説明

記録装置

【課題】搬送ベルトが蛇行しても検知可能であるとともに、装置の製造コストの上昇を抑制する。
【解決手段】プリンタは、搬送ベルト8の主走査方向の位置を検知するセンサ70と、センサ70を主走査方向に沿って移動させる移動機構80と、制御装置とを含んでいる。制御装置は、センサ70の検知結果に基づいて移動機構80を制御し、搬送ベルト8がセンサ70の検知領域75において検知可能なようにセンサ70を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を記録する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送ベルト(転写ベルト)と、搬送ベルトの側端部の座標を検知するセンサと、当該センサの検知結果に基づいて搬送ベルトの蛇行を修正する蛇行修正手段(ベルト駆動制御装置)とを含む画像形成装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−169449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の画像形成装置においては、センサの検知領域は移動不可能に固定されているため、蛇行修正手段による蛇行修正能力を超えるような搬送ベルトの蛇行が生じると、搬送ベルトがセンサの検知領域からはみ出し、当該センサで搬送ベルトの座標を検知することができなくなる。また、センサの検知領域が長尺なものは、非常に高価であり、装置全体の製造コストが上昇する。
【0005】
そこで、本発明の目的は、搬送ベルトが蛇行しても検知可能であるとともに、装置の製造コストの上昇を抑制する記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、記録媒体に画像を記録する記録部と、前記記録部と対向して配置される表面を有し、前記表面が記録媒体を支持しつつ搬送方向に移動することにより前記搬送方向に記録媒体を搬送する無端状の搬送ベルトと、前記搬送方向と直交する直交方向に関する前記搬送ベルトの位置を測定する測定手段とを備えた記録装置において、前記測定手段は、前記直交方向に延在する検知領域を有し、前記搬送ベルトの前記直交方向の位置を検知する光学式のセンサを含んでいる。そして、前記測定手段の測定結果に基づいて、前記搬送ベルトが前記検知領域において検知可能なように前記センサを前記搬送方向と交差する方向に移動させるセンサ移動手段をさらに備えている。
【0007】
これによると、搬送ベルトが蛇行しても、搬送ベルトが検知領域において検知可能なようにセンサが移動する。このため、センサの検知領域が直交する方向に見かけ上長くなり、搬送ベルトが大きく蛇行しても直交方向における搬送ベルトの位置の検知が可能となる。加えて、センサの検知領域が直交する方向に沿って特別に長いセンサを用いる必要が無くなり、装置の製造コストの上昇を抑制することが可能になる。
【0008】
本発明において、前記検知領域は、前記直交方向に沿って配列された複数の分割検知領域を有しており、前記センサ移動手段は、前記複数の分割領域のうちの一端側及び他端側のいずれか一方において前記搬送ベルトの検知状態が変化した場合に、前記一方に対する他方を前記一方に近づける向きに、前記センサを移動させることが好ましい。これにより、複数の分割検知領域の一端側及び他端側のいずれかにおいて搬送ベルトが検知されたときに、センサが移動するため、当該センサの検知領域において確実に搬送ベルトが検知できる。
【0009】
また、本発明において、前記検知領域は、前記直交方向に沿って配列された複数の分割検知領域を有しており、前記センサ移動手段は、前記センサの移動速度を決定する速度決定部を含み、前記速度決定部により決定された前記移動速度において前記センサを移動させるものであり、前記速度決定部は、前記複数の分割検知領域のうちの一端側において、前記搬送ベルトの検知状態が変化したときに、前記複数の分割検知領域のうちの他端側から前記一端側に向かう方向の速度成分が、増大するように前記センサの移動速度を変更することが好ましい。これにより、複数の分割検知領域の一端側において搬送ベルトが検知されたときに、センサの移動速度について、他端側から一端側に向かう方向の速度成分を増大させるため、当該センサの検知領域において確実に搬送ベルトが検知できる。
【0010】
また、本発明において、前記センサ移動手段は、前記搬送ベルトと前記センサの相対位置が同じになるように、前記センサを移動させることが好ましい。これにより、搬送ベルトの蛇行に伴ってセンサが追従して移動する。このため、搬送ベルトを常にセンサで検知することが可能となる。
【0011】
また、本発明において、前記測定手段は、前記直交方向における前記搬送ベルトの位置の単位時間当たりの変化量に応じて前記搬送ベルトの前記直交方向における変位速度を測定し、前記センサ移動手段は、前記測定手段により測定された前記変位速度に応じて前記センサの移動速度を決定する速度決定部を含み、前記速度決定部により決定された前記移動速度において、前記センサを移動させることが好ましい。これにより、センサの移動速度が、搬送ベルトの蛇行速度に応じた速度となる。
【0012】
また、本発明の記録装置は、別の観点では、記録媒体に画像を記録する記録部と、前記記録部と対向して配置される表面を有し、前記表面が記録媒体を支持しつつ搬送方向に移動することにより前記搬送方向に記録媒体を搬送する無端状の搬送ベルトと、前記搬送方向と直交する直交方向に関する前記搬送ベルトの位置を測定する測定手段とを備えた記録装置において、前記測定手段は、発光素子、受光素子、及び、前記発光素子と前記受光素子とを互いに対向させた状態で支持し両者間に検知領域を形成するコの字型のフレームを有する透過型のセンサと、複数の前記センサを支持する支持板とを含み、複数の前記センサの検知結果に基づいて前記直交方向における前記搬送ベルトの位置を測定するものであり、前記支持板を回転させる回転手段をさらに備えている。そして、前記支持板は、前記複数のセンサのそれぞれの前記検知領域と回転中心とを結ぶ直線同士が所定角度をなし、且つ、前記支持板上で前記回転中心を通る仮想直線上に前記複数のセンサのそれぞれの前記検知領域を回転方向に沿って射影した射影検知領域が前記仮想直線上において連続するように前記複数のセンサを支持しており、前記回転手段は、前記複数のセンサのうちのいずれか1つの前記センサの前記検知領域において検知可能なように前記支持板を回転させる。
【0013】
これによると、搬送ベルトが蛇行しても、複数のセンサのうちのいずれかのセンサの検知領域において搬送ベルトが検知可能なように、支持板が回転する。このため、センサの検知領域が直交する方向に見かけ上長くなり、搬送ベルトが大きく蛇行しても搬送ベルトの直交する方向の位置の検知が可能となる。加えて、直交方向におけるセンサの検知領域が特別に長いセンサを用いる必要が無くなり、装置の製造コストの上昇を抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の記録装置によると、搬送ベルトが蛇行しても、搬送ベルトが検知領域において検知可能なようにセンサが移動する。このため、センサの検知領域が直交する方向に見かけ上長くなり、搬送ベルトが大きく蛇行しても直交方向における搬送ベルトの位置の検知が可能となる。加えて、センサの検知領域が直交する方向に沿って特別に長いセンサを用いる必要が無くなり、装置の製造コストの上昇を抑制することが可能になる。
