説明

記録装置

【課題】記録が行われた記録媒体を適切に排出することができる記録装置を提供する。
【解決手段】記録が行われた用紙Pを起立状態で保持する保持部の保持面61に添うように用紙Pを搬送する排紙ローラー44(第1ローラー)と、排紙ローラー44の下流側で保持面61の対向位置に設けられ、排紙ローラー44を通過した用紙Pを搬送するピックアップローラー50(第2ローラー)と、ピックアップローラー50の搬送駆動を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、用紙Pの後端が排紙ローラー44を通過してから、用紙Pの後端が排紙ローラー44から離間するまでの間、ピックアップローラー50を搬送駆動し、用紙Pの後端が排紙ローラー44から離間してから、ピックアップローラー50を通過するまでの間の任意のタイミングでピックアップローラー50の搬送駆動を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の記録を行った記録媒体を起立姿勢で保持する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体(記録用紙)を起立姿勢で収容可能な記録用紙収容部から記録媒体を搬送して、記録済みの記録媒体を起立姿勢で保持する排紙スタックと、記録済みの記録媒体が搬送される搬送経路の終端において、排紙スタックの近傍に配設された排紙ローラーと、を備えた縦置き型の記録装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−205655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の縦置き型の記録装置では、記録済みの記録媒体は、排紙ローラーの駆動力(回転)のみによって、排紙スタックへ排紙されていた。このため、排紙ローラーから排紙スタックへの記録媒体の排紙が適切に行われずに、排紙ローラー上に記録媒体が残存するという問題があった。一般的に、排紙ローラーの表面はゴム等からなるため、記録媒体が排紙ローラーに接触した状態で、排紙ローラーを駆動すると、記録媒体が汚れたり破損するという問題があった。また、記録媒体が排紙ローラーに接触した状態で、排紙ローラーを逆転すると記録媒体が引き込まれ、紙詰りの原因になるという問題もあった。
【0005】
本発明は、記録が行われた記録媒体を適切に排出することができる記録装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、記録が行われた記録媒体を起立状態で保持する保持部の保持面に添うように記録媒体を搬送する第1ローラーと、第1ローラーの下流側で保持面の対向位置に設けられ、第1ローラーを通過した記録媒体を搬送する第2ローラーと、第2ローラーの搬送駆動を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、記録媒体の後端が第1ローラーを通過してから、記録媒体の後端が第1ローラーから離間するまでの間、第2ローラーを搬送駆動し、記録媒体の後端が第1ローラーから離間してから、第2ローラーを通過するまでの間の任意のタイミングで第2ローラーの搬送駆動を停止することを特徴とする。
【0007】
また、他の記録装置は、記録が行われた記録媒体を起立状態で保持する保持部の保持面に添うように記録媒体を搬送する第1ローラーと、第1ローラーの下流側で保持面の対向位置に設けられ、第1ローラーを通過した記録媒体を搬送する第2ローラーと、第2ローラーの搬送駆動を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、記録媒体の後端が記録媒体に対する記録位置を通過してから、記録媒体の後端が第1ローラーから離間するまでの間、第2ローラーを搬送駆動し、記録媒体の後端が第1ローラーから離間してから、第2ローラーを通過するまでの間の任意のタイミングで第2ローラーの搬送駆動を停止することを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、第1ローラーよりも下流側の保持面に対向する位置に第2ローラーが配設されているため、適宜、第2ローラーの搬送駆動および駆動停止を制御することで、記録媒体を第1ローラー上から引き離すことができる。すなわち、第2ローラーによって、記録媒体を第1ローラーから継続して搬送することができ、記録媒体を保持面へと送ることができる。これにより、記録媒体が第1ローラー上に残存することがなく、記録媒体と第1ローラーとの接触による記録媒体が汚れや破損という問題を確実に防止することができる。また、第1ローラーの逆転による記録媒体の引き込み(紙詰り)も防止することができる。
