説明

記録装置

【課題】複数のロール紙が装着可能な記録装置において、1つのロール紙に対する記録中或いは搬送中であっても、新たなロール紙が装着された際には当該ロール紙の情報を取得することが可能な記録装置を提供する。
【解決手段】複数のロール紙(R1、R2)の装着位置から、これらが互いに合流する搬送合流部17よりも上流の個別搬送経路(D1、D2)において、個々のロール紙の情報を取得する構成(E1、E2、S1、S2)を有する。これにより、互いのロール紙の動作状況に関わらず、夫々のロール紙の情報を、ユーザを待機させることなく取得することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる搬送経路から供給される複数のロール紙に対し記録を行うことが可能な記録装置に関する。詳しくは、1つのロール紙が搬送動作中であっても、新たに装置に装着されたロール紙の情報を上記搬送動作を中断することなく検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状に巻かれた連続シート(以下、単にロール紙と言う)に対し記録を行う記録装置において、種類やサイズの異なる複数のロール紙を同時に装着可能なものがある。この場合、画像の記録は何れかのロール紙に対し択一的に行うが、これらロール紙は異なる搬送経路から共通の搬送経路に送られた後、共通の搬送経路上で記録される。画像を記録するに当たり、記録装置は記録を行っているロール紙の種類やサイズ等の情報を取得する必要があるが、この取得方法としては、ユーザが入力手段から情報を入力する方法や、記録装置に設けられたセンサが情報を取得する方法などが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、新たなロール紙が装着される都度、ユーザによる情報入力と、複数のロール紙の共通の搬送経路に配備されたセンサの検出結果の両方に基づいて、用紙サイズを認識する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第02848062号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、ロール紙を共通の搬送経路まで搬送して、共通搬送経路に設置されているセンサによってサイズ検出を行っているため、一つのロール紙が記録中或いは搬送中である場合は、他のロール紙の検出を行うことは出来ない。即ち、1つのロール紙の記録中に他のロール紙が装着されても、記録中のロール紙に対する記録が完了した後でなければ、新たに装着されたロール紙の情報を取得することは出来ない。その結果、先のロール紙への記録が完了した後に、後のロール紙の情報を取得するために搬送や検出の時間がかかり、ユーザを待機させてしまっていた。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものである。よって、その目的とするところは、複数のロール紙が装着可能な記録装置において、1つのロール紙に対する記録中或いは搬送中であっても、新たなロール紙が装着された際には当該ロール紙の情報を取得することが可能な記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、複数のロール紙を複数の装着位置に装着する装着手段と、装着された前記複数のロール紙から引き出されたシートのそれぞれが専用で搬送される複数の個別搬送経路と、前記装着位置のそれぞれから前記個別搬送経路において、ロール紙を検出することにより、個々のロール紙情報を取得する複数のロール紙情報取得手段と、前記個別搬送経路が互いに合流する搬送合流部と、搬送方向において前記搬送合流部よりも下流であって、前記複数のロール紙から択一的に引き出されたシートに画像を記録する記録手段とを備え、前記複数のロール紙の1つに対し前記記録手段が画像を記録している最中に、前記複数のロール紙の別の1つの前記ロール紙情報を、前記ロール紙情報取得手段が取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送合流部より上流に位置する夫々のロール紙の情報を取得することが出来る。よって、互いのロール紙の動作状況に関わらず、夫々のロール紙の情報を、ユーザを待機させることなく取得することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】記録装置の内部構成を示す断面の概略図である。
【図2】片面プリント時の動作を説明するための図である。
【図3】両面プリント時の動作を説明するための図である。
【図4】第1の実施形態におけるシート給紙部の拡大図である。
【図5】制御部が各機構を制御する構成を説明するためのブロック図である。
【図6】シート情報取得工程を説明するためのフローチャートである。
