説明

記録装置

【課題】ディスク状媒体の記録時に使用する部品の点数やコストの増加を抑え、紛失を防止することができる記録装置を提供すること。
【解決手段】装置100の底部に収納可能なシート状媒体のスタッカ44が、ディスク状媒体の記録時に使用するトレイを兼ねる構造に形成されている。これにより、シート状媒体のスタッカ機能とディスク状媒体のトレイ機能を装置底部に収納可能な1つの部品で賄うことができるので、部品の点数やコストの増加を抑えることができると共に紛失を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状及びディスク状の被記録媒体の表面に記録が可能な記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録装置の1つであるシリアル方式のインクジェット式プリンタは、主走査方向に往復移動するキャリッジに搭載された記録ヘッドと、副走査方向に用紙を間欠的に設定量ずつ搬送する紙送りローラを備えている。そして、用紙を副走査方向に搬送しつつ記録ヘッドを主走査方向に往復移動させ、記録ヘッドから用紙にインク滴を吐出して文字や画像等を記録するように構成されている。
【0003】
新規の用紙はプリンタ本体の背面側に配設されている収納自在な給紙トレイ内に積載されて一端がホッパにより持ち上げられ、最上位の用紙が給紙ローラにより引き出されて給紙される。そして、給紙された用紙は紙送りローラにより搬送されて上記記録が行われ、記録済みの用紙は排紙ローラにより搬送されてプリンタ本体の前面側に配設されている収納自在な排紙スタッカ上に排紙されるようになっている。
【0004】
ところで、近年、個人的にデータ書き込み可能なCD−RW/RやDVD−RW/R等の光ディスクが普及してきたことから、その表面にラベルの記録が可能なインクジェット式プリンタが開発されている。光ディスクの表面に記録する場合、光ディスクは通常の用紙のように供給・搬送することができないので、矩形平板状のディスクトレイに光ディスクを収納し、このディスクトレイを搬送することにより光ディスクの表面に記録するようにしている。
【0005】
即ち、ユーザは、ディスクトレイに光ディスクを収納し、そのディスクトレイを排紙口側から排紙ローラ上を通して紙送りローラとピンチローラのニップ点に突き当たるまで挿入する。この状態で、紙送りローラが、逆回転してディスクトレイをピンチローラと共に挟持し、光ディスクの記録開始位置まで逆搬送する。その後、紙送りローラが正回転してディスクトレイを搬送し、記録ヘッドが光ディスクの表面に記録するようになっている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−42384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したディスクトレイは、光ディスクの表面に記録する場合にのみ使用されるため、インクジェット式プリンタとは別体で構成されている。従って、ディスクトレイの分だけ部品点数や部品コストが増加する。また、通常の用紙に記録するときは、ディスクトレイをプリンタ設置場所とは別に設けたトレイ収納場所に保管しておく必要がある。このため、ユーザのディスクトレイの管理が不十分な場合は、ディスクトレイを紛失するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ディスク状媒体の記録時に使用する部品の点数やコストの増加を抑え、紛失を防止することができる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的達成のため、本発明の記録装置では、シート状及びディスク状の被記録媒体の表面に記録が可能な記録装置であって、装置底部に収納可能なシート状媒体のスタッカが、ディスク状媒体の記録時に使用するトレイを兼ねる構造に形成されていることを特徴としている。これにより、シート状媒体のスタッカ機能とディスク状媒体のトレイ機能を装置底部に収納可能な1つの部品で賄うことができるので、部品の点数やコストの増加を抑えることができると共に紛失を防止することができる。
【0010】
また、前記スタッカが多段のスタッカ部材で構成されており、2段以降の前記スタッカ部材が前記トレイを兼ねる構造に形成されていることを特徴としている。これにより、スタッカをガイドとしてトレイとして使用する際の引出し及びトレイとして使用した後の収納をスムーズに行うことができる。また、前記トレイは、表側が前記シート状媒体を受け、裏側が前記ディスク状媒体を載置する構造に形成されていることを特徴としている。これにより、裏側に対し表側を比較的滑らかな面に形成することができるので、シート状媒体の排出をスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの外観構成の全体を示す斜視図である。このインクジェット式プリンタ100は、例えば名刺、カード、L判/2L判、ハガキ、六切やJIS規格のA6判からA4判までのサイズの単票紙(シート状媒体)と、例えばCD−R(Compact Disc−Recordable)やDVD−R(Digital Versatile Disc−Recordable)等の光ディスク(ディスク状媒体)のレーベル面に記録することができる機能を備えている。
