説明

記録装置

【課題】搬送ベルトの表面に付着したインクなどの異物の他の構成部品への付着を防止することができる記録装置を提供すること。
【解決手段】搬送ベルト203が矢印A1方向に回転するときに、その表面に付着している異物をワイパー251によって除去する。搬送ベルト203が矢印A2方向に所定量以上回転するときに、その表面に接触しているピンチローラ208,除電ローラ209,および給電ローラ213を搬送ベルト203の表面から離間させる。その所定量は、搬送ベルト203の矢印A2方向の回転によって、ワイパー251に接触していた搬送ベルト203の表面の部分がピンチローラ208,除電ローラ209,および給電ローラ213と接触するまでの回転量とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ベルトによって搬送される記録媒体に、インクを付与することによって画像を記録する記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録装置としては、記録紙(記録媒体)を静電気により表面に吸着する搬送ベルトを用いて、その記録紙を搬送させながら、その記録紙にインクジェット記録ヘッドにより記録を行う記録装置がある。このような記録装置においては、搬送ベルトの表面に付着したインクが次ページの記録紙の裏面に転写されるおそれがあった。
【0003】
特許文献1には、搬送ベルトの表面から離間可能に構成されたブレードなどのベルト清掃手段を用いて、搬送ベルトに付着したインクをクリーニングする方式が記載されている。特許文献2には、記録紙の両面に記録を行う両面記録モードにおいて、その記録紙の表面に記録をした後、その裏面に記録をするために記録紙を反転させる際に、ベルト洗浄用のローラを搬送ベルトに接触させて搬送ベルトをクリーニングする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−137033号公報
【特許文献2】特開2007−069438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のクリーニング方式は、両面記録モードにおいて、記録紙の表面に記録をした後に、その記録紙を記録位置に引き込むために搬送ベルトを逆転させたときに、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、ブレードと搬送ベルトとの間のニップ部に溜まっていたインクが搬送ベルトと共に移動し、そのインクが搬送ベルトに接しているローラに付着するおそれがある。また、特許文献2に記載のクリーニング方式は、ベルト洗浄用のローラ(クリーニングローラ)が搬送ベルトよりもインク吸着性の良い材料で構成されているため、そのローラが一度吸収したインクが搬送ベルトに再転写されるおそれがある。また、記録紙の後端に余白を形成しない縁なし記録をした場合に、記録紙の後端からはみ出して搬送ベルト上に吐出されたインクをクリーニングするためには、その記録紙が搬送ベルトから離れるまで、その記録紙を搬送させなければならない。
【0006】
本発明の目的は、搬送ベルトの表面に付着したインクなどの異物の他の構成部品への付着を防止することができる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の記録装置は、第1の方向およびそれとは逆の第2の方向に回転可能な搬送ベルトによって搬送される記録媒体に、インクを付与することにより画像を記録する記録装置において、前記搬送ベルトの表面に接触することにより、前記搬送ベルトが前記第1の方向に回転するときに当該搬送ベルトの表面に付着している異物を除去するための第1のクリーニング手段と、前記搬送ベルトの表面に接触可能な部品と、前記搬送ベルトが前記第2の方向に第1の所定量以上回転するときに、前記部品を前記搬送ベルトの表面から離間させる第1の移動手段と、を備え、前記第1の所定量は、前記搬送ベルトの前記第2の方向の回転によって、前記第1のクリーニング手段に接触していた前記搬送ベルトの表面の部分が前記部品と接触するまでの回転量であることを特徴とする。
【0008】
本発明の記録装置は、記録媒体を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトによって第1の方向に搬送される前記記録媒体、および当該記録媒体から外れた前記搬送ベルトの表面にインクを付与することによって、前記記録媒体に、当該記録媒体の端部に余白のない記録を行う記録部と、前記搬送ベルトによって前記第1の方向に搬送される前記記録媒体を前記搬送ベルトと協働して挟持する挟持部材と、前記搬送ベルトによって前記第1の方向とは反対の第2の方向に搬送される前記記録媒体の表裏を反転させる反転手段と、前記搬送ベルトによって前記記録媒体を前記第2の方向に搬送するときに、少なくとも前記搬送ベルトの表面のインクが付着した部分が前記搬送ベルトと前記挟持部材が接触している位置を通過する場合には、前記挟持部材を前記搬送ベルトから離間させるように前記挟持部材を移動させる移動手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の記録装置は、記録媒体を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトによって第1の方向に搬送される前記記録媒体、および当該記録媒体から外れた前記搬送ベルトの表面にインクを付与することによって、前記記録媒体に、当該記録媒体の端部に余白のない記録を行う記録部と、前記記録媒体と接触する前記搬送ベルトの表面に接触して回転する回転体と、前記搬送ベルトによって前記第1の方向とは反対の第2の方向に搬送される前記記録媒体の表裏を反転させる反転手段と、前記搬送ベルトによって前記記録媒体を前記第2の方向に搬送するときに、少なくとも前記搬送ベルトの表面のインクが付着した部分が前記搬送ベルトと前記回転体が接触している位置を通過する場合には、前記回転体を前記搬送ベルトから離間させるように前記回転体を移動させる移動手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の記録装置は、記録媒体を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトによって第1の方向に搬送される前記記録媒体、および当該記録媒体から外れた前記搬送ベルトの表面にインクを付与することによって、前記記録媒体に、当該記録媒体の端部に余白のない記録を行う記録部と、前記記録媒体と接触する前記搬送ベルトの表面に接触して異物を除去するクリーニング手段と、前記搬送ベルトによって前記第1の方向とは反対の第2の方向に搬送される前記記録媒体の表裏を反転させる反転手段と、前記搬送ベルトによって前記記録媒体を前記第2の方向に搬送するときに、少なくとも前記搬送ベルトの表面のインクが付着した部分が前記搬送ベルトと前記クリーニング手段が接触している位置を通過する場合に、前記クリーニング手段を前記搬送ベルトから離間させるように前記クリーニング手段を移動させる移動手