説明

診断におけるTTKおよび癌における治療標的としてのTTK

【課題】TTKの発現レベルの検出による癌性細胞の同定方法、ならびに哺乳動物の癌におけるこれらの遺伝子の示差的な発現を利用した診断方法、予後方法、および治療方法を提供すること。
【解決手段】癌細胞の増殖を低減する方法であって:癌細胞と、該細胞中のチロシンスレオニンキナーゼ(TTK)ポリペプチド活性を低減するのに有効な量の薬剤とを接触させる工程、を包含し、ここで、該癌細胞におけるTTKポリペプチド活性の低減は、該細胞の増殖を低減する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明の分野は、疾患の診断および癌の処置ならびに抗癌剤の同定に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
有糸分裂チェックポイント遺伝子は、発達におけるそれらの役割および疾患(例えば、癌)におけるそれらの潜在的な役割について広く研究されるようになった。有糸分裂チェックポイントは、適切な細胞分裂を確実にするための多くの異なる機構を含む。例えば、紡錘体集合チェックポイントは、中期板での染色体の不適切な整列に応じて、後期の開始のタイミングを調節する。欠陥が検出される場合、紡錘体への正確な双極付着が達成されるまで、細胞周期のさらなる進行を停止するようシグナルが伝達される。出芽酵母において最初に同定された、いくつかの哺乳動物紡錘体チェックポイント関連タンパク質は、近年同定され、そして部分的に特徴付けられている。これらのタンパク質は、後期の開始前の有糸分裂の初期段階において、全ての活性なヒトセントロメア(ネオセントロメアを含む)と関連する。チェックポイントタンパク質複合体(BUB1、BUBR1、BUB3、MAD2)に関連するタンパク質、後期促進複合体(Tsg24、p55CDC)、および有糸分裂チェックポイント制御に関連する他のタンパク質(ERK1、3F3/2エピトープ、hZW10)は、活性なセントロメアのみと特異的に会合することが見出されており、このことは、活性なセントロメアのみが紡錘体チェックポイントに関与することを示唆する。Saffery Rら、Hum Genet.107:376−84(2000)。
【0003】
プロテインキナーゼであるチロシンスレオニンキナーゼ(TTK)は、セリン、スレオニン、およびチロシンヒドロキシアミノ酸をリン酸化する(Millsら、Biol.Chem.267:16000−6(1992))。TTKに最も緊密に関連するキナーゼとして、SPK1セリン、スレオニン、およびチロシンキナーゼ、Pim1、PBS2、およびCDC2セリン/スレオニンキナーゼ、ならびにTIKキナーゼが挙げられる(Millsら、J.Biol.Chem.267:16000−6(1992))。ヒトTTKのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、例えば、GenBank登録番号M86699にて提供される。TTKの発現は、休止細胞および低い増殖指数を有する組織において顕著に低減しているかまたは存在しない(Hoggら、Oncogene 9:89−96(1994))。TTK mRNAは、ヒト精巣、胸腺、骨髄、および多数の増殖細胞を含む他の組織で発現されるが、分裂細胞をほとんど含まないかまたは全く含まない組織においては検出されない。TTK発現は、いくつかの急激に増殖する細胞株(種々の癌細胞株を含む)において検出された。TTK発現はまた、悪性卵巣癌を有する2人の患者由来のサンプルおよび組織サンプルにおいて検出された(Millsら、前出;Schmandtら、J.Immunol.152:96−105(1994))。TTK発現は、細胞増殖と相関し、そして細胞周期の制御において役割を果たす(Hoggら、前出)。TTK mRNAおよびタンパク質の非常に低いレベルは、飢餓細胞において存在する。細胞が細胞周期に入るよう誘導される場合、TTK mRNA、タンパク質、およびキナーゼ活性のレベルは、細胞周期のG1/S期において増大し、G2/M期でピークに達する。TTK mRNAレベルおよびキナーゼ活性は、G1初期において急激に低下するが、タンパク質レベルは大部分が維持される。TTKは、S.cerevesiaeキナーゼmps1およびS.pombeタンパク質mph1のヒトホモログであり、これらは両方とも、細胞周期において、紡錘体集合のチェックポイントに関与し、これによって、TTKが紡錘体チェックポイント遺伝子であることが示唆される(例えば、Cahillら、Genomics 58:181−7(1999)を参照のこと)。
【0004】
有糸分裂チェックポイントの障害が、ヒト癌において検出されているが(例えば、このような障害は、ヒト肺癌細胞株の約40%に存在する)、MAD有糸分裂チェックポイント遺伝子およびBUB遺伝子ファミリーにおける変異は希である(Hruki Nら、Cancer Lett.162:201−205(2001);Mimori Kら、Oncol Rep.8:39−42(2001);Cahillら、前出)。従って、ヒト癌において役割を果たす有糸分裂チェックポイント遺伝子の同定に対する必要性が存在する。なぜならば、これらは、有益な診断指標および/または予後指標、ならびに治療標的として機能し得るからである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、TTKの発現レベルの検出による癌性細胞の同定方法、ならびに哺乳動物の癌におけるこれらの遺伝子の示差的な発現を利用した診断方法、予後方法、および治療方法を提供する。このような方法は、例えば、合理的な治療の基礎として、特定の治療に対して応答する被験体の能力を決定するのに有用であり得る。さらに、本発明は、これらの遺伝子が関与する癌におけるこれらの遺伝子の活性を調節する薬剤を同定するためのアッセイ、およびTTKの活性を阻害することにより腫瘍の増殖を阻害する方法を提供する。
【0006】
第1の実施形態において、本発明は、癌(例えば、肺、結腸、前立腺、または乳房の組織生検)を有する疑いのある被験体のサンプルにおいてTTKレベルを同定する方法を提供する。この方法は、サンプル中のTTKのレベルを定量する工程を包含する。サンプルにおけるTTKの増加したレベルの同定は、サンプル細胞における細胞周期のチェックポイントの障害の指標を提供する。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、悪性増殖または前悪性増殖の特徴を決定する方法を提供する。この方法は、増殖細胞におけるTTKのレベルを(定性的にかまたは定量的にかのいずれかで)決定する工程、ならびに癌組織および/または正常組織の種々の段階における既知のレベルとこのレベルとを比較する工程を包含する。例えば、特定の被験体の結腸癌の特徴を決定するために、癌のサンプルが取り出され得、癌におけるTTKのレベルが決定され得、そしてそのレベルが、正常組織および/または同一細胞型から得られた種々の段階の結腸癌におけるレベルと比較され得る。従って、サンプルにおいて同定されたTTKのレベルは、既知の組織および癌の特徴により決定される場合、悪性増殖または前悪性増殖の種々の特徴の指標であり得る。TTKのレベルは、他の単一サンプルにおけるレベルと直接的に比較され得るか、または複数のサンプルのデータから得られた標準と比較され得る。
【0008】
別の実施形態において、サンプルのTTKレベルは、悪性増殖または前悪性増殖を有する被験体に対する適切な治療介入を決定するための1つの指標として使用され得る。例えば、高度に増加したTTKレベルは、より積極的な治療の必要性の指標であり得る。なぜならば、それは、後期癌の指標であるからである。あるいは、TTK発現のレベルは、特定の薬剤、特に、有糸分裂チェックポイントを通じて癌に影響を及ぼす治療的介入に対する被験体の応答性の指標であり得る。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、TTKを発現する細胞と候補薬剤とを接触させ、そしてTTK活性に対するその薬剤の効果を評価することにより、腫瘍(特に、乳房腫瘍または結腸腫瘍)の増殖を阻害するための薬剤を同定する方法を特徴とする。
【0010】
従って、1つの局面において、本発明は、被験体において癌を診断する方法を特徴とする。この方法は、被験体から得られた試験サンプルにおいてTTKポリヌクレオチドまたはポリペプチドを検出し、その遺伝子産物の発現レベルを決定する工程;および試験サンプルにおけるTTKの発現レベルと、同一組織に対応する正常細胞における発現レベルとを比較する工程を包含する。この方法において、正常細胞における発現レベルから有意に増加した、試験サンプルにおけるTTKの発現レベルの検出は、この試験細胞が癌であることを示す。特定の実施形態において、癌は、卵巣癌以外の癌であり、結腸癌および乳癌を特に目的とする。
【0011】
別の局面において、本発明は、試験体において癌性疾患の予後を決定するための方法を特徴とする。この方法は、被験体由来の試験細胞においてTTKの発現を決定する工程;および試験細胞におけるTTK発現のレベルとコントロール細胞におけるTTK発現のレベルとを比較する工程を包含する。この方法において、コントロール細胞における発現レベルに対する試験細胞におけるTTKの発現レベルは、癌性疾患の予後の指標である。例えば、コントロール細胞が正常細胞である場合、正常細胞に対する試験細胞における増加したTTK発現のレベルは、被験体における癌性細胞の継続的な存在の指標であり、従って、試験細胞におけるTTK発現のレベルが、正常(非癌性)細胞において見出されるレベルに相当するレベルである場合より比較的乏しい予後の指標である。特定の実施形態において、卵巣癌以外の癌(特に、結腸および乳房癌)の進行を、特定の目的とする。
【0012】
別の局面において、本発明は、癌性細胞の増殖を阻害する方法を特徴とする。この方法は、TTK発現の阻害のためのアンチセンスポリヌクレオチドを細胞中に導入する工程を包含する。この方法において、TTK発現の阻害は、癌性細胞の複製を阻害する。
【0013】
さらに別の局面において、本発明は、被験体の腫瘍荷重を評価する方法を特徴とする。この方法は、増加したTTK発現を含む疑いのある被験体由来の試験サンプルにおけるTTK発現のレベルを検出する工程を包含する。この方法において、試験サンプルにおけるTTK発現のレベルの検出は、被験体における腫瘍荷重の指標であり、コントロールの非癌細胞に対する試験サンプルにおけるTTK発現の増加したレベルは、被験体における腫瘍の存在を示す。
【0014】
なお別の局面において、本発明は、抗TTK活性を有する薬剤を同定する方法を特徴とする。この方法は、増加したレベルのTTK発現を示す癌性細胞と候補薬剤とを接触させる工程;およびTTK活性に対するこの候補薬剤の効果を決定する工程を包含する。この方法において、TTK活性の低減は、その薬剤が抗TTK活性を有することを示す。特定の実施形態において、TTK活性は、TTK発現を検出することによるか、またはTTKの生物学的活性を検出することにより、検出される。
【0015】
なお別の局面において、本発明は、癌性細胞の増殖を阻害する候補薬剤を同定するためのアッセイを特徴とする。このアッセイは、TTKポリペプチドを発現する細胞と、候補薬剤とを接触させる工程;およびTTKポリペプチドの活性を検出し、候補薬剤の存在下での細胞におけるTTKポリペプチドの活性と、候補薬剤の非存在下での細胞におけるTTKポリペプチドの活性を比較する工程を包含する。このアッセイにおいて、候補薬剤の非存在下でのTTK活性に対する候補薬剤の存在下でのTTK活性の低減は、この候補薬剤がTTK活性を低減し、癌細胞の増殖を阻害することを示す。
上記に加えて、本発明は、以下を提供する:
(項目1)
癌細胞の増殖を低減する方法であって:
癌細胞と、該細胞中のチロシンスレオニンキナーゼ(TTK)ポリペプチド活性を低減するのに有効な量の薬剤とを接触させる工程、
を包含し、ここで、該癌細胞におけるTTKポリペプチド活性の低減は、該細胞の増殖を低減する、方法。
(項目2)
前記TTK活性の低減が、TTKポリペプチドレベルの低減の結果である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記薬剤が、TTKアンチセンスポリヌクレオチドである、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記TTKアンチセンスポリヌクレオチドが、ウイルスベースのベクターに含まれる、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記TTK活性の低減が、TTKポリヌクレオチドレベルの低減の結果である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記薬剤が、TTKに特異的に結合するモノクローナル抗体である、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記TTKポリペプチドが、配列番号14のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
癌細胞の増殖を低減する候補薬剤を同定するアッセイであって:
候補薬剤の存在下でTTKポリペプチド活性を検出する工程;および
候補薬剤の存在下での該TTKポリペプチド活性と、該候補薬剤の非存在下でのTTKポリペプチド活性とを比較する工程、
を包含し、ここで、該候補薬剤の非存在下でのTTK活性に対する該候補薬剤の存在下でのTTK活性の低減は、該候補薬剤が癌細胞の増殖を低減することを示す、アッセイ。
(項目9)
前記検出工程が、配列番号26のポリペプチドを基質として使用する、項目8に記載のアッセイ。
(項目10)
前記検出工程が、TTKリン酸化に感受性の配列番号26のフラグメントを基質として使用する、項目8に記載のアッセイ。
(項目11)
前記フラグメントが、配列番号27または28のポリペプチドを含む、項目10に記載のアッセイ。
(項目12)
前記ポリペプチドフラグメントがビオチン化されている、項目10に記載のアッセイ。
(項目13)
前記TTKポリペプチドが、バキュロウイルス系、細菌系、酵母系、および哺乳動物系からなる群より選択される系を用いた発現の産物である、項目8に記載のアッセイ。
(項目14)
前記TTKポリペプチドが、バキュロウイルス系を用いた発現の産物である、項目13に記載のアッセイ。
(項目15)
前記TTKポリペプチドが、配列番号14のアミノ酸配列を含む、項目8に記載の方法。
(項目16)
TTK活性を低減する薬剤を同定する方法であって、該方法は:
TTKをコードするポリヌクレオチドの増大した発現を示す癌細胞と、候補薬剤とを接触させる工程;および
TTKポリペプチド活性に対する該候補薬剤の効果を決定する工程、
を包含し、ここで、TTK活性の低減は、該薬剤がTTK活性を低減し、該癌細胞の増殖を阻害することを示す、方法。
(項目17)
前記TTK活性の低減が、TTKポリペプチドレベルの低減の結果である、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記TTK活性の低減が、TTK mRNAレベルの低減の結果である、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記候補薬剤が、TTKアンチセンスポリヌクレオチドである、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記TTKアンチセンスポリヌクレオチドが、ウイルスベースのベクターに含まれる、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記癌細胞が、乳癌細胞である、項目16に記載の方法。
(項目22)
前記癌細胞が、結腸癌細胞である、項目16に記載の方法。
(項目23)
TTKポリペプチドが、配列番号14のアミノ酸配列を含む、項目16に記載の方法。
(項目24)
TTK活性が、TTKをコードするポリヌクレオチドの発現を検出することにより検出される、項目18に記載の方法。
(項目25)
被験体における卵巣癌以外の癌を検出する方法であって、該方法は:
癌を有する疑いのある被験体から得られた試験細胞におけるTTKポリペプチドの発現レベルを検出する工程;および
該試験細胞におけるTTKポリペプチドの発現レベルと、同一の組織型の正常な非癌細胞における発現レベルとを比較する工程、
を包含し、該正常な非癌細胞における発現レベルに対して有意に増加した、該試験細胞におけるTTKポリペプチドの発現レベルの検出は、該被験体が卵巣癌以外の癌を有することを示す、方法。
(項目26)
前記試験細胞が、結腸細胞である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記試験細胞が、乳房細胞である、項目25に記載の方法。
(項目28)
被験体における卵巣癌以外の癌を検出する方法であって、該方法は:
癌を有する疑いのある被験体から得られた試験細胞におけるTTKポリヌクレオチドの発現レベルを検出する工程;および
該試験細胞におけるTTKポリヌクレオチドの発現レベルと、同一の組織型の正常な非癌細胞における発現レベルとを比較する工程、
を包含し、該正常な非癌細胞における発現レベルに対して有意に増加した、該試験細胞におけるTTKポリヌクレオチドの発現レベルの検出は、該被験体が卵巣癌以外の癌を有することを示す、方法。
(項目29)
前記試験細胞が、結腸細胞である、項目29に記載の方法。
(項目30)
前記試験細胞が、乳房細胞である、項目29に記載の方法。
(項目31)
被験体における卵巣癌以外の癌性疾患の予後を評価する方法であって、該方法は:
被験体の試験癌細胞におけるTTKをコードするポリヌクレオチドの発現を検出する工程、および
該試験癌細胞におけるTTKをコードするポリヌクレオチドの発現レベルと、コントロールの非癌細胞における該ポリヌクレオチドの発現レベルとを比較する工程、
