説明

診断方法およびマーカー

本発明は、前立腺癌(PRC)もしくは前立腺上皮内腫瘍(PIN)またはその素因を検出し、モニターし、そして治療する方法に関する。本方法において使用するための、新規癌マーカーPSPU43、ならびにバイオアッセイおよびキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は、前立腺癌(PRC)、前立腺上皮内腫瘍(prostatic intraepithelial neoplasia)(PIN)または同疾患の素因を検出し、診断し、モニターし、および治療する方法;およびそのような方法において有用なマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
前立腺癌は欧州および北米の男性において最もよく診断される癌である。該地域では、前立腺癌は肺癌に次ぐ第二位の男性の死因である(Frankel et al. 2003)。該疾患はまた、日本などの世界の他の地域でも次第に増加している。それは東洋諸国で西洋の食事が導入されたことを反映しているかもしれない。
【0003】
前立腺癌は高齢男性の疾患である。60歳男性の40パーセントは限局性前立腺腫瘍を有し、85歳以上の男性の75パーセント超が前立腺癌を有する。該癌は、他の疾患徴候を伴わずに存在することが多い潜在的疾患であり、診断から死まで最大で10年かかることがある。該疾患は、通常、前立腺内の明確な塊から、前立腺の外側縁の崩壊および浸潤、次いで局所のリンパ節への転移および/または骨髄への転移に進行する。
【0004】
前立腺上皮内腫瘍(PIN)は、前立腺癌の前駆症であると考えられている特別なタイプの病変である(McNeal and Bostwick, 1986)。早期に診断された場合、現在では、患者はアンドロゲン除去療法によって治療される。除去療法は性欲および性的能力の低下などの望ましくない副作用を有する。疾患が進行すると、アンドロゲン非依存性になる。その病期では、外科手術(根治的前立腺摘除)が、採用される主な選択肢である。患者の生命は救われるかもしれないが、外科手術の一般的転帰は、失禁、勃起障害および尿漏れである。
【0005】
前立腺癌がなぜ発生し、その進行を何が決定するかははっきりしないままである。さらに、前立腺癌の検査は、主に、身体検査、針生検および骨スキャンに限定されている。現在、前立腺癌の存在を予測するために循環前立腺特異抗原(PSA)のレベル上昇が最も一般的に使用される。これが前立腺癌の唯一の一般的な非侵襲性スクリーニングである。
【0006】
しかし、PSA検査は診断検査ではない。PSAのレベル上昇は他の無関係の要因、例えば良性前立腺肥大(BPH)および前立腺炎によって引き起こされることがある。それは該疾患状態に特異的ではないので、死のリスクを示すことができない(Frankel et al., 2003)。PSAスクリーニングだけでは、臨床決定に十分な情報が提供されない。PSA検査は悪性型と非悪性型とを識別することができず、病変がどのように進行するかを予測することもできない。さらにまた、全ての前立腺癌が血清PSA濃度の増加を生じさせるわけではない。実際、根治療法(前立腺摘除)を受ける高いPSAレベルを有する男性の85%がそうであり、期待される利益を得られない(Frankel et al., 2003)。
【0007】
したがって、特に治療の選択肢がなお確定されないように早期に、前立腺癌またはその前駆症を診断し、経時的に該疾患をモニターする(アクティブモニタリング)ための、より信頼性のある方法が必要である。また患者の状態の判定に有用なマーカーも必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、患者の前立腺癌状態の判定に有用なマーカー、または有用な選択肢を公衆に少なくとも提供するマーカーを提供することである。
【0009】
別の本発明の目的は、前立腺癌または前立腺上皮内腫瘍またはその素因を診断および/または予後診断する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
第一の態様では、本発明は、配列番号3の配列または機能上等価なその変異体もしくは断片、またはストリンジェントな条件下で配列番号3にハイブリダイズする配列またはその変異体もしくは断片を含む、単離された核酸分子を提供する。
【0011】
好ましくはハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件下でのものである。
【0012】
別の態様では、本発明は、ストリンジェントな条件下で以下の配列:
(a) 上記核酸配列、好ましくは配列番号3、またはその相補配列;
(b) 上記核酸配列またはその相補配列に対応するcDNAの完全長コード配列;
(c) (a)または(b)の逆相補配列
にハイブリダイズする、上記核酸配列(好ましくは配列番号3)またはその相補配列の少なくとも10ヌクレオチドの断片を含む、単離された核酸分子を提供する。
【0013】
該核酸分子は、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも60ヌクレオチド、少なくとも70ヌクレオチド、少なくとも80ヌクレオチド、少なくとも90ヌクレオチド、または好ましくは少なくとも100ヌクレオチドでありうる。
【0014】
別の態様では、本発明は、本発明の核酸分子を含む遺伝子構築物を提供する。
【0015】
好ましくは、該構築物は本明細書中で規定される発現構築物である。
【0016】
本発明は、さらに、本発明の遺伝子構築物を含むベクターを提供する。
【0017】
本発明はまた、本発明の遺伝子構築物またはベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0018】
本発明はまた、本発明の核酸分子によってコードされる単離されたポリペプチドを提供する。好ましくは、該ポリペプチドは少なくとも5アミノ酸長である。
【0019】
本発明はまた、(a)配列番号9、(b)配列番号10、(c)配列番号11、(d)配列番号12、(e)配列番号13、または(f)配列番号14の配列;または(a)、(b)、(c)、(d)、(e)または(f)の機能上等価な変異体もしくは断片、またはストリンジェントな条件下で(a)、(b)、(c)、(d)、(e)もしくは(f)のいずれかにハイブリダイズする配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は本発明のポリペプチドを組換え生産する方法であって、以下のステップ:
(a) 本発明のポリペプチドを発現可能な本発明の遺伝子構築物、例えば本明細書中で定義される発現構築物を含む宿主細胞を培養するステップ;
(b) 本発明のポリペプチドを発現する細胞を選択するステップ;
(c) 発現されたポリペプチドを細胞から分離するステップ;および場合により
(d) 発現されたポリペプチドを精製するステップ
を含む方法を提供する。
【0021】
事前ステップとして、本方法は該構築物で宿主細胞をトランスフェクトするステップを含んでよい。
【0022】
本発明はまた、本発明の核酸分子によってコードされるポリペプチド、または該ポリペプチドの機能上等価な変異体もしくは断片に、特異的に結合する抗体を提供する。
【0023】
好ましくは、該抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、単鎖またはヒト化抗体、または免疫学的に活性なその断片である。
【0024】
別の態様では、本発明は、PSPU 43(配列番号3)に結合する1種以上の核酸配列を含むアレイを提供する。
【0025】
本発明はまた、本発明の1種以上の核酸配列を含むアレイを提供する。
【0026】
好ましくは、該アレイは、さらに、1種以上のトランスゲリン(transgelin)1(配列番号7)、トランスゲリン2(配列番号8)、PCA3(配列番号6)、およびPSA(配列番号5)に結合する1種以上の核酸配列を含む。
【0027】
本発明はまた、本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)の発現を改変する化合物をスクリーニングする方法であって、以下のステップ:
(a) 該核酸を発現する試験細胞を試験化合物と接触させるステップ;
(b) 該核酸の発現レベルを決定するステップ;および
(c) 試験化合物の不存在下での発現レベルと比較して発現レベルを改変する化合物を選択するステップ
を含む方法を提供する。
【0028】
本発明は、さらに、本発明のいずれか1種の核酸、好ましくはPSPU 43(配列番号3)マーカーの活性を改変する化合物をスクリーニングする方法であって、以下のステップ:
(a) 該核酸分子によってコードされるペプチドと試験化合物を接触させるステップ;
(b) ペプチドの生物学的活性を検出するステップ;および以下のいずれか:
(c) 化合物の不存在下で検出される生物学的活性と比較してペプチドの生物学的活性を改変する化合物を選択するステップ;または
(d) ペプチドに結合する化合物を選択するステップ
を含む方法を提供する。
【0029】
本発明はまた、本発明のスクリーニング方法によって選択された場合の、本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)の発現または活性を改変する化合物を提供する。
【0030】
さらに別の態様では、本発明は、本発明のスクリーニング方法によって選択される化合物の医薬有効量(pharmaceutically effective amount)を含む組成物を提供する。
【0031】
本発明はまた、PINまたはPRCの治療のための医薬の製造における本発明の化合物の使用に関する。
【0032】
本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)を含むマーカー発現のパターンを含むPINまたはPRC発現プロファイルもまた、本発明によって提供される。好ましくは、該プロファイルは、さらに、トランスゲリン1(配列番号7)、トランスゲリン2(配列番号8)、PCA 3(配列番号6)、およびPSA(配列番号5)から選択される1種以上のマーカーを含む。
【0033】
