説明

記録装置及び記録材の残量管理方法

【課題】貯留手段内の記録材の残量を適切に管理しつつ、複数の記録媒体に対して連続して記録処理を施す場合における記録処理速度の向上に貢献できる記録装置、及び記録材の残量管理方法を提供する。
【解決手段】主制御部は、用紙に印刷を施す際の印刷条件がインクの消費量の少ない記録条件であるか否かを判定する(ステップS20,S21)。そして、主制御部は、インクの消費量の少ない記録条件であると判定した場合(ステップS20,S21が共に肯定判定)において、複数の用紙に対して連続して印刷が施されるときには、Nページ目の用紙への印刷とN+1ページ目の用紙への印刷との間でのインクカートリッジの記憶部の残量情報の更新を制限する(ステップS22)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材を貯留する貯留手段が所定の走査方向に移動する移動部材に着脱自在な状態で装着される記録装置、及び該記録装置に装着される貯留手段内の記録材の残量を管理する記録材の残量管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体に対して記録処理を施す記録装置として、例えば特許文献1に記載のインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」ともいう。)が提案されている。この特許文献1に記載のプリンターは、所謂オフキャリタイプのプリンターであって、主走査方向に移動するキャリッジ(移動部材)と、該キャリッジに搭載される記録ヘッド(記録手段)と、キャリッジとは別の位置に配置されるホルダー部とを備えている。このホルダー部には、記録材としてのインクを貯留する貯留手段としてのインクカートリッジが着脱自在に装着される。
【0003】
こうしたインクカートリッジには、該インクカートリッジに貯留されるインクの残量に関する情報(以下、「残量情報」ともいう。)が記憶される不揮発性の記憶部(「CSIC」ともいう。)が設けられている。また、プリンターの制御装置は、記録媒体としての用紙への記録処理時などのインク消費時にインクの消費量を算出する。そして、制御装置は、定期フラッシングの実行時に、インクカートリッジ内のインクの残量を算出し、該算出結果に基づく残量情報をインクカートリッジの記憶部に上書き記憶していた。
【0004】
また、近年では、インクカートリッジがキャリッジ上に装着される所謂オンキャリタイプのプリンターにおけるインクカートリッジ内のインクの残量を管理する方法が提案されている。すなわち、複数枚の用紙に連続して記録処理を施す場合には、Nページ目の用紙に対する記録処理とN+1ページ目の用紙の記録処理との間のタイミングでキャリッジを停止させ、インクカートリッジの記憶部の残量情報を更新していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−305870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、所謂オンキャリタイプのプリンターでは、制御装置と、インクカートリッジの記憶部とを電気的に連結する配線は、キャリッジの移動に伴って変位する。そのため、制御装置側から配線を介してインクカートリッジの記憶部に出力される電気信号に配線の変形に伴うノイズが含まれないように、記憶部の残量情報の更新は、キャリッジを停止させる必要がある。そのため、用紙の改ページ毎に記憶部の残量情報を更新する場合には、その分だけキャリッジの停止時間が長くなったり、キャリッジを停止させる回数が増加したりする。したがって、複数枚の用紙に対して連続して記録処理を施す際の記録処理速度が低下する問題があった。
【0007】
なお、1枚の用紙に対する記録処理に要するインクの消費量に関係なく、所定枚数(例えば3枚)毎にインクカートリッジの記憶部の残量情報を更新する方法も考えられる。しかしながら、この場合には、記憶部の残量情報と、実際のインクカートリッジ内のインクの残量とが乖離する期間が長くなり過ぎ、インク残量の管理の点で好ましくなかった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、貯留手段内の記録材の残量を適切に管理しつつ、複数の記録媒体に対して連続して記録処理を施す場合における記録処理速度の向上に貢献できる記録装置、及び記録材の残量管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、記録材を記録媒体に付着させて記録する記録手段と、前記記録手段が搭載され且つ所定の走査方向に沿って移動する移動部材と、前記移動部材の移動を制御する制御手段とを備え、前記移動部材には、記録材を貯留する貯留室及び該貯留室内の記録材の残量に関する残量情報を記憶する記憶部を有する貯留手段が着脱自在な状態で装着されてなる記録装置において、前記記録手段での記録材の消費量を取得する消費量取得手段と、前記制御手段によって前記移動部材が停止されたときに、前記記憶部の残量情報を前記消費量取得手段によって取得された記録材の消費量に基づき更新する情報更新手段と、記録媒体に記録処理を施す際の記録条件が記録材の消費量の少ない記録条件であるか否かを判定する条件判定手段と、前記条件判定手段によって記録材の消費量の少ない記録条件であると判定された場合において、複数の記録媒体に対して連続して記録処理を施すときには、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間での前記情報更新手段による前記記憶部の残量情報の更新を制限する制限手段と、をさらに備える。
【0010】
上記構成によれば、記録材の消費量の少ない記録条件で、複数の記録媒体に対して連続して記録処理が施される場合には、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間での貯留手段の記憶部に記憶される残量情報の更新が制限される。そのため、記録媒体の記録処理が完了する毎に記憶部の残量情報が更新される場合と比較して残量情報の更新頻度が低くなる分、残量情報の更新に伴う移動部材の停止時間の増加や停止回数の増加が抑制される。その一方で、残量情報の更新が制限されない場合には、一の記録媒体の記録処理の完了時に記憶部の残量情報が更新される。したがって、貯留手段内の記録材の残量を適切に管理しつつ、複数の記録媒体に対して連続して記録処理を施す場合における記録処理速度の向上に貢献できる。
【0011】
