説明

診断剤および/または治療剤、その製造方法および使用

本発明は材料科学および医学の分野に関連し、且つ、例えば癌細胞の位置測定のための造影剤として使用できる剤に関する。本発明の課題は、調査される分子または細胞の位置および種類を敏感且つ選択的に識別する剤の記載である。該課題は、少なくとも、ペプチドベースの分子を介して内包フラーレンが結合されているバイオシャトル分子からなる作用物質によって解決され、その際、該内包フラーレンは疎水性であり、且つ、式A3-xxZ@C2n [x=0ないし3、n≧34、Aは希土類元素および/または超ウラン元素、Mは金属、Zは非金属、およびCは炭素を意味する]に相応する。該課題はさらに、疎水性の内包フラーレンとバイオシャトル分子とが、逆電子要請型の不可逆性で進行するディールス-アルダー反応(DARinv)を介して結合される方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は材料科学および医学の分野に関連し、且つ、例えば、造影剤として、診断および治療に使用するために、癌細胞の位置測定のために、癌細胞の種類の確認のために、または癌細胞の破壊のために使用できる診断剤および/または治療剤、並びにその製造方法に関する。
【0002】
造影剤を、医療的な画像化、例えばレントゲン画像化、核共鳴画像化、または超音波画像化において、一般に、人間または動物の身体の対象の写像において、像のコントラストを強める、または弱めるために投与することができる。それによって強められたコントラストは、種々の臓器、組織の種類および身体の一部をより明確に観察するか、もしくは同定すること、または臓器の機能を検査することを可能にする。レントゲン画像化の際、造影剤は、それが分布している身体の領域のレントゲン吸収特性の変化を引き起こす。核共鳴造影剤は一般に、核、一般に水のプロトンの密度または特徴的な緩和時間の変化を引き起こし、それからの共鳴信号が像をもたらす。陽電子放射トモグラフィー(PET)のための造影剤は検知可能な放射線源として作用する。磁気測定の造影剤は、それが分布している身体の領域における磁場の干渉の発生によって作用する。この干渉は、例えばSQUID磁気計を用いて検知され得る。超音波造影剤は、それが分布している体の部分における音速または密度の変化を引き起こす。
【0003】
しかしながら、コントラストの強化、生体内分布(Biodistribution)、安定性、不透明性、緩和性、適合性などに関する造影剤の改良は、学術的な調査の中心的なテーマである。
【0004】
DE69328550号T2によれば、診断剤および/または治療剤中でのフラーレン誘導体の使用が公知である。その際、フラーレン誘導体は、コントラスト強化剤として、および生体分子上につながれ得る信号形成単位のためのキャリアとして使用される。
【0005】
さらに、光音響造影剤およびその使用方法が公知である(DE69831755号T2)。その際、安定化材料、光活性剤およびガスを内含する剤を患者に投与する。超音波によって、安定化材料が突き破られ、そして光活性剤が解放される。それによると、光活性剤の活性化のために光エネルギーが用いられる。
【0006】
DE60014124号T2から、特異的にフラーレンおよびフラーレンナノチューブと結合できるフラーレン特異的抗体が公知である。さらには、患者の血清中のフラーレン濃度の測定方法がそこから公知である。
【0007】
DE10301722号A1によれば、内包フラーレンの製造方法が公知である。それによると、内包フラーレンはアーク反応器内で、不活性ガスまたは不活性ガス混合物中に少なくとも2つの元素からなる反応性ガス成分を含有する雰囲気中でのグラファイト電極の霧状化(Zerstaeuben)によって実現される。
【0008】
診断の正確さにおける進歩は、治療における進歩と歩調を合わせることができない。従来技術の解決法は、現在公知の造影剤がコントラストの強化、生体内分布(Biodistribution)、安定性、不透明性、緩和性、適合性などに関して、現代的な診断および治療の必要条件に不充分に適合していることが共通している。
【0009】
本発明による解決手段は、その欠けている部分をふさぐ。本発明の課題は、調査すべき分子または細胞の位置および種類を敏感且つ選択的に認識し、且つ、同様に選択的な治療に使用することができる診断剤および/または治療剤の記載、並びに、その製造のための効果的且つ選択的な方法、および種々の画像化法のためのその使用である。