別の態様では、本発明は、患者のPINまたはPRCを治療または予防する方法であって、患者における本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)の発現レベル、または該マーカーによってコードされるペプチドの活性を改変するステップを含む方法を提供する。これは、発現の促進、または核酸分子、例えばPSPU 43によってコードされるポリペプチドを含む組成物の投与によるものであってよい。別法では、これは発現の阻害によるものでもよい。発現レベルの促進または阻害が適切であるかどうかは、該核酸分子およびPSPU 43によってコードされるポリペプチドが過剰発現されているか、または過少発現されているかに依存する。理論に拘束されることを望まないが、現時点で過剰発現および過少発現の両方が起こりうると考えられる。
【0034】
好ましくは、本発明の核酸分子によってコードされるポリペプチドは過剰発現され、また、本発明の核酸分子に対してアンチセンスの、好ましくはPSPU 43(配列番号3)に対してアンチセンスの1種以上のヌクレオチド配列を含むアンチセンス組成物を患者に投与することによって発現が阻害される。
【0035】
別の実施形態では、siRNA組成物を患者に投与することによって発現を阻害する。該組成物は、本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)の発現を低減する。
【0036】
別の実施形態では、リボザイム組成物を患者に投与することによって発現を阻害する。
【0037】
本発明の核酸分子に、好ましくはPSPU 43(配列番号3)に特異的に結合する抗体または活性な抗体断片を投与することによって発現を阻害してもよい。該活性な断片は好ましくは免疫学的に活性な断片である。
【0038】
一実施形態では、投与される組成物はワクチンである。
【0039】
本発明はまた、本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたはsiRNAに関する。該配列は上記方法において有用である。
【0040】
本発明はまた、本発明のポリペプチド、例えばPSPU 43によってコードされるポリペプチドが過少発現されている患者のPINまたはPRCを治療または予防する方法であって、本発明の核酸分子、例えばPSPU 43(配列番号3)によってコードされる過少発現されているポリペプチド、または該ポリペプチドの活性な変異体もしくは断片を含む組成物を該患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0041】
さらに別の態様では、本発明は、患者のPINまたはPRCを治療または予防する方法であって、本発明のポリペプチド、好ましくはPSPU 43(配列番号3)によってコードされるポリペプチドの発現または活性を改変する化合物を該患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0042】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)が過剰発現されている患者のPINまたはPRCを治療または予防する方法であって、本発明のポリペプチド、好ましくはPSPU 43によってコードされるポリペプチドの発現または活性を低下させる化合物を該患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0043】
本発明はまた、本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)または同核酸分子によってコードされるポリペプチドの医薬有効量を含む組成物を提供する。
【0044】
本発明は、本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)に対する医薬有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたは低分子干渉(small interfering)RNAを含む組成物をさらに提供する。
【0045】
該組成物は該核酸分子に対する2種以上のアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたはsiRNAを含んでよい。
【0046】
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチド、好ましくはPSPU 43(配列番号3)マーカーによってコードされるポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその断片の医薬有効量を含む組成物を提供する。
【0047】
本発明はまた、患者のPINまたはPRCを治療する方法であって、本発明の化合物または本発明の組成物の有効量を、それを必要としている患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0048】
本発明はまた、患者のPINまたはPRCを治療または予防するための医薬の製造における、本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)、または同核酸分子によってコードされるポリペプチドの使用を提供する。
【0049】
本発明はまた、サンプル中の本発明の核酸分子、好ましくはPSPU43(配列番号3)の存在を検出するためのアッセイであって、以下のステップ:
(a) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で本発明の核酸配列、好ましくはPSPU43(配列番号3)にハイブリダイズするヌクレオチドプローブとサンプルを接触させるステップ;および
(b) サンプル中のハイブリダイゼーション複合体の存在を検出するステップ
を含む方法であるアッセイを提供する。
【0050】
好ましくは、該プローブは標識されたプローブであり、通常、蛍光標識プローブである。一実施形態では、該プローブは配列番号3の相補配列である。
【0051】
本発明はまた、患者サンプル中の本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)の発現のレベルを決定する方法であって、該核酸分子を直接的または間接的に測定するステップを含む方法を提供する。
【0052】
好都合には、in situ ハイブリダイゼーションまたはRT-PCR解析において同核酸分子を使用することによって該核酸分子を測定する。
【0053】
本発明はまた、サンプル中の本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)の発現のレベルを決定する方法であって、以下のステップ:
(a) 該核酸分子のDNA配列またはその相補配列を増幅するステップ;または
(b) 該核酸分子のcDNA配列またはその相補配列を増幅するステップ;および
(c) 該サンプル中の1種以上のDNA、cDNAまたはRNAのレベルを測定するステップ
を含む方法に関する。
【0054】
本発明はまた、患者サンプル中の本発明のポリペプチドの存在を検出するためのアッセイであって、以下のステップ:
(a) サンプルを本発明の抗体と接触させるステップ;および
(b) サンプル中の結合ポリペプチドの存在を検出するステップ
を含む方法であるアッセイを提供する。
【0055】
好ましくは、該抗体は検出可能に標識されている。
【0056】
別の態様では、本発明は、患者における前立腺上皮内腫瘍(PIN)、前立腺癌(PRC)状態またはPINもしくはPRCの発生の素因を診断する方法であって、患者サンプル中の本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)の発現レベルを決定するステップを含み、コントロールレベルと比較した該核酸分子の発現レベルの変化が、患者がPIN、PRCを有するかまたはPINもしくはPRCを発生するリスクを有することを示す、方法に関する。
【0057】
最も通常には、該発現レベルの変化は正常なコントロールレベルを少なくとも10%上回るものである。該コントロールレベルは、好都合には、正常な前立腺において測定されるPSPU 43の発現レベルである。
【0058】
該サンプルは、正常な前立腺細胞、またはPINもしくはPRC細胞、および好ましくは正常な前立腺、PINまたは前立腺癌腫瘍由来の上皮細胞を含む。
【0059】
本発明はまた、患者の前立腺上皮内腫瘍(PIN)および前立腺癌(PRC)状態を検査する方法であって、患者サンプル中の本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)の発現レベルを決定するステップを含み、コントロールレベルと比較した該分子の発現レベルの増加が、患者がPIN、PRC状態を有するかまたはPINもしくはPRCを発生するリスクを有することを示す、方法を提供する。
【0060】
別の態様では、本発明は、被験体におけるPINまたはPRCの治療に対する応答をモニターする方法であって、患者サンプル中の本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)の発現レベルを決定するステップおよび該PSPU 43(配列番号3)のレベルをコントロールレベルと比較するステップを含み、コントロールレベルからの決定レベルの統計学的に有意な変化が、治療に対する応答を示す、方法に関する。
【0061】
好ましくは、これらの決定、検査およびモニター方法は、さらに、PINまたはPRCの1種以上の追加のマーカーのレベルを決定するステップおよび該レベルをコントロールからのマーカーレベルと比較するステップを含み、コントロールレベルからの該レベルの有意な偏差、およびそれと併せた本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)のレベルの統計学的に有意な増加が、PRCもしくはPINを示し、またはそれをPINもしくはPRCをモニターするために使用することができる。
【0062】
追加のマーカーは、トランスゲリン1(配列番号7)、トランスゲリン2(配列番号8)、PCA 3(配列番号6)およびPSA(配列番号5)から選択される1種以上のマーカーであってよい。
【0063】