を包含し、ここで、該コントロールの非癌細胞における発現レベルに対する該試験癌細胞におけるTTKの該発現レベルが、該癌性疾患の予後の指標である、方法。
(項目32)
前記発現を検出する工程が、TTKをコードする転写物の検出による、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記試験細胞が、結腸細胞である、項目31に記載の方法。
(項目34)
前記試験細胞が、乳房細胞である、項目31に記載の方法。
【0016】
本発明の主な目的は、例えば、細胞増殖を阻害するために、例えば、標的細胞においてTTK活性を調節する(通常は、低減する)候補薬剤を同定することにより、治療標的としてTTKを利用することである。
【0017】
本発明の目的は、特に、標的腫瘍細胞におけるTTK活性の阻害を通じて、有糸分裂チェックポイント遺伝子産物の活性の阻害により腫瘍増殖を阻害することである。
【0018】
本発明の別の目的は、合理的な癌治療を容易にすることである。例えば、被験体における癌が、増加したTTK活性レベルと関連する場合、治療剤は、TTK活性レベルの低減を促進するよう選択される。
【0019】
本発明の別の目的は、癌におけるTTK発現のレベルに基づき臨床試験を設計すること、より詳細には、他の患者の属性と組み合わせてTTK発現に基づき臨床試験を設計することである。
【0020】
本発明の別の目的は、TTKの発現と、選択された疾患進行測定における有効な変化を生じる介入の寄与との関連を同定することである。
【0021】
本発明の利点は、悪性増殖または前悪性増殖におけるTTKの発現に基づき、疾患の進行を投射する能力である。
【0022】
本発明の別の利点は、客観的指標に基づき、癌性疾患の介入のためのより体系的なアプローチを可能にすることである。
【0023】
本発明のこれらおよび他の目的、利点、および特徴は、以下により十分に記載されるような本発明の詳細を読むことによって当業者に明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明を記載する前に、本発明は、記載される特定の方法論に限定されず、当然、それ自体が変化し得ることが理解されるべきである。本明細書中で使用する用語は特定の実施形態を記載する目的のためのみであり、限定することを意図しないこともまた理解されるされるべきである。なぜならば、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるからである。
【0025】
一定範囲の値が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の各々の中間の値(文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、下限の単位の1/10まで)もまた詳細に開示されていることが理解される。任意の言及された値または言及された範囲の中間の値と任意の他の言及された値またはその言及された範囲の中間の値との間の各々のより小さい範囲は、本発明に含まれる。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して含まれ得るかまたはその範囲において排除され得、そして限界のいずれかが、より小さい範囲に含まれるか、いずれも含まれないか、または両方が含まれる場合、各々の範囲もまた、本発明に含まれ、言及された範囲における任意の具体的に排除される限界の対象となる。言及された範囲が限界の1つまたは両方を含む場合、これらの含まれる限界のいずれかまたは両方を排除する範囲がまた、本発明に含まれる。
【0026】
他にそうでないことが規定されない限り、本明細書中で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者により一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似および等価な方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、ここには、好ましい方法および物質を記載する。本明細書中で言及される全ての刊行物は、刊行物の引用する方法および/または材料と組み合わせて方法および/または材料を開示および記載するために、本明細書中に参考として援用される。
【0027】
本明細書中で使用する場合、および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数の言及を含む。従って、例えば、「細胞(a cell)」に対する言及は、複数のこのような細胞を含み、そして「薬剤(the agent)」に対する言及は、1つ以上の薬剤および当該分野で公知のそれらの等価物などに対する言及を含む。
【0028】
本明細書中で議論される刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示についてのみに提供される。これらは本明細書中で、本発明が、先行発明によるこのような刊行物の日付を早める資格がないことの承認として解釈されない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の公開日と異なり得、別個に確認する必要があり得る。
【0029】
(定義)
本明細書中に交換可能に使用される用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態をいう。従って、これらの用語は、一本鎖、二本鎖または多重鎖の、DNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA−RNAハイブリッド、あるいはプリン塩基およびピリミジン塩基または他の天然のヌクレオチド塩基、化学的もしくは生化学的に改変された非天然のヌクレオチド塩基、または誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーを含むが、これらに限定されない。これらの用語は、さらに、イントロン配列を含むmRNAまたはcDNAを含むが、これらに限定されない(例えば、Niwaら(1999)Cell 99(7):691−702を参照のこと)。ポリヌクレオチドの骨格は、糖およびリン酸基を含み得る(代表的に、RNAまたはDNA中で見出され得るように)か、あるいは改変もしくは置換された糖または改変もしくは置換されたリン酸基を含み得る。あるいは、ポリヌクレオチドの骨格は、ホスホラミダイトのような合成サブユニットのポリマーを含み得、従って、オリゴデオキシヌクレオシドホスホラミデートまたは混合されたホスホラミデート−ホスホジエステルオリゴマーであり得る。Peyrottesら(1996)Nucl.Acids Res.24:1841−1848;Chaturvediら(1996)Nucl.Acids Res.24:2318−2323。ポリヌクレオチドは、改変ヌクレオチド(例えば、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログ)、ウラシル、他の糖、および連結基(例えば、フルオロリボースおよびチオエート)、およびヌクレオチド分枝を含み得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドはさらに、例えば、標識成分での結合体化によって、重合後に改変され得る。この定義中に含まれる他の型の改変は、キャップ、1つ以上の天然に存在するヌクレオチドのアナログでの置換、およびポリヌクレオチドをタンパク質、金属イオン、標識成分、他のポリヌクレオチド、または固体支持体に結合させるための手段の導入である。
【0030】
本明細書中に交換可能に使用される用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態をいい、これには、コードアミノ酸および非コードアミノ酸、化学的もしくは生化学的に改変されたかまたは誘導体化されたアミノ酸、ならびに改変されたペプチド骨格を有するポリペプチドが挙げられ得る。この用語は、融合タンパク質(異種アミノ酸配列との融合タンパク質、異種リーダー配列および同種リーダー配列との融合物(N末端メチオニン残基有りまたは無し)が挙げられるが、これらに限定されない);免疫学的にタグ化されたタンパク質;などを含む。
【0031】
本明細書中に使用される場合、「TTKポリヌクレオチド」および「TTKポリペプチド」は、ヒトTTK(GenBank登録番号M86699を有する;配列番号13および14)、またはS.cerevesiaeキナーゼmps1遺伝子およびその遺伝子産物(配列番号29および30)、S.pombeタンパク質mph1遺伝子およびその遺伝子産物(配列番号31および32)、ならびにTTKに関連する他の遺伝子およびその遺伝子産物(例えば、SPK1(配列番号15および16)、Pim1(配列番号17および18)、PBS2(配列番号19および20)、CDC2(配列番号21および22)、およびTIK(配列番号23および24))に対して、少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%(約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはより上であり得る)、配列類似性または配列同一性を有するポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含む。配列類似性および配列同一性は、参照配列に基づいて計算され、この参照配列は、保存されたモチーフ、コード領域、隣接領域などの、より大きい配列のサブセットであり得る。参照配列は、通常、少なくとも約18nt長であり、より通常では少なくとも約30nt長であり、そして比較される完全な配列まで延び得る。一般的に、配列同一性パーセントは、問い合わせ配列と試験配列との間の残基(例えば、ヌクレオチド残基またはアミノ酸残基)の一致した数を計数し、そして最も強いアラインメント領域に見出される個々の配列の残基の数で一致の総数を除算することによって、計算される。従って、11残基の問い合わせ配列のうちの10残基が、試験配列と一致する場合、上記の同一性パーセントは、10割る11であり、すなわち、約90.9%である。コンピューターに基づく配列分析のアルゴリズム(例えば、BLAST(例えば、Altschulら、J.Mol.Biol.,215:403−10(1990)を参照のこと)、特に、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)中で実行されるようなSmith−Waterman相同性検索アルゴリズム)は、当該分野で公知である。本発明の目的のために、同一性パーセントを計算する好ましい方法は、以下を使用するSmith−Watermanアルゴリズムである。全体のDNA配列の同一性は、以下の検索パラメーター(ギャップオープンペナルティー、12;およびギャップエクステンションペナルティー、1)を用いるアフィン(affine)ギャップ検索を用いるMPSRCHプログラム(Oxford Molecular)中で実行されるようなSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される場合、65%よりも高くなければならない。ヒトTTK cDNAは、配列番号13のポリヌクレオチド配列によって表され、そしてヒトTTKポリペプチドは、配列番号14の配列によって表される。
【0032】
「アンチセンスポリヌクレオチド」または「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、本明細書中において交換可能に使用され、所定のポリヌクレオチド配列(例えば、TTKをコードするポリヌクレオチド配列)の転写または翻訳と関連するポリヌクレオチド配列(例えば、TTKをコードするポリヌクレオチドのプロモーター)を含む、所定のポリヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有する未改変の核酸または改変された核酸を意味し、ここで、このアンチセンスポリヌクレオチドは、TTKをコードするポリヌクレオチド配列にハイブリダイズし得る。特に関心があるのは、インビトロまたはインビボのいずれかでTTKをコードするポリヌクレオチドの転写および/または翻訳を阻害し得るアンチセンスポリヌクレオチドである。
【0033】
用語「cDNA」は、本明細書中に使用される場合、ネイティブな成熟mRNA種中で見出される配列エレメントの配置を共有する全ての核酸を含むことが意図され、ここで、配列エレメントは、エキソン(例えば、コードされるポリペプチドのオープンリーディングフレームをコードする配列)、ならびに3’非コード領域および5’非コード領域である。通常、mRNA種は、連続的なエキソンを有し、介在するイントロンは、核RNAスプライシングによって除去されて、TTKをコードする連続したオープンリーディングフレームを生成する。
【0034】
「改変体」は、「改変体ポリペプチド」の文脈において使用される場合、参照アミノ酸配列に対して1つ以上のアミノ酸が変更されたアミノ酸配列をいう。改変体は、置換されたアミノ酸が類似の構造特徴または化学特徴を有する「保存的」変化(例えば、イソロイシンでのロイシンの置換)を有し得る。より稀ではあるが、改変体は、「非保存的」変化(例えば、トリプトファンでのグリシンの置換)を有し得る。類似の重要でないバリエーションとしてはまた、アミノ酸欠失またはアミノ酸挿入、またはこれらの両方を含み得る。生物学的活性または免疫学的活性を破壊することなく、どのアミノ酸残基をいくつ置換、挿入、または欠失し得るかの決定における手引きは、当該分野で周知のコンピュータープログラム(例えば、DNAStarソフトウェア)を用いて見出され得る。
【0035】
「欠失」は、1つ以上のアミノ酸残基またはヌクレオチド残基が、それぞれ、参照アミノ酸配列または参照ヌクレオチド配列と比較した場合に存在していない、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列のいずれかにおける変化として規定される。欠失は、任意の長さの欠失であり得るが、好ましくは、約50、20、15、10、5、もしくは3アミノ酸長、または約50、20、15、10、5、もしくは3ヌクレオチド長である。
【0036】
「挿入」または「付加」は、参照アミノ酸配列または参照ヌクレオチド配列と比較した場合に、それぞれ、1つ以上のアミノ酸残基またはヌクレオチド残基の付加を生じた、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列中の変化である。挿入または付加は、任意の長さの挿入または付加であり得るが、好ましくは、約50、20、15、10、5、もしくは3アミノ酸長、または約50、20、15、10、5、もしくは3ヌクレオチド長である。
【0037】
「置換」は、参照アミノ酸配列または参照ヌクレオチド配列と比較した場合に、それぞれ、異なるアミノ酸または異なるヌクレオチドによる1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドの置換から生じる。置換は、任意の長さの置換であり得るが、好ましくは、約50、20、15、10、5、もしくは3アミノ酸長、または約50、20、15、10、5、もしくは3ヌクレオチド長である。
【0038】
用語「単一ヌクレオチド多型」および「SNP」は、参照配列に対する、1塩基変化の多型をいう。
【0039】
用語「生物学的に活性な」は、天然に存在する遺伝子産物(例えば、タンパク質)の構造機能、調節機能、または生化学機能を有する、遺伝産物(通常、ポリペプチド)をいう。「免疫学的に活性な」は、適切な動物または細胞中で特定の免疫応答を誘発し、そして特異的抗体に結合する、天然のポリペプチド、組換えポリペプチド、もしくは合成ポリペプチド、またはこれらの任意のオリゴペプチドの能力を規定する。
【0040】
用語「誘導体」は、本明細書中に使用される場合、参照核酸配列または参照アミノ酸配列に対する、核酸配列またはアミノ酸配列の化学改変をいう。例示的なこのような改変は、アルキル基、アシル基、またはアミノ基による水素の置換である。核酸誘導体は、通常、参照核酸(例えば、「親」分子)によってコードされるポリペプチドの重要な生物学的特徴を保持するポリペプチドをコードする。
【0041】
本明細書中に使用される場合、用語「単離された」は、その化合物が天然に存在する環境と異なる環境中に存在する目的の化合物(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのいずれか)を記載することを意味する。「単離された」は、目的の化合物を実質的に富むサンプル内にある化合物、および/または目的の化合物が部分的もしくは実質的に精製されているサンプル内にある化合物を含むことを意味する。
【0042】
本明細書中に使用される場合、用語「実質的に精製された」は、その天然の環境から除かれ、そして天然に会合する他の成分を少なくとも60%含まないか、好ましくは75%含まないか、最も好ましくは90%含まない、化合物(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのいずれか)をいう。
【0043】
「ストリンジェンシー」は、代表的に、Tm−5℃(プローブまたは抗体のTmの5℃下)からTmの約20℃〜25℃下の範囲で生じる。当業者によって理解されるように、ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、同一のポリヌクレオチド配列を同定もしくは検出するため、または類似するポリヌクレオチド配列もしくは関連するポリヌクレオチド配列を同定もしくは検出するために使用され得る。
【0044】
用語「ハイブリダイゼーション」は、本明細書中に使用される場合、「核酸の鎖が塩基対形成を介して相補鎖と連結する任意のプロセス」を含む(Coombs,Dictionary of Biotechnology,Stockton Press,New
