説明

設計された表面を有する移植可能な材料、および該材料を作製する方法

内皮細胞を結合するための親和性領域の画定されたパターンを有し、および材料の表面を横断する有向性の内皮細胞移動をもたらす移植可能な材料。親和性領域は、材料表面の残りの領域に比べて内皮細胞の結合および移動に大きな親和性を示す、材料表面上にパターン化される光化学的に変性される材料表面領域および物理的構成要素を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して移植可能な医療装置に関し、およびより詳細には、移植可能な医療装置の製作に適する移植可能な生体適合性の材料の表面特性を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
移植可能な医療装置は、生体内で引き起こす生物学的応答の点で次善である材料で製作される。チタン、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、炭素繊維およびポリエステルのような、移植可能な装置を製作するために使用される多くの慣用の材料は、強度および生理学的に不活性な特徴の故に使用される。しかしながら、これらの材料上への組織の一体化は、典型的には、遅くかつ不十分である。シリコーンおよびポリエステルのようなある種の材料は、合成材料の繊維性の被包形成を推進する重大な炎症性の異物応答を引き起こす。繊維性の被包形成は、移植物に重大な悪影響を及ぼす可能性がある。その上、慣用の生体材料は、体内への装置の完全な一体化に必要な十分な癒合応答を引き起こすのに不十分であると判明している。例えば、ステントおよび血管移植片のような、血液に接触する装置において、そのような装置を改質して内皮細胞接着を促進する試みは、装置をより血栓形成性にする随伴的な影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
移植される場合、ステント、ステント−移植片、移植片、弁、短絡、およびパッチのような、慣用の血液接触性の移植可能な装置は、完全な内皮層を発達させることができず、それによって装置の材料を血栓の形成または平滑筋細胞の増殖にさらし、および移植される装置は最終的に機能不全となる。体内に移植される場合、金属は一般的に、商業的に入手可能なポリマー移植片を製作するために使用されるポリマーよりも、優れた生体適合性を有するとみなされていることが認識されている。
【0004】
細胞と人工器官の材料の表面との相互作用を調査する中で、材料表面に対する細胞接着は、人工器官の表面と相互作用し、細胞膜上に存在するインテグリンによって介在されることが見出されている。インテグリンは、細胞外基質(ECM)の接着受容体のクラスのうち最も顕著な構成要素である。インテグリンは、異なるαおよびβサブユニットを持つ異質二量体性の膜貫通タンパク質の大きなファミリーである。インテグリンは、いくつかのレベルに調整される。親和性の調節と称される、リガンドに対する接着受容体の親和性の調節は、血小板凝集の活性化のための機構であり、および白血球接着の活性化の基礎をなすと考えられている。接着受容体のクラスター化、または細胞伸展のような細胞骨格依存性のプロセスによる接着性強化は、強固な細胞付着、細胞成長の制御および細胞の運動性にとって極めて重要であることが示されている。血流中に存在する高剪弾力下で、白血球は最初に係留され、次いで血管表面に沿ってローリングする。局所的な信号、例えばサイトカインが白血球の周辺に放出される際に、白血球は捕捉され、堅固な接着を発現させて、次いで内皮を横断して移動する。係留、ローリング、捕捉および接着強化は、全て、白血球インテグリンの活性化に由来することが知られている。
【0005】
ひとたび表面に接着されたならば、細胞伸展および移動は、焦点接着の接合部の組立てに関連する。細胞移動は、細胞骨格介在プロセス(すなわち糸状仮足および葉状仮足)の伸展と、細胞の前端における接着性接点の形成と、細胞の後端における接着性接点の破断および細胞骨格の収縮との協調を必然的に伴う。焦点接着は、関連する細胞質のプラークタンパク質と共に、主要な接着受容体としてインテグリンを含む。焦点接着の組立ては、細胞外のリガンド結合事象、および細胞間の情報伝達事象によって調整される。リガンド結合は、焦点接着の中へのβ1−およびβ3−含有インテグリンの局在化を制御する。βサブユニットの細胞質ドメインは焦点接着局在化のための内在性の信号を有するが、しかし焦点接着の中へのインテグリンの取込みは異質二量体のαサブユニットによって妨害される。しかしながら、リガンド結合は、この阻害を軽減し、およびサブユニットの細胞質のテール信号が焦点接着の中へインテグリンの二量体を誘入することを可能にする。
【0006】
ステントのような移植される金属装置をArg−Gly−Asp(RGD)付着部位を含有するタンパク質で被覆する試みがなされ、ある程度成功している。RGD配列は、多数の接着性細胞外基質、血液、および細胞表面タンパク質の細胞付着部位であり、および既知のインテグリンの多くは、それらの接着タンパク質のリガンド中のRGD配列を認識する。また、インテグリン結合の活性は、RGD配列を含有する合成ペプチドによって再現される可能性がある。しかしながら、裸の金属の移植される材料は、もちろん、天然のRGD付着部位を持たない。従って、ステントのような、金属の移植可能な装置は、ポリマー基質に対して結合されるRGD付着部位を有するポリマーで改質(derivitize)されている。
