説明

記録装置、および、電源装置

【課題】安定した電力供給を可能とし、かつ、電源投入時の突入電流を抑えることが可能な記録装置、および、電源装置を提供する。
【解決手段】印刷機構部4を備えたプリンター1に、ACアダプター2に基づき電源を供給する電源装置3は、印刷機構部4への電源供給ライン上に設けられ、印刷機構部4への出力電流の変動を補償するコンデンサーC2と、ACアダプター2からコンデンサーC2に流れる電流の供給/遮断を切り換えるスイッチSW1と、スイッチSW1の切換によりコンデンサーへ流れる電流を遅延させる突入電流抑制回路32Aと、を備え、突入電流抑制回路32Aは、コンデンサーC2への電流の供給/遮断を切り換えるFET36に、スイッチSW1の切換により充電開始されるコンデンサーC1を接続して、コンデンサーC1の充電が進むとスイッチング素子がオンに切り替わるよう構成され、スイッチSW1が遮断状態に切り替わるとコンデンサーC1を放電させる放電回路32Bを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録を行う記録装置、および、記録装置に電源を供給する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に記録を行うプリンター等の記録装置は、記録動作中における消費電力の増減が大きいため、電力不足による記録品質への影響が懸念された。そこで、記録装置の電源に、一時的な電圧低下を補償する補償回路を備えた構成が提案された(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1記載の補償回路はコンデンサーを備え、電圧が低下した場合にコンデンサーに蓄積した電力を供給することで安定した電力供給を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−64207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1記載の電源のようにコンデンサーを用いた構成では、電源投入時に大きな突入電流がコンデンサーに流れることがあり、突入電流を抑制する手段が望まれていた。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、安定した電力供給を可能とし、かつ、電源投入時の突入電流を抑えることが可能な記録装置、および、電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、記録媒体に記録を行う記録部と、外部電源に基づき前記記録部に電源を供給する電源装置とを備えた記録装置であって、前記電源装置は、前記記録部への電源供給ライン上に設けられ、前記記録部への出力電流の変動を補償する安定化コンデンサーと、前記外部電源から前記安定化コンデンサーに流れる電流の供給/遮断を切り換える電源スイッチと、前記電源スイッチの切換により前記コンデンサーへ流れる電流を遅延させる突入電流抑制回路と、を備え、前記突入電流抑制回路は、前記安定化コンデンサーに流れる電流の供給/遮断を切り換えるスイッチング素子に、前記電源スイッチの切換により充電開始される遅延用コンデンサーを接続して、前記遅延用コンデンサーの充電が進むと前記スイッチング素子がオンに切り替わるよう構成され、前記電源スイッチが遮断状態に切り替わると前記遅延用コンデンサーを放電させる放電回路を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、記録部に供給される電流の変動が補償されることにより記録品質の向上を図ることができ、かつ、電源スイッチのオン時に安定化コンデンサーに流れる電流を突入電流遅延回路により遅延させることによって突入電流を抑制することができる。そして、突入電流遅延回路が備える遅延用コンデンサーを放電させる放電回路を備えるため、遅延用コンデンサーの放電不足を解消できる。これにより、電源スイッチが短時間で再投入されても、安定化コンデンサーへの充電開始のタイミングを確実に遅延させることができ、突入電流を抑制できる。従って、電源装置に接続された外部電源等の各機器を突入電流から保護できる。
【0006】
