記録装置
【課題】必要な区間中の音響信号又は画像信号を記録する。
【解決手段】動画像の撮影中において、記録処理部51は、当該動画像の記録処理を行い、判定部52は、画像信号及び音響信号に基づき記録条件の充足又は不充足を判定する。例えば、画像信号に基づいて撮像部の被写体の状態(撮影領域内における人物の有無等)を検出し、検出結果と音響信号に基づいて当該判定を行う。録音処理部53は、記録条件が充足する区間中の音響信号を動画像とは別に記録媒体13に記録させる。
【解決手段】動画像の撮影中において、記録処理部51は、当該動画像の記録処理を行い、判定部52は、画像信号及び音響信号に基づき記録条件の充足又は不充足を判定する。例えば、画像信号に基づいて撮像部の被写体の状態(撮影領域内における人物の有無等)を検出し、検出結果と音響信号に基づいて当該判定を行う。録音処理部53は、記録条件が充足する区間中の音響信号を動画像とは別に記録媒体13に記録させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICレコーダ(digital voice recorder)、デジタルビデオカメラ等の記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音響信号又は画像信号を取得及び記録可能な記録装置において、ユーザ操作に拠ることなく、重要なシーンを自動的に判定して当該シーン中の信号を記録する同期記録機能が提案されている。ICレコーダに搭載される同期記録機能では、例えば、音響信号による音の大きさを所定閾値と比較することで発言の有無を検出し、発言のあるシーンの音響信号のみを記録するといった処理が成される(例えば、下記特許文献1参照)。ユーザは同期記録機能を会議等において適用し、記録結果を会議の議事録作成などに役立てることができる。
【0003】
尚、デジタルカメラにおいて、被写体人物の笑顔レベルが所定レベル以上であるときに自動撮影を行う方法(下記特許文献2参照)や、被写体人物がカメラから見て所定距離範囲内に入ったときに自動撮影を行う方法(下記特許文献3参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−050364号公報
【特許文献2】特開2010−219739号公報
【特許文献3】特開2010−193423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発言のあった区間では音の大きさが大きくなるので、上記閾値を用いて記録の要否判定を行う方法は有益ではある。しかし、記録装置の周辺環境は様々であり、真に記録を行うべきか否かは、音以外の環境要因にも依存するものと考えられる。
【0006】
そこで本発明は、記録の必要な区間を良好に検知して当該区間中の信号を記録しうる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る記録装置は、収音によって音響信号を生成する収音部と、画像撮影によって画像信号を生成する撮像部と、記録媒体に対する前記音響信号又は前記画像信号の記録を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記撮像部による動画像の撮影中において、前記音響信号及び前記画像信号に基づき所定の記録条件の充足又は不充足を判定し、前記記録条件が充足する区間中の前記音響信号又は前記画像信号を前記記録媒体に記録することを特徴とする。
【0008】
音響信号及び画像信号の双方を参照することにより、様々な状況に適応した高度な記録要否判定(記録条件の充足/不充足判定)を成すことが可能となり、真に記録の必要な区間を良好に検知することが可能となる。
【0009】
例えば、前記制御部は、前記動画像の前記記録媒体への記録中において前記区間が検出された場合、前記区間中の音響信号を前記動画像とは別に前記記録媒体に記録してもよい。
【0010】
動画像とは別に記録条件が充足する区間中の音響信号を記録しておくことにより、ユーザは会議等の重要部分を集約した記録ファイルを後から参照することが可能となり、結果例えば、議事録の作成作業等が容易化される。
【0011】
また例えば、前記制御部は、前記画像信号から被写体の状態を検出し、前記被写体の状態の検出結果と前記音響信号とに基づいて前記記録条件の充足又は不充足を判定してもよい。
【0012】
具体的には例えば、前記被写体の状態は、前記撮像部の撮影領域内における人物の有無、前記撮影領域内における人物の口の動き、及び、前記撮影領域内における人物と当該記録装置との距離、の内の少なくとも一つを含んでいても良い。
【0013】
また具体的には例えば、前記制御部は、前記音響信号による音の大きさを判定閾値と比較することで前記記録条件の充足又は不充足を判定し、前記判定閾値を前記画像信号に基づき可変設定しても良い。
【0014】
更に具体的には例えば、前記制御部は、前記音響信号に含まれる規定帯域の信号成分による音の大きさを前記判定閾値と比較することで前記記録条件の充足又は不充足を判定し、前記規定帯域を前記画像信号に基づき可変設定しても良い。
【0015】
また例えば、操作の入力を受ける操作部を当該記録装置に更に設けておいても良い。そして例えば、前記制御部は、更に、前記撮影部の撮影画角又は前記操作部への入力操作にも基づいて、前記記録条件の充足又は不充足を判定してもよい。
【0016】
これにより、記録要否判定(記録条件の充足/不充足判定)の適正化が更に促進される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、記録の必要な区間を良好に検知して当該区間中の信号を記録しうる記録装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る記録装置の概略全体ブロック図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る記録装置の動作フローチャートである。
【図3】動画像の撮影区間と、対象区間との関係を説明するための図である。
【図4】動画像ファイルと音声ファイルが別々に記録媒体に記録される様子を示す図である。
【図5】本発明の第1実施例に係る記録装置の一部ブロック図である。
【図6】記録条件充足/不充足判定部のブロック図である。
【図7】指向性制御における指向角を説明するための図である。
【図8】記録条件充足/不充足判定部の第1変形ブロック図である。
【図9】記録条件充足/不充足判定部の第2変形ブロック図である。
【図10】本発明の第2実施例に係る記録装置の動作フローチャートである。
【図11】本発明の第2実施例に係る記録装置の一部ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る記録装置1の概略構成ブロック図である。記録装置1は、画像信号及び音響信号の記録が可能な任意の電子機器であり、例えば、動画像撮影機能付きのICレコーダ(digital voice recorder)、又は、ICレコーダとしての機能をも有するデジタルビデオカメラである。
【0021】