【0007】
人工器官の材料が移植される時、細胞表面上のインテグリン受容体が人工器官の表面と相互作用することが見出されている。細胞が人工器官の表面のような細胞外基質と接触する状態になる場合、細胞の通常の応答は糸状仮足を伸展することであり、および糸状仮足の先端のインテグリンは、細胞外基質と結合しおよび焦点接着の形成を開始する。細胞が細胞外基質上に伸展するにつれて、大抵糸状仮足の間に、アクチンに富んだ葉状仮足が生み出される。十分に発達した焦点接着および付随するアクチンストレスファイバーが、続いて生じる。細胞が葉状仮足を伸展させおよび焦点接着を形成して移動に必要な牽引力を引き出すのに、これらと同一の事象が、細胞移動の間に起こる(非特許文献1参照)。
【0008】
インテグリン受容体は、生体内で、特定のリガンドに対して特異的である。特異的なタンパク質が人工器官の表面に吸着され、およびそのリガンドが露出される場合には、人工器官の表面に対する細胞結合は、インテグリン−リガンドドッキングによって生じる可能性がある。また、タンパク質は、ポリマーに対して結合するよりも永続的な方法で金属に対して結合し、それによってより安定な接着性表面を提供することが観察されている。大抵の医療用の金属および合金の表面に対して連結されるタンパク質の配座は、より多数のリガンドを露出し、および金属または合金の表面に対して、白血球よりも優先して、表面インテグリンクラスターを有する内皮細胞を引き付けるように見える。
【0009】
また、金属は、そのより大きな接着性の表面プロフィールのために、短期間の血小板の活性および/または血栓形成性の影響を受けやすい。これらの有害な特性は、今日では日常的に使用される薬理学的に活性の抗血栓形成性薬剤の投与によって相殺される可能性がある。通常、表面の血栓形成性は、最初の露出の後1〜3週間で消滅する。冠状動脈のステント植え込みに関しては、この期間中、非血栓性の範囲が日常的に提供される。また、筋骨格および歯のような非血管性の用途において、同様の分子的考察のために、金属はポリマーよりも優れた組織適合性を有する。全てのポリマーは金属より劣っているという事実を示すための最良の文献は、非特許文献2である(非特許文献2参照)。
【0010】
通常、内皮細胞(EC)は、移動および増殖して、合流が達成されるまで露出区域を被覆する。増殖よりも量的に重要である移動は、正常な血流の下、おおよそ毎時25μm、すなわち通常10μmであるECの直径の約2.5倍の速度で進行する。細胞膜のインテグリン受容体のクラスターに対して付着される細胞内フィラメントの複雑系、具体的にはフォーカルコンタクト点によって調整される細胞膜の回転(rolling)運動によって、ECは移動する。フォーカルコンタクト部位内のインテグリンは、複雑な情報伝達機構に従って発現し、および最終的には、基質の接着分子内の特異的なアミノ酸配列に結合する。ECは、その細胞表面のおおよそ16〜22%がインテグリンクラスターによって占められる(非特許文献3および非特許文献4参照)。これは、30分で50%超のリモデリングを伴う動的プロセスである。焦点接着の接点は、サイズおよび分布の点で様々であるが、しかしながらそれらの80%は6μm未満であり、同時に大部分が約1μmであり、および流れの方向に伸長しおよび細胞の前端に濃縮する傾向がある。付着部位に対する特異的付着受容体の応答を決定するための認識および情報伝達のプロセスは完全には理解されていないものの、付着部位の利用可能性は、付着および移動に有利に影響するだろう。ポリマーのような、医療用移植片として一般に使用される材料は、ECで被覆されるようにならず、従って、動脈内に配置された後に癒合しないことが知られている。従って、潜在的にECで被覆されるようになることができおよび完全に癒合できる金属移植片でポリマー移植片を置き換えることが、本発明の目的である。さらに、好ましくは、血流と接触する材料の異質性は、真空堆積される材料を用いることによって制御される。
【0011】
ステントのような移植される医療装置の内皮化を増進させる多数の試みがなされており、ポリマー材料でステントを被覆すること(特許文献1参照)、ステント上にダイヤモンドライクカーボンの被膜を与えること(特許文献2参照)、ヘパリン分子に対して疎水性部分を共有結合させること(特許文献3参照)、青から黒の酸化ジルコニウムまたは窒化ジルコニウムの層でステントを被覆すること(特許文献4参照)、乱層構造の炭素の層でステントを被覆すること(特許文献5参照)、VB族金属の薄層でステントの組織接触性表面を被覆すること(特許文献6参照)、チタンまたはTi−Nb−Zr合金のようなチタン合金の多孔性の被膜をステントの表面上に与えること(特許文献7参照)、超音波の条件下で、ヘパリン、内皮由来の成長因子、血管成長因子、シリコーン、ポリウレタン、またはポリテトラフルオロエチレンのような、合成または生物学的、活性または不活性の作用物質でステントを被覆すること(特許文献8参照)、ビニル官能基を持つシラン化合物でステントを被覆し、次にシラン化合物のビニル基との重合によってグラフトポリマーを形成すること(特許文献9参照)、赤外放射、マイクロ波放射、または高電圧重合を用いてモノマー、オリゴマーまたはポリマーをステントの表面上にグラフトして、ステントにモノマー、オリゴマーまたはポリマーの特性を与えること(特許文献10参照)を含む。しかしながら、これらのアプローチは全て、ポリマー移植片の内皮化の不足を検討していない。