本発明の記録装置では、前記制限手段によって前記貯留手段の前記記憶部の残量情報の更新が制限される場合において、前記記憶部の残量情報が最後に更新されてからの前記記録手段による記録材の消費量が少ないときには、前記情報更新手段は、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間で、前記記憶部の残量情報を更新しない一方、前記制限手段によって前記記憶部の残量情報の更新が制限される場合において、前記記憶部の残量情報が最後に更新されてからの前記記録手段による記録材の消費量が多いときには、前記制御手段は、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間で移動部材を一時的に停止させると共に、前記情報更新手段は、前記移動部材の停止中に前記記憶部の残量情報を更新する。
【0012】
上記構成によれば、記憶部の残量情報の更新が制限される場合であっても、残量情報が最後に更新されてからの記録材の消費量が多いときには、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間において移動部材が停止したタイミングで、又は移動部材を停止させて、残量情報が更新される。そのため、記憶部に記憶される残量情報と、貯留手段内の記録材の実際の残量とが乖離することを抑制できる。
【0013】
本発明の記録装置において、前記情報更新手段は、前記貯留手段の前記記憶部の残量情報が最後に更新されてから前記消費量取得手段によって取得される記録材の消費量が予め設定された消費量閾値未満である場合、前記記憶部の残量情報が最後に更新されてから記録処理を施した記録媒体の数が予め設定された数閾値未満である場合及び前記記憶部の残量情報が最後に更新されてから記録媒体への記録に要した時間が予め設定された時間閾値未満である場合の何れか一つが成立した場合に、前記記録手段による記録材の消費量が少ないと判定する。
【0014】
上記構成によれば、記憶部の残量情報の更新が制限される場合において、記録材の消費量が消費量閾値未満であること、記録処理が施された記録媒体の数が数閾値未満であること及び記録媒体への記録に要した時間が時間閾値未満であることの何れか一つが成立した場合に、記録材の消費量が少ないと判定される。
【0015】
本発明の記録装置において、前記条件判定手段は、記録媒体に記録処理を施す場合における記録モードが記録速度優先の高速モードであること、及び記録処理が施される記録媒体のサイズが予め設定された所定のサイズよりも小さいサイズであることのうち少なくとも一方が成立する場合に、記録材の消費量の少ない記録条件であると判定する。
【0016】
上記構成によれば、上記2つの条件のうち少なくとも1つの条件が成立した場合には、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間での記憶部の残量情報の更新が制限される。
【0017】
本発明の記録装置において、前記貯留手段には、前記貯留室内の記録材の残量に応じた検出信号を出力する信号出力手段が設けられると共に、前記移動部材とは別の位置に設けられ、且つ前記移動部材が停止した際に前記信号出力手段から出力される検出信号に基づき前記貯留手段内の記録材の残量が少ないニアエンド状態であるか否かを判定するニアエンド判定手段をさらに備え、前記制限手段は、前記条件判定手段によって記録材の消費量の少ない記録条件であると判定された場合には、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間で、前記情報更新手段による前記記憶部の残量情報の更新及び前記ニアエンド判定手段による判定処理の実行を制限する一方、前記条件判定手段によって記録材の消費量の多い記録条件であると判定された場合には、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間で、前記情報更新手段による前記記憶部の残量情報の更新及び前記ニアエンド判定手段による判定処理の実行を制限しない。
【0018】
上記構成によれば、記録材の消費量の少ない記録条件で、複数の記録媒体に対して連続して記録処理が施される場合には、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間での貯留手段の記憶部に記憶される残量情報の更新及びニアエンドであるか否かの判定処理の実行が制限される。そのため、記録媒体の記録処理が完了する毎に記憶部の残量情報の更新及びニアエンドであるか否かの判定処理がなされる場合と比較して残量情報の更新頻度及び判定処理の実行頻度が低くなる分、移動部材の停止時間の増加や停止回数の増加が抑制される。その一方で、残量情報の更新の実行が制限されない場合には、記録媒体の記録処理が完了する毎に記憶部の残量情報の更新及びニアエンドであるか否かの判定処理がなされる。したがって、貯留手段内の記録材の残量を適切に管理しつつ、複数の記録媒体に対して連続して記録処理を施す場合における記録処理速度の向上に貢献できる。
【0019】
一方、本発明の記録材の残量管理方法は、記録材を記録媒体に付着させて記録する記録手段が搭載されると共に所定の走査方向に移動する移動部材に、着脱自在な状態で装着される貯留手段に貯留される記録材の残量に関する残量情報を管理する記録材の残量管理方法であって、前記貯留手段には、該貯留手段内の記録材の残量に関する残量情報を記憶する記憶部が設けられており、記録媒体に記録処理を施す際の記録条件が記録材の消費量の少ない記録条件であるか否かを判定する条件判定ステップと、前記条件判定ステップで記録材の消費量が少ない記録条件であると判定した場合において、複数の記録媒体に対して連続して記録処理が施されるときには、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間での前記記憶部の残量情報の更新の実行を制限させる制限ステップと、を有する。
【0020】
上記構成によれば、上記記録装置と同等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態のプリンターの概略斜視図。
【図2】インクカートリッジを模式的に示す平面図。
【図3】プリンターの電気的構成の要部を説明するブロック図。
【図4】第1の実施形態の改ページ処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図5】第1の実施形態の印刷設定判定処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図6】第1の実施形態の消費量判定処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図7】(a)は改ページの際にニアエンドの判定処理及び残量情報の更新を行なう場合のキャリッジの移動速度の変化を示すタイミングチャート、(b)は改ページの際にニアエンドの判定処理及び残量情報の更新を行なわない場合のキャリッジの移動速度の変化を示すタイミングチャート。