記録装置1は、符号11〜17によって参照される各部位を備える。撮像部11は、固体撮像素子から成り、固体撮像素子を用いた画像撮影を行って撮影画像の画像信号を生成及び出力する。収音部12は、1以上のマイクロホンから成り、収音によって音響信号(マイクロホンに到来した音の電気信号)を生成及び出力する。記録媒体13は、不揮発性メモリから成り、任意の画像信号及び音響信号を記録する。尚、或る画像の記録という表現と、当該画像の画像信号の記録という表現は同義である。表示部14は、液晶ディスプレイパネル等から成り、撮像部11による撮影画像又は記録媒体13の記録画像などを表示する。スピーカ部15は、1以上のスピーカから成り、収音部12にて生成された音響信号又は記録媒体13に記録された音響信号を音として再生する。操作部16は、操作ボタン、操作キー、操作レバー又はタッチパネルを有し、ユーザによる様々な操作の入力を受けて入力操作内容を主制御部17に伝達する。主制御部17は、操作部16への入力操作内容を参照しつつ、記録装置1内の各部位の動作を統括的に制御する。
【0022】
主制御部17による制御には、記録媒体13に対する記録制御が含まれ、記録装置1では、当該記録制御の方法に特異な方法を採用する。以下に、記録制御に関わる複数の実施例を説明する。矛盾無き限り、当該複数の実施例の内、或る実施例に記載した事項を他の実施例に適用することができる。尚、以下の説明文において、特に記述なき限り、画像信号とは撮像部11の出力画像信号に基づく画像信号(撮像部11の出力画像信号そのものを含む)を指し、音響信号とは収音部12の出力音響信号に基づく音響信号(収音部12の出力音響信号そのものを含む)を指す。
【0023】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。図2は、第1実施例に係る記録装置1の動作フローチャートである。まず、ステップS11において、操作部16に成された所定の録画開始操作等に従い、記録装置1は、撮像部11を用いた動画像の撮影及び当該動画像の記録媒体13への記録を開始する。ここで記録される動画像を動画像300と呼ぶ(図3参照)。動画像300の記録の開始及び終了時刻を、夫々、記号tA及びtBにて表す。続くステップS12では、主制御部17は、動画像300の撮影及び記録区間中において所定の記録条件を満たす区間(以下、対象区間という)を検出する。図3の区間310は、検出された対象区間の例である。対象区間が検出されるとステップS12からステップS13への遷移が発生する。
【0024】
ステップS13において、主制御部17は、対象区間中の音響信号を動画像300とは別に記録媒体13に記録する。具体的には、図4に示す如く、主制御部17は、動画像300についてのファイルである動画像ファイル320を記録媒体13に記録させる一方で、音声ファイル330を動画像ファイル320とは別に記録媒体13に記録させる。動画像ファイル320は、時刻tA及びtB間の画像信号を少なくとも格納しており、更に、時刻tA及びtB間の音響信号をも格納しうる。ここでは、時刻tA及びtB間の画像信号と時刻tA及びtB間の音響信号とが時間的に互いに関連付けられた上で動画像ファイル320に格納されているものとする。音声ファイル330は、対象区間310中の音響信号を格納した音声ファイルである。
【0025】
ステップS12及びS13の処理は、動画像300の撮影及び記録が終了するまで繰り返し実行される。従って、時刻tA及びtB間に、上記記録条件を満たす区間が互いに分離して複数存在する場合には、複数の対象区間についての複数の音声ファイルが動画像ファイル320とは別に記録媒体13に記録されることになる。
【0026】
図5は、第1実施例に係る記録装置1の一部ブロック図である。動画像記録処理部51(以下、記録処理部51と略記することがある)、記録条件充足/不充足判定部52(以下、判定部52と略記することがある)及び録音処理部53を、主制御部17に設けておくことができる。撮像部11からの画像信号及び/又は収音部12からの音響信号は、記録処理部51、判定部52及び録音処理部53に供給される。
【0027】
記録処理部51は、時刻tA及びtB間の画像信号及び音響信号を所定の圧縮方式にて圧縮しつつ、動画像ファイル320に格納した上で記録媒体13に記録する。判定部52は、時刻tAと時刻tBとの間における各区間が所定の記録条件を充足するか否かを画像信号及び音響信号に基づいて判定し、判定結果を表す判定結果情報を録音処理部53に送る。この判定によって、所定の記録条件を満たす区間(即ち対象区間)が検出及び特定される。録音処理部53は、対象区間310中の音響信号を所定の圧縮方式にて圧縮しつつ、音声ファイル330に格納した上で記録媒体13に記録する。
【0028】
図6は、判定部52の一例である判定部52aの内部ブロックである。判定部52aは、符号61〜65によって参照される各部位を備える。第1実施例では、収音部12が、記録装置1上の互いに異なる位置に配置された2つのマイクロホンから成るものとする(後述の他の実施例においても同様)。そうすると、収音部12からは、2チャンネル分の音響信号から成るステレオ音響信号が得られる。但し、収音部12は、3以上のマイクロホンから形成されていても良い。
【0029】
指向性制御部61は、ステレオ音響信号から、任意の方向に指向軸を持ち且つ任意の指向角を有する有指向性音響信号を生成する。図7(a)及び(b)を参照する。図7(a)及び(b)は、上方から見た記録装置1の平面図である。上記の指向軸を、撮像部11の光軸350と一致させることができる。光軸350は地面(水平面)と平行であるとする。撮像部11の固体撮像素子を通る鉛直線(又は2つのマイクロホン間の中心を通る鉛直線)を回転軸として、光軸350を、時計回りに角度φ/2だけ回転させた軸及び反時計回りに角度φ/2だけ回転させた軸を、夫々、軸351及び352と呼ぶ。そうすると、φが指向角に相当する。図7(b)に示される斜線領域353は、光軸350を内包する、軸352から軸351までの領域である。指向性制御部61から得られる有指向性音響信号は、斜線領域353外の音源から記録装置1に到来した音の成分と比べて、斜線領域353内の音源から記録装置1に到来した音の成分に対し、高い指向性(感度)を持った音響信号である。
【0030】
指向性制御部61は、公知の指向性制御(例えば、特開2011−155580号公報に記載された指向性制御)を用いて、ステレオ音響信号から、斜線領域353より到来した信号成分を抽出し、抽出した信号成分を有指向性音響信号として出力することができる。指向角φに予め設定された固定値を持たせることもできるが、後述されるように、指向角φは可変値であっても良い。
【0031】
帯域通過フィルタ62は、指向性制御部61からの有指向性音響信号の信号成分の内、規定された通過帯域内の信号成分のみを通過させるフィルタであり、IIR(Infinite impulse response)フィルタ等のデジタルフィルタにて帯域通過フィルタ62を構成できる。帯域通過フィルタ62によって、規定帯域である通過帯域内の信号成分が抽出され、抽出された信号成分が時間平均部63に出力される。過帯域内の信号成分の抽出は、例えば、通過帯域内の信号成分の増幅及び/又は通過帯域外の信号成分の減衰によって実現される。
【0032】
