説明

設備管理システム

【課題】現在稼働中の複数の設備の未来の設備総合効率および設備負荷率を効率良く、かつ精度良く算出することができる設備管理システムを提供する。
【解決手段】複数の設備10の稼働状況を示す稼働状況データを収集する稼働管理サーバ20およびロット履歴サーバ30と、複数の設備10の稼働状況データから実加工時間およびロスタイムを所定期間毎に集計し、得られた集計結果から所定期間毎の設備総合効率を算出するOEE計測用PC40と、設備の改善計画情報を受け付け、設備総合効率および改善計画情報に従って、未来の設備総合効率を設備毎に予測し、予測した未来の設備総合効率に基づいて未来の設備負荷率を算出する設備負荷率算出用PC50と、未来の設備総合効率および未来の設備負荷率を含む複数の設備の設備管理情報を記憶するWEBサーバ60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備管理システムに関し、特に、製造設備の設備総合効率および設備負荷率に基づいて設備投資計画などの管理を可能とする設備管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の製造設備の設備能力算出システムとしては、たとえば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された設備能力算出システムは、半導体製造装置のように複雑かつ多機能化している設備の処理能力を算出するものであり、設備管理用データを登録・管理する設備仕様管理手段と、製品関連データを登録・管理する製造条件管理手段と、処理能力を算出する設備能力算出手段とを備えている。設備管理用データと製品関連データを分離して管理し、製品の製造フローや処理条件、オイル交換や点検などにかかる設備の不稼働時間、および製品の種類や工程によって変化する実加工時間などのデータを予め登録しておき、これらのデータを用いて処理能力を算出する。
【0003】
また、特許文献2には、製造ライン稼働状況データを集計し、6大ロスに基づく生産管理指標を把握するデータ集計処理装置が記載されている。同文献に記載のデータ集計処理装置は、データ収集端末装置で収集された設備の稼働状況データを収集して処理し、その稼働状況データに基づいて、設備の複数の停止要因とその発生時間との関係を示すガンチャートを作成して出力する。特許文献3には、生産ラインを設計変更する際の最適化を自動化する生産ライン構成評価装置が記載されている。
【特許文献1】特開平5−20333号公報
【特許文献2】特開2000−123085号公報
【特許文献3】特開平8−229779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
【0005】
第一に、予め設備管理用データを登録したり、入力装置から設備の各種データを入力するものであり、自動的に実加工時間やロスタイムを計測するものではなかった。設備毎の実加工時間、ロスタイムを知るためには、製造装置において一定期間、技術者が設備につきっきりとなり、設備の動作を確認しながら手動で時間計測していく必要があった。このため数百台から数千台の製造装置全てのデータを取ることは困難であった。
【0006】
第二に、この計測を長期的に定期的に繰り返し、常に最新の情報を取得し続けることも困難であった。このため、実加工時間および各ロスタイムの経時的な傾向を捉えることができず、設備総合効率を基準とした高精度の負荷率算出ができなかった。
【0007】
第三に、半導体生産設備は、発注から納入、立ち上げまで半年以上の期間を要する。このため設備投資が必要な場合は半年以上前に発注しておく必要があり、半年から1年先の投入計画に対する設備負荷率を算出しておく必要があるが、このような機能を上記文献記載の従来技術のシステムは有していなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、複数の設備の稼働状況を示す稼働状況データを収集する収集部と、
前記稼働状況データから実加工時間およびロスタイムを所定期間毎に集計する集計部と、
前記集計部により得られた集計結果から前記所定期間毎の設備総合効率を算出する設備総合効率算出部と、
前記設備の改善計画情報を受け付ける受付部と、
前記設備総合効率および前記改善計画情報に従って、未来の設備総合効率を予測する予測部と、
前記予測部が予測した前記未来の設備総合効率に基づいて未来の設備負荷率を算出する設備負荷率算出部と、
前記未来の設備総合効率および前記未来の設備負荷率を含む前記複数の設備の設備管理情報を記憶する記憶部と、を備える設備管理システムが提供される。
【0009】
ここで、稼働状況データは、現在稼働中の複数の設備の稼働状況を示す情報、および製品ロット毎の作業履歴を示す情報を含むことができる。実加工時間は、各設備を制御するホストコンピュータや各設備の情報が蓄積されているデータベースから取得した情報から集計することができる。ロスタイムは、8区分ロスタイムを指し、計画保全ロス、故障ロス、チェンジオーバ、セットアップ、テストタイム、アイドルタイム、スピードロス、リワークロスを含み、稼働状況や作業履歴の情報から各ロスタイムを計測することができる。
【0010】
この発明によれば、現在稼働中の複数の設備の未来の設備総合効率(OEE:Overall Equipment Efficiency)および設備負荷率を効率良く算出することができる。すなわち、現在稼働中の複数の設備の稼働状況を自動的に収集し、定期的に集計されたOEEから改善計画に従って未来のOEEを予測し、予測した結果に基づいて未来の設備負荷率を算出し、これらの情報を蓄積することができ、将来の設備投入計画に役立てることができる。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、現在稼働中の複数の設備の未来の設備総合効率および設備負荷率を効率良く、かつ精度良く算出することができる設備管理システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る設備管理システム1の構成を示すブロック図である。本実施形態の設備管理システム1は、半導体製造工場の複数の設備グループ10(図中、設備A、設備B、設備Cと示す)と、稼働管理サーバ20と、ロット履歴サーバ30と、ホストコンピュータ32と、データベース用サーバ34と、OEE計測用パーソナルコンピュータ(以下「PC」と略す)40と、設備負荷率算出用PC50と、WEBサーバ60と、複数の端末70と、を備える。なお、以下の各図において、本発明の本質に関わらない部分の構成については省略してある。
【0015】