本発明はまた、サンプル中の本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)の存在を検出するためのキットであって、本発明の核酸が含まれる少なくとも1個の容器を含むキットを提供する。
【0064】
本発明はまた、本発明の核酸分子、または本発明のポリペプチドに結合する1種以上の検出試薬を含むキットを提供する。
【0065】
一実施形態では、該キットは、以下の核酸:
(a) トランスゲリン1をコードする核酸(配列番号7)またはその相補配列;
(b) トランスゲリン2をコードする核酸(配列番号8)またはその相補配列;
(c) PCA3をコードする核酸(配列番号6)またはその相補配列;および
(d) PSAをコードする核酸(配列番号5)またはその相補配列
のうち1種以上をさらに含む。
【0066】
別の態様では、本発明は、トランスゲリン2(配列番号8)を参照マーカーとして使用する、本発明の診断、検査またはモニター方法に関する。
【0067】
本発明はまた、本発明の診断、検査およびモニター方法における参照マーカーとしてのトランスゲリン2(配列番号8)の使用に関する。
【0068】
また、核酸配列PSPU 43(配列番号3)が改変、破壊、除去または付加されているゲノムを有する非ヒト動物を提供する。
【0069】
好ましくは該動物はマウスである。
【0070】
図面の説明
以後、添付の図面の図を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1はPspu43のコンセンサス配列を示す。該コンセンサス配列はUniGeneクラスターHs.161160を含むESTのコンティグから生成される。
【図2】図2は、Pspu1、Pspu2、Pspu8、Pspu43、T1およびT2に対するプライマーセットを使用したSYBR Green qPCRアッセイの解離曲線を示す。使用したcDNA鋳型はPC3セルラインから得た。
【図3】図3は、前立腺組織中のマーカー発現を検査するために使用される各プライマーおよびプローブ/プライマーの組み合わせのqPCR効率を示す。標準曲線では汎用参照cDNAを鋳型として使用した。
【図4】図4は、適合組織ペアから得られたcDNA鋳型からの生CT値の平均を示す。各エラー・バーは重複qPCR反応から算出された+/- 1標準偏差を示す。
【図5】図5は、ゲノムDNA混入に関して補正された各マーカーについてのサンプルあたりのcDNAの相対量を示す。相対量は、平均CT、および各マーカーに関して描かれた標準曲線に対して算出された最良適合線(line of best fit)から決定した。RNAのみの鋳型(RT反応なし)についてのqPCRに関して同様の計算を実施し、この反応の相対量の値を、cDNA鋳型に関して決定した値から差し引いた。
【図6】図6は、ヌクレオチド配列Pspu43の6通りのリーディングフレームの翻訳を示す。一文字アミノ酸コードを使用した。「-」は停止コドンを表す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
定義
本明細書および特許請求の範囲で使用される用語「含む(comprising)」は、「少なくとも部分的に〜からなる(consisting at least in part of)」を意味し、すなわち、該用語を含む本明細書および特許請求の範囲の記載を解釈する場合、各記載中の該用語が前に記載された特徴は全て存在する必要があるが、他の特徴が存在することもありうる。関連用語、例えば「comprise」および「comprised」も同様に解釈されるものとする。
【0073】
本明細書中で開示される一定範囲の数への言及(例えば1〜10)は、該範囲内の全ての関連する数(例えば1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9および10)および該範囲内の任意の範囲の有理数(例えば2〜8、1.5〜5.5および3.1〜4.7)への言及をも包含し、したがって、本明細書中で明示的に開示される全範囲の全ての部分的範囲が明確に開示されるものとする。これらは特に意図されるものの例にすぎず、列挙される最低値〜最高値の範囲の数値の全ての可能な組み合わせは、同様に、本出願中で明示的に記載されていると見なされるものとする。
【0074】
本明細書中で使用される用語「マーカー」とは、染色体上の識別可能な物理的位置を有するDNAのセグメントを表す。マーカーは、遺伝子または他の識別可能な核酸配列、例えばオープンリーディングフレーム、イントロンの部分または遺伝子間ゲノムDNAセグメントであってよい。
【0075】
本明細書中で使用されるマーカーの「コントロールレベル」とは、正常な健常個体由来のサンプル中で検出される発現のレベル、またはPRCもしくはPINを患っていると判明していない個体集団に基づいて決定されるレベルを表す。コントロールレベルは、単一参照集団から得られる単一発現パターンであってよく、複数の発現パターンであってもよい。例えば、コントロールレベルは、以前に検査された細胞から得られた発現パターンのデータベースでありうる。別の例は、参照マーカー(例えばトランスゲリン2)と本発明のマーカー間のレシオメトリック測定(ratiometric measure)であってよい。別法では、コントロールレベルは、より早期に同一患者から得られる1種以上の読み取り値またはそのような読み取り値の平均であってよい。
【0076】
本明細書中で使用される用語「ポリヌクレオチド(群)」は、任意の長さの一本鎖または二本鎖デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを意味し、それには、非限定な例として、遺伝子のコード配列および非コード配列、センス配列およびアンチセンス配列、エキソン、イントロン、ゲノムDNA、cDNA、pre-mRNA、mRNA、rRNA、siRNA、miRNA、tRNA、リボザイム、組換えポリヌクレオチド、単離および精製された天然DNAまたはRNA配列、合成RNAおよびDNA配列、核酸プローブ、プライマー、断片が含まれる。核酸分子への言及も同様に理解されるものとする。
【0077】
本明細書中で使用される「アンチセンス」は、概して、本発明のポリペプチドをコードするmRNA分子の少なくとも一部分に相補的であり、mRNA翻訳などの転写後イベントに干渉可能なDNAもしくはRNAまたはその組み合わせを意味する。
【0078】
本明細書中で提供されるポリヌクレオチド配列の「断片」は、目的の標的に対して特異的ハイブリダイゼーションが可能な連続したヌクレオチドの部分配列であり、例えば少なくとも10ヌクレオチド長の配列である。本発明の断片は、本発明のポリヌクレオチドの連続したヌクレオチドの10、好ましくは15ヌクレオチド、好ましくは少なくとも20ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも30ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも40ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも50ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも60ヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチド配列の断片は、アンチセンス、遺伝子サイレンシング、三重らせんまたはリボザイムテクノロジーにおいて、またはプライマー、プローブとして使用することができ、マイクロアレイに含めることができ、または本発明の、ポリヌクレオチドに基づく選択方法において使用することができる。
【0079】
本明細書中で使用される用語「患者」は、好ましくは、哺乳類患者であり、それには、ヒト、および非ヒト哺乳類、例えばネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、シカ、マウス、フクロネズミおよび霊長類(ゴリラ、アカゲザルおよびチンパンジーが含まれる)および他の農家(domestic farm)または動物園の動物が含まれる。好ましくは、該哺乳類はヒトである。
【0080】
用語「治療(処置)する(treat)」、「treating」または「treatment」および「予防する(preventing)」とは、前立腺癌またはPINを阻止するか、回復させるか、または軽減する治療および予防手段をいう。該患者は、観察可能または測定可能な(統計学的に有意な)、癌またはPIN細胞の数;腫瘍サイズ;癌またはPINに関連している症状;のうちの1種以上の低減、腫瘍サイズ;腫瘍成長;転移;の阻害、生活の質の改善を示す。
【0081】
本明細書中で使用される「患者サンプル」は、スクリーニング対象の患者由来の生物学的サンプルを意味する。該生物学的サンプルは、選択マーカーの発現を検出できる、当技術分野において公知の任意の好適なサンプルであってよい。体組織または体液から得られる個々の細胞および細胞集団が含まれる。検査対象の好適な体液の例は、血漿、前立腺マッサージ液(prostate massage fluid)、血液、精液、リンパ液および尿である。
【0082】
好ましくは、検査対象のサンプルは、PINまたはPRCを示すことが知られているかまたは疑われる組織、最も通例では前立腺組織に由来する上皮細胞を含む。健常個体由来のサンプルを検査してもよい。正常な健常個体は、PINまたはPRCまたは良性前立腺形成不全(BPH)の臨床症状を有さない、好ましくは年齢30歳未満の個体である。別法では、前立腺生検試料の正常領域由来の正常な健常細胞は本方法でのコントロールとして使用することができる。
【0083】
用語「プライマー」とは、鋳型にハイブリダイズし、標的に相補的なポリヌクレオチドの重合を開始させるために使用される、遊離3'OH基を通常有する、短いポリヌクレオチドを表す。
【0084】
用語「プローブ」とは、ハイブリダイゼーションに基づくアッセイにおいて、該プローブに相補的なポリヌクレオチド配列を検出するために使用される短いポリヌクレオチドをいう。該プローブは、本明細書中で定義されるポリヌクレオチドの「断片」からなっていてよい。
【0085】