時間平均部63は、帯域通過フィルタ62の出力音響信号(通過帯域内の信号成分から成る音響信号)の振幅絶対値を求め、更に単位時間(例えば1秒間)ごとに振幅絶対値の平均値VOLAVEを求める。ここで求められる平均値VOLAVEは、帯域通過フィルタ62の出力音響信号による音の大きさ(換言すれば強度)の時間平均値である。
【0033】
記録判定部64は、単位時間ごとに求められた平均値VOLAVEを判定閾値THと比較し、平均値VOLAVEが判定閾値TH以上になっている区間が対象区間に含まれ且つ平均値VOLAVEが判定閾値TH未満になっている区間が対象区間に含まれないように、判定結果情報を生成する。平均値VOLAVEが判定閾値TH以上であるという条件が上記記録条件に相当する、と考えることができる。従って例えば、第1及び第2時刻間のみにおいて平均値VOLAVEが判定閾値TH以上であるならば、第1及び第2時刻間の区間が対象区間310に設定され、第1時刻に音響信号の記録が開始されると共に第2時刻に音響信号の記録が停止される。
【0034】
パラメータ設定部65は、画像信号に基づいて撮像部11の被写体の状態(撮像部11の撮影範囲内における被写体の状態)を検出する画像解析部66を有し、画像解析部66による被写体の状態の検出結果を用いて、帯域通過フィルタ62における通過帯域及び記録判定部64における判定閾値THを可変設定する。画像解析部66の検出対象(検出されるべき被写体の状態)に、撮像部11の撮影領域内における人物の有無、撮像部11の撮影領域内の人物の口の動き、及び、撮像部11の撮影領域内の人物と記録装置1との距離の内、少なくとも1つを含めることができる。
【0035】
画像解析部66は、画像信号に基づき、公知の顔検出処理等を利用して、撮像部11の撮影領域内における人物の有無を検出することができる。
【0036】
そして例えば、パラメータ設定部65は、撮像部11の撮影領域内に人物が存在すると検出された区間においては、帯域通過フィルタ62における通過帯域を狭帯域に限定する一方で、撮像部11の撮影領域内に人物が存在していないと検出された区間においては、帯域通過フィルタ62における通過帯域を狭帯域よりも広い広帯域に設定することができる。広帯域は全帯域であっても良い(通過帯域が全帯域に設定されると、指向性制御部61からの有指向性音響信号が全て帯域通過フィルタ62を通過する)。狭帯域は、例えば、100Hz(ヘルツ)から1kHz(キロヘルツ)までの帯域である。撮影領域内に人物が存在する場合、主たる音源は人物であると考えられるため、100Hz〜1kHzなどに通過帯域を限定することで、雑音の影響を抑制しつつ、人物の発声に応じて録音の必要性を適切に判断できるようになる。
また例えば、パラメータ設定部65は、撮像部11の撮影領域内に人物が存在すると検出された区間においては、判定閾値THに値(k1×THCONST)を設定する一方で、撮像部11の撮影領域内に人物が存在していないと検出された区間においては、判定閾値THに値THCONSTを設定することができる。THCONSTは、予め設定された固定値である。k1は、“0<k1<1”を満たす所定値(例えば0.5)である。撮影領域内に人物が存在するときに判定閾値THを小さくしておくことで、小さな声でも音響信号の記録判定が成されやすくなる。
【0037】
画像解析部66は、撮像部11の撮影領域内に人物が存在する場合、画像信号に基づく公知の動き検出方法(例えば特開2010−239356号公報又は特開2000−295338号公報に記載の方法)を用いて、当該人物の口の動きの有無を検出することができる。撮像部11において、所定のフレームレートにて順次フレーム画像の撮影が成され、時刻tA及びtB間に得られたフレーム画像にて動画像300が形成される。画像解析部66は、複数のフレーム画像間における、口の画像部分の変化を監視することで、人物の口の動きの有無を検出することができる。
【0038】
そして例えば、パラメータ設定部65は、撮像部11の撮影領域内の人物の口が動いていると検出された区間においては、判定閾値THに値(k2×THCONST)を設定する一方で、撮像部11の撮影領域内の人物の口が動いていないと検出された区間においては、判定閾値THに値THCONSTを設定することができる。k2は、“0<k2<1”を満たす所定値(例えば0.5)である。撮影領域内の人物の口が動いているときに判定閾値THを小さくしておくことで、小さな声でも音響信号の記録判定が成されやすくなる。
【0039】
画像解析部66は、撮像部11の撮影領域内に人物が存在する場合、画像信号に基づく公知の距離検出方法を用いて、当該人物と記録装置1との距離(実空間上における距離)DSTを検出することができる。撮像部11に加えて撮像部11と同等の撮像部が記録装置1に設けられている場合には、撮像部11を含む2つの撮像部の撮影画像(視差を有する2つの撮像部の撮影画像)から、三角測量の原理を用いて距離DSTを検出することができる。また例えば、特開2010−81002号公報又は特開2010−117680号公報に記載された方法を用いれば、単一の撮像部11の出力画像信号から距離DSTを検出することができる。
【0040】
そして例えば、パラメータ設定部65は、距離DSTが減少するにつれて判定閾値THを増大させてもよい。距離DSTが短ければ判定閾値THを大きくしたとしても声の記録漏れは少ないと考えられ、また、判定閾値THの増大によって雑音の影響を抑制することができるからである。より具体的には例えば、“TH=1/DST”に従って判定閾値THを設定しても良い。
【0041】
また、図8に示す如く指向性制御部61に撮影画角情報を供給し、撮像部11の撮影画角θに応じて指向角φ(換言すれば、図7(b)の斜線領域353)を可変設定するようにしても良い。この際、撮影画角θが大きいほど指向角φも大きくなるようにするとよい。例えば“φ=k3×θ”に従って指向角φを設定しても良い。k3は、正の所定値(例えば1)を持つ係数である。このような可変設定により、広角撮影時には指向角φが広く設定され、高ズーム倍率撮影時には指向角φが記録装置1の正面方向を中心に狭く設定される。広角撮影時には音源となりうる注目人物が広い角度範囲に亘って分散しており、高ズーム倍率撮影時には注目人物が記録装置1の正面に位置していると考えられる。一方で、注目人物が記録装置1の正面に位置しているときにおいて、指向角φを大きく設定すると、音響信号の記録判定が側方等から到来する雑音に影響され易くなる。従って、上述のような指向角φの可変設定は、雑音の影響の抑制と注目人物の発言記録の両立に資すると考えられる。
【0042】
また、図9に示す如くパラメータ設定部65に入力操作情報を供給し、操作部16に対する入力操作に応じて判定閾値THを可変設定するようにしてもよい。ユーザは、任意のタイミングにおいて、静止画像の撮影を指示するシャッタ操作及び撮影画角θの変更を指示するズーム操作を操作部16に対して成すことができる。
シャッタ操作が入力操作として操作部16に成されると、主制御部17は、シャッタ操作直後に撮像部11から得られるフレーム画像を静止画像として取得して記録媒体13に記録する。ズーム操作が入力操作として操作部16に成されると、主制御部17は、撮影画角θをズーム操作にて指定された角度へと変更する。撮像部11には、ズームレンズを含む光学系が備えられており、ズームレンズの位置調整によって撮影画角θを変更することができる。