また、本発明は、上記の記録装置において、前記突入電流抑制回路は前記スイッチング素子としてのFETを有し、前記FETのゲート−ソース間に、前記外部電源からの入力電圧が分圧されて印加されるとともに前記遅延用コンデンサーが接続され、前記遅延用コンデンサーが前記放電回路を介して放電する際に、前記遅延用コンデンサーの一端を接地極に短絡するバイパス回路を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、突入電流遅延回路は、電源スイッチがオフからオンに切り換えられてから遅延用コンデンサーを充電させることでFETがオンになるタイミングを遅延させ、突入電流を抑制するため、単純な構成により確実に突入電流を抑制できる。この構成において、電源スイッチがオフにされると遅延用コンデンサーに充電された電荷がバイパス回路により速やかに放電されるので、電源スイッチが短時間で再投入されても突入電流を抑制できる。
【0007】
また、本発明は、上記の記録装置において、前記記録部がサーマルヘッドにより前記記録媒体としての感熱記録シートに記録を行うサーマルプリンターで構成されることを特徴とする。
本発明によれば、不規則かつ予測困難なタイミングで消費電力が大きく変動するサーマルヘッドを備えたサーマルプリンターにおいて、電力変動に伴う電力不足を防止することにより、サーマルヘッドへの電力供給を安定させ、記録品質の低下を防止できる。そして、このような大電流を必要とするサーマルプリンターに電力を供給する電源装置が、突入電流を確実に防止できる。
【0008】
また、本発明は、上記の記録装置において、前記電源スイッチは、1回路2接点からなる単極双投(SPDT)スイッチで構成され、入力側の2つの接点には、前記外部電源の出力ラインと、前記放電回路とがそれぞれ接続されたことを特徴とする。
本発明によれば、電源スイッチをオフに切り換えることで、遅延用コンデンサーが自動的に放電回路に接続され、放電されるので、放電不足を招くことがなく、突入電流を確実に抑制できる。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明は、記録媒体に記録を行う記録部を備えた記録装置に、外部電源に基づき電源を供給する電源装置であって、前記記録部への電源供給ライン上に設けられ、前記記録部への出力電流の変動を補償する安定化コンデンサーと、前記外部電源から前記安定化コンデンサーに流れる電流の供給/遮断を切り換える電源スイッチと、前記電源スイッチの切換により前記コンデンサーへ流れる電流を遅延させる突入電流抑制回路と、を備え、前記突入電流抑制回路は、前記安定化コンデンサーに流れる電流の供給/遮断を切り換えるスイッチング素子に、前記電源スイッチの切換により充電開始される遅延用コンデンサーを接続して、前記遅延用コンデンサーの充電が進むと前記スイッチング素子がオンに切り替わるよう構成され、前記電源スイッチが遮断状態に切り替わると前記遅延用コンデンサーを放電させる放電回路を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、記録部に供給される電流の変動が補償されることにより記録品質の向上を図ることができ、かつ、電源スイッチのオン時に安定化コンデンサーに流れる電流を突入電流遅延回路により遅延させることによって突入電流を抑制することができる。そして、突入電流遅延回路が備える遅延用コンデンサーを放電させる放電回路を備えるため、遅延用コンデンサーの放電不足を解消できる。これにより、電源スイッチが短時間で再投入されても、安定化コンデンサーへの充電開始のタイミングを確実に遅延させることができ、突入電流を抑制できる。従って、電源装置に接続された外部電源等の各機器を突入電流から保護できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録部に供給される電流の変動を補償して記録品質の向上を図ることができ、かつ、突入電流を確実に抑制し、電源装置に接続された外部電源等の各機器を突入電流から保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンターの構成を示すブロック図である。
【図2】プリンターの入力回路部の構成を示す回路図である。
【図3】プリンターの入力回路部の別の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係るプリンター1のブロック図である。
プリンター1は、記録媒体に文字や画像等を記録(印刷)する記録装置である。本実施形態では、プリンター1が、本体ケース(図示略)内に収容した感熱ロール紙(図示略)に対し、ラインサーマルヘッドによって熱を与え、文字や画像等を印刷するラインサーマルプリンターである場合を例に挙げて説明する。
【0013】
プリンター1は、電源装置3と、電源装置3から電源の供給を受けて動作し、ロール紙への記録を行う印刷機構部4(記録部)とを備える。