なお、第2ローラーは、記録媒体の後端が、第1ローラーから離間した位置、または、記録媒体に対する記録位置を通過した位置から、第2ローラーを通過する位置までの間の任意の範囲内(区間)で搬送駆動すればよい。すなわち、記録媒体の後端が第1ローラーから最も離れた位置とは、第2ローラーを通過した位置となる。この場合、第2ローラーを通過したと同時、または、その後に、第2ローラーの搬送駆動を停止させる。
【0009】
この場合、第1ローラーの下流上流側に設けられ、記録媒体の後端を検出する検出手段を更に備え、制御手段は、検出手段の検出結果に基づいて第1ローラーを更に制御し、検出手段が記録媒体の後端を検出してから第2ローラーの搬送駆動を開始できる位置まで第1ローラーを搬送駆動することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第2ローラーの搬送駆動が可能になる位置、すなわち、記録媒体の後端が第1ローラーを通過する、または、記録媒体に対する記録位置を通過するまで、第2ローラーの搬送駆動は開始されない。このため、記録媒体に対する記録に影響を与えることなく第1ローラーから第2ローラーへの搬送を連続的に行うことができる。これにより、記録媒体に対する記録を正確に行うことができると共に、記録媒体の保持面への搬送を適切に行うことができる。
【0011】
また、この場合、第2ローラーは、記録媒体の保持面と反対側の面に転接しており、第2ローラーを保持面に向かって付勢する付勢手段を更に有していることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第1ローラー上から離れた記録媒体は、保持面と第2ローラーとの間に挟まれた状態で搬送される。これにより、第2ローラーが、第1ローラーから送られた記録媒体を確実に拾い上げることができる。また、記録媒体が、第1ローラー上から離れた状態が維持され、保持面に対し起立状態で適切に保持(ストック)される。
【0013】
この場合、制御手段は、付勢手段を更に制御し、第2ローラーの搬送駆動が終了後、付勢手段の付勢力を解除することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第1ローラー上から離れた状態で、保持面と第2ローラーとの間に挟まれた記録媒体は、付勢手段による付勢力を解除することで、保持部に保持される。これにより、記録済みの排出された記録媒体は保持部に保持されつつ、第2ローラーが、続いて排出される記録媒体を適切に搬送することができる。このため、連続して記録済みの記録媒体を保持面へと搬送(排出)することができる。
【0015】
この場合、第2ローラーには、記録媒体を搬送する方向にのみ回転するようにワンウェイクラッチが設けられていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第2ローラーが搬送を許容する方向に回転することにより、第1ローラーから送られてきた記録媒体を円滑に第2ローラーへと受け渡すことができる。これは、第2ローラーが、保持面に対し付勢されている場合に特に有効である。
【0017】
また、この場合、第1ローラーと第2ローラーとの間には、記録媒体の搬送をガイドする搬送ガイド部材が更に設けられていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、第1ローラーにより搬送された記録媒体は、搬送ガイド部材に沿って移動し、第2ローラーへと導かれる。これにより、第1ローラーから送られた記録媒体を、第2ローラーが確実にピックアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】記録装置の外観斜視図である。