【図7】ロール紙情報取得処理における工程を説明するためのフローチャートである。
【図8】(a)および(b)は、ロール紙の直径を算出するための式および当該直径に相当するロール紙の残量が記憶されたテーブルを示した図である。
【図9】3つの搬送合流部を有するシート給紙部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、インクジェット方式を用いた記録装置を例に本実施形態を説明する。本実施形態のインクジェット記録装置は、ロール状に巻かれた連続シートに対し、片面プリント及び両面プリンの両方を行うことが出来る高速ラインプリンタである。例えば、プリントラボ等における大量の枚数のプリントの分野に適している。
【0011】
図1はインクジェット記録装置の内部構成を示す断面の概略図である。インクジェット記録装置は、その内部に、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、シート巻取部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出トレイ12、制御部13の各ユニットを備える。シート供給部1から供給される記録媒体(ロール紙)は、装置内の各所に備えられたローラ対やベルトからなる搬送機構によって、図中の実線で示した経路に沿って搬送され、その過程において各ユニットで処理がなされる。
【0012】
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シート(記録媒体)を収納して供給するユニットである。本実施形態において、シート供給部1は、2つのロール紙R1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロール紙は2つであることに限定はされず、3つ以上を収納するものであってもよい。
【0013】
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを備え、カールの向きに応じてカールとは逆向きの反りを与えるようにその経路を切り替え、シートを湾曲させてしごくことにより、カールを軽減させるようになっている。斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される仕組みになっている。
【0014】
プリント部4は、搬送されるシートに対し記録ヘッド14により画像を記録するユニットである。プリント部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラも備えている。記録ヘッド14は、インクを滴として吐出するノズルが図中鉛直方向に複数配列したライン型のインクジェット記録ヘッドであり、ノズルの配列幅は使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲となっている。本実施形態において、このような記録ヘッド14は、異なる色相の7種類のインクを吐出するように7つ用意されており、これら7つの記録ヘッドは、搬送方向に沿って順番に並列されている。本実施形態において、7種類のインクとは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、K(ブラック)とする。但し、本発明において、色数及び記録ヘッドの数はこのような7つに限定されるものではない。
【0015】
記録ヘッドのインク吐出方式としては、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、装置内に設置された不図示のインクタンクから、夫々のインクチューブを介して記録ヘッド14に供給される。
【0016】
検査部5は、プリント部4でシートに記録された検査パターンや画像を光学的に読み取って、記録ヘッド14のノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査するユニットである。カッタ部6は、プリント後のシートを所定長さにカットする機械的なカッタを備えたユニットである。カッタ部6は、シートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。情報記録部7は、カットされたシートの裏面にシリアル番号や日付などのプリント情報を記録するユニットである。乾燥部8は、プリント部4で記録されたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるユニットである。乾燥部8は、シートを次工程に送り出すための搬送ベルトや搬送ローラも備えている。
【0017】
