説明

記録装置、および、電源装置

【課題】消費電力量を抑えた低消費電力状態に移行することにおり、消費電力量をより低く抑えることが可能な記録装置、および、電源装置を提供する。
【解決手段】記録媒体に記録を行うプリンター1であって、CPU41と、CPU41を含む各部に電源を供給するDC/DCコンバーター31と、DC/DCコンバーター31からCPU41を含む各部への電源の供給と停止を切り換えるFET32と、CPU41の制御によりFET32に印加するゲート動作電圧VGを変化させて、CPU41を含む各部への電源供給を停止させ、低消費電力状態に移行するラッチ回路33とを備え、プリンター1の外部からの指示を検出した場合に、ラッチ回路33の制御信号の出力をリセットさせてDC/DCコンバーター31からの電源供給を開始させ、低消費電力状態から復帰する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録を行う記録装置、および、記録装置に電源を供給する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に記録を行うプリンター等の記録装置は、記録動作を実行しない状態が所定時間以上継続すると、待機電力を抑えるためにモーター等の消費電力の大きい部品への電力供給をオフにする、低消費電力状態(いわゆるスタンバイ、スリープ)に移行する機能を有する(例えば、特許文献1参照)。この低消費電力状態は、電源オフとは異なり、短時間で電源供給を再開し、通常の動作状態に復帰できる。
例えば、特許文献1記載のプリンターは、モーターやソレノイド等を駆動する駆動電源部に対してAC電源の供給をオン/オフするリレーと、このリレーを制御するエンジンコントローラーとを備え、スタンバイ状態に移行するとエンジンコントローラーによってリレーをオフにする。この構成では、スタンバイ状態でもエンジンコントローラーが外部のコンピューターと通信を行っており、コンピューターから動作命令を受信すると、エンジンコントローラーがリレーをオンにして通常の動作状態に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−202692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の記録装置の低消費電力状態では、通常の動作状態に復帰する制御を行うために、低消費電力状態であってもコントローラー等の制御装置が動作する。このため、待機時の消費電力量を制御装置の消費電力より小さくすることはできず、省電力化の限界となっていた。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、消費電力量を抑えた低消費電力状態に移行することにおり、消費電力量をより低く抑えることが可能な記録装置、および、電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、記録媒体に記録を行う記録装置であって、制御手段と、前記制御手段を含む各部に電源を供給する電源供給手段と、前記電源供給手段から前記制御手段を含む各部への電源の供給と停止を切り換える給電切換手段と、前記制御手段の制御により、前記給電切換手段に制御信号を出力して前記制御手段を含む各部への電源供給を停止させ、低消費電力状態に移行する給電停止手段と、前記記録装置の外部からの指示を検出した場合に、前記給電停止手段の制御信号の出力をリセットさせて前記電源供給手段からの電源供給を開始させ、低消費電力状態から復帰する復帰手段とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、制御手段の制御によって、制御手段を含む各部への電源供給を停止する低消費電力状態に移行し、記録装置の外部から指示をすることで低消費電力状態から復帰する。この低消費電力状態は制御手段をも停止させるため、モーター等への電力供給を停止する従来のスリープ状態よりもさらに消費電力量が小さく、ほぼ電源オフに近いほど低消費電力であるが、記録装置の外部からの指示により容易に通常の動作状態に復帰できる。これにより、電源がオフの状態とは異なる低消費電力状態に移行可能で、この低消費電力状態における消費電力量をより低く抑えることが可能な記録装置を提供できる。
【0006】