【図2】用紙を給送ローラーから離間させた状態の記録装置の側断面図である。
【図3】用紙を給送ローラーに圧接させた状態の記録装置の側断面図である。
【図4】筐体を取り除いた記録装置の正面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】記録媒体カセットの上部外側カバーを開放した状態の斜視図である。
【図7】制御装置による排紙駆動ローラーおよびピックアップ機構の制御手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る記録装置について説明する。この記録装置は、起立姿勢で保持した用紙(記録媒体)を搬送しながら所望の記録を行い、排紙した記録済みの用紙を起立状態で保持(ストック)するものである。なお、各図に示す通り、X軸(左右)方向、Y軸(前後)方向およびZ軸(上下)方向を規定して、以降説明する。
【0021】
図1ないし図3に示すように、記録装置1は、X軸およびY軸方向よりもZ軸方向の寸法が大きく形成された薄型の箱状体を成す筐体2によって外観が構成されている。また、記録装置1は、搬送路上に臨む用紙Pにインクジェット方式で印刷処理を行う印刷部3と、枚葉の用紙Pを搬送路に沿って送る搬送部4と、用紙Pを起立姿勢で収容し、筐体2に対し着脱自在に装着される記録媒体カセット5と、搬送部4や印刷部3などを支持する装置フレーム(図示省略)と、装置全体を統括制御する制御装置6と、を備えている。
【0022】
筐体2の上面には、操作ボタン等が配置された操作パネル21と、PC等に接続するためのケーブルが接続されるケーブル端子22と、複数のインクカートリッジ(図示省略)を着脱可能に装着するカートリッジ装着部(図示省略)を開閉するカートリッジカバー23と、が設けられている。また、筐体2の上面には、記録が行われた用紙P(記録媒体)を排出するための用紙排出口24を開閉する用紙排出口カバー25が設けられている。なお、用紙排出口カバー25は、ユーザーによって開閉されるものであるが、仮に閉じた状態で記録が実行された場合でも、図外の開閉機構によって自動的に開くようになっている。
【0023】
印刷部3は、後述する一対の搬送ローラー42の下流側に配設されており、インクジェットヘッド32を搭載したキャリッジ31と、インクジェットヘッド32に対向位置に設けられた案内部材33と、を有している。
【0024】
キャリッジ31は、X軸方向に延びるキャリッジガイド軸34に沿って、図外のモーターにより往復移動可能に設けられている。なお、図2に示すように、キャリッジ31は、傾斜姿勢で設けられるため、キャリッジガイド軸34を中心として回動しようとする力が生じる。そこで、キャリッジ31の上方に設けられた被ガイド部35が、X軸方向に延びるキャリッジガイド板36を挟み込むことで、キャリッジ31の姿勢を一定に保持している。
【0025】
案内部材33は、搬送経路の一部を構成すると共に、用紙Pの記録面とインクジェットヘッド32との間のギャップ(ワークギャップ)を規定する。また、案内部材33には、インクジェットヘッド32と対向する位置に縁無し印刷の際、用紙P端から外れた領域に吐出されるインクを受ける凹部が形成されている。この凹部の中には、インクを吸収するインク吸収材(図示省略)が設けられている。そして更に、案内部材33の下方には、打ち捨てられたインクを貯留する廃液タンク(図示省略)が配置されている。
【0026】
なお、本実施形態は、インクカートリッジがキャリッジ31から独立して設けられたいわゆるオフキャリッジ型であるが、インクカートリッジがキャリッジ31に搭載された、いわゆるオンキャリッジ型であってもよい。また、本実施形態では、キャリッジ31がX軸方向に移動しながら記録を行ういわゆるシリアルプリンターであるが、用紙P幅をカバーする固定式のインクジェットヘッド32を用いてもよい。さらに、インクジェット方式に限らず、その他の記録方式であってもよい。
【0027】