また、本発明の記録装置によると、搬送ベルトが蛇行しても、複数のセンサのうちのいずれかのセンサの検知領域において搬送ベルトが検知可能なように、支持板が回転する。このため、センサの検知領域が直交する方向に見かけ上長くなり、搬送ベルトが大きく蛇行しても搬送ベルトの直交する方向の位置の検知が可能となる。加えて、直交方向におけるセンサの検知領域が特別に長いセンサを用いる必要が無くなり、装置の製造コストの上昇を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る記録装置の第1実施形態としてのインクジェットプリンタの全体的な構成を示す概略側面図である。
【図2】図1に示す搬送ユニットの概略平面図である。
【図3】図2に示すセンサ及び移動機構の側面図である。
【図4】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示す制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】プリンタの制御装置が実行するセンサの移動動作を示すフローチャートである。
【図7】(a)はセンサが第1検知位置に配置されたときの状況を示す拡大図であり、(b)はセンサが第2検知位置に配置されたときの状況を示す拡大図である。
【図8】本発明の第2実施形態によるセンサ及び移動機構を示しており、(a)は平面図であり、(b)は図8(a)に示すVIIIb−VIIIb線に沿った断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態によるプリンタの制御装置が実行するセンサの移動動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第4実施形態によるプリンタの制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第4実施形態によるプリンタの制御装置が実行するセンサの移動動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
先ず、図1を参照し、本発明に係る記録装置の第1実施形態としてのインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
【0018】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部2が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分されている。空間A,Bには、排紙部2に連なる用紙搬送経路が形成されている。空間Cには、インクジェットヘッド10(以下、ヘッド10と称する)に対するインク供給源としてのカートリッジ39が収容されている。
【0019】
空間Aには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのヘッド10、用紙Pを搬送方向D(図1中左から右に向かう方向)に搬送する搬送ユニット21、用紙Pをガイドするガイドユニット等が配置されている。空間Aには、プリンタ1の各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司る制御装置1pが配置されている。制御装置1pは、外部装置から供給された画像データに基づいて、記録動作(プリンタ1の各部による用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインクの吐出動作等)を制御する。
【0020】
搬送ユニット21は、図1及び図2に示すように、ベルトローラ6,7、両ローラ6,7間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト8、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ4及び剥離プレート5、搬送ベルト8の内側に配置された吸着プラテン22等を有する。ベルトローラ7は、駆動ローラであって制御装置1pによって駆動された搬送モータ121(図4参照)によって回転し、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ7の回転に伴い、搬送ベルト8はインクジェットヘッド10と対向する表面8aが搬送方向Dに移動するように走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8が走行するのに伴って、図1中時計回りに回転する。
【0021】
搬送ベルト8は、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂からなり、10〜1014Ωcm程度の体積抵抗率及び可撓性を有しているが、同様の体積抵抗率及び可撓性を有することが可能であれば、どのような材質であってもよい。ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向Dに平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する直交方向である。
【0022】
吸着プラテン22は、搬送方向Dに沿って長尺な複数の長尺部が主走査方向に沿って交互に配置された一対の櫛歯電極(不図示)を有しており、これら電極に電圧が印加されることで搬送ベルト8の表面8aに用紙Pを吸着する装置である。吸着プラテン22に電圧を印加する電源36は、制御装置1pにより制御される。
【0023】
ニップローラ4は、吸着プラテン22の上流端であって、電極の長尺部と対向する位置に配置されている。ニップローラ4は、給紙ユニット1bから送り出されてきた用紙Pを搬送ベルト8の表面8aに押さえ付ける。
【0024】
この構成において、制御装置1pの制御により、ベルトローラ7を図1中時計回りに回転させることによって、搬送ベルト8が回転する。このとき、搬送ベルト8の回転に伴ってベルトローラ6及びニップローラ4も回転する。また、このとき、制御装置1pの制御により、吸着プラテン22の一対の櫛歯電極に互いに異なる電位が印加されると、搬送ベルト8の用紙Pと対向する部分に正又は負の電荷が生じ、用紙Pの搬送ベルト8と対向する面に先の電荷とは極性の異なる電荷が誘起され、これら電荷同士が引き合うことで用紙Pが搬送ベルト8に吸着される。こうして、給紙ユニット1bから送り出された用紙Pが、搬送ベルト8に吸着されながら搬送方向Dに搬送される。さらに、このとき、搬送ベルト8に吸着されつつ搬送されてきた用紙Pがヘッド10のすぐ下方を通過する際に、制御装置1pが各ヘッド10を制御し、用紙Pに向けて各色のインクを吐出する。こうして、用紙Pに所望のカラー画像が形成される。このように各ヘッド10及び制御装置1pによって用紙Pに画像を記録する記録部が構成されている。剥離プレート5は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを表面8aから剥離し、さらに搬送方向Dの下流側へと導く。
【0025】
