乳剤ベースの写真記録用途のための支持体として使用することができる。このように、本発明のさらなる具体的な実施形態は、R−P−B、R−P−B−P、R−P−B−R、R−P−B−P−Rを含んでおり、ここで、上から下に順に、「P」、「B」および「R」は、上記と同じ意味を有する。
【0022】
我々の高品質、多目的の記録媒体用支持体の探索において、我々は、紙基材の上に顔料塗布層が無い支持体は、紙パルプの上に顔料塗布層を有する支持体とは異なった挙動をする、という問題に出会った。これは、特に、写真業界で周知のいわゆるミニラボ等の自動化された写真プロセスユニットの場合に当てはまり、この場合には、プリントは、事前に切断されてから現像され処理される。顔料塗布紙基材の顔料塗布膜層において、許容できない縁部損傷が、目に見える状態になる場合があることが分かり、かつ、この問題は、この顔料塗布膜層の無い紙基材には起こらないことが分かった。理論に捉われることを望まずに言えば、このいわゆる最前縁部損傷に対する一つの説明は、顔料塗布膜層の切断された表面縁部が、処理液の浸透によって、弱まり、次いで、搬送・ガイド上で、ジャミングにより、その縁部が損傷される、ということであろう。
【0023】
我々は、顔料塗布紙基材(これは、基材紙内に湿潤時紙力増強剤およびサイズ剤を含むことと組み合わせ、この基材紙の上に高い結合剤対顔料比を有する顔料塗布層を塗布している)を含む樹脂塗布支持体によって、驚くべき利点が得られることを発見した。
【0024】
写真用途では、湿潤時紙力増強剤とサイズ剤および高結合剤量の組合せ使用は、ミニラボでの処理の際の縁部損傷が改善された支持体をもたらす。本発明の具体的な実施形態では、顔料塗布紙基材は、紙基材内に少なくとも一つの湿潤時紙力増強剤およびサイズ剤を含み、かつ、顔料塗布層は、少なくとも40/100(w/w)〜150/100、より好ましくは、50/100〜120/100(ここで表わされる全ての比は、特記に指定しないかぎり、重量基準である)の結合剤対顔料比を有している。
【0025】
印刷用途では、湿潤時紙力増強剤とサイズ剤およびより高い結合剤対顔料比の組合せ使用は、印刷機を通る、はるかによりよい走行性および搬送の容易さをもたらす。我々は、紙基材内における少なくとも一つの湿潤時紙力増強剤およびサイズ剤の使用と組み合わせた、より高い結合剤対顔料比を有する顔料着色塗布紙基材を使用した場合、印刷後のプリント上に、引掻き傷および塵埃堆積がより少なくなることを観察した。理論に捉われずに言えば、この現象の説明は、湿潤時紙力増強剤、サイズ剤およびより高い結合剤対顔料比の組合せ使用は、顔料層から紙へのインクの吸収による膨潤がより少なくなり、したがって、プリンタの搬送部分におけるジャミングがより少なくなる、ということである。
【0026】
本発明によれば、湿潤時紙力増強剤は、基材紙製造工程のどの段階でも組み込むことができる。本発明で使用される湿潤時紙力増強剤は、一般に、熱硬化性樹脂類、アミノ樹脂類、金属系の化合物類、およびこれらの組合せ等の、基材紙を耐水性にする広い種類の成分類から選択することができる。より具体的には、湿潤時紙力増強剤は、例えば、ポリ(アミド‐アミン)‐エピクロロヒドリン(PAE)樹脂類(ポリアミド‐ポリアミン‐エピクロロヒドリン(PPE)樹脂類という場合もある)等のエポキシ化ポリアミド樹脂類から、あるいはポリアルキレンポリアミン‐エピクロロヒドリン(PAPAE)樹脂類から、あるいはアミン‐重合体‐エピクロロヒドリン(APE)樹脂類、またはこれらの組合せから選択することができる。選択可能な他の湿潤時紙力増強剤は、ジルコニウム系化合物(炭酸アンモニウムジルコニウム、炭酸カリウムジルコニウム、アセチルアセトン酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、燐酸ジルコニウム、燐酸ジルコニウムナトリウムおよび酒石酸ナトリウムジルコニウム等)、メラミン樹脂類、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ジアルデヒド澱粉(DAS)、グリオキサルおよびグリオキサル酸エステル化ポリアクリルアミド(PAM)およびポリエチレンイミン(PEI)樹脂類である。
【0027】
これらの湿潤時紙力増強剤は、紙基材の乾燥パルプ重量に対して、0.1〜2.0重量%の範囲で塗布することができ、かつ、単体で、または、これらのうちの二つ以上の混合体で使用することができる。本発明の一好適な実施形態では、湿潤時紙力増強剤は、PAE樹脂の群から選択される。これらのPAE樹脂類の合成は、一般に、2級または3級アミンの官能性を含有するプレポリマーの形成を含み、その後、水溶液内で、プレポリマーとエピクロロヒドリンとの反応が行なわれる。以下に、PAE樹脂類を得るための反応条件および変形条件を説明するが、これらは、米国特許公報(US-A)第2 926 116号および米国特許公報(US-A)第2 926 154号にも記述されている。
【0028】