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の記録装置は、記録媒体を搬送する搬送ベルトと、第1の方向に移動する前記搬送ベルトによって搬送される前記記録媒体にインクを付与することによって、前記記録媒体に記録を行う記録部と、前記第1の方向に移動する前記搬送ベルトの表面に接触して異物を除去する第1のクリーニング手段と、前記第1の方向とは反対の第2の方向に移動する前記搬送ベルトの表面に接触して異物を除去する第2のクリーニング手段と、前記搬送ベルトが前記第1の方向に移動するとき前記第2のクリーニング手段を前記搬送ベルトから離間させ、前記搬送ベルトが第2の方向に移動するとき前記第1のクリーニング手段を前記搬送ベルトから離間させる移動手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬送ベルトが第1の方向に回転するときに、その表面に付着している異物をクリーニング部材によって除去し、搬送ベルトが逆の第2の方向に所定量以上回転するときに、その表面に接触している部品を搬送ベルトの表面から離間させる。その所定量は、搬送ベルトの第2の方向の回転によって、クリーニング部材に接触していた搬送ベルトの表面の部分が部品と接触するまでの回転量とすることにより、その部品に、搬送ベルトの表面上の異物が付着することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態の記録装置における要部の概略断面図である。
【図2】図1の記録装置における搬送部および排紙部の概略断面図である。
【図3】図1の記録装置における搬送部の概略断面図である。
【図4】図1の記録装置における搬送部および排紙部の駆動部の概略図である。
【図5】図1の記録装置におけるキャリッジ部の概略図である。
【図6】図1の記録装置における紙搬送路の概略断面図である。
【図7】図1の記録装置における紙搬送路の概略断面図である。
【図8】図1の記録装置における搬送部の概略断面図である。
【図9】図1の記録装置における搬送部の概略断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の記録装置における搬送部の概略断面図である。
【図11】図10の搬送部の逆転動作時の概略断面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態の記録装置における制御系のブロック構成図である。
【図13】本発明の第1の実施形態の記録装置における裏面記録動作を説明するためのフローチャートである。
【図14】本発明の第1の実施形態の記録装置における記録動作後の回復ユニットの駆動制御を説明するためのフローチャートである。
【図15】本発明の第2の実施形態の記録装置における裏面記録動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を複数の実施形態に基づき図面を参照して説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の記録装置の第1の実施形態を説明するための概略断面図である。
【0016】
本例の記録装置において、記録紙(記録媒体)Pは、給紙部100によって搬送部200まで給紙されてから、その搬送部200によって記録領域内を通して矢印A1方向(副走査方向)に搬送される。排出部300は、搬送部200による記録紙Pの搬送方向下流に位置して、記録が終了した記録紙Pを機外に排出する。キャリッジ部400は、記録ヘッドH(記録部)を記録紙Pの搬送方向と交差(本例の場合は、直交)する方向(主走査方向)に移動させる。両面ユニット600(反転手段)は、記録紙Pの両面に画像を記録するために記録紙Pを反転させる。
【0017】
記録ヘッドHとしては、記録紙Pにインクを付与することによって画像を記録することができる種々の方式のものを用いることができ、本例の場合は、インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドが用いられている。インクジェット記録ヘッドは、吐出エネルギー発生素子として、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などを用いることができる。電気熱変換素子を用いた場合には、それが発生する熱エネルギーを利用して、インク吐出口からインクを吐出することができる。
【0018】
給紙部100は給紙モータ(不図示)により駆動され、その給紙モータが回転すると、記録紙Pがスタックされている圧板101が持ち上がり、その記録紙Pが給紙ローラ102に当接する。そして、給紙ローラ102が矢印X方向に回転することにより、圧板101上において一番上に位置する記録紙Pは、給紙ローラ102と当接する分離部103によって分離される。その分離された記録紙Pは、紙ガイド104,105、およびピンチローラホルダ211によってガイドされながら搬送部200まで給紙される。
【0019】
図2は、搬送部200および排紙部300の概略断面図、図3は、搬送部200概略断面図である。
【0020】
搬送部200において、対向する駆動ローラ201と従動ローラ202との間には搬送ベルト203が掛け渡されている。駆動ローラ201と従動ローラ202は、それぞれ駆動ローラ軸受204、従動ローラ軸受205を介してプラテン206に支持されている。従動ローラ202は、従動ローラ軸受205を介して、圧縮ばねである従動ローラバネ207によって搬送ベルト203を張る方向に押圧されている。駆動ローラ201の上方には、搬送ベルト203の移動に伴って従動回転して、記録紙Pを搬送ベルト203に押し付けるピンチローラ208が設けられている。また、記録時における記録紙Pの搬送方向下流側(搬送ベルト203による搬送方向下流側)には、搬送ベルト203の移動に伴って従動回転して、記録紙Pの上面および搬送ベルト203の表面の除電を行う除電ローラ209が設けられている。
【0021】
記録時における記録紙Pの搬送方向上流側(図3中の駆動ローラ201の右側)には、搬送ベルト203を介して駆動ローラ201と対向して、搬送ベルト203の表面に電荷を帯電させる給電ローラ213が設けられている。給電ローラ213は、給電ローラ軸受214を介して、給電ローラばね215により搬送ベルト203の表面に押し付けられており、搬送ベルト203の移動に伴って従動回転する。給電ローラ213の位置よりも、記録時における記録媒体Pの搬送方向上流側の(図3中の駆動ローラ201の下側)の位置には、搬送ベルト203を介して駆動ローラ201と対向するワイパー251(第1のクリーニング手段)が設けられている。ワイパー251は、搬送ベルト203の表面に接触可能であり、その表面に付着したインク、汚れ、異物を除去することができる。
【0022】
ピンチローラ208、除電ローラ209、給電ローラ(回転体)213、およびワイパー251は、駆動源(不図示)に連結したカム等(不図示)により、搬送ベルト203に対して離間可能になっている。ピンチローラ208と除電ローラ209は、搬送ベルト203と協働して記録媒体Pを挟持するための挟持部材としても機能する。後述するように、インクが付着した搬送ベルト203の部分が挟持部材と搬送ベルト203が接触している位置を通過する場合に、それらの挟持部材が搬送ベルト203から離間される。