また、本発明は、上記記録装置において、前記給電切換手段は、前記給電停止手段から入力される制御信号が所定の状態である間に前記電源供給手段から前記制御手段を含む各部への電源供給を停止させるスイッチで構成され、前記給電停止手段は、前記制御手段の制御に従って前記制御信号を所定の状態に保持し、前記復帰手段によりリセットされると前記制御信号を初期状態に切り換えることを特徴とする。
本発明によれば、制御手段を含む各部への電源供給の停止と、この電源供給が停止した低消費電力状態からの復帰が可能な記録装置を、簡単な回路構成を用いて容易に実現できる。
【0007】
また、本発明は、上記記録装置において、前記記録媒体を搬送するための駆動源となる搬送モーター、および前記記録媒体に記録を行う記録ヘッドを含む駆動部と、前記制御手段の制御に従って、前記電源供給手段から前記制御手段を含む各部への電源供給を保ったまま、前記駆動部に対する電源供給を停止させる駆動電源供給手段とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、制御手段への電源供給を保ったまま搬送モーターや記録ヘッドへの電源供給を停止できる。この状態は、上記の低消費電力状態とは別の、消費電力量を抑えた待機状態であるから、電源オフとは異なり消費電力量を抑えた2通りの状態に移行可能となる。これにより、制御手段への電源供給を保ったまま搬送モーターや記録ヘッドへの電源供給を停止した状態と、制御手段への電源供給をも停止した低消費電力状態とに移行可能な記録装置を実現でき、より細かく消費電力の制御を行える。
【0008】
また、本発明は、上記記録装置において、前記記録装置の外部の電源から前記電源供給手段へ電源を供給する電源供給ラインを、機械的機構により接離するメカニカルスイッチを備えることを特徴とする。
本発明によれば、メカニカルスイッチによる電源断をしなくても、制御手段を含めた各部への電力供給を停止して、ほぼ電源オフに近いほど消費電力量を抑えることができる。メカニカルスイッチは制御手段によってソフトウェア的にオンオフできないため、メカニカルスイッチを備えた記録装置は消費電力量の抑制に限度があるが、上記の低消費電力状態に移行することで、制御手段の制御によって、速やかにかつ大幅に消費電力量を低下させることができる。
【0009】
また、本発明は、上記記録装置において、前記復帰手段は、前記記録装置が備える前記記録媒体または前記記録機構を覆うカバーの開閉を検出する開閉検出手段、或いは、前記記録装置の外部から入力操作を検出する操作スイッチにより構成され、検出時に前記給電停止手段にリセット信号を出力することを特徴とする。
本発明によれば、記録装置のカバーの開閉または操作スイッチの操作により、低消費電力状態から復帰するので、制御手段への電力供給をも停止した低消費電力状態から容易に復帰させることができる。
【0010】
また、本発明は、上記記録装置において、前記復帰手段は、前記記録装置に外部接続された他の装置から送信された信号を検出する信号検出手段により構成され、検出時に前記給電停止手段にリセット信号を出力することを特徴とする。
本発明によれば、記録装置に外部接続された装置から信号を送信することで、制御手段への電力供給をも停止した低消費電力状態から容易に復帰させることができる。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明は、記録媒体に記録を行う記録装置が備える電源装置であって、前記記録装置が備える制御手段を含む各部に電源を供給する電源供給手段と、前記電源供給手段から前記制御手段を含む各部への電源の供給と停止を切り換える給電切換手段と、前記制御手段の制御により、前記給電切換手段に制御信号を出力して前記制御手段を含む各部への電源供給を停止させ、低消費電力状態に移行する給電停止手段と、を備え、前記給電停止手段は、前記記録装置の外部からの指示を検出した場合にリセット信号を出力する復帰手段に接続され、前記復帰手段から前記リセット信号が入力された場合に制御信号の出力をリセットして前記電源供給手段からの電源供給を開始させ、低消費電力状態から復帰すること、を特徴とする。