【図8】第2の実施形態の消費量判定処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図9】第3の実施形態の消費量判定処理ルーチンを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。なお、以下における本明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1に矢印で示す前後方向(副走査方向)及び左右方向(主走査方向)、並びに上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0023】
図1に示すように、記録装置としてのプリンター11は、インクジェット式のシリアルタイプのプリンターであって、略矩形箱状をなすフレーム12を備えている。このフレーム12内の下部には、記録媒体としての用紙Pを支持するプラテン13が左右方向に沿って延設されている。このプラテン13上には、フレーム12の後面下部に設けられた紙送りモーター(以下、「PFモーター」という。)14を駆動源とする給送装置(「自動給紙装置」ともいう。)15の駆動に基づき、用紙Pが後方側から前方に向けて給送される。また、フレーム12内においてプラテン13の上方には、プラテン13の長手方向(左右方向)と平行な棒状のガイド軸16が設けられている。このガイド軸16には、その軸線方向(左右方向であって、主走査方向)に沿って往復移動可能な状態で移動部材としてのキャリッジ17が支持されている。
【0024】
フレーム12の後壁内面におけるガイド軸16の両端部と対応する各位置には、駆動プーリー18及び従動プーリー19が回転自在な状態で支持されている。駆動プーリー18にはキャリッジ17を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモーター(以下、「CRモーター」ともいう。)20の出力軸が連結されると共に、これら一対のプーリー18,19間には一部がキャリッジ17に連結された無端状のタイミングベルト21が掛装されている。したがって、キャリッジ17は、ガイド軸16にガイドされながら、CRモーター20の駆動力により無端状のタイミングベルト21を介して左右方向に移動される。
【0025】
また、フレーム12内には、後壁内面側に配置され且つ左右方向に延びる被検出用テープ22と、キャリッジ17に設けられる図示しない検出部とを備えるリニアエンコーダー23(図3参照)が設けられている。被検出用テープ22には多数のスリットが左右方向に沿って等間隔に形成されると共に、検出部には左右方向において互いに異なる位置に配置される複数(一例として2つ)のセンサー(図示略)が設けられている。そして、検出部の各センサーからは、キャリッジ17の移動距離に相当するパルス状の検出信号が後述する制御装置40(図3参照)にそれぞれ出力される。
【0026】
キャリッジ17の下面側には記録手段としての記録ヘッド24が設けられる一方、キャリッジ17上には記録ヘッド24へ供給するインク(記録材)を貯留する複数のインクカートリッジ(貯留手段)25が着脱可能に搭載されている。各インクカートリッジ25には、互いに異なる種類(色)のインクがそれぞれ貯留されている。そして、各インクカートリッジ25内に収容されたインクが図示しない圧電素子の駆動により記録ヘッド24の下面に開口する複数のノズルに供給され、該各ノズルからインク滴が用紙Pに吐出されることにより、印刷が行われる。
【0027】
また、キャリッジ17には、記録ヘッド24の各圧電素子に対して駆動信号を個別に入力させるための複数の配線を有する配線ケーブル26が接続されている。この配線ケーブル26は、可撓性を有するケーブルであって、制御装置40に電気的に接続されている。なお、配線ケーブル26は、後述するインクカートリッジ25のインクエンドセンサー34(図2参照)用の配線及び記憶部35(図2参照)用の配線も含んでいる。
【0028】
また、フレーム12内において用紙Pが搬送される印刷領域の右側には、用紙Pが搬送されないホームポジション領域が形成されている。このホームポジション領域には、記録ヘッド24のクリーニングなどの各種メンテナンスを行なうためのメンテナンス装置27が設けられている。
【0029】
次に、インクカートリッジ25について説明する。なお、キャリッジ17に搭載される各インクカートリッジ25は、ほぼ同一構成である。そのため、ここでは、1つのインクカートリッジ25についてのみ具体的な構成を説明するものとする。
【0030】
図2に示すように、インクカートリッジ25は、略直方体状をなすカートリッジ本体30と、該カートリッジ本体30の下側面から下方に向けて突出する供給部31とを備えている。インクカートリッジ25内には、インクを貯留する貯留室32と、供給部31を介して貯留室32内のインクを記録ヘッド24内に供給するための略L字状の供給流路33が形成されている。また、インクカートリッジ25内において供給流路33の外周側には、該供給流路33内を流動するインクの流量に応じた信号を出力する信号出力手段としてのインクエンドセンサー34が設けられている。このインクエンドセンサー34は、一例として、電圧が印加された場合にはそれに応じて伸縮する一方で、振動や圧力などの力が加わるとそれに応じた検出信号を出力する圧電素子を含んでいる。
【0031】
また、カートリッジ本体30の後側面には、インクカートリッジ25内のインクの残量に関する残量情報などのインクカートリッジ25に関する情報を記憶する記憶部(「CSIC」ともいう。)35と、該記憶部35の下側に配置される端子基板36とが設けられている。記憶部35は、EEPROMなどの不揮発性のメモリーで構成されている。また、端子基板36は、インクエンドセンサー34と電気的に接続される図示しない第1端子部と、記憶部35に電気的に接続される図示しない第2端子部とを有している。
【0032】
次に、本実施形態のプリンター11の電気的構成の要部について説明する。
図3に示すように、プリンター11の制御装置40は、図示しないCPU、ROM、RAM、不揮発性のメモリー及びASIC((Application Specific IC(特定用途向けIC))などで構築されるデジタルコンピューター41(図3にて破線で囲まれた部分)を備えている。このデジタルコンピューター41は、CRモーター20を駆動させるためのCR用ドライバー42、PFモーター14を駆動させるためのPF用ドライバー43及び記録ヘッド24を駆動させるためのヘッド用ドライバー44と電気的に接続されている。
【0033】