プレポリマーの合成は、ジカルボン酸類とポリアミンとの間の重縮合反応であり、一般に、溶媒無しに、適度な温度(150〜170℃)で行なわれる。その反応は、水の追加および冷却によって停止することができる。成分としては、広範囲の材料が使用できる。2級アミンの官能性は、例えば、ジエチレントリアミンの使用によって、導入することができる。ジカルボン酸としては、溶解性の理由のため、実用的な限度として炭素原子8個までの鎖長を有する脂肪族ジカルボン酸類の使用が、望ましい。好適なジカルボン酸は、アジピン酸である。
【0029】
基材紙の製造工程での、湿潤時紙力増強剤の使用に加えて、サイズ剤は基材紙製造工程の任意の段階で組み込まれる。
【0030】
これらのサイズ剤の例としては、限定はされないが、エポキシ化脂肪酸アミド(EFA)類およびアルキルケテンダイマー(AKD)類が挙げられる。これらのサイズ剤は、単体で、または、これらのうちの二つ以上の混合体で使用することができる。
【0031】
脂肪酸とポリアミンとの縮合生成物等のEFAの具体的な例は、例えば、特公昭38-20601号公報、特公昭39-4507号公報、米国特許公報(US-A)3,692,092号に記載の通りであり、アルケニル琥珀酸とポリアミンとの反応生成物は、特公昭51-1705号に記載の通りである。上に引用した脂肪酸のうち、本発明で好適とするものは、炭素原子8〜30個、特に12〜25個を含有する脂肪族モノおよびポリカルボン酸である。このような脂肪族カルボン酸の具体的な例としては、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキ酸、ベヘン酸、トール油脂肪酸、アルキル琥珀酸、アルケニル琥珀酸、等が挙げられる。特に、ベヘン酸が、好適である。
【0032】
ポリアミン類については、ポリアルキレンポリアミン類、特に2個または3個のアミノ基を有するものが、好適である。このようなポリアミン類の具体的な例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレントリアミン、アミノエチルエタノールアミン、等が挙げられる。脂肪族カルボン酸類とポリアミン類との反応生成物を水に溶解性または分散性にするには、それらを無機または有機酸と反応させて、それらの塩に変換する、あるいは、ハロゲン化アルキル、塩化ベンジル、エチレンクロロヒドリン、エピクロロヒドリン、エチレンオキシド等を用いて、それらを4級塩の形を有するように変成することが望ましい。特に、エピクロロヒドリンとの反応を介して、それらを4級塩に変換するのが望ましい。なぜなら、結果として生ずる塩は、大きなサイジング効果を呈することができるからである。エポキシ化されたより高級脂肪酸アミド類は、適切な量で添加されるが、但し、絶乾のパルプに対するその割合は、重量で2.0%を超えず、好ましくは、重量で0.1〜2.0%の範囲内であり、より好ましくは、重量で0.1〜1.0%である。
【0033】
アルキルケテンダイマー(AKD)類の実用例としては、アルキル鎖の長さが異なるアルキルケテンダイマー類を挙げることができる(「混合」アルキルケテンダイマー類)。その中のアルキル残基は、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)1978年11月、レポート17516で説明されているように、12個と18個との間の炭素原子を含有することができる。一般には、アルキル残基の炭素原子が16個と18個の間のアルキルケテンダイマーが使用される。また、8〜30個の炭素原子を含有するより高い脂肪酸から誘導されたアルキルケテンダイマーは、非常に適切であり、米国特許公報(US)4,820,582号公報でも記述されている。特に、ベヘン酸から誘導されたアルキルケテンダイマーは、有利に使用される。アルキルケテンダイマーの適切な比率は、絶乾のパルプを基にした重量で、0.05〜2.0%の範囲であり、好ましくは、重量で0.1〜1.0%であり、より好ましくは、重量で0.2〜0.8%である。AKDの量は、好ましくは、出来るだけ低く保つ。AKDは、紙の表面に移動し、それにより、製造工程中に汚れを形成する傾向があることが分かっている。しかしながら、AKDの量が、低すぎると、縁部浸透の問題、すなわち、ハロゲン化銀写真処理で、現像液が、処理後縁部を通してセルロース繊維に入ることにより、着色縁部が生じて目に見えるという問題が、出て来る。したがって、本発明の好適な実施形態では、AKDの量は、絶乾パルプに基づいた重量で0.3%と0.7%の間である。
【0034】
さらに、好適なEFA/AKD比は、EFAおよびAKDの両方を使用する場合、10/90〜60/40である(両方を使用する理由は、許容できる縁部浸透特性を得るのに役立つからである)。
【0035】
本発明の紙製造中、湿潤時紙力増強剤およびサイズ剤とは別に、従来紙基材の製造に使用されて来た他の材料が、使用される。一般に、紙は、天然の木材パルプを基にしており、所望なら、タルク、炭酸カルシウム、TiO2、BaSO4等の充填剤が使用される。一般に、紙基材は、染料、蛍光増白剤等の着色剤を含むこともできる。さらに、紙担体は、ポリアクリルアミドまたは澱粉等の乾燥時強化剤を含有することができる。
【0036】
紙基体におけるさらなる添加物は、硫酸アルミニウム、澱粉、陽イオン重合体等の固定剤とすることができる。特に良好な紙基材を得るためには、一般に、天然パルプ内に、短繊維を入れる。
【0037】