【0010】
前記課題は請求項に記載された発明によって解決される。有利な実施形態は、下位請求項の対象である。
【0011】
転写レベルでの少なくとも1つの画像化成分を用いる本発明による診断剤および/または治療剤は、少なくとも、ペプチドベースの分子を介して内包フラーレンが結合されているバイオシャトル分子からなり、その際、該内包フラーレンは疎水性であり、且つ、式
3-xxZ@C2n
[式中、
x=0ないし3、且つn≧34であり、
且つ、Aは希土類元素および/または超ウラン元素、Mは金属、Zは非金属、およびCは炭素を意味する]
に相応する。
【0012】
有利には、疎水性の内包フラーレンは、金属、希土類元素および/または超ウラン元素からの窒化物クラスタを個々に、または混合して含有する。
【0013】
同様に有利には、該金属、希土類元素、および/または超ウラン元素は磁気モーメントを有する。
【0014】
さらに有利には、Aとしては希土類元素である。ガドリニウム、ホルミウム、ジスプロシウム、ランタン、イッテルビウムおよび/またはテルビウムが存在する。
【0015】
また、有利には、Aの超ウラン元素として、ネプツニウム、アクチニウム、ウランおよび/またはプルトニウムが存在する。
【0016】
Mの金属として、スカンジウム、イットリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが存在する場合も有利である。
【0017】
Zの非金属として、N、P、S、B、Oおよび/またはそれらの化合物および/またはそれらの同位体が存在する場合、さらに有利である。
【0018】
また、Zが同位体として17O、18O、34S、35S、32P、33Pとして存在する場合も有利である。
【0019】
バイオシャトル分子が輸送モジュール、アドレスモジュール、並びにカーゴからなる場合、同様に有利である。
【0020】
また、輸送モジュールとして、両親媒性分子、例えばホメオボックス状タンパク質フラグメント(HOX)が存在する場合も有利であり、その際、なお有利には、HOX−タンパク質フラグメントとして、PAnT(アンテナペディア−昆虫)、PTDHIV-1/TAT(ウィルス起源)、TP1AOP/Eco(バクテリア起源、例えば大腸菌)、TP人間および/またはTP可変が存在する。
【0021】
細胞内のアドレス分子として、ペプチド核酸配列(PNA)、核酸および/またはペプチドフラグメントが存在する場合もまた有利である。
【0022】
細胞周期制御遺伝子、アポトーシス阻害遺伝子、マトリックスメタルプロテアーゼ(MMPs)、RNA、例えば融合遺伝子の融合−mRNA、RNAの異常遺伝子発現が幹細胞中で発現する場合、および/または抗体フラグメント、酵素特異的開裂のための基質が存在している場合、同様に有利である。
【0023】
さらに、アドレスモジュールとして、ペプチド配列および/またはアンチセンスペプチド核酸(AS)−PNAが存在している場合が有利である。
【0024】
また、アドレスモジュールとして、酵素カテプシンBまたは他の特異的なプロテアーゼによって開裂可能なペプチド配列が存在している場合も有利である。
【0025】
カーゴが内包フラーレンからなる場合も有利である。
【0026】
診断剤および/または治療剤の本発明による製造方法の際、疎水性の内包フラーレンとバイオシャトル分子とが、逆電子要請型の不可逆性で進行するディールス-アルダー反応(DARinv)を介して結合される。
【0027】
有利には、該結合は共有結合によって実現される。
【0028】
同様に有利には、逆電子要請型のDARを逆反応できないようにし、従ってフラーレンおよびその誘導体と、バイオシャトル分子との間で化学的平衡が調節されない。
【0029】
さらに有利には、フラーレン−バイオシャトルの中間の部分を、ジエノフィル、例えばBoc−K(TCT)−OH、およびテトラジンを介して、室温で固相合成において製造する。
【0030】
本発明によれば、診断剤および/または治療剤を、分子画像化のための成分として、および/または細胞、その内容物および/または構造、例えば細胞核の選択的および/または完全な破壊のために使用する。
【0031】
有利には、それをレントゲン検査、MRT検査、SPECT検査、PET検査用の分子画像化のための成分として、および/または治療、例えばBNCT治療アプローチ(ホウ素−中性子−捕捉−治療)のために、または現代的な化学療法(再構築した、および/または患者特異的な治療アプローチ)と共に使用する。