【0012】
本発明に従って、金属およびポリマーを含む慣用の移植可能な材料の完全な内皮化の能力は、移植可能な材料の血液接触性表面上に対して化学的および/または生理化学的に活性な特徴部のパターンを与えることによって増強される可能性がある。本発明の移植可能な金属装置を、ポリマー、ステンレス鋼またはニチノールのハイポチューブのような以前から存在する慣用の鍛造金属材料から製作してもよく、または薄膜真空堆積技術によって製作してもよい。本発明に従って、本発明の移植可能な材料および結果として得られる装置を、ベースの移植材料と化学的および/または生理化学的に活性な特徴部とのどちらか一方または両方の真空堆積によって製作することが好ましい。真空堆積は、得られる材料および形成される装置の多くの材料の特質および特性のより高度な制御を可能にする。例えば、真空堆積は、粒度、粒子の相、粒子材料の組成、バルク材料の組成、表面のトポグラフィー、力学的特性、形状記憶合金の場合には転移温度のようなものの制御を可能にする。その上、真空堆積処理は、材料、および従って移植される装置の力学的および/または生理学的特性に悪影響を及ぼす多量の汚染物質の導入のない、より高い材料純度の装置の作成を可能にするであろう。また、真空堆積技術は、慣用の冷間加工技術によって製造される装置よりも複雑な装置の製作に好適である。例えば、多層構造、複雑な幾何的配置、厚さまたは表面均一性のような材料許容度の極めて良好な制御は、全て、真空堆積処理の利点である。
【0013】
真空堆積技術において、材料は、直接的に所望の形状、例えば平面状、管状などに形成される。真空堆積処理の共通原理は、原料物質として知られるペレットまたは厚いホイルのような最小限に加工された形態の材料を得て、そしてそれらを原子化することである。原子化は、例えば、物理蒸着の場合のように熱を用いて、またはスパッタ堆積の場合のように衝突のプロセスの効果を用いて行っても良い。堆積のいくつかの形態では、典型的には1以上の原子からなる微粒子を生成するレーザーアブレーションのような処理が、原子化に置き換わってもよく;粒子当たりの原子の数は、数千以上であってもよい。次いで、原料物質の原子または粒子を、支持体またはマンドレル上に堆積させて、所望の目的物を直接形成する。他の堆積方法論では、真空チャンバに導入される周囲気体すなわち気体源と、堆積される原子および/または粒子との間の化学的反応が、堆積処理の一部である。堆積される材料は、化学気相成長の場合のように、固体源と気体源との反応により形成される化合物種を含む。大抵の場合では、堆積された材料を、次に、部分的にまたは完全にかのいずれかで支持体から除去して、所望の製品を形成する。
【0014】
真空堆積処理の第1の利点は、金属製および/または擬金属製の膜の真空堆積が、厳重なプロセスコントロールを可能にし、および規則正しい均質な原子および分子の分布パターンを有する膜を、流体接触性の表面に沿って堆積できることである。これは、予測可能な酸化および有機吸着パターンを生み出して表面組成の著しい変動性を回避し、および水、電解質、タンパク質および細胞と予測可能な相互作用をする。特に、スムーズな移動および付着を促進するために天然のまたは移植される細胞の付着部位として働く結合ドメインの均質な分布によって、ECの移動が支持される。
【0015】
第2に、単一の金属または金属合金の層で作られる材料および装置に加えて、本発明の移植片は、生体適合性の材料の層、または互いの上に形成されて自立性の多層構造になる生体適合性材料の複数層を含んでもよい。なぜならば、多層構造は、一般的に、シート材料の機械的強度を増大させること、または超弾性、形状記憶、放射線不透過性、耐食性などの特別な特性を有する層を含むことによって特別な性質を提供することが知られているからである。真空堆積技術の特別な利点は、層をなす材料を堆積することが可能であることであり、および従って特に優れた性質を持つ膜を生産することができる(非特許文献5参照)。上部構造または多層のような層をなす材料は、一般的に堆積されて、被覆物としての材料の化学的、電子工学的、または光学的特性のいくつかを利用する;一般的な例は、光学レンズ上の反射防止膜である。また、多層は、薄膜製作の分野において使用され、薄膜の力学的特性、具体的には硬度および靭性を増強する。
【0016】
第3に、本発明の移植片の可能な配置および用途に関する設計可能性は、真空堆積技術を採用することによって、大いに実現される。具体的には、真空堆積は、慣用の鍛造製作技術を採用することによっては費用効率よく達成できないかまたはいくつかの場合には全く達成できない、潜在的に複雑な三次元の形状および構造を持つ実質的に一様に薄い材料の製作に好適な付加的技術である。慣用の鍛造金属製作技術は、精錬、高温加工、冷間加工、加熱処理、高温アニーリング、析出アニーリング(precipitation annealing)、粉砕、アブレーション、ウェットエッチング、ドライエッチング、切断および溶接を必然的に伴う可能性がある。これらのプロセス工程の全ては、汚染、材料特性の劣化、最終的に達成可能な配置、寸法および許容度、生体適合性および費用を含む不利点を有する。例えば、慣用の鍛造処理は、約20mmよりも大きい直径を有する管を製作するのに適しておらず、そしてまた、そのような処理は、サブミクロンの許容度を持つ約1μmに至るまでの壁厚を有する材料を製作するのにも適していない。