上記のようにして作られる原紙基体には、サイズプレス、タブサイズ、ゲートロールコータ等によって、各種の水溶性添加物を含有する溶液を含浸させる、あるいは塗布することができる。水溶性添加物の具体的な例としては、澱粉、ポリビニルアルコール、ラテックス、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、ゼラチン、カゼイン、等の高分子化合物類、および塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、等の金属塩類が挙げられる。
【0038】
上に引用した水溶性添加物を含有する溶液には、さらに、グリセロール、ポリエチレングリコール、等の吸湿性化合物;染料等の着色剤または増白剤;蛍光増白剤;および(または)水酸化ナトリウム、アンモニア水、塩酸、硫酸、炭酸ナトリウム、等のpH制御剤を添加することができる。また、必要なら、顔料および上で詳細に説明した湿潤時紙力増強剤およびサイズ剤を、上記の溶液に添加することができる。
【0039】
原紙基体のこの含浸は、当業者は周知のように、表面サイジングと呼ばれている。
【0040】
原紙基材は、その種類および厚さにおいて、特には制限されない。しかしながら、基材は、50〜300g/m2の範囲の重量を有していることが、一般に望ましい。
【0041】
紙基材は、一般に、既知の機械類を用いて、従来のやり方で、上記の成分から調製される。セルロース繊維を、それらの配合状態で、脱水ウェブに塗布した後、それらを乾燥して紙シートを形成し、大きなロールに巻き取る。
【0042】
上記の紙基材に対して、顔料塗布膜層を塗布して、支持体として顔料塗布紙基材を得る。この顔料塗布膜は、液体(特に水)(必要により、他の液体と組合せたもの)、一つ以上の顔料、一つ以上の結合剤および紙基材への塗布に適した安定な顔料分散体を調製するのに適した他の成分を含むか、あるいは、それを基にしている。顔料塗布膜は、液体および顔料を含む溶液もしくは分散体を塗布することによって、紙基材に塗布される。塗布工程後、液体を蒸発させて、塗布膜を形成する。
【0043】
顔料は、カオリン、粘土、二酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、サテンホワイト、合成シリカ、陶土、炭酸マグネシウム、アルミナ、タルク、イライト、剥離粘土、粉砕炭酸カルシウム、析出炭酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイドシリカ、他の金属酸化物または塩等、並びにプラスチック顔料等の有機顔料類から適当に選択することができる。これらの顔料は、単体で、または組合せで使用することができる。
【0044】
結合剤は、ポリビニルアルコール、澱粉(酸化澱粉、エステル化澱粉、酵素的に変性した澱粉、陽イオン化澱粉等を含む)、カゼイン、大豆蛋白質、デキストリン、セルロース誘導体類(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等を含む)、スチレン‐アクリルラテックス、イソブチレン‐無水マレイン酸ラテックス、アクリルラテックス、酢酸ビニルラテックス、塩化ビニリデンラテックス、ポリエステルラテックス、スチレン‐ブタジエンラテックス、メタクリル酸メチルブタジエンラテックス、ポリアクリル酸エステルラテックス、アクリルニトリル‐ブタジエンラテックス等から選択することができる。これらの結合剤は、単体で、または、これらのうちの二つ以上の混合体として、使用することができる。
【0045】
特に、スチレン‐アクリルラテックスは、様々な光強度の曝露に対して経時的に色安定性を示すので、本発明により、好適とされる。本発明による特定の結合剤の顔料に対する比率は、40/100〜150/100の、好ましくは、50/100〜120/100の範囲とすることができる。150/100より高い結合剤比は、一般に、透明度がより低くなる等、光学的特性が不満足となるので望ましくなく、さらに経済的の観点から、望ましくない。
【0046】
顔料塗布膜の組成は、一般に、無機顔料用の分散剤も、顔料の重量に基づいた重量で、好ましくは、0.02%〜1%の量で含有する。所望なら、発泡防止剤、pH調整剤、および一つ以上の他の従来の添加物も、本発明の効果が、その添加によって損なわれない限り、顔料塗布膜用の塗布溶液に添加することができる。
【0047】
顔料は、親水性であることが望ましい。水性顔料塗布膜の分散体は、各種のやり方で塗布することができ、それにより、支持体の本発明に従って、親水性の塗布膜を得ることができる。
【0048】
一つのやり方は、脱水工程後の抄紙工程中に顔料塗布膜を塗布することである。この塗布膜は、当業者には周知のやり方で塗布することができる。塗布膜を塗布した後では、紙は、さらに乾燥し、その後、抄紙機内で巻き取る。
【0049】
顔料分散体は、紙をロールに巻き取った後でも、ロールを巻き戻し、顔料塗布膜を塗布し、乾燥し、かつ、再び巻き取ることによって塗布することができる。水性顔料塗布膜は、好ましくは、100℃以下の温度で、好ましくは、20〜80℃で塗布される。両方法の組合せも用いることができる。
【0050】