York NY(1994))。ポリメラーゼ連鎖反応技術において実行されるような増幅は、Dieffenbachら、PCR Primer,a Laboratory
Manual,Cold Spring Harbor Press,Plainview NY(1995)に記載される。
【0045】
用語「形質転換」は、本明細書中に使用される場合、新規DNA(すなわち、その細胞に対して外因性のDNA)の取り込みに続いて細胞に誘導される、永久的な遺伝子変化または一過性遺伝子変化をいう。遺伝子変化は、新規DNAの宿主細胞ゲノムへの取り込みによってか、またはエピソームエレメントとしての新規DNAの一過性もしくは安定な維持のいずれかによって、達成され得る。細胞が哺乳動物細胞である場合、永久的な遺伝子変化は、一般的に、細胞のゲノムへのDNAの取り込みによって達成される。
【0046】
用語「構築物」は、本明細書中に使用される場合、特定のヌクレオチド配列の発現のために作製された組換え核酸(一般的に、組換えDNA)か、または他の組換えヌクレオチド配列の構築において使用される組換え核酸(一般的に、組換えDNA)をいう。
【0047】
本明細書中に使用される場合、用語「差示的に発現される」は、一般的に、参照細胞におけるレベルと有意に異なるレベルで試験細胞において発現されるポリヌクレオチドをいい、例えば、mRNAは、非癌性の同じ型の細胞と比較された場合に、癌性細胞において、少なくとも約25%、少なくとも約50%〜約75%、少なくとも約90%増加または低下したレベルで、一般的に、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、もしくは少なくとも約50倍またはそれより上の倍率の増加または低下したレベルで見出される。比較は、例えば、インサイチュハイブリダイゼーションまたはその組織の細胞型間でのある程度の識別を可能にする別のアッセイ方法を使用する場合、2つの組織間でなされ得る。比較はまた、その組織の供給源から取り出された細胞間でなされ得る。「差示的な発現」は、例えば、正常細胞と新生物性腫瘍細胞との間、および/または異なる腫瘍発達事象をうけた腫瘍細胞間での、遺伝子の時間的な発現パターンおよび/または細胞発現パターンにおける定量的な差異および定性的な差異の両方をいう。
【0048】
用語「対応する」または「表す」は、例えば、句「差示的に発現された遺伝子に対応するポリヌクレオチド」において使用される場合、所定のポリヌクレオチドと、そのポリヌクレオチド配列が由来する遺伝子(例えば、その遺伝子のコード領域に由来するポリヌクレオチド、その遺伝子のスプライス改変体、エキソンなど)またはそのポリヌクレオチドがストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子との間の関係をいうために使用される。
【0049】
「差示的に発現されたポリヌクレオチド」は、本明細書中に使用される場合、差示的に発現された遺伝子を表す配列もしくは差示的に発現された遺伝子に対応する配列を含む核酸分子(RNAまたはDNA)をいい、例えば、差示的に発現されたポリヌクレオチドは、差示的に発現された遺伝子を独特に同定する配列(例えば、遺伝子産物をコードするオープンリーディングフレーム;非コード配列)を含み、その結果、サンプル中でのこの差示的に発現されたポリヌクレオチドの検出は、サンプル中の差示的に発現された遺伝子の存在と関連付けられる。「差示的に発現されたポリヌクレオチド」はまた、開示されたポリヌクレオチドのフラグメント、例えば、生物学的活性を保持するフラグメント、および開示されたポリヌクレオチドに相同性の核酸、実質的に類似する核酸、または実質的に同一な核酸(例えば、約90%の配列同一性を有する)を含むことを意味する。
【0050】
「診断」は、本明細書中に使用される場合、一般的に、疾患または障害に対する被験体の感受性の決定、被験体が疾患または障害に現在罹患しているか否かに関する決定、疾患または障害に罹患した被験体の予後(例えば、前転移性または転移性の癌性状態の同定、癌の段階の同定、または治療に対する癌の応答性の同定)、および治療(例えば、被験体の状態をモニタリングして、治療の効果または効力に関する情報を提供する)を含む。
【0051】
本明細書中に使用される場合、用語「癌と関連するポリペプチド」(例えば、結腸癌と関連するポリペプチド)は、同じ型の正常細胞と比較して、癌細胞中で相対的に高いレベルまたは低いレベルで存在するポリペプチドをいう。
【0052】
用語「生物学的サンプル」は、生物から得られた種々のサンプル型を含み、そして診断アッセイまたはモニタリングアッセイにおいて使用され得る。この用語は、血液および生物学的な起源物の他の液体サンプル、固体組織サンプル(例えば、生検標本または組織培養物もしくは組織培養物由来の細胞、およびこれらの子孫)を含む。この用語は、それらの調達後に任意の方法(例えば、試薬での処理、可溶化、または特定の成分の富化などによる)で操作されたサンプルを含む。この用語は、臨床サンプルを含み、そしてまた、細胞培養物中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生物学的流体、および組織サンプルを含む。
【0053】
用語「処置(treatment)」、「処置する(treating)」、「処置する(treat)」などは、一般的に、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを言うために本明細書中に使用される。この効果は、疾患またはその徴候を完全もしくは部分的に回避することに関して予防的であり得、そして/または疾患および/もしくはその疾患を原因とする有害な効果に対する部分的もしくは完全な安定化もしくは治癒に関して治療的であり得る。「処置」は、本明細書中に使用される場合、哺乳動物(特に、ヒト)における疾患の任意の処置を含み、そして(a)疾患または徴候に罹患しやすくあり得るが、それらを有するとしては診断されていない被験体中で、その疾患または症状が生じるのを予防すること;(b)疾患の徴候を阻害すること、すなわち、その発達を休止させること;または疾患の徴候を軽減すること、すなわち、その疾患または徴候の退行を引き起こすこと、を含む。従って、「癌の処置」は、細胞増殖の阻害、転移の阻害などのうちの1つ以上を含む。
【0054】
用語「個体」、「被験体」、「宿主」、および「患者」は、本明細書中において交換可能に使用され、そして診断、処置、または治療が所望される任意の哺乳動物被験体(特に、ヒト)をいう。他の被験体としては、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマなどを含み得る。
【0055】
句「特異的結合対」は、本明細書中に使用される場合、互いに特別な特異性を有し、そしてストリンジェントな条件下で他の分子よりも優先して互いに結合する、特異的結合メンバーおよび結合パートナーを含む。特異的結合対の例は、抗原と抗体、分子とレセプター、および相補的ヌクレオチド配列である。他の結合対の例は、本開示を読めば、当業者に明らかである。さらに、用語「特異的結合対」はまた、その特異的結合メンバーおよび結合パートナーのいずれかまたは両方が、より大きな分子の一部を構成する場合、適用可能である。特異的結合対が核酸配列である実施形態において、これらは、好ましくは10ヌクレオチド長〜200ヌクレオチド長の間であり、より好ましくは15ヌクレオチド長より大きく100ヌクレオチド長までである。
【0056】
「抗体」は、抗原に結合し得る免疫グロブリンタンパク質を意味する。抗体は、本明細書中に使用される場合、抗体全体ならびに目的のエピトープ、抗原または抗原性フラグメントに結合し得る任意の抗体フラグメント(例えば、F(ab’)、Fab’、Fab、Fv)を含むことを意味する。
【0057】
本発明の抗体は、目的のタンパク質(例えば、ヒトTTKタンパク質)に免疫反応性であるかもしくは免疫特異的であり、ゆえに、その目的のタンパク質に特異的かつ選択的に結合する。ヒトTTKに免疫反応性および免疫特異性である抗体が好ましい。ヒトTTKに対する抗体は、好ましくは、免疫特異的であり、すなわち関連する物質と実質的に交差反応しないが、この抗体は、種間を通してTTKホモログを認識し得る。用語「抗体」は、全ての型の抗体(例えば、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体)を含む。
【0058】
「特異的に結合する」は、特定のポリペプチド(例えば、TTKタンパク質のエピトープ)に対する抗体の高いアビディティおよび/または高い親和性結合を意味する。その特異的ポリペプチド上のそのエピトープに対する抗体の結合は、任意の他のエピトープ(特に、その目的の特定のポリペプチドと関連する分子中またはその目的の特定のポリペプチドと同じサンプル中に存在し得る他のエピトープ)に対するその同じ抗体の結合よりも強い。目的のポリペプチドに特異的に結合する抗体は、弱いが検出可能なレベルで(例えば、目的のポリペプチドに対して示される結合の10%以下)、他のポリペプチドに結合し得る。このような弱い結合、すなわちバックグラウンドの結合は、例えば、適切なコントロールの使用によって、目的の化合物またはポリペプチドに対する特異的抗体結合から容易に認識される。
【0059】
用語「癌」、「新生物」、「腫瘍」などは、本明細書中において交換可能に使用され、相対的に自律的な増殖を示し、その結果、細胞増殖制御の重大な損失によって特徴付けられる異常な増殖表現性を示す細胞をいう。一般的に、本出願における検出または処置のための目的の細胞は、前悪性(例えば、良性過形成)細胞、悪性細胞、転移性細胞、および非転移性細胞を含む。
【0060】
「TTK活性」は、本明細書中に使用される場合、レシピエント基質のリン酸化におけるTTKポリペプチドの活性をいう。
【0061】
「TTK活性の調節」は、本明細書中に使用される場合、例えば、TTKポリペプチドと薬剤との相互作用(例えば、TTKのリン酸化活性におけるドナー分子またはレシピエント(アクセプター)分子とのTTKポリペプチド相互作用を妨害するような、阻害剤の可逆的または不可逆的な結合)、TTK転写および/またはTTK翻訳の阻害(例えば、TTK遺伝子もしくはTTK転写物とのアンチセンス相互作用を介して、TTK発現を促進する転写因子の調節を介して)などの結果であり得る、TTK活性における増加または低減をいう。TTK活性の低下を生じるTTK活性の調節は、本発明において特に興味がある。この文脈において、TTK活性は、阻害剤によって、因子の非存在下におけるTTK活性に対して少なくとも10%、25%、50%、75%、85%、90%、そして100%まで低下され得る。TTK活性は、酵素活性をアッセイすることによって、TTKポリペプチドレベルを評価することによって、またはTTK転写レベルを評価することによって、評価され得る。TTK活性の比較はまた、標準TTK活性(例えば、正常細胞と関連するした阻害剤もしくはアゴニストの非存在下におけるTTK活性のレベル、選択された組織型の癌性細胞のTTK活性のレベルなど)に対して、試験サンプルにおいて評価されたTTK活性(定量的または定性的のいずれか)を比較することによって達成され得る。
【0062】
(全体像)
ヒトTTKは、混合された特異的(tyr/thr)キナーゼの活性を示す857アミノ酸タンパク質をコードする有糸分裂チェックポイント遺伝子である。TTKは、急速に増殖する組織(例えば、精巣および胸腺)中で発現される。例えば、Mills GBら、J Biol Chem.267:16000−6(1992)を参照のこと。本発明は、TTKが、マイクロアレイ分析によって検出されたように、正常結腸細胞と比較して、結腸腫瘍細胞中で差示的に発現されるという知見に基づく。差示的な発現は、種々の形態の癌に由来する細胞株において確認され、このことは、より一般的な機構としての癌におけるTTKの関与を示す。さらに、TTKメッセージを「ノックアウト」するためにアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたTTK機能の破壊は、増殖を低減させ、足場非依存的増殖を阻害し、そして癌細胞株(転移性乳癌細胞株(MDA−MB−213)および結腸直腸癌腫細胞株(SW620)を含む)のアポトーシスを誘導した。TTKは、TTKが過剰発現される癌における化学療法のための治療標的であり得ることを、これらのデータは示す。
【0063】
TTKと癌との関連の同定、およびTTK活性の阻害(例えば、TTK発現を低下させることによる)の確認は、例えば、患者の癌(特に、TTKの活性を低下させることによる処置を受け易い癌)の診断における使用のための本発明の材料および方法(例えば、本明細書中に開示されそして考察される)に対する基礎として作用する。本発明はまた、適切な治療的処置および/または予防的処置の計画および選択を提供し、最も有益であるようなものを標的化することによる処置の合理化を可能にする。本発明はまた、遺伝子産物の産生を阻害すること(例えば、転写および/または翻訳のレベルを低下すること)によって、TTK活性を低下するによって(例えば、TTK遺伝子産物の産生を(例えば、転写または翻訳のレベルで)低下することによって、および/または1つ以上のTTKキナーゼ活性を低下することによって)、異常なTTKレベル(例えば、TTKの過剰発現または過剰産生と関連する)と関連する癌の処置を提供する。
【0064】
本発明の種々の局面は、ここにより詳細に記載される。
【0065】
(診断方法)
1つの局面において、本発明は、TTK活性が、同じ細胞型の正常細胞よりも、癌性細胞中で(特に、結腸癌および乳癌中で)より高いレベルで存在することの発見に基づく。この発見は、癌性細胞の同定、ならびにTTKの活性を阻害することによる(例えば、転写レベルもしくは翻訳レベルまたは両方のレベルでTTK発現を阻害することによってか、TTK活性を阻害することなどによる)治療を受け易い腫瘍の同定に対する基礎として作用する。
【0066】
TTK遺伝子産物(例えば、TTKをコードするmRNA、またはTTKポリペプチド)は、発癌経路(例えば、非癌性組織から癌性組織に分化するための経路)に沿った最初期の変化を検出するため、ならびに/または種々の治療および予防的介入の効率をモニターするための、マーカーとして(例えば、体液(血液など)または組織中で)特に興味があるものである。例えば、同じ型の正常細胞または正常組織と比較した、相対的に増加したTTK発現レベルは、より弱い予後を示し得、ゆえに、患者に対するより積極的な治療(例えば、化学治療または放射線治療)を保証し、この逆も同様である。患者における処置および結果に関する代理腫瘍(surrogate tumor)特異的な特徴の関連は、腫瘍の分子プロフィールに基づくあつらえられた(tailored)治療の設計を可能にする予後の指示物を規定し得る。これらの治療としては、抗体標的化、アンタゴニスト(例えば、低分子)および遺伝子治療が挙げられる。TTK発現を決定すること、ならびに患者のプロフィールと正常組織および変形の疾患における既知の発現との比較は、処置の特異性および患者の快適なレベルの両方に関して、患者のための最良な可能な処置の決定を可能にする。代理腫瘍マーカー(例えば、ポリヌクレオチド発現)をまた使用して、異なる形態の癌および異なる疾患状態の癌をより良く分類し、ゆえに、診断および処置し得る。TTK発現レベルの同定から利益を受け得る腫瘍学において広範に使用される2つの分類は、癌性障害の段階わけおよび癌性組織の性質の等級わけである。
【0067】
TTKポリヌクレオチドならびにそれらのコードされる遺伝子産物は、癌を有するかまたは癌に影響され易い患者をモニターするのに有用であり得、それらが顕著な形態学的レベルで検出可能になる前に、分子レベルで可能性のある悪性事象を検出する。さらに、TTK遺伝子産物の検出は、治療測定として有用であり得、例えば、治療前、治療間、および治療後に、患者中の腫瘍負荷量を評価するために、ポリヌクレオチドもしくはそれによってコードされる遺伝子産物を用いることによって、治療の有効性を評価する。
【0068】
さらに、ある型の癌において差示的に発現され、ゆえにその癌に対して重要である遺伝子に対応するとして同定されたポリヌクレオチドはまた、例えば、ポリヌクレオチドが、種々の癌型にわたって差示的に発現される遺伝子を表す場合、他の型の癌の発生についての含意または他の型の癌の発生の危険性についての含意を有し得る。従って、例えば、転移性結腸癌に対する臨床的な含意を有する遺伝子に対応するポリヌクレオチドの発現はまた、胃癌または子宮内膜癌に対する臨床的な含意を有し得る。
【0069】
TTKの酵素活性、TTKポリペプチドもしくはTTKをコードするポリヌクレオチドの発現レベルに基づいて、診断、予後、危険の評価または腫瘍負荷量の測定を行う場合、活性レベルまたは発現レベルは、適切な癌性コントロールサンプルまたは非癌性コントロールサンプルに対して比較され得る。例えばTTK活性が、同じ組織型の正常非癌性細胞に対して、25%、50%、75%、90%、そして100%まで増加した場合、あるいは5倍、10倍、50倍、または100倍より高い倍率で増加した場合、癌の診断がなさ得る。
【0070】
例えば、異なる悪性腫瘍ポテンシャルの癌細胞間(例えば、非悪性腫瘍細胞 対 悪性腫瘍のポテンシャルが高い細胞)の、非癌細胞に対して癌性細胞中で差示的に発現される他の遺伝子産物もまた、試験細胞における差示的発現についてTTKに加えてアッセイされ得る。このような例示的な遺伝子産物としては、MAPKAPキナーゼ2(配列番号33および34)、MARCKS(配列番号35および36)および/またはIGF2(配列番号37および38)が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0071】