搬送部4は、上流側から、装着された記録媒体カセット5の先端に対向する位置に設けられ、記録媒体カセット5から供給された用紙Pを下流側へと送り出す給送ローラー41と、用紙Pを印刷部3へと搬送する一対の搬送ローラー42と、印刷部3の案内部材33から用紙Pの浮き上がりを防止する案内ローラー43と、記録の行われた用紙Pを印刷部3から排出する一対の排紙ローラー44と、を有している。なお、給送ローラー41(後述する補助従動ローラー46)、各搬送ローラー42、案内ローラー43および各排紙ローラー44は、それぞれ、用紙Pの幅方向(X軸方向)に延びる回転軸と、回転軸に適宜の間隔で複数軸着したローラー本体と、から構成されている(図4参照)。
【0028】
また、搬送部4は、一対の排紙ローラー44の下流側に設けられ、一対の排紙ローラー44を通過した用紙Pを搬送する(引き上げる)ピックアップ機構47と、一対の排紙ローラー44とピックアップ機構47との間に設けられ、排紙された用紙Pの搬送をガイドする搬送ガイド部材48と、を有している。
【0029】
給送ローラー41は、用紙Pの先端と接した状態で、図外のモーターにより回転することにより用紙Pを下方へと送り出す。給送ローラー41の外周面に対向位置には、用紙Pが湾曲反転する略U字状の搬送経路を形成するガイド部材45が配設されている。なお、符号46は、給送ローラー41による用紙Pの送り出しを補助する補助従動ローラーである。すなわち、給送ローラー41と補助従動ローラー46とでニップローラーの形態を為している。
【0030】
一対の搬送ローラー42は、図外の駆動モーターにより回転駆動される搬送駆動ローラー42aと、図外の付勢手段により搬送駆動ローラー42aに向かって付勢されている搬送従動ローラー42bと、を有し、ニップローラーの形態を為している。搬送従動ローラー42bは、搬送駆動ローラー42aとの間で用紙Pを挟圧することで従動回転する。
【0031】
給送ローラー41と一対の搬送ローラー42との間には、搬送経路上の用紙Pの存在の有無を検出する検出手段49(発光部および受光部を有するフォトセンサーまたはマイクロスイッチ等)が配置されている。詳細には、検出手段49は、用紙Pの先端および後端を検出する。その検出結果は、制御装置6に送られ、用紙Pの搬送の制御に用いられる。
【0032】
一対の排紙ローラー44は、図外の駆動モーターにより回転駆動される排紙駆動ローラー44aと、図外の付勢手段により排紙駆動ローラー44aに向かって付勢されている排紙従動ローラー44bと、を有し、ニップローラーの形態を為している。排紙駆動ローラー44aは、その表面がゴム等により形成されている。排紙従動ローラー44bは、拍車状(スターホイール)に形成され、排紙駆動ローラー44aとの間で用紙Pを挟圧することで従動回転する。なお、請求項に言う「第1ローラー」とは、排紙駆動ローラー44a(または一対の排紙ローラー44)を指す。
【0033】
下方へと送り出された用紙Pは、給送ローラー41およびガイド部材45によって上向きに反転させられ、一対の搬送ローラー42へと送られる。用紙Pは、一対の搬送ローラー42の間に挟まれて、印刷部3に送られる。印刷部3で記録の行われた用紙Pは、案内ローラー43および一対の排紙ローラー44を介して、記録媒体カセット5の保持面61(後述する。)に摺接しながら上方に移動する(図3の破線参照)。排紙された用紙Pは、その下端が排紙駆動ローラー44aの近傍の装置フレームに設けられた受容部62に起立姿勢で支持される。なお、案内ローラー43は、拍車状のローラー(スターホイール)により構成されている。
【0034】
受容部62は、排紙駆動ローラー44a側の先端部分が上方に屈曲しており、支持した用紙Pの下端が脱落や排紙駆動ローラー44aに接触しないようになっている。また、受容部62は、適宜の間隔で複数配置された排紙駆動ローラー44aの間に入り込むようにして、X軸方向に適宜の間隔で複数配置されている。つまり、受容部62は、全体として略櫛歯形状に形成されている。なお、請求項に言う「保持部」とは、受容部62および保持面61を指す。
【0035】
図4および図5に示すように、ピックアップ機構47は、用紙Pの保持面61と反対側の面に転接するピックアップローラー50と、減速ギヤ列51aを介してピックアップローラー50を回転させるピックアップモーター51と、ピックアップローラー50およびピックアップモーター51を支持するピックアップフレーム52と、を有している。また、図示は省略するが、ピックアップ機構47は、ピックアップフレーム52を介してピックアップローラー50を記録媒体カセット5の保持面61に向かって付勢する付勢手段を有している。
