説明

記録装置及びカラーサンプル表

【課題】光輝性インクの単位面積当たりのインク量を変化させることによって光沢度を調整しようとすると、色までが変化してしまう。
【解決手段】光輝性インクを吐出して形成する光輝性画像と、第1カラーインクと第2カラーインクの少なくとも一方を吐出して形成するカラー画像とを重ねて記録することによって、光輝性カラー画像を媒体に記録する記録装置であって、単位面積当たりのインク量が所定量になるように形成した光輝性画像と、カラー画像とを重ねた第1パターンと、単位面積当たりのインク量が前記所定量になるように形成した光輝性画像と、第1サンプルパターンのカラー画像と実質的に同じ色であって第1カラーインク及び第2カラーインクの単位面積当たりのインク量が異なるカラー画像とを重ねた第2パターンとを有するカラーサンプル表を記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置及びカラーサンプル表に関する。
【背景技術】
【0002】
光輝性インクと呼ばれる光輝性インクを用いて、紙などの媒体に金属光沢を有する画像を記録する記録装置が知られている。特許文献1には、インクジェット方式の記録装置に用いられる光輝性インクが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−256565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光輝性インクを用いて形成した画像(以下、光輝性画像)と、カラーインクを用い
て形成した画像(以下、カラー画像)とを重ねることによって、光沢性のあるカラー画像を媒体に記録することが考えられる。但し、色の濃い部分を出力した場合、カラーインクを多く打ち込むことによって光輝性インクによる光沢まで変化し、低下してしまうことがある。すなわち、出力しようとする色と光沢の両方を兼ね備えた色が出力できないという場合が生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、カラーインクを用いて光沢度の調整を行うための記録装置及びカラーサンプル表を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、光輝性インクを媒体に吐出可能な光輝性インク用ノズルと、第1カラーインクを前記媒体に吐出可能な第1カラーインクノズルと、前記第1カラーインクとは異なる第2カラーインクを前記媒体に吐出可能な第2カラーインクノズルとを備え、前記光輝性インクを吐出して形成する光輝性画像と、前記第1カラーインクと前記第2カラーインクの少なくとも一方を吐出して形成するカラー画像とを重ねて記録することによって、光輝性カラー画像を前記媒体に記録する記録装置であって、前記光輝性画像と、前記カラー画像とを重ねた第1パターンと、前記光輝性画像と、前記第1パターンの前記カラー画像と実質的に同じ色であって前記第1カラーインク又は前記第2カラーインクの単位面積当たりのインク量が異なる前記カラー画像とを重ね、前記第1のパターンと光沢度が異なる第2パターンとを有するカラーサンプル表を記録する記録装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、光輝性パターンの測定結果の表である。
【図2】図2は、濃シアンインクを用いた場合の光輝性カラーパターンの測定結果の表である。
【図3】図3は、図2で用いられた濃シアンインクと同じ色材を含有する淡シアンインクを用いた場合の光輝性カラーパターンの測定結果の表である。
【図4】図4は、図2や図3で用いられたシアンインクとは異なる色材を含有するシアンインクを用いた場合の光輝性カラーパターンの測定結果の表である。
【図5】図5は、図2及び図3の測定結果から抽出した5組の具体例(具体例1〜5)である。
【図6】図6は、図2又は図3と図4の測定結果から抽出した6組の具体例(具体例6〜11)である。
【図7】図7は、シアンインクの色相角差の測定結果である。
【図8】図8は、具体例1〜11の判定結果の表である。
【図9】図9は、プリンター1の全体構成ブロック図である。
【図10】図10Aは、プリンター1の概略断面図であり、図10Bは、プリンター1の概略上面図である。
【図11】図11は、キャリッジの下面の説明図である。
【図12】図12は、第1実施形態のカラーサンプル表の説明図である。
【図13】図13は、ユーザーがコンピューター110の描画プログラム上で作成した原画像の説明図である。
【図14】図14A及び図14Bは、ユーザーの希望する原画像の印刷物の説明図である。図14Aは、上から見たときの説明図である。図14Bは、光源の光を反射する角度から印刷物を見たときの説明図である。
【図15】図15は、調整処理のフロー図である。
【図16】図16は、印刷処理のフロー図である。
【図17】図17は、濃淡変換処理の説明図である。
【図18】図18は、媒体に印刷される画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
光光輝性インクを媒体に吐出可能な光輝性インク用ノズルと、第1カラーインクを前記媒体に吐出可能な第1カラーインクノズルと、前記第1カラーインクとは異なる第2カラーインクを前記媒体に吐出可能な第2カラーインクノズルとを備え、前記光輝性インクを吐出して形成する光輝性画像と、前記第1カラーインクと前記第2カラーインクの少なくとも一方を吐出して形成するカラー画像とを重ねて記録することによって、光輝性カラー画像を前記媒体に記録する記録装置であって、前記光輝性画像と、前記カラー画像とを重ねた第1パターンと、前記光輝性画像と、前記第1パターンの前記カラー画像と実質的に同じ色であって前記第1カラーインク又は前記第2カラーインクの単位面積当たりのインク量が異なる前記カラー画像とを重ね、前記第1のパターンと光沢度が異なる第2パターンとを有するカラーサンプル表を記録する記録装置が明らかとなる。
このような記録装置によれば、カラーインクを用いて光沢度の調整を行うことが可能になる。
【0011】
前記第1パターンの前記カラー画像と前記第2パターンの前記カラー画像は、色相角差と彩度との和が10以内の関係にあることが望ましい。これにより、第1パターンと第2パターンは、実質的に同じ色と認識される。
【0012】
前記第1カラーインクと前記第2カラーインクとの関係は、色相角差が35°以下の関係であることが望ましい。これにより、実質的に同じ色のパターンを形成できる。
【0013】
前記第1パターンにおける前記光輝性画像を形成するための、前記光輝性インクの単位面積当たりの吐出量と、前記第2パターンにおける前記光輝性画像を形成するための、前記光輝性インクの単位面積当たりの吐出量とが、互いに異なることが望ましい。若しくは、前記第1のパターンと前記第2のパターンとのJIS Z 8741(1997)における60°光沢度差が15以上であることが望ましい。これにより、光沢度の異なる2つのパターンを形成できる。