シート巻取部9は、両面プリントを行う際に第1面(表面)の記録が終了した連続シートを一時的に巻き取るユニットである。シート巻取部9はシートを巻き取るための回転する巻取ドラムを備えている。第1面の記録が済んでカットされていない連続シートは、巻取ドラムに一時的に巻き取られる。巻き取りが終わったら、巻取ドラムが逆回転し、巻き取り済みシートはデカール部2に供給され、プリント部4に送られる。この工程において、シートは表裏反転しているのでプリント部4では、記録が行われていない第2面(裏面)に記録を行うことができる。両面プリントのより具体的な動作については後述する。
【0018】
排出搬送部10は、カッタ部6でカットされ乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。ソータ部11は必要に応じて記録済みシートをグループ毎に排出トレイ12の異なるトレイに振り分けて排出するユニットである。
【0019】
制御部13は、記録装置全体の制御を司るユニットである。制御部13は、CPU、メモリ、各種I/Oインターフェースを備えたコントローラ15及び電源を有する。プリンタの動作は、コントローラ15又はコントローラ15にI/Oインターフェースを介して接続されるホストコンピュータ等の外部機器16からの指令に基づいて制御される。
【0020】
次に、記録時の基本動作について説明する。記録動作は、片面プリントと両面プリントとでは異なるので、以下それぞれについて説明する。
【0021】
図2は片面プリント時の搬送経路を説明するための図である。シート供給部1から供給されたシートが記録されて排出トレイ12に排出されるまでの搬送経路を太線で示している。シート供給部1から供給され、デカール部2、斜行矯正部3でそれぞれ処理されたシートは、プリント部4において第1面(表面)の記録がなされる。記録されたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎にカットされる。カットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面にプリント情報が記録される。そして、カットシートは一枚ずつ乾燥部8に搬送され乾燥が行なわれる。その後、排出搬送部10を経由して、ソータ部11のトレイ12に順次排出され積載されていく。
【0022】
図3は両面プリント時の動作を説明するための図である。両面プリントでは、表面プリントシーケンスに次いで裏面プリントシーケンスを実行する。最初の表面プリントシーケンスでは、シート供給部1から検査部5までの各ユニットでの動作は上述の片面プリントの動作と同じである。但し、カッタ部6ではカット動作は行わずに、連続シートのまま乾燥部8に搬送される。乾燥部8での第1面(表面)のインク乾燥の後、排出搬送部10の側の経路ではなく、シート巻取部9の側の経路にシートが導入される。導入されたシートは、順方向(図面では逆時計回り方向)に回転するシート巻取部9の巻取ドラムに巻き取られていく。プリント部4において、予定された第1面の記録が全て終了すると、カッタ部6にて連続シートの記録領域の後端がカットされる。カット位置を基準に、搬送方向下流側(記録された側)の連続シートは乾燥部8を経てシート巻取部9でシート後端(カット位置)まで全て巻き取られる。一方、カット位置よりも搬送方向上流側の連続シートは、シート先端(カット位置)がデカール部2に残らないように、シート供給部1に巻き戻される。
【0023】
以上の表面プリントシーケンスの後に、裏面プリントシーケンスに切り替わる。シート巻取部9の巻取ドラムが巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転する。巻き取られたシートの端部(巻き取り時のシート後端は、送り出し時にはシート先端になる)はデカール部2に送り込まれる。デカール部2では先とは逆向きのカール矯正がなされる。これは、巻取ドラムに巻かれたシートは、シート供給部1でのロールとは表裏反転して巻かれ、逆向きのカールとなっているためである。その後は、斜行矯正部3を経て、プリント部4で連続シートの第2面(裏面)に記録が行なわれる。記録されたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎にカットされる。カットシートは両面に記録されているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは一枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10を経由して、ソータ部11のトレイ12に順次排出され積載されていく。
【0024】
次に、上述の構成の記録装置において、本発明の特徴的な構成を有するシート供給部1についてさらに詳しく説明する。
【0025】