【0017】
移植される医療装置の血液接触表面上の内皮細胞の合流に達するための全速度は、主に、細胞移動の速度および細胞増殖の速度の2因子によって決定され、第1の因子がより重要である。細胞移動の速度は、3つの相互に関係する工程をさらに含む。最初に、細胞は、外側に突出する葉状仮足および糸状仮足を形成する。この工程は、ランベポリア(lambaepolia)の最先端でのアクチンの再集合を伴う。細胞膜からの1つまたは多数の点からの葉状仮足の突出の後、葉状仮足の前端は、細胞膜上のインテグリンと細胞外基質の結合部位との相互作用を通じて、下層に対して、焦点接着点と呼ばれる密接な付着を形成する。細胞移動の最終工程は、ミオシンIIの作用を通じる後端の収縮を伴う。焦点接着点の形成は、細胞移動にとって極めて重要である。なぜならば、さもなければ、突出する葉状仮足は折り返すからである。焦点接着点からの張力がなければ、細胞は後端からの収縮を失い、および従って移動を停止する。
【0018】
下層上の付着部位の利用可能性は、焦点接着点形成のために重要なだけでなく、増殖のために重要でもある。伸展を余儀なくされる細胞は、同一量の表面区域に閉じ込められる細胞よりも、長く存続し、および速く増殖することが示されている(非特許文献6参照)。このことは、細胞が上皮から失われる後に、なぜ付近の細胞の伸展が細胞を刺激して増殖させるのかを説明する可能性がある。
【0019】
【特許文献1】米国特許第5,897,911号明細書
【特許文献2】米国特許第5,725,573号明細書
【特許文献3】米国特許第5,955,588号明細書
【特許文献4】米国特許第5,649,951号明細書
【特許文献5】米国特許第5,387,247号明細書
【特許文献6】米国特許第5,607,463号明細書
【特許文献7】米国特許第5,690,670号明細書
【特許文献8】米国特許第5,891,507号明細書
【特許文献9】米国特許第5,782,908号明細書
【特許文献10】米国特許第5,932,299号明細書
【非特許文献1】Science, 285:13 August 1999, 1028-1032
【非特許文献2】Circulation, 1996:94(7):1690-7
【非特許文献3】J. Clin. Invest. 1993; 91:2640-2652
【非特許文献4】J. Clin. Invest. 1994; 93:2031-2038
【非特許文献5】Surface and Coating Technology, Vol.76-77 (1995) pp.328-336
【非特許文献6】Science, 276:1425-1428,1997
【非特許文献7】ISIS Experimental report, Rutherford Appelton Laboratory, 5/16/2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
細胞外基質(ECM)の形成は、かなりの程度、その内部の細胞によって決定される。なぜならば、ECMを形成する分子は、その細胞によって分泌されるからである。続いて、ECMの構造、およびそれから推して、インテグリン結合のためのECM上の付着部位の分布は、細胞移動において極めて重要な工程である焦点接着点の形成を決定する。従って、移植される医療装置の表面上のインテグリン結合部位の適切な分布は、実質的に、装置を取り囲む端部からの再内皮化の速度を決定する。
【0021】
なおかつ、医療装置の上を覆って内皮層を形成するために移植される時に内皮の増殖および移動を刺激する医療装置の必要性が残る。その上、そのような医療装置を製作する方法の必要性が残存する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の見地に従って、細胞付着のための均一に分布される幾何的特徴部を含む、少なくとも1つの血液接触表面を有する、移植可能な材料が提供される。医療装置の血液接触表面上の均一に分布される特徴部は、円形の点、正方形の点、長方形の点、三角形の点、平行線および交線、またはそれらの任意の組み合わせを含む。加えて、本発明の別の見地は、血液接触表面上に均一に分布される幾何的特徴部を有する装置を作製する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、血液接触表面上に画定および分布される化学的または生理化学的に活性の幾何的特徴部の間に見いだされた関係を利用し、移植可能な材料の血液接触表面の上の内皮細胞結合、増殖および移動を促進する。本発明は、細胞移動中の焦点接着点の形成と、足場依存性として知られる、伸展性の細胞は非伸展性の細胞よりも速く増殖するという十分に確立された観察結果とを伴う。または超薄特徴部の付加される表面と比べて疎水性、親水性、表面エネルギーの差を有する超薄特徴部のパターン化された配列の付加は、特徴部に対する、および特徴部間の、および表面を横断する内皮細胞の結合、増殖および移動を促進することが見出されている。用語「超薄」の使用は、約0.1μmおよび3μmの間の材料の厚さを含むことを意図する。約3μm未満において、内皮細胞および超薄特徴部の間の相互作用は、主に化学的および電気化学的であることが見出されている。また、本発明において、3μmより厚くおよび約20μmに至るまでの厚さを有する特徴部を使用してもよく、特徴部の厚さが増すにつれて、特徴部と内皮細胞との間の化学的および/または電気化学的相互作用の減少、および物理的相互作用の増大がある。