印刷機構部4は、制御プログラムを実行してプリンター1の各部を制御するCPU41(制御手段)、CPU41が実行する制御プログラムや設定値等のデータを記憶するROM42、CPU41が実行する制御プログラムや処理対象のデータを展開するワークエリアを形成するRAM43、および、プリンター1の外部のホストコンピューター100(他の装置)に接続されるインターフェイス(I/F)部46を備えている。また、印刷機構部4は、CPU41を含む制御系により制御される駆動部40として、CPU41の制御に従ってロール紙を搬送する搬送モーター44、および、搬送モーター44により搬送されるロール紙に有色のドットを形成して文字や画像を記録する記録ヘッド45を備えている。印刷機構部4が備える各部はバス47を介して相互に接続されている。
CPU41は、ROM42に記憶された制御プログラムおよびデータを読み出して、RAM43のワークエリアに展開して実行することにより、プリンター1の各部を制御する。また、CPU41は、インターフェイス部46を介してホストコンピューター100との間で各種データを送受信し、ホストコンピューター100から送信される印刷実行コマンドおよび印刷データに基づいて駆動部40の搬送モーター44および記録ヘッド45を制御し、印刷を実行する。
【0014】
搬送モーター44は、ロール紙に接する搬送ローラーに連結され、搬送モーター44の回転に伴って搬送ローラーが回転することにより、ロール紙が排出口に向けて搬送される。印刷機構部4は、記録ヘッド45による印刷後のロール紙を排出口付近で切断するカッターユニット(図示略)と、このカッターユニットを動作させるカッター駆動モーターを備えていてもよい。この場合、カッター駆動モーターはCPU41の制御によって所定のタイミングでカッターユニットの刃を移動させ、ロール紙をカットする。このカッター駆動モーターを備えた構成においては、駆動部40にカッター駆動モーターが含まれる。
【0015】
プリンター1には、商用交流電源Pに接続されたACアダプター2(外部電源)が接続されている。ACアダプター2は、例えば交流100ボルトの商用交流電源Pを整流および電圧変換して、24ボルトの直流電力を電源装置3に供給する。このACアダプター2から供給される電力に基づいて、電源装置3は、印刷機構部4の各部に電源を供給する。
電源装置3は、ACアダプター2から供給される24ボルトの直流電力を電圧変換し、例えば3.3ボルトの直流電力を生成して出力するDC/DCコンバーター31(電源供給手段)を備えている。このDC/DCコンバーター31が出力する3.3ボルトの直流電力は、主として制御基板に実装されたデバイスを動作させる電源となる。また、DC/DCコンバーター31は、ACアダプター2から供給される直流24ボルトの電流を駆動部40の各部に供給する。駆動部40を構成する搬送モーター44及び記録ヘッド45等の装置は、CPU41等の制御系の各部に比べて大きな電力を要するため、より高電圧の電流により駆動される。
【0016】
電源装置3は、DC/DCコンバーター31の入力段に接続された入力回路部32を備えている。入力回路部32は、ACアダプター2から供給される電力の電圧変動を補償してDC/DCコンバーター31に安定した電流を供給するとともに、プリンター1の電源投入時における突入電流を抑制する機能を有する。
【0017】
図2は、入力回路部32の構成例を示す回路図である。
入力回路部32は、コネクター33を介してACアダプター2に接続される。コネクター33は図中に番号を示したように2接点のコネクターであり、このコネクター33にはプリンター1の電源スイッチとして機能するスイッチSW1が接続されている。スイッチSW1は、1回路2接点からなる単極双投(SPDT:Single Pole Double Throw)スイッチであり、一方の接点はコネクター33につながる直流24ボルトの供給ラインに接続され、他方の接点は抵抗R11を介して接地される。
【0018】
スイッチSW1の出力端には、突入電流抑制回路32Aを介してコンデンサーC2が接続されている。コンデンサーC2は、負荷としてのDC/DCコンバーター31(図1)に供給する電圧の変動を補償するための安定化コンデンサーとして機能し、例えば大容量の電解コンデンサーが用いられる。
突入電流抑制回路32Aは、スイッチング素子としてFET(Field Effect Transistor)36を備え、スイッチSW1がオフからオンに切り替わった際に、FET36をオンにするタイミングを遅延させて、ACアダプター2からコンデンサーC2への電源供給の開始タイミングを遅延させ、突入電流を抑制する。