また、デジタルコンピューター41は、ハードウェア及びソフトウェアのうち少なくとも一方により実現される機能部分として、主制御部45、画像処理部46、給送制御部47、CR制御部48及び消費量算出部49を備えている。
【0034】
主制御部45は、画像処理部46、給送制御部47、CR制御部48及び消費量算出部49に対して制御指令を適宜出力する。具体的には、主制御部45は、図示しないホストコンピューター側から図示しないインターフェースを介して印刷指令及び画像情報を受信した場合、該画像情報に基づくラスターデータを生成させる旨の制御指令を画像処理部46に出力する。また、主制御部45は、用紙Pの給紙を開始させる旨の制御指令を給送制御部47に出力すると共に、キャリッジ17の移動を開始させる旨の制御指令をCR制御部48に出力する。また、主制御部45は、印刷処理及びフラッシングやクリーニングなどのインクの排出を伴うメンテナンスを行なう場合には、記録ヘッド24でのインクの消費量を算出させるための制御指令を消費量算出部49に出力する。
【0035】
画像処理部46は、受信した画像情報に各種変換処理(解像度変換処理、色変換処理及びハーフトーン処理等)を施してラスターデータを生成する。そして、画像処理部46は、画像情報に基づく印刷時には、用紙Pの搬送及びキャリッジ17の移動などと連動して記録ヘッド24から各種のインク滴が吐出されるように、生成したラスターデータに基づいた駆動信号をヘッド用ドライバー44から出力させる。その結果、記録ヘッド24の各ノズルからは、ヘッド用ドライバー44からの駆動信号に基づいたインク滴が各別に吐出される。
【0036】
給送制御部47は、用紙Pを給送させる場合には、PF用ドライバー43に制御指令を出力する。すると、PF用ドライバー43からの駆動信号に基づきPFモーター14が駆動することにより、給送装置15を構成する各種ローラー(図示略)が回転し、用紙Pがフレーム12内を後側から前側に給送される。なお、本実施形態のPFモーター14の出力軸には、該出力軸の回転速度、回転位置及び回転方向を検出するためのロータリーエンコーダー50が設けられている。そして、給送制御部47は、ロータリーエンコーダー50からの検出信号に基づきPFモーター14の駆動を制御する。
【0037】
CR制御部48は、リニアエンコーダー23からの検出信号に基づきキャリッジ17の左右方向における位置、移動速度及び移動方向を算出すると共に、該算出結果に基づいた制御指令をCR用ドライバー42に出力することによりキャリッジ17の移動を制御する。したがって、本実施形態では、CR制御部48が、制御手段として機能する。
【0038】
消費量算出部49は、印刷に伴う記録ヘッド24からのインク滴の吐出時には、インク滴の吐出回数をインクの種類毎(この場合、インクカートリッジ25毎)にカウント(計数)する。なお、ノズルからは、圧電素子の駆動態様に基づき、大きさの異なる複数種類(例えば、大・中・小)のインク滴を吐出可能である。そのため、消費量算出部49は、一つのインクカートリッジ25に対して、大のインク滴の吐出回数、中のインク滴の吐出回数及び小のインク滴の吐出回数をカウントし、該各カウント結果に基づきインクの消費量を算出する。また、消費量算出部49は、記録ヘッド24のフラッシングやクリーニングなどのメンテナンス時には、該メンテナンス時に記録ヘッド24から排出されるインクの消費量を推定する。したがって、本実施形態では、消費量算出部49が、消費量取得手段として機能する。
【0039】
なお、本実施形態のキャリッジ17には、該キャリッジ17に装着された(取り付けられた)インクカートリッジ25の端子基板36に圧接する端子部51が、インクカートリッジ25毎に設けられている。これら各端子部51には、インクカートリッジ25側の端子基板36の第1端子部に電気的に接触する図示しない第1接触部と、第2端子部に電気的に接触する図示しない第2接触部とが設けられている。そして、インクカートリッジ25がキャリッジ17に装着された場合、インクエンドセンサー34及び記憶部35は、制御装置40とそれぞれ電気的に接続される。
【0040】
次に、本実施形態の制御装置40が実行する改ページ処理ルーチンについて、図4に示すフローチャート及び図7に示すタイミングチャートに基づき説明する。この改ページ処理ルーチンは、N(Nは、1以上の整数)ページ目の用紙Pへのインク滴の吐出が終了したタイミングで実行される。
【0041】
さて、最初のステップS10において、主制御部45は、制限フラグFLG1をONにセットしたり、OFFにリセットしたりする印刷設定判定処理(図5で詳述する。)を実行する。制限フラグFLG1は、用紙Pに印刷を施す際の記録条件がインクの消費量の少ない記録条件である場合にはONにセットされる一方、インクの消費量の多い記録条件である場合にはOFFにリセットされるフラグである。したがって、本実施形態では、主制御部45が、条件判定手段としても機能する。また、ステップS10が、条件判定ステップに相当する。
【0042】
次のステップS11において、主制御部45は、制限フラグFLG1がOFFであるか否かを判定する。そして、主制御部45は、制限フラグFLG1がOFFである場合にはその処理を後述するステップS15に移行する一方、制限フラグFLG1がONである場合にはその処理を次のステップS12に移行する。したがって、本実施形態では、主制御部45が、制限手段としても機能する。また、ステップS11が、制限ステップに相当する。
【0043】
ステップS12において、主制御部45は、各インクカートリッジ25の記憶部35に記憶される残量情報が最後に更新されてからのインクの消費量に基づき、スキップフラグFLG2をONにセットしたり、OFFにリセットしたりする消費量判定処理を実行する。この消費量判定処理に関しては、図6にて詳述する。スキップフラグFLG2は、各記憶部35の残量情報が最後に更新されてからのインクの消費量が少ない場合にはONにセットされる一方、インクの消費量が多い場合にはOFFにリセットされるフラグである。次のステップS13において、主制御部45は、スキップフラグFLG2がONであるか否かを判定する。そして、主制御部45は、スキップフラグFLG2がOFFである場合にはその処理を後述するステップS15に移行する一方、スキップフラグFLG2がONである場合にはその処理を次のステップS14に移行する。
【0044】
ステップS14において、主制御部45は、次のページ(即ち、N+1ページ目)の印刷が有るか否かを、画像情報及び印刷指令に基づき判定する。そして、主制御部45は、次のページの印刷がある場合にはその処理を後述するステップS18に移行する一方、次のページの印刷がない場合にはその処理を次のステップS15に移行する。
【0045】