本発明によれば、記録装置の制御手段の制御によって、制御手段を含む各部への電源供給を停止する低消費電力状態に移行し、記録装置の外部からの指示に応じて記録装置を低消費電力状態から復帰させることができる。この低消費電力状態は制御手段をも停止させるため、モーター等への電力供給を停止する従来のスリープ状態よりもさらに消費電力量が小さく、ほぼ電源オフに近いほど低消費電力であるが、記録装置の外部からの指示により容易に通常の動作状態に復帰できる。従って、本発明の電源装置を用いることで、電源がオフの状態とは異なる低消費電力状態に移行可能で、この低消費電力状態における消費電力量をより低く抑えることが可能な記録装置を提供できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、制御手段を含む各部への電源供給を停止して消費電力量を大幅に抑制した低消費電力状態に、制御手段の制御によって容易に移行し、この制御手段が動作しない低消費電力状態から容易に復帰できる。このため、電源がオフの状態とは異なる低消費電力状態に移行可能で、この低消費電力状態における消費電力量をより低く抑えることが可能な記録装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンターの構成を示すブロック図である。
【図2】プリンターの各部が入出力する信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係るプリンター1のブロック図である。
プリンター1は、記録媒体に文字や画像等を記録(印刷)する記録装置である。本実施形態では、プリンター1が、本体ケース(図示略)内に収容した感熱ロール紙(図示略)に対し、ラインサーマルヘッドによって熱を与え、文字や画像等を印刷するラインサーマルプリンターである場合を例に挙げて説明する。
【0015】
プリンター1は、電源装置3と、電源装置3から電源の供給を受けて動作し、ロール紙への記録を行う記録部4とを備える。
記録部4は、制御プログラムを実行してプリンター1の各部を制御するCPU41(制御手段)、CPU41が実行する制御プログラムや設定値等のデータを記憶するROM42、CPU41が実行する制御プログラムや処理対象のデータを展開するワークエリアを形成するRAM43、および、プリンター1の外部のホストコンピューター100(他の装置)に接続されるインターフェイス(I/F)部46を備えている。また、記録部4は、CPU41を含む制御系により制御される駆動部40として、CPU41の制御に従ってロール紙を搬送する搬送モーター44、および、搬送モーター44により搬送されるロール紙に有色のドットを形成して文字や画像を記録する記録ヘッド45を備えている。記録部4が備える各部はバス47を介して相互に接続されている。
CPU41は、ROM42に記憶された制御プログラムおよびデータを読み出して、RAM43のワークエリアに展開して実行することにより、プリンター1の各部を制御する。また、CPU41は、インターフェイス部46を介してホストコンピューター100との間で各種データを送受信し、ホストコンピューター100から送信される印刷実行コマンドおよび印刷データに基づいて駆動部40の搬送モーター44および記録ヘッド45を制御し、印刷を実行する。
【0016】
搬送モーター44は、ロール紙に接する搬送ローラーに連結され、搬送モーター44の回転に伴って搬送ローラーが回転することにより、ロール紙が排出口に向けて搬送される。記録部4は、記録ヘッド45による印刷後のロール紙を排出口付近で切断するカッターユニット(図示略)と、このカッターユニットを動作させるカッター駆動モーターを備えていてもよい。この場合、カッター駆動モーターはCPU41の制御によって所定のタイミングでカッターユニットの刃を移動させ、ロール紙をカットする。このカッター駆動モーターを備えた構成においては、駆動部40にカッター駆動モーターが含まれる。
【0017】
プリンター1は、ロール紙を収容する本体(図示略)に開閉可能なカバー(図示略)を備え、このカバーを開くことでロール紙を補充および交換できる。プリンター1は、上記カバーの開閉を検出して、カバーの開閉状態に応じた出力電圧をCPU41に出力するカバー開閉スイッチ51を備えている。また、プリンター1の本体の上面または前面には操作パネル(図示略)が設けられ、押圧操作に応じて所定電圧を出力するパネルスイッチ52が配置されている。パネルスイッチ52は、例えば、印刷動作時以外にロール紙の搬送を指示するフィードスイッチであり、パネルスイッチ52が押下されると、押下中は所定電圧の信号がCPU41に入力される。
【0018】
プリンター1には、商用交流電源Pに接続されたACアダプター2が接続されている。ACアダプター2は、例えば交流100ボルトの商用交流電源Pを整流および電圧変換して、24ボルトの直流電力を電源装置3に供給する。このACアダプター2から供給される電力に基づいて、電源装置3は、記録部4の各部に電源を供給する。