【0032】
さらに有利には、診断剤および/または治療剤を、細胞内/生体内の造影剤として使用する。
【0033】
また、有利には、診断剤および同時の治療剤を、磁場の使用下で、患者への放射線の負荷なく、治療経過をモニターするために使用する。
【0034】
本発明による解決手段を用いて、細胞内/生体内ではたらき、非常に選択的に作用し、コントラストの高い分子画像化(分子イメージング=転写レベルでの代謝過程の画像化)を実現し、且つ、特定の場合において治療的にも作用できる、診断剤および/または治療剤を提供することが初めて可能になる。従来、選択性が不足しているために、MRトモグラフィーを用いて選択的に細胞内の過程を写し取ることが不可能であった。例えば腫瘍組織と、取り囲む健康な組織との区別、並びに壊死領域について識別することは、従来、不可能であった。従って、同様に、従来の方法を用いて微細な転移を表示することもまた不可能であった。
【0035】
本発明の解決手段によって伝えられる画像化法によるものは、今や、本発明による診断剤および/または治療剤の(細胞内造影剤としての)使用によって、代謝面においても臓器のトモグラフィー表示を可能にする。本発明による方法によって、疎水性の内包フラーレンをバイオシャトル分子上に結合させることが初めて可能になり、従って共有結合を介して不可逆的にフラーレン上に結合されて存在するバイオモジュールおよびアドレスモジュールがある。それによって、本発明による剤を例えば人間または動物の体に取り込む際、該剤をそれぞれ所望の細胞(ターゲット細胞)内を通過させ、且つ、そこでそれぞれの異常発現の目標−mRNA(ここで、CTBS mRNA=過剰発現カテプシンB)とのハイブリダイゼーション後に疎水性の内包フラーレンを介して画像化による位置測定ができる。
【0036】
疎水性の内包フラーレンの構造および組成を、それぞれの使用目的(分子ターゲット)に合わせることができる。
【0037】
本発明による疎水性の内包フラーレンの特別な利点は、炭素ケージ内部に希土類元素および/または超ウラン元素、金属および非金属を含有でき、それが総括的に分子レベル(転写レベル)での非常に良好な画像化に適していることである。その場合、人間または動物の体について有害な物質を十分に使用することができる。なぜなら、炭素ケージによる"捕獲"によってそれらが安全に保たれており、且つ、それによって細胞およびその活性な成分、例えば人間および動物の体の酵素への直接接触もないからである。
【0038】
従来市販の造影剤が、細胞膜を透過できない物質である一方、本発明による解決手段の以下の使用、とりわけ、様々な診断法における造影剤としての使用と同様、治療薬としての使用は、新規且つ有利である。その場合、本発明による剤がそれぞれの所望の細胞、例えば癌細胞に狙い通りに入り込み、そしてそこで蓄積する(局所的な濃度が高まる)。特定のペプチド配列は、その場合、例えば細胞核内への能動輸送を可能にする細胞内在機構のための基質をなす (核局在配列=NLS; またはミトコンドリア局在配列=MLS)。ここに記載される画像化法を用いて、複数の細胞(微細な転移)中での本発明による剤の濃度を、個々に、または初めて、個々の細胞(例えば腫瘍幹細胞)において、トモグラフィーにより測定できる; 従って、該細胞は非常に正確に位置測定される; さらに、それぞれの細胞(悪性または良性腫瘍)の遺伝子発現プロファイル(トランスクリプトーム)が、その方法で検知でき、且つ、腫瘍および取り囲む正常組織の明らかな選択を可能にする。本発明による剤を画像化法に使用するために、疎水性の内包フラーレン内のいくつかまたは全ての物質が磁気モーメントを有している場合、特に有利である。
【0039】
疎水性の内包フラーレンのそれぞれの組成に依存して、いくつかまたは全ての成分は、特定の方法によってそれぞれ所望の位置で活性化でき、従って、例えば1つの細胞または細胞の内容物または細胞核は修復できないように破壊される。
【0040】
課題によって、ハイブリダイゼーションを介した他の検知も充分に可能である。例えば、幹細胞、その移動のMRTにおけるイメージング、さらに典型的な遺伝子発現プロファイルに基づいた分子MR画像化におけるイメージングが初めて可能であるか、または微細な転移の移動のイメージング(モニター)が実施可能である!