図2に示すように、プリンタ1は、搬送ベルト8の蛇行(主走査方向に関する位置)を基準位置に修正する蛇行修正機構31と、搬送ベルト8の主走査方向の一端を検知することによって搬送ベルト8の主走査方向の位置を検知するセンサ70と、センサ70を主走査方向に移動させる移動機構80とを有している。蛇行修正機構31は、ベルトローラ6の軸6aの一端を回転可能に支持する軸受け32と、制御装置1pに制御されるモータ33とを有している。モータ33の軸33aの外周面には雄ネジが形成されている。軸受け32には、軸33aが挿入される孔が形成されており、当該孔の内周面には軸33aの雄ネジに噛み合う雌ネジが形成されている。この構成において、制御装置1pがモータ33の軸33aを正又は逆回転させると、軸受け32が副走査方向に沿ってモータ33に近づき又はモータ33から離れる。つまり、制御装置1pがセンサ70の搬送ベルト8の位置検知などに基づいて、ベルトローラ6の軸6aの傾きを制御して、搬送ベルト8の主走査方向の位置を基準位置に戻して蛇行を修正することが可能となる。なお、搬送ベルト8の蛇行を修正している間は、搬送ベルト8が搬送方向Dに走行するように、制御装置1pによってベルトローラ7が駆動されている。このように蛇行修正機構31と制御装置1pとによって蛇行修正手段が構成されている。
【0026】
センサ70は、図3に示すように、発光素子71と、5つの受光素子72a〜72eと、これらを支持する支持フレーム73とを有しており、制御装置1pに接続されている。支持フレーム73は、一対の対向部73a,73bを有している。対向部73aには、発光素子71が支持されている。対向部73bには、5つの受光素子72a〜72eが支持されている。また、支持フレーム73は、発光素子71と受光素子72a〜72eとを互いに対向させた状態で一対の対向部73a,73bを連結する連結部73cを有しており、発光素子71及び受光素子72a〜72e間に検知領域75が形成されたコの字型形状に構成されている。
【0027】
本実施形態におけるセンサ70は、搬送ベルト8の主走査方向の一端部を一対の対向部73a,73b及び連結部73cによって囲み、検知領域75において搬送ベルト8の主走査方向の位置を検知する透過型センサであるが、反射型のセンサを採用してもよく、光学式のセンサであればどのようなものであってもよい。
【0028】
5つの受光素子72a〜72eは、主走査方向に沿って順に配列されており、受光素子72aが連結部73cから最も離れた位置(図3中左側であって搬送ベルト8に近い側)に配置され、受光素子72eが連結部73cに最も近い位置(図3中右側)に配置されている。発光素子71は、これら受光素子72a〜72eと対向するように主走査方向に沿って延在している。また、検知領域75は、各受光素子72a〜72eと対応しており、主走査方向に沿って配列された分割検知領域75a〜75eから構成されている。搬送ベルト8は、これら5つの分割検知領域75a〜75eのいずれに搬送ベルト8の一端部が位置するかによってその主走査方向の位置が検知される。つまり、搬送ベルト8の位置に応じて、受光素子72a〜72eの受光状態が異なる。例えば、図3に示すように、搬送ベルト8の一端部が分割検知領域75cに位置するとき、受光素子72a〜72cは発光素子71からの光が搬送ベルト8によって遮断され、受光素子72d、72eは発光素子71からの光が搬送ベルト8によって遮断されない。つまり、受光素子72a〜72eの受光状態によって、センサ70は搬送ベルト8の一端部の位置を検知する。そして、発光素子71からの光を各受光素子72a〜72eが受光している場合には、各受光素子72a〜72eにおいて検知信号(ON信号)が制御装置1pに出力される。一方、発光素子71からの光を各受光素子72a〜72eが受光していない場合には、各受光素子72a〜72eにおいて検知信号(OFF信号)が制御装置1pに出力される。制御装置1pはセンサ70から出力される検知信号に基づいて、搬送ベルト8の位置を測定する。なお、搬送ベルト8は、通常、3つの検知領域75a〜75cにおいてOFF信号が出力される基準位置に配置されている。つまり、受光素子72a〜72cが受光する発光素子71からの光が搬送ベルト8によって遮断される位置であって、受光素子72d、72eが受光する発光素子71からの光が搬送ベルト8によって遮断されない位置である基準位置に搬送ベルト8は配置されている。
【0029】
移動機構80は、主走査方向の一端にセンサ70が固定された基板81と、基板81の主走査方向の他端に固定された筒体82と、筒体82に軸83aが挿入されたモータ83とを有している。筒体82の内周面には雌ネジが形成されており、軸83aの外周面には筒体82の雌ネジに噛み合う雄ネジが形成されている。また、モータ83は、制御装置1pに制御される。この構成において、制御装置1pがモータ83を正又は逆回転させることで、検知領域75において搬送ベルト8の主走査方向の位置を検知可能な基準検知位置(図3に示す位置)から図3中右方又は左方に向かってセンサ70が移動する。本実施形態においては、基準検知位置に配置されたセンサ70の図3中右方であって分割検知領域75eの位置に分割検知領域75cが位置するようにセンサ70が配置される第1検知位置(図7(a)参照)と、基準検知位置に配置されたセンサ70の左方であって分割検知領域75aの位置に分割検知領域75cが位置するようにセンサ70が配置される第2検知位置(図7(b)参照)との間において、移動機構80がセンサ70を移動させる。このように移動機構80と制御装置1pとによってセンサ70を移動させるセンサ移動手段が構成されている。
【0030】
変形例として、移動機構80は、基準検知位置に配置されたセンサ70の分割検知領域75eの位置に分割検知領域75aが位置するように、基準検知位置に配置されたセンサ70の分割検知領域75aの位置に分割検知領域75eが位置するように、センサ70を主走査方向に沿って移動させてもよい。こうすれば、センサ70の検知領域75の主走査方向に関する見かけ上の長さをさらに長くすることができる。
【0031】
各ヘッド10は、図1に示すように、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するライン式のヘッドである。各ヘッド10の下面は、多数の吐出口が開口した吐出面10aである。記録(画像形成)に際して、4つのヘッド10の吐出面10aからそれぞれブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインクが吐出される。ヘッド10は、副走査方向に所定ピッチで並び、ヘッドホルダ3を介して筐体1aに支持されている。ヘッドホルダ3は、吐出面10aが搬送ベルト8の上側ループの表面8aに対向し、且つ、吐出面10aと表面8aとの間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド10を保持している。
【0032】
ガイドユニットは、搬送ユニット21を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、2つのガイド27a,27b及び一対の送りローラ26を有する。当該ガイド部は、給紙ユニット1b(後述)と搬送ユニット21とを繋ぐ。下流側ガイド部は、2つのガイド29a,29b及び二対の送りローラ28を有する。当該ガイド部は、搬送ユニット21と排紙部2とを繋ぐ。
【0033】