【0013】
このインクジェット式プリンタ100は、全体が略直方体状のハウジング101で覆われている。そして、ハウジング101の上面における前面側には操作部110が配設され、前面における図示右側にはメモリカードスロット部120が配設され、上面における背面側には給紙部130が配設され、前面側には本発明の特徴的な部分を含む排紙部140が配設されている。
【0014】
操作部110は、略矩形状の操作パネル111を備え、この操作パネル111の略中央部に操作状態等を表示する液晶パネル112が配設され、この液晶パネル112の両側にパワーをオン・オフするパワー系、光ディスクの記録開始を操作したり、用紙の頭出し等を操作したり、インクのフラッシング等を操作する操作系、画像処理等を行う処理系等の図示しないボタンが配設されている。ユーザは、液晶パネル112を見て確認しながらボタンを操作することができるので、誤操作を防止することができる。
【0015】
メモリカードスロット部120は、図示矢印a方向に開閉自在なカバー121で覆われている。このメモリカードスロット部120は、例えば5スロット形成され、13種類のメモリカードに対応可能に構成されている。ユーザは、インクジェット式プリンタ100をパーソナルコンピュータに接続しなくても、インクジェット式プリンタ100単独の状態でメモリカードスロット部120にメモリカードを差し込むのみで、メモリカードに格納されている画像等を記録することができる。給紙部130は、給紙する用紙を1枚もしくは複数枚サポートする機能を併せ持った図示しないペーパーサポートを備えている。
【0016】
排紙部140は、前方に向かって矩形状に開口した排紙口141に対し引出・差込自在な本発明の特徴的な部分であるスタッカ142を備えている。このスタッカ142は、排紙される用紙を1枚もしくは複数枚載置するスタック機能と、光ディスクのレーベル面に記録する際に光ディスクを保持するトレイ機能を併せ持っている。このスタッカ142は、前後方に向かって伸縮自在な多段構成であり、不使用のときはハウジング101内の底部に収納されており、使用するときは排紙口141から前方に引き出され、使用した後は排紙口141に向かって差し込まれてハウジング101の底部に収納される。
【0017】
即ち、このスタッカ142は、第1スタッカ(スタッカ部材)41、第2スタッカ(スタッカ部材)42、第3スタッカ(スタッカ部材)43及び第4スタッカ(スタッカ部材)44を備えている。第1スタッカ41は、平板状に形成されて先端が排紙口141と面一となるようにハウジング101内の底部に取り付けられている。第2スタッカ42は、平板状に形成されて第1スタッカ41に格納・引出自在に配設されている。第3スタッカ43は、平板状に形成されて第2スタッカ42に格納・引出自在に配設されている。第4スタッカ44は、平板状に形成されて第3スタッカ43に格納・引出自在に配設されている。
【0018】
スタッカ142を使用するとき又は使用しないときは、第2スタッカ42は第1スタッカ41に案内されつつ引出され又は格納され、第3スタッカ43は第2スタッカ42に案内されつつ引出され又は格納され、第4スタッカ44は第3スタッカ43に案内されつつ引出され又は格納されるので、第2、第3、第4スタッカ42、43、44の引出・格納をスムーズに行うことができる。また、第2、第3、第4スタッカ42、43、44の格納時は、インクジェット式プリンタ100をコンパクトにしておくことができる。
【0019】
ここで、光ディスクは例えばポリカーボネイト等の硬質プラスチックで円盤状に形成されているため、光ディスクのレーベル面に記録を行う場合に屈曲を伴う搬送ができないので、トレイに光ディスクを収納して搬送する必要がある。本実施形態のスタッカ142の第4スタッカ44は、用紙を載置するスタック機能と、光ディスクを保持するトレイ機能を併せ持っている。この第4スタッカ44の詳細について更に図を参照して以下に説明する。
【0020】
図2(A)、(B)は、上記第4スタッカ44の表裏面の詳細を示す斜視図である。この第4スタッカ44は、矩形平板状に形成されており、後端側441から第3スタッカ43に挿入される。そして、表面44aの先端側は比較的平坦な面に形成され、裏面44bの略中央部には光ディスクが収納可能な円形凹状のディスク収納部44cが形成されている。そして、このディスク収納部44cの中心部には光ディスクの中心穴が嵌め込まれる円形凸状のディスク固定部44dが形成されている。また、ディスク収納部44cの外周部の対向2箇所には光ディスクを取り出すための半円形状のディスク取出し穴44eが穿設されている。第4スタッカ44の表面44aの先端側は比較的平坦な面に形成されているので、排紙される用紙の先端が引っ掛かることは無く、排紙をスムーズに行うことができる。
【0021】