電源装置3は、ACアダプター2から供給される24ボルトの直流電力を電圧変換し、例えば3.3ボルトの直流電力を生成して出力するDC/DCコンバーター31(電源供給手段)を備えている。このDC/DCコンバーター31が出力する3.3ボルトの直流電力は、主として制御基板に実装されたデバイスを動作させる電源となる。
【0019】
DC/DCコンバーター31の出力段にはFET(Field Effect Transistor)32を介して記録部4の各部が接続されており、このFET32を介して、CPU41、ROM42、RAM43、インターフェイス部46およびその他の各部に直流3.3ボルトの電源が供給される。より詳細には、DC/DCコンバーター31の出力段はFET32のソースに接続される一方、FET32のドレインに記録部4の各部が接続され、FET32のゲートに、しきい値より高いゲート電圧が印加されると記録部4の各部へ3.3ボルトの直流電力が供給される。なお、図1中にはFET32からCPU41への電源供給ラインを図示しているが、ROM42、RAM43、およびインターフェイス部46にもFET32から電源供給ライン(図示略)が接続されている。
【0020】
電源装置3は、FET32(給電切換手段)にゲート電圧を印加するラッチ回路33を備えている。ラッチ回路33は、CPU41から入力される制御電圧SOと同じ状態のゲート動作電圧VG(制御信号)をFET32のゲートに出力する。例えば、CPU41がラッチ回路33に出力する制御電圧SOがハイレベルの間は、ラッチ回路33はハイレベルのゲート動作電圧VGを出力する。このため、CPU41が制御電圧SOをハイレベルに保っている間はFET32がオンになって記録部4へ電源が供給される。また、CPU41が制御電圧SOをローレベルに切り換えると、これに連動してラッチ回路33が出力するゲート動作電圧VGがローレベルに切り換わるので、FET32がオフになり、DC/DCコンバーター31から記録部4への電源供給が停止する。
【0021】
また、ラッチ回路33(給電停止手段)には、DC/DCコンバーター31が生成した直流電力が供給されており、ラッチ回路33は、この直流電力により制御電圧SOをラッチする。すなわち、ラッチ回路33は、制御電圧SOがローレベルに切り換わると、このときの制御電圧SOをラッチして、その後に制御電圧SOがハイレベルに切り換わっても、ゲート動作電圧VGをローレベルに保つ。このため、いったんCPU41がローレベルの制御電圧SOを出力すると、ゲート動作電圧VGがローレベルに保たれるので、DC/DCコンバーター31から記録部4への電源供給が停止した状態が保持される。
【0022】
また、ラッチ回路33には制御電圧SOのラッチ状態をキャンセルさせるキャンセル信号SC(リセット信号)が、カバー開閉スイッチ51(復帰手段、開閉検出手段)およびパネルスイッチ52(復帰手段、操作スイッチ)から入力される。
カバー開閉スイッチ51は、例えばカバーの開閉に連動する機械的機構を備えたメカニカルスイッチで構成され、カバーが閉じた状態ではオフであり、カバーが開いた状態でオンになる。パネルスイッチ52は、押下されている間だけオンになって導通するスイッチである。これらカバー開閉スイッチ51およびパネルスイッチ52にはDC/DCコンバーター31が生成した直流電圧が印加されており、これらのスイッチがオフの間は、DC/DCコンバーター31からの印加電圧がキャンセル信号SCとしてラッチ回路33に出力される。そして、これらのスイッチは、オンになった場合にスイッチ内部で出力ラインがアースに導通して出力電圧が低下する構成を具備している。このため、カバーが開かれ、或いはパネルスイッチ52が押圧されると、ラッチ回路33に入力されるキャンセル信号SCの電圧が低くなる。ラッチ回路33は、キャンセル信号SCの電圧がしきい値より低くなると、制御電圧SOのラッチを解除して、ゲート動作電圧VGをハイレベルに切り換える。このように、DC/DCコンバーター31から記録部4への電源供給が停止した状態で、カバーが開いてカバー開閉スイッチ51がオンになり、或いは、パネルスイッチ52が押圧されると、DC/DCコンバーター31から記録部4への電源供給が再開される。
【0023】
電源装置3は、ACアダプター2からDC/DCコンバーター31に供給される24ボルトの直流電力を、駆動部40に供給する駆動電源供給部34(駆動電源供給手段)を備えている。なお、駆動電源供給部34から駆動部40の各部には電源供給ラインが接続されているが、ここでは図示を省略する。