本実施形態の設備管理システム1は、半導体生産設備、すなわち、発注から納入、立ち上げまで長期間を要し、設備投資の長期的計画が必要で、かつ多数、数百台から数千台の製造装置を含む生産設備に適用するのに好適である。本実施形態の設備管理システム1によれば、長期に亘る多数の設備に対応する膨大なデータを手入力する必要もなく、自動的に実際の稼働状況を収集し、設備負荷率を効率良くかつ精度良く算出することが可能となる。
【0016】
また、設備管理システム1の各構成要素は、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされた本図の構成要素を実現するプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶ユニット、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。以下説明する各図は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0017】
本実施形態の設備管理システム1は、現在稼働中の複数の設備の稼働状況を自動的に収集し、設備毎に定期的に集計されたOEEから改善計画に従って未来のOEEを予測し、予測した結果に基づいて未来の設備負荷率を算出するものである。設備管理システム1は、これらの情報を蓄積することができ、将来の設備投入計画に役立てることができる。
【0018】
図2は、図1の設備管理システム1のOEE計測用PC40の詳細を示す機能ブロック図である。図5は、図1の設備管理システム1の設備負荷率算出用PC50の詳細を示す機能ブロック図である。
【0019】
本発明の実施の形態の設備管理システム1は、複数の設備(設備グループ10)の稼働状況を示す稼働状況データを収集する収集部(稼働管理サーバ20、ロット履歴サーバ30、ホストコンピュータ32、データベース用サーバ34、OEE計測用PC40のデータ受信部106)と、稼働状況データから実加工時間およびロスタイムを所定期間毎に集計する集計部(OEE計測用PC40の計測部130および時計108)と、集計部により得られた集計結果から所定期間毎の設備総合効率を算出する設備総合効率算出部(OEE計測用PC40の集計部136)と、設備の改善計画情報を受け付ける受付部(設備負荷率算出用PC50の計画入力受付部162および計画更新部164)と、設備総合効率および改善計画情報に従って、未来の設備総合効率を設備毎に予測する予測部(設備負荷率算出用PC50のOEEデータ補正部170)と、予測部が予測した未来の設備総合効率に基づいて未来の設備負荷率を算出する設備負荷率算出部(設備負荷率算出用PC50の設備負荷率算出部172)と、未来の設備総合効率および未来の設備負荷率を含む複数の設備の設備管理情報を記憶する記憶部(OEE計測用PC40の集計結果記憶部138、設備負荷率算出用PC50の設備負荷率記憶部174、WEBサーバ60)と、を備える。
【0020】
なお、本実施形態において、OEE計測用PC40および設備負荷率算出用PC50は、異なるPCを用いる構成としたが、これに限定されない。OEE計測用PC40および設備負荷率算出用PC50は、同じPCとすることもできる。また、OEE計測用PC40および設備負荷率算出用PC50は、パーソナルコンピュータで構成する例について説明するが、これに限定されない。たとえば、専用コンピュータ、ワークステーションなどでもよい。
【0021】
以下に説明する本実施形態のプログラムをOEE計測用PC40および設備負荷率算出用PC50にインストールして実行させることにより、本実施形態の設備管理システム1を実現させることが可能となる。
【0022】
本実施形態のプログラムは、未来の設備総合効率および未来の設備負荷率を含む複数の設備の設備管理情報を記憶する記憶部(OEE計測用PC40の集計結果記憶部138、設備負荷率算出用PC50の設備負荷率記憶部174、WEBサーバ60)にアクセス可能なコンピュータ(OEE計測用PC40および設備負荷率算出用PC50)に、複数の設備(設備グループ10)の稼働状況を示す稼働状況データを収集する手段(OEE計測用PC40のデータ受信部106)、稼働状況データから実加工時間およびロスタイムを所定期間毎に集計する手段OEE計測用PC40の計測部130および時計108)、集計する手段により得られた集計結果から所定期間毎の設備総合効率を算出する手段(OEE計測用PC40の集計部136)、設備の改善計画情報を受け付ける手段(設備負荷率算出用PC50の計画入力受付部162および計画更新部164)、設備総合効率および改善計画情報に従って、未来の設備総合効率を設備毎に予測する手段(設備負荷率算出用PC50のOEEデータ補正部170)、予測する手段が予測した未来の設備総合効率に基づいて未来の設備負荷率を算出する手段(設備負荷率算出用PC50の設備負荷率算出部172)、として機能させるためのプログラムである。
【0023】
図1に示すように、但し、これらに限定されないが、複数の設備グループ10、稼働管理サーバ20、およびロット履歴サーバ30は、ネットワーク80を介して接続される。稼働管理サーバ20、ロット履歴サーバ30、ホストコンピュータ32、およびデータベース用サーバ34は、さらにOEE計測用PC40にネットワーク82を介して接続される。また、OEE計測用PC40および設備負荷率算出用PC50は、WEBサーバ60にネットワーク84を介して接続される。さらにWEBサーバ60は、複数の端末70にネットワーク86を介して接続される。本実施形態において、WEBサーバ60は、ネットワーク86を介して接続された端末70からWEBサーバ60を参照可能に接続する接続部(不図示)を含む。これにより、ネットワーク86を介して接続された端末70からWEBサーバ60に格納された情報を参照することができるので、利便性が向上する。なお、WEBサーバ60は、ネットワークを介して接続され、複数の端末70から情報を参照可能な記憶装置であればよい。
【0024】
ネットワーク80およびネットワーク82はLANやRS−232CやUSBなどのシリアル通信とすることができ、ネットワーク84およびネットワーク86は企業内のイントラネットとすることができる。
【0025】
各設備グループ10は、同機種の複数号機の半導体製造装置(不図示)を備え、各号機の半導体製造装置からホストコンピュータ32が各種の情報、たとえば実加工時間を収集する。必要に応じて、ホストコンピュータ32から各種の情報がネットワーク80を介して稼働管理サーバ20およびロット履歴サーバ30に送信される。なお、図1において、ホストコンピュータ32は、ネットワーク80を介して複数の設備グループ10に1台接続されている構成を例としているが、これに限定されない。設備グループ10毎にホストコンピュータ32を備え、ホストコンピュータ32を介して設備グループ10がネットワーク80に接続される構成とすることもできる。
【0026】