塗布膜の塗布は、ダブルロール・サイズプレスコータまたはゲートロールコータ、ブレードメータリング・サイズプレスコータまたはロッドメータリング・サイズプレスコータ、シムサイザーまたは他のフィルム搬送ロールコータ、フラッデド・ニップ/ブレードコータ、ジェットファウンテン/ブレードコータおよびショートドウェルタイム・アプリケーションコータ、ブレードの代わりに溝付きロッドまたは溝無しロッドを用いるロッドメータリングコータ、カーテンコータ、ダイコータまたは任意の他の既知のコータ等の従来の方法を用いて行なうことができる。
【0051】
使用すべき顔料または顔料混合体の合計量は、特に限定されない。良好な結果は、0.5〜40g/m2の顔料塗布膜量で得られ、好ましくは、この量は、1と30g/m2の間である。顔料の粒度は、原則として制限されないが、付着力または光沢を得るには、より小さな粒度分布が有利な場合がある。粒子のうちの少なくとも70%が1μm未満の粒度を有している顔料、および少なくとも40%が0.35と0.80μmの間の粒度を有している顔料が、有利に使用できる。
【0052】
紙のカレンダリングは、滑らかで光沢のある表面を得るためには、非常に有利である。カレンダリングは、顔料塗布紙基材の製造中の様々な段階で行なうことができる。例えば、顔料塗布膜の塗布前、または顔料塗布膜の塗布の後で行なうことができる。どの場合でも、1.0未満の表面粗さRaを有する顔料塗布紙基材を得ることが可能である。表面粗さパラメータは、一般に使用されており、当業者には公知である。表面粗さのパラメータは、UBM装置を用いて、下記の設定により、DIN4776に従い、適切に測定される。
(1)点密度:500P/mm
(2)面積:5.6×4.0mm
(3)カットオフ波長:0.80mm
(4)速度:0.5mm/秒
ソフトウェアパッケージ・バージョン1.62による。
【0053】
好ましくは、表面粗さパラメータRaは、1.0未満である。より好適な表面粗さは、0.8μm未満である。非常に滑らかで、かつ、光沢度の高い顔料塗布紙基材材料を得たい場合は、0.5μm未満の表面粗さが、有利な場合がある。この低い表面粗さは、マシンカレンダリング、ソフトカレンダリングおよびスーパーカレンダリング等の任意のカレンダリングで得ることができる。抄紙中のカレンダリング工程では、紙は、ローラの間でプレスされる。これによって、繊維間の空間は、より少なくなり、それにより、より滑らかな表面結果が得られる。欠点は、カレンダーロールの圧力を増大しすぎると、紙の厚さおよび剛性に、悪影響があることである。グレードの低い紙基材を用いる場合は、厚さおよび剛性品質は、スーパーカレンダリングを用いると、許容レベル未満になる場合がある。しかしながら、十分な嵩紙密度を有する良好な品質の紙基材に、本発明によって顔料塗布する場合は、表面粗さについてのこれらの値を得ることができる。この種の紙を用いると、厚さおよび剛性品質は、高レベルのカレンダリングでも、許容できるレベル内に留まり、0.5μm以下という非常に低い表面粗さ値Raが得られる。本発明の技法を用いれば、各種の紙品質を用いることができ、かつ、上記の方法によって、これらを向上させることができる。
【0054】
顔料塗布紙基材は、上で説明したように、ジクリー印刷、カラーコピー、スクリーン印刷、ゼログラフィ、グラビア、染料昇華、フレキソ印刷またはインクジェット等の印刷用途で、印刷用紙として使用するのに非常に適切である。従来技術に比べて、本発明の紙は、インクジェット用途において、向上した引掻耐性およびより少ない塵埃生成を示す。ある種の印刷用途では、顔料塗布紙基材の裏面にポリマー樹脂を塗布するのが有利な場合がある。
【0055】
写真用途では、上述の顔料紙基材は、一般に、表面および裏面にポリマー樹脂が塗布される。
【0056】
表面および(または)裏面へのポリマー樹脂の塗布は、従来、溶融押出しコーティング(MEC)法を用いて行なわれてきた。好適な実施形態において、必要により、各種の組成のポリマー層(複数)を、顔料塗布紙基材に同時に塗布することができる共押出し法が用いられる。この方法は、従来、200m/分を超える、好ましくは、300m/分を超えるライン速度で行なわれてきた。このような高いライン速度では、クレータ欠陥、ピンホールが、表面樹脂層に容易に発生し、これは、マット様の外観となる。
【0057】
欧州特許出願公開(EP-A)第0952483号では、溶融押出しコーティングの際のクレータ欠陥の発生を防ぐためには、顔料塗布紙基材の表面粗さRaが、1μm未満でなければならない、と述べている。予想されるように、本発明による顔料塗布紙基材は、押出し塗布でほとんどいかなるクレータ欠陥も生ぜず、非常に高い平滑度および光沢が得られる。MECは、200m/分超える、好ましくは、300m/分を超える高いライン速度を用いて、280〜340℃の高い温度で、ポリマーの薄い層を同時に塗布することによって行なわれる。表面における層は、単一ポリマー層の段階的な押出しによって、あるいは、好ましくは、共押出しMECシステムで塗布することができる。必要なら、MECの前に、かつ(あるいは)後で、顔料塗布紙基材の表面に、また、裏面にも、活性化処理を施こす。この処理は、コロナ処理および(または)火炎処理および(または)オゾン処理および(または)プラズマ処理またはこれらの処理の組合せを含むことができる。
【0058】