【0036】
ピックアップローラー50は、ピックアップフレーム52の下端部に設けられた凹状の軸支部52aに対して、回転軸を介して回転自在に軸支されている。また、ピックアップローラー50には、ワンウェイクラッチ50aが内蔵されており、ピックアップローラー50は、用紙Pの搬送を許容する方向(図3に示す矢印の方向)にのみ回転するようになっている。このように、ピックアップローラー50が搬送を許容する方向に回転することにより、排紙駆動ローラー44aから送られてきた用紙Pを円滑にピックアップローラー50へと受け渡すことができる。このような構成は、後述するようにピックアップローラー50が保持面61側に付勢されている本実施形態において、特に有効である。なお、請求項に言う「第2ローラー」とは、ピックアップローラー50を指す。
【0037】
ピックアップモーター51は、図4において、ピックアップフレーム52の左端上部に設けられている。ピックアップモーター51を駆動すると駆動力が減速ギヤ列51aを伝わって、ピックアップローラー50が搬送可能な方向に回転する。
【0038】
ピックアップフレーム52は、板状に形成されており、X軸方向に延びて設けられた支持軸52bに上端部分で回動自在に支持されている。すなわち、ピックアップフレーム52は、支持軸52bから吊り下げられるようにして支持されている。また、ピックアップフレーム52は、側面から見て、下端部が保持面61に近接し、他方、上端部が保持面61からやや離れて、全体として傾斜姿勢で設けられる。
【0039】
また、ピックアップフレーム52は、図外の付勢手段により保持面61に向かって付勢されている。排紙駆動ローラー44a上から離れた用紙Pは、保持面61とピックアップローラー50との間に挟まれた状態で搬送される。これにより、ピックアップローラー50が、排紙駆動ローラー44aから送られた用紙Pを確実に拾い上げる(引き上げる)ことができる。また、用紙Pが、排紙駆動ローラー44a上から離れた状態が維持され、保持面61に対し起立状態で適切に保持される。
【0040】
なお、上記した付勢手段は、その付勢力を解除することができるように構成されている。すなわち、付勢手段は、付勢力の付加と解除とを切り替えられるようになっている。このため、排紙駆動ローラー44a上から離れた状態で、保持面61とピックアップローラー50との間に挟まれた用紙Pは、付勢手段による付勢力を解除することで、上記した受容部62に保持(ストック)される。これにより、記録済みの排出された用紙Pは受容部62に保持されつつ、ピックアップローラー50が、続いて排出される用紙Pを適切に搬送することができる。このため、連続して記録済みの用紙Pを保持面61へと搬送(排出)することができる。
【0041】
搬送ガイド部材48は、板状に形成されており、X軸方向に延びて設けられている。また、搬送ガイド部材48は、送られた用紙Pが、一対の排紙ローラー44とピックアップローラー50とを結ぶ搬送経路に沿って移動するように設けられている。排紙駆動ローラー44aにより搬送された用紙Pは、搬送ガイド部材48に沿って移動し、ピックアップローラー50へと導かれる。これにより、排紙駆動ローラー44aから送られた用紙Pを、ピックアップローラー50が確実にピックアップすることができる。
【0042】
続いて、図2、図3および図6を参照して、記録媒体カセット5について説明する。記録媒体カセット5は、筐体2に対してZ軸方向にスライドすることで着脱可能に構成されており、装着することで記録装置1の外観を構成する。また、記録媒体カセット5を取り外すことで記録装置1の内部が露出するため、搬送経路に用紙Pが詰まった等の不具合を容易に解消することができる。
【0043】
記録媒体カセット5は、装着時に筐体2と面一になり、記録装置1の概観をなすカセット筐体部53と、全体としてトレイ状に形成された本体トレイ54と、用紙Pを収容する用紙収容空間Sを開閉する上部外側カバー55と、上部外側カバー55に対し、本体トレイ54の上端から突出するようにスライド可能に設けられた上部内側カバー56と、本体トレイ54に対し、本体トレイ54の上端から突出するようにスライド可能に設けられた上部スライドトレイ57と、上部外側カバー55に対し、X軸方向にスライド可能に設けられたエッジガイド58と、用紙収容空間Sに収容した用紙Pの先端を揺動させる可動トレイ59と、を備えている。