稼働管理サーバ20は、ホストコンピュータ32から報告された各設備グループ10の稼働管理情報をネットワーク80を介して受信し、蓄積し、管理する。稼働管理情報は、たとえば、これに限定されないが、設備グループ10毎に、稼働情報の報告を受け付け、報告日時、稼働状況、ロット番号、実施工程、品名、枚数など示す情報を含むことができる。たとえば、稼働状況は、「待ち」、「作業準備」、「実稼働」、「計画保全」、「オフライン」、「故障」に分類することができる。
【0027】
ロット履歴サーバ30は、ホストコンピュータ32から報告された各設備グループ10の製品ロットの作業履歴を示すロット履歴情報をネットワーク80を介して受信し、蓄積し、管理する。ロット履歴情報は、たとえば、これに限定されないが、ロット毎の名称、品名、手順、工程、設備、作業号機、作業開始および終了日時、条件、処理枚数、再工事情報、リワークフラグなどを示す情報を含むことができる。
【0028】
ホストコンピュータ32は、上述したように、各設備グループ10から各種の情報を取得し、各設備を制御する。たとえば、ホストコンピュータ32は、設備から製品を処理する毎に実加工時間をネットワーク80を介して取得することができる。あるいは、ホストコンピュータ32は、設備の実加工時間の所定の設定値を予め登録しておき、その設定値に従い製品を加工することもできる。具体的には、例として、CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置からは、各プラテンのメイン研磨時間、ランプアップ時間、水研磨時間や、複数のヘッドのヘッド稼働率などの情報を取得し、ネットワーク82を介してOEE計測用PC40送信することができる。これらの情報は、OEE計測用PC40にて実加工時間や設備ロス時間の算出に使用されることとなる。
【0029】
データベース用サーバ34は、設備の実加工時間の所定の設定値を予め登録することができる。すなわち、実加工時間を設備から取得できないような場合もあるため、データベース用サーバ34に予め登録しておくものである。
【0030】
OEE計測用PC40は、ネットワーク82を介して稼働管理サーバ20およびロット履歴サーバ30から稼働情報およびロット履歴情報を取得し、OEEを計測し、OEEマトリックス情報やOEEトレンドグラフ42などを作成し、提示するものである。OEE計測用PC40の詳細については後述する。
【0031】
設備負荷率算出用PC50は、ネットワーク84を介してOEE計測用PC40が生成したOEEマトリックス情報を取得し、オペレータが入力した改善計画表52に基づいて、設備負荷率を算出するものである。設備負荷率算出用PC50の詳細についても後述する。
【0032】
WEBサーバ60は、ネットワーク84を介してOEE計測用PC40および設備負荷率算出用PC50に接続され、各PCからデータを受信し、格納し、ネットワーク86を介して複数の端末70にそれらの情報を提供する。各端末70は、たとえばパーソナルコンピュータ、ワークステーション、専用コンピュータ、PDA、移動端末などを含む。端末70は、ブラウザ機能を有し、ネットワーク86を介してWEBサーバ60にアクセスすることが可能である。端末70は、操作部(不図示)を操作し、WEBサーバ60から提供されたメニュー画面を表示部(不図示)に表示し、画面から各種情報の入力を行い、ネットワーク86を介してWEBサーバ60に送信することができる。
【0033】
図2に示すように、OEE計測用PC40は、インタフェース部(I/F)102と、登録台帳記憶部(図中、「登録台帳」と示す)104と、データ受信部106と、インタフェース部(I/F)112と、データ送信部114と、稼働情報記憶部(図中、「稼働情報」と示す)120と、ロット履歴情報記憶部(図中、「ロット履歴情報」と示す)122と、時計108と、計測部130と、実加工時間記憶部(図中、「実加工時間」と示す)132と、ロスタイム記憶部(図中、「ロスタイム」と示す)134と、集計部136と、集計結果記憶部(図中、「集計結果」と示す)138と、トレンドグラフ作成部140と、を含む。
【0034】
インタフェース部102は、ネットワーク82を介して稼働管理サーバ20およびロット履歴サーバ30と通信を行うものである。ネットワーク82は、無線および有線通信のいずれであってもよい。登録台帳記憶部104は、設備管理システム1のOEE計測用PC40において計測対象となる設備の情報が予め登録され、記憶されている。計測対象の設備グループ10の登録は、キーボードなどの操作部(不図示)を用いてオペレータが入力した情報を受け付ける構成とすることもできるし、予め作成された登録用のテーブルをネットワーク(不図示)または記録媒体(不図示)を介して受信または入力し、読み込む構成とすることもできる。図3に登録台帳記憶部104に記憶されている登録台帳の一例を示す。
【0035】
データ受信部106は、登録台帳記憶部104に登録されている設備グループ10の情報を、インタフェース部102を介してネットワーク82上の稼働管理サーバ20およびロット履歴サーバ30に対して要求して、受信し、稼働情報記憶部120およびロット履歴情報記憶部122にそれぞれ記憶する。また、データ受信部106は、登録台帳記憶部104に登録されている期間や日時に従って、稼働管理サーバ20、ロット履歴サーバ30、ホストコンピュータ32、およびデータベース用サーバ34から情報を定期的に収集する。
【0036】
稼働情報記憶部120は、データ受信部106が受信した各設備グループ10の号機毎の稼働情報を記憶する。さらに、稼働情報記憶部120には、データ受信部106がホストコンピュータ32およびデータベース用サーバ34から受信した、各設備グループ10の号機毎の実加工時間に関する情報を取得し、記憶する。ロット履歴情報記憶部122は、データ受信部106が受信した各設備グループ10の号機毎のロット履歴情報を記憶する。計測部130は、稼働情報およびロット履歴情報に従って、各設備グループ10の号機毎の製品の実加工時間および付加価値のない設備ロス時間を自動的に計測する。
【0037】
たとえば、設備機種毎に装置構造や製造工程内でのウェハの流れから、実加工時間および設備ロス時間を予め定義し、計測方法を決定しておくことができる。実加工時間は、たとえば、CMP装置では、ホストコンピュータ32から各プラテンのメイン研磨時間を取得し、別のデータベース用サーバ34から各プラテンのランプアップ時間と水研磨時間を取得し、これらの取得したデータを組み合わせて全プラテンのメイン研磨時間、ランプアップ時間、および水研磨時間を合計して算出することができる。なお、これらは一例に過ぎず、各システムおよび設備によって異なる定義がなされ、それぞれ算出されるものである。
【0038】
設備ロス時間は、その特徴から以下のように8区分に分類されることから8区分ロスタイムと呼ぶ。また、1つのロス区分の中にもいくつかの小区分があり、各小区分を合計した時間を各区分のロスタイムとして算出する。