ポリマー樹脂は、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレン‐テレフタル酸エステル、ポリアミドおよびポリアクリル酸エステル樹脂等、エチレン‐プロピレン共重合体、エチレン‐ブチレン共重合体、エチレン‐オクテン共重合体等の二つ以上のオレフィンの共重合体類、およびこれらの混合体から選択して、塗布することができる。これらの重合体は、押出しコーティング法によって形成される樹脂塗布膜が、その中に、白色顔料および着色顔料または増白剤を保持することができるなら、分子量にいかなる特定の制限もない。しかしながら、一般に、20000〜200000の範囲で分子量を有する樹脂が使用される。特に好ましいポリオレフィンは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンおよびこれらの混合体である。樹脂層が、多層型の場合は、各層の樹脂は、化学構造において、および/またはメルトインデクス等の物理的性質において、互いに異なっていてもよい。
【0059】
ポリマー樹脂層は、一般に、白色顔料(金属酸化物)類、染料類、着色顔料類、密着促進剤類、蛍光増白剤類、ビスフェノール、チオビスフェノール、アミン、ベンゾフェノン、サリチル酸塩、ベンゾトリアゾールおよび有機金属化合物等の安定剤、等の添加物を含有する。表面上のポリマー樹脂層は、好ましくは、白色顔料および着色顔料または染料を含有する。
【0060】
ポリマー樹脂層の顔料は、カオリン、粘土、二酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、サテンホワイト、合成シリカ、陶土、炭酸マグネシウム、アルミナ、タルク、イライト、剥離粘土、粉砕炭酸カルシウム、析出炭酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイドシリカ、他の金属酸化物または塩等、およびこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0061】
ポリオレフィン樹脂塗布膜は、塗布量/m2または厚さにいかなる特定の制限も有しない。ポリマー樹脂は、60g/m2(専門家紙グレード)までの重量を使用することができるが、好適な樹脂範囲は、特定の市場製品(専門家、消費者市場等)の用途に左右される。従来、消費者製品用の樹脂重量は、30から35g/m2の間で様々であるが、消費者製品等では、表面樹脂の場合、30g/m2未満の量、あるいは15〜25g/m2の量すら、使用することができる用途がある。顔料塗布紙基材は、MEC中に使用されるため、塗布されるポリマーの量は、従来の、非顔料塗布紙基材に比べて減らすことができ、それでも、より滑らかな、かつ、光沢のある製品が得られる。カーリングに関して、良好な挙動を得るためには、裏面ポリマー樹脂層を適宜に調整することができ、裏面ポリマー樹脂層は、5〜60g/m2、好ましくは、10〜50g/m2の樹脂量を含むことができる。
【0062】
ポリマー樹脂層の厚さは、主として、塗布されるポリマー樹脂の量によって決定され、一般に、10〜60μmの範囲で変動させることができる。
【0063】
ポリマー樹脂が塗布されている顔料塗布紙基材の合計の厚さは、例えば、60から360μmの間で変動させることができる。
【0064】
裏面ポリマー樹脂塗布を省略し、かつ、他の手段を用いて、例えば、ゼラチン塗布膜を塗布することによって、カール補償を行なうこともできる。表面だけにポリマー樹脂が設けられた顔料塗布紙基材は、高品質が必要とされる多くの記録用途用の支持体として非常に適切であるが、この紙は、現像剤溶液が、裏面を通して自由に浸透して、得られた画像を汚す場合がある写真処理には適切ではないか、あるいは適性がより低いことは、明らかである。
【0065】
ポリマー樹脂の塗布膜は、既知の手段、例えば、ポリオレフィン用の普通の押出し機およびラミネータを用いて、顔料塗布紙基材上に塗布することができる。
【0066】
樹脂塗布支持体は、ジクリー印刷、カラーコピー、ゼログラフィ、スクリーン印刷、グラビア、染料昇華、フレキソ印刷、インクジェットおよび写真用の支持体等の、各種の記録用途用の支持体として、非常に適切である。樹脂塗布支持体は、ハロゲン化銀乳剤が設けられた場合、写真用途で使用するのに非常に適切である。樹脂塗布支持体は、主としてゼラチンおよび他の水溶性ポリマーで構成される膨潤可能な層が設けられた場合、インクジェットまたは染料昇華用途で使用するのに非常に適切である。樹脂塗布支持体は、マイクロ多孔質層が設けられた場合、インクジェットおよび染料昇華用途等で使用するのに非常に適切である。
【0067】
本発明は、さらに、少なくとも一つの湿潤時紙力増強剤およびサイズ剤を有する紙基材を含む顔料塗布紙基材の製造、前記紙基材の表面への水性顔料塗布膜の塗布、および必要により、印刷用途用の用紙を作るための、顔料塗布紙基材の裏面への樹脂塗布膜の塗布に関する。
【0068】