駆動部40に含まれる搬送モーター44や記録ヘッド45等の装置は、基板上に実装されるデバイスに比べて高電圧の電力を必要とするので、これらの各部にはACアダプター2が出力する電力が供給される。駆動電源供給部34は、CPU41の制御に従って、ACアダプター2から駆動部40への電源供給をオン/オフする。搬送モーター44や記録ヘッド45は消費電力量が大きいため、動作していない間の待機時消費電力も大きく、これら各部への電源供給をオフにすれば待機時消費電力を抑制できる。
【0024】
また、プリンター1は、ACアダプター2から電源装置3への電源供給ライン上に、オペレーターにより手動で操作される電源スイッチ35を備えている。電源スイッチ35は、接点の導通状態と開放状態とを切り換える機械的機構を有するメカニカルスイッチであり、具体的には、トグルスイッチ、スライドスイッチ、レバースイッチ、ロッカースイッチ、ロータリースイッチ等である。
【0025】
以上のように構成されるプリンター1は、電源供給状態を、次の4段階に切り換えることができる。
(1)プリンター1のCPU41、ROM42、RAM43、インターフェイス部46および駆動部40の各部に電源が供給されている通常動作状態。
(2)通常動作状態において、駆動部40への電源供給を停止したスリープ状態。
(3)スリープ状態において、プリンター1のCPU41、ROM42、RAM43およびインターフェイス部46への電源供給を停止した深省電力状態。
(4)ACアダプター2から電源装置3への電源供給が停止した停止状態。
【0026】
通常動作状態(1)では、FET32、駆動電源供給部34および電源スイッチ35の全てがオン(電力供給状態)となっている。スリープ状態(2)では、FET32および電源スイッチ35がオンになっていて、CPU41による制御や、インターフェイス部46を介したホストコンピューター100との通信が可能である。一方、駆動電源供給部34がオフになっており、駆動部40の各部には電源が供給されておらず、待機時消費電力が抑えられている。
深省電力状態(3)では、駆動電源供給部34がオフ、FET32もオフになっていて、CPU41、ROM42、RAM43およびインターフェイス部46も停止している。このためCPU41による制御が行えない。深省電力状態(3)では、プリンター1においてDC/DCコンバーター31とラッチ回路33のみが電力を消費している。なお、カバー開閉スイッチ51およびパネルスイッチ52には直流電圧が印加されているが、これらのスイッチにおける消費電力はほぼ無視できる。従って、深省電力状態(3)における消費電力はスリープ状態(2)より低く、ほぼ停止状態(4)に近い。プリンター1は、メカニカルスイッチである電源スイッチ35をオフにすることなく、停止状態(4)のように極めて消費電力量の少ない深省電力状態(3)に移行できる。
【0027】
プリンター1の電源供給状態の移行は、例えば次のように行われる。
CPU41は、通常動作状態でホストコンピューター100からの印刷ジョブの受信を待機し、印刷ジョブを受信しない時間を内蔵するタイマーによってカウントする。このカウント値が所定の値に達すると、CPU41は駆動電源供給部34をオフにして、スリープ状態(2)に移行する。このスリープ状態(2)で印刷ジョブの受信、あるいは操作パネルのパネルスイッチ52の操作を検出すると、CPU41は駆動電源供給部34をオンにして駆動部40への電源供給を開始させ、通常動作状態に復帰する。
また、CPU41はスリープ状態(2)に移行してからの時間をカウントし、カウント値が、予め移行条件として設定された値に達すると、深省電力状態(3)に移行する。
その後、深省電力状態(3)でカバーを開く操作またパネルスイッチ52の操作が行われると、FET32がオンになり、プリンター1は通常動作状態に復帰する。
【0028】
深省電力状態(3)への移行および通常動作状態(1)への復帰に関するプリンター1の動作について、タイミングチャートを参照してより詳細に説明する。
図2は、プリンター1の各部が入出力する信号のタイミングチャートである。図2中、(a)はACアダプター2からDC/DCコンバーター31に供給される直流電圧の電圧VCCを示し、(b)はDC/DCコンバーター31がFET32に出力する電圧VDDを示し、(c)はFET32が記録部4に供給する電圧VDDAを示す。また、図中(d)はラッチ回路33がFET32のゲートに印加するゲート動作電圧VGを示し、(e)はCPU41がラッチ回路33に出力する制御電圧SOを示し、(f)はカバー開閉スイッチ51およびパネルスイッチ52からラッチ回路33に入力されるキャンセル信号SCを示す。