【0041】
次に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0042】
この際、図は以下のものを示す
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による剤の輸送モジュール、アドレスモジュール、およびカーゴの模式的な構成; 種々の分子変型物について、輸送モジュール(1.モジュール=左段)、アドレスモジュール(2.モジュール)およびカーゴ(3.+4.モジュール)
【図2】右に輸送モジュール、中央にアドレスモジュール、および左にカーゴを有する、本発明によるGd−クラスタ@バイオシャトルの模式的な構造
【図3】輸送したPNA(上記そのまま)のCTSB mRNA(エクソン1の3’端)への分子の作用位置; AC数は図の下部にある。
【0044】
実施例1
アーク反応器内で、ガドリニウム金属およびスカンジウム金属で改質されたグラファイト電極を、反応性ガス成分を含有するガス混合物中で、75A〜150Aの電流値を有するパルス化された直流を用いて削剥する(abtragen)。使用されたグラファイト電極は、グラファイト:ガドリニウム比およびグラファイト:スカンジウム比がそれぞれ1mol:0.4molである組成を有している。前記ガス混合物は、HeおよびNH3からなり、その際、NH3が反応性成分である。ガス混合物中での割合は、20kPaのHeおよび2kPaのNH3である。
【0045】
この方法の実施の際、内包混合ガドリニウム−スカンジウム−窒化物−クラスタ−フラーレンが、収率5〜35%で生じる。
【0046】
フラーレンの酸塩化物の合成を、J.Arrowsmithら(J.Med.Chem.2002;45:5458〜70)の方式に従って行う。そのために、まず、2mmolの酸を、10mlの塩化チオニルと共に還流で、該酸が完全に溶解するまで沸騰させる。過剰な塩化チオニルを分離し、且つ、得られる沈殿物を、NaOHを介してデシケータ内で終夜、乾燥させる。第二の段階において、Boc−プロピルジアミン−テトラジン−ジエンの合成を行う。そのために、2mmolの酸塩化物を20ml abs.のジクロロメタン中に懸濁させ、その後、2mmolのN−Boc−1,3−ジアミノプロパンと2mmolのトリエチルアミンとの混合物をゆっくりと、10mlの同一の溶剤へと0〜5℃で添加する。得られる強く着色された溶液を、4時間、室温で保持し、引き続き、有機相を水、1N−HCLで、および再度水で洗浄する。Na2SO4での乾燥、ろ過、および残留溶剤の蒸発の後、その残留物をクロマトグラフィーにより(シリカゲル上で)クロロホルム/エタノール9:1を溶離剤として用いて、後精製し、その後で、アセトンから再結晶化する。その収率は70%であるが、しかし常にそれぞれのカルボン酸の品質にも依存する。質量分析(ESI)は正イオンm/e 337.1であった。
【0047】
2つの以下の化合物が、フラーレン−(アミノ結合)−テトラゾリン−ジエンを以下の方式に従って産出する:
0.5mmolの一置換テトラジンアミン、および0.5mmolの4−メチル−5−オキソ−2,3,4,6,8−ペントアザビシクロ[4.3.0]ノナ−2,7,9−トリエン−9−カルボン酸塩化物を、5mlのクロロホルムおよび5mlのトリエチルアミン(v/v=1:1)中で、0〜5℃で溶解する。
【0048】
室温で4時間後、該溶液を水、1Nの塩酸で、および再度水で洗浄する。該反応は妨げられずに進行し、且つ、6時間の時間後に生成物を産出する。乾燥および残留溶剤の蒸発の後、残っている残留物をクロマトグラフィーによりクロロホルム/エタノール9.5/0.5を溶離剤として用いて(シリカゲル上で)精製する。質量分析(ESI)は正イオンm/e 536.3(+Na)であった。
【0049】
ターゲット細胞の特異性は、ターゲット細胞中での特異的な遺伝子発現プロファイルに基づく。ターゲット細胞に典型的なmRNA(ここではCTSB mRNA=カテプシンB mRNA)は、相補的なPNA(ペプチド核酸)と共に、細胞質中でハイブリダイゼーションされる。PNA/mRNAハイブリッドはRNAse Hのための基質にならないので、そのハイブリッドはカーゴ(Gd−Sc−クラスタ@)と共にターゲット細胞の細胞質内に捕捉された(トラップされた)ままである。Gd−Sc−クラスタ@−バイオシャトルの特異性の第一段階はそれに基づく。第二の段階は、PNAとカーゴ(Gd−Scクラスタ@)との間にある、CTSB界面(CTSBタンパク質=酵素)でのPNAの酵素の開裂に基づく。開裂後、細胞核のためのアドレス配列(核局在配列=NLS)は、細胞核中へのカーゴ(Gd−Sc−クラスタ@)の能動輸送を実行する分子について自由に利用可能である。