【0023】
駆動ローラ201には、金属材料からなる第1のローラ部201aと、ゴム材等の弾性材料からなる第2のローラ部201bと、が設けられている。これらのローラ部201a,201bは駆動ローラ201の軸線方向にずれて位置し、第1のローラ部201aは、第2のローラ部201bよりも小径に形成されている。第2のローラ部201bを形成するゴム材としては、例えば、EPDM(エチレン−プロピレン三量体)の導電ゴムが用いられ、そのゴム硬度は50°〜90°程度が好ましい。また、第2のローラ部201bを金属パイプで形成して、その外周表面上に、導電性のEPDMを被覆したり、導電性のウレタン系のエラストマーや導電性のウレタン塗料を塗布して、比較的摩擦係数が高い材料による第2のローラ部201bとしてもよい。第1のローラ部201aは、金属部品等(不図示)を介してアースされている。従動ローラ202は金属材料からなり、第1のローラ部202aおよび第2のローラ部202bが設けられており、第1のローラ部202aは、第2のローラ部202bよりも小径に形成されている。従動ローラ202の軽量化のために、第2のローラ部202bはパイプで形成してもよい。
【0024】
搬送ベルト203は、その表面が絶縁層で、その裏面が導電層の2層構造のベルトである。また、搬送ベルト203として、高抵抗、高誘電率の単層ベルトを使用してもよい。
【0025】
ピンチローラ208および除電ローラ209は、導電性材料からなるピンチローラホルダ211に支持され、そのピンチローラホルダ211は、金属材料からなるシャーシ500に取り付けられる。シャーシ500は、記録装置内を通じてアースされている。ピンチローラ208には、金属材料からなる第1のローラ部208aと、ゴム材等の弾性材料からなる第2のローラ部208bと、が設けられている。これらのローラ部208a,208bはピンチローラ208の軸線方向にずれて位置し、第1のローラ部208aは、第2のローラ部208bよりも小径に形成されている。第2のローラ部208bを形成するゴム材としては、例えば、EPDM(エチレン−プロピレン三量体)の導電ゴムが用いられ、そのゴム硬度は50°〜90°程度が好ましい。除電ローラ209は金属材料からなり、第1のローラ部209aおよび第2のローラ部209bが設けられている。これらのローラ部209a,209bは除電ローラ209の軸線方向にずれて位置し、第1のローラ部209aは、第2のローラ部209bよりも小径に形成されている。ピンチローラ208および除電ローラ209は、導電性のプラスチック材料によって形成してもよい。ピンチローラ208および除電ローラ209は、それぞれピンチローラばね212および除電ローラばね(不図示)によって搬送ベルト203に押圧される。
【0026】
給電ローラ213には、金属材料からなる第1のローラ部213aと、スポンジ等の発泡材料からなる第2のローラ部213bと、が設けられている。これらのローラ部213a,213bは給電ローラ213の軸線方向にずれて位置し、第1のローラ部213aは、第2のローラ部213bよりも小径に形成されている。第2のローラ部213bを形成するスポンジ材料としては、例えば、ウレタン、NBR、EPDM(エチレン−プロピレン三量体)、ヒドリンゴム等を用いることができる。第1のローラ部213aは、導電材料である金属部品等(不図示)を介して、給電ローラ213に電圧を印加するための電源に接続されている。
【0027】
ワイパー(第1のクリーニング手段)251は、ウレタンなどのゴム、あるいはプラスチック、エラストマーなどの可撓性の薄板材料からなり、ワイパーホルダ252に取り付けられる。ワイパーホルダ252は、不図示の回動機構(第2の移動手段)によって、回転中心252aを中心として矢印C1,C2方向に回動可能である。ワイパーホルダ252を矢印C1方向に付勢するワイパーばね253により、ワイパー251のエッジ部251aが搬送ベルト203に押圧される。ワイパー251のエッジ部251aは、駆動ローラ201の第2のローラ部201bによって内面が支えられる搬送ベルト203の部分の外面に当接する。ワイパー251は、搬送ベルト203上におけるインク、汚れ、異物の除去性能を向上させるために、搬送ベルト203の搬送方向に対して逆らう方向(カウンタ方向)に当接させることが好ましい。また、ワイパー251と搬送ベルト203の当接部Bには、搬送ベルト203の回動に伴って、ワイパー251によって堰き止められたインクが溜まってくる。その溜まったインクを吸収・排出するために、ブリッジ部材254がワイパー251と並列に設けられている。このブリッジ部材254は、ワイパー251によって堰き止められたインクインクをインク吸収部材(不図示)まで導く。ブリッジ部材254の材料としては、例えば、多孔質部材が用いられる。
【0028】
プラテン206は、矢印A1の記録時の搬送方向、および、その搬送方向と直交する方向に位置する複数のリブ(不図示)を備えている。搬送ベルト203は、記録ヘッドHによる記録時に、リブ(不図示)上を移動することにより記録紙Pを矢印A1方向に搬送する。搬送ベルト203の高さ方向の位置は、リブ(不図示)の上面によって規定される。
【0029】
排紙部300には、排紙ローラ301、排紙ローラ301に対して従動回転する拍車302、拍車302を支持する拍車ホルダ303、および拍車ホルダ303をシャーシ500に支持する拍車ステイ304が備えられている。排紙ローラ301には、金属材料からなる第1のローラ部301aと、ゴム材等の弾性材料からなる第2のローラ部301bと、が設けられている。これらのローラ部301a,301bは排紙ローラ301の軸線方向にずれて位置し、第1のローラ部301aは、第2のローラ部301bよりも小径に形成されている。第2のローラ部301bを形成するゴム材としては、例えば、EPDM(エチレン−プロピレン三量体)が用いられ、そのゴム硬度は50°〜90°程度が好ましい。第2のローラ部301bは、例えば、ウレタン系のエラストマーやウレタン塗料を塗布したもの等、比較的摩擦係数が高い材料によって形成してもよい。また、排紙ローラ301としては、記録紙Pを搬送する外周表面上に、セラミック粒子を含有する塗料が塗布されているローラを用いてもよい。拍車302の中心軸には貫通穴が形成されており、その貫通穴には、排紙ローラ301に対する拍車302の圧接力を与えるために、ばね軸としての拍車ばね(不図示)が挿入される。拍車302は、その拍車ばね(不図示)を介して拍車ホルダ303に取り付けられる。
【0030】
図4は、搬送部200および排紙部300の駆動部分の概略図である。
【0031】
駆動ローラ201は、搬送用モータ221の駆動力により、駆動ベルト222および駆動ローラプーリ223を介して一方向および他方向に回転される。したがって、搬送ベルト203は矢印A1,A2方向に回転可能である。駆動ローラ201には、その回転量を検知するためのロータリーエンコーダ224が取り付けられている。そのロータリーエンコーダ224に印刷されたスリットをエンコーダセンサ225によって読み取ることにより、駆動ローラ201を所定の量だけ回転させることができる。排紙ローラ301は、搬送用モータ221によって、駆動ベルト222、駆動ローラプーリ223、排紙駆動ベルト231、および排紙ローラプーリ232を介して回転駆動される。