(病期分類) 病期分類は、癌性状態が患者においてどの程度進行したかを記載するために医師により使用されるプロセスである。病期分類は、その医師が、予後を決定すること、処置を計画すること、およびそのような処置の結果を評価することを、補助する。病期分類システムは、癌の型によって変化するが、一般的には、以下の「TNM」システム:腫瘍の型(Tにより示される);その癌が、リンパ節近傍に転移したか否か(Nにより示される);およびその癌が、身体のより遠位部分に転移したか否か(Mにより示される);を包含する。一般的に、癌が、原発性病変領域においてのみ検出可能であり、いかなるリンパ節にも伝播していない場合、その癌は、ステージIと呼ばれる。その癌が、最も近いリンパ節にのみ伝播した場合、その癌は、ステージIIと呼ばれる。ステージIIにおいて、その癌は、原発性病変部位と近接するリンパ節に、一般的に伝播している。身体の遠位部分(例えば、肝臓、骨、脳、または他の部位)に伝播した癌は、ステージIV(最も進行したステージ)である。
【0072】
差示的なTTK発現レベルは、癌の攻撃性(例えば、転移能)および身体の異なる領域における存在についてのマーカーを同定することによって、この病期分類プロセスの微細な調整を可能にし得る。従って、TTKの差示的発現レベルが大きいステージIIの癌は、高転移能を有する癌を示し得、これは、ステージII腫瘍からステージIII腫瘍へと境界線を変化して、より攻撃的な治療を正当化するために使用され得る。
【0073】
(癌の悪性度分類) 悪性度分類は、腫瘍が、同じ型の正常組織とどの程度緊密に似ているかを記載するために使用される用語である。腫瘍の顕微鏡による外観が、細胞形態、細胞機構、および他の分化マーカーのような、パラメーターに基づいて、腫瘍の悪性度分類を同定するために使用される。一般的規則として、腫瘍の悪性度分類は、その増殖速度または攻撃性に対応し、未分化腫瘍または高悪性度腫瘍は、一般的に、分化型腫瘍または低悪性度腫瘍よりも攻撃性である。以下の指針が、腫瘍を悪性度分類するために一般的に使用される:1)GX(悪性度は、評価できない;2)G1(十分に分化している);G2(中程度に分化している);3)G3(ほとんど分化していない);4)G4(未分化型)。TTK活性レベル(例えば、発現レベル)は、腫瘍の悪性度を決定する際に特に価値があり得る。なぜなら、このTTK活性レベルは、腫瘍細胞の分化状態を決定することを補助し得るだけでなく、これらは、腫瘍の攻撃性(例えば、転移能)を決定する際に価値がある、分化以外の因子を同定し得るからである。
【0074】
(結腸癌の検出) TTKに対応するポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、被検体における結腸癌を検出するために使用され得る。結腸直腸癌は、ヒトにおいて最も一般的な新生物のうちの1つであり、おそらく、遺伝性新生物の最も頻繁な形態である。予防および早期検出が、結腸直腸癌を制御および治癒する際に重要な因子である。結腸直腸癌は、ポリープとして始まる。このポリープは、結腸の内層状に形成する、小さく良性の細胞増殖である。数年間にわたり、これらのポリープのうちのいくつかが、さらなる変異を蓄積し、そして癌性になる。複数の家族性結腸直腸癌障害が、同定されており、これらは、以下のようにまとめられる:1)家族性腺腫様ポリープ(FAP);2)ガードナー症候群;3)遺伝性非ポリープ性結腸癌(HNPCC);および4)アシュケナージユダヤ人における家族性結腸直腸癌。適切なポリペプチドおよびポリヌクレオチドの発現が、結腸直腸癌の診断、予後、および管理において使用され得る。結腸癌の検出は、TTKの発現レベル単独を使用してか、または結腸癌において差示的に発現される他の遺伝子発現レベルと組み合わせて使用して、決定され得る。結腸癌の攻撃性質および/または転移能の決定は、TTKレベルを正常細胞と関連するレベルと比較すること、および差示的に発現することまたは癌性組織のマーカーであることが公知の別の配列の全レベル(例えば、p53、DCC、ras、FAPの発現(例えば、Fearon ERら、Cell(1990)61(5):759;Hamilton SRら、Cancer(1993)72:957;Bodmer Wら、Nat Genet.(1994)4(3):217;Fearon ER,Ann N Y Acad Sci.(1995)768:101)を参照のこと)もしくはMAPKAPキナーゼ2(配列番号33および34)、MARCKS(配列番号35および36)および/もしくはIGF2(配列番号37および38)の発現)を比較することによって、決定され得る。例えば、結腸癌の発症は、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドに対応する遺伝子の発現レベルを、オンコジーン(例えば、ras)または腫瘍サプレッサー遺伝子(例えば、FAPまたはp53)のレベルと試験することによって、検出され得る。従って、特定のマーカーポリヌクレオチドの発現が、正常結腸組織と癌性結腸組織との間を区別するため、異なる起源の細胞を有する結腸癌を区別するため、異なる潜在的転移速度を有する結腸癌を区別するためなどに、使用され得る。癌のマーカーの概説について、例えば、Hanahanら(2000)Cell 100:57−70を参照のこと。
【0075】
(乳癌の検出) 乳癌の大多数は、腺癌のサブタイプであり、このサブタイプは、以下のようにまとめられ得る:1)インサイチュ腺管癌(DCIS)(コメド癌を含む);2)浸潤性(または侵襲性)腺管癌(IDC);3)インサイチュ小葉癌(LCIS);4)浸潤性(または侵襲性)小葉癌(ILC);5)炎症性乳癌;6)髄様癌;7)粘液性癌腫;8)乳首のパジェット病;9)葉状腫瘍;および10)腺管癌。
【0076】
TTKの発現レベルは、乳癌の診断および管理において、ならびに乳癌の型を区別するために、使用され得る。乳癌の検出は、TTKの発現レベルを、単独で使用するか、または乳癌において差示的に発現されることが公知の他の遺伝子の発現と組み合わせて使用して、決定され得る。乳癌の攻撃性質および/または転移能の決定はまた、TTKのレベルを比較すること、および癌性組織において変化することが公知の別の配列(例えば、ER発現)のレベルを比較することによって、決定され得る。さらに、乳癌の発症は、TTKの発現と、ステロイドホルモン(例えば、テストステロンまたはエストロゲン)レベルまたは他のホルモン(例えば、成長ホルモン、インスリン)レベルとの比を試験することによって、検出され得る。従って、特定のマーカーポリヌクレオチドおよびマーカーポリペプチドの発現が、正常乳房組織と癌性乳房組織との間を区別するため、異なる起源の細胞を有する乳癌を区別するため、異なる潜在的転移速度を有する乳癌を区別するためなどに、使用され得る。
【0077】
(検出方法)
個体由来の生物学的サンプルを分析して、その被検体由来の生物学的サンプル中のTTK遺伝子産物を検出することによって、その個体が、TTK遺伝子産物(例えば、RNAまたはタンパク質)の増加した発現を有するか否かを決定するための多数の方法が、当該分野で公知である。上記のように、そのような分析の目的は、診断のため、既存の癌の存在を検出するため、癌の型の同定を補助するため、その癌の重篤度または可能な経過を決定する際に医師を補助するため、および/またはその癌の処置を最適にするために、使用され得る。特定の非限定的例において、これらの方法は、癌細胞を検出するため、被検体における癌および癌の重篤度(例えば、腫瘍悪性度、腫瘍負荷など)の診断を容易にするため、被検体の予後の決定を容易にするため、および治療に対するその被検体の応答性を(例えば、例えば、化学療法レジメンの間またはその後の腫瘍負荷を評価することを介して、治療効果の尺度を提供することによって)評価するために、有用である。さらなる実施形態において、これらの方法は、例えば、臨床試験集団に含めるべき患者を選択するため、適切な治療を選択するため(例えば、癌性細胞の発現プロフィールに応じた治療を選択するため)などに、癌細胞の分類または層化のために有用である。
【0078】
(キット)
この検出方法は、キットの一部として提供され得る。従って、本発明は、生物学的サンプルにおけるTTK活性の存在および/またはレベルを、例えば、TTKをコードするmRNAおよび/もしくはそれによりコードされるポリペプチドの検出によってかまたはTTK活性を測定することによって、検出するためのキットを提供する。これらのキットを使用する手順は、臨床研究室、実験研究室、医療実施者、または個人によって、実施され得る。癌細胞において差示的に発現されるTTKポリペプチドを検出するための本発明のキットは、このポリペプチドに特異的に結合する部分(特異的抗体であり得る)を含む。癌細胞において差示的に発現されるTTKポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを検出するための本発明のキットは、そのようなポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする部分(例えば、プライマー)を含む。TTK活性を検出するための本発明のキットは、TTKによりリン酸化され得るレシピエント基質と、標識ドナー基質とを、含む。このキットは、この手順において有用なさらなる成分(緩衝液、発色試薬、標識、反応表面、検出手段、コントロールサンプル、標準物、指示書、および説明情報が挙げられるが、これらに限定されない)を、必要に応じて含み得る。
【0079】
(TTK核酸またはTTKポリペプチドのスクリーニング)
TTK活性の検出のための方法は、発現されるTTK遺伝子またはその対立遺伝子もしくは改変体を示すTTK核酸配列の存在をスクリーニングする工程、およびそのTTKポリペプチドを検出する工程を包含する。この方法は、その核酸配列またはポリペプチドを含むと疑われる個体由来の生物学的サンプルを使用する。生物学的サンプルの例としては、血液、血漿、血清、組織サンプル、腫瘍サンプル、唾液および尿が、挙げられる。
【0080】
TTK核酸またはTTKポリペプチドを検出するための例示的アプローチは、(a)TTK遺伝子によりコードされるポリペプチドの存在を決定する工程;(b)TTK核酸配列と結合可能な特異的結合メンバー(例えば、既知の相補的配列)を使用する工程であって、この特異的結合メンバーは、ストリンジェントな条件下でTTK配列とハイブリダイズする核酸を含む、工程;(c)TTK核酸配列またはこのTTK核酸配列によりコードされるポリペプチドについて特異性を有する抗体ドメインを含む物質を使用する工程であって、この特異的結合メンバーは、その結合パートナーに対する特異的結合メンバーの検出を検出可能にするように標識されている、工程;(d)患者由来のサンプルにおけるTTKの相対レベルを決定するために、1つ以上のプライマーを含むPCRを使用する工程;ならびに(e)TTK活性(例えば、TTK基質のリン酸化)のついてのアッセイを使用する工程;を包含する。
【0081】
TTKレベルの決定は、正常なTTKのレベルおよび/または改変体形態のTTKのレベルの両方を含み得る。この遺伝子の改変体形態は、野生型配列と比較して、その遺伝子機能を変更してもしなくてもよい、1つ以上の挿入、欠失、置換、および/または1つ以上のヌクレオチドの付加を含み得る。核酸レベルでの差異は、遺伝コードの縮重が原因で、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列の差異により必ずしも反映されない。しかし、遺伝子中の変異または他の差異は、フレームシフトまたは終止コドンを生じ得(これらは、(存在する場合)産生されるポリペプチドの性質に深刻に影響し得る)、あるいはコードされるポリペプチドに対する点変異または大きな変異性変化(そのポリペプチド中の1つ以上のアミノ酸または領域における、挿入、欠失、置換、および/または付加を含む)を生じ得る。
【0082】
プロモーター配列または他の調節領域における変異は、その遺伝子からの発現を変化(例えば、低減または増加)させ得るか、またはmRNA転写物のプロセシングまたは安定性に影響し得る。
【0083】
試験サンプル中の特定の核酸配列を検出するための種々の方法が、存在する。試験は、そのサンプル中のmRNA転写物の相対レベルを反映する様式で、mRNAまたは単離されたmRNAから生成されるcDNAを含む調製物に対して、実行され得る。RNAレベルは、特異的増幅反応(例えば、1対以上のプライマーを使用するPCR)により決定され得る。このPCRは、核酸の一領域を、好ましくは、他の遺伝子と相同性が低い領域を、増幅するために使用され得る。試験するための核酸は、細胞から取り出された核酸から調製され得るか、または種々の他の技術(例えば、制限酵素消化およびエレクトロポレーション)を使用して、ライブラリー中に調製され得る。
【0084】
核酸は、TTK特異的プローブを使用してスクリーニングされ得る。そのようなプローブは、TTK遺伝子またはその相補体の領域に対して、配列が対応する。ストリンジェントな条件下で、試験核酸に対するそのようなプローブの特異的ハイブリダイゼーションは、サンプル中のTTK核酸の存在を示す。効率的なスクリーニング目的のために、1つより多くのプローブが、同じ試験サンプルに対して使用され得る。そのプローブは、配列番号13のTTK遺伝子のうちの15ヌクレオチド、20ヌクレオチド、50ヌクレオチド、または100ヌクレオチド程度を含み得るか、または500bp、1kb、または3.8kb以上の長さであり得る。
【0085】
対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドまたは改変体特異的オリゴヌクレオチドが、同様に、試験サンプル中に存在する場合、特定の配列を特異的に増幅するためのPCRにおいて使用され得る。PCRバンドが遺伝子改変体を含むか否かの評価は、当業者が精通している多数の方法で実行され得る。そのPCR産物は、例えば、変性ポリアクリルアミドDNA配列決定ゲル上で変異または多型を提示することが可能な方法で処理され得、遺伝子改変体と関連ある特定のバンドが、選択される。これは、正常なTTK配列のレベルを決定するため、例えば、全TTKの組み合わせレベルを決定するために、同時または連続して、行われ得る。
【0086】
プロモーターまたは他の調節配列における損傷の存在または非存在もまた、転写によるmRNA産生レベルまたはそのmRNAからの翻訳によるポリペプチド産生レベルを決定することによって、評価され得る。核酸分子配列の差異の存在は、例えば、DNAフィンガープリンティング法における、制限酵素消化によって検出され得、この方法では、1つ以上の制限酵素が核酸サンプルを切断するために使用された場合に産生された制限パターンが、正常遺伝子または改変体もしくは対立遺伝子を含むサンプルが同じ酵素で消化された場合に得られるパターンと、比較される。
【0087】
試験核酸サンプルは、例えば、細胞(例えば、腫瘍生検由来の細胞)から核酸を抽出することによって、提供され得る。
【0088】
(TTKポリペプチドの検出)
試験サンプル中のTTKポリペプチドの存在または非存在を決定するための、種々の方法が存在する。サンプルは、野生型TTKおよび/またはTTKポリペプチドの1つ以上の特定の改変体(例えば、対立遺伝子改変体)と特異的な、特異的結合メンバー(例えば、抗体(または抗体の混合物))に関する結合パートナーの存在について試験され得る。このような場合、そのサンプルは、特異的結合メンバー(例えば、抗体)と、特異的結合に適切な条件下で接触されることによって、試験され得る。一群の抗体が使用される場合、異なるレポーター標識が、各抗体について使用され得、各結合が決定され得るようにされる。抗TTK抗体を使用するTTKポリペプチドの検出に加えて、TTKポリペプチドもまた、TTK特異的活性アッセイを使用して同定され得る。
【0089】
(アレイ)
結合因子(例えば、抗体または核酸配列)はまた、固体支持体上または診断チップ上の、小さい別個の位置に、および/またはアレイとして、固定され得る。これらのアプローチは、特に価値があり得る。なぜなら、これらは、特に、蛍光標識試薬の使用を介して、優れた感度を提供し得、試験される個体から非常に少量の生物学的サンプルしか必要とせず、そして種々の別個のアッセイが同時に実行され得るのを可能にし得るからである。この後者の利点は、有用であり得る。なぜなら、この利点は、TTKのアッセイと並べて、異なるタンパク質(例えば、オンコジーンまたは腫瘍サプレッサー)のアッセイを提供するからである。従って、さらなる局面において、本発明は、TTK核酸またはTTKポリペプチドと特異的に結合可能な1つ以上の結合因子が、必要に応じてアッセイを実行するために必要な他の試薬とともに固定された、支持体または診断チップを提供する。
【0090】
(TTKポリペプチドの発現のための方法)
TTKによりコードされる全長ポリペプチドまたは部分ポリペプチドは、任意の発現系(例えば、細菌系、酵母系、昆虫系、両性類系、および哺乳動物系を含む)にて発現され得る。そのためのいくつかのベクターおよび宿主細胞が、米国特許第5,654,173号に記載されている。適切なポリヌクレオチド構築物が、例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,New York)に記載される、標準的組換えDNA技術を使用して、米国Dept.of HHS,National Institute of Health(NIH) Guideline for Recombinant DNA Researchに記載される現行の規制下で、精製される。
【0091】
(細菌) 細菌における発現系としては、Changら、Nature(1978)275:615,Goeddelら、Nature(1979)281:544,Goeddelら、Nucleic Acids Res.(1980)8:4057;EP 0