【0024】
その上、酸化されたチタンまたはチタン合金の表面に対するUV照射を採用することによって、表面酸化チタンの光化学的な変性が、露出される酸化チタンの疎水性を変化させ、およびチタンまたはチタン合金の表面を横断する内皮細胞の付着および増殖のための親和性結合および移動の部位として作用する。UV照射が採用される場合、酸化チタンの光化学的に変性される領域の厚さは、実際上は、0μmである。従って、本願の状況の中では、用語「幾何的特徴部」は、物理的な構成部材と、0μmに至るまでの厚さを有する光化学的に変性される領域との両方を含むことを意図する。
【0025】
図1では、記載される高められた幾何的特徴部14を有する表面材料12を示す移植可能な材料10の一部分が図示される。幾何的特徴部は、移植可能な材料の表面から約サブミクロンから約20μmまでの範囲の高さまで高められる。好ましくは、幾何的特徴部14の高さは、約サブミクロンから約3μmまでの範囲である。幾何的特徴部の形状は、円形、正方形、長方形、三角形、平行線、直線または曲線、またはそれらの任意の組み合わせのいずれであることができる。幾何的特徴部のそれぞれは、特徴部の幅16、あるいは幾何的特徴部が円形である場合は特徴部の直径が、好ましくは約10μmから約75μmまで、および好ましくは約15μmから50μmまでである。一般的に、幾何的特徴部のそれぞれの間の間隔距離18は、特徴部の幅16と同一、すなわち端−端で約10μmから約75μmの間であるべきである。
【0026】
図2は、図1の線2−2に沿った断面図である。高められた幾何的特徴部14の1つが、移植可能な材料の表面12の上に示される。
【0027】
図3では、チタンまたはチタン合金材料20を熱酸化し、および材料20の表面上に二酸化チタンを形成し、次に、パターンマスクを通したUVに対して材料20を露出させることによって、特徴部24が形成される。UV照射は、特徴部24の区域で酸化チタンを変性させ、それによって材料20の周囲の表面区域22に比べて幾何的特徴部24を化学的に変性させる。幾何的特徴部の形状は、円形、正方形、長方形、三角形、平行線、交線、または任意の組み合わせであることができる。幾何的特徴部のそれぞれは、特徴部の幅26、あるいは幾何的特徴部が円形である場合は特徴部の直径が、約10μmから約75μmまで、および好ましくは約15μmから50μmまでである。幾何的特徴部の各要素間の間隔距離28は、特徴部の幅26と同一の大きさである。
【0028】
図4は、線4−4に沿った図3の断面図である。記載される幾何的特徴部24は点線によって示され、これは幾何的特徴部24が周囲表面22と同一の高さであることを示す。
【0029】
図5は、体液、好ましくは血液に接触する移植可能な材料の少なくとも1つの表面の全体にわたって均一に分布される幾何的特徴部を示す。図1および図2で開示されるように、幾何的特徴部は、表面の残部から約サブミクロンから約20マイクロメートルまでの範囲の高さまで高められる。幾何的特徴部の高さは、好ましくは、約サブミクロンから約3マイクロメートルまでの範囲である。幾何的特徴部の形状は、示される形状の範囲内に制限されない。また、化学的に画定されるドメインの形状は、円形、正方形、長方形、三角形、平行線、交線または前述のものの任意の組み合わせのいずれかであることができる。
【0030】
図6Aは、親水性処理されたSiの表面に伸展する細胞32を示す。図6Bは、直径が15ミクロンである円形のドットを有する親水性処理されたSiの表面上に伸展する細胞32を示す。図6Bの細胞は、図6Aの細胞よりもはるかに多い焦点接着点36を有するように見える。これらの幾何的特徴部は、親和性ドメインとして作用して細胞付着をもたらすので、内皮細胞のサイズに比較したこれら親和性ドメインのそれぞれのサイズは、続いて起こる細胞移動過程に対する親和性ドメインの利用可能性を決定する。本発明に従って、幾何的特徴部の個々の構成要素のそれぞれの好ましいサイズは、特徴部の幅、あるいは幾何的特徴部が円形である場合は直径が、約10μmから約75μmであり、および好ましくは約15μmから50μmまでである。背景技術の部分に記載されるように、焦点接着点の形成は、細胞移動および細胞増殖において極めて重要な工程であり、従って、親水性Siの表面上の炭素のドットのような幾何的特徴部は、細胞移動を促進する。当業者には、細胞の伸展は細胞の増殖を促進することが知られている。細胞移動および細胞増殖の促進は、最終的に、移植される移植可能な材料の、幾何的特徴部を有する露出表面上における内皮細胞での被覆を加速する。図6Bに示される幾何的特徴部は円形であるが、しかしながら幾何的特徴部の形状はこの特定の実施形態に限定されない。
【0031】
図6Cは、図6Bの画像の一部の拡大図である。繰り返しになるが、多数の焦点接着点36が示される。細胞の広範囲にわたる伸展は、主に、円形の幾何的特徴部上における多数の焦点接着点の形成による。細胞の広域におよぶ伸展は、細胞移動および細胞増殖を促進するので、内皮化にとって有益である。
【0032】