【0032】
図5は、キャリッジ部400の概略図である。
【0033】
キャリッジ部400は、記録ヘッドHを搭載するキャリッジ401と、そのキャリッジ401を駆動する駆動部と、を含む。キャリッジ401は、シャーシに組み付けられたガイド軸402およびガイドレール403に沿って、主走査方向(図5中の紙面の表裏方向)に移動可能に支持されており、ガイドレール403によってガイド軸402回りの回転が拘束されている。キャリッジ401は、ガイド軸402およびガイドレール403に案内されて、不図示の移送モータ(キャリッジモータ)によって主走査方向に移動される。
【0034】
記録紙P上に画像を記録する際には、記録データに応じて、キャリッジ401を主走査方向に移動させつつ記録ヘッドHからインクを吐出させる動作と、駆動ローラ201の一定量の回転によって記録紙Pを副走査方向に所定量搬送する動作と、を繰り返す。記録が終了した記録紙Pは、排紙ローラ301と拍車302によって装置外に排出される。
【0035】
図12は、本実施形態における記録装置の制御系のブロック構成図である。CPU700は、後述する記録装置の動作の制御処理やデータ処置等を実行し、ROM701には、それらの処理手順等のプログラムが格納され、RAM702は、それらの処理を実行するためのワークエリアなどとして用いられる。CPU700は、記録データなどの供給先となるホスト装置(ホストコンピュータ)からの入力信号、およびエンコーダセンサ225を含む種々のセンサの検出信号などに基づいて、記録ヘッドHや種々のモータをドライバを介して制御する。制御対象のモータとしては、搬送用モータ221、給紙ローラ102を回転させるための給紙モータ703、両面ユニット600を駆動するための両面ユニットモータ704、キャリッジ401を移動させるためのキャリッジモータ705が含まれる。さらに、後述する移動機構(第1の移動手段)を構成するローラ離間用のモータ706、および後述する回動機構(第2の移動手段)を構成するワイパー離間用のモータ707が含まれる。また、708は、後述する第2の実施形態における移動機構(第3の移動手段)を構成する第2ワイパー離間用のモータである。
【0036】
次に、このような記録時におけるピンチローラ208、除電ローラ209、給電ローラ213、およびワイパー251の動作を図6から図9を用いて説明する。
【0037】
給紙モータ(不図示)により給紙ローラ102が矢印X方向に回転することにより、圧板101上にスタックされている記録紙Pは、搬送ローラ201上の搬送ベルト203と、ピンチローラ208と、の間に形成される狭持部に向かって給紙される。このとき、搬送用モータ221は停止しており、給紙された記録紙Pの先端Paは、搬送ローラ201上の搬送ベルト203と、ピンチローラ208と、の間に形成される狭持部に突き当たる。その後、さらに給紙ローラ102を回転させることにより、記録紙Pの先端Paはその狭持部に沿って整列する。給紙時および記録時において、ピンチローラ208、除電ローラ209、給電ローラ213、およびワイパー251は搬送ベルト203に当接している。
【0038】
その後、搬送用モータ221を駆動して、搬送ベルト203を矢印A1方向(第1の方向)に回転(以下、「正転」という)させる。記録紙Pは、給電ローラ213により電荷が帯電された搬送ベルト203上に、ピンチローラ208によって押し付けられて吸着される。そして記録紙Pは、搬送ベルト203上に吸着された状態で搬送されながら、前述したように、記録ヘッドHにより画像が記録される。
【0039】
縁なし記録モードによって、記録紙Pの少なくとも1つの端部に余白を形成することなく画像を記録する場合、記録紙P上からはみ出すように記録ヘッドHから吐出されたインクは、搬送ベルト203上に付着する。その搬送ベルト203上のインクは、ワイパー251と搬送ベルト203との当接部Bに到達することにより、その当接部Bにて堰き止められる。その当接部Bにて堰き止められなかったインクは、搬送ベルト203上に付着している。
【0040】
両面記録モードによって、記録紙Pの両面に画像を記録する場合、記録紙Pの一方の面(以下、「表面」という)に記録した後、他方の面(以下、「裏面」という)に記録をするときに、記録紙Pは両面ユニット600に引き込まれる。すなわち、記録紙Pを吸着した状態の搬送ベルト203を矢印A1方向と反対の矢印A2方向(第2の方向)に回転(以下、「逆転」という)させることにより、その搬送ベルト203上の記録紙Pが両面ユニット600に引き込まれる。搬送ベルト203を逆転させる前には、図7のように、不図示の移動機構(第1の移動手段)によって、ピンチローラ208、除電ローラ209、および給電ローラ213を搬送ベルト203から離間させる。また、下記のような所定の条件を満たした場合には、不図示の回動機構(第2の移動手段)によって、ワイパー251も搬送ベルト203から離間させる。
【0041】
図8は、縁なし記録モードにおいて、記録ヘッHによって記録データの最終行が記録紙Pに記録された時点を示し、記録紙Pの後端からはみ出すように記録ヘッドHから吐出されたインクは、搬送ベルト203上に着弾する。このように記録データの最終行が記録紙Pに記録された時点において、記録紙Pの後端Pbからはみ出して搬送ベルト203上に着弾したインクの着弾位置の内、記録時における用紙搬送方向(矢印A1方向)の最上流側の着弾位置を位置Dとする。搬送ベルト203上において、駆動ローラ201側を経由する、位置Dと当接部Bとの間の距離を第1の距離L1とし、従動ローラ202を経由する、位置Dと当接部Bとの間の距離を第2の距離L2とする。当接部Bは、ワイパー251と搬送ベルト203との当接部である。距離L1は、搬送ベルト203の矢印A2方向の回転によって、搬送ベルト203の表面に付与されたインクの位置Dがワイパー251と接触する位置まで回転する回転量(第4の所定量)に相当する。また、両面記録モードにおいて、図8のように記録データの最終行が記録紙Pに記録された後に、その記録紙Pを両面ユニット600への引き込むために必要な搬送ベルト203の逆転移動距離を第3の距離L3とする。第1の距離L1が第3の距離L3よりも小さい場合には、ワイパー251も搬送ベルト203から離間させる。
【0042】
記録紙Pを両面ユニット600に引き込むために、搬送ベルト203を逆転させて、記録紙Pを両面ユニットに搬出した際、搬送ベルト203に付着したインクが搬送ベルト203と一緒に移動する。その際、ピンチローラ208、除電ローラ209、および給電ローラ213を搬送ベルト203から離間させることにより、それらのローラに搬送ベルト203上のインクは付着しない。また、記録紙Pの引き込みに必要な第3の距離L3だけ搬送ベルト203が逆転した場合、第1の距離L1が第3の距離L3よりも小さいときには、搬送ベルト203上のインクの付着位置Dがワイパー251と搬送ベルト203との当接部Bに至ることになる。しかし、第1の距離L1が第3の距離L3よりも小さい場合に、ワイパー251を搬送ベルト203から離間させることにより、そのワイパー251にも搬送ベルト203上のインクは付着しない。つまり、距離L3が距離L1よりも大きくて、搬送ベルト203が矢印A2方向に距離L1以上、つまり第4の所定量以上回転するときに、ワイパー251が搬送ベルト203から離間する。