【0014】
色空間を変換するための第1ルックアップテーブルと、前記第1ルックアップテーブルとは異なる第2ルックアップテーブルとを備えており、共通の色情報に基づいて、前記第1ルックアップテーブルを用いて前記第1パターンを記録するための前記第1カラーインク及び前記第2カラーインクの単位面積当たりのインク量が決定されるとともに、前記第2ルックアップテーブルを用いて前記第2パターンを記録するための前記第1カラーインク及び前記第2カラーインクの単位面積当たりのインク量が決定されることが望ましい。これにより、実質的に同じ色のパターンを形成できる。
【0015】
前記カラーサンプル表の中からユーザーの選択したパターンが入力され、入力された前記パターンに対応するルックアップテーブルを用いて画像データが色変換処理されて前記媒体に記録されることが望ましい。これにより、ユーザーの希望にあった画像が媒体に記録される。
【0016】
光輝性インクにより形成された光輝性画像と、第1カラーインクと前記第1カラーインクとは異なる第2カラーインクの少なくとも一方により形成されたカラー画像とを重ねて記録されたパターンを複数有するカラーサンプル表であって、単位面積当たりのインク量が所定量になるように形成された前記光輝性画像と、前記カラー画像とを重ねた第1パターンと、単位面積当たりのインク量が前記所定量になるように形成された前記光輝性画像と、前記第1サンプルパターンの前記カラー画像と実質的に同じ色であって前記第1カラーインク及び前記第2カラーインクの単位面積当たりのインク量が異なる前記カラー画像とを重ねた第2パターンとを有するカラーサンプル表が明らかとなる。
このようなカラーサンプル表によれば、カラーインクを用いて光沢度の調整を行うことが可能になる。
【0017】
光輝性インクを媒体に吐出可能な光輝性インク用ノズルと、第1カラーインクを前記媒体に吐出可能な第1カラーインクノズルと、前記第1カラーインクとは異なる第2カラーインクを前記媒体に吐出可能な第2カラーインクノズルと、を備え、前記光輝性インクを吐出して形成する光輝性画像と、前記第1カラーインクと前記第2カラーインクの少なくとも一方を吐出して形成するカラー画像とを重ねて記録することによって、光輝性カラー画像を前記媒体に記録する記録装置であって、共通の画素の色情報に基づいて、色空間を変換するための第1ルックアップテーブルを用いて前記第1カラーインク及び前記第2カラーインクの単位面積当たりのインク量を決定するとともに、前記第1ルックアップテーブルとは異なる第2ルックアップテーブルを用いて前記第1カラーインク及び前記第2カラーインクの単位面積当たりのインク量を決定し、共通の媒体に、単位面積当たりのインク量が所定量になるように形成した前記光輝性画像と、前記第1ルックアップテーブルに基づいて決定されたインク量になるように形成した前記カラー画像とを重ねることによって、第1パターンを形成するとともに、単位面積当たりのインク量が前記所定量になるように形成した前記光輝性画像と、前記第2ルックアップテーブルに基づいて決定されたインク量になるように形成した前記カラー画像とを重ねることによって、第2パターンを形成することを特徴とする記録装置が明らかとなる。
このような記録装置によれば、カラーインクを用いて光沢度の調整を行うことが可能になる。
【0018】
===はじめに===
図1は、光輝性パターンの測定結果の表である。ここでは、光輝性パターンのL*a*b*色空間上の座標値、色相角度(H[deg])、彩度(C*)、光沢度を測定している。媒体には写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)を用い、単位面積当たりのインク量の異なる3種類の光輝性パターン(全ての画素に大ドットを形成したときのインク量をduty100%としたときに、光輝性インクをduty60%、duty50%及びduty40%にてそれぞれ塗布した光輝性パターン)を媒体に記録し、それぞれの光輝性パターンを測定した。なお、L*a*b*色空間上の座標値は、Gretag Macbeth社製のSpectrolinoにおける測定結果である(以下同様)。表中の色相角度(H[deg])及び彩度(C*)は、L*a*b*の測定結果から算出したものである(以下同様)。光沢度は、コニカミノルタ社製光沢度計のMULTI GLOSS268を用いてJIS Z 8741(1997)に準拠した60°光沢度の測定結果である(以下同様)。
【0019】
duty60%とduty50%の測定結果から分かる通り、duty50%からduty60%までの間では、光輝性インクのインク量を変化させると、色味はほとんど変化せずに、光沢度のみが変化する。但し、duty40%の測定結果から分かる通り、光輝性インクの単位面積当たりのインク量が低くなると、光輝性インクのインク量の変化に伴って、光沢度だけでなく、色相角度や彩度などが変化してしまう。このことは、光輝性画像とカラー画像とを重ね合わせて光沢性のあるカラー画像を記録する際に、光輝性インクのインク量を変化させて光沢度を調整しようとすると、色相や彩度まで変化してしまうことを意味する。また、逆に、濃い色の光輝性を表現するためにカラーインクのインク量を増やし、色味を調製すると光沢度が大幅に低下する。
【0020】
一方、本願の発明者は、以下の測定結果により、カラーインクのインク量を変化させることによって、光沢度を調整できることを発見した。
【0021】
図2〜図4は、光輝性画像とシアンインクによるカラー画像とを重ね合わせた光輝性カラーパターンの測定結果の表である。図2は、濃シアンインクを用いた場合の測定結果の表である。図3は、図2で用いられた濃シアンインクと同じ色材を異なる濃度で含有する淡シアンインクを用いた場合の測定結果の表である。図4は、図2や図3で用いられたシアンインクとは異なる色材を含有するシアンインクを用いた場合の測定結果の表である。これらの表には、L*a*b*色空間上の座標値、色相角度(H[deg])、彩度(C*)、光沢度とともに、色差(E*)の測定結果も含まれている。
【0022】
なお、光輝性カラーパターンを構成する光輝性画像は、いずれのパターンにおいても、光輝性インクをduty60%で塗布した画像である。また、図2の濃シアンインクは、セイコーエプソン社製の型番IC9CL3337の9色インクカートリッジセットに用いられているシアンインク(型番ICC37)であり、図3の淡シアンインクは、同インクセットに用いられているライトシアンインク(型番ICLC37)である。図4のシアンインクは、セイコーエプソン社製の型番ICC33のシアンインクである。
【0023】
図5は、図2及び図3の測定結果から抽出した5組の具体例(具体例1〜5)である。図6は、図2又は図3と図4の測定結果から抽出した6組の具体例(具体例6〜11)である。図8は、具体例1〜11の判定結果の表である。
【0024】