【0029】
電源スイッチ35の操作によりプリンター1の電源が投入されると(時刻t1)、DC/DCコンバーター31に電圧VCCが供給され、DC/DCコンバーター31の出力電圧VDDが立ち上がる。また、電圧VDDがカバー開閉スイッチ51及びパネルスイッチ52に供給されることから、キャンセル信号SCの電圧も立ち上がる。電圧VDDの立ち上がりに伴ってラッチ回路33に電源が供給され、電源投入から少し遅れて(時刻t2)、ラッチ回路33からゲート動作電圧VGの出力が開始される。そして、ゲート動作電圧VGの印加によりFET32がオンになって、FET32の出力電圧VDDAが立ち上がって記録部4の各部への電源供給が開始され、CPU41は制御電圧SOの出力を開始し、プリンター1は通常動作状態に移行する。
【0030】
その後、CPU41の制御により駆動電源供給部34から駆動部40への電源供給が停止してスリープ状態に移行し、さらに時間が経過すると、CPU41は、深省電力状態に移行するため、制御電圧SOをローレベルに切り換える(時刻t3)。これに伴いラッチ回路33が出力するゲート動作電圧VGがローレベルに立ち下がり、FET32がオフになってVDDAの出力が停止し、CPU41への電源供給が停止する。この後、CPU41は動作を停止するので制御電圧SOの出力は不定となるが、ラッチ回路33はローレベルの制御電圧SOをラッチし、ゲート動作電圧VGはローレベルに保たれる。
【0031】
そして、パネルスイッチ52の操作によってパネルスイッチ52がオンになり、あるいは、プリンター1のカバー(図示略)が開かれてカバー開閉スイッチ51がオンになると、キャンセル信号SCが低下する(時刻t4)。これによりラッチ回路33のラッチがキャンセルされ、ゲート動作電圧VGがハイレベルに切り換わり、少し遅れてFET32の出力電圧VDDAが立ち上がる。これによりCPU41から制御電圧SOの出力が再開されて、FET32から継続してプリンター1の記録部4への電源供給が行われ、プリンター1は通常動作状態に復帰する。
【0032】
このプリンター1において、図1に示したように、インターフェイス部46(復帰手段、信号検出手段)がホストコンピューター100からのコマンドを受信した場合に制御電圧SOをラッチ回路33に出力する構成としてもよい。この場合、インターフェイス部46は、深省電力状態においてもDC/DCコンバーター31から電源の供給を受ける。このようにすれば、プリンター1の深省電力状態において、カバーが開かれたことをカバー開閉スイッチ51が検出した場合、パネルスイッチ52が操作された場合、或いは、ホストコンピューター100から送信されたコマンドをインターフェイス部46が検出した場合のいずれかの事象を契機として、深省電力状態から通常動作状態に復帰できる。
【0033】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態に係るプリンター1は、記録媒体としてのロール紙に記録を行うプリンター1であって、プリンター1の動作を制御するCPU41と、CPU41を含む各部(CPU41、ROM42、RAM43、インターフェイス部46)に電源を供給するDC/DCコンバーター31と、DC/DCコンバーター31から各部への電源の供給と停止を切り換えるスイッチとして機能するFET32と、CPU41の制御により、FET32のゲートに印加するゲート動作電圧VGを変化させて、FET32から各部への電源供給を停止させて低消費電力状態に移行するラッチ回路33と、ラッチ回路33にキャンセル信号SCを出力することでゲート動作電圧VGの出力をリセットさせ、DC/DCコンバーター31から各部への電源供給を開始させて低消費電力状態から復帰する手段とを備えている。具体的には、カバーが開かれたことを検出するカバー開閉スイッチ51、オペレーターによる操作を検出するパネルスイッチ52、および、ホストコンピューター100から送信されるコマンドを検出するインターフェイス部46が、検出時にキャンセル信号SCをラッチ回路33に出力して、ラッチ回路33のラッチをキャンセルさせる。これにより、CPU41の制御によって、CPU41を含む各部への電源供給を停止する深省電力状態に移行し、プリンター1の外部からカバーを開いたりパネルスイッチ52を操作することで指示をすると、深省電力状態から復帰する。深省電力状態ではCPU41をも停止させるため、モーター等への電力供給を停止する従来のスリープ状態よりもさらに消費電力量が小さく、ほぼ電源オフに近いほど低消費電力であり、しかも、プリンター1の外部からの指示により容易に通常動作状態に復帰できる。これにより、電源がオフの状態とは異なる低消費電力状態に移行可能で、この低消費電力状態における消費電力量をより低く抑えることが可能なプリンター1を提供できる。