【0043】
また、距離L1は、ローラ208,209,213に対応するように設定してもよい。例えば、搬送ベルト203の矢印A2方向の回転によって、インクの付着位置Dが除電ローラ209、ピンチローラ208、および給電ローラ213に接するまでの回転量をL1−1、L1−2,L1−3(第3の所定量)とする。そして、距離L3がL1−1≦L3<L1−2のときは、除電ローラ209を搬送ベルト203から離間させ、L1−2≦L3<L1−3のときは、除電ローラ209とピンチローラ208を搬送ベルト203から離間させる。また、L3≧L1−3のときは、除電ローラ209、ピンチローラ208、および給電ローラ213を搬送ベルト203から離間させる。つまり、搬送ベルト203が矢印A2方向に第3の所定量以上回転するときに、除電ローラ209、ピンチローラ208、および給電ローラ213を搬送ベルト203から離間させることができる。
【0044】
図13は、このような両面記録モードにおける記録装置の動作を説明するためのフローチャートである。まずは、前述したように、表面に画像が記録された記録紙Pを両面ユニット600へ引き込むために必要な搬送ベルト203の逆転移動距離を第3の距離L3として取得する(ステップS1)。そして、搬送ベルト上の位置Dにおける付着インクが除電ローラ209の位置に到達する場合、つまりL1−1≦L3のときは、除電ローラ209を搬送ベルト203から離間させ(ステップS2,S3)させる。また、その付着インクがピンチローラ208の位置に到達する場合、つまりL1−2≦L3のときは、さらにピンチローラ208を搬送ベルト203から離間させる(ステップS4,S5)。また、その付着インクが給電ローラ213の位置に到達する場合、つまりL1−3≦L3のときは、さらに給電ローラ213を搬送ベルト203から離間させ(ステップS6,S7)。また、その付着インクがワイパー251の位置に到達する場合、つまりL1≦L3のときは、さらにワイパー251を搬送ベルト203から離間させる(ステップS8,S9)。その後、両面ユニット600を駆動させると共に、搬送ベルト203を逆転させる(ステップS10)。
【0045】
両面ユニット600に引き込まれた記録紙Pは、その両面ユニット600内にて図7中の矢印E方向に送られて反転され、その表裏面が反転されてから、再び、搬送ローラ201と対向する搬送ベルト203と、ピンチローラ208と、の間の狭持部に給紙される。反転された記録紙Pがその挟持部に到達するまでに、搬送ベルト203を記録時の用紙搬送方向(矢印A1方向)に所定の第4の距離L4(第5の所定量)だけ回転させる。その距離L4は、搬送ベルト203上のインク残留部分の位置Dを、除電ローラ209の位置よりも矢印A1方向の下流側に位置させ、かつ反転後に給紙される記録紙Pの先端(反転前の後端Pb)よりも矢印A1方向の下流側に位置させるために必要な距離である。その第4の距離L4だけ搬送ベルト203を回転させる際、その回転方向は正転でも逆転でもよい。つまり、両面ユニット600から搬入される表裏面反転後の記録紙Pと、除電ローラ209と、に対して、搬送ベルト203におけるインク残留部分の位置Dが矢印A1方向の下流側に位置するように、搬送ベルト203を第5の所定量以上回転させる。これにより、搬送ベルト203上に付着したインクは、除電ローラ209よりも矢印A1方向の下流側に位置することになる(ステップS11)。
【0046】
ワイパー251を搬送ベルト203から離間させなかった場合には、ワイパー251におけるインクの堰止め側と反対の側に、搬送ベルト203上のインク残留部分が付着することを防止するために、搬送ベルト203を正転させる必要がある。本例のように、ワイパー251を搬送ベルト203から離間させた場合には、搬送ベルト203を正転または逆転のいずれの方向に回転させてもよい。搬送ベルト203を第4の距離だけ回転させてから、搬送ベルト203から離間させていたピンチローラ208、除電ローラ209、給電ローラ213、およびワイパー251を再び搬送ベルト203に当接させる(ステップS12)。その後、記録紙Pの表面に対する先の記録動作と同様に、裏面に対する記録動作(裏面記録)を行なう(ステップS13)。
【0047】
記録紙Pの裏面の記録終了後は、搬送ベルト203に付着したインクを全てワイパー251と搬送ベルト203の間の当接部Aに集めるために、搬送ベルト203を所定の第2の距離L2′よりも長い第5の距離だけ正転させる。記録紙Pの裏面に記録データの最終行が記録された時点において、記録紙Pの後端からはみ出して搬送ベルト203上に着弾したインクの着弾位置の内、記録時における用紙搬送方向(矢印A1方向)の最上流側の着弾位置を位置D′とする。搬送ベルト203上において、駆動ローラ201側を経由する位置D′と当接部Bとの間の距離を第1の距離L1′とし、従動ローラ202を経由する位置D′と当接部Bとの間の距離を第2の距離L2′とする。このような第2の距離L2´よりも長い第5の距離だけ、搬送ベルト203を正転させる。ワイパー251と搬送ベルト203との当接部Bに集められたインクは、ブリッジ部材254を伝達してインク吸収部材(不図示)まで導かれる。
【0048】
次に、記録終了後に、搬送用モータ221の駆動力によって記録装置における他のユニットを動作させるときに、搬送ベルト203が矢印A2方向に逆転する場合について説明する。他のユニットとしては、記録ヘッドHの吐出口からのインクの吐出状態を良好に維持するための回復処理を行う回復ユニット(不図示)を挙げることができる。その回復処理としては、吐出口からキャップ内にインクを吸引排出させる吸引回復処理、画像の記録に寄与しないインクをキャップ内等に吐出させる予備吐出処理、吐出口が形成される吐出口形成面をワイピングするワイピング処理などが含まれる。吸引回復処理時には、吐出口が形成される記録ヘッドHの吐出口形成面にキャップを密着させて、そのキャップ内に、吸引ポンプによって発生させた負圧を導入することにより、吐出口内の増粘インクなどを吐出口からキャップ内にインクを吸引排出される。記録終了後に、このような回復ユニットを動作させるために、搬送用モータ221の駆動力を利用することができる。より具体的には、吸引回復処理のための負圧を発生する吸引ポンプの駆動源として、搬送用モータ221を利用することができる。
【0049】