一方で、パラメータ設定部65は、シャッタ操作又はズーム操作が入力操作として操作部16に成された時点から所定時間長さ(例えば10秒)が経過するまでの区間を注目区間として定め、例えば、注目区間においては判定閾値THに値(k4×THCONST)を設定する一方で、それ以外の区間においては判定閾値THに値THCONSTを設定することができる。k4は、“0<k4<1”を満たす所定値(例えば0.5)である。シャッタ操作又はズーム操作が成されるシーンは、ユーザにとって興味深いシーンであると考えられ、比較的小さな音でも音響信号記録を行うことがユーザの意図に沿うものと考えられる。
【0043】
被写体の状態に応じた通過帯域及び判定閾値THの可変設定、撮影画角θに応じた指向角φの可変設定、並びに、操作部16への入力操作に応じた判定閾値THの可変設定を、組み合わせて実施することも可能である。
【0044】
会議等の様子を録画しておいて後から議事録を作成する場合、記録動画像から発話内容を確認するのは非常に手間がかかる(動画像ファイルを早送り再生したとしても、必要な発話区間をユーザ自身が正確に且つ素早く検知することは難しく、また手間がかかる)。また、従来のICレコーダの同期記録機能(同期録音機能)を利用すれば、発話区間の音響信号のみを記録することが可能になるが、必要な発話区間のみを精度良く検出することは難しい。真に記録すべきか否かは音以外の環境要因にも依存しており、音響信号のみに頼る従来の同期記録機能(同期録音機能)では、周りの雑音にも反応して記録動作を行ってしまう、小さな声の記録漏れが起こる、といった不都合が生じうる。
【0045】
これに対し、記録装置1によれば、音響信号だけでなく、被写体の状態等をも考慮して、信号記録を行うべきか否かを決定することができるため、様々な状況に適応した高度な記録要否判定を成すことが可能となる。結果、真に必要な区間中の信号記録が成され、議事録の作成作業等も容易となる。また、信号記録を真に必要な区間に限定することにより、必要記録容量及び電力消費の削減も図られる。また、動画像ファイルとは別に対象区間の音声ファイルを記録しておくことにより、ユーザは会議等の重要部分を集約した音声ファイルを後から参照することが可能となり、議事録の作成作業等が容易化される。
【0046】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。図10は、第2実施例に係る記録装置1の動作フローチャートである。まず、ステップS21において、撮像部11による動画像のスルー撮影が開始される。動画像のスルー撮影とは、記録媒体13への画像信号の記録を伴わない、動画像の撮影を指す。第2実施例において、図3の動画像300はスルー撮影された動画像であるとする。動画像300は、表示部14又は記録装置1に接続された表示装置(不図示)上で表示されうる。例えば、記録装置1をテレビ会議システムに接続し、テレビ会議システムを形成する表示装置上に動画像300を表示させるといった利用形態が考えられる。
【0047】
ステップS21に続くステップS22では、主制御部17は、動画像300のスルー撮影中において所定の記録条件を満たす対象区間を検出する。対象区間が検出されるとステップS22からステップS23への遷移が発生する。ステップS23において、主制御部17は、対象区間中の音響信号又は画像信号を記録媒体13に記録する。対象区間中の画像信号を記録する場合、対象区間中の音響信号も対象区間中の画像信号と共に記録媒体13に記録するようにしてもよい。ステップS22及びS23の処理は、動画像300のスルー撮影が終了するまで繰り返し実行される。
【0048】
図11は、第2実施例に係る記録装置1の一部ブロック図である。判定部52及び記録処理部54を主制御部17に設けておくことができる。撮像部11からの画像信号及び/又は収音部12からの音響信号は、判定部52及び記録処理部54に供給される。スルー撮影中の画像信号及び音響信号は、例えばテレビ会議システムに供給されて、動画像300が音響信号と共にテレビ会議システム上で再生される。
【0049】
判定部52を用いた記録条件の充足/不充足の判定方法及び対象区間の検出方法は、第1実施例で述べたものと同様である。記録処理部54は、判定部52からの判定結果情報に基づいて対象期間を認識し、対象期間中の音響信号、対象期間中の画像信号、又は、対象期間中の音響信号及び画像信号を記録媒体13に記録する。記録の際、信号の圧縮を行っても良い。
【0050】
<<変形等>>
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0051】
図1の記録装置1を、ハードウェア、或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって構成することができる。ソフトウェアを用いて実現される機能をプログラムとして記述し、該プログラムをプログラム実行装置(例えばコンピュータ)上で実行することによって、その機能を実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 記録装置
11 撮像部
12 収音部
13 記録媒体
16 操作部
17 主制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICレコーダ(digital voice recorder)、デジタルビデオカメラ等の記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音響信号又は画像信号を取得及び記録可能な記録装置において、ユーザ操作に拠ることなく、重要なシーンを自動的に判定して当該シーン中の信号を記録する同期記録機能が提案されている。ICレコーダに搭載される同期記録機能では、例えば、音響信号による音の大きさを所定閾値と比較することで発言の有無を検出し、発言のあるシーンの音響信号のみを記録するといった処理が成される(例えば、下記特許文献1参照)。ユーザは同期記録機能を会議等において適用し、記録結果を会議の議事録作成などに役立てることができる。
【0003】
尚、デジタルカメラにおいて、被写体人物の笑顔レベルが所定レベル以上であるときに自動撮影を行う方法(下記特許文献2参照)や、被写体人物がカメラから見て所定距離範囲内に入ったときに自動撮影を行う方法(下記特許文献3参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−050364号公報
【特許文献2】特開2010−219739号公報
【特許文献3】特開2010−193423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発言のあった区間では音の大きさが大きくなるので、上記閾値を用いて記録の要否判定を行う方法は有益ではある。しかし、記録装置の周辺環境は様々であり、真に記録を行うべきか否かは、音以外の環境要因にも依存するものと考えられる。
【0006】
そこで本発明は、記録の必要な区間を良好に検知して当該区間中の信号を記録しうる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る記録装置は、収音によって音響信号を生成する収音部と、画像撮影によって画像信号を生成する撮像部と、記録媒体に対する前記音響信号又は前記画像信号の記録を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記撮像部による動画像の撮影中において、前記音響信号及び前記画像信号に基づき所定の記録条件の充足又は不充足を判定し、前記記録条件が充足する区間中の前記音響信号又は前記画像信号を前記記録媒体に記録することを特徴とする。