ステップS15において、主制御部45は、Nページ目の用紙Pへの印刷のためのCRモーター20の駆動(即ち、キャリッジ17の移動)が停止したか否かを判定する。そして、主制御部45は、CRモーター20が停止していない場合にはCRモーター20が停止するまでステップS15の判定処理を繰り返し実行する一方、CRモーター20が停止した場合にはその処理を次のステップS16に移行する。
【0046】
ステップS16において、主制御部45は、ニアエンド判定処理を実行する。すなわち、主制御部45は、各インクエンドセンサー34の圧電素子に電圧をそれぞれ印加させて該各圧電素子を所定の周波数でそれぞれ振動させる。続いて、主制御部45は、各インクエンドセンサー34への電圧印加を停止させる。すると、各インクエンドセンサー34の圧電素子からは、供給流路33内のインクの残量に応じた振動周波数を有する電気信号が制御装置40側にそれぞれ出力される。そして、主制御部45は、検出した各インクエンドセンサー34からの電気信号の振動周波数に基づき、各インクカートリッジ25内のインクの残量が所定残量以下であるか否かをインクカートリッジ25毎に判定する。この所定残量は、インクカートリッジ25内のインクが空になる直前のニアエンド状態であるか否かを判断するための基準値である。ニアエンド状態のインクカートリッジ25がある場合、主制御部45は、その旨をホストコンピューターに送信したり、プリンター11の図示しない表示画面に表示したりする。したがって、本実施形態では、主制御部45が、ニアエンド判定手段としても機能する。
【0047】
次のステップS17において、主制御部45は、消費量算出部49によって算出された各インクの消費量であって、且つ最後に記憶部35の残量情報が更新されてからの各インクの消費量に関する消費量情報を取得する。続いて、主制御部45は、各インクカートリッジ25の記憶部35から残量情報を取得する。そして、主制御部45は、残量情報に相当する残量から消費量情報に相当する消費量をインクカートリッジ25毎に減算し、該各減算結果を現時点の各インクカートリッジ25のインクの残量情報とする。続いて、主制御部45は、算出した各残量情報を各インクカートリッジ25の記憶部35に個別に上書き記憶(即ち、更新)させる。その後、主制御部45は、その処理を次のステップS18に移行する。したがって、本実施形態では、主制御部45が、情報更新手段としても機能する。
【0048】
ステップS18において、主制御部45は、CRモーター20の駆動を許可する。すなわち、本実施形態では、ニアエンド判定処理(ステップS16)及び記憶部35の残量情報の更新(ステップS17)が実行される間は、CRモーター20の駆動(即ち、キャリッジ17の移動)が規制される。その一方で、ニアエンド判定処理(ステップS16)及び記憶部35の残量情報の更新(ステップS17)が実行されない場合、キャリッジ17は、ほとんど停止することなく、N+1ページ目の用紙Pに対する印刷のための移動を開始する。その後、主制御部45は、改ページ処理ルーチンを終了する。
【0049】
すなわち、図7(a)(b)のタイミングチャートに示すように、キャリッジ17の停止直後にニアエンド判定処理及び残量情報の更新を行なうと、キャリッジ17の停止時間は、2つの処理分に相当する処理時間ΔTだけ長くなる。この間は、N+1ページ目の印刷用の用紙Pの給送が停止したり、処理時間ΔTだけ用紙Pの給送が遅延したりする。そのため、改ページの度にニアエンド判定処理及び残量情報の更新を行なうと、複数の用紙Pに対して連続して印刷を施す場合、印刷終了までに時間がかかる。
【0050】
この点、本実施形態では、印刷設定判定処理によって制限フラグFLG1がONにセットされた場合には、改ページの間でのニアエンド判定処理及び残量情報の更新が制限される。そして、スキップフラグFLG2がONにセットされた場合には、各記憶部35の残量情報が最後に更新されてからのインクの消費量Snが少ないと判断されるため、改ページのタイミングであっても、ニアエンド判定処理及び残量情報の更新がなされない。そのため、改ページに伴うキャリッジ17の停止時間が短くなり、ひいてはN+1ページ目の用紙Pに対する印刷開始タイミングが早くなる。その一方で、制限フラグFLG1がONにセットされても、スキップフラグFLG2がOFFにリセットされる場合には、各記憶部35の残量情報が最後に更新されてからのインクの消費量Snが多いと判断されるため、改ページのタイミングでニアエンド判定処理及び残量情報の更新が行なわれる。
【0051】
次に、上記ステップS10の印刷設定処理(印刷設定処理ルーチン)について、図5に示すフローチャートに基づき説明する。
さて、ステップS20において、主制御部45は、今回の印刷時の印刷モードが高速印刷モードであるか否かを判定する。本実施形態では、複数種類の印刷モードが設定されている。一例として、各印刷モードには、印刷精度よりも印刷速度を優先する高速印刷モード、及び印刷速度よりも印刷精度を優先する高詳細印刷モードなどが含まれている。そして、主制御部45は、印刷モードが高速印刷モードである場合にはその処理を次のステップS21に移行する一方、印刷モードが高速印刷モードではない(例えば、高詳細印刷モードである)場合にはその処理を後述するステップS23に移行する。
【0052】
ステップS21において、主制御部45は、今回の印刷で用いられる用紙PのサイズがA3サイズよりも小さいか否かを判定する。このA3サイズは、用紙Pのサイズが小さいサイズであるのか否かを判断するための所定のサイズである。そして、主制御部45は、用紙PのサイズがA3サイズよりも小さい場合にはその処理を次のステップS22に移行する一方、用紙PのサイズがA3サイズ以上である場合にはその処理を後述するステップS23に移行する。
【0053】
ステップS22において、主制御部45は、制限フラグFLG1をONにセットする。その後、主制御部45は、印刷設定処理ルーチンを終了する。
ステップS23において、主制御部45は、制限フラグFLG1をOFFにセットする。その後、主制御部45は、印刷設定処理ルーチンを終了する。
【0054】
次に、上記ステップS12の消費量判定処理(消費量判定処理ルーチン)について、図6に示すフローチャートに基づき説明する。
さて、ステップS30において、主制御部45は、最後に記憶部35の残量情報が更新されてからの各インクの消費量Sn(nは0〜4までの整数)を、消費量算出部49による算出結果に基づき算出する。次のステップS31において、主制御部45は、設定数nを「0(零)」に設定する。
【0055】