図9において、第6の距離L6は、従動ローラ202を経由する、搬送ベルト203上の第1および第2の位置間の距離である。第1の位置は、除電ローラ209が搬送ベルト203に接する位置であり、第2の位置は、ワイパー251と搬送ベルト203との当接部Bの位置である。したがって、第6の距離L6は、ワイパー251によって堰き止められていた搬送ベルト203上のインクが搬送ベルト203と共に逆転したときに、そのインクが除電ローラ209に接する位置までの回転量(第1の所定量)に相当する。また、記録装置における他のユニット(例えば、回復ユニットの吸引ポンプ)を動作させるときに、搬送ベルト203が矢印A2方向に逆転移動する距離を第7の距離L7とし、その第7の距離L7と第6の距離L6とを比較する。
【0050】
そして、第6の距離L6が第7の距離L7よりも短い場合には、駆動源(不図示)によりカム(不図示)を動作させて、ピンチローラ208、除電ローラ209、給電ローラ213を搬送ベルト203から離間させる。このように、搬送ベルト203が第1の所定量以上回転するときに、ピンチローラ208、除電ローラ209、給電ローラ213を搬送ベルト203から離間させる。その後、搬送ベルト203の逆転を伴って、搬送用モータ221により他のユニットを動作させる。また、搬送ベルト203を1周以上逆転させる場合には、ワイパー251も搬送ベルト203から離間させてから、搬送ベルト203の逆転を伴って、搬送用モータ221により他のユニットを動作させる。これらの結果、搬送ベルト203上のインクは、各ローラ208,209,213およびワイパー251に付着しない。
【0051】
また、第6の距離L6は、ローラ208,209,213毎に設定してもよい。例えば、搬送ベルト203の矢印A2方向の回転によって、ワイパー251と接触していた搬送ベルト203の表面の部分が除電ローラ209、ピンチローラ208、および給電ローラ213に接するまでの移動距離をL6−1、L6−2,L6−3とする。そして、距離L7がL6−1≦L7<L6−2のときは、除電ローラ209を搬送ベルト203から離間させ、L6−2≦L7<L6−3のときは、除電ローラ209とピンチローラ208を搬送ベルト203から離間させる。また、L7≧L6−3のときは、除電ローラ209、ピンチローラ208、および給電ローラ213を搬送ベルト203から離間させる。
【0052】
図14は、このように搬送用モータ221によって他のユニットを駆動させるときの記録装置の動作を説明するためのフローチャートである。ここでは、搬送用モータ221によって回復ユニットの吸引ポンプを駆動させる場合について説明する。
【0053】
まずは、前述したように、回復ユニットの吸引ポンプを動作させるときに、搬送ベルト203が矢印A2方向に逆転移動する距離を第7の距離L7として取得する(ステップS21)。そして、ワイパー251によって堰き止められていた搬送ベルト203上の付着インクが除電ローラ209の位置に到達する場合、つまりL6−1≦L7のときは、除電ローラ209を搬送ベルト203から離間させ(ステップS22,S23)させる。また、その付着インクがピンチローラ208の位置に到達する場合、つまりL6−2≦L7のときは、さらにピンチローラ208を搬送ベルト203から離間させる(ステップS24,S25)。また、その付着インクが給電ローラ213の位置に到達する場合、つまりL6−3≦L7のときは、さらに給電ローラ213を搬送ベルト203から離間させ(ステップS26,S27)。また、その付着インクがワイパー251の位置に到達する場合、つまりL6≦L7のときは、さらにワイパー251を搬送ベルト203から離間させる(ステップS28,S29)。その後、両面ユニット600を駆動させると共に、搬送ベルト203を逆転させる(ステップS10)。
【0054】
その後、回復ユニットの吸引ポンプを搬送用モータ221に接続してから(ステップS30)、その搬送用モータ221によって回復ユニット吸引ポンプを駆動する(ステップS31)。その後、搬送ベルト203を矢印A1方向あるいは矢印A2方向に移動させて、ワイパー251によって堰き止められていた搬送ベルト203上の付着インクを除電ローラ209よりも矢印A1方向の下流側に位置させる(ステップS32)。
【0055】
また、搬送ベルト203の矢印A2方向の回転によって、ワイパー251と接触していた搬送ベルト203の表面の部分が再びワイパー251に接するまでの回転量をL6−4(第2の所定量)としてもよい。この場合には、距離L7がL7≧L6−4のとき、つまり搬送ベルト203が矢印A2方向に第2の所定量以上回転するときに、ワイパー251を搬送ベルト203から離間させることができる。
【0056】
(第2の実施形態)
図10および図11は、本発明の第2の実施形態を説明するための概略断面図を示す。図15は、本実施形態における記録装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0057】
本実施形態においては、前述した第1の実施形態の構成に加えて、搬送ベルト203の表面に付着したインク、汚れ、異物を除去するための第2ワイパー(第2のクリーニング手段)261が備えられている。その第2ワイパー261は、搬送ベルト203を介して従動ローラ202と対向する位置に配備されており、不図示の移動機構(第3の移動手段)によって、搬送ベルト203の表面に対して接触および離間移動される。
【0058】
第2ワイパー261は、ウレタンなどのゴム、あるいはプラスチック、エラストマーなどの可撓性の薄板材料からなり、第2ワイパーホルダ262に取り付けられている。第2ワイパーホルダ262は、回転中心262aを中心に回動可能であり、そのエッジ部261aは、裏面が従動ローラ202に支えられた搬送ベルト203の表面に当接する。第2ワイパー261は、インク、汚れ、異物の除去性能を向上させるために、搬送ベルト203に対して、その矢印A2の逆転方向に逆らう向き(カウンタ方向)に当接させることが好ましい。また、第2ワイパー261と搬送ベルト203の当接部Fには、搬送ベルト203上のインクが堰き止められたインクが溜まってくる。その溜まったインクを吸収・排出するために、例えば、多孔質部材からなるブリッジ部材を設けてもよい。第2ワイパー261は、駆動源(不図示)に連結したカム等(不図示)により、搬送ベルト203に対して当接/離間可能になっており、記録紙Pの給紙時および記録時には、図10のように搬送ベルト203から離間している。
【0059】
両面記録モードにおいて、記録紙Pは、その表面に対する記録終了後、その裏面に記録をするために両面ユニット600に引き込まれる。搬送ベルト203が記録紙Pを吸着した状態のまま、矢印A2方向に逆転することにより、記録紙Pが両面ユニット600に引き込まれる。搬送ベルト203を逆転させる前に、図11のように、ピンチローラ208、除電ローラ209、給電ローラ213、ワイパー251を搬送ベルト203から離間させ、第2ワイパー261を搬送ベルト203に当接させる。このような動作は、図15中のステップS41,S42,S43に対応する。その後、両面ユニット600を駆動し、搬送ベルト203を矢印A2方向に逆転させる(ステップS44)。記録紙Pを両面ユニット600に引き込む際に、搬送ベルト203上に付着したインクは搬送ベルト203と一緒に移動する。しかし、各ローラ208,209,213およびワイパー251を搬送ベルト203から離間させため、搬送ベルト203上に付着したインクは、各ローラ208,209,213の表面、およびワイパー251におけるインクの堰止め側と反対の側に付着しない。搬送ベルト203の逆転により、第2ワイパー261と搬送ベルト203の当接部Fに到達したインクは、その当接部Fにて堰き止められる。