036,776、米国特許第4,551,433号、DeBoerら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1983)80:21−25;およびSiebenlistら、Cell(1980)20:269に記載される系が、挙げられる。
【0092】
(酵母)酵母における発現系としては、Hinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1978)75:1929;Itoら、J.Bacteriol.(1983)153:163;Kurtzら、Mol.Cell.Biol.(1986)6:142:Kunzeら、J.Basic Microbiol.(1985)25:141;Gleesonら、J.Gen.Microbiol.(1986)132:3459,Roggenkampら、Mol.Gen.Genet.(1986)202:302;Dasら、J.Bacteriol.(1984)158:1165;De Louvencourtら、J.Bacteriol.(1983)154:737,Van den Bergら、Bio/Technology(1990)8:135;Kunzeら、J.Basic Microbiol.(1985)25:141;Creggら、Mol.Cell.Biol.(1985)5:3376;米国特許第4,873,148号および同第4,929,555号;BeachおよびNurse,Nature(1981)300:706;Davidowら、Curr.Genet.(1985)10:380,Gaillardinら、Curr.Genet.(1985)10:49,Ballanceら、Biochem.Biophys.Res.Commun.(1983)112:284−289;Tilburnら、Gene(1983)26:205−221,Yeltonら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1984)81:1470−1474,KellyおよびHynes、EMBO
J.(1985)4:475−479;EP 0 244,234、ならびにWO 91/00357に記載される系が、挙げられる。
【0093】
(昆虫細胞) 昆虫における異種遺伝子の発現は、米国特許第4,745,051号、Friesenら(1986)「The Regulation of Baculovirus Gene Expression」The Molecular Biology Of Baculoviruses(W.Doerfler編)、EP 0 127,839、EP 0 155,476、およびVlakら、J.Gen.Virol.(1988)69:765−776,Millerら、Ann.Rev.Microbiol.(1988)42:177,Carbonellら、Gene(1988)73:409,Maedaら、Nature(1985)315:592−594、Lebacq−Verhydenら、Mol.Cell.Biol.(1988)8:3129;Smithら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1985)83:8404、Miyajimaら、Gene(1987)58:273;ならびにMartinら、DNA(1988)7:99に記載されるように、達成される。多数のバキュロウイルス株および改変体ならびに対応する宿主由来の許容性昆虫宿主細胞は、Luckowら、Bio/Technology(1988)6:47−55、Millerら、Generic Engineering(Setlow,J.K.ら編)、Vol.8(Plenum Publishing、1986)、pp.277−279、およびMaedaら、Nature(1985)315:592−594に記載されている。
【0094】
(哺乳動物細胞) 哺乳動物発現は、Dijkemaら、EMBO J.(1985)4:761、Gormanら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1982)79:6777、Boshartら、Cell(1985)41:521および米国特許第4,399,216号に記載されるように達成される。哺乳動物発現の他の特徴は、HamおよびWallance、Meth.Enz.(1979)58:44、BarnesおよびSato、Anal.Biochem.(1980)102:255、米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号、WO 90/103430、WO87/00195、および米国再審査30,985号に記載されるように、容易にされる。
【0095】
(化学療法剤を同定するためのスクリーニングアッセイ)
本発明はまた、TTK活性を調節する因子、詳細には、罹患した細胞(例えば、TTKが差示的に発現される癌性細胞または前癌性細胞)における異常なTTK活性を低減する因子を、同定するためのスクリーニングアッセイを包含する。このようなアッセイは、インビトロまたはインビボのいずれか実施され得る。
【0096】
(候補因子)
本明細書中に使用される場合、用語「因子」とは、差示的に発現される遺伝子の発現またはその遺伝子産物の生理学的機能を変化させる能力を有する、任意の分子を記載する。一般的に、複数のアッセイ混合物が、異なる因子濃度で並行して実行されて、種々の濃度に対する差示的応答が得られる。代表的には、これらの濃度の1つは、ネガティブコントロール(すなわち、0濃度または検出レベル未満)として役立つ。
【0097】
候補因子は、多数の化学物質の種類を包含し、このような種類としては、有機分子(例えば、50ダルトンを越え、約2,500ダルトン未満の分子量を有する、低分子有機化合物)、ペプチド、モノクローナル抗体、アンチセンスポリヌクレオチド、およびリボザイムなどが挙げられるが、これらに限定されない。候補因子は、タンパク質との構造的相互作用(特に、水素結合)に必要な官能基を含み得、代表的には、少なくともアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基を含み、好ましくは、これらの化学官能基のうちの少なくとも2つを含む。この候補因子は、しばしば、上記の官能基のうちの1つ以上で置換された、環状炭素構造もしくは複素環式構造および/または芳香族構造もしくは多芳香族構造を含む。候補因子はまた、生体分子中で見出され、この生体分子としては、ポリヌクレオチド、ペプチド、糖、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、それらの誘導体、構造アナログもしくは組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
候補因子は、広範な種類の供給源(合成化合物または天然化合物のライブラリーを含む)から得られる。例えば、広範な種類の有機化合物および生体分子のランダム合成および指向性合成のために、多数の手段(ランダムオリゴヌクレオチドおよびランダムオリゴペプチドの発現を含む)が利用可能である。あるいは、細菌抽出物、真菌抽出物、植物抽出物、および動物抽出物の形態の天然化合物ライブラリーが、利用可能であるか、または容易に作製される。さらに、天然または合成で作製されるライブラリーおよび化合物は、従来の化学的手段、物理的手段、および生化学的手段を介して容易に改変され、そしてコンビナトリアルライブラリーを作製するために使用され得る。公知の薬理学的因子が、直接またはランダムな化学的改変(例えば、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化など)に供されて、構造アナログが作製され得る。候補因子は、単独でかまたはプール中で、TTK活性の調節について評価され得る。
【0099】
(インビトロでの候補因子のスクリーニング)
広範な種類のインビトロアッセイが、所望の生物学的活性について候補因子をスクリーニングするために使用され得、そのようなアッセイとしては、標識インビトロタンパク質−タンパク質結合アッセイ、タンパク質−DNA結合アッセイ(例えば、発現に影響する因子を同定するため)、電気泳動移動度シフトアッセイ、タンパク質結合についての免疫アッセイなどが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、大量の差示的に発現されるポリペプチドの産生を提供することによって、そのポリペプチドに結合するか、そのポリペプチドの作用を調節もしくは模倣する、リガンドまたは基質を同定し得る。さらに、これらのリガンドおよび基質を同定するための方法が、以下に提供される。精製ポリペプチドもまた、3次元結晶構造の決定のために使用され得、この3次元結晶構造は、分子間相互作用、転写調節などのモデリングのために使用され得る。
【0100】
このスクリーニングアッセイは、結合アッセイであり得、このアッセイにおいて、その分子の1つ以上が、標識に結合されており得、そしてその標識は、直接にかまたは間接的に、検出可能なシグナルを提供する。種々の標識としては、放射性同位体、発蛍光団、化学発光団、酵素、特異的結合分子、粒子(例えば、磁気粒子)などが挙げられる。特異的結合分子としては、対(例えば、ビオチンとストレプトアビジン、ジゴキシンと抗ジゴキシンなど)が挙げられる。特異的結合メンバーについて、相補的メンバーが、通常は、公知の手順に従って、検出を提供する分子で標識される。
【0101】
種々の他の試薬が、本明細書中に記載されるスクリーニングアッセイに含まれ得る。このアッセイが結合アッセイである場合、これらの試薬としては、最適なタンパク質−タンパク質結合、タンパク質−DNA結合を容易にするため、および/または非特異的相互作用もしくはバックグラウンド相互作用を低減するために使用される、塩、中性タンパク質(例えば、アルブミン)、界面活性剤などのような、試薬が挙げられる。このアッセイの効率を改善する試薬(例えば、プロテアーゼインヒビター、ヌクレアーゼインヒビター、抗菌剤など)が、使用され得る。必要な結合を提供する成分の混合物が、任意の順序で添加される。インキュベーションが、適切な任意の温度で、代表的には、4℃と40℃との間で、実施される。インキュベーション時間は、最適な活性について選択されるが、この時間はまた、迅速な高スループットスクリーニングを容易にするように最適にされ得る。代表的には、0.1時間と1時間との間が、十分である。
【0102】
多くの哺乳動物遺伝子が、酵母および下等動物においてホモログを有する。このようなホモログの生理学的役割および他のタンパク質とのインビトロまたはインビボでの相互作用の研究は、生物学的機能の理解を容易にし得る。遺伝子相補に基づくモデル系に加えて、酵母は、Chienら、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:9578−9582に記載されるツーハイブリッドシステムを介してタンパク質−タンパク質相互作用を研究するための強力な道具であることが、示されている。
【0103】
(インビボでの候補因子のスクリーニング)
候補因子は、癌の非ヒト動物モデルにおいて(例えば、癌性細胞が注入された動物において;本明細書中に記載される差示的に発現される遺伝子の発現の変化についてトランスジェニックである(例えば、トランスジェニック「ノックアウト」またはトランスジェニック「ノックイン」である)(差示的に発現される遺伝子産物のすべてまたは一部をコードするポリヌクレオチドおよび作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む)動物などにおいて)スクリーニングされ得る。
【0104】
一般的に、この候補因子は、動物に投与され、そしてその候補因子の効果が決定される。その候補因子は、所望の結果をもたらすために、所望の任意の様式で、および/またはその因子の送達のために適切な任意の様式で、投与され得る。例えば、その候補因子は、注入によって(例えば、静脈内注入によって、筋肉注入によって、皮下注入によって、または所望の効果が達成される組織中への直接注入によって)投与され得るか、経口投与され得るか、または他の望ましい任意の手段によって、投与され得る。通常は、このインビボスクリーニングは、種々の量および濃度の候補因子(因子なしから、その動物へ首尾良く送達され得る量の上限に達する量の因子まで)を与える多数の動物を含み、そして異なる処方物中でのその因子の送達を含み得る。この因子は、単独で投与され得るか、または特に因子の組み合わせの投与が相乗効果を生じ得る場合は、2つ以上の組み合わせで組み合わされ得る。
【0105】
トランスジェニック動物に対する因子の投与の効果は、遺伝子産物の発現、注入した腫瘍細胞の増殖などを評価することによって、モニターされ得る。
【0106】
(同定された候補因子)
所望の薬理学的活性を有する化合物が、差示的に発現される遺伝子産物の発現の調節により処置される状態の処置のために、薬理学的に受容可能なキャリア中で、宿主へと投与され得る。その治療剤は、種々の方法で、経口投与、局所投与、非経口投与(例えば、皮下投与、腹腔内投与、ウイルス注入による投与、筋肉内投与など)され得る。経口処置および吸入処置が、特に興味深い。導入方法に依存して、その化合物は、種々の方法で処方され得る。その処方物中に治療活性化合物の濃度は、約0.1重量%から100重量%まで変化し得る。その治療剤は、単回用量でか、または処置経過にわたって多回用量で投与され得る。
【0107】
この薬学的組成物は、種々の形態(例えば、顆粒、錠剤、丸剤、坐剤、カプセル剤、懸濁液、軟膏、ローション剤など)に調製され得る。経口的使用および局所的使用に適切な薬学的等級の有機性キャリアおよび/もしくは無機性キャリアならびに/または希釈剤は、治療的に活性な化合物を含む組成物を作製するために使用され得る。当該分野で公知の希釈剤としては、水性媒体、植物油ならびに動物油および脂肪が挙げられる。安定化剤、湿潤剤、および乳化剤、浸透圧を変化させるための塩、または適切なpHを確保するための緩衝剤、および皮膚浸透増強剤が、補助剤として使用され得る。
【0108】
(TTK活性を調節する薬物をスクリーニングする方法)
本発明に従うTTKポリペプチドまたはTTKコード核酸は、TTK活性またはTTK機能に影響を与えるかまたはこの活性または機能を調節する分子をスクリーニングする際に使用され得る。このような分子は、治療的および/または予防的状況において有用であり得る。癌を処置または予防する際に潜在的に有用な物質をスクリーニングするための手段が、本発明により提供される。一般に、本発明の方法は、概して、(例えば、TTKポリペプチドもしくは他のTTK遺伝子産物の活性を調節することにより、またはTTK活性をもたらすカスケードにおいてTTKの上流または下流のいずれかで作用する遺伝子産物の活性を標的化することによってTTK活性に影響を及ぼすことにより)特に目的のTTK活性を低減する薬剤を使用して、TTK活性のモジュレーターの同定を可能にするはずである。TTK活性のモジュレーターとして同定された物質は、癌に対する戦いの進歩を示す。なぜなら、これら物質は、インビボでの使用のための医薬品の設計および調査の基本を提供するからである。
【0109】
ポリペプチドの活性を調節する物質をスクリーニングする方法は、1以上の試験物質を、適切な反応媒体中のポリペプチドと接触させる工程、処理されたポリペプチドの活性(例えば、その基質をリン酸化する能力)を試験する工程、およびその活性を、試験物質で処理されていない匹敵する反応媒体中のポリペプチドの活性とを比較する工程を包含し得る。処理ポリペプチドと未処理ポリペプチドとの間の活性の差異は、関連する試験物質の調節効果を示す。
【0110】
コンビナトリアルライブラリー技術は、潜在的に莫大な数の種々の物質を、ポリペプチドの活性を調節する能力について試験する効率的な方法を提供する。このようなライブラリーおよびそれらの使用は、当該分野で公知である。ペプチドライブラリーの使用が好ましい。試験物質はまた、例えば、酵母ツーハイブリッド系において、ポリペプチドと相互作用する能力についてスクリーニングされ得る。これは、ポリペプチドが活性を調節する実際の能力について物質を試験する前の、大雑把なスクリーニングとして使用され得る。あるいは、このスクリーニングは、TTK特異的結合パートナーへの結合について試験物質をスクリーニングするために使用され得る。
【0111】
TTKポリペプチド機能のモジュレーターとして使用して同定された物質は、性質においてペプチドであってもよいし、非ペプチドであってもよい。非ペプチド「低分子」は、しばしば、多くのインビボでの薬学的使用において好ましい。従って、この物質の模倣物(mimetic)または模倣物(mimic)(特に、ペプチドの場合)は、薬学的使用のために設計され得る。
【0112】
(TTK活性アッセイ)
TTKの活性を、当該分野で公知の任意の適切なキナーゼアッセイを使用して、測定し得る。例えば(限定ではない)、Hoggら(Oncogene 1994 9:98−96)、Millsら(J.Biol.Chem.1992 267:16000−006)およびTomizawaら 2001(FEBS Lett.2001 492:221−7)、Schmandtら(J.Immunol.1994,152:96−105)において記載される方法が使用され得る。さらに、セリン、スレオニン、およびチロシンキナーゼアッセイは、Ausubelら(Short Protocols in Molecular Biology,1999,unit 17.6)に記載される。
【0113】
TTKアッセイは、概して、TTKポリペプチド、標識ドナー基質、およびTTKに対して特異的または非特異的のいずれかのレセプター基質を使用する。このようなアッセイにおいて、TTKは、ドナー基質からレセプター基質へと標識部分を移動し、キナーゼ活性は、ドナー基質からレセプター基質へ移動される標識部分の量によって測定される。
【0114】