生理学的条件下でのPNA/RNAハイブリッドの安定性は、細胞質内のカーゴ(Gd−Sc−クラスタ@)の受動的な濃縮をみちびき; 活性な細胞(悪性細胞=侵入性細胞)のCTSBの細胞核内へのGd−Sc−クラスタ@の能動輸送は、その細胞核中でのGd−Sc−クラスタ@の能動的な濃縮をみちびき、且つ、不足したハイブリダイゼーション可能性のために、Gd−Sc−クラスタ@を再度排除する正常細胞とは違うMR信号をもたらす。公知のMR造影剤(例えばGd−キレートまたは鉄酸化物粒子)と比較して高められた感度は、Gd−Sc−クラスタ@の特別な特性によって実現される。
【0050】
実施例2
アーク反応器内で、ガドリニウム金属で改質されたグラファイト電極を、反応性ガス成分を含有するガス混合物中で、75A〜150Aの電流値を有するパルス化された直流を用いて焼耗する(abbrennen)。使用されたグラファイト電極は、グラファイト:ガドリニウム比が1Mol:0.4Molである組成を有している。前記ガス混合物は、HeおよびNH3からなり、その際、NH3が反応性成分である。ガス混合物中での割合は、200mbarのHeおよび20mbarのNH3である。この方法の実施の際、内包ガドリニウム−窒化物−クラスタ−フラーレンが、収率5〜10%で生じる。
【0051】
フラーレンの酸塩化物の合成を、J.Arrowsmithら(J.Med.Chem.2002;45:5458〜70)の方式に従って行う。そのために、まず、2mmolの酸を、10mlの塩化チオニルと共に還流で、該酸が完全に溶解するまで沸騰させる。過剰な塩化チオニルを分離し、且つ、得られる沈殿物を、NaOHを介してデシケータ内で終夜、乾燥させる。第二の段階において、Boc−プロピルジアミン−テトラジン−ジエンの合成を行う。そのために、2mmolの酸塩化物を20ml abs.のジクロロメタン中に懸濁させ、その後、2mmolのN−Boc−1,3−ジアミノプロパンと2mmolのトリエチルアミンとの混合物をゆっくりと、10mlの同一の溶剤へと0〜5℃で添加する。得られる強く着色された溶液を、4時間、室温で保持し、引き続き、有機相を水、1N−HCLで、および再度水で洗浄する。Na2SO4での乾燥、ろ過、および残留溶剤の蒸発の後、その残留物をクロマトグラフィーにより(シリカゲル上で)、クロロホルム/エタノール9:1を溶離剤として用いて精製し、その後で、アセトンから再結晶化する。その収率は70%であるが、しかし常にそれぞれのカルボン酸の品質にも依存する。質量分析(ESI)は正イオンm/e 337.1であった。
【0052】
2つの化合物が、フラーレン−(アミノ結合)−テトラゾリン−ジエンを以下の方式に従って産出する:
0.5mmolの一置換テトラジンアミン、および0.5mmolの4−メチル−5−オキソ−2,3,4,6,8−ペントアザビシクロ[4.3.0]ノナ−2,7,9−トリエン−9−カルボン酸塩化物を、5mlのクロロホルムおよび5mlのトリエチルアミン(v/v=1:1)中で、0〜5℃で溶解する。室温で4時間後、該溶液を水、1Nの塩酸で、および再度水で洗浄する。該反応は妨げられずに進行し、且つ、6時間の時間後に生成物を産出する。乾燥および残留溶剤の蒸発の後、残っている残留物をクロマトグラフィーによりクロロホルム/エタノール9.5/0.5を溶離剤として用いて(シリカゲル上で)精製する。質量分析(ESI)は正イオンm/e 536.3(+Na)であった。
【0053】
0.1mmolのGd−クラスタ@)の、35mlのトルエン中の溶液を、終夜、攪拌する。溶解していない部分をろ過で除去する。該溶液を28mgのプロピルアミン−ジヒドロテトラジンと混合し、且つ48時間、室温で攪拌する。該溶液をその後、再度、24時間室温で、引き続き5時間にわたって50℃で保持し、ろ過し、且つ蒸発させる。最後に、テトラジン(マゼンタ)への酸化(Oxadation)を行う。
【0054】
そのように製造されたGd−クラスタ@バイオシャトルを用いて、腫瘍細胞の増殖挙動を、過剰発現c−myc mRNAの例ではMR画像法において表示できる。とりわけ、約20分でc−myc mRNAのT/2があり、且つ、ハイブリダイゼーションが分解の阻害をみちびき、それがc−myc mRNAのさらなる転写の際、ハイブリッドc−myc mRNA/PNAの細胞質中での濃縮をみちびく。正常細胞においては、c−myc m−RNAは実際には検出可能ではない。
【0055】
実施例3