本明細書中で使用される用語「ポリペプチド」は、任意の長さのアミノ酸鎖、好ましくは少なくとも5アミノ酸、好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも15、好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも25、好ましくは少なくとも30、好ましくは少なくとも40、好ましくは少なくとも50、好ましくは少なくとも60、好ましくは少なくとも70、好ましくは少なくとも80、好ましくは少なくとも90、好ましくは少なくとも100、好ましくは少なくとも110、好ましくは少なくとも120、好ましくは少なくとも125アミノ酸のアミノ酸鎖を包含し、それには完全長タンパク質が包含され、該ポリペプチドにおいてはアミノ酸残基がペプチド共有結合によって連結されている。本発明のポリペプチドは精製された天然産物であってよく、あるいは組換え技術または合成技術によって部分的にまたは全体として生産してもよい。該用語は、ポリペプチド、ポリペプチドの会合体(例えば二量体または他の多量体)、融合ポリペプチド、ポリペプチド断片、ポリペプチド変異体、またはその誘導体をも言う。
【0086】
ポリペプチドの「断片」は、その生物学的活性に必要とされる機能を発揮し、および/またはポリペプチドの三次元構造を提供する、そのポリペプチドの部分配列である。該用語は、ポリペプチド、ポリペプチドの会合体(例えば二量体または他の多量体)、融合ポリペプチド、ポリペプチド断片、ポリペプチド変異体、またはその誘導体をもいう。
【0087】
本明細書中で開示されるポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に適用される用語「単離された」は、その天然細胞環境から取り出されている配列を表すために使用される。単離された分子は、生化学的技術、組換え技術、および合成技術を含む任意の方法または方法の組み合わせによって得ることができる。該ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は少なくとも1つの精製ステップによって製造される。
【0088】
用語「組換え」とは、その天然環境において周囲にある配列から取り出され、および/またはその天然環境において存在しない配列と再結合されているポリヌクレオチド配列を表す。
【0089】
「組換え」ポリペプチド配列は「組換え」ポリヌクレオチド配列からの翻訳によって生産される。
【0090】
本明細書中で使用される用語「変異体」とは、具体的に特定されている配列と異なるポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列であって、1個以上のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が欠失、置換、または付加されているものをいう。変異体は、天然に存在する対立遺伝子変異体、または天然に存在しない変異体であってよい。変異体は同種由来または他種由来であってよく、相同体、パラログ(paralogues)およびオーソログ(orthologues)を包含してよい。特定の実施形態では、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドの変異体は、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの生物学的活性と同一または類似の生物学的活性を有する。該用語「変異体」は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドに言及する場合、本明細書中で定義されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの全ての形態を包含する。
【0091】
変異ポリヌクレオチド配列は、好ましくは、本発明の配列に対して、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも51%、より好ましくは少なくとも52%、より好ましくは少なくとも53%、より好ましくは少なくとも54%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも56%、より好ましくは少なくとも57%、より好ましくは少なくとも58%、より好ましくは少なくとも59%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも61%、より好ましくは少なくとも62%、より好ましくは少なくとも63%、より好ましくは少なくとも64%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも66%、より好ましくは少なくとも67%、より好ましくは少なくとも68%、より好ましくは少なくとも69%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも71%、より好ましくは少なくとも72%、より好ましくは少なくとも73%、より好ましくは少なくとも74%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも76%、より好ましくは少なくとも77%、より好ましくは少なくとも78%、より好ましくは少なくとも79%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の同一性を示す。同一性は、本発明のポリヌクレオチドの少なくとも20個のヌクレオチド位置、好ましくは少なくとも50個のヌクレオチド位置、より好ましくは少なくとも100個のヌクレオチド位置の比較ウインドウにわたって見出され、最も好ましくは全長にわたって見出される。
【0092】
ポリヌクレオチド配列同一性は、グローバル配列アライメントプログラム(例えばNeedleman, S. B. and Wunsch, C. D. (1970) J. Mol. Biol. 48, 443-453)を使用して、候補および対象ポリヌクレオチド配列間のオーバーラップの全長にわたって算出することができる。Needleman-Wunschグローバルアライメントアルゴリズムの完全な実施は、http://www.hgmp.mrc.ac.uk/Software/EMBOSS/から入手できるEMBOSSパッケージ(Rice,P. Longden,I. and Bleasby,A. EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Trends in Genetics June 2000, vol 16, No 6. pp.276-277)のニードルプログラムに見出せる。European Bioinformatics Instituteサーバーはまた、http:/www.ebi.ac.uk/emboss/align/において、2配列間のEMBOSS-ニードルグローバルアライメントをオンラインで実施するための手段を提供する。
【0093】
別法では、末端ギャップにペナルティを課さずに2配列の最適なグローバルアライメントを計算するGAPプログラムを使用することができる。GAPは以下の文書で記載されている:Huang, X. (1994) On Global Sequence Alignment. Computer Applications in the Biosciences 10, 227-235。
【0094】
ポリヌクレオチド変異体はまた、1種以上の具体的に特定されている配列に対して類似性を示す変異体であって、該配列の機能的同等性を保存する可能性が高く、かつ偶然によって生じたとは合理的に予測できない変異体を包含する。このプログラムは、配列間の類似性領域を発見し、そのような各領域に関して「E値」を報告する。E値は、ランダムな配列を含有する固定参照サイズのデータベース中で偶然にそのような適合が観察されると予測できる期待回数である。このデータベースのサイズはbl2seqプログラムのデフォルト設定によってセットされる。1よりずっと小さいE値の場合、該E値はそのようなランダムな適合の概算の確率である。
【0095】
変異ポリヌクレオチド配列は、好ましくは、具体的に特定されている配列のいずれか1種と比較して、1 x 10-5未満、より好ましくは1 x 10-6未満、より好ましくは1 x 10-9未満、より好ましくは1 x 10-12未満、より好ましくは1 x 10-15未満、より好ましくは1 x 10-18未満、最も好ましくは1 x 10-21未満のE値を示す。
【0096】
BLASTNの使用は、本発明のポリヌクレオチド変異体に関する配列同一性の決定での用途に好ましい。
【0097】
ポリヌクレオチド配列の同一性は以下のUNIX(登録商標)コマンドラインパラメータを使用して調べることができる:
bl2seq -i nucleotideseq1 -j nucleotideseq2 -F F -p blastn
パラメータ-F Fは複雑さが低いセクションのフィルタリングをオフにする。パラメータ-pは配列ペアに適切なアルゴリズムを選択する。bl2seqプログラムは、同一ヌクレオチドの数およびパーセンテージの両者として「同一性=」の行に配列同一性を報告する。
【0098】
ポリヌクレオチド配列同一性および類似性は以下の様式で決定することもできる。Genbank、EMBL、Swiss-PROTおよび他のデータベースの場合のように配列アライメントアルゴリズムおよび配列類似性検索ツールを使用して、対象ポリヌクレオチド配列を候補ポリヌクレオチド配列と比較する。Nucleic Acids Res 29:1-10 and 11-16, 2001はオンラインリソースの例を提供する。BLASTN(bl2seqのBLASTプログラムパッケージ バージョン2.2.13 March 2007に含まれる(Tatiana A. et al, FEMS Microbiol Lett. 174:247-250 (1999), Altschul et al., Nuc.Acis Res 25:3389-3402, (1997))は、NCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)またはNCB1 at Bethesda, Maryland, USAから公的に入手可能である。複雑さが低い部分のフィルタリングをオフにすべきであること以外は、bl2seqのデフォルトパラメータを利用する。