TTKポリペプチドは、上記の種々の発現系を使用して生成され得、細胞から精製され得、切断された組換え融合タンパク質または切断されていない組換え融合タンパク質の形態にあり得、そして非TTKポリペプチド配列(例えば、そのN末端またはC末端におけるHisタグまたはβ−ガラクトシダーゼ)を有し得る。TTK活性は、癌細胞株が、アッセイされるTTKの供給源として使用される場合、癌細胞株においてアッセイされ得る。TTKアッセイについての適切なドナー基質としては、TTKにより脱リン酸化されやすい任意の分子(γ標識ATPおよびγ標識ATPアナログを含む)が挙げられる。ここで、この標識は、33P、32P、35Sもしくは任意の他の放射活性同意体または適切な蛍光マーカーである。TTKアッセイについての適切なレシピエント基質としては、任意のポリペプチドもしくはTTKによりリン酸化されやすい任意の他の分子が挙げられる。レシピエント基質は、通常、TTKのインビボ標的のフラグメントに由来する。レシピエント基質フラグメントは、長さが8〜50アミノ酸、通常は、10〜30アミノ酸、好ましくは、約10、12、15、18、20および25アミノ酸であり得る。さらなるレシピエント基質は、異なるポリペプチドまたは他の分子のセットを使用して、経験的に決定され得る。TTKアッセイに適切なTTKの標的としては、tauおよびcdc25が挙げられる。一旦反応が完了すると、TTKについてのレシピエント基質は、代表的には、この反応系の他の成分から精製され得る。この精製は、通常は、分子反応を通して行われる。ここで、このレシピエント基質は、ビオチン化され、ストレプトアビジンとの相互作用を通じて精製されるか、またはレシピエント基質を特異的に認識する特異的抗体が利用可能である。反応は、種々の条件(例えば、固体支持体上で、ゲル中で、溶液中でまたは生きている細胞中で)で行われ得る。
【0115】
TTKリン酸化の1つの例示的レシピエント基質は、ヒトタンパク質cdc25(配列番号26)であり、このタンパク質は、アミノ酸214位および216位のセリン残基がTTKによりリン酸化される。cdc25の2つのフラグメントは、以下のキナーゼアッセイにおける基質として使用される。これらのフラグメントは、cdc25ポリペプチド配列のアミノ酸209〜225に対応するペプチドA(配列番号27)、またはcdc25ポリペプチドのアミノ酸210〜223に対応するペプチドB(配列番号28)を含む。このアッセイにおいて、配列番号27(ビオチン−SGSGSGLYRSPSMPENLNRPR−NH)または配列番号28(ビオチン−GGGGLYRSPSMPENLNRK−OH)のいずれかを含む2つのビオチン化ポリペプチドが使用される。
【0116】
検出方法の選択は、ドナー分子について使用される標識の型に依存し、例えば、オートラジオグラフィー、シンチレーション、スキャンまたは蛍光間接撮影法により組み込まれた放射線または蛍光の測定を含み得る。
【0117】
(腫瘍増殖を阻害する方法および他の治療目的)
本発明は、癌細胞(特に、乳がん細胞または結腸癌細胞)の増殖を低減するための方法をさらに提供する。一般に、この方法は、正常細胞と比較して異常なレベルでTTKを発現する癌細胞と、(1)TTK(例えば、TTKに対応するアンチセンスポリヌクレオチド)の発現を調節する(一般には低減させる)物質;または(2)そうでなければ、異常なTTK活性を有する癌細胞におけるTTKポリペプチドレベルおよび/もしくはTTK活性を調節する(一般には、低減させる)物質とを接触させることを包含する。
【0118】
「癌細胞の増殖を低減させること」は、癌細胞の増殖を低減させること、癌細胞表現型または癌細胞形態の発生から正常細胞の影響を低減させることが挙げられるが、これらに限定されない。癌細胞増殖における低減が達成されたか否かは、任意の公知のアッセイを使用して容易に決定され得る。これらのアッセイとしては、[H]−チミジン組み込み;経時的な細胞数計数;結腸癌と関連するマーカー(例えば、CEA、CA19−9、およびLASA)の検出、測定、および/または腫瘍負荷を評価するための当該分野で周知の方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
本発明は、癌(特に、乳癌および結腸癌または異常に高いTTK活性と関連する他の癌)を処置するための方法を提供する。この方法は、一般に、癌細胞増殖を低減させて、癌を処置するに十分な量にてTTK活性を低減する薬剤を個体に投与する工程を包含する。物質(すなわち、特定の量の物質)が、癌を処置する際に有効であるか否かは、任意の種々の公知の診断アッセイを使用して評価され得る(例えば、結腸癌の場合、生検を伴う、S字結腸鏡、直腸鏡、直腸検査、直腸内視鏡、ラジオグラフィー造影研究(contrast radiographic studies)、CATスキャン、血管造影法、および個体の血中の、結腸癌と関連する腫瘍マーカーの検出が挙げられる)。物質は、全身投与または局所投与され得る。従って、いくつかの実施形態において、この物質は、局所的に投与され、結腸癌増殖が、投与の部位にて低減される。局所的投与は、例えば、固形腫瘍を処置する際に有用であり得る。
【0120】
1つの実施形態において、本発明は、アンチセンスポリヌクレオチドとして作用し、TTK活性を低減させるポリヌクレオチドを特徴とする。アンチセンスTTKポリヌクレオチドは、一般に、少なくとも約20〜3000ヌクレオチド、通常は、少なくとも約20〜1000ヌクレオチド、より通常は、少なくとも約8〜50ヌクレオチド、好ましくは、約26ヌクレオチド、20ヌクレオチド、18ヌクレオチド、17ヌクレオチド、15ヌクレオチド、10ヌクレオチドおよび8ヌクレオチドのポリヌクレオチドを含む。例示的TTKポリヌクレオチドは、実施例、および配列番号1〜12において提供されるが、配列番号13の任意のアンチセンスフラグメントが十分である。
【0121】
治療レジメンは、発現プロフィールに従って選択される。例えば、患者の腫瘍が正常細胞に対して異常に高いレベルのTTKを生成することが示されると、このようなTTK発現腫瘍の処置において有効性を有する薬物が、患者の治療のために選択される。
【0122】
(薬学的組成物)
本発明の薬学的組成物は、治療的に有効な量のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド(アンチセンスヌクレオチドおよびリボザイムを含む)、または低分子もしくはTTKの活性を調節する、好ましくは、TTK活性を低減させると同定された他の化合物を含み得る。用語「治療的に有効な量」とは、本明細書中で使用される場合、所望の疾患もしくは状態を処置、改善、または予防する、あるいは検出可能な治療効果もしくは予防効果を示す治療剤の量をいう。この効果は、例えば、化学的マーカーもしくは抗原レベルにより検出され得る。治療効果はまた、物理的症状(例えば、体温低下)の低減、および/または被験体における腫瘍負荷に対する効果の低減(例えば、腫瘍サイズの低減もしくは腫瘍増殖の阻害)が挙げられる。被験体のための正確な有効量は、被験体の大きさおよび健康状態、その状態の性質および程度、ならびに投与のための選択された治療剤または治療剤の組み合わせに依存する。従って、予め正確な有効量を特定することは有用ではない。しかし、所定の状況のための有効量は、慣用的な実験法により決定され、臨床医の裁量内にある。本発明の目的に関して、有効用量は、一般に、投与される個体において、約0.01mg/kg〜50mg/kgまたは0.05mg/kg〜約10mg/kg のDNA構築物である。
【0123】
薬学的組成物はまた、薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、治療剤(例えば、抗体もしくはポリペプチド、遺伝子、および他の治療剤)の投与のためのキャリアをいう。この用語は、それ自体が、この組成物を受ける個体に有害な抗体の生成を誘導せず、過度な毒性なく投与され得る任意の薬学的キャリアをいう。適切なキャリアは、大きな、ゆっくりと代謝される高分子(例えば、タンパク質、ポリサッカリド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子)であり得る。このようなキャリアは、当業者に周知である。治療組成物中の薬学的に受容可能なキャリアとしては、液体(例えば、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノール)が挙げられ得る。補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質など)はまた、このようなビヒクル中に存在し得る。代表的には、治療組成物は、注射可能物質として(液体溶液または懸濁液のいずれかとして)調製され;注射前に溶液、懸濁液、液体ビヒクルに適切な固体形態もまた調製され得る。リポソームは、薬学的に受容可能なキャリアの定義内に含まれる。薬学的に受容可能な塩はまた、薬学的組成物中に存在し得る(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などのような無機酸塩;および有機酸の塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩など)。薬学的に受容可能な賦形剤の通しの議論は、Remington’s
Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.,N.J.1991)において入手可能である。そのキャリアまたは他の物質の正確な性質は、投与経路(例えば、経口経路、静脈内経路、皮膚経路もしくは皮下経路、経鼻経路、筋肉内経路、腹腔内経路)に依存し得る。
【0124】
経口投与のための薬学的組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、または液体の形態にあり得る。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバントのような固体キャリアを含み得る。液体薬学的組成物は、一般に、液体キャリア(例えば、水、石油(petroleum)、動物油もしくは植物油、鉱油もしくは合成油)を含む。生理食塩水溶液、デキストロースもしくは他のサッカリド溶液またはグリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコール)が含まれ得る。
【0125】
静脈内注射、皮膚注射もしくは皮下注射、または罹患部位での注射に関しては、活性成分は、適切なpH、等張性および安定性を有する非経口的に受容可能な水溶液の形態にある。適切な溶液としては、例えば、必要に応じて、等張性ビヒクル(例えば、塩化ナトリウム)、防腐剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤および/または必要な場合は他の添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
医薬品の投与は、予防的に有効な量または治療的に有効な量にて投与される。投与される実際の量、ならびに投与の割合および時間的過程は、処置される者の性質および重篤度に依存する。投薬量などに関する決定は、開示される方法に基づいて当業者により決定され得、代表的には、処置される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法、および開業医に既知の他の要因が考慮に入れられる。上記の技術およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.(編),1980に見出され得る。
【0127】
あるいは、標的化治療は、標的化系(例えば、抗体または細胞特異的リガンド)の使用により、特定の型の細胞により特異的に活性薬剤を送達するために使用され得る。標的化は、種々の理由で;例えば、薬剤が受容可能でないほどに毒性である場合、またはそうでなければあまりに高い用量が必要な場合、またはそうでなければ標的細胞に進入できない場合、望ましくあり得る。標的化は、例えば、薬物−抗体複合体を被験体に投与することにより達成され得る。ここで、この抗体は、癌関連抗原に特異的であり、薬物は、癌細胞増殖を低減させる薬物である。標的化は、薬物を、癌関連抗原に特異的な抗体にカップリングすること(例えば、薬物−抗体複合体を形成するための直接的連結またはリンカー分子を介した連結(共有結合もしくは非共有結合のいずれか)により達成され得る。薬物を抗体にカップリングする方法は、当該分野で周知であり、本明細書中で詳しく述べる必要はない。
【0128】
薬剤はまた、細胞に導入された(例えば、ウイルスベクターもしくはリポソームベクター中の)コード遺伝子からの発現により、標的細胞において生成され得る。このベクターは、処置される特定の細胞に標的化され得るか、または多かれ少なかれ標的細胞による選択性を切り替える調節エレメントを含み得る。
【0129】
あるいは、この薬剤は、処置される細胞にて生成されるかまたは処置される細胞に標的化される活性化薬剤により、活性形態に変換するための前駆体形態で投与され得る。組成物は、単独で、または処置される状態に依存して、同時にまたは連続的にのいずれかで他の処置と組み合わせて投与され得る。
【0130】
(治療のための送達方法)
一旦処方されると、本発明の組成物または本発明の方法を使用して同定された組成物は、(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドとして)被験体に直接投与され得る。組成物の直接送達は、概して、非経口注射により達成され得る(例えば、皮下、腹腔内、静脈内もしくは筋肉内、腫瘍内または組織の間質空間)。他の投与様式としては、経口および肺投与、坐剤、および経皮適用、針、および遺伝子銃もしくはハイポスプレーが挙げられる。投薬処置は、単回用量計画または複数回用量計画であり得る。
【0131】
一旦、本発明のポリヌクレオチドに対応する遺伝子が増殖障害(例えば、新生物、形成異常、および過形成)と相関することが見出されると、この障害は、提供されたポリヌクレオチド、対応するポリペプチドまたは他の対応する分子(例えば、アンチセンス、リボザイムなど)に基づく治療剤の投与による処置に敏感に反応し得る。
【0132】
用量および投与手段は、治療組成物の特定の量、患者の状態、年齢、および体重、疾患の進行、ならびに他の関連する要因に基づいて決定される。例えば、本発明のポリヌクレオチド治療組成物薬剤の投与は、局所投与または全身投与を含む(注射、経口投与、粒子銃、またはカテーテルによる投与、および局所的投与が挙げられる)。好ましくは、治療ポリヌクレオチド組成物は、本明細書中に開示されれたポリヌクレオチドの少なくとも12個連続、15個連続、17個連続、18個連続、22個連続、25個連続、30個連続、または35個連続したヌクレオチドのポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む発現構築物を含む。身体の特定の部位に直接治療組成物を投与する種々の方法が使用され得る。例えば、小さな転移性病変が位置決めされ、治療組成物が、腫瘍の本体内のいくつかの異なる位置において数回注射される。あるいは、腫瘍に供給する動脈が同定され、治療組成物は、腫瘍に直接組成物を送達するために、このような動脈に注射される。壊死中心を有する腫瘍は吸引され、そしてこの組成物がそこで空になった腫瘍の中心に直接注射される。このアンチセンス組成物は、例えば、組成物の局所的適用により、腫瘍の表面に直接注射される。X線画像化は、特定の上記の送達方法を補助するために使用される。
【0133】
アンチセンスポリヌクレオチド、サブゲノムポリヌクレオチド、または特定の組織に対する抗体を含む治療組成物のレセプター媒介性標的化送達もまた、使用され得る。レセプター媒介性DNA送達技術は、例えば、Findeisら,Trends Biotechnol.(1993)11:202;Chiouら,Gene Therapeutics:Methods And Applications Of Direct Gene Transfer(J.A.Wolff,編)(1994);Wuら,J.Biol.Chem.(1988)263:621;Wuら,J Biol.Chem.(1994)269:542;Zenkeら,Proc.Natl.Acad.Sci(USA)(1990)87:3655;Wuら,J.Biol.Chem.(1991)266:338に記載される。ポリヌクレオチドを含む治療組成物は、遺伝子治療プロトコルにおける局所的投与については、約100ng〜約200mgのDNAの範囲において投与される。 約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μg、および約20μg〜約100μgのDNAの濃度範囲はまた、遺伝子治療プロトコルの間に使用され得る。(例えば、コードされた遺伝子産物のレベルを増強または阻害するための)作用方法ならびに形質転換および発現の効力のような要因は、アンチセンスサブゲノムポリヌクレオチドの最終的な有効性に必要な投薬量に影響を与える考慮事項である。組織のより広い領域にわたる、より多量の発現が所望される場合、より多量のアンチセンスサブゲノムポリヌクレオチドまたは例えば腫瘍部位の異なる隣接したもしくは近くの組織部分に対する投与、または数回の投与の連続プロトコルにおいて再投与される同量は、陽性の治療結果をもたらすために必要とされ得る。全ての場合において、臨床試験における慣用的な実験法により、最適な治療効果の特定の範囲が決定される。ポリヌクレオチドについては、抗炎症性活性を有するポリペプチドまたはタンパク質をコードする関連遺伝子、適切な用途、用量、および投与は、米国特許第5,654,173号に記載される。
【0134】