【0044】
本体トレイ54の下端部には、収容した用紙Pの先端を支持する用紙先端支持壁54aが形成されている。記録媒体カセット5が装着された状態において収容された用紙Pは、その先端が用紙先端支持壁54aに当接した状態で支持される。
【0045】
図6に示すように、上部外側カバー55は、本体トレイ54の上下方向略中央部に設けられた左右一対の回動支点55aを中心に回動するようになっている。上部外側カバー55を開放することにより、用紙収容空間Sが表れて、用紙Pの収容が可能となる。また、上部外側カバー55の外面(装着時に装置内側に向く面)は、記録済みの用紙Pを保持する(蓄える)ための保持面61として機能している。
【0046】
図2および図3に示すように、上部内側カバー56および上部スライドトレイ57を用紙PのZ軸方向の長さに合わせて伸縮させることで、その用紙Pに最適な用紙収容空間Sを形成することができる。また、上部内側カバー56を延ばした場合は、上部外側カバー55の外面から連なるように上部内側カバー56の外面が延在し、保持面61がZ軸方向に延長される。
【0047】
エッジガイド58は、上部外側カバー55にX軸方向に延在して開口した長穴55b(図6参照)にスライド自在に係合し、セットした用紙Pのエッジをガイドする。なお、図示は省略するが、エッジガイド58は、上部外側カバー55の外側に露出した部分を操作することにより、上部外側カバー55を閉じた状態であっても、スライド可能となっている。
【0048】
可動トレイ59は、本体トレイ54の下側に設けられ、左右一対の揺動支点59aを中心に回動し、収容された用紙Pの先端を、給送ローラー41に圧接させる状態(図3参照)と、離間させる状態(図2参照)と、の間を揺動する(いわゆるホッパー)。また、図6に示すように、可動トレイ59には、用紙Pの先端に対応する位置に、給送ローラー41が圧接できるように、X軸方向に沿って適宜の間隔で複数の接触開口部59bが形成されている。
【0049】
続いて、図5および図7を参照して、制御装置6による排紙駆動ローラー44aおよびピックアップ機構47の制御手順を説明する。なお、以降の説明において、各ローラーの駆動とは、正確には各ローラーを回転させる各モーターの駆動を含むものとする。
【0050】
まず、ユーザーが記録動作を開始させると、可動トレイ59がホッパーアップ(図3参照)して給送ローラー41に圧接し、給送ローラー41等の駆動により、1枚の用紙Pが、一対の搬送ローラー42まで送り出される。このとき、検出手段49が用紙Pの先端を検出(ON)する。送り出された用紙Pは、搬送駆動ローラー42aの間欠的な駆動により、案内部材33とインクジェットヘッド32との間に送られる(副走査)。そして、キャリッジ31をX軸方向に主走査させながら、インクジェットヘッド32から用紙Pの記録面にインクが吐出され、所定の記録(印刷)が行われる。
【0051】
記録が行われた用紙Pの先端が一対の排紙ローラー44まで到達すると、用紙Pは、排紙駆動ローラー44aの間欠的な駆動により、保持面61に接した状態で上方に移動する。そして、用紙Pの先端は、保持面61とピックアップローラー50との間に入り込み、更に上方へ移動する。この際、ピックアップローラー50は、付勢手段の付勢力により保持面61に対し押し付けられているが、内蔵されたワンウェイクラッチ50aの作用により、ピックアップローラー50は搬送を許容する方向に回転するため、用紙Pの送りを阻害することがない。なお、搬送駆動ローラー42aと排紙駆動ローラー44aとは同期して同一周速となるように駆動される。
【0052】
記録動作が進むと、検出手段49が用紙Pの後端を検出(OFF)する(S1)。制御装置6は、この用紙Pの後端を検出した位置から、第1搬送量だけ搬送するように排紙駆動ローラー44aを駆動する(S2)。ここで第1搬送量とは、用紙Pの後端の検出位置から、一対の排紙ローラー44を通過した位置までの距離をいう(図5の実線の矢印を参照)。なお、第1搬送量の検出方法は、既知の方法を用いることができ、例えば、エンコーダーによる検出や駆動時間および速さの計測により算出する等、いずれの方法でもよい。また、第1搬送量を、用紙Pの後端の検出位置から、一対の排紙ローラー44を通過する直前、すなわち、用紙Pの後端が一対の排紙ローラー44に挟まれた位置までとしてもよい。