【0008】
音響信号及び画像信号の双方を参照することにより、様々な状況に適応した高度な記録要否判定(記録条件の充足/不充足判定)を成すことが可能となり、真に記録の必要な区間を良好に検知することが可能となる。
【0009】
例えば、前記制御部は、前記動画像の前記記録媒体への記録中において前記区間が検出された場合、前記区間中の音響信号を前記動画像とは別に前記記録媒体に記録してもよい。
【0010】
動画像とは別に記録条件が充足する区間中の音響信号を記録しておくことにより、ユーザは会議等の重要部分を集約した記録ファイルを後から参照することが可能となり、結果例えば、議事録の作成作業等が容易化される。
【0011】
また例えば、前記制御部は、前記画像信号から被写体の状態を検出し、前記被写体の状態の検出結果と前記音響信号とに基づいて前記記録条件の充足又は不充足を判定してもよい。
【0012】
具体的には例えば、前記被写体の状態は、前記撮像部の撮影領域内における人物の有無、前記撮影領域内における人物の口の動き、及び、前記撮影領域内における人物と当該記録装置との距離、の内の少なくとも一つを含んでいても良い。
【0013】
また具体的には例えば、前記制御部は、前記音響信号による音の大きさを判定閾値と比較することで前記記録条件の充足又は不充足を判定し、前記判定閾値を前記画像信号に基づき可変設定しても良い。
【0014】
更に具体的には例えば、前記制御部は、前記音響信号に含まれる規定帯域の信号成分による音の大きさを前記判定閾値と比較することで前記記録条件の充足又は不充足を判定し、前記規定帯域を前記画像信号に基づき可変設定しても良い。
【0015】
また例えば、操作の入力を受ける操作部を当該記録装置に更に設けておいても良い。そして例えば、前記制御部は、更に、前記撮影部の撮影画角又は前記操作部への入力操作にも基づいて、前記記録条件の充足又は不充足を判定してもよい。
【0016】
これにより、記録要否判定(記録条件の充足/不充足判定)の適正化が更に促進される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、記録の必要な区間を良好に検知して当該区間中の信号を記録しうる記録装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る記録装置の概略全体ブロック図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る記録装置の動作フローチャートである。
【図3】動画像の撮影区間と、対象区間との関係を説明するための図である。
【図4】動画像ファイルと音声ファイルが別々に記録媒体に記録される様子を示す図である。
【図5】本発明の第1実施例に係る記録装置の一部ブロック図である。
【図6】記録条件充足/不充足判定部のブロック図である。
【図7】指向性制御における指向角を説明するための図である。
【図8】記録条件充足/不充足判定部の第1変形ブロック図である。
【図9】記録条件充足/不充足判定部の第2変形ブロック図である。
【図10】本発明の第2実施例に係る記録装置の動作フローチャートである。
【図11】本発明の第2実施例に係る記録装置の一部ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る記録装置1の概略構成ブロック図である。記録装置1は、画像信号及び音響信号の記録が可能な任意の電子機器であり、例えば、動画像撮影機能付きのICレコーダ(digital voice recorder)、又は、ICレコーダとしての機能をも有するデジタルビデオカメラである。
【0021】
記録装置1は、符号11〜17によって参照される各部位を備える。撮像部11は、固体撮像素子から成り、固体撮像素子を用いた画像撮影を行って撮影画像の画像信号を生成及び出力する。収音部12は、1以上のマイクロホンから成り、収音によって音響信号(マイクロホンに到来した音の電気信号)を生成及び出力する。記録媒体13は、不揮発性メモリから成り、任意の画像信号及び音響信号を記録する。尚、或る画像の記録という表現と、当該画像の画像信号の記録という表現は同義である。表示部14は、液晶ディスプレイパネル等から成り、撮像部11による撮影画像又は記録媒体13の記録画像などを表示する。スピーカ部15は、1以上のスピーカから成り、収音部12にて生成された音響信号又は記録媒体13に記録された音響信号を音として再生する。操作部16は、操作ボタン、操作キー、操作レバー又はタッチパネルを有し、ユーザによる様々な操作の入力を受けて入力操作内容を主制御部17に伝達する。主制御部17は、操作部16への入力操作内容を参照しつつ、記録装置1内の各部位の動作を統括的に制御する。
【0022】
主制御部17による制御には、記録媒体13に対する記録制御が含まれ、記録装置1では、当該記録制御の方法に特異な方法を採用する。以下に、記録制御に関わる複数の実施例を説明する。矛盾無き限り、当該複数の実施例の内、或る実施例に記載した事項を他の実施例に適用することができる。尚、以下の説明文において、特に記述なき限り、画像信号とは撮像部11の出力画像信号に基づく画像信号(撮像部11の出力画像信号そのものを含む)を指し、音響信号とは収音部12の出力音響信号に基づく音響信号(収音部12の出力音響信号そのものを含む)を指す。
【0023】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。図2は、第1実施例に係る記録装置1の動作フローチャートである。まず、ステップS11において、操作部16に成された所定の録画開始操作等に従い、記録装置1は、撮像部11を用いた動画像の撮影及び当該動画像の記録媒体13への記録を開始する。ここで記録される動画像を動画像300と呼ぶ(図3参照)。動画像300の記録の開始及び終了時刻を、夫々、記号tA及びtBにて表す。続くステップS12では、主制御部17は、動画像300の撮影及び記録区間中において所定の記録条件を満たす区間(以下、対象区間という)を検出する。図3の区間310は、検出された対象区間の例である。対象区間が検出されるとステップS12からステップS13への遷移が発生する。
【0024】
ステップS13において、主制御部17は、対象区間中の音響信号を動画像300とは別に記録媒体13に記録する。具体的には、図4に示す如く、主制御部17は、動画像300についてのファイルである動画像ファイル320を記録媒体13に記録させる一方で、音声ファイル330を動画像ファイル320とは別に記録媒体13に記録させる。動画像ファイル320は、時刻tA及びtB間の画像信号を少なくとも格納しており、更に、時刻tA及びtB間の音響信号をも格納しうる。ここでは、時刻tA及びtB間の画像信号と時刻tA及びtB間の音響信号とが時間的に互いに関連付けられた上で動画像ファイル320に格納されているものとする。音声ファイル330は、対象区間310中の音響信号を格納した音声ファイルである。
【0025】