【0099】
あるいは、変異ポリヌクレオチドは、特定されるポリヌクレオチド配列、またはその相補配列に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。
【0100】
用語「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」、およびその文法上等価な用語は、ポリヌクレオチド分子が標的ポリヌクレオチド分子(例えばDNAまたはRNAブロット、例えばサザンブロットまたはノーザンブロット上に固定されている標的ポリヌクレオチド分子)に温度および塩濃度の定義条件下でハイブリダイズできることを表す。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする能力は、低ストリンジェントな条件下で最初にハイブリダイズさせ、その後ストリンジェンシーを所望のストリンジェンシーに高めることによって決定することができる。
【0101】
約100塩基長を超えるポリヌクレオチド分子に関して、ストリンジェントな典型的ハイブリダイゼーション条件は、ネイティブの二重鎖の融解温度(Tm)のせいぜい25〜30℃(例えば10℃)下である(一般的に、Sambrook et al., Eds, 1987, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Ed. Cold Spring Harbor Press; Ausubel et al., 1987, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing(参照により本明細書中に包含される)を参照のこと)。約100塩基を超えるポリヌクレオチド分子のTmは、式:Tm = 81.5 + 0.41%(G+C -log(Na+))によって算出することができる(Sambrook et al., Eds, 1987, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Ed. Cold Spring Harbor Press; Bolton and McCarthy, 1962, PNAS 84:1390)。100塩基長を超えるポリヌクレオチドに関するストリンジェントな典型的条件は、6X SSC、0.2%SDSの溶液中で予洗し;65℃、6X SSC、0.2%SDSで一晩ハイブリダイズさせ;次いで各1X SSC、0.1%SDS中で65℃で30分間2回洗浄し、かつ各0.2X SSC、0.1%SDS中で65℃で30分間2回洗浄する条件などのハイブリダイゼーション条件である。
【0102】
一実施形態では、ストリンジェントな条件では、50%ホルムアミド、5 x SSC、50 mMリン酸ナトリウム(pH 6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5 xデンハート液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランを42℃で使用し、42℃の0.2 x SSCおよび55℃の50%ホルムアミド中で洗浄し、次いでEDTAを含有する0.1 x SSCを含む洗浄を55℃で行う。
【0103】
100塩基未満の長さを有するポリヌクレオチド分子に関して、ストリンジェントな典型的ハイブリダイゼーション条件はTmの5〜10℃下である。平均で、100 bp未満の長さのポリヌクレオチド分子のTmはおよそ(500/オリゴヌクレオチド長)℃だけ低下する。
【0104】
ペプチド核酸(PNA)として知られるDNAミミック(Nielsen et al., Science. 1991 Dec 6;254(5037):1497-500)に関して、Tm値はDNA-DNAまたはDNA-RNAハイブリッドの値より高く、Giesen et al., Nucleic Acids Res. 1998 Nov 1;26(21):5004-6に記載の式を使用して算出することができる。100塩基未満の長さを有するDNA-PNAハイブリッドに関するストリンジェントな典型的ハイブリダイゼーション条件はTmの5〜10℃下である。
【0105】
変異ポリヌクレオチドはまた、本発明の配列と異なるが、遺伝暗号の縮重の結果として、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと類似の活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包含する。ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させない配列変化は「サイレント変異」である。ATG(メチオニン)およびTGG(トリプトファン)を除き、同一アミノ酸に関する他のコドンは、例えば特定の宿主生物中でコドン発現を最適化するために、当技術分野で認識されている技術によって変化させることができる。
【0106】
コード化ポリペプチド配列中の1個または数個のアミノ酸の保存的置換を生じさせ、その生物学的活性を大きく変化させないポリヌクレオチド配列の改変もまた本発明に含まれる。当業者は、表現型上サイレントなアミノ酸置換を作成するための方法を承知している(例えばBowie et al., 1990, Science 247, 1306を参照のこと)。
【0107】
コード化ポリペプチド配列中のサイレント変異および保存的置換に基づく変異ポリヌクレオチドは、bl2seqプログラムを使用して上記tblastxアルゴリズムによって決定することができる。
【0108】
本明細書中で使用される用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、標的配列に完全に相補的なヌクレオチドおよび、アンチセンスオリゴヌクレオチドが該標的配列に特異的にハイブリダイズできる限り、1個以上のヌクレオチドのミスマッチを有するヌクレオチドの両者を包含する。例えば、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドには、本発明の核酸配列、好ましくはPSPU 43(配列番号3)の少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、好ましくは75、好ましくは100、より好ましくは200個の連続したヌクレオチドの長さにわたって、またはその完全長にわたって、少なくとも70%以上、好ましくは少なくとも75%以上、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%以上、より好ましくは少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%以上、さらにより好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、または99%の同一性を有するポリヌクレオチドが含まれる。上で考察された当技術分野において公知のアルゴリズムを使用して同一性を決定することができる。さらにまた、該アンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体または修飾産物もまた本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドとして使用することができる。
【0109】
ポリペプチドに関する用語「変異体」は、天然に存在するポリペプチド、組換えおよび合成によって生産されるポリペプチドを包含する。変異ポリペプチド配列は、本発明の配列に対して、好ましくは、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも51%、より好ましくは少なくとも52%、より好ましくは少なくとも53%、より好ましくは少なくとも54%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも56%、より好ましくは少なくとも57%、より好ましくは少なくとも58%、より好ましくは少なくとも59%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも61%、より好ましくは少なくとも62%、より好ましくは少なくとも63%、より好ましくは少なくとも64%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも66%、より好ましくは少なくとも67%、より好ましくは少なくとも68%、より好ましくは少なくとも69%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも71%、より好ましくは少なくとも72%、より好ましくは少なくとも73%、より好ましくは少なくとも74%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも76%、より好ましくは少なくとも77%、より好ましくは少なくとも78%、より好ましくは少なくとも79%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の同一性を示す。同一性は、本発明のポリペプチドの少なくとも20個のアミノ酸位置、好ましくは少なくとも50個のアミノ酸位置、より好ましくは少なくとも100個のアミノ酸位置の比較ウインドウにわたって見出され、最も好ましくは全長にわたって見出される。
【0110】
ポリペプチド変異体はまた、1種以上の具体的に特定されている配列に対して類似性を示す変異体であって、該配列の機能的等価性を保存する可能性が高く、かつ偶然によって生じたとは合理的に予測できない変異体を包含する。
【0111】
ポリペプチド配列同一性および類似性は以下の様式で決定することができる。bl2seqにおいてBLASTP(BLASTプログラムパッケージ バージョン2.2.13 May 2007に含まれる)を使用して、対象ポリペプチド配列を候補ポリペプチド配列と比較する。該プログラムはNCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)から公的に入手可能である。複雑さが低い領域のフィルタリングをオフにすべきこと以外は、bl2seqのデフォルトパラメータを利用する。