図7は、炭素のドットの形態である幾何的特徴部14を伴う移植可能な材料の表面上におけるヒト大動脈の内皮細胞(HAEC)の着色された焦点接着点36を示す。焦点接着点は、幾何的特徴部14に、またはその非常に近くに位置する。背景技術の部分に記載されるように、これらの焦点接着点は、細胞がその反対端から収縮するための引っ張り点としての役目を果たし、したがって細胞移動を促進する。
【0033】
図8Aは、細胞32の広範囲にわたる伸展と、直径25マイクロメートルのNiTiのドットの形態である幾何的特徴部を伴う移植可能な材料の表面上における多数の焦点接着点36とを示す。NiTiのドットは、NiTiのドットと周囲のSi表面との間の弱いコントラストのために不可視である。
【0034】
図8Bは、図8Aに示されるように、ヒト大動脈の上皮細胞32の拡大スライドを示す。多数の焦点接着点36は、親水性のSi表面上にパターン化されたNiTiのドットを被包することが示される。
【0035】
図9Aを参照すると、表面42および44を有する移植可能な材料46の一部が示される。
【0036】
図9Bを参照すると、本発明に従って、全体にわたってパターン化される約10μmから約75μmまで、および好ましくは約15μmから50μmまでの範囲にて画定されるサイズのレーザー切断される孔40を有する機械加工されるマスク48が、移植可能な材料46の少なくとも1つの表面42を被覆し、および被覆される表面42に対して緊密に接着される。
【0037】
図9Cを参照すると、マスク48における、図9Bに見られるように孔40によって画定される空間に対して、薄膜堆積の手法によって、材料の薄膜14が堆積された。
【0038】
図9Dを参照すると、蒸着後に、マスクが除去されて、移植可能な材料46の少なくとも1つの表面42の全体にわたりパターン化される幾何的特徴部49を露わにする。
【0039】
前述のように、マスクにおける孔の形状は、幾何的特徴部に関して記載される、円形、正方形、長方形、三角形、平行線、および交線、またはそれらの任意の組み合わせを含む形状のいずれであることも出来るであろう。幾何的特徴部の製造に関する薄膜堆積の実施形態において、幾何的特徴部は、移植可能な材料の表面から高められる。幾何的特徴部の厚さは、マスク中の孔の厚さに基づき、その厚さは、約サブミクロンから約20マイクロメートルまでの範囲である。好ましくは、マスクにおける孔の厚さは、約サブミクロンから約3マイクロメートルまでの範囲である。
【0040】
本発明のもう1つの実施形態に従って、移植可能な医療装置のための基材は、酸化されて表面のチタンが二酸化チタンに変わるチタン、ニッケル−チタン合金、または他のチタンに富む合金から形成され、次いでパターンマスクで被覆され、そして高強度のUV照射に対して曝露される。二酸化チタン(TiO)がUV放射を吸収し、およびTiOバリア層を横断するUV透過を防止するためのUV阻害剤として様々な用途において使用されてきたことは、良く知られている。UV照射に対する曝露の際に、本来は疎水性かつ親油性の酸化チタンの層が両親媒性になることが発見されている。酸化チタン表面へのUV照射の効果は、一部の領域において表面上にTi3+イオンを残すTi−O結合の非対称的な開裂のために生じると考えられる。現在、これらの両親媒性の表面は、自己洗浄性の塗装および防曇ガラスのような種々の技術的用途で使用されている。これらの両親媒性の酸化チタンの層は、医療用途において効用があることが認識されている(非特許文献7参照;インターネット上のwww.isis.rl.ac.uk/isis2001/reports/11144.pdfで見出される)。
【0041】
本発明者は、UV照射された酸化チタンの両親媒性の状態は、パターン化される特徴部を移植可能な基材表面上に堆積させることに対する代替の方法として、有利に用いられる可能性があることを認識した。チタンまたはチタン合金で製作される移植可能な基材は、貫通する複数の開口部を有するパターンマスクでマスクされる。前述の実施形態と同様に、複数の開口部は、好ましくは、基材表面の全体にわたる内皮細胞の結合および増殖を促進するための親和性結合ドメインおよび細胞移動部位を画定するために選択されるサイズおよび特異な配列を有する。パターンマスクにおける複数の開口部のそれぞれの開口表面区域は、好ましくは、約10から75μmの間の範囲であり、およびの開口部の隣接する対は、約10から約75μmの距離が開口部間に存在するように離間された関係にあり、開口部間の距離は開口部のサイズに相当する。UV源と基材表面との間にパターンマスクを間置することによって、UV照射される領域のパターンが基材表面に与えられ、それによって照射される領域に存在する二酸化チタンを変性させ、および基材表面に親和性ドメインを形成する。
【0042】
図10Aを参照すると、加熱または当業者によって知られる同等のものによって酸化される、少なくとも1つの表面52および54を有するチタンまたはチタン合金製の移植可能な材料56の一部が示される。
【0043】
図10Bを参照すると、本発明に従って、全体にわたってパターン化される10μmから約75μmまで、および好ましくは約15μmから50μmまでに画定されるサイズのレーザー切断される孔40を有する機械加工されるマスク48が、移植可能な材料56の少なくとも1つの表面52を被覆し、および被覆される表面52に対して緊密に接着される。
【0044】