(1)計画保全ロス(PM)
(2)故障ロス(USDT)
(3)チェンジオーバ(C−OVER)
(4)セットアップ(SET UP)
(5)テストタイム(TEST)
(6)アイドルタイム(IDLE)
(7)スピードロス(S−LOSS)
(8)リワークロス(REWORK)
【0039】
計画保全ロスは、定期点検および計画保全による製品処理を停止した時間である。たとえば、稼働情報の稼働状況が「計画保全」の時間を集計して算出することができる。故障ロスは、故障および改善、改造を目的とした保全作業により製品処理を停止した時間である。たとえば、稼働情報の稼働状況が「故障」や「オフライン」の時間を集計して算出することができる。あるいは、ホストコンピュータ32から取得したヘッド稼働率に基づいて、ヘッドキャンセル時間を算出することもできる。これらの時間を合計して故障ロスとすることができる。チェンジオーバは、ウェハの移動により、装置が製品処理を行えない時間である。セットアップは、付加価値作業を行うために事前に行われる作業を行う時間である。
【0040】
テストタイムは、ゴミ、膜厚モニタリングなど、製品処理以外のプロセスチェックを実施した時間である。たとえば、ロット履歴情報からテストロットの作業開始から終了報告までの時間を集計して算出することができる。アイドルタイムは、ウェハ処理可能で無負荷状態の時間である。稼働情報の稼働状況が「待ち」の時間を集計して算出することができる。
【0041】
スピードロスは、ウェハ1枚当たりの装置使用効率のダウンロスである。たとえば、各プラテンの研磨時間の差により生じる時間を集計し、さらに連続する前後のロットの研磨時間の差により生じる時間を集計し、これらの時間の合計により算出することができる。すなわち、たとえば、3つのプラテンで、メイン研磨〜ランプアップ〜水研磨、という処理をそれぞれ行う場合、プラテン1の研磨時間が60秒、プラテン2の研磨時間が58秒、プラテン3の研磨時間が40秒であったする。プラテン3では40秒で研磨が終了するために、次の処理を行うことが可能な状態であるにもかかわらず、プラテン1で60秒かかるためプラテン1が律速段階となり、プラテン2は2秒、プラテン3は20秒待たないと次のウェハの処理ができないこととなる。なお、ここではプラテン間の搬送時間を0としている。このため、プラテン間でウェハ1枚当たり20秒のスピードロスを発生することとなる。
【0042】
リワークロスは、再工事品の作業を行っている時間である。たとえば、ロット履歴情報のリワークフラグがセットされているロットの作業開始から終了報告までの時間を集計して算出することができる。
【0043】
計測された実加工時間および8区分ロスタイムは、実加工時間記憶部132およびロスタイム記憶部134にそれぞれ記憶される。
【0044】
集計部136は、計測部130が自動計測した実加工時間およびロスタイムに基づいて、以下の集計を行う。
(1)号機単位で実加工時間および8区分ロスタイムを含むOEEデータを集計する。なお、OEEデータは、秒/枚などの時間単位で示すことができる。
(2)機種単位でOEEデータの平均値を算出する。
これらの集計は、設備の号機単位または設備グループ10の機種単位のループ処理にて行うことができる。
【0045】
集計結果記憶部138には、集計部136で算出された号機単位のOEEデータ(実加工時間および8区分ロスタイム)と、機種単位のOEEデータ平均値とを含む集計結果ファイルが記憶される。トレンドグラフ作成部140は、集計結果ファイルのデータから計測日単位で機種毎のOEEデータ平均値を含むOEEマトリックス情報ファイルを作成する。OEEマトリックス情報には、たとえば、8区分ロスタイム、OEE、所定期間内の処理枚数、計測対象の設備台数および設備グループ10毎の各数値の平均値などを含むことができる。さらに、トレンドグラフ作成部140は、OEEマトリックス情報ファイルのデータからOEEマトリックス表およびOEEトレンドグラフを作成し、トレンドグラフ記憶部142に記憶する。
【0046】
データ送信部114は、集計結果記憶部138に格納された集計結果ファイル、およびトレンドグラフ記憶部142に格納されたOEEマトリックス情報、OEEマトリックス表とOEEトレンドグラフをインタフェース部112を介してネットワーク84上のWEBサーバ60に送信する。これらのデータがWEBサーバ60に格納されることにより、ネットワーク86上の複数の端末70からOEEマトリックス表およびOEEトレンドグラフを参照することが可能となる。また、ネットワーク84上の設備負荷率算出用PC50もネットワーク84を介してWEBサーバ60にアクセスすることにより、OEEマトリックス情報を取得し、自動的に、または必要に応じて随時、設備負荷率を算出することができる。あるいは、設備負荷率算出用PC50は、直接OEE計測用PC40からネットワーク84を介してOEEマトリックス情報を取得することもできる。
【0047】
図4に、本実施形態のOEE計測用PC40で作成されたOEEマトリックス表144の一例を示す。OEEマトリックス表144は、定期的、たとえば、6〜7日毎に計測されたデータを集計したデータ、たとえば、8区分ロスタイム、OEE、所定期間内の処理枚数、計測対象の設備台数および設備グループ10毎の各数値の平均値などを含むことができる。なお、集計値は、所定期間(たとえば、6〜7日間)、OEEデータを集計し、1日の平均値を算出した値としても良いし、定期的に(たとえば6〜7日置きに)、所定期間(たとえば1日や数日)集計した値とすることもできる。
【0048】
次に、設備負荷率算出用PC50は、図5に示すように、インタフェース部(I/F)150と、データ受信部152と、OEEデータ記憶部(図中、「OEEデータ」と示す)154と、データ送信部156と、改善計画記憶部(図中、「改善計画」と示す)160と、計画入力受付部162と、計画更新部164と、OEEデータ補正部170と、設備負荷率算出部172と、設備負荷率記憶部(図中、「設備負荷率」と示す)174と、一覧表作成部176と、を含む。
【0049】
インタフェース部150は、ネットワーク84を介してOEE計測用PC40およびWEBサーバ60と通信を行うものである。ネットワーク84は、無線および有線通信のいずれであってもよい。データ受信部152は、インタフェース部150を介してネットワーク84上のWEBサーバ60からOEEマトリックス情報を読み出し、OEEデータ記憶部154に記憶する。データ送信部156は、OEEデータ記憶部154、改善計画記憶部160、および設備負荷率記憶部174に記憶されたデータをインタフェース部150を介してネットワーク84上のWEBサーバ60に送信する。これらのデータがWEBサーバ60に格納されることにより、ネットワーク86上の複数の端末70から後述する各種情報を参照することが可能となる。