空間Bには、給紙ユニット1bが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ24及び給紙ローラ25を有する。給紙トレイ24は、上方に開口した箱体であり、複数種類のサイズの用紙Pを収納可能である。給紙ローラ25は、給紙トレイ24内で最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0034】
上述したように、空間A,Bに、給紙ユニット1bから搬送ユニット21を介して排紙部2に至る用紙搬送経路が形成されている。外部装置から受信した記録指令に基づいて、制御装置1pは、給紙ローラ25用の給紙モータ125(図4参照)、各ガイド部の送りローラ用の送りモータ127(図4参照)、搬送モータ121(図4参照)等を駆動する。給紙トレイ24から送り出された用紙Pは、送りローラ26によって、搬送ユニット21に供給される。このとき、上述のように制御装置1pは電源36を制御して搬送ベルト8上に搬送されてくる用紙Pを表面8aに吸着する。そして、用紙Pが各ヘッド10の真下を搬送方向に通過する際、ヘッド10から各色のインクが順に吐出され、用紙P上にカラー画像が形成される。なお、インクの吐出動作は、用紙センサ20からの検知信号に基づいて行われる。用紙Pは、その後、剥離プレート5により剥離され、2つの送りローラ28によって上方に搬送されて、上方の開口30から排紙部2に排出される。
【0035】
空間Cには、カートリッジユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。カートリッジユニット1cは、トレイ35、及び、トレイ35内に並んで収納された4つのカートリッジ39を有する。カートリッジ39はチューブ(図示せず)を介して対応するヘッド10にインクを供給する。
【0036】
次に、図4、図5を参照し、プリンタ1の電気的構成について説明する。
【0037】
制御装置1pは、図4に示すように、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)101に加えて、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)103、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )104、I/F(Interface)105、I/O(Input/Output Port)106等を有する。ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM103には、プログラム実行時に必要なデータ(例えば、用紙Pに記録される画像に係る画像データ)が一時的に記憶される。ASIC104では、画像データの書き換え、並び替え等(例えば、信号処理や画像処理)が行われる。I/F105は、外部装置とのデータ送受信を行う。I/O106は、各種センサの検知信号の入力/出力を行う。
【0038】
制御装置1pは、各モータ121,125,127,33,83、用紙センサ20、センサ70、電源36、ブザー38、各ヘッド10の制御基板等に接続されている。また、制御装置1pは、図5に示すように上述のハードウェアによって構築された印字制御部131、搬送制御部132、蛇行修正制御部136、判定部141、及び、センサ移動制御部143などの機能部を有している。
【0039】
印字制御部131は、外部装置から供給された画像データに基づいて、用紙Pに対してインクを吐出するように、各ヘッド10からのインク吐出を制御する。このとき、印字制御部131は、用紙センサ20が用紙Pの前端を検知してから所定時間経過後に、用紙Pに対してインクの吐出を開始するように各ヘッド10を制御する。なお、ここでいう所定時間は、用紙センサ20が用紙Pの前端を検知したときの用紙Pの前端から最も上流にあるヘッド10の最も上流にある吐出口(不図示)までの搬送経路に沿った距離を、用紙Pの搬送速度で割った時間である。
【0040】
搬送制御部132は、制御装置1pに画像データが供給されたときに、給紙ユニット1bから排紙部2まで用紙Pを搬送するように、給紙モータ125、搬送モータ121、送りモータ127、及び、電源36を制御する。また、搬送制御部132は、判定部141がエラーと判定したときに、搬送モータ121を制御して搬送ベルト8の走行を停止する。
【0041】
蛇行修正制御部136は、センサ70からの検知信号に基づいて、搬送ベルト8が基準位置に戻されるように、モータ33及び搬送モータ121を制御する。このように蛇行修正制御部136は、制御装置1p及びセンサ70によって構成された搬送ベルト8の主走査方向の位置を測定する測定手段による測定結果に応じて、搬送ベルト8が基準位置に戻されるように、モータ33及び搬送モータ121を制御する。
【0042】
判定部141は、第1検知位置にあるセンサ70の分割検知領域75eにおいて検知常態がONからOFFに変化したときに、搬送ベルト8の主走査方向の検知が行えないエラーが生じていると判定する。つまり、センサ70が出力する検知信号において、受光素子72eから出力される検知信号がON信号からOFF信号に変化したとき、搬送ベルト8の主走査方向の検知が行えないエラーが生じていると判定する。また、第2検知位置にあるセンサ70の分割検知領域75aにおいて検知状態がOFFからONに変化したときに、搬送ベルト8の主走査方向の検知が行えないエラーが生じていると判定する。つまり、センサ70が出力する検知信号において、受光素子72aから出力される検知信号がOFF信号からON信号に変化したときに、搬送ベルト8の主走査方向の検知が行えないエラーが生じていると判定する。搬送ベルト8の主走査方向の検知が行えないエラーが生じている場合とは、蛇行修正制御部136の制御によって搬送ベルト8の蛇行修正が間に合わない程度の蛇行によって、搬送ベルト8が検知領域75外に移動してしまう恐れがある場合である。また、このとき、判定部141は、エラーが生じていると判定したときに、音を発するようにブザー38(図4参照)を制御する。これにより、搬送ベルト8の基準位置への復帰を行うメンテナンス処理をユーザに促すことが可能となる。
【0043】
センサ移動制御部143は、基準検知位置にあるセンサ70の分割検知領域75eにおいて検知常態がONからOFFに変化したときに、センサ70が基準検知位置から第1検知位置に移動するように、モータ83を制御する。また、センサ移動制御部143は、基準検知位置にあるセンサ70の分割検知領域75aにおいて検知状態がOFFからONに変化したときに、センサ70が基準検知位置から第2検知位置に移動するように、モータ83を制御する。また、センサ移動制御部143は、第1検知位置にあるセンサ70の分割検知領域75aにおいて検知状態がONからOFFに変化したときに、センサ70が第1検知位置から基準検知位置に移動するように、モータ83を制御する。また、センサ移動制御部143は、第2検知位置にあるセンサ70の分割検知領域75eにおいて検知状態がONからOFFに変化したときに、センサ70が第2検知位置から基準検知位置に移動するように、モータ83を制御する。このようにセンサ移動制御部143がセンサ70の位置の移動を制御するので、当該センサ70の検知領域75において確実に搬送ベルト8を検知することができる。
【0044】