図8では、色相角度差(ΔH)と彩度差(ΔC)の和(ΔH+ΔC)を指標にして、2つのパターンの色の違いを判定している。この指標は、色相角差が小さければ彩度差が多少あっても2つの色が識別されにくくなり、逆に彩度差が小さければ色相角差が多少あっても2つの色が識別されにくくなるという人間の目の特性を考慮した指標である。ΔH+ΔCが10以内、好ましくは8以内であれば、実質的に色相角と彩度が同一となる。この範囲内であれば、2つの色を目視で識別し難いからである。さらに、ΔH+ΔCが6以内、特に4以内であれば、2つの色を目視で識別することが困難となる。また、ΔH+ΔCが2以内であれば、2つの色を目視で識別することが極めて困難であり、ΔH+ΔCが1以内になると、熟練者であっても2つの色を目視で識別することが困難になる。そこで、図8では、いずれも実質的に色相角と彩度が同一であるものの、ΔH+ΔCが1未満であれば「S」、1以上2未満であれば「A」、2以上4未満であれば「B」、4以上6未満であれば「C」と判定している。ここで、色相角度差ΔHはL*a*b*色空間におけるa*軸を0°とし、b*軸の正の向きの方向へ、0°から360°までの値で表される。
【0025】
なお、2つのパターンの色の違いの指標として、図8のようなΔH+ΔCではなく、一般的に用いられている色差ΔE*ab(={ΔL^2+Δa^2+Δb^2}^(1/2))を採用しても良い。ΔE*abが6.5以内であれば、実質的に同じ色として一般的に許容される範囲である。ΔE*abが3.15以内であれば、2つのパターンを並べなければ同じ色だと認識される範囲である。ΔE*abが1.6以内であれば、2つのパターンを並べても同じ色だと認識される範囲である。ΔE*abが0.8以内であれば、目視判定の再現性の限界範囲となる。
【0026】
また、2つのパターンの60°光沢度は15以上離れているのが好ましい。ユーザーの希望の光沢度差は一律に決定できない部分はあるが、一層好ましくは60°光沢度200未満のパターンの場合は20以上、60°光沢度が200以上のパターンの場合には40以上である。光沢度が低い領域では小さな光沢度差も人間の目には大きな差と感じられるからである。光沢度に関わる規格としては例えばJIS Z 8741(1997)がある。
【0027】
さらに、2つのパターンの基となる光輝性画像を形成する際に、光輝性インクの単位面積当たりの吐出量を異ならせても良い。光輝性インクの単位面積当たりの吐出量は図1の通り、異ならせることで光沢度が変化するので、光沢度の調整を光輝性インクの単位面積当たりの吐出量でも可能になり、ユーザーの希望にあったパターンを形成しやすくなる。
【0028】
具体例1〜11のそれぞれの2つのパターンの測定結果を比較して分かる通り、異なるシアンインクを用いて、実質的に同じ色のパターン(ΔH+ΔCを指標としている場合には、実質的に色相角度と彩度が同一のパターン)を作成することができる。例えば、具体例2の2つのパターンは、ΔH+ΔCが1未満になっており、熟練者が目視しても2つのパターンを識別することが困難なほど実質的に同じ色になっている。
【0029】
具体例1〜11のぞれぞれの2つのパターンの測定結果は、実質的に同じ色であるにも関わらず、光沢度は大きく異なっている。例えば、具体例1では、淡シアンインクで構成されるカラー画像を光輝性画像に重ねた場合には光沢度が「347」であり、濃シアンインクで構成されるカラー画像を光輝性画像に重ねた場合には光沢度が「267」であり、実質的に同じ色であるにも関わらず光沢度が「80」も異なっている。
【0030】
さらに、2つのインクの単位面積当たりのインク量を異ならせることによって、実質的に同じ色のまま、光沢度を調整することも可能である。例えば、具体例1では、淡シアンインクのみ又は濃シアンインクのみでカラー画像を構成しているが、淡シアンインクによるドット(淡ドット)と濃シアンインク(濃ドット)とを混在させてカラー画像を構成することによって、光沢度を267〜347の間で任意に調整することが可能である。具体的には、淡シアンインクをduty14%、濃シアンインクをduty9.5%でカラー画像を構成することによって、具体例1の2つのパターンと実質的に同じ色のまま、光沢度を307(347と267の中間値)に調整することが可能である。
【0031】
このような測定結果から、カラーインクのインク量を変化させることによって、光沢度を調整できることが理解できる。そこで、本件実施形態では、実質的に同じ色で光沢度の異なる複数のパターンを含むカラーサンプルを記録することとしている。
【0032】
なお、実質的に同じ色にするためには、具体例1〜5に示すように色材の同じ濃インクと淡インクを用いても良いし、具体例6〜11に示すように色材の異なる2種類のインクを用いても良い。要するに、少なくとも2種類のインクの単位面積当たりのインク量を異ならせて実質的に同じ色のパターンを形成できるのであれば、実質的に同じ色で光沢度の異なる複数のパターンを形成することができるのである。
【0033】
===記録装置の構成===
図9は、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図10Aは、プリンター1の概略断面図であり、図10Bは、プリンター1の概略上面図である。以下、プリンター1とコンピューター110が接続された記録装置を例に挙げて実施形態を説明する。
【0034】
本実施形態のプリンター1は、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、紙に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0035】
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22(PFモータとも言う)と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された紙をプリンター内に給紙するためのローラである。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって給紙された紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラであり、搬送モータ22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の紙Sを支持する。排紙ローラ25は、紙Sをプリンターの外部に排出するローラであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
【0036】
キャリッジユニット30は、ヘッドを所定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。キャリッジユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジモータ32(CRモータとも言う)とを有する。キャリッジ31は、移動方向に往復移動可能であり、キャリッジモータ32によって駆動される。また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。