【0060】
両面ユニット600に引き込まれた記録紙Pが両面ユニット600内にて反転されてから、搬送ベルト203によって、搬送ローラ201とピンチローラ208との間の狭持部に再び到達するまでに、搬送ベルト203を所定量だけ逆転させる。その搬送ベルト203を逆転させる量は、第2ワイパー261と搬送ベルト203との当接部Fと、ワイパー251と搬送ベルト203の当接部Bと、の間に、搬送ベルト203上のインク残留部分の全てを位置させるために必要な量である。その後、搬送ベルト203から離間させていたピンチローラ208、除電ローラ209、給電ローラ213、およびワイパー251を搬送ベルト203に再び当接させると共に、第2ワイパー261を搬送ベルト203から離間させる。このような動作は、図15中のステップS45、S46,S47に対応する。当接部Bと当接部Fとの間に位置する搬送ベルト203上のインクは、記録紙Pの裏面の記録時に搬送ベルト203の正転と共に移動し、ワイパー251と搬送ベルト203の当接部Bにて堰き止められる。その堰き止められたインクは、ブリッジ部材254を伝わってインク吸収部材(不図示)まで導かれる。その後、記録紙Pの表面に対する先の記録動作と同様に、裏面に対する記録動作(裏面記録)を行なう(ステップS48)。
【0061】
(他の実施形態)
第2の実施形態において、第2ワイパー261は、ウレタンなどのゴム、あるいはプラスチック、エラストマーなどの可撓性の薄板材料で構成した。しかし、それは、インクを吸収するスポンジ等の発泡材料や、インクを吸収できる吸収材料によって構成してもよい。記録紙Pは、記録装置の後方上部に設けた給紙部100から給紙する他、記録装置の下方に設けたカセットから給紙してもよい。
【0062】
搬送ベルトの表面に接触する部品は、ピンチローラ208,除電ローラ209,および給電ローラ213のみに特定されず、またローラの形態でなくてもよい。搬送ベルトは、記録媒体の搬送が可能な構成あればよく、静電気により記録媒体を吸着可能な構成のみに特定されず、記録媒体を真空吸着する構成であったり、単に、記録媒体が載置される構成であってもよい。また、記録装置は、記録ヘッドの主走査方向の移動を伴って画像を記録するシリアルスキャン方式のみに特定されず、記録ヘッドを定位置に備えて、記録媒体を連続的に搬送させることによって画像を記録するするフル来院方式であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
P 記録紙(記録媒体)
H 記録ヘッド
201 駆動ローラ
202 従動ローラ
203 搬送ベルト
208 ピンチローラ
209 除電ローラ
213 給電ローラ
251 ワイパー
261 ワイパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向およびそれとは逆の第2の方向に回転可能な搬送ベルトによって搬送される記録媒体に、インクを付与することにより画像を記録する記録装置において、
前記搬送ベルトの表面に接触することにより、前記搬送ベルトが前記第1の方向に回転するときに当該搬送ベルトの表面に付着している異物を除去するための第1のクリーニング手段と、
前記搬送ベルトの表面に接触可能な部品と、
前記搬送ベルトが前記第2の方向に第1の所定量以上回転するときに、前記部品を前記搬送ベルトの表面から離間させる第1の移動手段と、
を備え、
前記第1の所定量は、前記搬送ベルトの前記第2の方向の回転によって、前記第1のクリーニング手段に接触していた前記搬送ベルトの表面の部分が前記部品と接触するまでの回転量である
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記搬送ベルトが前記第2の方向に第2の所定量以上回転するときに、前記第1のクリーニング手段を前記搬送ベルトの表面から離間させる第2の移動手段を備え、
前記第2の所定量は、前記搬送ベルトの前記第2の方向の回転によって、前記第1のクリーニング手段に接触していた前記搬送ベルトの表面の部分が再び前記クリーニング手段と接触するまでの回転量である
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記記録装置は、前記記録媒体の位置から外れた前記搬送ベルトの表面にもインクを付与することによって、前記記録媒体の少なくとも1つの端部に余白のない記録を行うための縁なし記録モードを備え、
前記第1の移動手段は、前記記録モードのときに、前記搬送ベルトが前記第2の方向に第3の所定量以上回転するときに、前記部品を前記搬送ベルトの表面から離間させ、
前記第3の所定量は、前記搬送ベルトの前記第2の方向の回転によって、前記搬送ベルトの表面に付与されたインクが前記部品と接触するまでの回転量である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録装置は、前記記録媒体の位置から外れた前記搬送ベルトの表面にもインクを付与することによって、前記記録媒体の少なくとも1つの端部に余白のない記録を行うための縁なし記録モードを備え、
前記第2の移動手段は、前記記録モードのときに、前記搬送ベルトが前記第2の方向に第4の所定量以上回転するときに、前記第1のクリーニング手段を前記搬送ベルトの表面から離間させ、
前記第4の所定量は、前記搬送ベルトの前記第2の方向の回転によって、前記搬送ベルトの表面に付与されたインクが前記第1のクリーニング手段と接触するまでの回転量である
ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録装置は、
前記搬送ベルトの前記第1の方向の回転によって搬送される表裏面の反転前の前記記録媒体の一方の面に画像を記録し、その後、前記一方の面に画像が記録された前記記録媒体の表裏面を反転手段によって反転させ、前記搬送ベルトの前記第1の方向の回転によって搬送される表裏面の反転後の前記記録媒体の他方の面に画像を記録するための両面記録モードと、
前記記録装置は、前記記録媒体の位置から外れた前記搬送ベルトの表面にもインクを付与することによって、前記記録媒体の少なくとも1つの端部に余白のない記録を行うための縁なし記録モードと、
を備え、
前記搬送ベルトは、前記記録媒体の前記一方の面に画像が記録された後に前記第2の方向に回転することによって、前記記録媒体を前記反転手段に搬出し、その後、前記第1の方向に第5の所定量以上回転することによって、前記反転手段により表裏面が反転された前記記録媒体を搬入し、
前記第5の所定量は、前記搬送ベルトの前記第1または第2の方向の回転によって、前記搬送ベルトの表面に付与されたインクが、当該搬送ベルトに搬入される表裏面の反転後の前記記録媒体、および前記部品よりも前記第2の方向の下流側に位置するまでの回転量である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