【0019】
FET36のソースはスイッチSW1に接続され、ドレインはコンデンサーC2に接続され、ゲートは抵抗R1と抵抗R2の中間の接点に接続されている。抵抗R1、R2は直列に接続された一組の分圧抵抗であり、抵抗R2の一端はスイッチSW1に接続され、抵抗R1の一端は接地されている。この抵抗R1、R2により、FET36のゲートには、スイッチSW1の直流24ボルトの電圧を分圧した電圧が印加される。抵抗R1、R2の抵抗値は、FET36のゲート−ドレイン間に定格電圧が印加される値であればよいが、抵抗値が大きいことが好ましい。スイッチSW1がオンの状態で抵抗R1、R2を介して流れる電流が大きいと、プリンター1の待機時消費電力の増大が懸念されるためである。
【0020】
FET36のゲート−ソース間には、抵抗R2と並列に、コンデンサーC1が接続されている。コンデンサーC1は、スイッチSW1の電源投入からFET36のゲート−ドレイン間電圧が所定値以上となるまでのタイミングを遅延させる遅延用コンデンサーとして機能する。
すなわち、スイッチSW1がオフ(遮断状態)からオン(供給状態)に切り替わると、コンデンサーC1に充電が開始され、コンデンサーC1の充電が進むとFET36のゲート−ソース間電圧がしきい値を超え、FET36がオンとなる。これにより、コンデンサーC2への充電が開始され、充電が進むと入力回路部32からDC/DCコンバーター31へ電流が流れる。
【0021】
上述のように、プリンター1はサーマルヘッドである記録ヘッド45や搬送モーター44を含む駆動部40を備えた装置であるから、主にロール紙への記録時に電力を消費する。例えば記録ヘッド45は、感熱ロール紙の記録面に熱を与えるため、記録ヘッド45に付属するドライバー回路(図示略)から発熱素子(図示略)に随時給電して、適切な温度まで発熱させる。また、搬送モーター44は、記録ヘッド45による記録動作に合わせて速度を適宜変化させつつロール紙を搬送する。この記録動作中の電力消費は、記録する内容によって大きく変動し、その変動はホストコンピューター100から入力される印刷データの内容によって決まるため、不規則かつ予測困難である。例えばロール紙に形成する黒ドットの数が多いと記録ヘッド45の消費電力が増大し、余白が大きいと搬送モーター44の消費電力が増大し、このような消費電力量の変化はきわめて短時間で発生する。
【0022】
このように、DC/DCコンバーター31から印刷機構部4の各部に供給すべき電力は変動が大きいが、ACアダプター2やDC/DCコンバーター31の容量に十分な余裕がないと印刷機構部4に供給される電圧の変動を招く可能性がある。CPU41等の電源電圧が不足すると誤動作の可能性があり、駆動部40の電源電圧が不足すると、記録ヘッド45の発熱が不十分となってロール紙に形成されるドットの濃度が薄くなったり、ドット抜けが発生したりする。また、搬送モーター44の搬送速度が低下するとドットの濃度が濃くなることもあり得る。そこで、プリンター1は、入力回路部32にコンデンサーC2を備え、DC/DCコンバーター31に流れる電流が急増した場合にコンデンサーC2から給電することで、電源電圧の変動を防止している。
【0023】
このため、コンデンサーC2は上述したように大容量のコンデンサーとなっているので、プリンター1の電源スイッチであるスイッチSW1が投入されると、大きな電流がACアダプター2から入力回路部32に流れ、この突入電流によってACアダプター2や、プリンター1の内部の回路が影響を受ける可能性がある。
そこで、プリンター1は、突入電流抑制回路32Aの機能により、スイッチSW1が投入されてからコンデンサーC2が充電開始されるまでのタイミングを遅延させ、突入電流を抑制している。
【0024】
突入電流抑制回路32Aがタイミングを遅延させる効果はコンデンサーC1の容量により決まるので、コンデンサーC1の容量は適宜決定されている。しかしながら、コンデンサーC1がすでに充電された状態では、遅延の効果が発揮されない。突入電流抑制回路32Aは、放電回路32Bにより、コンデンサーC1を放電させる。
放電回路32Bは、抵抗R1をバイパスしてコンデンサーC1の一端を接地させるダイオードD1(バイパス回路)と、スイッチSW1の一接点に接続された抵抗R11とで構成される。ダイオードD1のアノードは接地され、カソードFET36のゲートに接続されており、スイッチSW1がオンの状態ではダイオードD1に電流が流れない。スイッチSW1がオフに切り換わると、ダイオードD1、コンデンサーC1、及び抵抗R11が直列に接続されるので、コンデンサーC1に充電されていた電荷は速やかに放電される。