【0037】
ヘッドユニット40は、紙にインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、複数のノズルを有するヘッド41を備える。このヘッド41はキャリッジ31に設けられているため、キャリッジ31が移動方向に移動すると、ヘッド41も移動方向に移動する。そして、ヘッド41が移動方向に移動中にインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
【0038】
検出器群50には、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出センサ53、および光学センサ54等が含まれる。リニア式エンコーダ51は、キャリッジ31の移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラ23の回転量を検出する。紙検出センサ53は、給紙中の紙の先端の位置を検出する。光学センサ54は、キャリッジ31に取付けられている発光部と受光部により、紙の有無を検出する。そして、光学センサ54は、キャリッジ31によって移動しながら紙の端部の位置を検出し、紙の幅を検出することができる。また、光学センサ54は、状況に応じて、紙の先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0039】
コントローラー60は、プリンターの制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0040】
<キャリッジの下面の構成>
図11は、キャリッジの下面の説明図である。
【0041】
キャリッジ31の下面には、ヘッド41が設けられている。ヘッド41は、7個のノズル列を備えている。6個のノズル列は、ブラックインクを吐出するためのブラックノズル列(K)と、濃シアンインクを吐出するための濃シアンノズル列(DC)と、淡シアンインクを吐出するための淡シアンノズル列(LC)と、濃マゼンタインクを吐出するための濃マゼンタノズル列(DM)と、淡マゼンタインクを吐出するための淡マゼンタノズル列(LM)と、イエローインクを吐出するためのイエローノズル列(Y)と、光輝性インクを吐出するための光輝性ノズル列(Me)である。ブラックノズル列、濃シアンノズル列、淡シアンノズル列、濃マゼンタノズル列、淡マゼンタノズル列及びイエローノズル列は、カラー画像を形成するためのカラーインクを吐出するノズル列(カラーノズル列)である。光輝性ノズル列は、光輝性画像を形成するための光輝性インクを吐出するノズル列である。
【0042】
各ノズル列は、それぞれ180個のノズルから構成されている。各ノズル列の180個のノズルは、所定のノズルピッチで搬送方向に沿って並んでおり、本実施形態では1/180インチの間隔で並んでいる(つまり、図中のLは1インチである)。このため、各ノズル列からインクを断続的に吐出することによって、キャリッジ31が移動方向に1回移動する毎に(1回のパス毎に)、搬送方向に沿って1/180インチの間隔でドット列が形成されることになる。
【0043】
濃シアンノズル列(DC)と淡シアンノズル列(LC)は、それぞれシアンインクを吐出するが、それぞれのインクのシアンの濃度は異なっている。本実施形態では、濃シアンインクとしてセイコーエプソン社製の型番ICC37とICC33のシアンインクが採用されると共に、淡シアンインクとしてセイコーエプソン社製の型番ICLC37の淡シアンインクが採用されている。但し、既に述べたように、濃インク、淡インクの組み合わせに限定されず、例えば一方のシアンインクとしてセイコーエプソン社製の型番ICC37が採用され、もう一方でICLC33が採用されても良い。後述するように、2種類のシアンインクの単位面積当たりのインク量を異ならせて実質的に同じ色のパターンを形成できるのであれば、2つのシアンインクは、どのようなインクであっても良い。2種類のシアンインクは、実質的に同じ色のパターンを形成できるようにするためには、色相角差が35°以下、より好ましくは色相角差が30°以下、一層好ましくは色相角差が25°以下、さらに好ましくは色相角差が20°以下、最も好ましくは色相角差が15°以下の関係が良い。また、同一の色材を異なる濃度で含有する関係であっても良い。色相角差が35°以下であって、同一の色材を異なる濃度で含有する関係であると一層良い。「同一の色材」とは、例えばC.I.ナンバーが同一であるであることをいう。色材は染料と顔料、どちらであっても良い。なお、ICC37とICC33、及び、ICC37とICLC37は、図7の通り同一の記録密度(実質的同一の吐出量)において色相格差は35°以内の関係である。図7はPX−G930のプリンター(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、写真用紙<光沢>(セイコーエプソン株式会社製)に各インクを吐出して測定した結果である。
【0044】
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、155、167、172、180、185、213等が挙げられる。
【0045】
マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、254、264またはC.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
【0046】
シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー4、60等が挙げられる。
【0047】
イエロー系染料としては、C.I.アシッドイエロー1、3、11、17、19、23、25、29、36、38、40、42、44、49、59、61、70、72、75、76、78、79、98、99、110、111、127、131、135、142、162、164、165、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、110、132、142、144、C.I.リアクティブイエロー1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42、C.I.フードイエロー3、4、C.I.ソルベントイエロー15、19、21、30、109等が挙げられる。
【0048】