図4はシート給紙部1の拡大図である。シート供給部1には、2つのロール紙R1およびR2が異なる装着位置に装着可能であり、ロール紙R1およびR2から引き出されたシートは、夫々が専用で搬送される個別搬送経路D1およびD2を経て、搬送合流部17に到達する。個別搬送経路D1およびD2には、ロール紙に接触して回転する搬送ローラF1、F2と、これら搬送ローラと共にシートを挟持しながら回転するピンチローラが配置されている。制御部13は、記録コマンドに従って搬送ローラF1およびF2の回転を制御し、ロール紙R1およびR2のどちらか一方から択一的にシートを引き出し、それぞれの経路が互いに合流する搬送合流部17に向けてシートを送り出す。搬送合流部17にて合流した搬送経路は、その後同一の経路となる。
【0026】
個別搬送経路D1およびD2のそれぞれには、シート先端の有無やその幅を検出するためのセンサS1およびS2が配備されており、搬送合流部17よりも上流の位置において、個々のロール紙の有無および幅を制御部に通知することが出来るようになっている。
【0027】
ロール紙R1およびR2の中心部分には、ロール紙を回転させるためのモータM1、M2およびエンコーダE1、E2が設置されている。モータM1およびM2は主に撓んだロール紙を巻き取るために用いられる。一方エンコーダE1およびE2は、ロール紙R1およびR2の回転量を測定する際に用いられる。
【0028】
図5は、制御部3のコントローラ15が各機構を制御する構成を説明するブロック図である。コントローラ15は、主にエンジンコントローラ100と、エンジンコントローラ100に接続される複数のヘッドコントローラ140と、複数のモータコントローラ120から構成される。ヘッドコントローラ140のそれぞれにはLVDSで接続された各色のインクを吐出する記録ヘッド140が、モータコントローラ120にはUSBで接続されたモータ群170、各種センサ群180、各種エンコーダ190が接続されている。モータ群170には、ロール紙R1およびR2の中心に配備されたモータM1およびM2のほか、搬送ローラF1およびF2を回転させるための搬送モータや、カッタ部6のカッタを動作させるためのモータなどが含まれている。また、センサ群180には、シートの有無や幅を検出するためのセンサS1、S2のほか、環境温度を測定するための温度センサなども含まれている。
【0029】
図6は、ロール紙R1に対する記録中にもう一方のロール紙R2の装着の有無を確認するために、コントローラ15が実行するシート情報取得工程を説明するためのフローチャートである。
【0030】
外部機器16から記録コマンドが入力され、これがロール紙R1に対する記録である場合、エンジンコントローラ100のE−CPU101は、ロール紙R1を引き出して、これをプリント部4まで搬送し、記録動作を開始する(ステップS601)。具体的には、まず、E−CPU101は、モータコントローラ120に対してロール紙搬送動作コマンドを出力する。これにより、M―CPU121は、M−ASIC122を制御して搬送ローラF1を回転するためのモータを駆動し、ロール紙R1を搬送経路に沿って搬送する。一方、E−CPU101は、E−ASIC102を制御して、E−RAM103上の印刷コマンドテーブルから順次印刷すべきパターンデータを読み出し、ヘッドコントローラ140にデータを転送する。これにより、記録ヘッド14からインクが吐出され、ロール紙R1から供給された搬送中のシートにパターンが記録される。
【0031】
以上のような記録動作が開始されると、ステップS602では、ロール紙R1に対する記録が終了したか否かを判断する。記録終了と判断すればステップS605に進み、本処理を終了する。一方、未だ記録継続中であると判断した場合、ステップS603に進み、新たなロール紙R2が装着されているか否かを判断する。
【0032】
ステップS603で新たなロール紙が装着されたと判断した場合は、ステップS604で所定のロール紙情報取得処理を実行し、その後ステップS602に戻る。一方、新たなロール紙は装着されていないと判断した場合は、そのままステップS602に戻る。以上ステップS602からステップS604の処理は、ロール紙R1に対する記録動作中に行われる。
【0033】
図7は、上記ロール紙情報取得処理においてコントローラ15が実行する工程を説明するフローチャートである。なお、ここではロール紙R1への記録動作中に、ロール紙R2の情報を取得する場合について説明するが、逆の場合も同様である。
【0034】
本処理が開始されると、エンジンコントローラ100のECPU101は、モータコントローラ120に対して、ロール紙R2の情報取得処理コマンドを発信する。これにより、まず、ステップS701において、ロール紙R2に対する撓み除去処理が実行される。具体的には、ロール紙R2の先端が不図示の先端固定機構によって固定され、この状態でM―CPU120は、M−ASICの制御のもとロール紙R2のモータM2を搬送方向とは逆方向に回転させる。モータM2の回転によってロール紙R2がしっかりと巻き取られた状態になると、本実施形態の記録装置は、モータM2に接続された軸のみが空転する機構となっており、ロール紙R2の回転は停止する。これにより、ロール紙R2と連動して動くエンコーダE2から出力される信号も停止するので、撓みの除去が完了したことが検出される。このように事前にロール紙の撓みを除去しておくことにより、エンコーダE2から読み取った情報から、ロール紙R2のシート搬送量を高い精度で取得することが出来るようになる。