【0050】
改善計画記憶部160は、改善計画表を記憶する。本実施形態において、改善計画表は、たとえば汎用表計算プログラムから参照可能な一般的な表形式ファイルとすることができる。図6に改善計画記憶部160に格納される改善計画表の例を示す。図6(a)は、通常改善計画表166の一例を示し、図6(b)は、継続的改善計画表168を示す。図5に戻り、計画入力受付部162は、表示部(不図示)に改善計画表のファイルを開いて表示し、操作部(不図示)を用いてオペレータが入力した改善計画表のデータを受け付ける。あるいは、端末70などで更新されたファイルをWEBサーバ60に格納し、WEBサーバ60から送信されたファイルをインタフェース部150を介して計画入力受付部162が受け付けてもよい。計画更新部164は、計画入力受付部162が受け付けた改善計画表のデータに従って改善計画記憶部160の改善計画表のデータを更新する。あるいは、計画入力受付部162が受け付けたファイルを改善計画記憶部160に上書きすることによって更新することができる。
【0051】
OEEデータ補正部170は、OEEデータ記憶部154に格納されているOEEマトリックス情報に含まれるOEEを、その経時的な傾向に基づいて補正する。OEEデータ補正部170は、たとえば、OEEが上昇または下降傾向を示す場合は、その経時的な変化の傾きに基づいて補正を行う。後述する設備負荷率算出部172では補正後のOEEを用いて予測を行うことができる。なお、経時的な変化の傾きは、実測値に基づいて、最小二乗法などの手法を用いて算出することができる。
【0052】
あるいは、OEEデータ補正部170は、OEEの経時変化が所定の範囲(管理限界値と呼ぶ)を逸脱するような場合、たとえば、3σを超えるような場合、そのデータを除外するよう補正を行うことができる。これにより、OEEを、その経時的な傾向に基づいて補正した結果を用いて未来のOEEを予測し、そのOEEを用いて設備負荷率を算出することができるので、精度が向上する。
【0053】
設備負荷率算出部172は、OEEデータ補正部170によって補正されたOEEデータと改善計画記憶部160に記憶されている改善計画表のデータに基づいて、各設備の未来の設備負荷率を予測する。また、設備負荷率算出部172は下記のデータも算出することができる。
(1)製品1枚当たりの必要時間=製品1枚の処理に必要な実加工時間(平均値)+8区分ロスタイム(平均値)
(2)処理能力(枚)=設備の有効稼働時間/製品一枚当たりの必要時間
(3)設備負荷率(%)=必要処理枚数(指定値)/処理枚数×100(%)
(4)必要設備台数(台)=現有台数(指定値)/設備負荷率
【0054】
なお、上述のOEEデータ補正部170によって実加工時間および8区分ロスタイムの集計結果が補正され、設備負荷率に反映される。
【0055】
設備負荷率記憶部174は、設備負荷率算出部172が算出した未来の設備負荷率および上記データを記憶する。一覧表作成部176は、設備負荷率算出部172が算出した設備負荷率および上記データから一覧表を作成し、設備負荷率記憶部174に格納する。図7に設備負荷率算出用PC50の一覧表作成部176が作成した設備負荷率一覧表178の一例を示す。設備負荷率記憶部174に格納された未来の設備負荷率および上記データおよび一覧表作成部176は、上述したようにデータ送信部156によってインタフェース部150を介してWEBサーバ60に送信される。これらのデータがWEBサーバ60に格納されることにより、ネットワーク86上の複数の端末70から参照することが可能となる。
【0056】
図8は、設備負荷率算出用PC50によって作成される他の一覧表の例を示す。図8(a)は、変動OEEロスとプロセスタイムの加重平均の一覧表である。変動ロスとは、製品処理条件や処理枚数、処理バッチ数等によって変動するロスであり、固定ロスとは、製品処理条件や処理枚数、処理バッチ数等に依存しないロスである。変動ロス、固定ロスは設備毎に定義している。一般的にチェンジオーバ、スピードロス、セットアップ、テストタイム、リワークロスは変動ロスに属する場合が多く、計画保全ロス、故障ロスは固定ロスに属する場合が多いが、CMP装置の計画保全ロスのように製品処理枚数に応じて行う保全と製品処理枚数に依存しない保全を含み、変動・固定双方のロスにまたがる場合もある(この場合は小区分毎に定義)。また、設備負荷率算出は製品待ち時間が無いものとして計算するため、アイドルタイムは変動ロス、固定ロスともにゼロとして扱う。図8(b)は、設備パフォーマンスの一覧表である。図8(c)は、OEE比率の一覧表である。実加工時間の比率(OEE)と8区分ロスタイムの各比率が示されている。たとえば、本実施形態の設備負荷率算出用PC50において、設備負荷率算出部172は、設備負荷率に基づいて将来必要となる設備台数を算出する設備台数算出部(不図示)をさらに含むことができる。また、一覧表作成部176は、未来のOEEおよび未来の設備負荷率を含む予測結果一覧表を作成する表作成部(不図示)をさらに含むことができる。
【0057】
以下に、各項目について説明する。
(1)変動OEEロス(秒/枚)=条件毎のOEEロスを各所要枚数で加重平均
(2)プロセスタイム(実加工時間)(秒/枚)=条件毎のプロセスタイムを各所要枚数で加重平均
(3)処理能力(枚)=有効稼動時間(秒)/(変動OEEロス(秒/枚)+プロセスタイム(秒/枚))
(4)所要枚数(枚)=当該設備で処理すべき枚数(枚)
(5)負荷率(%)=(所要枚数(枚)/処理能力(枚))×100(%)
(6)現有台数(台)=当該設備の現有台数(台)
(7)必要台数(台)=現有台数(台)×負荷率(%)
(8)OEEロス(%)=当該設備の変動OEEロス比率(%)+固定OEEロス比率(%)
(9)変動OEEロス比率(%)=変動OEEロス(時/枚)×単位時間当たり処理能力(枚/時・台)
(10)OEE(%)=当該設備のプロセスタイム比率(%)
(11)プロセスタイム比率(%)=プロセスタイム(時/枚)×単位時間当たり処理能力(枚/時・台)
【0058】
将来必要となる設備台数などを含む各種データを算出することができるので、ユーザは、製品投入計画に対する投入可否判断や設備の改善活動の優先度判断、設備投資の要否判断を事前に行うことができる。また、予測結果を一覧表にできるので、改善すべき点が特定し易くなる。また、WEBサーバ60にこれらのデータを格納することによって、ネットワーク86を介して端末70からこれらの一覧表を参照できる。
【0059】
図9は、本実施の形態の設備管理システム1の処理フローの一例を示すフローチャートである。本実施の形態において、本フローは、定期的に実施されるものとする。また、予め登録台帳記憶部104には、計測対象設備情報が登録されているものとする。
【0060】