アーク反応器内で、グラファイト電極を、反応性ガス成分を含有するガス混合物中で、175Aの電流値を有するパルス化された直流を用いて焼耗する。前記ガス混合物は、HeおよびCH4からなり、その際、CH4が反応性成分である。ガス混合物中での割合は、200mbarのHeおよび10mbarのCH4である。
【0056】
この方法の実施の際、CH2@C70が内包フラーレンの主成分として生じ、その際、C60およびC70が総フラーレン含有率の主な部分である。
【0057】
バイオシャトルモジュールの、硫黄含有内包フラーレン上への化学的な結合を、上記の実施例1の通りに行う。
【0058】
実施例4
アーク反応器内で、ルテチウム金属およびチオシアン酸グアニジウムで改質されたグラファイト電極を、75A〜150Aの電流値を有するパルス化された直流を用いて焼耗する。使用されたグラファイト電極は、グラファイト:ルテチウム比が1Mol:0.4Mol、且つ、チオシアン酸グアニジウム:ルテチウム比が0.5Mol:1Molである組成を有している。He冷却ガスの圧力は200mbar Heである。
【0059】
この方法の実施の際、内包Lu2S−C82−フラーレンが、収率2〜5%で生じる。
【0060】
バイオシャトルモジュールの、硫黄含有内包フラーレンへの化学的な結合を、上記の実施例2の通りに行う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ペプチドベースの分子を介して内包フラーレンが結合されているバイオシャトル分子からなる、転写レベルでの少なくとも1つの画像化成分を用いた診断剤および/または治療剤であって、該内包フラーレンが疎水性であり、且つ、式
3-xxZ@C2n
[式中、
x=0ないし3、且つn≧34であり、
且つ、Aは希土類元素および/または超ウラン元素、Mは金属、Zは非金属およびCは炭素を意味する]
に相応する診断剤および/または治療剤。
【請求項2】
疎水性の内包フラーレンが、金属、希土類元素および/または超ウラン元素からの窒化物クラスタを個々に、または混合して含有することを特徴とする、請求項1に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項3】
金属、希土類元素および/または超ウラン元素が磁気モーメントを有することを特徴とする、請求項1に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項4】
Aの希土類元素として、ガドリニウム、ホルミウム、ジスプロシウム、ランタン、イッテルビウムおよび/またはテルビウムが存在していることを特徴とする、請求項1に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項5】
Aの超ウラン元素として、ネプツニウム、アクチニウム、ウランおよび/またはプルトニウムが存在していることを特徴とする、請求項1に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項6】
Mの金属として、スカンジウム、イットリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが存在していることを特徴とする、請求項1に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項7】
Zの非金属として、N、P、S、B、Oおよび/またはそれらの化合物および/またはそれらの同位体が存在していることを特徴とする、請求項1に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項8】
Zが同位体として、17O、18O、34S、35S、32P、33Pとして存在していることを特徴とする、請求項7に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項9】
バイオシャトル分子が、輸送モジュール、アドレスモジュール、並びにカーゴからなることを特徴とする、請求項1に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項10】
輸送モジュールとして、両親媒性分子、例えばホメオボックス状タンパク質フラグメント(HOX)が存在していることを特徴とする、請求項1に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項11】
HOX−タンパク質フラグメントとして、PAnT(アンテナペディア−昆虫)、PTDHIV-1/TAT(ウィルス起源)、TP1AOP/Eco(バクテリア起源、例えば大腸菌)、TP人間および/またはTP可変が存在していることを特徴とする、請求項10に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項12】