【0112】
ポリペプチド配列の類似性は以下のUNIX(登録商標)コマンドラインパラメータを使用して調べることができる:
bl2seq -i peptideseq1 -j peptideseq2 -F F -p blastp
変異ポリペプチド配列は、好ましくは、具体的に特定されている配列のいずれか1種と比較して、1 x 10-5未満、より好ましくは1 x 10-6未満、より好ましくは1 x 10-9未満、より好ましくは1 x 10-12未満、より好ましくは1 x 10-15未満、より好ましくは1 x 10-18未満、最も好ましくは1 x 10-21未満のE値を示す。
【0113】
パラメータ-F Fは複雑さが低いセクションのフィルタリングをオフにする。パラメータ-pは配列ペアに適切なアルゴリズムを選択する。このプログラムは、配列間の類似性領域を発見し、そのような各領域に関して「E値」を報告する。E値は、ランダムな配列を含有する固定参照サイズのデータベース中で偶然にそのような適合が認められると予測できる期待回数である。1よりずっと小さいE値の場合、これはそのようなランダムな適合の概算の確率である。
【0114】
ポリペプチド配列同一性はまた、グローバル配列アライメントプログラムを使用して、候補および対象ポリペプチド配列間のオーバーラップの全長にわたって算出してもよい。上で考察されるEMBOSS-ニードル(http:/www.ebi.ac.uk/emboss/align/で入手可能)およびGAP(Huang, X. (1994) On Global Sequence Alignment. Computer Applications in the Biosciences 10, 227-235.)もまた、ポリペプチド配列同一性を算出するために好適なグローバル配列アライメントプログラムである。
【0115】
上記BLASTPの使用は、本発明のポリペプチド変異体の決定における用途に好ましい。
【0116】
上記ポリペプチド配列の1個または数個のアミノ酸の保存的置換であって、その生物学的活性を大きく変化させない置換もまた本発明に含まれる。保存的置換には、典型的に、1アミノ酸を類似の特性を有する別のアミノ酸の代わりに用いることが含まれ、例えば以下の群:バリン、グリシン;グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リシン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシンの、群内での置換が含まれる。他の保存的置換は以下の表1から選択することができる。
【0117】

【0118】
天然に存在する残基は共通の側鎖特性に基づいて以下の群に分けられる:
(1) 疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2) 中性親水性:cys、ser、thr;
(3) 酸性:asp、glu;
(4) 塩基性:asn、gln、his、lys、arg:
(5) 鎖の配向に影響する残基:gly、pro;および
(6) 芳香族性:trp、tyr、phe。
非保存的置換は、前記クラスのうちの1クラスのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することを伴う。
【0119】
他の変異体には、ペプチド安定性に影響する改変を伴うペプチドが含まれる。そのようなアナログは、例えば、ペプチド配列中に1個以上の(ペプチド結合に取って代わる)非ペプチド結合を含有してよい。また、天然に存在するL-アミノ酸以外の残基、例えばD-アミノ酸または天然に存在しない合成アミノ酸、例えばベータまたはガンマアミノ酸を含むアナログ、および環状アナログが含まれる。
【0120】
置換、欠失、付加または挿入は、当技術分野において公知の突然変異誘発法によって施してよい。当業者は、表現型上サイレントなアミノ酸置換を施すための方法を承知している(例えばBowie et al., 1990, Science 247, 1306を参照のこと)。
【0121】
また、例えばビオチン化、ベンジル化、グリコシル化、リン酸化、アミド化によって、遮断/保護基を使用する誘導体化等によって、合成中または合成後に改変されているポリペプチドも本発明のポリペプチド内に含まれる。そのような改変は該ポリペプチドの安定性または活性を高める。
【0122】
用語「遺伝子構築物」とは、別のポリヌクレオチド分子(挿入ポリヌクレオチド分子)、例えば、非限定的に、cDNA分子、が中に挿入されているポリヌクレオチド分子、通常は二本鎖DNAをいう。遺伝子構築物は、挿入ポリヌクレオチド分子の転写および、場合により、転写産物からポリペプチドへの翻訳を可能にする必要な要素を含有してよい。挿入ポリヌクレオチド分子は宿主細胞に由来する分子であってよく、異なる細胞または生物に由来する分子であってよく、および/または組換えポリヌクレオチドであってよい。宿主細胞の内部に入ると、遺伝子構築物は宿主染色体DNAに組み込まれる。遺伝子構築物はベクターに連結することもできる。
【0123】
用語「ベクター」とは、遺伝子構築物を宿主細胞内へ輸送するために使用されるポリヌクレオチド分子、通常は二本鎖DNAを表す。該ベクターは大腸菌(E. coli)などの少なくとも1つの追加の宿主系において複製可能である。
【0124】
用語「発現構築物」とは、挿入ポリヌクレオチド分子の転写および、場合により、転写産物からポリペプチドへの翻訳を可能にする必要な要素を含む遺伝子構築物を表す。発現構築物は、典型的に、5'から3'への方向で以下の要素:
(a) 構築物が形質導入される対象の宿主細胞において機能的なプロモーター、
(b) 発現対象のポリヌクレオチド、および
(c) 構築物が形質導入される対象の宿主細胞において機能的なターミネーター
を含む。
【0125】
用語「コード領域」または「オープンリーディングフレーム」(ORF)とは、適切な調節配列の制御下で転写産物および/またはポリペプチドを生産可能なゲノムDNA配列またはcDNA配列のセンス鎖をいう。コード配列は5'翻訳開始コドンおよび3'翻訳停止コドンの存在によって同定される。遺伝子構築物内に挿入される場合、「コード配列」は、プロモーターおよびターミネーター配列および/または他の調節要素と作動可能に連結されていると、発現可能である。
【0126】
「作動可能に連結されている」は、発現対象の配列が調節要素の制御下に配置されていることを意味し、該調節要素には、プロモーター、転写制御配列、翻訳制御配列、複製起点、組織特異的調節要素、時間的調節要素、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、リプレッサーおよびターミネーターが含まれる。
【0127】
用語「非コード領域」とは、翻訳開始部位の上流および翻訳停止部位の下流の非翻訳配列を表す。前記配列はそれぞれ5' UTRおよび3' UTRとも称される。前記領域には、転写開始および終結ならびに翻訳効率の調節に必要とされる要素が含まれる。
【0128】
ターミネーターは転写を終結させる配列であり、翻訳される配列の下流の遺伝子の3'非翻訳末端に見出される。ターミネーターはmRNA安定性の重要な決定要因であり、いくつかの事例では、空間的調節機能を有することが見出されている。
【0129】
用語「プロモーター」とは、遺伝子転写を調節する、コード領域の上流の転写されないシス調節要素を表す。プロモーターは、転写開始部位および保存ボックス、例えばTATAボックス、および転写因子が結合するモチーフを指定するシスイニシエーター要素を含む。
【0130】
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの「発現を変化するための」および「改変された発現」という用語は、本発明のポリヌクレオチドに対応するゲノムDNAが改変されて、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現が変化する状況を包含するものとする。ゲノムDNAの改変は、遺伝子形質転換または、突然変異を誘発するための、当技術分野において公知の他の方法に基づいてよい。「改変された発現」は、生産されるメッセンジャーRNAおよび/またはポリペプチドの量の増加または減少に関連しうるものであり、生産されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの配列の変化に起因してポリペプチドの活性を変化させることもある。
【0131】
発明の詳細な説明
出願人(発明者)らは、配列決定済み前立腺cDNAライブラリーを発掘する新しいバイオインフォマティクス手法を使用して前立腺癌またはPINの新規マーカーを同定した。データパニングは、転写産物が有する、所定の組織への特異性の程度を決定する技術である。この方法はUniGeneデータベースを利用する(www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene)。UniGeneクラスター内のESTを起源のライブラリーについて評価し、指定された組織由来のESTの集計量を維持する。この集計量をUniGeneクラスターにおけるESTの総数のパーセンテージとして表す。該パーセンテージが高いほど、指定組織以外の組織での該転写産物の検出例が少ない。この手法は他のテクノロジー、例えばcDNAマイクロアレイ(Carlisle et al., 2000)よりも優れた利点を有し、それは、不偏性遺伝子選択、および疾患状態間の差異の特定における高い識別力に起因する。前立腺癌での遺伝子発現をプロファイリングするための以前の試みでは、分析対象の発現配列タグの数が限定されている方法(Huang et al., 1999)または遺伝子選択が偏っている方法(Carlisle et al., 2000)を使用していた。
【0132】
この分析から、出願人らは、前立腺癌またはPINの進行に伴って発現が変化すると考えられる新規マーカーを同定した。このマーカーはまた、前立腺癌またはPINを治療するための薬物を開発するための有望な新規標的である。
【0133】