はじめに、OEE計測用PC40において、データ受信部106が、計測対象設備情報を登録台帳記憶部104から読み出し、取得する(ステップS11)。そして、時計108を参照し、登録台帳記憶部104に登録されている収集期間または日時になった時点で、設備グループ10に対応する機種毎の処理ループが開始される(ステップS13)。各設備グループ10には複数号機の半導体製造装置が設けられているが、それらの号機毎の処理ループが開始される(ステップS15)。本処理ループでは、まず、データ受信部106がインタフェース部102を介してネットワーク82上のロット履歴サーバ30から対象号機のロット履歴情報を取得し、ロット履歴情報記憶部122に記憶する(ステップS17)。さらに、データ受信部106は、インタフェース部102を介してネットワーク82上の稼働管理サーバ20から対象号機の稼働情報を取得し、稼働情報記憶部120に記憶する(ステップS19)。
【0061】
そして、計測部130がステップS17およびステップS19で取得した稼働情報およびロット履歴情報から号機毎に、実加工時間および8区分ロスタイムを計測する(ステップS21)。計測された実加工時間および8区分ロスタイムは実加工時間記憶部132およびロスタイム記憶部134にそれぞれ記憶される。
【0062】
ステップS17〜ステップS21の処理を設備グループ10に含まれる計測対象の複数の号機について同様に繰り返して処理し、設備グループ10の計測対象の号機すべてについて実加工時間および8区分ロスタイムを計測し、それぞれ実加工時間記憶部132およびロスタイム記憶部134に記憶する(ステップS23)。
【0063】
つづいて、集計部136が、ステップS21で計測された実加工時間および8区分ロスタイムをそれぞれ機種単位で集計し、平均値を算出する(ステップS25)。集計部136は集計結果ファイルを作成し、集計結果記憶部138に記憶する(ステップS27)。そして、データ送信部114がインタフェース部112を介してネットワーク84上のWEBサーバ60に集計結果ファイルを送信する(ステップS29)。
【0064】
ステップS15〜ステップS29の処理を計測対象の複数の設備グループ10に対応する複数の機種について同様にして処理し、計測対象の設備グループ10すべてについて集計結果ファイルを作成し、WEBサーバ60に送信する(ステップS31)。つづいて、トレンドグラフサブルーチン処理(ステップS33)へと進み、その後、設備負荷率算出サブルーチン処理(ステップS35)へと進み、その後、本処理を終了する。
【0065】
図10は、図9のフローチャートのトレンドグラフサブルーチンの一例を示すフローチャートである。図11は、図9のフローチャートの設備負荷率算出サブルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0066】
図10において、OEE計測用PC40のトレンドグラフ作成部140が以下の処理を行う。まず、実加工時間記憶部132およびロスタイム記憶部134に記録されている実加工時間および8区分ロスタイムの計測日情報を取得する(ステップS101)。あるいは、操作部を用いてオペレータが入力して指定された計測日情報を受け付ける構成とすることもできる。そして、計測日毎に以下の処理を繰り返す処理ループが開始される(ステップS103)。さらに、各設備グループ10に対応した機種毎に以下の処理を繰り返す処理ループが開始される(ステップS105)。
【0067】
まず、取得したOEEデータ(実加工時間および8区分ロスタイム)の機種情報を参照し、新規の機種であった場合(ステップS107のYES)、トレンドグラフ作成部140に新規の機種情報を送信し、OEEマトリックス表144用の機種テーブル(不図示)として追加登録する。(ステップS109)。新規の機種でない場合(ステップS107のNO)およびステップS109の後、集計結果記憶部138から集計結果ファイルを取得する(ステップS111)。
【0068】
ステップS107〜ステップS111の処理を複数の設備グループ10、登録台帳記憶部104に登録されている設備の号機に対応する複数の機種について同様にして処理し、複数の設備グループ10すべてについてOEEデータの取得を行う(ステップS113)。そして、ステップS105〜ステップS113の処理を同じ計測日について同様に処理し、他の計測日のデータが存在する場合は、他の計測日についても同様にして処理し、複数の計測日のすべてについてOEEデータの取得を完了する(ステップS115)。
【0069】
そして、取得したOEEデータから、計測日に対応した機種毎のOEEマトリックス情報を作成する(ステップS117)。ここで、登録台帳記憶部104に基づいて対応する機種毎に情報が作成される。そして、作成されたOEEマトリックス情報はトレンドグラフ記憶部142に記憶される。そして、データ送信部114がOEEマトリックス情報をインタフェース部112を介してネットワーク84上のWEBサーバ60に送信する(ステップS119)。
【0070】
つづいて、トレンドグラフ作成部140は、ステップS117で作成されたOEEマトリックス情報から図4のOEEマトリックス表144を作成する(ステップS121)。そして、データ送信部114が作成されたOEEマトリックス表144をインタフェース部112を介してネットワーク84上のWEBサーバ60に送信する(ステップS123)。
【0071】
さらに、トレンドグラフ作成部140は、ステップS121で作成されたOEEマトリックス表144からOEEトレンドグラフを作成する(ステップS125)。そして、データ送信部114が作成されたOEEトレンドグラフをインタフェース部112を介してネットワーク84上のWEBサーバ60に送信する(ステップS127)。ステップS127の後、図9のフローに戻り、サブルーチンの処理は終了する。
【0072】
このようにしてWEBサーバ60に送信された機種別のOEEマトリックス情報、OEEマトリックス表144、およびOEEトレンドグラフは、WEBサーバ60にネットワーク86を介して接続されている複数の端末70から随時必要に応じて参照することが可能となる。このとき、端末70は、ブラウザ機能を有することで、簡単な構成で各種情報を参照することが可能となる。図12は、設備Aを例としたOEEトレンドグラフの一例の積み上げグラフを示す図である。この他のOEEトレンドグラフの例としては、後述するような折れ線グラフでもよく、特にグラフの形式を限定するものではない。図12に示すように、OEEトレンドグラフでは、複数の設備毎に、8区分ロスタイムの内訳とOEEの経時的な傾向をグラフ化されているので、改善すべき点が特定し易くなる。
【0073】
各端末70からネットワーク86を介してWEBサーバ60にアクセスし、設備グループ10および期間を指定してOEEトレンドグラフを端末70の表示部(不図示)に表示させることができる。このように、現在稼働中の複数の設備のOEEの経時的な傾向をグラフ化できるので、改善すべき点が特定し易くなる。