続いて、搬送ベルト8の蛇行に伴うセンサの移動動作について、図3、図6及び図7を参照しつつ以下に説明する。プリンタ1は、図6に示すように、ステップ1(S1)において、制御装置1pが搬送モータ121を制御して、搬送ベルト8を走行させる。通常、搬送ベルト8の走行は用紙Pに対する記録動作が行われるときに開始される。
【0045】
次に、ステップ2(S2)において、図3に示す基準検知位置にあるセンサ70の分割検知領域75eにおいて検知状態が変化していない場合はステップ3(S3)に進み、検地状態が変化した場合はステップ4(S4)に進む。ステップ3において、基準検知位置にあるセンサ70の分割検知領域75aにおいて検知状態が変化していない場合はステップ2まで戻り、検知状態が変化した場合はステップ8(S8)に進む。なお、分割検知領域75a,75eにおいて検知状態が変化するまでの間も搬送ベルト8に蛇行が生じている場合は、蛇行修正制御部136がモータ33及び搬送モータ121を制御して、搬送ベルト8を基準位置に戻す蛇行修正が行われている。そして、この蛇行修正が行われているにも拘わらず、分割検知領域75a,75eにおいて検知状態が変化したときに、上述のようにステップ4,8のいずれかに進む。
【0046】
次に、ステップ4において、センサ移動制御部143がモータ83を制御して、図7(a)に示すように、センサ70を基準検知位置から第1検知位置に移動させる。次に、ステップ5(S5)において、分割検知領域75eにおいて検知状態が変化した場合はステップ14(S14)に進み、検知状態が変化していない場合はステップ6(S6)に進む。次に、ステップ6において、分割検知領域75aにおいて検知状態が変化した場合はステップ7(S7)に進み、検知状態が変化していない場合はステップ5に戻る。次に、ステップ7において、センサ移動制御部143は、モータ83を制御してセンサ70を第1検知位置から基準検知位置に移動させる。そして、ステップ12(S12)に進む。なお、このときにおいても蛇行修正が蛇行修正制御部136によって引き続き行われている。
【0047】
ステップ8においては、センサ移動制御部143がモータ83を制御して、図7(b)に示すように、センサ70を基準検知位置から第2検知位置に移動させる。次に、ステップ9(S9)において、分割検知領域75aにおいて検知状態が変化した場合はステップ14に進み、検知状態が変化していない場合はステップ10(S10)に進む。次に、ステップ10において、分割検知領域75eにおいて検知状態が変化した場合はステップ11(S11)に進み、検知状態が変化していない場合はステップ9に戻る。次に、ステップ11において、センサ移動制御部143は、モータ83を制御してセンサ70を第2検知位置から基準検知位置に移動させる。そして、ステップ12に進む。なお、このときにおいても蛇行修正が蛇行修正制御部136によって引き続き行われている。
【0048】
次に、ステップ12において、制御装置1pが、搬送ベルト8の走行を停止するか否かを判定し、搬送ベルト8の走行を停止させない場合は、ステップ2まで戻る。一方、用紙Pに対する記録動作などが終了し搬送ベルト8の走行を停止させる場合は、ステップ13(S13)に進む。
【0049】
また、ステップ14においては、判定部141が搬送ベルト8の主走査方向の検知が行えないエラーが生じていると判定し、ブザー38を制御してユーザにエラーが生じていることを報知する。こうして、ユーザに対して搬送ベルト8の基準位置への復帰を行うメンテナンス処理を促す。次に、ステップ13において、搬送制御部132が搬送モータ121を制御して搬送ベルト8の走行を停止させる。こうして、搬送ベルト8の蛇行に伴うセンサの移動動作が終了する。
【0050】
以上のように、本実施形態のプリンタ1によると、搬送ベルト8が主走査方向に沿って蛇行しても、搬送ベルト8が検知領域75において検知可能なようにセンサ70が移動する。つまり、センサ70が基準検知位置から第1又は第2検知位置に移動する。このため、センサ70の検知領域75が主走査方向に見かけ上長くなり、搬送ベルト8が大きく蛇行しても主走査方向における搬送ベルト8の位置の検知が可能となる。加えて、センサ70の検知領域75が主走査方向に沿って特別に長いセンサを用いる必要が無くなり、装置の製造コストの上昇を抑制することが可能になる。なお、本実施形態では、センサ70は基準検知位置と、第1検知位置と、第2検知位置との3つの位置に移動可能であるが、これに限られず、センサ70が3つ以上の位置に移動可能であっても良い。
【0051】
続いて、本発明の第2実施形態におけるインクジェットプリンタについて、図8を参照しつつ以下に説明する。本実施形態におけるインクジェットプリンタは、センサ70が3つ設けられており、これらセンサ70a〜70cを移動させる移動機構280が第1実施形態と異なるだけである。したがって、同様な構成については同符号で示し、詳細の説明は省略する。3つのセンサ70a〜70cは、第1実施形態のセンサ70と同様なものである。
【0052】
本実施形態における移動機構280は、3つのセンサ70a〜70cが固定された円形の基板(支持板)281と、基板281の中心部に軸283aが固定されたモータ283とを有している。モータ283は、制御装置1pと接続されている。
【0053】
基板281は、3つのセンサ70a〜70cのそれぞれの検知領域75と回転中心Eとを結ぶ直線L1〜L3同士が所定の角度θをなすように、これら3つのセンサ70a〜70cを支持している。さらに基板281は、各センサ70a〜70cの検知領域75を回転方向に沿って回転中心Eを通る仮想直線L4上に射影したときに、各センサ70a〜70cの3つの射影検知領域76が仮想直線L4上において連続するように、これら3つのセンサ70a〜70cを支持している。
【0054】
この構成において、制御装置1pが基板281を角度θだけ回転するようにモータ283を正回転させることで、通常、図8(a)に示す基準検知位置に配置されたセンサ70aが上方に回転移動し、センサ70bが直線L2上の第1検知位置に配置される。一方、制御装置1pが基板281を角度θだけ回転するようにモータ283を逆回転させることで、基準検知位置に配置されたセンサ70aが下方に回転移動し、センサ70cが直線L2上の第2検知位置に配置される。このように制御装置1pの制御によって、3つのセンサ70a〜70cが直線L2上の基準検知位置、第1検知位置および第2検知位置に移動する。なお、センサ70aの分割検知領域75eとセンサ70bの分割検知領域75cとが、回転方向に沿って重なっている。また、センサ70aの分割検知領域75aとセンサ70cの分割検知領域75cとが回転方向に沿って重なっている。つまり、3つのセンサ70a〜70cが直線L2上の基準検知位置、第1及び第2検知位置に配置されることで得られる検知領域の見かけ上の長さ(主走査方向の長さ)は、第1実施形態におけるセンサ70の移動によって得られる検知領域の見かけ上の長さと同じである。このように移動機構280と制御装置1pとによってセンサ70を移動させる回転手段が構成されている。
【0055】
本実施形態におけるセンサ70a〜70cの移動動作は、第1実施形態とほぼ同様な制御で行われる。つまり、基準検知位置にあるセンサ70aの分割検知領域75eにおいて検知状態が変化した場合は、センサ70bを第1検知位置に移動させる。そして、センサ70bの分割検知領域75eにおいて検知状態が変化したときは、判定部141がエラーと判定し、上述のステップ13,14と同様な制御が行われる。センサ70bの分割検知領域75aにおいて検知状態が変化したときは、センサ70aを基準検知位置に移動させる。