【0035】
続くステップS702では、ロール紙R2の用紙先端頭だし及び紙幅検出処理を行う。具体的には、M−CPU121がM−ASIC122を制御することによって、モータM2を駆動し、搬送ローラF2によってロール紙R2の搬送を開始する。そして、個別搬送経路D2内に設置されているセンサS2によって、用紙の先端が検出された段階で搬送を停止する。本実施形態において、センサS2は、シートの有無の他、シートの幅を検出することが可能であり、取得した情報をM−ASICに通知し、M−ASICは当該情報をM−RAM123に格納する。
【0036】
ステップS703では、ロール紙R2の先端が搬送合流部17に到達する手前まで、個別搬送経路D2内のロール紙R2を搬送する。具体的には、M−CPU121がM−ASIC122を制御することによって、搬送モータを駆動し、用紙の先端がセンサS2の位置から搬送合流部17の手前の位置まで所定量搬送される分だけ搬送ローラF2を回転させる。このような搬送動作は、ロール紙R2の先端が搬送合流部17の手前までであるので、ロール紙R1に対する記録動作や搬送動作に影響を及ぼすことなく行うことが出来る。上記搬送中、エンコーダE2は、ロール紙R2の回転量を測定し、M−CPU121は当該情報をM−RAM123に格納する。
【0037】
ステップS704では、M−RAM123に格納された上記搬送量と回転量から、ロール紙R2の直径を算出する。搬送モータの駆動による搬送ローラF2の回転速度は一定であるので、ロール紙R2から供給されるシートの搬送速度も一定である。これに対し、ロール紙R2の回転速度は、徐々に消費されるロール紙R2の直径が小さくなるほど高速になる。すなわち、ロール紙の残量は、一定量の搬送に伴うロール紙の回転量から推定することが出来る。
【0038】
図8(a)は、一定量の搬送量とその搬送に伴う回転量から、ロール紙Rの直径を算出するための式を示した図である。本実施形態ではこのような関係式を利用し、ロール紙の装着時において、ステップS702で取得したロール紙の幅サイズと共に、ロール紙R2の残量も検出する。
【0039】
ステップS705では、M−ROM124に予め記憶されているテーブルを参照することにより、ステップS704で得られた直径からロール紙R2の残量を取得し、M−RAMに格納する。図8(b)は、M−ROM124に記憶されているテーブルの一例を示す図である。図のように、テーブルにおいては、算出された直径に相当するロール紙の残量が予め記憶されている。このような、ロール紙の直径と残量の関係は、片面印刷用や両面印刷用のように、記録媒体の厚みや撓みの傾向によって変わるので、図8(b)に示すような直径と残量の関係は、記録媒体の種類ごとに用意されていることが好ましい。
【0040】
以上説明したステップS703およびステップS705によって、ロール紙R2の幅情報と残量情報が夫々M−RAMに格納されると、ロール紙情報取得処理は終了する。
【0041】
M−RAMに格納された幅情報や残量情報は、記録装置に配備されたLCDやLED等の情報表示部によって、ユーザに通知しても通知してもよい。また、ロール紙R2に対する記録を実行する際、これらロール紙情報はエンジンコントローラ100による記録制御に有効利用される。例えば、幅情報は、供給される画像がシートの幅方向の中央に配置されるように、記録位置を調整するために用いることが出来る。また、残量情報は、供給される画像データがロール紙残量を超えてしまっているか否かを判断するために用いることが出来、画像データがロール紙残量を超えてしまっている場合には、記録動作を中断したり、ユーザに告知したりすることができる。
【0042】
(第2の実施形態)
図9は、4つのロール紙R1〜R4を搭載可能であって、3つの搬送合流部17、18および19を有する形態のシート給紙部1の拡大図である。本実施形態によれば、ロール紙R3およびR4が搬送合流部19で合流し、これらロール紙R3およびR4とロール紙R1が搬送合流部18で合流し、更にこれらロール紙R1、R3およびR4とロール紙R2が搬送合流部17で合流する。このような構成であっても、夫々のロール紙と同軸で回転するエンコーダE1〜E4用意され、シートの有り無しおよびシート幅を検出するためのセンサS1〜S4が夫々の個別搬送経路D1〜D4に設けられていれば、上記実施形態と同様の効果を得ることが出来る。
【0043】