本発明の治療ポリヌクレオチドおよび治療ポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクルを使用して送達され得る。この遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス性または非ウイルス性であり得る(一般には、Jolly,Cancer Gene Therapy(1994)1:51;Kimura,Human Gene Therapy(1994)5:845;Connelly,Human Gene Therapy(1995)1:185;およびKaplitt,Nature Genetics(1994)6:148を参照のこと).このようなコード配列の発現は、内因性哺乳動物プロモーターまたは異種プロモーターを使用して誘導され得る。コード配列の発現は、構成性または調節性のいずれかであり得る。
【0135】
所望のポリヌクレオチドの送達および所望の細胞における発現のためのウイルスベースのベクターは、当該分野で周知である。例示的なウイルスベースのビヒクルとしては、組換えレトロウイルス(例えば、WO90/07936;WO94/03622;WO93/25698;WO93/25234;米国特許第5,219,740号;WO93/11230;WO93/10218;米国特許第4,777,127号;GB特許第2,200,651号;EP0345242;およびWO91/02805を参照のこと)、アルファウイルスベースのベクター(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373;ATCC VR−1246)およびベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス(ATCC VR−923;ATCC VR−1250;ATCC VR1249;ATCC VR−532)、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、WO94/12649、WO93/03769、WO93/19191;WO94/28938;WO95/11984およびWO95/00655を参照のこと))が挙げられるが、これらに限定されない。Curiel,Hum.Gene Ther.(1992)3:147に記載のように殺傷したアデノウイルスに連結されたDNAの投与もまた、使用され得る。
【0136】
非ウイルス性送達ビヒクルおよび方法もまた使用され得、これらの方法としては、殺傷したアデノウイルスに単独に連結されているかまたは連結されていないポリカチオン性濃縮DNA(例えば、Curiel,Hum.Gene Ther.(1992)3:147を参照のこと);リガンド連結DNA(例えば、Wuら、J.Biol.Chem.(1989)264:16985);真核生物細胞送達ビヒクル細胞(例えば、米国特許出願第5,814,482号;WO95/07994;WO96/17072;WO95/30763;およびWO97/42338)および核酸電荷中和または細胞膜との融合が挙げられるが、これらに限定されない。裸のDNAもまた使用され得る。例示的な裸のDNAの導入方法は、WO90/11092および米国特許第5,580,859号に記載される。遺伝子送達ビヒクルとして作用し得るリポソームは、米国特許第5,422,120号;WO95/13796;WO94/23697;WO91/14445;およびEP0524968に記載される。さらなるアプローチは、Philip,Mol.Cell Biol.(1994)14:2411、およびWoffendin,Proc.Natl.Acad.Sci.(1994)91:1581に記載される。
【0137】
使用に適切なさらなる非ウイルス送達は、Woffendinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1994)91(24):11581に記載されるアプローチのような機械的送達系を含む。さらに、コード配列およびそのような配列の発現産物は、光重合ポリヒドロゲル材料の沈着または電離照射線の使用を介して送達され得る(例えば、米国特許第5,206,152号およびWO92/11033を参照のこと)。コード配列の送達のために使用され得る遺伝子送達のための他の従来からの方法としては、例えば、携帯型遺伝子移入粒子銃(例えば、米国特許第5,149,655号を参照のこと)の使用;移入された遺伝子を活性化させるための電離照射線の使用(例えば、米国特許第5,206,152号およびWO92/11033を参照のこと)が挙げられる。
【0138】
ウイルスベクターの使用の代替方法としては、細胞に核酸を導入する他の公知の方法としては、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム共沈、機械的技術(例えば、マイクロインジェクション)、リポソームにより媒介される移入および直接DNA取り込み、ならびにレセプター媒介性DNA移入が挙げられる。罹患した細胞型にTTK核酸を選択的に標的化する遺伝子移入技術が好ましい。この例としては、レセプター媒介性遺伝子移入が挙げられた。ここで、この核酸は、ポリリジンを介してタンパク質リガンドに連結され、このリガンドは、標的細胞の表面に存在するレセプターに特異的である。
【0139】
(TTK発現に影響を及ぼす物質のスクリーニング)
本発明はまた、TTKプロモーターの活性を調節し、TTK発現のレベルを増大または低減させる物質のスクリーニング方法において、TTKプロモーターおよび/またはエンハンサー領域の核酸配列の全てまたは一部の使用を提供する。このアッセイは、治療目的および/または予防目的のための抗癌剤を同定するために行われ得る。プロモーター活性のレベル(すなわち、転写を開始する能力)は、例えば、プロモーターからの転写により生成されるmRNAの量を評価することにより、またはプロモーターからの転写により生成されるmRNAの翻訳により生成されるタンパク質産物の量を評価することにより、定量可能である。発現系に存在する特定のmRNAの量は、例えば、このmRNAとハイブリダイゼーションし得、かつ標識された特定のオリゴヌクレオチドを使用して決定され得るか、またはPCRのような特異的増幅反応において使用され得る。レポーター遺伝子の使用は、タンパク質産物を参照することにより、プロモーターの決定を容易にする。
【0140】
概して、TTKプロモーターおよび/またはエンハンサーの制御下にあるレポーター遺伝子は、mRNAに転写され得、このmRNAは、ペプチド産物またはポリペプチド産物へ翻訳され得る。その産物は、検出され得、好ましくは、発現後に定量され得る。このレポーター遺伝子は、好ましくは、検出可能なシグナル(好ましくは、呈色産物のような目視で検出可能なシグナル)を生成する反応を触媒する酵素をコードする。多くの例が公知であり、これらの例としては、β−ガラクトシダーゼおよびルシフェラーゼが挙げられる。β−ガラクトシダーゼ活性は、基質上での青色の生成によりアッセイされ得る。このアッセイは、目視によりまたは吸光度を測定するために分光光度計の使用によって行われ得る。例えば、ルシフェラーゼ活性の結果として生成される蛍光は、分光光度計を使用して定量され得る。放射活性アッセイは、例えば、非放射活性アッセイにおいて使用され得るクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼを使用して使用され得る。レポーター遺伝子の発現から生じる遺伝子産物の存在および/または定量は、この産物に結合し得る分子(例えば、抗体またはそのフラグメント)を使用して決定され得る。この結合分子は、直接標識されてもよいし、任意の標準的な技術を使用して間接的に標識されてもよい。
【0141】
当業者は、本明細書に開示される方法に従って、遺伝子活性を決定するために使用され得る多数の可能なレポーター遺伝子およびアッセイ技術がわかっている。任意の適切なレポーター/アッセイが使用され、本発明は、このような系を含むことが意図される。
【0142】
プロモーター活性を調節するかこの活性に影響を及ぼす物質を同定した後に、この物質はさらに調査され得る。さらに、その物質は、医薬品のような組成物(薬学的組成物または薬物)の調製(すなわち、製造または処方)において製造および/または使用され得る。
【0143】
(一体化疾患情報システム)
サンプル中のTTKレベルは、一体化疾患情報システムにおいて使用されて、提唱される患者介入、臨床試験の設計、薬物動態分析の実施、および種々の患者についての経時的な疾患進行を示すことのような分析が補助され得る。例えば、本発明の方法に従って決定されたTTK情報は、2000年8月22日にHerrenらに発行された米国特許第6,108,635号に記載されるもののようなシステムにおいて使用され得る。このようなシステムは、複数の位置において患者に与えられる医学的処置の結果を収集するためのものであり得る。例えば、1998年2月3日にYokotaらに発行された米国特許第5,713,350号を参照のこと。
【実施例】
【0144】
以下の実施例は、本発明をどのように作製しどのように使用するかについての完全な開示および記載を当業者に提供するために示され、本発明者らが本発明として認識する範囲を限定する目的でも以下の実施例が実施された全ての実験または唯一の実験であるとかを示すことを意図するのはではない。使用された数(例えば、量、温度など)に関する正確さを保障するための努力がさなれたが、いくつかの実験誤差および偏差は、考慮されるべきである。他で示されない限り、部分は、重量部であり、分子量は、重量平均分子量であり、温度は、摂氏であり、そして圧力は、大気圧または大気圧付近である。
【0145】
(実施例1:患者組織サンプルの供給源)
正常組織および癌組織を、レーザー捕獲微小切開(laser capture microdissection)(LCM)技術を使用して、患者から取り出した。この技術は、当該分野において周知である(例えば、
【0146】
【化1】


を参照のこと)。表1(実施例の最終頁の後に挿入される)は、サンプルを単離した各患者についての情報を提供し、以下を含む:患者IDおよびPath ReportID(同定の目的のために患者および病理報告に割り当てられた数);腫瘍の解剖学的位置(AnatomicalLoc);原発性腫瘍サイズ;原発性腫瘍等級;組織病理学的等級;腫瘍が浸潤した局所部位(局所浸潤)の記載;リンパ節転移の存在(リンパ節転移);リンパ節転移の発生(試験されたリンパ節の数に対する転移ポジティブなリンパ節の数として提供される)(リンパ節転移の発生);局所リンパ節等級;腫瘍およびその局在から離れた部位への転移の同定または検出(Distant Met&Loc);離れた転移の記載(Description Distant Met);離れた転移の等級(Distant Met Grade);および患者または腫瘍についての一般的所見(所見)。腺腫を、任意の患者においては記載しなかった:腺腫形成異常(病理学者によって過形成と記載される)は、患者ID番号695に記載された。結節外伸長(extranodal extension)を、2人の患者(患者ID番号784および791)において記載した。リンパ管浸潤を、7人の患者(患者ID番号128、278、517、534、784、786および791)において記載した。クローン病様の浸潤を、7人の患者(患者ID番号52、264、268、392、393、784、および791)において記載した。
【0147】
(実施例2:TTKの差示的発現)
cDNAプローブを、実施例1に記載した患者細胞より単離した総RNAから調製した。LCMは実質的に相同な細胞サンプルを提供するための特定の細胞型の単離を提供するので、同様に純粋なRNAサンプルを提供した。
【0148】
総RNAを、T7 RNAポリメラーゼプロモーターを含有するプライマーを使用して、最初にcDNAに逆転写し、次いで、第2の鎖DNA合成を行った。次いで、cDNAを、インビトロで転写し、T7プロモーター媒介発現を使用してアンチセンスRNAを産生し(例えば、Luo et al.(1999)Nature Med 5:117−122を参照のこと)、次いで、このアンチセンスRNAを、cDNAに変換した。アンチセンスRNAを提供するために、第2のセットのcDNAを、T7プロモーターを使用して再度インビトロで転写した。必要に応じて、RNAを再度cDNAに変換し、より多いアンチセンスRNAを産生するために3回までのT7媒介増幅を可能にした。よって、この手順は、蛍光標識に使用される最終RNAを産生するための、2回または3回のインビトロ転写を提供した。コントロールRNAをアンチセンスRNA混合物に最初に添加し、RNA開始材料から蛍光標識されたcDNAを産生することによって、蛍光プローブを生成した。腫瘍RNAサンプルから調製された蛍光標識されたcDNAを、正常細胞RNAサンプルから調製された蛍光標識されたcDNAと比較した。例えば、正常細胞由来のcDNAプローブを、Cy3蛍光色素(緑色)で標識し、そして腫瘍細胞から調製したcDNAプローブを、Cy5蛍光色素(赤色)で標識した。
【0149】
使用する各アレイは、空間的な配置およびコントロールスポットセットを有した。各マイクロアレイは、2つ領域に分割されており、各領域は、各半分に、12群の32×12スポット(各アレイ上に総数約9,216スポット)を有した。これらの2つの領域は、等しくスポットされ、これは、各クローン/アレイの少なくとも2連を提供する。スポットは、0.5kb〜2.0kbのPCR増幅産物を使用して達成され、製造業者の推薦に従ってMolecular Dynamics Gen III spotterを使用してスポットされた。アレイ上の24領域の各々の第1列は、約32個のコントロールスポット(4つのネガティブコントロールスポットおよび8つの試験ポリヌクレオチドを含む)を有した。試験ポリヌクレオチドを、2〜600pg/スライドの濃度範囲および1:1の比を有する標識反応の前に、各サンプルにスパイクした。各アレイの設計について、2つのスライドを、標識反応中で逆標識した試験サンプルでハイブリダイズした。これは、各クローンについて約4つの二重測定(各サンプルについて2つが一色、2つが他色)を提供した。
【0150】
同一患者の腫瘍細胞および正常細胞由来の等量のプローブを混合させることによって、差示的発現アッセイを行った。5×SSC/0.2% SDS/1mM EDTA中にて60℃で約2時間のインキュベーションによって、このアレイをプレハイブリダイズさせ、次いで、水で3回、イソプロパノールで2回洗浄した。アレイのプレハイブリダイゼーションの後に、次いで、高ストリンジェンシーの条件(50%ホルムアミド、5×SSCおよび0.2% SDS中で42℃で一晩)下で、プローブ混合物をこのアレイにハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション後、このアレイを、55℃で3回以下のように洗浄した:1)1×SSC/0.2% SDS中での第1の洗浄;2)0.1×SSC/0.2% SDS中での第2の洗浄;および3)0.1×SSC中での第3の洗浄。
【0151】
次いで、このアレイを、Molecular Dynamics Generation III二色レーザースキャナ/検出器を使用して、緑色蛍光および赤色蛍光について走査した。画像を、BioDiscovery Autogeneソフトウェアを使用して処理し、そして各走査からのデータを、正常に対する発現比を提供するために正規化した。マイクロアレイ実験からのデータを、E.J.Moler,M.A.BoyleおよびF.M. Randazzoによって2000年11月20日に出願された、「Precision and accuracy in cDNA microarray data」と表題された米国特許出願60/252,358(本明細書中に参考として特に援用される)に記載されるアルゴリズムに従って分析した。
【0152】
実験を繰り返し、両方の「色方向」でアッセイを行うために、今回、この2つのプローブを逆の色で標識した。各実験を、2つより多いスライドで時々繰り返した(各色方向における一方)。アレイ上の各配列についてのレベル蛍光は、4つのアレイからの8連のスポット/遺伝子、または2つのアレイからの4連のスポット/遺伝子、あるいは他のいくつかの順列の幾何平均の比として示した。データを、各重複(duplicate)領域に存在するスパイクしたポジティブコントロールを使用して正規化し、そしてこの正規化の精度は、各差異の有意性の最終決定に含まれる。各スポットの蛍光強度はまた、各サンプルにおいてどのスポットが有意な発現レベルを検出したかを決定するために、各重複領域におけるネガティブコントロールと比較された。
【0153】
蛍光強度の統計学的分析を、各差異の測定の精度および有意性を評価するため各セットの重複スポットに適用し、各患者における腫瘍サンプルと正常サンプルとの間の発現レベルに差異はないという帰無仮説を試験するp値を生じた。マイクロアレイの最初の分析の間、この仮説は、p> 10−3の場合に受け入れられ、そして差示的な比は、これらのスポットについて1.000に設定した。他の全てのスポットは、腫瘍サンプルと正常サンプルとの間で発現に有意な差異を有する。腫瘍サンプルが検出可能な発現を有しそして正常サンプルが検出可能な発現を有さない場合、正常サンプルでの発現の値は0であり、この比は、数学的に有用な値ではない(例えば、無限大)ので、比は、1000で切捨てた。正常サンプルが検出可能な発現を有し、そして腫瘍が検出可能な発現を有さない場合、腫瘍サンプルでの発現の値は0であり、この比は、数学的に有用な値ではないので、比は、0.001に短縮された。これら後者の2つの状況は、「オン/オフ」として本明細書中で言われる。データベースの表は、95%の確からしさのレベル(P>0.05)を使用して構成された。
【0154】
一致した正常結腸細胞と比較した結腸腫瘍細胞におけるTTKの発現レベルの差異は、患者の39%において2倍以上(「>=2x」)、患者の36%において2.5倍以上、そして試験した患者の27%において5倍以上であった。
【0155】