次のステップS32において、主制御部45は、各インクの消費量Snが予め設定された消費量閾値KS未満であるか否かを判定する。この消費量閾値KSは、最後に残量情報が更新されてからのインクの消費量が少ないか否かを判断するための基準値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。また、ステップS32では、設定数nが「0(零)」である場合には、第1のインク(例えばイエローインク)の消費量S0が消費量閾値KS未満であるか否かが判定され、設定数nが「1」である場合には、第2のインク(例えばマゼンタインク)の消費量S1が消費量閾値KS未満であるか否かが判定される。また、設定数nが「2」である場合には、第3のインク(例えばシアンインク)の消費量S2が消費量閾値KS未満であるか否かが判定され、設定数nが「3」である場合には、第4のインク(例えば黒インク)の消費量S3が消費量閾値KS未満であるか否かが判定される。そして、主制御部45は、消費量Snが消費量閾値KS以上である場合にはその処理を後述するステップS36に移行する一方、消費量Snが消費量閾値KS未満である場合にはその処理を次のステップS33に移行する。
【0056】
ステップS33において、主制御部45は、設定数nを「1」だけインクリメントする。次のステップS34では、主制御部45は、設定数nが「4」以上であるか否かを判定する。そして、主制御部45は、設定数nが「4」未満である場合にはその処理を前述したステップS32に移行する一方、設定数nが「4」以上である場合にはその処理を次のステップS35に移行する。ステップS35において、主制御部45は、消費量Snが消費量閾値KS未満となる種類のインクがないため、スキップフラグFLG2をONにセットする。その後、主制御部45は、消費量判定処理ルーチンを終了する。
【0057】
ステップS36において、主制御部45は、各インクのうち少なくとも一種類のインクの消費量Snが消費量閾値KS以上であるため、スキップフラグFLG2をOFFにリセットする。その後、主制御部45は、消費量判定処理ルーチンを終了する。
【0058】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)インクの消費量Snの少ない記録条件で、複数の用紙Pに対して連続して印刷が施される場合には、Nページ目の用紙Pへの印刷と、N+1ページ目の用紙Pとの間での各インクカートリッジ25の記憶部35に記憶される残量情報の更新が制限される。そのため、改ページの毎に残量情報が更新される場合と比較して残量情報の更新頻度が低くなる分、残量情報の更新に伴うキャリッジ17の停止時間の増加や停止回数の増加が抑制される。その一方で、残量情報の更新が制限されない場合には、改ページの毎に残量情報が更新される。したがって、インクカートリッジ25内のインクの残量を適切に管理しつつ、複数の用紙Pに対して連続して印刷を施す場合における印刷速度(記録処理速度)の向上に貢献できる。
【0059】
(2)その一方で、記憶部35の残量情報の更新が制限される場合であっても、残量情報が最後に更新されてからのインクの消費量Snが多いときには、Nページ目の用紙Pへの印刷と、N+1ページ目の用紙Pとの間で記憶部35の残量情報が更新される。そのため、各記憶部35に記憶される残量情報と、各インクカートリッジ25内のインクの実際の残量とが乖離することを抑制できる。
【0060】
(3)本実施形態では、1ページの印刷の完了時には、各記憶部35の残量情報が最後に更新されてからの各インクの消費量Sn(S0〜S3)が算出される。そして、こうした各インクの消費量Sn(S0〜S3)が消費量閾値KS未満である場合には、今回の改ページのタイミングでの残量情報の更新がスキップされる。すなわち、記録ヘッド24からのインク滴の実際の吐出量に基づき、インクの消費量が少ないか否かを好適に検出できると共に、残量情報の更新をスキップするか否かを判定できる。
【0061】
(4)印刷モード(記録モード)が高速印刷モード(高速モード)である場合において、インクの消費量Snの少ない記録条件であると共に、用紙PのサイズがA3サイズ未満であるときには、制限フラグFLG1がONにセットされる。そのため、複数の用紙Pに対して連続して印刷を施す場合には、残量情報の更新頻度を低くできる分、印刷速度を向上させることができる。
【0062】
(5)その一方で、印刷モードが高詳細印刷モードである場合、印刷速度よりも印刷精度が優先されると共に、高速印刷モードである場合と比較して各インクの消費量Snが増加する傾向にある。そのため、印刷モードが高詳細印刷モードである場合には、Nページ目の用紙Pへの印刷と、N+1ページ目の用紙Pとの間で残量情報が必ず更新される。したがって、各インクカートリッジ25内のインクの残量をより正確に管理できる。
【0063】
(6)また、印刷される用紙PのサイズがA3サイズ以上の場合には、1枚の用紙Pに対するインクの消費量Snが多いと判断される。そのため、用紙PのサイズがA3サイズ以上のサイズである場合には、Nページ目の用紙Pへの印刷と、N+1ページ目の用紙Pとの間で残量情報が必ず更新される。したがって、各インクカートリッジ25内のインクの残量をより正確に管理できる。
【0064】
(7)Nページ目の用紙Pへの印刷と、N+1ページ目の用紙Pとの間で各インクカートリッジ25の記憶部35に記憶される残量情報が更新される場合には、インクエンドセンサー34を用いたニアエンド判定処理が行なわれる。その一方で、Nページ目の用紙Pへの印刷と、N+1ページ目の用紙Pとの間で各インクカートリッジ25の記憶部35に記憶される残量情報の更新がスキップされる場合には、ニアエンド判定処理もまたスキップされる。そのため、改ページ中でのキャリッジ17の停止時間を短縮させることができる。したがって、インクカートリッジ25内のインクの残量を適切に管理しつつ、複数の用紙Pに対して連続して印刷を施す場合における印刷速度の向上に貢献できる。
【0065】
(8)もし仮にキャリッジ17の移動中に記憶部35への残量情報の更新を行なうとすると、制御装置40から記憶部35に出力される残量情報を含んだ信号には、キャリッジ17の移動に伴う配線ケーブル26の変形に起因したノイズが含まれる可能性がある。この場合、記憶部35に適切な残量情報を記憶させることができないおそれがある。この点、本実施形態では、キャリッジ17の停止中に残量情報の更新が行なわれるため、記憶部35に対して正確な残量情報を記憶させることができる。
【0066】
(9)また、もし仮にキャリッジ17の移動中にインクエンドセンサー34を用いたニアエンド判定処理を行なうとすると、インクエンドセンサー34から制御装置40に出力される電気信号には、キャリッジ17の移動に伴う配線ケーブル26の変形に起因したノイズが含まれる可能性がある。また、インクエンドセンサー34から出力される電気信号には、キャリッジ17の移動に伴う振動に応じたノイズが含まれる可能性がある。この場合、ニアエンド判定処理の正確性が低下するおそれがある。この点、本実施形態では、キャリッジ17の停止中にニアエンド判定処理が行なわれるため、ニアエンド判定処理の正確性を維持できる。