【0074】
次に、設備負荷率算出用PC50において、設備グループ10に対応する機種毎の処理ループが開始される(ステップS201)。データ受信部152は、インタフェース部150を介して機種毎のOEEデータをOEE計測用PC40から取得する(ステップS203)。そして、OEEデータ補正部170が管理限界の範囲外に含まれるデータを除外する(ステップS205)。そして、OEEデータ補正部170がグラフの傾き(経時的な傾向)に基づいて補正した結果と改善計画表のデータから未来(製品投入時期)のOEEを予測する(ステップS207)。そして、設備負荷率算出部172が機種毎の設備負荷率を算出する(ステップS209)。
【0075】
ステップS203〜ステップS209の処理を複数の設備グループ10に対応する複数の機種について同様にして処理し、複数の設備グループ10すべてについて同様に処理する(ステップS211)。そして、ステップS209で算出された設備グループ10毎の設備負荷率から一覧表を作成する(ステップS213)。そして、データ送信部114がOEEマトリックス情報をインタフェース部112を介してネットワーク84上のWEBサーバ60に送信する(ステップS215)。
【0076】
以上説明したように、本発明の実施の形態の設備管理システム1によれば、現在稼働中の複数の設備の未来のOEEおよび設備負荷率を効率良く算出することができる。すなわち、現在稼働中の複数の設備の稼働状況を自動的に収集し、定期的に集計されたOEEから改善計画に従って未来のOEEを予測し、予測した結果に基づいて未来の設備負荷率を算出し、これらの情報を蓄積することができ、将来の設備投入計画に役立てることができる。また、OEEを、その経時的な傾向に基づいて補正した結果を用いて未来のOEEを予測し、そのOEEを用いて設備負荷率を算出することができるので、精度が向上する。
【0077】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例1】
【0078】
(実施例1)
図13は、設備Aを例としたOEE推移が安定したOEEトレンドグラフの一例を示す図である。この例のように、OEE推移が安定した例では、改善活動を実施すれば、その効果がすぐに得られる。たとえば、図6(a)の通常改善計画表166に基づいて、改善計画を設定したとする。すなわち、設備Aについて、改善時期(効果寄与時期):2005年8月1日、改善項目:チェンジオーバ、効果:5%削減する改善計画を立てた場合について説明する。
【0079】
この例では、設備Aでは、チェンジオーバが2005年8月1日に改善されるため、これより以前に投入されるロットについてはそのまま数ヶ月の実測値の平均値を用いて設備負荷率算出部172は設備負荷率を算出する。図16(a)の設備AのOEE推移グラフ180に示すように、2005年8月1日以前の2005年7月31日までのチェンジオーバ比の計測結果の平均値が16%、OEEが44%であったとする。
【0080】
一方、2005年8月1日以降に投入されるロットについては、設備負荷率算出部172は、ロスタイムのチェンジオーバを実測値の平均値から5%差し引いて設備負荷率を算出する。すなわち、OEEデータ補正部170は、2005年8月1日以降のチェンジオーバ比を、16−5=11%、OEEを44+5=49%と補正する。その結果、図16(a)の設備AのOEE推移グラフ180に示すようなOEE推移となる。設備負荷率算出部172は補正されたOEEデータを用いて設備負荷率を算出する。
【0081】
(実施例2)
ところで、半導体製造設備において、いつもこのようにOEEが安定している訳ではなく、不安定な値を示すことも多い。図14は、設備Bを例としたOEEが継続的に上昇している場合のOEEトレンドグラフの一例を示す図である。
【0082】
図6(b)の継続的改善計画表168に示すように、設備Bでは、バッチ充填率改善活動を継続して実施しており、このロス低減改善活動によりスピードロスが継続的に低減し、OEEは上昇傾向にある。改善計画では、到達時期:2005年10月8日、改善項目:スピードロス、限界値:15%としている。
【0083】
このような場合(あるいは、何らかの原因によりOEEが下降傾向にある場合)に、設備負荷率算出用PC50において、単純にOEEの平均値を用いて未来の設備負荷率を予測しても、実際よりも負荷が高くなり、投入可能な製品を投入不可と判断したり、不必要な設備投資を必要と誤って判断してしまうことになる。このため、上述したように、OEEデータ補正部170では、トレンドグラフの傾きと改善計画表によって定義されたロス低減活動計画から、与えられた投入計画の製品投入時期に対応したOEEを想定し、その値を用いて設備負荷率を算出する。
【0084】
たとえば、2005年7月25日までのスピードロス比が39%であり、2005年9月19日時点のスピードロス比が21%であったとする。また理論上この改善活動でスピードロスは15%までしか低減できないものとする。このとき、スピードロス比の直線の傾きは、(39(%)−21(%))/59(日)=0.32(%/日)となり、これより限界値の15%に到達する時期は、(21(%)−15(%))/0.32(%/日)=18.75(日)となり、従って19日後の2005年10月8日となる。
【0085】
このようにOEEデータ補正部170は、スピードロスの実測値の傾向から将来のスピードロスを予測し、補正を行う。たとえば、2005年10月1日の製品の投入については、OEEデータ補正部170は、スピードロス比を、21%−(0.32(%/日)×12日=17.2%に補正する。同時にOEEも補正する。その結果、図16(c)の設備BのOEE推移グラフ184に示すようなOEE推移となる。
【0086】
設備負荷率算出部172は、2005年10月7日までは上記のように補正された値を用いて設備負荷率を算出し、2005年10月8日以降は、スピードロス比を15%に固定して算出する。
【0087】
(実施例3)
図15は、設備Cを例としたOEEが突発的に増減している場合のOEEトレンドグラフの一例を示す図である。この例のような突発はずれ(2005年8月15日のデータ)を含む設備Cについては、OEEデータ補正部170は、各ロス比率の管理限界値を外れた点を除外して平均値を算出する。ここで算出された値は、故障ロス比:3%、リワークロス比:18%、OEE:37%となる。また、図6(a)の通常改善計画表166に示すように、設備Cでは、改善時期(効果寄与時期):2005年12月31日、改善項目:リワークロス、効果:3%低減する計画がなされたとする。
【0088】