【0025】
上述のように、抵抗R1の抵抗値が大きいほどプリンター1の消費電力量が抑制されるが、抵抗R1の抵抗値が大きいと、コンデンサーC1からの放電に時間がかかってしまう。本実施形態ではコンデンサーC1の電荷を抵抗R11により放電する構成とし、この方向にのみ抵抗R1をバイパスするダイオードD1を備えたので、スイッチSW1をオフにするだけで速やかにコンデンサーC1を放電できる。
また、図2に示すように入力回路部32において、スイッチSW1を交換することにより、放電回路32Bを有する構成と、放電回路32Bを持たない構成のどちらも実現可能とする方法がある。
【0026】
図3は、入力回路部の別の構成例として、入力回路部32に代えて使用される入力回路部35の構成を示す回路図である。
この入力回路部35は、図2に示した入力回路部32と同様に、2接点のコネクター33を介してACアダプター2に接続され、安定化コンデンサーとして機能するコンデンサーC2を有し、さらに突入電流を抑制する突入電流抑制回路32Aを備えている。入力回路部35は、入力回路部32が有するスイッチSW1に代えて、コネクター34Aを備えている。コネクター34Aは、コネクター33に繋がる直流24ボルトの電力供給ライン、FET36のソース、及び抵抗R11に接続された3接点のコネクターである。このコネクター34Aには、スイッチ回路37と、スイッチ回路38とが交換可能に接続される。
【0027】
スイッチ回路37は、コネクター34Aに接続される3端子のコネクター34Bと、コネクター34Bに接続されたスイッチSW2とを備えている。スイッチSW2は、コネクター34Bの端子のうち、FET36のソースに接続される端子を、直流24ボルトの電力供給ラインと、抵抗R11とのいずれかに接続する単極双投スイッチであり、プリンター1の電源スイッチとして機能する。スイッチ回路37をコネクター34Aに接続した場合、入力回路部35は入力回路部32と等価な回路となり、同様の作用効果が得られる。
【0028】
スイッチ回路38は、コネクター34Aに接続される3端子のコネクター34Cと、コネクター34Cに接続されたスイッチSW3とを備えている。コネクター34Cが有する3つの端子のうち1つはFET36のゲートに接続され、1つは直流24ボルトの電力供給ラインに接続される。残りの1つの端子は空きとなっていて、抵抗R11には接続されない。スイッチSW3は、FET36のソースと直流24ボルトの電力供給ラインとを接離する単極単投スイッチであり、プリンター1の電源スイッチとして機能する。このスイッチ回路38をコネクター34Aに接続した場合、入力回路部35は、放電回路32Bを持たない構成となる。
つまり、スイッチ回路38と組み合わされた入力回路部35は、コンデンサーC1を放電させる抵抗R11及び放電回路32Bを持たない従来型の回路であり、コンデンサーC1を放電回路32Bにより放電させなくても問題がない場合等に用いられる。この構成においても突入電流抑制回路32Aによる遅延が機能することで、コンデンサーC2への突入電流を抑制できるという効果が得られる。そして、この従来型の回路に放電回路32Bを持たせたい場合は、コネクター34Aと抵抗R11を配し、コネクター34Aにスイッチ回路37を接続する簡単な改造を施すことにより、図2の入力回路部32と同様の回路を構成できる。
【0029】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態に係るプリンター1は、記録媒体としてのロール紙に記録を行う印刷機構部4と、ACアダプター2に基づき印刷機構部4に電源を供給する電源装置3とを備え、電源装置3は、印刷機構部4への電源供給ライン上に設けられ、印刷機構部4への出力電流の変動を補償するコンデンサーC2と、ACアダプター2からコンデンサーC2に流れる電流の供給/遮断を切り換えるスイッチSW1と、スイッチSW1の切換によりコンデンサーへ流れる電流を遅延させる突入電流抑制回路32Aと、を備え、突入電流抑制回路32Aは、コンデンサーC2に流れる電流の供給/遮断を切り換えるFET36に、スイッチSW1の切換により充電開始されるコンデンサーC1を接続して、コンデンサーC1の充電が進むとFET36がオンに切り替わるよう構成され、スイッチSW1が遮断状態に切り替わるとコンデンサーC1を放電させる放電回路32Bを備えている。このプリンター1によれば、印刷機構部4に供給される電流の変動が補償されることにより記録品質の向上を図ることができ、かつ、スイッチSW1のオン時にコンデンサーC2に流れる電流を突入電流遅延回路により遅延させることによって突入電流を抑制することができる。そして、突入電流遅延回路が備えるコンデンサーC1を放電させる放電回路32Bを備えるため、コンデンサーC1の放電不足を解消できる。これにより、スイッチSW1が短時間で再投入されても、コンデンサーC2への充電開始のタイミングを確実に遅延させることができ、突入電流を抑制できる。従って、電源装置3に接続されたACアダプター2等の各機器を突入電流から保護できる。