前記第1のクリーニング手段は、可撓性の薄板からなるワイパーを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
前記部品は、前記搬送ベルトの表面に前記記録媒体を押し付けるためのピンチローラであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の記録装置。
【請求項8】
前記搬送ベルトは、静電気により前記記録媒体を吸着可能であり、
前記部品は、前記搬送ベルトの表面に接触する給電ローラおよび除電ローラの内の少なくとも一方である
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の記録装置。
【請求項9】
前記搬送ベルトの表面に接触することにより、前記搬送ベルトが前記第2の方向に回転するときに当該搬送ベルトの表面に付着している異物を除去するための第2のクリーニング手段を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の記録装置。
【請求項10】
前記搬送ベルトが前記第1の方向に回転するときに、前記第2のクリーニング手段を前記搬送ベルトの表面から離間させる第3の移動手段を備えることを特徴とする請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
記録媒体を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトによって第1の方向に搬送される前記記録媒体、および当該記録媒体から外れた前記搬送ベルトの表面にインクを付与することによって、前記記録媒体に、当該記録媒体の端部に余白のない記録を行う記録部と、
前記搬送ベルトによって前記第1の方向に搬送される前記記録媒体を前記搬送ベルトと協働して挟持する挟持部材と、
前記搬送ベルトによって前記第1の方向とは反対の第2の方向に搬送される前記記録媒体の表裏を反転させる反転手段と、
前記搬送ベルトによって前記記録媒体を前記第2の方向に搬送するときに、少なくとも前記搬送ベルトの表面のインクが付着した部分が前記搬送ベルトと前記挟持部材が接触している位置を通過する場合には、前記挟持部材を前記搬送ベルトから離間させるように前記挟持部材を移動させる移動手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項12】
前記挟持部材は、記録媒体の表面から電荷を逃がす除電ローラであることを特徴とする請求項11に記載の記録装置。
【請求項13】
前記挟持部材はピンチローラであることを特徴とする請求項11に記載の記録装置。
【請求項14】
記録媒体を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトによって第1の方向に搬送される前記記録媒体、および当該記録媒体から外れた前記搬送ベルトの表面にインクを付与することによって、前記記録媒体に、当該記録媒体の端部に余白のない記録を行う記録部と、
前記記録媒体と接触する前記搬送ベルトの表面に接触して回転する回転体と、
前記搬送ベルトによって前記第1の方向とは反対の第2の方向に搬送される前記記録媒体の表裏を反転させる反転手段と、
前記搬送ベルトによって前記記録媒体を前記第2の方向に搬送するときに、少なくとも前記搬送ベルトの表面のインクが付着した部分が前記搬送ベルトと前記回転体が接触している位置を通過する場合には、前記回転体を前記搬送ベルトから離間させるように前記回転体を移動させる移動手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項15】
前記回転体は、前記搬送ベルトを帯電させる給電ローラであることを特徴とする請求項14に記載の記録装置。
【請求項16】
記録媒体を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトによって第1の方向に搬送される前記記録媒体、および当該記録媒体から外れた前記搬送ベルトの表面にインクを付与することによって、前記記録媒体に、当該記録媒体の端部に余白のない記録を行う記録部と、
前記記録媒体と接触する前記搬送ベルトの表面に接触して異物を除去するクリーニング手段と、
前記搬送ベルトによって前記第1の方向とは反対の第2の方向に搬送される前記記録媒体の表裏を反転させる反転手段と、
前記搬送ベルトによって前記記録媒体を前記第2の方向に搬送するときに、少なくとも前記搬送ベルトの表面のインクが付着した部分が前記搬送ベルトと前記クリーニング手段が接触している位置を通過する場合に、前記クリーニング手段を前記搬送ベルトから離間させるように前記クリーニング手段を移動させる移動手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項17】
記録媒体を搬送する搬送ベルトと、
第1の方向に移動する前記搬送ベルトによって搬送される前記記録媒体にインクを付与することによって、前記記録媒体に記録を行う記録部と、
前記第1の方向に移動する前記搬送ベルトの表面に接触して異物を除去する第1のクリーニング手段と、
前記第1の方向とは反対の第2の方向に移動する前記搬送ベルトの表面に接触して異物を除去する第2のクリーニング手段と、
前記搬送ベルトが前記第1の方向に移動するとき前記第2のクリーニング手段を前記搬送ベルトから離間させ、前記搬送ベルトが第2の方向に移動するとき前記第1のクリーニング手段を前記搬送ベルトから離間させる移動手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項18】
前記記録部は、前記記録媒体、および当該記録媒体から外れた前記搬送ベルトの表面にインクを付与することによって、前記記録媒体に、当該記録媒体の端部に余白のない記録を行い、
前記搬送ベルトによって前記第2の方向に搬送される前記記録媒体の表裏を反転させる反転手段を有し、
前記搬送ベルトによって前記記録媒体を前記第2の方向に搬送するとき、前記移動手段によって前記第1のクリーニング手段を前記搬送ベルトから離間させ、かつ前記第2のクリーニング手段を前記搬送ベルトに当接させる
ことを特徴とする請求項17に記載の記録装置。
【請求項19】
表裏の一方の面に記録が行なわれた前記記録媒体を前記反転手段によって表裏を反転させた後、前記記録媒体の表裏の他方の面に記録を行うために当該記録媒体を前記搬送ベルトによって搬送する前に、前記搬送ベルトの表面のインクが付着した部分を、前記第1のクリーニング手段が前記搬送ベルトと接触する位置と、前記第2のクリーニング手段が前記搬送ベルトと接触する位置と、の間に位置させるように前記搬送ベルトを駆動することを特徴とする請求項18に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−246280(P2011−246280A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98466(P2011−98466)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】