ところでこのような構成では、例えばロール紙R3がロール紙R4の動作中に装着された場合、ロール紙R3の情報は、搬送合流部19までの個別搬送経路D3を利用したロール紙情報取得処理によって取得されなければならない。しかし、ロール紙R3がロール紙R2の動作中に装着された場合であれば、搬送合流部17までの比較的長い距離を利用して、ロール紙R3のロール紙情報取得処理を行うことが出来る。この場合、搬送経路は長い方が、残量取得動作の精度は向上する。従って、図9に示すように複数の搬送合流部を設けた本実施形態では、搬送動作中のロール紙と装着したロール紙の組み合わせによって、残量取得動作のために搬送する距離を異ならせる。
【0044】
なお、以上説明した実施形態では、ロール紙情報として、シート幅と残量を例にした場合について説明したが、本発明のロール紙情報はこれに限定されるものではない。例えば、両面印刷用の用紙であるか片面印刷用の用紙であるか、または光沢紙であるか非光沢紙であるかなどを判断するセンサ機構を備え、ロール紙に係るそのような判断を行っても良い。また、上記センサ機構のほかに更にロール紙の厚みを測定する機構を備え、記録媒体の種類を判断する形態であっても構わない。いずれにせよ、複数のロール紙を装着可能な記録装置において、その搬送合流部よりも上流側の個別搬送路で個々のロール紙の情報を検出する機構(各種センサやエンコーダ等)が備えられていれば、本発明の効果を得ることは出来る。すなわち、他のロール紙の搬送動作中あるいは他のロール紙に対する記録動作の最中であっても、新たに装着されたロール紙の情報を、他のロール紙の搬送動作を中断することなく個別搬送経路内で取得することが出来る。
【符号の説明】
【0045】
1 シート供給部
14 記録ヘッド
17 搬送合流部
R1、R2 ロール紙
E1、E2 エンコーダ
S1、S2 センサ
D1、D2 個別搬送経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロール紙を複数の装着位置に装着する装着手段と、
装着された前記複数のロール紙から引き出されたシートのそれぞれが専用で搬送される複数の個別搬送経路と、
前記装着位置のそれぞれから前記個別搬送経路において、ロール紙を検出することにより、個々のロール紙情報を取得する複数のロール紙情報取得手段と、
前記個別搬送経路が互いに合流する搬送合流部と、
搬送方向において前記搬送合流部よりも下流であって、前記複数のロール紙から択一的に引き出されたシートに画像を記録する記録手段と
を備え、
前記複数のロール紙の1つに対し前記記録手段が画像を記録している最中に、前記複数のロール紙の別の1つの前記ロール紙情報を、前記ロール紙情報取得手段が取得することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記ロール紙情報取得手段は、前記個別搬送経路に備えられたセンサによって前記ロール紙の幅を前記ロール紙情報として取得することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記ロール紙情報取得手段は、前記ロール紙を前記搬送合流部より手前まで搬送した場合の回転量を、エンコーダを用いて測定することによって前記ロール紙の残量を前記ロール紙情報として取得することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記ロール紙情報取得手段は、前記個別搬送経路に設けられたセンサによって前記ロール紙の種類を前記ロール紙情報として取得することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
複数の前記搬送合流部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
装着された複数のロール紙から引き出されたシートのそれぞれが、専用の個別搬送経路を搬送される個別搬送工程と、
該個別搬送工程において前記ロール紙を検出することにより、個々のロール紙情報を取得するロール紙情報取得工程と、
搬送方向において前記個別搬送経路が互いに合流する搬送合流部よりも下流であって、前記複数のロール紙から択一的に引き出されたシートに画像を記録する記録工程と、
を有し、
前記複数のロール紙の1つに対する前記記録工程の最中に、前記複数のロール紙の別の1つの前記ロール紙情報を取得するための前記ロール紙情報取得工程が実行されることを特徴とするロール紙情報取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−45770(P2012−45770A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188433(P2010−188433)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】