【0034】
また、DC/DCコンバーター31からCPU41等の各部への電源供給を停止するスイッチとしてFET32を用い、このFET32に対してラッチ回路33から出力するゲート動作電圧VGを切り換えることで、FET32の導通状態を変化させる構成としたので、CPU41の電源供給を停止する深省電力状態への移行、および、深省電力状態からの速やかな復帰が可能なプリンター1を、簡単な回路構成を用いて容易に実現できる。
【0035】
また、搬送モーター44および記録ヘッド45を含む駆動部40と、CPU41の制御に従って、DC/DCコンバーター31からCPU41を含む各部への電源供給を保ったまま、駆動部40に対する電源供給を停止させる駆動電源供給部34を備え、CPU41への電源供給を保ったまま搬送モーターや記録ヘッドへの電源供給を停止するスリープ状態に移行できる。このため、電源オフとは異なり消費電力量を抑えた2通りの状態に移行可能となるので、より細かく消費電力の制御を行える。
【0036】
また、プリンター1は、プリンター1の外部の電源からDC/DCコンバーター31へ電源を供給する電源供給ラインを、機械的機構により接離するメカニカルスイッチで構成される電源スイッチ35を備え、この電源スイッチ35による電源断をしなくても、CPU41を含めた各部への電力供給を停止して、ほぼ電源オフに近いほど消費電力量を抑えることができる。電源スイッチ35はCPU41によってソフトウェア的にオンオフできないため、電源スイッチ35を備えたプリンター1は消費電力量の抑制に限度があるが、上記の低消費電力状態に移行することで、CPU41の制御によって、速やかにかつ大幅に消費電力量を低下させることができる。
【0037】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、カバー開閉スイッチ51、パネルスイッチ52およびインターフェイス部46からラッチ回路33へキャンセル信号SCが入力される構成を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、プリンター1が、オペレーターの操作や他の外部装置からの指示を受け付けるインターフェイスを備えて構成される場合は、このインターフェイスからキャンセル信号SCがラッチ回路33に入力される構成としても良い。また、上記実施形態では、感熱ロール紙に記録ヘッド45によって熱を与えて記録を行うサーマルプリンターを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、熱昇華型プリンター、インクジェット式プリンター、ドットインパクトプリンターに本発明を適用してもよい。この場合、印刷ヘッドをキャリッジに搭載し、このキャリッジを記録媒体の搬送方向に直交して走査させる構成としてもよく、この場合のキャリッジ駆動モーターは上記の駆動部40に含まれる。また、記録媒体としては普通紙をロール状に巻き回したロール紙や、各種定型サイズのカット紙、連続した紙を折り畳んだファンフォールド紙を使用することができ、本体内部に記録媒体を収容する構成であれば、この記録媒体の収容部のカバーの開閉をカバー開閉スイッチ51により検出すればよい。また、本体内部に記録媒体を収容しない構成とした場合は、駆動部40の各部を含む記録機構を覆うカバーの開閉をカバー開閉スイッチ51により検出してもよい。さらに、本発明は、他の装置に組み込まれる各種プリンターにも適用可能である。また、上述の動作を行うCPU41が実行するプログラムは、プリンター1が備えるROM42に限らず、他の記憶装置、記憶媒体や外部装置の記憶媒体に記憶させ、CPU41により読み出して実行する構成としても良い。
【符号の説明】
【0038】