細胞内のアドレス分子として、ペプチド核酸配列(PNA)、核酸および/またはペプチドフラグメントが存在していることを特徴とする、請求項1に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項13】
細胞周期制御遺伝子、アポトーシス阻害遺伝子、マトリックスメタルプロテアーゼ(MMPS)、RNA、例えば融合遺伝子の融合−mRNA、RNAの異常遺伝子発現が幹細胞中で発現する、および/または抗体フラグメント、酵素特異的開裂のための基質が存在していることを特徴とする、請求項12に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項14】
アドレスモジュールとして、ペプチド配列および/またはアンチセンスペプチド核酸(AS)−PNAが存在していることを特徴とする、請求項12に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項15】
アドレスモジュールとして、酵素カテプシンBまたは他の特定のプロテアーゼによって開裂可能なペプチド配列が存在していることを特徴とする、請求項14に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項16】
カーゴが、内包フラーレンからなることを特徴とする、請求項1に記載の診断剤および/または治療剤。
【請求項17】
疎水性の内包フラーレンとバイオシャトル分子とが、逆電子要請型の不可逆性で進行するディールス-アルダー反応(DARinv)を介して結合される、請求項1から16までのいずれか1項に記載の診断剤および/または治療剤の製造方法。
【請求項18】
共有結合によって結合を実現することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
逆電子要請型のDARを逆反応できないようにし、従ってフラーレンおよびその誘導体と、バイオシャトル分子との間で化学的平衡が調節されないことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
フラーレン−バイオシャトルの中間の部分を、ジエノフィル、例えばBoc−K(TCT)−OH、およびテトラジンを介して、室温で固相合成において製造することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から16までのいずれか1項に記載の診断剤および/または治療剤の、分子画像化のための成分としての、および/または細胞、その内容物および/または構造、例えば細胞核の選択的および/または完全な破壊のための使用。
【請求項22】
診断剤および/または治療剤を、レントゲン検査、MRT検査、SPECT検査、PET検査用の分子画像化のための成分として、および/または治療、例えばBNCT治療アプローチ(ホウ素−中性子−捕捉−治療)のために、または現代的な化学療法(再構築した、および/または患者特異的な治療アプローチ)と共に使用することを特徴とする、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
診断剤および/または治療剤を、細胞内/生体内の造影剤として使用することを特徴とする、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
診断剤且つ同時の治療剤を、磁場の使用下で、患者への放射線の負荷なく、治療経過をモニターするために使用することを特徴とする、請求項23に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−508271(P2012−508271A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535992(P2011−535992)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064912
【国際公開番号】WO2010/055036
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(502098145)
【氏名又は名称原語表記】Leibniz−Institut fuer Festkoerper− und Werkstoffforschung Dresden e.V.
【住所又は居所原語表記】Helmholtzstrasse 20, D−01069 Dresden, Germany
【Fターム(参考)】