ステップS12及びS13の処理は、動画像300の撮影及び記録が終了するまで繰り返し実行される。従って、時刻tA及びtB間に、上記記録条件を満たす区間が互いに分離して複数存在する場合には、複数の対象区間についての複数の音声ファイルが動画像ファイル320とは別に記録媒体13に記録されることになる。
【0026】
図5は、第1実施例に係る記録装置1の一部ブロック図である。動画像記録処理部51(以下、記録処理部51と略記することがある)、記録条件充足/不充足判定部52(以下、判定部52と略記することがある)及び録音処理部53を、主制御部17に設けておくことができる。撮像部11からの画像信号及び/又は収音部12からの音響信号は、記録処理部51、判定部52及び録音処理部53に供給される。
【0027】
記録処理部51は、時刻tA及びtB間の画像信号及び音響信号を所定の圧縮方式にて圧縮しつつ、動画像ファイル320に格納した上で記録媒体13に記録する。判定部52は、時刻tAと時刻tBとの間における各区間が所定の記録条件を充足するか否かを画像信号及び音響信号に基づいて判定し、判定結果を表す判定結果情報を録音処理部53に送る。この判定によって、所定の記録条件を満たす区間(即ち対象区間)が検出及び特定される。録音処理部53は、対象区間310中の音響信号を所定の圧縮方式にて圧縮しつつ、音声ファイル330に格納した上で記録媒体13に記録する。
【0028】
図6は、判定部52の一例である判定部52aの内部ブロックである。判定部52aは、符号61〜65によって参照される各部位を備える。第1実施例では、収音部12が、記録装置1上の互いに異なる位置に配置された2つのマイクロホンから成るものとする(後述の他の実施例においても同様)。そうすると、収音部12からは、2チャンネル分の音響信号から成るステレオ音響信号が得られる。但し、収音部12は、3以上のマイクロホンから形成されていても良い。
【0029】
指向性制御部61は、ステレオ音響信号から、任意の方向に指向軸を持ち且つ任意の指向角を有する有指向性音響信号を生成する。図7(a)及び(b)を参照する。図7(a)及び(b)は、上方から見た記録装置1の平面図である。上記の指向軸を、撮像部11の光軸350と一致させることができる。光軸350は地面(水平面)と平行であるとする。撮像部11の固体撮像素子を通る鉛直線(又は2つのマイクロホン間の中心を通る鉛直線)を回転軸として、光軸350を、時計回りに角度φ/2だけ回転させた軸及び反時計回りに角度φ/2だけ回転させた軸を、夫々、軸351及び352と呼ぶ。そうすると、φが指向角に相当する。図7(b)に示される斜線領域353は、光軸350を内包する、軸352から軸351までの領域である。指向性制御部61から得られる有指向性音響信号は、斜線領域353外の音源から記録装置1に到来した音の成分と比べて、斜線領域353内の音源から記録装置1に到来した音の成分に対し、高い指向性(感度)を持った音響信号である。
【0030】
指向性制御部61は、公知の指向性制御(例えば、特開2011−155580号公報に記載された指向性制御)を用いて、ステレオ音響信号から、斜線領域353より到来した信号成分を抽出し、抽出した信号成分を有指向性音響信号として出力することができる。指向角φに予め設定された固定値を持たせることもできるが、後述されるように、指向角φは可変値であっても良い。
【0031】
帯域通過フィルタ62は、指向性制御部61からの有指向性音響信号の信号成分の内、規定された通過帯域内の信号成分のみを通過させるフィルタであり、IIR(Infinite impulse response)フィルタ等のデジタルフィルタにて帯域通過フィルタ62を構成できる。帯域通過フィルタ62によって、規定帯域である通過帯域内の信号成分が抽出され、抽出された信号成分が時間平均部63に出力される。過帯域内の信号成分の抽出は、例えば、通過帯域内の信号成分の増幅及び/又は通過帯域外の信号成分の減衰によって実現される。
【0032】
時間平均部63は、帯域通過フィルタ62の出力音響信号(通過帯域内の信号成分から成る音響信号)の振幅絶対値を求め、更に単位時間(例えば1秒間)ごとに振幅絶対値の平均値VOLAVEを求める。ここで求められる平均値VOLAVEは、帯域通過フィルタ62の出力音響信号による音の大きさ(換言すれば強度)の時間平均値である。
【0033】
記録判定部64は、単位時間ごとに求められた平均値VOLAVEを判定閾値THと比較し、平均値VOLAVEが判定閾値TH以上になっている区間が対象区間に含まれ且つ平均値VOLAVEが判定閾値TH未満になっている区間が対象区間に含まれないように、判定結果情報を生成する。平均値VOLAVEが判定閾値TH以上であるという条件が上記記録条件に相当する、と考えることができる。従って例えば、第1及び第2時刻間のみにおいて平均値VOLAVEが判定閾値TH以上であるならば、第1及び第2時刻間の区間が対象区間310に設定され、第1時刻に音響信号の記録が開始されると共に第2時刻に音響信号の記録が停止される。
【0034】
パラメータ設定部65は、画像信号に基づいて撮像部11の被写体の状態(撮像部11の撮影範囲内における被写体の状態)を検出する画像解析部66を有し、画像解析部66による被写体の状態の検出結果を用いて、帯域通過フィルタ62における通過帯域及び記録判定部64における判定閾値THを可変設定する。画像解析部66の検出対象(検出されるべき被写体の状態)に、撮像部11の撮影領域内における人物の有無、撮像部11の撮影領域内の人物の口の動き、及び、撮像部11の撮影領域内の人物と記録装置1との距離の内、少なくとも1つを含めることができる。
【0035】
画像解析部66は、画像信号に基づき、公知の顔検出処理等を利用して、撮像部11の撮影領域内における人物の有無を検出することができる。
【0036】
そして例えば、パラメータ設定部65は、撮像部11の撮影領域内に人物が存在すると検出された区間においては、帯域通過フィルタ62における通過帯域を狭帯域に限定する一方で、撮像部11の撮影領域内に人物が存在していないと検出された区間においては、帯域通過フィルタ62における通過帯域を狭帯域よりも広い広帯域に設定することができる。広帯域は全帯域であっても良い(通過帯域が全帯域に設定されると、指向性制御部61からの有指向性音響信号が全て帯域通過フィルタ62を通過する)。狭帯域は、例えば、100Hz(ヘルツ)から1kHz(キロヘルツ)までの帯域である。撮影領域内に人物が存在する場合、主たる音源は人物であると考えられるため、100Hz〜1kHzなどに通過帯域を限定することで、雑音の影響を抑制しつつ、人物の発声に応じて録音の必要性を適切に判断できるようになる。
また例えば、パラメータ設定部65は、撮像部11の撮影領域内に人物が存在すると検出された区間においては、判定閾値THに値(k1×THCONST)を設定する一方で、撮像部11の撮影領域内に人物が存在していないと検出された区間においては、判定閾値THに値THCONSTを設定することができる。THCONSTは、予め設定された固定値である。k1は、“0<k1<1”を満たす所定値(例えば0.5)である。撮影領域内に人物が存在するときに判定閾値THを小さくしておくことで、小さな声でも音響信号の記録判定が成されやすくなる。
【0037】