1…プリンター(記録装置)、2…ACアダプター、3…電源装置、4…記録部、31…DCコンバーター(電源供給手段)、32…FET(給電切換手段)、33…ラッチ回路(給電停止手段)、34…駆動電源供給部(駆動電源供給手段)、35…電源スイッチ、40…駆動部、41…CPU(制御手段)、44…搬送モーター、45…記録ヘッド、46…インターフェイス部(復帰手段、信号検出手段)、51…カバー開閉スイッチ(復帰手段、開閉検出手段)、52…パネルスイッチ(復帰手段、操作スイッチ)、100…ホストコンピューター(他の装置)、VG…ゲート動作電圧(制御信号)、SC…キャンセル信号(リセット信号)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録を行う記録装置であって、
制御手段と、
前記制御手段を含む各部に電源を供給する電源供給手段と、
前記電源供給手段から前記制御手段を含む各部への電源の供給と停止を切り換える給電切換手段と、
前記制御手段の制御により、前記給電切換手段に制御信号を出力して前記制御手段を含む各部への電源供給を停止させ、低消費電力状態に移行する給電停止手段と、
前記記録装置の外部からの指示を検出した場合に、前記給電停止手段の制御信号の出力をリセットさせて前記電源供給手段からの電源供給を開始させ、低消費電力状態から復帰する復帰手段と、
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記給電切換手段は、前記給電停止手段から入力される制御信号が所定の状態である間に前記電源供給手段から前記制御手段を含む各部への電源供給を停止させるスイッチで構成され、
前記給電停止手段は、前記制御手段の制御に従って前記制御信号を所定の状態に保持し、前記復帰手段によりリセットされると前記制御信号を初期状態に切り換えることを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記記録媒体を搬送するための駆動源となる搬送モーター、および前記記録媒体に記録を行う記録ヘッドを含む駆動部と、前記制御手段の制御に従って、前記電源供給手段から前記制御手段を含む各部への電源供給を保ったまま、前記駆動部に対する電源供給を停止させる駆動電源供給手段とを備えることを特徴とする請求項1または2記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録装置の外部の電源から前記電源供給手段へ電源を供給する電源供給ラインを、機械的機構により接離するメカニカルスイッチを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記復帰手段は、前記記録装置が備える前記記録媒体または前記記録機構を覆うカバーの開閉を検出する開閉検出手段、或いは、前記記録装置の外部から入力操作を検出する操作スイッチにより構成され、検出時に前記給電停止手段にリセット信号を出力することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
前記復帰手段は、前記記録装置に外部接続された他の装置から送信された信号を検出する信号検出手段により構成され、検出時に前記給電停止手段にリセット信号を出力することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
記録媒体に記録を行う記録装置が備える電源装置であって、
前記記録装置が備える制御手段を含む各部に電源を供給する電源供給手段と、
前記電源供給手段から前記制御手段を含む各部への電源の供給と停止を切り換える給電切換手段と、
前記制御手段の制御により、前記給電切換手段に制御信号を出力して前記制御手段を含む各部への電源供給を停止させ、低消費電力状態に移行する給電停止手段と、を備え、
前記給電停止手段は、前記記録装置の外部からの指示を検出した場合にリセット信号を出力する復帰手段に接続され、前記復帰手段から前記リセット信号が入力された場合に制御信号の出力をリセットして前記電源供給手段からの電源供給を開始させ、低消費電力状態から復帰すること、
を特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−115995(P2012−115995A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264932(P2010−264932)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】