2005年12月30日まで何も上記以外の改善がない場合、そのまま故障ロス比:3%、リワークロス比:18%、OEE:37%となる。2005年12月31日以降、リワークロス比が改善計画により3%低減され、故障ロス比は3%のままで、OEEデータ補正部170は、リワークロス比:18−3=15%、およびOEE:37+3=40%と補正する。その結果、図16(b)の設備CのOEE推移グラフ182に示すようなOEE推移となる。この補正値を用いて、2005年12月31日以降に投入されるロットについては、設備負荷率算出部172は、設備負荷率を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態に係る設備管理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の設備管理システムのOEE計測用PCの詳細を示す機能ブロック図である。
【図3】図2のOEE計測用PCの登録台帳記憶部に記憶されている登録台帳の一例を示す図である。
【図4】図2のOEE計測用PCで作成されるOEEマトリックス表の一例を示す図である。
【図5】図1の設備管理システムの設備負荷率算出用PCの詳細を示す機能ブロック図である。
【図6】図5の設備負荷率算出用PCの改善計画表の例を示す図である。
【図7】図5の設備負荷率算出用PCの設備負荷率一覧表の一例を示す図である。
【図8】図5の設備負荷率算出用PCによって作成される他の一覧表の例を示す図である。
【図9】本実施の形態の設備管理システムの処理フローの一例を示すフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートのトレンドグラフサブルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図11】図9のフローチャートの設備負荷率算出サブルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図12】本実施形態の設備Aを例としたOEEトレンドグラフの一例の積み上げグラフを示す図である。
【図13】本実施の形態の設備Aを例としたOEE推移が安定したOEEトレンドグラフの一例を示す図である。
【図14】本実施の形態の設備Bを例としたOEEが継続的に上昇している場合のOEEトレンドグラフの一例を示す図である。
【図15】本実施の形態の設備Cを例としたOEEが突発的に増減している場合のOEEトレンドグラフの一例を示す図である。
【図16】本実施の形態の各設備の改善計画に対するOEE推移の予測結果を説明するための図である。
【符号の説明】
【0090】
1 設備管理システム
10 設備グループ
20 稼働管理サーバ
30 ロット履歴サーバ
32 ホストコンピュータ
34 データベース用サーバ
40 OEE計測用PC
50 設備負荷率算出用PC
42 トレンドグラフ
60 WEBサーバ
70 端末
80 ネットワーク
82 ネットワーク
84 ネットワーク
86 ネットワーク
102 インタフェース部
104 登録台帳記憶部
106 データ受信部
108 時計
112 インタフェース部
114 データ送信部
120 稼働情報記憶部
122 ロット履歴情報記憶部
130 計測部
132 実加工時間記憶部
134 ロスタイム記憶部
136 集計部
138 集計結果記憶部
140 トレンドグラフ作成部
142 トレンドグラフ記憶部
144 OEEマトリックス表
150 インタフェース部
152 データ受信部
154 OEEデータ記憶部
156 データ送信部
160 改善計画記憶部
162 計画入力受付部
164 計画更新部
166 通常改善計画表
168 継続的改善計画表
170 OEEデータ補正部
172 設備負荷率算出部
174 設備負荷率記憶部
176 一覧表作成部
178 設備負荷率一覧表
180 設備AのOEE推移グラフ
182 設備CのOEE推移グラフ
184 設備BのOEE推移グラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の設備の稼働状況を示す稼働状況データを収集する収集部と、
前記稼働状況データから実加工時間およびロスタイムを所定期間毎に集計する集計部と、
前記集計部により得られた集計結果から前記所定期間毎の設備総合効率を算出する設備総合効率算出部と、
前記設備の改善計画情報を受け付ける受付部と、
前記設備総合効率および前記改善計画情報に従って、未来の設備総合効率を予測する予測部と、
前記予測部が予測した前記未来の設備総合効率に基づいて未来の設備負荷率を算出する設備負荷率算出部と、
前記未来の設備総合効率および前記未来の設備負荷率を含む前記複数の設備の設備管理情報を記憶する記憶部と、を備える設備管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の設備管理システムにおいて、
前記設備総合効率算出部が算出した前記設備総合効率を、その経時的な傾向に基づいて補正する補正部をさらに含む設備管理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の設備管理システムにおいて、
前記記憶部は、サーバであり、
前記サーバにネットワークを介して接続された端末から前記記憶部を参照可能に接続する接続部をさらに含む設備管理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の設備管理システムにおいて、
前記設備総合効率のトレンドグラフを作成するグラフ作成部をさらに含み、
前記記憶部に前記トレンドグラフを記憶する設備管理システム。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の設備管理システムにおいて、
前記設備負荷率に基づいて将来必要となる設備台数を算出する設備台数算出部をさらに含む設備管理システム。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載の設備管理システムにおいて、
前記未来の設備総合効率および前記未来の設備負荷率を含む予測結果一覧表を作成する表作成部をさらに含み、
前記記憶部に前記予測結果一覧表を記憶する設備管理システム。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の設備管理システムにおいて、
前記設備は、半導体製造装置である設備管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−15738(P2008−15738A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185391(P2006−185391)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】