図10Cを参照すると、マスク48で被覆される移植可能な材料56は、次いで紫外線によって照光される。TiOは紫外線に対して感受性であるので、孔58内の化学組成はマスクによって被覆されている区域と異なる。図9Cに図示される幾何的特徴部とは対照的に、図10Cの幾何的特徴部59は、移植可能な材料の周囲表面に比べて高められていない。
【0045】
図10Dに関しては、紫外線照射後に、マスクが除去されて、紫外線照射によって形成される幾何的特徴部59を取り囲む表面52を露わにする。前述のように、マスク48における孔58の形状は、幾何的特徴部に関して記載される、円形、正方形、長方形、三角形、平行線および交線、およびそれらの組み合わせを含む任意の形状であることができ、従って、幾何的特徴部59も同様に、そのような形状をとる。
【実施例1】
【0046】
ニッケル−チタンのシートを加熱して、シートの表面に存在するチタンを酸化させた。機械加工された金属から製作されたパターンマスクをレーザードリル加工して、各パターンマスク上に単一直径の孔を備える、15μmから50μmまでの範囲の直径を有する孔のパターンを得た。単一のパターンマスクを、単一のニッケル−チタンシートの上をおおって配置し、およびその組立品を高強度の紫外線照射に対して曝露した。UV照射の後、照射されたニッケル−チタンシートを完全に内皮化される試験表面上に配置し、擬似的な生体内でのフロー条件下および静的なフロー条件下で、37℃で保持した。定性的観察を定期的に行い、そして内皮細胞がUV照射された親和性ドメインのパターンに結合し、および親和性ドメインのパターンを横断して増殖することによって、ニッケル−チタンシートを横断して移動し、結果的にニッケル−チタンシート上に内皮を完全に形成することを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】移植可能な材料の表面上に均一に分布される高められた幾何的特徴部を含む本発明の実施形態の斜視図である。
【図2】図1の線2−2に沿った断面図である。
【図3】移植可能な材料の表面上に均一に分布される化学的に定義される幾何的特徴部を含む本発明の実施形態の斜視図である。
【図4】図3の線4−4に沿った断面図である。
【図5】炭素被覆されたケイ素のような幾何的特徴部を含む本発明の実施形態を示す顕微鏡写真である。
【図6A】本発明の幾何的特徴部を持たない表面の上の細胞移動と本発明の特徴部を持つ表面の上の細胞移動との対比を示す顕微鏡写真である。
【図6B】本発明の幾何的特徴部を持たない表面の上の細胞移動と本発明の特徴部を持つ表面の上の細胞移動との対比を示す顕微鏡写真である。
【図6C】本発明の幾何的特徴部を持たない表面の上の細胞移動と本発明の特徴部を持つ表面の上の細胞移動との対比を示す顕微鏡写真である。
【図7】幾何的特徴部に近接する染色された焦点接着点を示す顕微鏡写真である。
【図8A】移動する細胞の多数の焦点接着点の形成、および本発明の幾何的特徴部に対するその付着を示す顕微鏡写真である。
【図8B】移動する細胞の多数の焦点接着点の形成、および本発明の幾何的特徴部に対するその付着を示す顕微鏡写真である。
【図9A】高められた幾何的特徴部を持つ本発明の移植可能な材料を作製するための工程を表す、本発明の実施形態の断面図である。
【図9B】高められた幾何的特徴部を持つ本発明の移植可能な材料を作製するための工程を表す、本発明の実施形態の断面図である。
【図9C】高められた幾何的特徴部を持つ本発明の移植可能な材料を作製するための工程を表す、本発明の実施形態の断面図である。
【図9D】高められた幾何的特徴部を持つ本発明の移植可能な材料を作製するための工程を表す、本発明の実施形態の断面図である。
【図10A】化学的に定義される幾何的特徴部を持つ本発明の移植可能な材料を作製するための工程を表す、本発明の実施形態の断面の略図である。
【図10B】化学的に定義される幾何的特徴部を持つ本発明の移植可能な材料を作製するための工程を表す、本発明の実施形態の断面の略図である。
【図10C】化学的に定義される幾何的特徴部を持つ本発明の移植可能な材料を作製するための工程を表す、本発明の実施形態の断面の略図である。
【図10D】化学的に定義される幾何的特徴部を持つ本発明の移植可能な材料を作製するための工程を表す、本発明の実施形態の断面の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植可能な生体適合性の材料であって、該材料は少なくとも1つの表面を含み、該少なくとも1つの表面上に特徴部のパターン化された配列を有し、該特徴部は、特徴部以外の該少なくとも1つの表面の領域とは異なる化学的、生理化学的および電気化学的活性の少なくとも1つを有することを特徴とする移植可能な生体適合性の材料。
【請求項2】
該異なる化学的、生理化学的または電気化学的特性が、疎水性、親水性および表面エネルギーの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の移植可能な生体適合性の材料。
【請求項3】
該特徴部のそれぞれが、該材料の該少なくとも1つの表面上に、0μmおよび3μmの間の厚さを有する表面要素をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の移植可能な生体適合性の材料。
【請求項4】
該表面要素のそれぞれが、該生体適合性の材料の光化学的に変性される領域をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の移植可能な生体適合性の材料。