【0030】
また、突入電流抑制回路32Aはスイッチング素子としてのFET36を有し、FET36のゲート−ソース間に、ACアダプター2からの入力電圧が分圧抵抗R1、R2により分圧されて印加されるとともにコンデンサーC1が接続され、コンデンサーC1が放電回路32Bを介して放電する際に、コンデンサーC1の一端を接地極に短絡するダイオードD1を備えているので、突入電流抑制回路32Aが、スイッチSW1がオフからオンに切り換えられてからコンデンサーC1を充電させることでFET36がオンになるタイミングを遅延させ、突入電流を抑制する。これにより、単純な構成により確実に突入電流を抑制できる。また、この構成において、スイッチSW1がオフにされるとコンデンサーC1に充電された電荷がダイオードD1により速やかに放電されるので、スイッチSW1が短時間で再投入されても突入電流を抑制できる。
【0031】
また、印刷機構部4は、サーマルヘッドにより記録媒体としての感熱記録シートに記録を行うサーマルプリンターで構成される。すなわち、不規則かつ予測困難なタイミングで消費電力が大きく変動するサーマルヘッドを備えたサーマルプリンターにおいて、電力変動に伴う電力不足を防止することにより、サーマルヘッドへの電力供給を安定させ、記録品質の低下を防止できる。そして、このような大電流を必要とするサーマルプリンターに電力を供給する電源装置3が、突入電流を確実に防止できる。
プリンター1が、ドットインパクトプリンターである場合も同様である。すなわち、記録ヘッド45が記録ワイヤー、複数の記録ワイヤーを随時突出させるソレノイド及び突出機構を備え、記録ヘッド45がキャリッジに搭載され、キャリッジを記録媒体の幅方向に走査するキャリッジ駆動モーターを備えた構成では、記録ヘッド45のソレノイドと、キャリッジ駆動モーターと、搬送モーターとはいずれも高速で駆動され、その消費電力量は不規則に変動する。この構成において電源電圧の変動が起きると記録ワイヤーの突出力が不安定となって、記録媒体にインクにより形成されるドットの濃度やサイズのばらつきを生み、記録品質の低下の要因となる。このドットインパクトプリンターの電源装置として電源装置3を用い、コンデンサーC2によって記録ヘッド45のソレノイド、キャリッジ駆動モーター、及び搬送モーターの消費電力量の変動に対応すれば、記録品質の向上と安定した動作を実現できる。また、大容量のコンデンサーC2を用いることにより発生する突入電流を突入電流抑制回路32Aによって抑制することで、上述したプリンター1と同様の効果が得られる。
そして、電源スイッチとして機能するスイッチSW1は、1回路2接点からなる単極双投スイッチで構成され、入力側の2つの接点には、ACアダプター2の出力ラインと、放電回路32Bとがそれぞれ接続されている。このため、スイッチSW1をオフに切り換えることで、コンデンサーC1が自動的に放電回路32Bに接続され、放電されるので、放電不足を招くことがなく、突入電流を確実に抑制できる。
【0032】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、プリンター1の外部電源としてのACアダプター2から電源装置3へ直流電源を供給する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、商用交流電源Pを整流して電圧変換するAC/DCコンバーターを電源装置3が備える構成としてもよい。この場合、商用交流電源PとAC/DCコンバーターとの間に電源スイッチを設けてもよい。また、入力回路部32をDC/DCコンバーター31の一部として構成することも可能であるし、入力回路部32から直接、駆動部40の各部へ電力を供給する構成としてもよい。さらに、図2及び図3に示した回路図はあくまで一例であって、等価な回路で一部または全部を置換することも勿論可能であるし、例えばスイッチング素子としてFET以外の素子を用いてもよい。その他、本実施形態の細部構成についても任意に変更可能である。