具体的なマゼンタ系の染料としては、例えば、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、57、75、77、80、82、85、87、88、89、92、94、97、106、111、114、115、117、118、119、129、130、131、133、134、138、143、145、154、155、158、168、180、183、184、186、194、198、209、211、215、219、249、252、254、262、265、274、282、289、303、317、320、321、322、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.リアクティブレッド1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、49、50、58、59、63、64、C.I.ソルビライズレッド1、C.I.フードレッド7、9、14等が挙げられる。
【0049】
具体的なシアン系の染料としては、例えば、C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、41、43、45、54、59、60、62、72、74、78、80、82、83、90、92、93、100、102、103、104、112、113、117、120、126、127、129、130、131、138、140、142、143、151、154、158、161、166、167、168、170、171、182、183、184、187、192、199、203、204、205、229、234、236、249、C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、120、123、158、160、163、165、168、192、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、225、226、236、237、246、248、249、C.I.リアクティブブルー1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、46、C.I.ソルビライズバットブルー1、5、41、C.I.バットブルー4、29、60、C.I.フードブルー1、2、C.I.ベイシックブルー9、25、28、29、44等が挙げられる。
【0050】
濃マゼンタノズル列(DM)と淡マゼンタノズル列(LC)が吐出するそれぞれのマゼンタインクも、既に説明した2種類のシアンインクとほぼ同様の関係となる。ここではマゼンタインクについては説明を省略する。
【0051】
光輝性インクは、金属粒子として銀粒子やアルミニウム(薄片状アルミニウム、鱗片状アルミニウム)等を含有する。アルミを色材として用いた場合、アルミは印字メディアにほぼ平行に並ぶがそれぞれのリーフの重なり合いにより、実際には平行ではない。そのため、アルミを色材として用いた場合の光沢は光沢度の高い鏡面光沢ではなく、マット調の光沢になる場合が多い。それに対して銀粒子を含む光輝性インクは、アルミを含む光輝性インクよりも、光沢度の高い光輝性画像を形成することが可能である。本件実施形態では、光沢度をカラー画像で調整する際に光沢が下がることになるため、元の光輝性画像の光沢度が高い方が有利であり、銀粒子を含む光輝性インクを用いている。ただし、本発明の効果は光輝性インクの色材として銀を用いた場合に限定されるものではなく、アルミや他の金属を色材、として含む場合にも適用可能である。
【0052】
光輝性インクの溶媒としては、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水が用いられる。金属粒子の分散の妨げにならない程度であれば、水中にイオン等が存在していてもよい。また、必要に応じて、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、樹脂類等を含有していてもよい。
【0053】
銀粒子は、銀を主成分とする粒子である。銀粒子は、例えば、副成分として、他の金属、酸素、炭素等を含んでもよい。銀粒子は、銀と他の金属との合金であってもよい。また、インク組成物中の銀粒子は、コロイド(粒子コロイド)の状態で存在していてもよい。銀粒子がコロイド状態で分散している場合は、さらに分散性が良好となり、例えばインク組成物の保存安定性の向上に寄与することができる。
【0054】
光輝性インクは下記の製造方法によって作成したものである。
ポリビニルピロリドン(重量平均分子量10000)を70℃の条件下で15時間加熱して、その後室温で冷却をした。そのポリビニルピロリドン(PVP)1000gを、エチレングリコール溶液500mlに添加してPVP溶液を調整した。別の容器にエチレングリコールを500ml入れ、硝酸銀128gを加えて電磁攪拌器で十分に攪拌をして硝酸銀溶液を調整した。PVP溶液を120℃の条件下でオーバーヘッドミキサーを用いて攪拌しつつ、硝酸銀溶液を添加して約80分間加熱して反応を進行させた。そして、その後室温で冷却をさせた。得られた溶液を遠心分離機で2200rpmの条件下で10分間遠心分離を行った。その後、分離が出来た銀粒子を取り出して、余分なPVPを除去するためエタノール溶液500mlに添加した。そして、さらに遠心分離を行い、銀粒子を取り出した。さらに、取り出した銀粒子を真空乾燥機で35℃、1.3Paの条件下で乾燥させた。
【0055】
上記のようにして得られた銀粒子を10質量%と、1,2−ヘキサンジオールを3質量%と、トリメチロールプロパンを10質量%と、界面活性剤としてのオルフィンE1010(日信化学社製)を1質量%と、トリエタノールアミンを1質量%と、イオン交換水を残分として混合することにより、光輝性インクとした。なお、PX−G930のプリンター(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、記録媒体は写真用紙<光沢>(セイコーエプソン株式会社製)である。
【0056】
===第1実施形態===
ユーザーがコンピューター110の描画プログラム上で画像を作成する。但し、コンピューター110のディスプレイ上での画像と、実際にプリンター1に記録させた画像との間で、色や光沢感などに違いが生じることがある。光沢感のある画像を作成した場合には、両者の違いは特に顕著である。
【0057】
そこで、プリンター1にカラーサンプル表を記録させ、カラーサンプル表の中から希望する色や光沢感のパッチパターンをユーザーが選択することによって、ユーザーの希望通りの色や光沢感の画像がプリンター1から出力されるようにすることが考えられる。
【0058】
図12は、第1実施形態のカラーサンプル表の説明図である。カラーサンプル表は、多数のパッチパターンが記録された色見本である。各パッチパターンは、前述のプリンター1によって記録されており、各インクの単位面積当たりのインク量の組合せがそれぞれ異なっている。
【0059】
本実施形態の各パッチパターンは、光輝性画像の上にカラー画像が重ねて形成されることによって構成されており、光沢性のあるカラーパッチパターンになっている。ここでは、いずれのパッチパターンにおいても、光輝性画像は、光輝性インクをduty60%にて塗布することによって形成されている。
【0060】
通常のカラーサンプル表では、実質的に同じ色のパッチパターンが記録されることはない。実質的に同じ色のパッチパターンを複数記録しても、無意味であるからである。