該マーカーを以下の表1に列挙し、完全長配列を配列表に示す。該マーカーの発現レベルは前立腺癌患者において変化する。便宜のため、本明細書中では該マーカーを前立腺特異的unigene(prostate specific unigene(PSPU))マーカーと称する。該マーカーはDNAまたはRNA配列、遺伝子または染色体断片でありうる。遺伝子によってコードされる任意の対応するポリペプチドは、PSPUポリペプチドまたはPSPUタンパク質と称される。
【0134】
前立腺癌またはPinに関与するマーカー
名称 Unigene # 配列番号 集積% 組織
PSPU 43 161160 3 83 前立腺、その他
【0135】
本発明の核酸分子または本明細書に記載のその他のものは、当業者に公知の種々の技術を使用して、組織から単離することができる。一例として、Mullis et al., Eds. 1994 The Polymerase Chain Reaction, Birkhauserに記載のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用してそのようなポリヌクレオチドを単離することができる。本発明の核酸分子は、本発明のポリヌクレオチド配列から得られる、本明細書中で定義されるプライマーを使用して、増幅することができる。
【0136】
ポリヌクレオチドを単離するための別の方法には、本発明のポリヌクレオチドの全体または部分、特に配列番号3に記載の配列を有するポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションプローブとして使用することが含まれる。固体支持体、例えばニトロセルロースフィルターまたはナイロンメンブレン上に固定されたポリヌクレオチドに標識ポリヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせる技術を使用して、ゲノムまたはcDNAライブラリーをスクリーニングすることができる。同様に、プローブをビーズにカップリングして、標的配列にハイブリダイズさせてよい。磁気分離などの公知技術プロトコルを使用して単離を行うことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件および洗浄条件の典型例は上に挙げる通りである。
【0137】
ポリヌクレオチド断片は当技術分野において周知の技術、例えば制限酵素消化およびオリゴヌクレオチド合成によって生産してよい。
【0138】
したがって、第一の態様では、本発明は、配列番号3、同配列の機能上等価な変異体または断片、または前記配列のいずれかにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、単離された核酸を提供する。
【0139】
別の態様では、本発明は、ストリンジェントな条件下で以下の配列:
(a) 本発明の核酸配列、好ましくは配列番号3またはその相補配列;
(b) 本発明の核酸配列またはその相補配列に対応するcDNAの完全長コード配列;
(c) (a)または(b)の逆相補配列
にハイブリダイズする、本発明の核酸配列、好ましくは配列番号3またはその相補配列、の少なくとも10ヌクレオチドの断片からなる単離された核酸分子を提供する。
【0140】
ストリンジェントな条件は上で述べた通りである。
【0141】
該核酸分子は、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも30ヌクレオチド、少なくとも40ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも60ヌクレオチド、少なくとも70ヌクレオチド、少なくとも80ヌクレオチド、少なくとも90ヌクレオチド、または好ましくは少なくとも100ヌクレオチドである。
【0142】
当技術分野において周知の方法で、部分的ポリヌクレオチド配列をプローブとして使用し、サンプル中の対応する完全長ポリヌクレオチド配列を同定することができる。そのような方法には、PCRに基づく方法、5'RACE(Methods Enzymol. 218: 340-56 (1993); Sambrook et al., 上記)およびハイブリダイゼーションに基づく方法、コンピュータ/データベースに基づく方法が含まれる。検出可能な標識、例えば放射性同位体、蛍光、化学発光および生物発光標識を使用して検出を容易にすることができる。逆PCRはまた、既知領域に基づくプライマーで出発して、本明細書中で開示されるポリヌクレオチド配列に隣接する未知の配列の取得を可能にする(Triglia et al., Nucleic Acids Res 16, 8186, (1998))。該方法では、数種の制限酵素を使用して、遺伝子の既知領域中の好適な断片を作製する。そして該断片を分子内ライゲーションによって環化し、PCR鋳型として使用する。既知領域から多岐にわたるプライマーが設計される。完全長クローンを物理的に組立てるために、標準分子生物学アプローチを利用することができる(Sambrook et al., 上記)。本発明のポリヌクレオチドの増幅を可能にするプライマーおよびプライマーペアもまた、本発明の別の態様を形成する。
【0143】
変異体(オーソログを含む)は上記方法によって特定してよい。変異ポリヌクレオチドは、PCRに基づく方法(Mullis et al., Eds. 1994 The Polymerase Chain Reaction, Birkhauser)を使用して特定してよい。典型的に、PCRによってポリヌクレオチド分子の変異体を増幅するために有用なプライマーのポリヌクレオチド配列は、対応するアミノ酸配列の保存領域をコードする配列に基づく配列であってよい。
【0144】
変異ポリヌクレオチドを特定するための別の方法には、指定のポリヌクレオチドの全体または部分をハイブリダイゼーションプローブとして使用して、上記のようにゲノムまたはcDNAライブラリーをスクリーニングすることが含まれる。典型的には、対応するアミノ酸配列の保存領域をコードする配列に基づくプローブを使用してよい。ハイブリダイゼーション条件は、プローブと同一の配列をスクリーニングする場合に使用される条件より低ストリンジェントでありうる。
【0145】
ポリヌクレオチドおよびポリペプチド変異体の両者を含む変異体配列は、上で考察されるコンピュータに基づく方法によって特定してもよい。
【0146】
一群の関連配列のマルチプル配列アライメントは、CLUSTALW(Thompson, et al., Nucleic Acids Research, 22:4673-4680 (1994), http://www-igbmc.u-strasbg.fr/BioInfo/ClustalW/Top.html)またはT-COFFEE(Cedric Notredame et al., J. Mol. Biol. 302: 205-217 (2000)))またはPILEUP(累進ペアワイズアライメントを使用)(Feng et al., J. Mol. Evol. 25, 351 (1987))を用いて実行することができる。
【0147】
パターン認識ソフトウェアアプリケーションはモチーフまたはシグネチャー配列(signature sequences)の発見に利用可能である。例えば、MEME(Multiple Em for Motif Elicitation)は配列セット中のモチーフおよびシグネチャー配列を発見し、MAST(Motif Alignment and Search Tool)は、クエリ配列中の類似または同一モチーフを特定するために前記モチーフを使用する。MASTの結果は、適切な統計学的データおよび発見されたモチーフの視覚的概要とともに一連のアライメントとして提供される。MEMEおよびMASTはUniversity of California, San Diegoで開発された。
【0148】
PROSITE(Bairoch et al., Nucleic Acids Res. 22, 3583 (1994); Hofmann et al., Nucleic Acids Res. 27, 215 (1999))は、ゲノムまたはcDNA配列から翻訳される特徴付けされていないタンパク質の機能を同定する方法である。PROSITEデータベース(www.expasy.org/prosite)は生物学的に重要なパターンおよびプロファイルを含有し、新規配列をタンパク質の既知ファミリーに割り当てるため、またはどの既知ドメイン(群)が該配列中に存在するかを決定するために、適切な計算ツールを用いて使用できるように設計されている(Falquet et al., Nucleic Acids Res. 30, 235 (2002))。Prosearchは、所定の配列パターンまたはシグネチャーを用いてSWISS-PROTおよびEMBLデータベースを検索できるツールである。
【0149】
タンパク質は、同一ゲノム(パラログ)または異なるゲノム(オーソログ)中の他のタンパク質に対するその配列関連性に従って分類することができる。オーソロガス遺伝子は、共通の祖先遺伝子から種分化によって進化した遺伝子であり、通常、その進化に伴って同一機能を保持する。パラロガス遺伝子はゲノム内で重複している遺伝子であり、遺伝子は元の遺伝子に関連している新規特異性または改変された機能を獲得することがある。系統発生解析方法はTatusov et al., Science 278, 631-637, 1997に概説されている。
【0150】
上記コンピュータ/データベース法に加えて、物理的方法によって、例えばSambrook et al.に記載される組換えDNA技術により本発明のポリペプチドに対して産生された抗体を使用して発現ライブラリーをスクリーニングすることによって(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed. Cold Spring Harbor Press, 1987)、またはそのような抗体の支援を受けて天然供給源からポリペプチドを同定することによって、ポリペプチド変異体を特定することができる。
【0151】