【0056】
基準検知位置にあるセンサ70aの分割検知領域75aにおいて検知状態が変化した場合は、センサ70cを第2検知位置に移動させる。そして、センサ70cの分割検知領域75aにおいて検知状態が変化したときは、判定部141がエラーと判定し、上述のステップ13,14と同様な制御が行われる。センサ70cの分割検知領域75eにおいて検知状態が変化したときは、センサ70aを基準検知位置に移動させる。そして、上述のステップ12,13と同様な制御が行われる。
【0057】
以上のように、本実施形態のプリンタにおいても、搬送ベルト8が主走査方向に沿って蛇行しても、3つのセンサ70a〜70cのうちのいずれかのセンサ70a〜70cの検知領域75において搬送ベルト8が検知可能なように、基板281が回転する。このため、センサ70a〜70cの検知領域75が主走査方向に見かけ上長くなり、搬送ベルト8が大きく蛇行しても主走査方向における搬送ベルト8の位置の検知が可能となる。加えて、センサの検知領域が主走査方向に沿って特別に長いセンサを用いる必要が無くなり、装置の製造コストの上昇を抑制することが可能になる。
【0058】
続いて、本発明の第3実施形態におけるインクジェットプリンタについて、図9を参照しつつ以下に説明する。本実施形態におけるインクジェットプリンタは、第1実施形態と装置構成は同様であるが、その制御内容が異なる。第1実施形態と同様な構成については、同じ符号で示し説明を省略する。
【0059】
本実施形態の制御装置1pの判定部141は、センサ70を主走査方向に沿って分割検知領域75aから分割検知領域75eに向かう第1方向に移動させようとする際に、センサ70が第1方向に所定速度で移動していると判定したときに、エラーが生じていると判定する。また、判定部141は、センサ70を主走査方向に沿って分割検知領域75eから分割検知領域75aに向かう第2方向に移動させようとする際に、センサ70が第2方向に所定速度で移動していると判定したときに、エラーが生じていると判定する。つまり、蛇行修正制御部136の制御によって搬送ベルト8の蛇行修正が間に合わない程度の蛇行が生じており、搬送ベルト8が検知領域75外に移動すると判定する。また、このとき、判定部141は、エラーが生じていると判定したときに、音を発するようにブザー38を制御する。これにより、搬送ベルト8の基準位置への復帰を行うメンテナンス処理をユーザに促すことが可能となる。
【0060】
センサ移動制御部143は、センサ70を所定速度で第1方向及び第2方向に移動可能である。つまり、センサ移動制御部143は、センサ70を所定速度で第1方向に移動させる状態と、センサ70を移動させない状態と、センサ70を所定速度で第2方向に移動させる状態とを取りうる。また、センサ移動制御部143は、センサ70の分割検知領域75eにおいて検知常態がONからOFFに変化したときに、第1方向の速度成分が所定速度だけ増加するように、モータ83を制御する。また、センサ70の分割検知領域75aにおいて検知状態がOFFからONに変化したときに、第2方向の速度成分が所定速度だけ増加するように、モータ83を制御する。
【0061】
続いて、搬送ベルト8の蛇行に伴うセンサの移動動作について、図9を参照しつつ以下に説明する。プリンタ1は、図9に示すように、ステップ1(F1)において、制御装置1pが搬送モータ121を制御して、搬送ベルト8を走行させる。通常、搬送ベルト8の走行は用紙Pに対する記録動作が行われるときに開始される。なお、ステップ1が行われてから搬送ベルト8の走行が停止するまでは、センサ70の検知信号に基づいて、蛇行修正制御部136がモータ33及び搬送モータ121を制御して、搬送ベルト8を基準位置に戻す蛇行修正が行われている。
【0062】
次に、ステップ2(F2)において、基準検知位置にあるセンサ70の分割検知領域75eにおいて検知状態が変化していない場合はステップ3(F3)に進み、検知状態が変化した場合はステップ6(F6)に進む。ステップ3において、基準検知位置にあるセンサ70の分割検知領域75aにおいて検知状態が変化していない場合はステップ4(F4)に進み、検知状態が変化した場合はステップ9(F9)に進む。ステップ4において、制御装置1pが、搬送ベルト8の走行を停止するか否かを判定し、搬送ベルト8の走行を停止させない場合は、ステップ2まで戻る。一方、用紙Pに対する記録動作などが終了し搬送ベルト8の走行を停止させる場合は、ステップ5(F5)に進む。
【0063】
ステップ6においては、判定部141が、センサ70が第1方向(図3中右方)に所定速度で移動しているか否かを判定し、移動している場合はステップ12(F12)に進み、移動していない場合はステップ7(F7)に進む。次に、ステップ7において、センサ移動制御部143が、モータ83を制御して、センサ70の第1方向の速度成分を所定速度だけ増加させる。つまり、センサ70が移動せずに停止していた場合には、センサ移動制御部143はセンサ70を所定速度で第1方向に移動させる。また、センサ70が所定速度で第2方向に移動していた場合には、センサ移動制御部143はセンサ70の移動を停止させる。次に、ステップ8(F8)において、ステップ7においてセンサ70を所定速度で移動させてから所定期間内にセンサ70の分割検知領域75dにおいて検知状態が変化した場合はステップ2に戻り、検知状態が変化していない場合はステップ6に戻る。このステップ6に戻った場合に、センサ70が既に所定速度で第1方向に移動しているときには、ステップ12に進む。
【0064】
ステップ9においては、判定部141が、センサ70が第2方向(図3中左方)に所定速度で移動しているか否かを判定し、移動している場合はステップ12(F12)に進み、移動していない場合はステップ10(F10)に進む。次に、ステップ10において、センサ移動制御部143が、モータ83を制御して、センサ70の第2方向の速度成分を所定速度だけ増加させる。つまり、センサ70が移動せずに停止していた場合には、センサ移動制御部143はセンサ70を所定速度で第2方向に移動させる。また、センサ70が所定速度で第1方向に移動していた場合には、センサ移動制御部143はセンサ70の移動を停止させる。次に、ステップ11(F11)において、ステップ10においてセンサ70を所定速度で移動させてから所定期間内にセンサ70の分割検知領域75bにおいて検知状態が変化した場合はステップ2に戻り、検知状態が変化していない場合はステップ9に戻る。このステップ9に戻った場合に、センサ70が既に所定速度で第2方向に移動しているときには、ステップ12に進む。
【0065】
ステップ12においては、判定部141が搬送ベルト8の主走査方向の検知が行えないエラーが生じていると判定し、ステップ5に進むとともにブザー38を制御してユーザにエラーが生じていることを報知する。つまり、ユーザに対して搬送ベルト8の基準位置への復帰を行うメンテナンス処理を促す。次に、ステップ5において、搬送制御部132が、搬送モータ121を制御して搬送ベルト8の走行を停止する。こうして、搬送ベルト8の蛇行に伴うセンサの移動動作が終了する。
【0066】