さらに、本発明は、少なくとも一つの湿潤時紙力増強剤およびサイズ剤を有する顔料塗布紙基材を含むMECを用いて表面、または、表面および裏面樹脂塗布支持体を製造し、前記紙基材の前記表面に水性顔料塗布膜を塗布し、これを乾燥し、かつ、必要により、それをカレンダリングして、記録用途用の支持体を作る方法に関する。さらに、本発明は、前記樹脂塗布支持体および前記支持体に塗布された写真乳剤を含む写真印画紙に、また、前記樹脂塗布支持体および前記支持体に塗布されたインク受容層を含むインクジェット用紙に、また、前記顔料塗布紙および必要により、前記顔料塗布紙基材の裏面における樹脂塗布膜を含むインクジェット用紙に関する。
【0069】
さらに、本発明は、写真用途およびインクジェット用途における、それぞれ、前記写真印画紙およびインクジェット用紙の使用に関する。
【0070】
本発明は、ここでさらに、下記の例を基に、説明する。
【実施例】
【0071】
基材紙作製:比較例23
100%広葉樹クラフト紙漂白パルプを含む高品質紙担体を用いた。原料調製において、精製後、下記の化学薬品をウェットエンド(wet end)で追加した。OBを追加し、また、乾燥強化剤としての澱粉、サイズ剤としてのAKD、湿潤時紙力増強剤としてのPAEを追加した。乾燥後、澱粉およびNaClを含む表面サイズ溶液をサイズプレスで塗布し、次いで、再び乾燥した。このようにして得られた紙の坪量は、150g/m2であった。続いて、0.95〜1.00g/cm3の範囲の嵩密度および1.2μmの平均表面粗さRaが得られるまで、紙基体をカレンダリングした。
【0072】
紙基材作製:発明の実施例1〜13/比較例15〜21
サイズ剤としてAKDまたはAKD/EPA混合体を、また、湿潤時紙力増強剤としてPAEを、各種の量で(絶乾パルプに対する重量%で)ウェットエンド化学(wet end chemistry)に用いた以外は、上記と同じ手順を辿って、発明の新規な実施例1〜13および比較例15〜21の紙基材を作製した。
【0073】
紙基材作製:新規な実施例14/比較例22
発明の実施例14および比較例22では、ウェットエンド以外において、湿潤時紙力増強化学薬品PAEを、紙の表面および裏面の両方に、表面サイズ工程で塗布した。
【0074】
顔料塗布紙基材作製:本発明試料1〜14/比較例15〜22
発明の実施例1〜14および比較例15〜22では、炭酸カルシウム(平均直径1〜2μmが85%、および平均直径<1.0μmのCaCO3が15重量%)を顔料として用いて、20g/m2の塗布重量で、紙の裏側に顔料塗布膜を塗布した。CaCO3の重量100部に対して、各種の重量部のスチレン‐アクリル酸エステルラテックスまたはポリビニルアルコール(PVOH)および(または)天然澱粉を、結合剤として用いた。乾燥およびカレンダリング後、0.8μmの平均表面粗さRaを得た。
【0075】
比較例23:顔料塗布層なし。
使用したEFAは、ベヘン酸ジエチレントリアミン/トリエチレンテトラミンとエピクロロヒドリンとの縮合生成物であった。
使用したAKDは、ベヘン酸から誘導したAKDであった。
使用したPEAは、KymeneTM 557H (Hercules Incorporated)であった。
【0076】
実験1
顔料塗布紙基材実施例1〜22および顔料非塗布の実施例23を用いて、それらにブラック、シアン、マゼンタおよびイエローバーを含む標準画像をインクジェット印刷後、引掻き傷評価を視覚的に行なった。画像は、室内条件(23℃および相対湿度48%)で印刷し、この条件で、プリントを少なくとも1時間保存して乾燥した。HP( Photosmart 7960印刷装置を用いて、下記の設定で画像をプリントした。
1) プリント品質最高
2) 他のパラメータは、工場設定に従った。
【0077】
表1は、引掻き傷評価における実施例1〜23の結果を示す。引掻き傷の損傷は、下記のように採点した。
xxxx: 引掻き傷が多く、許容できない
xxx: 引掻き傷の量が中程度であり、かろうじて許容できる
xx: 外観が良好で、引掻き傷が小さい
x: 外観が非常に良好で、目に見える引掻き傷は、ほとんどない
【0078】
比較例23(顔料非塗布紙基材)は、引掻き傷は無かったが、平滑度およびひげ(feathering)に関する結果は、許容できなかった。
【0079】
実験2
実験1で調製した実施例1〜14(本発明による)および比較例15〜23を、顔料塗布膜の側において、下記の構造で溶融共押出しコーティングした。
1) 50/50の比を有するLDPE/LLDPEを含有する最外側層(画像側)、1g/m2
2) LDPE、25%アナターゼTIO2顔料、ウルトラマリンブルーおよびウルトラマリンバイオレット、キナクリドンおよびビスベンゾオキサザールで置換されたスチルベン型蛍光増白剤を含有する第二層、12.5g/m2、および
3) LDPE、5%アナターゼTiO2顔料、ウルトラマリンブルーおよびウルトラマリンバイオレットおよびキナクリドンを含有する顔料塗布紙に最も近い第三層、16.5g/m2、350m/分のライン速度を用いて、実施例1〜23を得た。
【0080】
溶融温度は、320℃で、光沢のある冷却ロールにおけるニップロール圧力は、4.0N/m2である。紙基体の裏面は、20g/m2の量で、50/50のLDPE/HDPE比で、押出し塗布する。ポリエチレン層を押し出す前に、先ず、紙表面をコロナ処理で活性化して、紙表面とポリエチレン溶融体との間の蜜着性を改善した。
【0081】
実施例1〜23は、通常の写真乳剤を塗布し、ミニラボ(FrontierTM 350、富士写真フィルム)で、通常の条件下で処理した。