【0061】
一方、本実施形態のカラーサンプル表には、実質的に同じ色のパッチパターンが複数記録されている。例えば、図中の3つのパッチパターンでは、光輝性画像の上に形成されたカラー画像は実質的に同じ色になっている。但し、前述の図5の具体例1を見て分かる通り、濃シアンインクをduty19%で光輝性画像上に塗布したパッチパターンは、淡シアンインクをduty28%で光輝性画像上に塗布したパッチパターンよりも光沢度が小さい。また、濃シアンインクによるドットと淡シアンインクによるドットを混在させて構成したパッチパターンは、中間的な光沢度となる。このため、3つのパッチパターンは、実質的に同じ色であっても、光沢度の異なるパッチパターンとして認識される。
【0062】
これにより、ユーザーは、カラーサンプル表の中から希望に合った色のパッチパターンを選択できるだけでなく、さらに光沢度についても希望に合ったパッチパターンを選択できる。
【0063】
===第2実施形態===
<原画像について>
図13は、ユーザーがコンピューター110の描画プログラム上で作成した原画像の説明図である。
【0064】
原画像は、光沢画像レイヤと、カラー画像レイヤとを有する。光沢画像レイヤには、ユーザーが光沢度を設定した光沢画像が描画されている。この光沢画像は、光沢度を多階調で示す画素から構成されている。但し、以下の説明では、説明を簡略化するため、光沢画像上では光沢度が高と低の2種類が設定されているものとする。図中の光沢画像では、高い光沢度の領域が黒色で示されている。つまり、この光沢画像では、画像ABCを構成する画素は、光沢度の高い画素である。
【0065】
カラー画像レイヤには、RGB色空間の256階調のカラー画像が描画されている。但し、ここでは説明を簡略化するために、カラー画像は同一階調のシアン一色とする。
【0066】
図14A及び図14Bは、ユーザーの希望する原画像の印刷物の説明図である。図14Aは、上から見たときの説明図である。図14Bは、光源の光を反射する角度から印刷物を見たときの説明図である。このように、本実施形態では、上から見ると単なるシアンの塗り潰し画像であるが、光を反射させると画像ABCが浮かび上がるような印刷物をユーザーが希望しているものとする。
【0067】
<調整処理>
図15は、調整処理のフロー図である。
【0068】
まず、ユーザーは、原画像の任意の画素を指定する(S101)。コンピューター110は、ユーザーによって指定された画素について、カラー画像レイヤで設定された階調値(RGB値)を色情報として取得する。
【0069】
次に、コンピューター110は、取得したRGB値(256階調)を、CMYK色空間のCMYK値(256階調)に変換する色変換処理を行う(S102)。ここでは、原画像のカラー画像がシアン一色であるため、シアンの階調値(C値)のみが所定の値を持つことになる(C値以外のM値、Y値及びK値はゼロになるので、ここでは説明を省略する)。この色変換処理では、RGB色空間の座標値をCMYK色空間の座標値に変換するための周知のルックアップテーブル(LUT)が用いられる。
【0070】
次に、コンピューター110は、シアンの256階調の階調値(C値)を、濃シアン及び淡シアンの256階調の階調値(DC値、LC値)に変換する濃淡変換処理を行う(S103)。プリンター1が濃インクと淡インクを備えているシアンやマゼンタの階調値については、このような変換処理が必要になる。コンピューター110は、C値をDC値及びLC値に変換するためのシアン用ルックアップテーブル(CLUT)を予め備えている。言い換えると、シアン用ルックアップテーブル(CLUT)は、C色空間の座標値をDC−LC色空間の座標値に変換するためのテーブルである。ここでは、コンピューター110は、3つのCLUT(CLUT1〜CLUT3)を備えているものとする。そして、シアンの階調値(C値)が、CLUT1によって(DC1,LC1)に変換され、CLUT2によって(DC2,LC2)に変換され、CLUT3によって(DC3,LC3)に変換されるものとする。つまり、本実施形態では、1つのC値から、3種類の濃シアン及び淡シアンの階調値の組合せが生成されることになる。更に遡ると、本実施形態では、ユーザーによって指定された共通の画素の色情報(RGB値)から、3種類の濃シアン及び淡シアンの階調値の組合せが生成されることになる。
【0071】
なお、CLUT1は、濃シアンの濃度(階調値)を濃くすることを優先して濃シアン及び淡シアンの階調値を設定するルックアップテーブルである(言い換えると、CLUT1は、淡シアンの濃度を淡くすることを優先して濃シアン及び淡シアンの階調値を設定するルックアップテーブルである)。CLUT3は、淡シアンの濃度を濃くすることを優先して濃シアン及び淡シアンの階調値を設定するルックアップテーブルである。CLUT2は、CLUT1とCLUT3の中間的な性質を持つルックアップテーブルである。
【0072】
濃シアンの階調値は、パッチパターンを形成するときの濃シアンインクの単位面積当たりのインク量を示す情報になる。また、淡シアンの階調値は、パッチパターンを形成するときの淡シアンインクの単位面積当たりのインク量を示す情報になる。
【0073】
次に、コンピューター110は、3種類の濃シアン及び淡シアンの階調値の組合せに基づいて、3つのパッチパターンからなるカラーサンプル表をプリンター1に記録させる(S104)。プリンター1は、コンピューター110から受信した印刷データに従って、媒体に光輝性画像を形成すると共に、その光輝性画像の上にカラー画像を形成する。ここでは、光輝性画像は、duty60%にて光輝性インクを媒体に塗布することによって形成される。また、カラー画像は、濃シアンの階調値(DC値)に応じたdutyにて濃シアンインクを媒体に塗布すると共に、淡シアンの階調値(LC値)に応じたdutyにて淡シアンインクを媒体に塗布することによって、形成される。なお、CLUT1に対応するパッチパターンは、濃シアンインクのdutyが比較的多くなり、CLUT3に対応するパッチパターンは、淡シアンインクのdutyが比較的多くなる。
【0074】
3つのパッチパターンは、共通のRGB値に応じた画像になっている。このため、3つのパッチパターンは、実質的に同じ色になっている。但し、既に説明した通り、3つのパッチパターンは光沢度がそれぞれ異なっている。
【0075】
次に、ユーザーは、3つのパッチパターンの中から希望するものを選択し、選択したパターン番号をコンピューター110に入力する(S105)。
【0076】
本実施形態では、光沢度の低いシアン(画像ABC以外の領域)と、光沢度の高いシアン(画像ABCの領域)の2個所について、上記の調整処理が行われることになる。ここでは、前者についてはCLUT1に対応するパッチパターンが選択され、後者についてはCLUT3に対応するパッチパターンが選択されたものとする。
【0077】
<印刷処理>
図16は、印刷処理のフロー図である。上記の調整処理の後、原画像の印刷処理が行われる。