多くの正常組織および腫瘍細胞株(特に、結腸直腸の癌細胞株)の定量的PCRを使用して、TTKの発現を分析した。製造業者の指示に従ってRoche RNA Isolationキットを使用して細胞からRNAを最初に単離することによって、定量的リアルタイムPCRを行った。1μgのRNAを使用して、製造業者の緩衝液および推奨濃度のオリゴdT、ヌクレオチドおよびRnasinを用いて、MMLV逆転写酵素(Ambion)を使用して第一鎖cDNAを合成した。この第一鎖cDNAを、機械マニュアルに推奨されるように、Rocheライトサイクラーを使用して、定量的リアルタイムPCRについてのテンプレートとして供した。順方向プライマー
【0156】
【化2】


および逆方向プライマー
【0157】
【化3】


を用いて、TTKを増幅した。PCR産物を、増幅が、内部標準との比較で増幅の直線相に入った時点でのサイクルに基づいて、製造業者によって供給されるソフトウェアを使用して定量した。量における小さな差異または第一鎖cDNA反応における総テンプレートを、順方向プライマー
【0158】
【化4】


および逆方向プライマー
【0159】
【化5】


を用いて別々の定量的PCR反応で増幅したアクチンの量に正規化することによって排除した。正常組織におけるTTK mRNAレベルについての結果を、図1に示す;腫瘍細胞株におけるTTK mRNAレベルについての結果を、図2に示す。分析した細胞株の簡単な記載を、以下の表に提供する。
【0160】
【化6】


TTKは、正常細胞に発現された(図1)。胸腺および精巣は、TTKについての遺伝子を最も高度に発現した正常組織として同定された。しかし、多くの癌細胞は、ほとんどの野生型組織と比べて有意に増加したレベルのTTK発現を示した(図2)。
【0161】
(実施例3:差示的発現データを使用する結腸癌の階層型クラスタリングおよび層構造)
実施例2からの差示的発現パターンを、階層型クラスタリング法をデータセットに適用することによって分析した(Eisen et al(1998)PNAS 95:14863−14868を参照のこと)。簡単には、階層型クラスタリングアルゴリズムは、SokalおよびMichenerの平均連鎖(average−linkage)法(Sokal,RR&Michener,CD(1958)Univ.Kans.Sci.Bull.38,1409−1438)に基づく。これは、クラスタリング相関マトリクスについて開発された。このアルゴリズムの目的は、単純なツリーに全てのエレメントをアセンブリさせる系統樹を計算することである。n個の遺伝子の任意のセットについて、遺伝子の対全てについての類似性スコアを含む上方対角線(upper−diagonal)類似性マトリクスが、計算される。この技術を使用して、4つの群の差示的発現パターンを同定し、そしてクラスターに割り当てた。
【0162】
実施例2からのデータへの階層型クラスタリングの適用は、IGF2(インスリン様増殖因子2)、TTK(細胞周期に関連するセリン、スレオニン、チロシンのキナーゼ)、MAPKAPK2(マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ)およびMARCKS(ミリストイル化アラニンリッチCキナーゼ基質(タンパク質キナーゼQの基質である)が、試験した33の結腸癌患者サンプル中9つにおいて検出されたように同時にアップレギュレートされることを示した。これらの実験についてのデータは、図36中の図表形式で示される。同時アップレギュレーションは、これらの遺伝子が同時に調節されること、および上昇したIGF2の血清レベルを有する患者がTTK、MAPKAPキナーゼ2、MARCKSおよび/またはIGF2に対するインヒビターでの処理の候補であり得ることを示唆する。
【0163】
(実施例4:TTK発現のアンチセンス調節)
TTKについてのさらなる機能的な情報を、アンチセンスノックアウト技術を使用して生成した。癌細胞におけるTTK発現をさらに分析して、腫瘍形成において遺伝子産物の役割および機能(例えば、転移表現型の促進)を確認する。
【0164】
TTK mRNAに相補的な多くの異なるオリゴヌクレオチドを、潜在的アンチセンスオリゴヌクレオチドとして設計し、そしてTTKの発現を抑制するこれらの能力について試験した。設計した各アンチセンスオリゴヌクレオチドの遺伝子発現を阻害する能力を、SW620結腸直腸癌細胞へのトランスフェクションを介して試験した。各トランスフェクション混合物について、キャリア分子(好ましくは、リピトイドまたはコレステロイド)を、水中0.5mMの作用(working)濃度に調製し、超音波処理して均一な溶液を得、そして0.45μm PVDF膜を通して濾過した。次いで、アンチセンスまたはコントロールのオリゴヌクレオチドを、滅菌Millipore水中100μMの作用濃度に調製した。オリゴヌクレオチドをさらに、微量遠心管中でOptiMEMTM(Gibco/BRL)中で、2μMまたは1mlのOptiMEMTM当たり約20μgのオリゴに希釈した。別々の微量遠心管において、リピトイドまたはコレステロイド(典型的には、約1.5〜2nmolリピトイド/μgアンチセンスオリゴヌクレオチド)を、オリゴヌクレオチドを希釈するために使用したOptiMEMTMと等量に希釈した。この希釈したアンチセンスオリゴヌクレオチドを、希釈をリピトイドに直ちに添加し、そして上下にピペッティングすることによって混合した。オリゴヌクレオチドを、最終濃度30nMまで細胞に添加した。
【0165】
トランスフェクトした細胞中の標的mRNA(TTK)のレベルを、Roche LightCyclerTMリアルタイムPCRマシンを使用して、癌細胞株において定量した。標的mRNAについての値を、内部コントロール(例えば、β−アクチン)に対して正規化した。各20μlの反応について、抽出したRNA(一般に、合計0.2〜1μg)を、0.5mlまたは1.5mlの滅菌微量遠心管内に置き、水を加えて総量12.5μlにした。各管に、7.5μlの緩衝液/酵素混合液を添加し、2.5μl HO、2.0μl 10×反応緩衝液、10μlオリゴdT(20pmol)、1.0μl dNTPミックス(各10mM)、0.5μl RNAsin(登録商標)(20u)(Ambion,Inc.,Hialeah,FL)および0.5μl MMLV逆転写酵素(50u)(Ambion,Inc.)を混合することによって調製した。内容物を上下にピペッティングすることによって混合し、そして反応混合物を、42℃で1時間インキュベートした。各管の内容物を、増幅前に遠心分離した。
【0166】
増幅混合物を、以下の順番で混合することによって調製した:1×PCR緩衝液II、3mM MgCl、140μMの各dNTP、0.175pmolの各オリゴ、1:50,000 dilのSYBR(登録商標)Green、0.25mg/ml BSA、1単位のTaqポリメラーゼおよびHOを20μlまで。(PCR緩衝液IIは、Perkin−Elmer,Norwalk,CTから10×濃度で利用可能である)。1×濃度で、10mM Tris(pH8.3)および50mM KClを含む。SYBR(登録商標)Green(Molecular Probes,Eugene,OR)は、二本鎖DNAに結合される場合、蛍光を発する色素である。二本鎖PCR産物が増幅中に産生される場合、SYBR(登録商標)Greenからの蛍光強度は増加する。増幅混合物の各20μlアリコートに、2μlのテンプレートRTを添加し、そして標準的なプロトコルに従って、増幅を行った。
【0167】
以下のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、トランスフェクションアッセイにおいてTTK RNAを効果的に枯渇することを示された:
【0168】
【化7】


これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドの各々の逆コントロールを、逆方向でアンチセンスオリゴヌクレオチドの同一配列を有するオリゴヌクレオチドであるように合成した(逆コントロール)。
【0169】
【化8】


アンチセンスオリゴヌクレオチドを、試験細胞に導入し、対応する遺伝子のTTK発現に対する効果、および癌性表現型の効果誘導を、以下に記載するように試験した。
【0170】
(実施例5:増殖に対するTTKの発現の効果)
増殖に対するTTKの効果を、転移性乳癌細胞株(MDA−MB−231 (「231」))、SW620結腸直腸癌細胞または847ヒト不死化繊維芽細胞において評価した。トランスフェクションを、実施例4に記載されるように行った。
【0171】
細胞を、96ウェルディッシュに約60〜80%コンフルエントで播いた。アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは逆コントロールオリゴヌクレオチドを、OptiMEMTM中で2μMに希釈し、送達ビヒクル(SW620細胞の場合リピトイド116−6、またはMDA−MB−231細胞の場合リピトイド1:コレステロイド1を1:1)が希釈されている中へOptiMEMTMを加えた。次いで、オリゴ/送達ビヒクル混合物を、細胞上で血清を含む培地にさらに希釈した。全ての実験についてのオリゴヌクレオチドの最終濃度は、300nMであり、全ての実験についてのオリゴ対送達ビヒクルの最終比は、1.5nmolリピトイド/μgオリゴヌクレオチドであった。細胞を、37℃で一晩トランスフェクトし、トランスフェクション混合物を、翌朝新鮮な培地に置き換えた。
【0172】
SW620結腸直腸癌細胞(図7)および231細胞(図8)の両方へのアンチセンスオリゴヌクレオチドのトランスフェクションは、一致した逆コントロール(RC)およびオリゴヌクレオチドと比較して増殖速度の低減を生じたが、847ヒト不死化繊維芽細胞の増殖を阻害しなかった(図11)。このことは、TTKタンパク質についての機能的役割において可能な組織または形質転換特異性を示唆する。
【0173】
(実施例6:コロニー形成に対するTTK発現の効果)
コロニー形成に対するTTK発現の効果を、軟寒天(soft agar)アッセイにおいて試験した。細胞上に数時間以内新鮮に層状化して置いた、培地中0.6%寒天2mlの下層を最初に確立することによって、軟寒天アッセイを行った。この細胞層を、0.05%トリプシンを使用して上記のようにトランスフェクトした細胞をプレートから取り出し、培地で2回洗浄することによって下層上に形成させた。細胞を、Coulterカウンターで計数し、培地1ml当たり10個に再懸濁した。10μlアリコートを、(WST1で計数をチェックするために)96ウェルプレート中の培地とともに置くか、または軟寒天アッセイのためにさらに希釈する。2000個の細胞を、2連のウェル中で0.6%寒天下層上、800μlの0.4%寒天中に置く。細胞層寒天が凝固した後、2mlの培地を、上層に滴下し、そしてアンチセンスまたは逆コントロールオリゴを、送達ビヒクルなしに添加する。新鮮な培地およびオリゴを、3〜4日毎に添加する。コロニーを、10日〜3週間で形成させる。コロニー野を、目で計数した。Wst−1代謝値を使用して、開始細胞数における小さな差異を補正し得る。大きな野を、差異の可視記録についてスキャンし得る。
【0174】
図9に示すように、TTK(79−9AS)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、コントロール逆オリゴヌクレオチド(79−9RC)またはコントロールオリゴヌクレオチド
【0175】
【化9】


と比較して、コロニーのサイズおよび数の低減を導いた。52−3アンチセンスオリゴヌクレオチドは、hD53 mRNAを指向し、そして実験におけるネガティブコントロールとして働く。
【0176】
(実施例7:TTKの枯渇に対する細胞死の誘導(「アンチセンスノックアウト」))
SW620細胞を、増殖アッセイについて記載したようにトランスフェクトした。シスプラチン(cis)存在下での細胞傷害性効果について、同じプロトコルを行ったが、細胞を2μMの薬物の存在下に残した。膜傷害に起因して培地中に放出されるLDH酵素の量を測定することによって、毎日、細胞傷害性をモニタリングした。LDHの活性を、Roche Molecular BiochemicalsからのCytotoxicity Detection Kitを使用して測定した。同一の時間点および処置において培地中に放出されるLDH対ウェル中に存在する総LDHの比(rLDH/tLDH)として、データを提供する。BCL2(抗アポトーシス遺伝子として公知)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび逆コントロールオリゴヌクレオチドを使用するポジティブコントロールは、BCL2のメッセージの消失はコントロールオリゴヌクレオチドでの処置(トランスフェクションに起因するバックグラウンド細胞傷害性)と比較して細胞死の増加を導くことを示す。
【0177】
以下のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、示されたクラスターに対応する遺伝子のメッセージレベルを枯渇させる能力について、試験した。オリゴの名称(ASまたはRC)は、標的遺伝子の名称またはオリゴの名称を提供し、オリゴがアンチセンス(AS)または逆コントロール(RC)のいずれかであることを提供する。
【0178】
【化10】


図12に示すように、Chiron 79−9(TTK)アンチセンスは、細胞を検出可能なレベルでのシスプラチンによる処理に感受性にしないが、3日目でのコントロールオリゴと比較して死の増加を導く。
【0179】
(実施例8:TTK活性を調節する薬剤についてのサンプルアッセイ)
本アッセイは、マイクロタイタープレート中に行われ得る。TTKを、バキュロウイルス発現系を使用して、6×Hisタグ化融合タンパク質として精製した。基本的にはTTKキナーゼ緩衝液(50mM Hepes(pH7.4)、2mM MgCl、10mM MnCl、1mM NaF、50mM NaCl、1mM DTTおよび1mg/ml BSAを含む)中20nM TTK(100kDa)20μlを、サンプルマイクロタータープレートのウェル中の20%DMSO中に希釈した候補薬剤5μl、
【0180】
【化11】


のような、cdc25由来のビオチン化基質ペプチドの2.8μM溶液10μl、および80nM33P−γATP5μlに添加した。サンプルを、混合し、2時間インキュベートし、そして各反応を、20μlの0.5M EDTA(pH8.0)を使用して停止した。サンプルの50μlを、96ウェルのStreptavidinコート平底フラッシュプレートに移し、このサンプルを、室温で1時間プレートとインキュベートする。プレートのウェルを、250μlのカルシウムおよびマグネシウムを含まないリン酸緩衝化生理食塩水で4回洗浄し、そしてシンチレーション流体をこのサンプルに添加した。TTKの活性を、TTKによって33P−γATPから基質ペプチドへ移された33Pの放出を計算することによって、シンチレーションによって測定した。
【0181】
候補薬剤の存在下でのTTKの活性を、候補薬剤の非存在下でのTTKの活性と比較することによって、TTK活性を調節する薬剤を、同定し得る。
【0182】
本発明は、その特定の実施形態に関して記載されているが、本発明の本当の精神および範囲を逸脱することなく、種々の変化がなされ得、そして等価物が置換され得ることは、当業者によって理解されるべきである。さらに、多くの改変は、本発明の目的、精神および範囲に、特定の状況、物質、組成物、処理、処理工程を適応するようになされ得る。このような改変の全てが本発明の範囲内であるということは、意図される。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】図1は、PCRにより検出された、種々の正常な組織型におけるTTKの発現を示す棒グラフである。
【図2】図2は、PCRにより検出された、種々の腫瘍細胞株におけるTTKの発現を示す棒グラフである。
【図3】図3は、結腸直腸癌腫を有する患者におけるIGF2、MAPKAPK2、TTK、およびMARCKSの発現プロフィールを示すグラフである。
【図4】図4は、結腸直腸癌腫を有する患者におけるIGF2、MAPKAPK2、TTK、およびMARCKSの発現プロフィールを示すグラフである。
【図5】図5は、結腸直腸癌腫を有する患者におけるIGF2、MAPKAPK2、TTK、およびMARCKSの発現プロフィールを示すグラフである。
【図6】図6は、結腸直腸癌腫を有する患者におけるIGF2、MAPKAPK2、TTK、およびMARCKSの発現プロフィールを示すグラフである。
【図7】図7は、TTK発現のアンチセンス抑制後のMDA−MB−231細胞の増殖抑制を示すグラフである。
【図8】図8は、TTK発現のアンチセンス抑制後のMDA−MB−231細胞の増殖抑制を示すグラフである。
【図9】図9は、TTK発現のアンチセンス抑制後のSW620細胞の増殖抑制を示すグラフである。
【図10】図10は、TTK発現のアンチセンス抑制に伴う軟質寒天におけるSW620細胞のコロニー形成の抑制を示すグラフである。
【図11】図11は、TTKのアンチセンス抑制が正常な不死化線維芽細胞に対して検出可能な効果を有さないことを示すグラフである。
【図12】図12は、SW620細胞からのTTKの枯渇による細胞死の誘導を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の癌細胞の増殖を低減する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−143890(P2009−143890A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276182(P2008−276182)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【分割の表示】特願2002−567954(P2002−567954)の分割
【原出願日】平成14年2月21日(2002.2.21)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】