【0082】
縁部損傷を視覚的に判定し、下記のように採点した。
xxxxx: 損傷が非常にひどく、許容できない
xxxx: 損傷がひどく、許容できない
xxx: 損傷が中程度であり、かろうじて許容できる
xx: 良好であり、損傷は小さい
x: 非常に良好であり、損傷はほとんど無い
【0083】
表1は、基材紙の組成、および樹脂塗布膜を顔料塗布紙基材および顔料非塗布紙基材の表面および裏面に、かつ、感光層を表面に塗布し、かつ、それらをFrontierTM 350で処理した後の縁部損傷の結果を示す。
【0084】
比較例23は、縁部損傷については、良好な結果を示したが、実施例23は、顔料非塗布紙で製造されており、平滑度および光沢に関して、許容できる挙動を示さない。

【表1】

C: 比較例
I: 発明の実施例
a前面および裏面への最初の溶融共押出しコーティング後、写真乳剤を実験2による溶融押出しコーティング試料の表面に塗布する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面および裏面を有する紙基材および紙基材の少なくとも表面への顔料塗布からなる顔料塗布紙基材であって、前記紙基材は、一つ以上の湿潤時紙力増強剤、一つ以上のサイズ剤を含み、前記顔料塗布層は40/100〜150/100の結合剤/顔料重量比で結合剤および顔料を含むことを特徴とする顔料塗布紙基材。
【請求項2】
前記顔料塗布層における結合剤/顔料重量比は、50/100〜120/100であることを特徴とする請求項1に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項3】
前記湿潤時紙力増強剤は、紙基材の乾燥パルプ重量に基づいて、0.1〜2.0重量%の量で存在することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項4】
前記湿潤時紙力増強剤は、エポキシ化されたポリアミド樹脂類、ジルコニウム系の化合物類、メラミンフォルムアルデヒド樹脂類、尿素フォルムアルデヒド樹脂類、ジアルデヒド澱粉、グリオキサル、グリオキサル酸エステル化ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンイミン(PEI)樹脂類、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項5】
前記エポキシ化されたポリアミド樹脂は、ポリ(アミドアミン)−エピクロロヒドリン(PAE)樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項6】
前記一つ以上のサイズ剤は、アルキルケテンダイマー(AKD)類、エポキシ化された脂肪酸アミド(EFA)類およびこれらの組合せから選択されることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項7】
EFAおよびAKDを10/90〜60/40のEFA/AKD重量比で含むことを特徴とする請求項6に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項8】
前記EFAは、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキン酸、ベヘン酸、トール油脂肪酸、アルキル琥珀酸、アルケニル琥珀酸、ポリアミン類、エピクロロヒドリンの縮合生成物、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項6または7に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項9】
前記AKDは、8〜30個の炭素原子を含有するアルキル鎖を含むことを特徴とする請求項6〜8に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項10】
前記EFAは、ベヘン酸を含む縮合生成物であり、および/又は前記AKDは、ベヘン酸から誘導されることを特徴とする請求項6〜9に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項11】
前記EFAは、ベヘン酸、ジエチレントリアミンおよび/又はトリエチレンテトラミン、およびエピクロロヒドリンを含む縮合生成物であることを特徴とする請求項6〜10に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項12】
1.0μm未満、好ましくは、0.8μm未満の平均表面粗さRaを有することを特徴とする上記請求項のいずれか1項に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項13】
前記紙基材が、50〜300g/m2の合計重量であることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項14】
前記顔料塗布膜の顔料は、CaCO3、TiO2、BaSO4、粘土、珪酸マグネシウムアルミニウム、スチレン‐アクリル共重合体類およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする前記請求項のうちのいずれか1項に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項15】