【請求項5】
該光化学的に変性される領域のそれぞれが、酸化チタンをさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載の移植可能な生体適合性の材料。
【請求項6】
該表面要素のそれぞれが、該材料の該少なくとも1つの表面上に隆起された要素をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の移植可能な生体適合性の材料。
【請求項7】
該隆起された要素のそれぞれが、約0.1μmおよび約3μmの間の厚さを有することを特徴とする、請求項6に記載の移植可能な生体適合性の材料。
【請求項8】
該隆起された要素のそれぞれが、炭素およびニッケル−チタン合金からなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の移植可能な生体適合性の材料。
【請求項9】
該特徴部のそれぞれが、内皮細胞の親和性結合のための焦点接着点を含むことを特徴とする、請求項1に記載の移植可能な生体適合性の材料。
【請求項10】
該特徴部のそれぞれが、約10μmから約75μmの間の幅を有することを特徴とする、請求項1に記載の移植可能な生体適合性の材料。
【請求項11】
生体適合性の材料を含む医療装置に適する移植可能な材料であって、該材料の少なくとも1つの表面は、該少なくとも1つの表面上の所定のパターンに配列される複数の親和性結合ドメインをさらに含み、該複数の親和性結合ドメインは、親和性結合ドメイン以外の該少なくとも1つの表面の区域とは異なる化学的、生理化学的または電気化学的活性を有し、該複数の親和性結合ドメインのそれぞれは、内皮細胞表面のインテグリンクラスターを結合する特異性を有し、および該少なくとも1つの表面に沿って内皮細胞の移動および増殖を促進するのに適合する結合ドメイン間の間隔を有する、移植可能な材料。
【請求項12】
該異なる化学的、生理化学的または電気化学的な特性が、疎水性、親水性および表面エネルギーの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の移植可能な材料。
【請求項13】
親和性結合ドメインのそれぞれが、該材料の該少なくとも1つの表面上に、0μmおよび3μmの間の厚さを有する表面要素をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の移植可能な材料。
【請求項14】
該表面要素のそれぞれが、該生体適合性の材料の光化学的に変性される領域をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の移植可能な材料。
【請求項15】
該光化学的に変性される領域のそれぞれが、酸化チタンをさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載の移植可能な材料。
【請求項16】
該表面要素のそれぞれが、該材料の該少なくとも1つの表面上に隆起された要素をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の移植可能な材料。
【請求項17】
該隆起された要素のそれぞれが、約0.1μmおよび約3μmの間の厚さを有することを特徴とする、請求項16に記載の移植可能な材料。
【請求項18】
該隆起された要素のそれぞれが、炭素およびニッケル−チタン合金からなる群から選択されることを特徴とする、請求項16に記載の移植可能な材料。
【請求項19】
医療装置における使用に適する移植可能な材料を製造する方法であって:
a.生体内で組織または体液と接触することを意図される少なくとも1つの表面を有する生体適合性の材料を提供する工程と;
b.サイズおよび間隔が、該少なくとも1つの表面上に対して与えられる結合ドメインの所定の分布に相当する、開口部の画定されたパターンを有するマスクを提供する工程と;
c.該生体適合性の材料の該少なくとも1つの表面を、該マスクを通して処理する工程であって
i.該少なくとも1つの表面を光化学的に変性させるための光照射、または
ii.該少なくとも1つの表面上に対して、該少なくとも1つの表面の領域を化学的、生理化学的または電気化学的に変性させるために十分な厚さで材料を真空堆積させること
の少なくとも1つによって処理する工程と;
d.該移植可能な材料の該少なくとも1つの表面上に画定される複数の結合ドメインをもたらすために該マスクを除去する工程と
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【公表番号】特表2006−505307(P2006−505307A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539962(P2004−539962)
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/030383
【国際公開番号】WO2004/028347
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(504006054)アドヴァンスド バイオ プロスセティック サーフェシーズ リミテッド (11)
【Fターム(参考)】