【0067】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図8に従って説明する。なお、第2の実施形態は、消費量判定処理ルーチンの内容の一部が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0068】
本実施形態の消費量判定処理ルーチンについて図8に示すフローチャートに基づき説明する。
さて、ステップS40において、主制御部45は、最後に記憶部35の残量情報が更新されてからの用紙Pの印刷枚数Mを取得する。次のステップS41において、主制御部45は、取得した印刷枚数Mが予め設定された数閾値KM(例えば5枚)未満であるか否かを判定する。この数閾値KMは、インクの消費量が少ない印刷条件であることを印刷枚数から判断するための基準値である。そして、主制御部45は、印刷枚数Mが数閾値KM未満である場合にはその処理を次のステップS42に移行する一方、印刷枚数Mが数閾値KM以上である場合にはその処理を後述するステップS43に移行する。
【0069】
ステップS42において、主制御部45は、スキップフラグFLG2をONにセットする。その後、主制御部45は、消費量判定処理ルーチンを終了する。
ステップS43において、主制御部45は、スキップフラグFLG2をOFFにリセットする。その後、主制御部45は、消費量判定処理ルーチンを終了する。
【0070】
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態における効果(1)(2)(4)〜(10)に加え、以下に示す効果を更に得ることができる。
(11)本実施形態では、連続して印刷される用紙Pの印刷枚数Mが数閾値KM未満である場合には、残量情報が最後に更新されてからのインクの消費量が少ないと判定される。そのため、残量情報が最後に更新されてからのインクの消費量が少ないか否かを好適に検出できると共に、残量情報の更新をスキップするか否かを判定できる。
【0071】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図9に従って説明する。なお、第3の実施形態は、消費量判定処理ルーチンの内容の一部が第1及び第2の各実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1及び第2の各実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1及び第2の各実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0072】
本実施形態のCR制御部48は、用紙Pへの印刷中、キャリッジ17が移動している時間(以下、「移動時間」ともいう。)を計測している。この移動時間には、給送装置15による用紙Pの給送に伴うキャリッジ17の停止時間は含まれない。
【0073】
本実施形態の消費量判定処理ルーチンについて図9に示すフローチャートに基づき説明する。
さて、ステップS50において、主制御部45は、最後に記憶部35の残量情報が更新されてからのキャリッジ17の移動時間TCを取得する。このとき、主制御部45は、CR制御部48からキャリッジ17の移動時間に関する情報を取得し、該取得結果に基づき移動時間TCを算出する。次のステップS51において、主制御部45は、取得したキャリッジ17の移動時間TCが予め設定された時間閾値KTC(例えば5分)未満であるか否かを判定する。この時間閾値KTCは、インクの消費量の少ない印刷条件であることをキャリッジ17の移動時間TCから判断するための基準値である。そして、主制御部45は、移動時間TCが時間閾値KTC未満である場合にはその処理を次のステップS52に移行する一方、移動時間TCが時間閾値KTC以上である場合にはその処理を後述するステップS53に移行する。
【0074】
ステップS52において、主制御部45は、スキップフラグFLG2をONにセットする。その後、主制御部45は、消費量判定処理ルーチンを終了する。
ステップS53において、主制御部45は、スキップフラグFLG2をOFFにリセットする。その後、主制御部45は、消費量判定処理ルーチンを終了する。
【0075】
したがって、本実施形態では、上記各実施形態における効果(1)(2)(4)〜(10)に加え、以下に示す効果を更に得ることができる。
(12)本実施形態では、連続して複数枚の用紙Pが印刷される際におけるキャリッジ17の移動時間TCが時間閾値KTC未満である場合には、残量情報が最後に更新されてからのインクの消費量が少ないと判定される。そのため、残量情報が最後に更新されてからのインクの消費量が少ないか否かを好適に検出できると共に、残量情報の更新をスキップするか否かを判定できる。
【0076】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・各実施形態において、インクカートリッジ25は、インクエンドセンサー34を備えない構成であってもよい。この場合、キャリッジ17内においてインクカートリッジ25と記録ヘッド24との間のインク流路の外周側に、インクエンドセンサー34を配置してもよい。このように構成すると、上記各実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0077】
インクカートリッジ25やキャリッジ17に、インクエンドセンサー34を設けなくてもよい。この場合、上記ステップS16の処理を省略してもよい。
・各実施形態において、上記ステップS20,S21の各判定処理のうち、少なくとも一方の判定処理での判定結果が肯定判定である場合に、制限フラグFLG1をONにセットしてもよい。
【0078】
・各実施形態において、ステップS21の判定処理を実行する一方で、ステップS20の判定処理を省略してもよい。
・各実施形態において、ステップS20の判定処理を実行する一方で、ステップS21の判定処理を省略してもよい。
【0079】
・第1の実施形態において、各インクの消費量Sn(S0〜S3)が全て消費量閾値KS以上となった場合に、スキップフラグFLG2をOFFにリセットしてもよい。
・各実施形態において、プリンターを、用紙Pの搬送方向と交差する方向に沿って複数の記録ヘッドが配置される、いわゆるフルラインタイプのプリンターに具体化してもよい。この場合、各記録ヘッドは、用紙Pへの印刷中に搬送方向(所定の走査方向)に沿って移動する移動部材に搭載されている。こうした移動部材には、インクなどの記録材が貯留される貯留手段が着脱自在に装着されている。