前記顔料塗布膜の結合剤は、スチレン‐アクリルラテックス、スチレン‐ブタジエンラテックス、メタクリル酸メチル‐ブタジエンラテックス、ポリアクリル酸エステルラテックス、ポリビニルアルコール、多糖類、澱粉およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項16】
前記顔料塗布層は、0.5〜40g/m2、好ましくは、1〜20g/m2の量で存在することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項17】
前記顔料塗布紙基材の裏面上に、さらに、ポリマー樹脂層が存在することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項18】
前記顔料塗布紙基材の表面(すなわち、印刷を施すべき面)上にポリマー樹脂層が存在することを特徴とする請求項1〜17に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項19】
前記顔料塗布紙基材の裏面(すなわち、印刷を施すべき面と反対側の面)上にポリマー樹脂層が存在することを特徴とする請求項18に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項20】
前記顔料塗布紙基材の表面上に存在する前記ポリマー樹脂層は、少なくとも一つのさらなる顔料を含むことを特徴とする請求項18または19に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項21】
前記さらなる顔料は、CaCO3、TiO2、BaSO4、粘土、珪酸マグネシウムアルミニウムおよびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項20に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項22】
前記顔料塗布紙基材の表面および/または裏面上の前記ポリマー樹脂層は、5〜60g/m2の量で存在することを特徴とする請求項17〜20に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項23】
60〜360μmの厚さを有することを特徴とする請求項17〜22に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項24】
前記ポリマー樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂およびポリメチルメタクリレート樹脂およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項17〜23に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項25】
前記ポリマー樹脂は、溶融押出しコーティングまたは溶融共押出しコーティングを用いて、少なくとも200m/分、より好ましくは、300m/分の速度で、表面上および(または)裏面上に塗布されていることを特徴とする請求項17〜24に記載の顔料塗布紙基材。
【請求項26】
顔料塗布紙基材を作り出す製造方法において、原紙を一つ以上の湿潤時紙力増強剤および一つ以上のサイズ剤と組み合わせる工程と、このようにして表面および裏面を有する紙基材を設ける工程と、前記紙基材の少なくとも前記表面上に顔料塗布層を塗布する工程と、を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項27】
前記顔料塗布層の上に、溶融(共)押出しコーティングによって顔料ポリマー樹脂が塗布される工程をさらに含むことを特徴とする請求項26に記載の製造方法。
【請求項28】
前記顔料塗布紙基材の裏面の上に、溶融(共)押出しコーティングによりポリマー樹脂が塗布される工程をさらに含むことを特徴とする請求項26または27に記載の製造方法。
【請求項29】
少なくとも200m/分、より好ましくは、300m/分以上の紙速度で、ポリマー樹脂塗布層が塗布されることを特徴とする請求項27〜28に記載の製造方法。
【請求項30】
請求項18〜25に記載の顔料塗布紙基材の、記録用途における支持体としての使用。
【請求項31】
請求項1〜17に記載の顔料塗布紙基材の、印刷用途における使用。

【公表番号】特表2009−510273(P2009−510273A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533271(P2008−533271)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000482
【国際公開番号】WO2007/037680
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(505232782)フジフィルム マニュファクチャリング ユーロプ ビー.ブイ. (50)
【Fターム(参考)】