画像解析部66は、撮像部11の撮影領域内に人物が存在する場合、画像信号に基づく公知の動き検出方法(例えば特開2010−239356号公報又は特開2000−295338号公報に記載の方法)を用いて、当該人物の口の動きの有無を検出することができる。撮像部11において、所定のフレームレートにて順次フレーム画像の撮影が成され、時刻tA及びtB間に得られたフレーム画像にて動画像300が形成される。画像解析部66は、複数のフレーム画像間における、口の画像部分の変化を監視することで、人物の口の動きの有無を検出することができる。
【0038】
そして例えば、パラメータ設定部65は、撮像部11の撮影領域内の人物の口が動いていると検出された区間においては、判定閾値THに値(k2×THCONST)を設定する一方で、撮像部11の撮影領域内の人物の口が動いていないと検出された区間においては、判定閾値THに値THCONSTを設定することができる。k2は、“0<k2<1”を満たす所定値(例えば0.5)である。撮影領域内の人物の口が動いているときに判定閾値THを小さくしておくことで、小さな声でも音響信号の記録判定が成されやすくなる。
【0039】
画像解析部66は、撮像部11の撮影領域内に人物が存在する場合、画像信号に基づく公知の距離検出方法を用いて、当該人物と記録装置1との距離(実空間上における距離)DSTを検出することができる。撮像部11に加えて撮像部11と同等の撮像部が記録装置1に設けられている場合には、撮像部11を含む2つの撮像部の撮影画像(視差を有する2つの撮像部の撮影画像)から、三角測量の原理を用いて距離DSTを検出することができる。また例えば、特開2010−81002号公報又は特開2010−117680号公報に記載された方法を用いれば、単一の撮像部11の出力画像信号から距離DSTを検出することができる。
【0040】
そして例えば、パラメータ設定部65は、距離DSTが減少するにつれて判定閾値THを増大させてもよい。距離DSTが短ければ判定閾値THを大きくしたとしても声の記録漏れは少ないと考えられ、また、判定閾値THの増大によって雑音の影響を抑制することができるからである。より具体的には例えば、“TH=1/DST”に従って判定閾値THを設定しても良い。
【0041】
また、図8に示す如く指向性制御部61に撮影画角情報を供給し、撮像部11の撮影画角θに応じて指向角φ(換言すれば、図7(b)の斜線領域353)を可変設定するようにしても良い。この際、撮影画角θが大きいほど指向角φも大きくなるようにするとよい。例えば“φ=k3×θ”に従って指向角φを設定しても良い。k3は、正の所定値(例えば1)を持つ係数である。このような可変設定により、広角撮影時には指向角φが広く設定され、高ズーム倍率撮影時には指向角φが記録装置1の正面方向を中心に狭く設定される。広角撮影時には音源となりうる注目人物が広い角度範囲に亘って分散しており、高ズーム倍率撮影時には注目人物が記録装置1の正面に位置していると考えられる。一方で、注目人物が記録装置1の正面に位置しているときにおいて、指向角φを大きく設定すると、音響信号の記録判定が側方等から到来する雑音に影響され易くなる。従って、上述のような指向角φの可変設定は、雑音の影響の抑制と注目人物の発言記録の両立に資すると考えられる。
【0042】
また、図9に示す如くパラメータ設定部65に入力操作情報を供給し、操作部16に対する入力操作に応じて判定閾値THを可変設定するようにしてもよい。ユーザは、任意のタイミングにおいて、静止画像の撮影を指示するシャッタ操作及び撮影画角θの変更を指示するズーム操作を操作部16に対して成すことができる。
シャッタ操作が入力操作として操作部16に成されると、主制御部17は、シャッタ操作直後に撮像部11から得られるフレーム画像を静止画像として取得して記録媒体13に記録する。ズーム操作が入力操作として操作部16に成されると、主制御部17は、撮影画角θをズーム操作にて指定された角度へと変更する。撮像部11には、ズームレンズを含む光学系が備えられており、ズームレンズの位置調整によって撮影画角θを変更することができる。
一方で、パラメータ設定部65は、シャッタ操作又はズーム操作が入力操作として操作部16に成された時点から所定時間長さ(例えば10秒)が経過するまでの区間を注目区間として定め、例えば、注目区間においては判定閾値THに値(k4×THCONST)を設定する一方で、それ以外の区間においては判定閾値THに値THCONSTを設定することができる。k4は、“0<k4<1”を満たす所定値(例えば0.5)である。シャッタ操作又はズーム操作が成されるシーンは、ユーザにとって興味深いシーンであると考えられ、比較的小さな音でも音響信号記録を行うことがユーザの意図に沿うものと考えられる。
【0043】
被写体の状態に応じた通過帯域及び判定閾値THの可変設定、撮影画角θに応じた指向角φの可変設定、並びに、操作部16への入力操作に応じた判定閾値THの可変設定を、組み合わせて実施することも可能である。
【0044】
会議等の様子を録画しておいて後から議事録を作成する場合、記録動画像から発話内容を確認するのは非常に手間がかかる(動画像ファイルを早送り再生したとしても、必要な発話区間をユーザ自身が正確に且つ素早く検知することは難しく、また手間がかかる)。また、従来のICレコーダの同期記録機能(同期録音機能)を利用すれば、発話区間の音響信号のみを記録することが可能になるが、必要な発話区間のみを精度良く検出することは難しい。真に記録すべきか否かは音以外の環境要因にも依存しており、音響信号のみに頼る従来の同期記録機能(同期録音機能)では、周りの雑音にも反応して記録動作を行ってしまう、小さな声の記録漏れが起こる、といった不都合が生じうる。
【0045】
これに対し、記録装置1によれば、音響信号だけでなく、被写体の状態等をも考慮して、信号記録を行うべきか否かを決定することができるため、様々な状況に適応した高度な記録要否判定を成すことが可能となる。結果、真に必要な区間中の信号記録が成され、議事録の作成作業等も容易となる。また、信号記録を真に必要な区間に限定することにより、必要記録容量及び電力消費の削減も図られる。また、動画像ファイルとは別に対象区間の音声ファイルを記録しておくことにより、ユーザは会議等の重要部分を集約した音声ファイルを後から参照することが可能となり、議事録の作成作業等が容易化される。
【0046】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。図10は、第2実施例に係る記録装置1の動作フローチャートである。まず、ステップS21において、撮像部11による動画像のスルー撮影が開始される。動画像のスルー撮影とは、記録媒体13への画像信号の記録を伴わない、動画像の撮影を指す。第2実施例において、図3の動画像300はスルー撮影された動画像であるとする。動画像300は、表示部14又は記録装置1に接続された表示装置(不図示)上で表示されうる。例えば、記録装置1をテレビ会議システムに接続し、テレビ会議システムを形成する表示装置上に動画像300を表示させるといった利用形態が考えられる。
【0047】