【0080】
・各実施形態では、記録装置をインクジェット式のシリアルプリンターに具体化したが、インク以外の他の液体(記録材)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
11…記録装置としてのプリンター、17…移動部材としてのキャリッジ、24…記録手段としての記録ヘッド、25…貯留手段としてのインクカートリッジ、32…貯留室、34…信号出力手段としてのインクエンドセンサー、35…記憶部、45…情報更新手段、条件判定手段、スキップ許可手段、ニアエンド判定手段としての主制御部、48…制御手段としてのCR制御部、49…消費量取得手段としての消費量算出部、KM…数閾値、KS…消費量閾値、KTC…時間閾値、P…記録媒体としての用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材を記録媒体に付着させて記録する記録手段と、前記記録手段が搭載され且つ所定の走査方向に沿って移動する移動部材と、前記移動部材の移動を制御する制御手段とを備え、前記移動部材には、記録材を貯留する貯留室及び該貯留室内の記録材の残量に関する残量情報を記憶する記憶部を有する貯留手段が着脱自在な状態で装着されてなる記録装置において、
前記記録手段での記録材の消費量を取得する消費量取得手段と、
前記制御手段によって前記移動部材が停止されたときに、前記記憶部の残量情報を前記消費量取得手段によって取得された記録材の消費量に基づき更新する情報更新手段と、
記録媒体に記録処理を施す際の記録条件が記録材の消費量の少ない記録条件であるか否かを判定する条件判定手段と、
前記条件判定手段によって記録材の消費量の少ない記録条件であると判定された場合において、複数の記録媒体に対して連続して記録処理を施すときには、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間での前記情報更新手段による前記記憶部の残量情報の更新を制限する制限手段と、をさらに備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制限手段によって前記貯留手段の前記記憶部の残量情報の更新が制限される場合において、前記記憶部の残量情報が最後に更新されてからの前記記録手段による記録材の消費量が少ないときには、
前記情報更新手段は、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間で、前記記憶部の残量情報を更新しない一方、
前記制限手段によって前記記憶部の残量情報の更新が制限される場合において、前記記憶部の残量情報が最後に更新されてからの前記記録手段による記録材の消費量が多いときには、
前記制御手段は、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間で移動部材を一時的に停止させると共に、前記情報更新手段は、前記移動部材の停止中に前記記憶部の残量情報を更新することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記情報更新手段は、
前記貯留手段の前記記憶部の残量情報が最後に更新されてから前記消費量取得手段によって取得される記録材の消費量が予め設定された消費量閾値未満である場合、
前記記憶部の残量情報が最後に更新されてから記録処理を施した記録媒体の数が予め設定された数閾値未満である場合及び
前記記憶部の残量情報が最後に更新されてから記録媒体への記録に要した時間が予め設定された時間閾値未満である場合の何れか一つが成立した場合に、
前記記録手段による記録材の消費量が少ないと判定することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記条件判定手段は、
記録媒体に記録処理を施す場合における記録モードが記録速度優先の高速モードであること、及び記録処理が施される記録媒体のサイズが予め設定された所定のサイズよりも小さいサイズであることのうち少なくとも一方が成立する場合に、
記録材の消費量の少ない記録条件であると判定することを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記貯留手段には、前記貯留室内の記録材の残量に応じた検出信号を出力する信号出力手段が設けられると共に、
前記移動部材とは別の位置に設けられ、且つ前記移動部材が停止した際に前記信号出力手段から出力される検出信号に基づき前記貯留手段内の記録材の残量が少ないニアエンド状態であるか否かを判定するニアエンド判定手段をさらに備え、
前記制限手段は、
前記条件判定手段によって記録材の消費量の少ない記録条件であると判定された場合には、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間で、前記情報更新手段による前記記憶部の残量情報の更新及び前記ニアエンド判定手段による判定処理の実行を制限する一方、
前記条件判定手段によって記録材の消費量の多い記録条件であると判定された場合には、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間で、前記情報更新手段による前記記憶部の残量情報の更新及び前記ニアエンド判定手段による判定処理の実行を制限しないことを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
記録材を記録媒体に付着させて記録する記録手段が搭載されると共に所定の走査方向に移動する移動部材に、着脱自在な状態で装着される貯留手段に貯留される記録材の残量に関する残量情報を管理する記録材の残量管理方法であって、
前記貯留手段には、該貯留手段内の記録材の残量に関する残量情報を記憶する記憶部が設けられており、
記録媒体に記録処理を施す際の記録条件が記録材の消費量の少ない記録条件であるか否かを判定する条件判定ステップと、
前記条件判定ステップで記録材の消費量が少ない記録条件であると判定した場合において、複数の記録媒体に対して連続して記録処理が施されるときには、一の記録媒体への記録処理と次の記録媒体への記録処理との間での前記記憶部の残量情報の更新の実行を制限させる制限ステップと、を有することを特徴とする記録材の残量管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−173392(P2011−173392A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40936(P2010−40936)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】