【0078】
まず、コンピューター110は、原画像を、媒体に記録する際の解像度(印刷解像度)に変換する解像度変換処理を行う(S201)。例えば印刷解像度が720×720dpiに指定されている場合、コンピューター110は、原画像を720×720dpiの解像度のビットマップ形式の画像データに変換する。なお、解像度変換処理後の画像データの各画素データは、RGB色空間の256階調のデータである。
【0079】
次に、コンピューター110は、RGB色空間の画像データを、CMYK色空間の画像データに変換する色変換処理を行う(S202)。この色変換処理は、周知のルックアップテーブル(LUT)に基づいて行われる。
【0080】
次に、コンピューター110は、シアンとマゼンタについて濃淡変換処理を行う(S203)。図17は、濃淡変換処理の説明図である。原画像のカラー画像がシアン一色であるため、ここでは、シアンの画像データ(C画像データ)のみについて説明する。
【0081】
コンピューター110は、光沢画像レイヤ(図13参照)の光沢度の設定に応じて、C画像データを分離する。ここでは、C画像データは、光沢度の低い領域(画像ABC以外の領域)と、光沢度の高い領域(画像ABCの領域)の2つに分離される。
【0082】
次に、コンピューター110は、分離したそれぞれのC画像データから、シアン用ルックアップテーブルを用いて、濃シアンと淡シアンの画像データを生成する。言い換えると、コンピューター110は、C画像データを構成する各画素の階調値(C値)を、シアン用ルックアップテーブルを用いて、濃シアン及び淡シアンの階調値(DC値、LC値)に変換する。
【0083】
このとき、光沢度の低い領域のC画像データに対してはCLUT1が用いられ、光沢度の高い領域のC画像データに対してはCLUT3が用いられて、それぞれ濃シアンと淡シアンの画像データが生成される。なお、CLUT1及びCLUT3は、前述の調整処理によってパッチパターンを選択することによって決定されたシアン用ルックアップテーブルである。
【0084】
そして、コンピューター110は、光沢度の低い領域の濃シアンの画像データと、光沢度の高い領域の濃シアンの画像データを結合して、1つの濃シアンの画像データを生成する。また、コンピューター110は、光沢度の低い領域の淡シアンの画像データと、光沢度の高い領域の淡シアンの画像データを結合して、1つの淡シアンの画像データを生成する。
【0085】
図17に示す濃淡変換処理が行われることによって、シアンの画像データから、濃シアン及び淡シアンの画像データが生成される。
【0086】
S203の濃淡変換処理の後、コンピューター110は、ハーフトーン処理を行う(S204)。ハーフトーン処理により、256階調の画像データが、プリンター1の形成可能な階調数(2階調又は4階調)の画像データに変換される。ハーフトーン処理では、ディザ法・γ補正・誤差拡散法などが利用される。ハーフトーン処理後の画像データでは、画素ごと1ビット又は2ビットの画素データが対応しており、この画素データは各画素でのドットの形成状況(ドットの有無、ドットの大きさ)を示すデータになる。
【0087】
次に、コンピューター110は、マトリクス状に並ぶ画素データを、印刷時のドット形成順序に従って並べ替えるラスタライズ処理を行う(S205)。例えば、印刷時に数回に分けてドット形成処理が行われる場合、各ドット形成処理に対応する画素データをそれぞれ抽出し、ドット形成処理の順序に従って並べ替える。なお、印刷方式が異なれば印刷時のドット形成順序が異なるので、印刷方式に応じてラスタライズ処理が行われることになる。
【0088】
最後に、コンピューター110は、ラスタライズ処理されたデータに、印刷方式に応じたコマンドデータ(例えば搬送量を示す搬送データなど)を付加して印刷データを生成し、印刷データをプリンター1に送信する。プリンター1は、コンピューター110から受信した印刷データに従って、媒体に画像を印刷する。
【0089】
図18は、媒体に印刷される画像の説明図である。
【0090】
本実施形態では、まず、プリンター1は、duty60%にて光輝性インクを媒体に塗布することによって、媒体に光輝性画像を記録する。原画像では領域に応じて光沢度が異なっているが、媒体に記録される光輝性画像はどの領域においてもduty60%である。そして、プリンター1は、光輝性画像の上に、カラー画像を記録する。ここでは、濃シアンインクによる濃シアン画像と、淡シアンインクによる淡シアン画像がほぼ同時に光輝性画像の上に重ねて形成される。なお、光沢度の低い領域(画像ABC以外の領域)では濃シアンインクのdutyが比較的高くなり、光沢度の高い領域(画像ABCの領域)では淡シアンインクのdutyが比較的高くなるように、カラー画像が記録される。但し、いずれの領域においても、実質的に同じ色になっている。
【0091】
以上の調整処理及び印刷処理によって、ユーザーの希望する通りの図14A及び図14Bに示した印刷物が得られる。すなわち、上から見ると単なるシアンの塗り潰し画像(実質的に同じ色の画像)であるが、光を反射させると画像ABCが浮かび上がるような印刷物が得られる。
【0092】
本実施形態によれば、光輝性画像のdutyを一定にしたままカラーインクの塗布を調整することによって、光沢度を調整した印刷物を得ることができる。すなわち、同じ色でありながら光沢度の異なる印刷物を得ることが可能である。
【0093】
なお、説明の簡略化のため、原画像の光沢画像の光沢度は2種類であり、カラー画像は同一階調のシアン一色であったが、原画像がこれに限られないことは言うまでもない。
【0094】
===その他===
上記の実施形態は、主としてプリンターについて記載されているが、その中には、印刷装置、印刷方法、プログラム、プログラムを記憶した記憶媒体等の開示が含まれていることは言うまでもない。
【0095】
また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0096】
<パッチパターンについて>
前述の実施形態では、実質的に同じ色のパッチパターンが3つ形成されていた。しかし、これに限られるものではなく、実質的に同じ色のパッチパターンは少なくとも2つ形成されていればよい。但し、数が多い方が、ユーザーの選択範囲が増えて、光沢度の調整も細かく行えるので、望ましい。
【0097】
また、色に応じてパッチパターンの数を変更しても良い。例えば、図5の具体例1に対応する色では光沢度の調整範囲が267〜347と広く、具体例2に対応する色では光沢度の調整できる範囲が335〜364と狭いので、調整範囲が広い色(図8参照)ではパッチパターンを多く設定し、調整範囲の狭い色ではパッチパターンを狭く設定しても良い。
【0098】
<光輝性画像について>
前述の実施形態では、単位面積当たりのインク量をduty60%として光輝性画像を一様に形成していた。但し、これに限られるものではなく、光輝性画像のインク量を変化させても良い。