ステップS21に続くステップS22では、主制御部17は、動画像300のスルー撮影中において所定の記録条件を満たす対象区間を検出する。対象区間が検出されるとステップS22からステップS23への遷移が発生する。ステップS23において、主制御部17は、対象区間中の音響信号又は画像信号を記録媒体13に記録する。対象区間中の画像信号を記録する場合、対象区間中の音響信号も対象区間中の画像信号と共に記録媒体13に記録するようにしてもよい。ステップS22及びS23の処理は、動画像300のスルー撮影が終了するまで繰り返し実行される。
【0048】
図11は、第2実施例に係る記録装置1の一部ブロック図である。判定部52及び記録処理部54を主制御部17に設けておくことができる。撮像部11からの画像信号及び/又は収音部12からの音響信号は、判定部52及び記録処理部54に供給される。スルー撮影中の画像信号及び音響信号は、例えばテレビ会議システムに供給されて、動画像300が音響信号と共にテレビ会議システム上で再生される。
【0049】
判定部52を用いた記録条件の充足/不充足の判定方法及び対象区間の検出方法は、第1実施例で述べたものと同様である。記録処理部54は、判定部52からの判定結果情報に基づいて対象期間を認識し、対象期間中の音響信号、対象期間中の画像信号、又は、対象期間中の音響信号及び画像信号を記録媒体13に記録する。記録の際、信号の圧縮を行っても良い。
【0050】
<<変形等>>
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0051】
図1の記録装置1を、ハードウェア、或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって構成することができる。ソフトウェアを用いて実現される機能をプログラムとして記述し、該プログラムをプログラム実行装置(例えばコンピュータ)上で実行することによって、その機能を実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 記録装置
11 撮像部
12 収音部
13 記録媒体
16 操作部
17 主制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収音によって音響信号を生成する収音部と、
画像撮影によって画像信号を生成する撮像部と、
記録媒体に対する前記音響信号又は前記画像信号の記録を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記撮像部による動画像の撮影中において、前記音響信号及び前記画像信号に基づき所定の記録条件の充足又は不充足を判定し、前記記録条件が充足する区間中の前記音響信号又は前記画像信号を前記記録媒体に記録する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記動画像の前記記録媒体への記録中において前記区間が検出された場合、前記区間中の音響信号を前記動画像とは別に前記記録媒体に記録する
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記画像信号から被写体の状態を検出し、前記被写体の状態の検出結果と前記音響信号とに基づいて前記記録条件の充足又は不充足を判定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記被写体の状態は、前記撮像部の撮影領域内における人物の有無、前記撮影領域内における人物の口の動き、及び、前記撮影領域内における人物と当該記録装置との距離、の内の少なくとも一つを含む
ことを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記音響信号による音の大きさを判定閾値と比較することで前記記録条件の充足又は不充足を判定し、前記判定閾値を前記画像信号に基づき可変設定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記音響信号に含まれる規定帯域の信号成分による音の大きさを前記判定閾値と比較することで前記記録条件の充足又は不充足を判定し、前記規定帯域を前記画像信号に基づき可変設定する
ことを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
操作の入力を受ける操作部を更に備え、
前記制御部は、更に、前記撮影部の撮影画角又は前記操作部への入力操作にも基づいて、前記記録条件の充足又は不充足を判定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の記録装置。
【請求項1】
収音によって音響信号を生成する収音部と、
画像撮影によって画像信号を生成する撮像部と、
記録媒体に対する前記音響信号又は前記画像信号の記録を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記撮像部による動画像の撮影中において、前記音響信号及び前記画像信号に基づき所定の記録条件の充足又は不充足を判定し、前記記録条件が充足する区間中の前記音響信号又は前記画像信号を前記記録媒体に記録する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記動画像の前記記録媒体への記録中において前記区間が検出された場合、前記区間中の音響信号を前記動画像とは別に前記記録媒体に記録する
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記画像信号から被写体の状態を検出し、前記被写体の状態の検出結果と前記音響信号とに基づいて前記記録条件の充足又は不充足を判定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記被写体の状態は、前記撮像部の撮影領域内における人物の有無、前記撮影領域内における人物の口の動き、及び、前記撮影領域内における人物と当該記録装置との距離、の内の少なくとも一つを含む
ことを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記音響信号による音の大きさを判定閾値と比較することで前記記録条件の充足又は不充足を判定し、前記判定閾値を前記画像信号に基づき可変設定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記音響信号に含まれる規定帯域の信号成分による音の大きさを前記判定閾値と比較することで前記記録条件の充足又は不充足を判定し、前記規定帯域を前記画像信号に基づき可変設定する
ことを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
操作の入力を受ける操作部を更に備え、
前記制御部は、更に、前記撮影部の撮影画角又は前記操作部への入力操作にも基づいて、前記記録条件の充足又は不充足を判定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−70309(P2013−70309A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208612(P2011−208612)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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