また、記録媒体としては普通紙をロール状に巻き回したロール紙や、各種定型サイズのカット紙、連続した紙を折り畳んだファンフォールド紙を使用することができる。さらに、本発明は、他の装置に組み込まれる各種プリンターにも適用可能である。また、上述の動作を行うCPU41が実行するプログラムは、プリンター1が備えるROM42に限らず、他の記憶装置、記憶媒体や外部装置の記憶媒体に記憶させ、CPU41により読み出して実行する構成としても良い。
【符号の説明】
【0033】
1…プリンター(記録装置)、2…ACアダプター(外部電源)、3…電源装置、4…印刷機構部(記録部)、31…DC/DCコンバーター、32、35…入力回路部、32A…突入電流抑制回路、32B…放電回路、36…FET(スイッチング素子)、33…コネクター、34A、34B、34C…コネクター、40…駆動部、41…CPU(制御手段)、44…搬送モーター、45…記録ヘッド、100…ホストコンピューター、C1…コンデンサー(遅延用コンデンサー)、C2…コンデンサー(安定化コンデンサー)、D1…ダイオード(バイパス回路)、R1、R2、R11…抵抗、SW1、SW2…スイッチ(電源スイッチ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録を行う記録部と、外部電源に基づき前記記録部に電源を供給する電源装置とを備えた記録装置であって、
前記電源装置は、前記記録部への電源供給ライン上に設けられ、前記記録部への出力電流の変動を補償する安定化コンデンサーと、
前記外部電源から前記安定化コンデンサーに流れる電流の供給/遮断を切り換える電源スイッチと、
前記電源スイッチの切換により前記コンデンサーへ流れる電流を遅延させる突入電流抑制回路と、を備え、
前記突入電流抑制回路は、前記安定化コンデンサーに流れる電流の供給/遮断を切り換えるスイッチング素子に、前記電源スイッチの切換により充電開始される遅延用コンデンサーを接続して、前記遅延用コンデンサーの充電が進むと前記スイッチング素子がオンに切り替わるよう構成され、
前記電源スイッチが遮断状態に切り替わると前記遅延用コンデンサーを放電させる放電回路を備えたこと、
を特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記突入電流抑制回路は前記スイッチング素子としてのFETを有し、前記FETのゲート−ソース間に、前記外部電源からの入力電圧が分圧されて印加されるとともに前記遅延用コンデンサーが接続され、
前記遅延用コンデンサーが前記放電回路を介して放電する際に、前記遅延用コンデンサーの一端を接地極に短絡するバイパス回路を備えたことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記記録部がサーマルヘッドにより前記記録媒体としての感熱記録シートに記録を行うサーマルプリンターで構成されることを特徴とする請求項1または2記載の記録装置。
【請求項4】
前記電源スイッチは、1回路2接点からなる単極双投スイッチで構成され、入力側の2つの接点には、前記外部電源の出力ラインと、前記放電回路とがそれぞれ接続されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
記録媒体に記録を行う記録部を備えた記録装置に、外部電源に基づき電源を供給する電源装置であって、
前記記録部への電源供給ライン上に設けられ、前記記録部への出力電流の変動を補償する安定化コンデンサーと、前記外部電源から前記安定化コンデンサーに流れる電流の供給/遮断を切り換える電源スイッチと、前記電源スイッチの切換により前記コンデンサーへ流れる電流を遅延させる突入電流抑制回路と、を備え、
前記突入電流抑制回路は、前記安定化コンデンサーに流れる電流の供給/遮断を切り換えるスイッチング素子に、前記電源スイッチの切換により充電開始される遅延用コンデンサーを接続して、前記遅延用コンデンサーの充電が進むと前記スイッチング素子がオンに切り替わるよう構成され、
前記電源スイッチが遮断状態に切り替わると前記遅延用コンデンサーを放電させる放電回路を備えたこと、
を特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−131046(P2012−131046A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282739(P2010−282739)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】