特に、光輝性インクの単位面積当たりのインク量をduty50%〜60%の範囲で変化させるのであれば、色はほとんど変化しない(図1参照)。このため、この範囲で光輝性インクの単位面積当たりのインク量を変化させても良い。そして、光輝性インクの単位面積当たりのインク量を変化させると色が変化してしまう状況下で光沢度を調整する必要があるときに、前述の実施形態のようにカラー画像を調整することによって光沢度を調整するようにしても良い。
【0099】
<コンピューター110の処理について>
前述の実施形態では、色変換処理等の各種の画像処理をコンピューター110が行っていた。但し、これに限られるものではない。コンピューター110が行っていた処理の一部又は全部をプリンター1が行っても良い。
【0100】
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 プリンター、20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
50 検出器群、60 コントローラー、
110 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝性インクを媒体に吐出可能な光輝性インク用ノズルと、
第1カラーインクを前記媒体に吐出可能な第1カラーインクノズルと、
前記第1カラーインクとは異なる第2カラーインクを前記媒体に吐出可能な第2カラーインクノズルと
を備え、
前記光輝性インクを吐出して形成する光輝性画像と、前記第1カラーインクと前記第2カラーインクの少なくとも一方を吐出して形成するカラー画像とを重ねて記録することによって、光輝性カラー画像を前記媒体に記録する記録装置であって、
前記光輝性画像と、前記カラー画像とを重ねた第1パターンと、
前記光輝性画像と、前記第1パターンの前記カラー画像と実質的に同じ色であって前記第1カラーインク又は前記第2カラーインクの単位面積当たりのインク量が異なる前記カラー画像とを重ね、前記第1のパターンと光沢度が異なる第2パターンと
を有するカラーサンプル表を記録する記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記第1パターンの前記カラー画像と前記第2パターンの前記カラー画像は、色相角差と彩度との和が10以内の関係にあることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の記録装置であって、
前記第1カラーインクと前記第2カラーインクとの関係は、
色相角差が35°以下の関係であることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の記録装置であって、
前記第1のパターンと前記第2のパターンとのJIS Z 8741(1997)における60°光沢度差が15以上である記録装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の記録装置であって、
前記第1パターンにおける前記光輝性画像を形成するための、前記光輝性インクの単位面積当たりの吐出量と、
前記第2パターンにおける前記光輝性画像を形成するための、前記光輝性インクの単位面積当たりの吐出量とが、互いに異なることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の記録装置であって、
色空間を変換するための第1ルックアップテーブルと、前記第1ルックアップテーブルとは異なる第2ルックアップテーブルとを備えており、
共通の色情報に基づいて、前記第1ルックアップテーブルを用いて前記第1パターンを記録するための前記第1カラーインク及び前記第2カラーインクの単位面積当たりのインク量が決定されるとともに、前記第2ルックアップテーブルを用いて前記第2パターンを記録するための前記第1カラーインク及び前記第2カラーインクの単位面積当たりのインク量が決定される
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項6に記載の記録装置であって、
前記カラーサンプル表の中からユーザーの選択したパターンが入力され、
入力された前記パターンに対応するルックアップテーブルを用いて画像データが色変換処理されて前記媒体に記録される
ことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
光輝性インクにより形成された光輝性画像と、第1カラーインクと前記第1カラーインクとは異なる第2カラーインクの少なくとも一方により形成されたカラー画像とを重ねて記録されたパターンを複数有するカラーサンプル表であって、
単位面積当たりのインク量が所定量になるように形成された前記光輝性画像と、前記カラー画像とを重ねた第1パターンと、
単位面積当たりのインク量が前記所定量になるように形成された前記光輝性画像と、前記第1パターンの前記カラー画像と実質的に同じ色であって前記第1カラーインク及び前記第2カラーインクの単位面積当たりのインク量が異なる前記カラー画像とを重ねた第2パターンと
を有するカラーサンプル表。
【請求項9】
光輝性インクを媒体に吐出可能な光輝性インク用ノズル列と、
第1カラーインクを前記媒体に吐出可能な第1カラーインクノズル列と、
前記第1カラーインクとは異なる第2カラーインクを前記媒体に吐出可能な第2カラーインクノズル列と、
を備え、
前記光輝性インクを吐出して形成する光輝性画像と、前記第1カラーインクと前記第2カラーインクの少なくとも一方を吐出して形成するカラー画像とを重ねて記録することによって、光輝性カラー画像を前記媒体に記録する記録装置であって、
共通の画素の色情報に基づいて、
色空間を変換するための第1ルックアップテーブルを用いて前記第1カラーインク及び前記第2カラーインクの単位面積当たりのインク量を決定するとともに、
前記第1ルックアップテーブルとは異なる第2ルックアップテーブルを用いて前記第1カラーインク及び前記第2カラーインクの単位面積当たりのインク量を決定し、
共通の媒体に、
単位面積当たりのインク量が所定量になるように形成した前記光輝性画像と、前記第1ルックアップテーブルに基づいて決定されたインク量になるように形成した前記カラー画像とを重ねることによって、第1パターンを形成するとともに、
単位面積当たりのインク量が前記所定量になるように形成した前記光輝性画像と、前記第2ルックアップテーブルに基づいて決定されたインク量になるように形成した前記カラー画像とを重ねることによって、第2パターンを形成する
ことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−171139(P2012−171139A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33523(P2011−33523)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】