【0053】
用紙Pを第1搬送量だけ搬送した後、制御装置6は、ピックアップローラー50を駆動し、一対の排紙ローラー44を通過した位置から、第2搬送量だけ搬送するようにピックアップローラー50を駆動する(S3)。ここで第2搬送量とは、用紙Pの後端が、一対の排紙ローラー44を通過した位置から、ピックアップローラー50を通過した位置までの距離をいう(図5の実線の矢印を参照)。なお、第2搬送量の検出方法は、第1搬送量の検出方法と同様に既知の方法のいずれかを用いることができる。また、排紙駆動ローラー44aの駆動は、用紙Pを第1搬送量だけ搬送した後に継続してもよいし、停止させてもよい。
【0054】
用紙Pを第2搬送量だけ搬送させた後、制御装置6は、ピックアップローラー50の駆動を停止させる。この際、ピックアップローラー50は、付勢手段の付勢力により保持面61に対し押し付けられているため、ピックアップローラー50を通過した用紙Pは、ピックアップローラー50上に起立姿勢で位置することとなる。
【0055】
その後、付勢手段の付勢力を解除することにより、ピックアップローラー50上の用紙Pは、保持面61に添って落下して、受容部62上に起立姿勢で保持される。これで1の用紙Pの記録および排紙が完了し、次の新たな用紙Pへの記録動作が可能となる。なお、付勢手段の付勢力を作用させたままで、次の新たな用紙Pへの記録動作を実施してもよい。この場合、記録済みの用紙Pは、ピックアップローラー50と保持面61とによって起立姿勢で保持される。
【0056】
以上の構成によれば、排紙駆動ローラー44aよりも下流側に設けたピックアップローラー50の搬送駆動および駆動停止を適宜制御することで、用紙Pを排紙駆動ローラー44a上から引き離すことができる。すなわち、ピックアップローラー50によって、用紙Pを排紙駆動ローラー44aから継続して搬送することができ、用紙Pを保持面61へと送ることができる。これにより、用紙Pが排紙駆動ローラー44a上に残存することがなく、用紙Pと排紙駆動ローラー44aとの接触による用紙Pが汚れや破損という問題を確実に防止することができる。また、排紙駆動ローラー44aの逆転による用紙Pの引き込み(紙詰り)も防止することができる。
また、用紙Pの後端が排紙駆動ローラー44aを通過するまでピックアップローラー50の搬送駆動は開始されないため、用紙Pに対する記録に影響を与えることなく排紙駆動ローラー44aからピックアップローラー50への搬送を連続的に行うことができる。これにより、用紙Pに対する記録を正確に行うことができると共に、用紙Pの保持面61への搬送を適切に行うことができる。
なお、本実施形態では、記録媒体カセット5を、いわゆる縦置き型の記録装置1に適用しているが、もちろん横置きの記録装置1に適用してもよい。この場合、カセット筐体部53が底面となるように記録装置1を設置することが好ましい。
【0057】
なお、用紙Pの汚れや破損という問題を防止するためには、用紙Pの後端が、一対の排紙ローラー44(排紙駆動ローラー44a)に接触していなければよいので、第2搬送量の終端を、用紙Pの後端が排紙駆動ローラー44aから離間した位置から、ピックアップローラー50を通過した位置までの間で、任意の位置に設定してよい。
【0058】
(第2実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る記録装置1の制御装置6による排紙駆動ローラー44aとピックアップ機構47との制御手順を説明する。について説明する。なお、以降の説明では、第1実施形態に係るものと異なる説明のみ記載する。
第2実施形態では、用紙Pの後端の検出位置から、インクジェットヘッド32の下流端を通過した位置までの距離を、第1搬送量としている(図5の破線の矢印を参照)。すなわち、インクジェットヘッド32による用紙Pへの記録が完全に終了する位置までピックアップローラー50(ピックアップモーター51)を駆動しないように制御している。これにより、用紙Pに対する記録を正確に行うことができ、記録(印刷)不良となることを適切に防止することができる。
【0059】