図3及び図4は、用紙に記録する場合のインクジェット式プリンタ100の状態を示す斜視図及び光ディスクのレーベル面に記録する場合のインクジェット式プリンタ100の状態を示す斜視図である。用紙に記録する場合は、図3に示すように、ユーザは、第2スタッカ42を第1スタッカ41から引き出し、第3スタッカ43を第2スタッカ42から引き出し、第4スタッカ44を第3スタッカ43から引き出す。これにより、スタッカ142の面積を広くすることができるので、大きなサイズから小さなサイズまでの排紙される用紙を確実に積層載置することができる。
【0022】
光ディスクに記録する場合は、図4に示すように、先ず、ユーザは、第4スタッカ44を第3スタッカ43から抜き取り、第4スタッカ44のディスク収納部44cに光ディスクDを収納する。このとき、第2スタッカ42及び第3スタッカ43は、第1スタッカ41及び第2スタッカ42から引き出したままの状態でも差し込んだ状態でも良い。次に、ユーザは、この第4スタッカ44を後端側441から排紙口141に差し込み、図示しない排紙ローラを通って紙送りローラとその従動ローラのニップ点に突き当たるまで挿入してセットする。
【0023】
そして、ユーザは、光ディスクDが収納された第4スタッカ44を紙送りローラとその従動ローラのニップ点まで差し込んでセットしたら、操作部110の光ディスク記録開始ボタンを押す。これにより、排紙ローラが逆回転して第4スタッカ44の後端部441を紙送りローラとその従動ローラにニップさせ、更に紙送りローラが逆回転して第4スタッカ44を所定位置まで逆搬送する。そして、紙送りローラが正回転して第4スタッカ44を記録開始位置に位置決めした後、更に紙送りローラが正回転して第4スタッカ44を搬送する。
【0024】
同時に、図示しないキャリッジモータとキャリッジベルトによりキャリッジに搭載された記録ヘッドが走査され、光ディスクDのレーベル面が記録される。このとき、例えばイエロー、マゼンタ、ライトマゼンタ、シアン、ライトシアン、ブラックの計6色のインクカートリッジから記録ヘッドへ各色インクが供給され、各色インクの吐出タイミング及びキャリッジや紙送りローラの駆動が制御されて、高精度なインクドット制御、ハーフトーン処理等が実行される。その後、排紙ローラが正回転して第4スタッカ44を排紙口141から突出させる。ユーザは、第4スタッカ44を排紙口141から抜き取り、記録が完了した光ディスクDを第4スタッカ44のディスク収納部44cから取り出す。以上により、光ディスクDのレーベル面への記録が完了する。
【0025】
以上のように、本実施形態によれば、インクジェット式プリンタ100の底部に収納可能なスタッカ142を構成する第4スタッカ44が、光ディスクの記録時に使用するトレイを兼ねる構造に形成されているので、部品の点数やコストの増加を抑えることができると共に紛失を防止することができる。尚、上述した実施形態では、多段のスタッカ142としたが、1段のスタッカとして用紙のスタック機能と光ディスクのトレイ機能を持たせるように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
スタッカを備えた記録装置であれば、例えばコピー装置、スキャナ装置、ファクシミリ装置等であっても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの外観構成の全体を示す斜視図である。
【図2】図1のプリンタの第4スタッカの表裏面の詳細を示す斜視図である。
【図3】用紙に記録する場合のインクジェット式プリンタの状態を示す斜視図である。
【図4】光ディスクのレーベル面に記録する場合のインクジェット式プリンタの状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
41 第1スタッカ、42 第2スタッカ、43 第3スタッカ、44 第4スタッカ、100 インクジェット式プリンタ、110 操作部、120 メモリカードスロット部、130 給紙部、140 排紙部、141 排紙口、142 スタッカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状及びディスク状の被記録媒体の表面に記録が可能な記録装置であって、
装置底部に収納可能なシート状媒体のスタッカが、ディスク状媒体の記録時に使用するトレイを兼ねる構造に形成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記スタッカが多段のスタッカ部材で構成されており、2段以降の前記スタッカ部材が前記トレイを兼ねる構造に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記トレイは、表側が前記シート状媒体を受け、裏側が前記ディスク状媒体を載置する構造に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−245401(P2007−245401A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69278(P2006−69278)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】