以上のように、本実施形態のプリンタによると、分割検知領域75eにおいて検知状態が変化したときに、センサ70の移動速度について第1方向の速度成分を増大させるため、当該センサ70の検知領域75において確実に搬送ベルト8を検知することができる。また、分割検知領域75aにおいて検知状態が変化したときに、センサ70の移動速度について第2方向の速度成分を増大させるため、当該センサ70の検知領域75において確実に搬送ベルト8を検知することができる。なお、上述の第1及び第2実施形態と同様な構成については、同じ効果を得ることができる。
【0067】
続いて、本発明の第4実施形態におけるインクジェットプリンタについて、図10及び図11を参照しつつ以下に説明する。本実施形態におけるインクジェットプリンタは、第1実施形態と装置構成はほぼ同様であるが、その制御内容が異なる。第1実施形態と同様な構成については、同じ符号で示し説明を省略する。
【0068】
本実施形態の制御装置401pは、第1実施形態の制御装置1pに蛇行速度算出部134及び記憶部135が新たに設けられている。蛇行速度算出部134は、センサ70からの検知信号(搬送ベルト8の主走査方向の位置を示す信号)に基づいて、搬送ベルト8の主走査方向の位置の単位時間当たりの変化量に応じて、蛇行速度(搬送ベルト8の主走査方向の変位速度)を所定時間毎に算出する。このとき、蛇行速度算出部134が算出した蛇行速度は、搬送ベルト8が連結部73cに近づく方向(分割検知領域75aから分割検知領域75eに向かう第1方向)に関する蛇行速度がプラス側であり、搬送ベルト8が連結部73cから離れる方向(分割検知領域75eから分割検知領域75aに向かう第2方向)に関する蛇行速度がマイナス側である。このように蛇行速度算出部134などの制御装置1p及びセンサ70によって、搬送ベルト8の主走査方向の位置や蛇行速度を測定する測定手段が構成されている。
【0069】
記憶部135は、蛇行速度0から基準蛇行速度+Vの範囲に対応した基準センサ移動速度+Tと、基準蛇行速度―Vから蛇行速度0の範囲に対応した基準センサ移動速度―Tとを記憶している。ここで、センサ70の移動速度がプラスであるとき、センサ70の移動方向は第1方向であり、センサの移動速度がマイナスであるとき、センサ70の移動方向が第2方向である場合である。また、記憶部135は、プラス側に基準蛇行速度+Vを超える速度に対応するプラス側移動速度T1と、マイナス側に基準蛇行速度−Vを超える速度に対応するマイナス側移動速度T2とを記憶している。なお、基準蛇行速度Vは、予め想定される蛇行速度に基づいて決められた値である。基準センサ移動速度は、算出した蛇行速度が基準蛇行速度±Vの範囲内に当てはまる際に、当該蛇行速度よりもセンサの移動速度が同方向において速くなる速度として決められている。また、プラス側移動速度T1及びマイナス側移動速度T2は、基準センサ移動速度よりも同方向において大きい値である。
【0070】
判定部141は、センサ70を第1方向に移動させている際に分割検知領域75eにおいて検知状態が変化したときに、エラーが生じていると判定する。また、センサ70を第2方向に移動させている際に分割検知領域75aにおいて検知状態が変化したときに、エラーが生じていると判定する。つまり、蛇行修正制御部136の制御によって搬送ベルト8の蛇行修正が間に合わない程度の蛇行が生じており、搬送ベルト8が検知領域75外に移動すると判定する。また、このとき、判定部141は、エラーが生じていると判定したときに、音を発するようにブザー38を制御する。これにより、搬送ベルト8の基準位置への復帰を行うメンテナンス処理をユーザに促すことが可能となる。
【0071】
センサ移動制御部(速度決定部)143は、蛇行速度算出部134によって算出された蛇行速度が記憶部135に記憶された範囲のどこに入るかを判定する。センサ移動制御部143は、搬送ベルト8の蛇行速度に応じてセンサ70の移動速度を決定して、決定した移動速度でセンサ70が移動するようにモータを制御する。つまり、蛇行速度算出部134によって算出された蛇行速度が0から基準蛇行速度+Vの範囲内に入る場合は、センサ70が基準センサ移動速度+Tで移動するように、モータ83を制御する。また、蛇行速度算出部134によって算出された蛇行速度が基準蛇行速度―Vから0の範囲内に入る場合は、センサ70が基準センサ移動速度―Tで移動するように、モータ83を制御する。蛇行速度算出部134によって算出された蛇行速度がプラス側において基準蛇行速度+Vを超える場合は、プラス側移動速度T1でセンサ70が移動するように、モータ83を制御する。蛇行速度算出部134によって算出された蛇行速度がマイナス側において基準蛇行速度−Vを超える場合は、マイナス側移動速度T2でセンサ70が移動するように、モータ83を制御する。
【0072】
続いて、搬送ベルト8の蛇行に伴うセンサの移動動作について、図11を参照しつつ以下に説明する。プリンタ1は、図11に示すように、ステップ1(G1)において、制御装置1pが搬送モータ121を制御して、搬送ベルト8を走行させる。通常、搬送ベルト8の走行は用紙Pに対する記録動作が行われるときに開始される。なお、ステップ1が行われてから搬送ベルト8の走行が停止するまでは、センサ70の検知信号に基づいて、蛇行修正制御部136がモータ33及び搬送モータ121を制御して、搬送ベルト8を基準位置に戻す蛇行修正が行われている。
【0073】
次に、ステップ2(G2)において、蛇行速度算出部134がセンサ70からの検知信号(搬送ベルト8の主走査方向の位置を示す信号)に基づいて、蛇行速度(方向成分含む)を算出する。次に、ステップ3(G3)において、センサ移動制御部143が、蛇行速度算出部134によって算出された蛇行速度が記憶部135に記憶されたどの範囲に入るかを判定し、センサ70の移動速度を決定する。つまり、記憶部135に記憶された基準センサ移動速度±T、プラス側移動速度T1、及び、マイナス側移動速度T2のいずれかを選択する。そして、ステップ4(G4)において、センサ移動制御部143がモータ83を制御して、決定した速度でセンサ70を移動させる。
【0074】
次に、ステップ5(G5)において、ステップ5において決定した速度でセンサ70を移動させてから所定期間内であって、センサ70が第1方向に移動している場合、判定部141は分割検知領域75eにおいて検知状態が変化したか否かを判定し、検知状態が変化したときはステップ6(G6)に進み、検知状態が変化していないときはステップ7(G7)に進む。また、ステップ4において決定した速度でセンサ70を移動させてから所定期間内であって、センサ70が第2方向に移動している場合、判定部141は分割検知領域75aにおいて検知状態が変化したか否かを判定し、検知状態が変化したときはステップ6(G6)に進み、検知状態が変化していないときはステップ7(G7)に進む。
【0075】
ステップ7においては、判定部141が搬送ベルト8の主走査方向の検知が行えないエラーが生じていると判定し、ステップ8(G8)に進むとともにブザー38を制御してユーザにエラーが生じていることを報知する。つまり、ユーザに対して搬送ベルト8の基準位置への復帰を行うメンテナンス処理を促す。ステップ7においては、制御装置1pが、搬送ベルト8の走行を停止するか否かを判定し、搬送ベルト8の走行を停止させない場合は、ステップ2まで戻る。一方、用紙Pに対する記録動作などが終了し搬送ベルト8の走行を停止させる場合は、ステップ8に進む。次に、ステップ8において、搬送制御部132が、搬送モータ121を制御して搬送ベルト8の走行を停止する。こうして、搬送ベルト8の蛇行に伴うセンサ70の移動動作が終了する。なお、ステップ2における搬送ベルト8の蛇行速度の算出は、所定期間の間隔で行われる。このとき、所定期間を搬送ベルト8の蛇行速度に対して十分短く設定する。