なお、第2搬送量は、第1実施形態のものと同様であるが、第1搬送量だけ排紙駆動ローラー44aを駆動した後に、続けて第2搬送量だけピックアップローラー50を駆動してもよい(図5の破線の矢印を参照)。この場合、ピックアップローラー50による第2搬送量に誤差が生じないように、排紙駆動ローラー44aを自由回転させたり、排紙駆動ローラー44aとピックアップローラー50とを同一周速となるように同期して駆動させる等の措置を講じる。
【符号の説明】
【0060】
1:記録装置、6:制御装置、44:排紙ローラー、44a:排紙駆動ローラー、48:搬送ガイド部材、49:検出手段、50:ピックアップローラー、50a:ワンウェイクラッチ、61:保持面、P:用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録が行われた記録媒体を起立状態で保持する保持部の保持面に添うように前記記録媒体を搬送する第1ローラーと、
第1ローラーの下流側で前記保持面の対向位置に設けられ、前記第1ローラーを通過した前記記録媒体を搬送する第2ローラーと、
前記第2ローラーの搬送駆動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記記録媒体の後端が前記第1ローラーを通過してから、前記記録媒体の後端が前記第1ローラーから離間するまでの間、前記第2ローラーを搬送駆動し、
前記記録媒体の後端が前記第1ローラーから離間してから、前記第2ローラーを通過するまでの間の任意のタイミングで前記第2ローラーの搬送駆動を停止することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
記録が行われた記録媒体を起立状態で保持する保持部の保持面に添うように前記記録媒体を搬送する第1ローラーと、
第1ローラーの下流側で前記保持面の対向位置に設けられ、前記第1ローラーを通過した前記記録媒体を搬送する第2ローラーと、
前記第2ローラーの搬送駆動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記記録媒体の後端が前記記録媒体に対する記録位置を通過してから、前記記録媒体の後端が前記第1ローラーから離間するまでの間、前記第2ローラーを搬送駆動し、
前記記録媒体の後端が前記第1ローラーから離間してから、前記第2ローラーを通過するまでの間の任意のタイミングで前記第2ローラーの搬送駆動を停止することを特徴とする記録装置。
【請求項3】
前記第1ローラーの下上流側に設けられ、前記記録媒体の後端を検出する検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて前記第1ローラーを更に制御し、前記検出手段が前記記録媒体の後端を検出してから前記第2ローラーの搬送駆動を開始できる位置まで前記第1ローラーを搬送駆動することを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第2ローラーは、前記記録媒体の前記保持面と反対側の面に転接しており、
前記第2ローラーを前記保持面に向かって付勢する付勢手段を更に有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記付勢手段を更に制御し、前記第2ローラーの搬送駆動が終了後、前記付勢手段の付勢力を解除することを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記第2ローラーには、前記記録媒体を搬送する方向にのみ回転するようにワンウェイクラッチが設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
前記第1ローラーと前記第2ローラーとの間には、前記記録媒体の搬送をガイドする搬送ガイド部材が更に設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−158462(P2012−158462A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21399(P2011−21399)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】