【0076】
以上のように、本実施形態のプリンタによると、搬送ベルト8の蛇行に伴ってセンサ70が追従して移動する。このため、搬送ベルト8を常にセンサ70で検知することが可能となる。また、センサ70の移動速度が、搬送ベルト8の蛇行速度に応じた速度となる。そのため、センサ70と搬送ベルト8との相対位置が同じとなる。なお、本実施形態において、センサ移動制御部143がセンサ70を移動させる際の移動速度は、予め決められた速度(基準センサ移動速度±T、プラス側移動速度T1、マイナス側移動速度T2)であるが、これに限らず、センサ移動制御部143は、蛇行速度算出部134によって算出された蛇行速度と同じ速度でセンサ70を移動させても良い。なお、上述の第1〜第3実施形態と同様な構成については、同じ効果を得ることができる。
【0077】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、第1〜第3実施形態においては、分割検知領域75a,75eのいずれかにおいて検知状態が変化したときに、センサ70を移動させているが、分割検知領域75b,75dのいずれかにおいて検知状態が変化したときに、センサ70を移動させてもよい。また、第1、第3及び第4実施形態におけるセンサ70は、移動機構80によって主走査方向に沿って移動するが、センサ70は主走査方向以外であって搬送方向Dと交差する方向に移動してもよい。
【0078】
また、本実施形態におけるセンサ70は、搬送ベルト8の主走査方向の一端を検知することによって搬送ベルト8の主走査方向の位置を検知しているが、搬送ベルト8の端部に貫通孔を設け、当該貫通孔の位置をセンサで検知して搬送ベルト8の主走査方向の位置を検知してもよい。また、搬送ベルト8の主走査方向の端部を検知するセンサは、搬送ベルト8の主走査方向の両端を検知していてもよい。
【0079】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う記録装置にも適用可能である。本発明は、インクジェット式に限定されず、例えばレーザー式、サーマル式等の記録装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。
【符号の説明】
【0080】
1 インクジェットプリンタ(記録装置)
1p 制御装置
8 搬送ベルト
8a 表面
10 インクジェットヘッド
21 搬送ユニット
70 センサ
71 発光素子
72a〜72e 受光素子
73 支持フレーム
75 検知領域
75a〜75e 分割検知領域
141 判定部
143 センサ移動制御部(速度決定部)
280 移動機構
281 基板(支持板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を記録する記録部と、前記記録部と対向して配置される表面を有し、前記表面が記録媒体を支持しつつ搬送方向に移動することにより前記搬送方向に記録媒体を搬送する無端状の搬送ベルトと、前記搬送方向と直交する直交方向に関する前記搬送ベルトの位置を測定する測定手段とを備えた記録装置において、
前記測定手段は、前記直交方向に延在する検知領域を有し、前記搬送ベルトの前記直交方向の位置を検知する光学式のセンサを含んでおり、
前記測定手段の測定結果に基づいて、前記搬送ベルトが前記検知領域において検知可能なように前記センサを前記搬送方向と交差する方向に移動させるセンサ移動手段をさらに備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記検知領域は、前記直交方向に沿って配列された複数の分割検知領域を有しており、
前記センサ移動手段は、前記複数の分割領域のうちの一端側及び他端側のいずれか一方において前記搬送ベルトの検知状態が変化した場合に、前記一方に対する他方を前記一方に近づける向きに、前記センサを移動させることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記検知領域は、前記直交方向に沿って配列された複数の分割検知領域を有しており、
前記センサ移動手段は、前記センサの移動速度を決定する速度決定部を含み、前記速度決定部により決定された前記移動速度において前記センサを移動させるものであり、
前記速度決定部は、前記複数の分割検知領域のうちの一端側において、前記搬送ベルトの検知状態が変化したときに、前記複数の分割検知領域のうちの他端側から前記一端側に向かう方向の速度成分が、増大するように前記センサの移動速度を変更することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記センサ移動手段は、前記搬送ベルトと前記センサの相対位置が同じになるように、前記センサを移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記測定手段は、前記直交方向における前記搬送ベルトの位置の単位時間当たりの変化量に応じて前記搬送ベルトの前記直交方向における変位速度を測定し、
前記センサ移動手段は、前記測定手段により測定された前記変位速度に応じて前記センサの移動速度を決定する速度決定部を含み、前記速度決定部により決定された前記移動速度において、前記センサを移動させることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
記録媒体に画像を記録する記録部と、前記記録部と対向して配置される表面を有し、前記表面が記録媒体を支持しつつ搬送方向に移動することにより前記搬送方向に記録媒体を搬送する無端状の搬送ベルトと、前記搬送方向と直交する直交方向に関する前記搬送ベルトの位置を測定する測定手段とを備えた記録装置において、
前記測定手段は、発光素子、受光素子、及び、前記発光素子と前記受光素子とを互いに対向させた状態で支持し両者間に検知領域を形成するコの字型のフレームを有する透過型のセンサと、複数の前記センサを支持する支持板とを含み、複数の前記センサの検知結果に基づいて前記直交方向における前記搬送ベルトの位置を測定するものであり、
前記支持板を回転させる回転手段をさらに備えており、
前記支持板は、前記複数のセンサのそれぞれの前記検知領域と回転中心とを結ぶ直線同士が所定角度をなし、且つ、前記支持板上で前記回転中心を通る仮想直線上に前記複数のセンサのそれぞれの前記検知領域を回転方向に沿って射影した射影検知領域が前記仮想直線上において連続するように前記複数のセンサを支持しており、
前記回転手段は、前記複数のセンサのうちのいずれか1つの前記センサの前記検知領域において検知可能なように前記支持板を回転させることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−76837(P2012−76837A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220871(P2010−220871)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】