変異ポリペプチドを含めたポリペプチドは、当技術分野において周知のペプチド合成方法、例えば固相技術を使用する直接ペプチド合成(例えばMerrifield, 1963, in J. Am Chem. Soc. 85, 2149; Stewart et al., 1969, in Solid-Phase Peptide Synthesis, WH Freeman Co, San Francisco California; Matteucci et al. J. Am. Chem. Soc. 103:3185-3191, 1981)または例えばApplied Biosystems Synthesiser(California, USA)を使用する自動合成を使用して製造することができる。該ポリペプチドの突然変異型は、Adelmen et al; DNA 2, 183(1983)に記載のように、アミノ酸配列をコードするDNAの例えば部位特異的突然変異誘発などの合成方法を使用して生産してもよい。
【0152】
該ポリペプチドおよび変異ポリペプチドは、当技術分野において周知の種々の技術(例えばDeutscher, 1990, Ed, Methods in Enzymology, Vol. 182, Guide to Protein Purification,)を使用して天然供給源から単離または精製してもよい。そのような技術には、HPLC、イオン交換クロマトグラフィー、および免疫クロマトグラフィーが含まれるが、それらに限定されない。
【0153】
別法では、該ポリペプチドおよび変異ポリペプチドを好適な宿主細胞において組換え発現させ、下で考察されるように該細胞から分離することができる。該ポリペプチドおよび変異体は、他の用途の中で特に、抗体の作製およびリガンドの作製において有用性を有する。
【0154】
したがって、本発明はまた、本発明の核酸分子によってコードされる単離されたポリペプチドを提供する。
【0155】
本発明の具体的ポリペプチドには、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号14のアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。該配列は全て添付の配列表に記載される。また、本明細書中で定義される前記ポリペプチドの機能上等価な変異体および断片ならびに、ストリンジェントな条件下で前記配列にハイブリダイズする配列が意図される。
【0156】
本明細書中に記載の遺伝子構築物は、1種以上の本発明の開示ポリヌクレオチド配列および/または開示ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでよく、例えば細菌、真菌、昆虫、哺乳類または植物体を形質転換するために有用である。本発明の遺伝子構築物は、本明細書中で定義される発現構築物を含むものとする。ベクター(例えばpBR322、pUC18、pU19、Mp18、Mp19、ColE1、PCR1およびpKRC)、ファージ(例えばlambda gt10)、およびM13プラスミド(例えばpBR322、pACYC184、pT127、RP4、p1J101、SV40およびBPV)、コスミド、YACS、BACシャトルベクター、例えばpSA3、PAT28トランスポゾン(例えばUS 5,792,294に記載のトランスポゾン)などが含まれる。
【0157】
該構築物は、好都合には、選択遺伝子または選択マーカーを含む。典型的に、抗生物質耐性マーカー、例えばアンピシリン、メトトレキセート、またはテトラサイクリンが使用される。
【0158】
構築物中の有用なプロモーターには、β. ラクタマーゼ、アルカリホスファターゼ、トリプトファン、およびtacプロモーター系が含まれる。該プロモーターは全て当技術分野において周知である。酵母プロモーターには、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、エノラーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、グルコキナーゼ、およびグリセルアルデヒドラート-3-ホスファナートデヒドロゲナーゼが含まれるが、それらに限定されない。
【0159】
プロモーターに作用して転写を促進するためにエンハンサーを用いてもよい。本発明での使用に好適なエンハンサーには、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、グロビン、アルブミン、インスリンなどが含まれる。
【0160】
遺伝子構築物およびベクターを生産および使用するための方法は当技術分野において周知であり、概してSambrook et al., (上記)、およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing, 1987に記載されている。選択宿主細胞をベクターで形質転換するための方法もまた公知であり、例えばCohen, SN; PNAS 69, 2110, 1972に記載の塩化カルシウム処理である。
【0161】
上記遺伝子構築物およびベクターを含む宿主細胞は、原核生物または真核生物供給源、例えば酵母、細菌、真菌、昆虫(例えばバキュロウイルス)、動物、哺乳類または植物体から得ることができる。宿主細胞として最も一般的に用いられる原核生物は大腸菌株である。他の原核生物宿主には、シュードモナス(Pseudomonas)、バシラス(Bacillus)、セラチア(Serratia)、クレブシエラ(Klebsiella)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、リステリア(Listeria)、サッカロミセス(Saccharomyces)、サルモネラ(Salmonella)およびマイコバクテリア(Mycobacteria)が含まれるが、それらに限定されない。
【0162】
組換えタンパク質の発現のための真核細胞には、非限定的に、Vero細胞、HeLa、CHO(Chinese Hamster卵巣細胞)、293、BHK細胞、MDCK細胞、およびCOS細胞ならびに前立腺癌セルライン、例えばPrEC、LNCaP、Du 145およびRWPE-2が含まれる。該細胞はATCC, Virginia, USAから入手可能である。
【0163】
本発明の核酸分子の発現と適合する原核生物プロモーターには、公知技術の構成的プロモーター(例えばバクテリオファージラムダ(lamda)のintプロモーターおよびpBR322のベータ-ラクタマーゼ遺伝子配列のblaプロモーター)および調節可能プロモーター(例えばlacZ、recAおよびgal)が含まれる。PSPU 43コード配列の上流のリボソーム結合部位もまた発現に必要とされる。
【0164】
発現構築物などの遺伝子構築物を含む宿主細胞はポリペプチドの組換え生産のための方法において有用である。そのような方法は当技術分野において周知である(例えば上記Sambrook et al.を参照のこと)。該方法は、通常、本発明のポリペプチドの発現および選択に好適な条件またはそれらを支援する条件下で、適切な培地中で宿主細胞を培養するステップを含む。選択マーカーを伴う細胞を、本発明のポリペプチドを発現している宿主細胞の選択に適切な培地上で追加培養してよい。本発明のポリペプチドを発現する形質転換宿主細胞を選択し、該ポリペプチドの発現に好適な条件下で培養する。発現済み組換えポリペプチドは、当技術分野において周知の方法を使用して培養培地から分離精製することができ、該方法には、硫安塩析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動等が含まれる(例えばDeutscher, Ed, 1990, Methods in Enzymology, Vol 182, Guide to Protein Purification)。宿主細胞はまた、本発明の発現ポリペプチドによって作製される製品の生産方法において有用である。
【0165】
本発明はまた動物モデルを提供する。前立腺癌にかかりやすい宿主細胞または動物は、前立腺癌を治療するために使用することができる化合物を試験するため、または該癌の発生にかかわるかもしれない化合物を同定手するために有用である。動物モデルは試験目的に特に有用である。本明細書中で定義される非ヒト患者が使用に好適な動物である。好ましくは該動物はげっ歯類またはウサギである。ラット、および特にマウスが使用に好ましい。
【0166】
動物モデルには、該動物中に天然に存在しない(外因性)か、または該遺伝子が導入される位置には存在しないか、または該導入遺伝子と同じ構造では存在しない、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはそのアンチセンスまたはsiRNA配列を含ませてよい。また、本発明の核酸分子に対応する内因性遺伝子が改変、破壊または除去されている動物も動物モデルに包含される。
【0167】
該動物の生殖細胞系の改変は任意の公知技術の方法を使用して達成することができる。例えば、接合体のマイクロインジェクション(Brinster et al., PNAS (USA) 82:4438-4442 (1985))によって;割球または胞胚腔のレトロウイルス感染を使用するウイルス組込み(Jaenuch, R; PNAS (USA) 73:1260-1264 (1976), Johner, D et al., Nature 298:623-628 (1982))によって;または胚性幹細胞の形質転換(Lovel-Badge, R. H., Tetracarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, Robertson, E. J. et al., DRL Press, Oxford, 153-182 (1987))によって動物のゲノムに遺伝子を組み込むことができる。またHoudebine, Transgenic Animals - Generation and Use (Harwood Academic, 1997)を参照のこと。
【0168】
別の態様では、本発明は、患者の前立腺癌、PINまたは同疾患を発生する素因を診断および/または予後診断する方法を提供する。
【0169】
一実施形態では、患者サンプル中の本発明の核酸分子、例えばPSPU 43(配列番号3)の発現レベルを決定することによって本方法を実行する。該分子の発現レベルが該分子のコントロールレベルと比較して変化すれば、被験体がPIN、PRCを有するか、または同疾患を発生するリスクを有することを示す。該分子の発現レベルの変化は、患者サンプル由来の該分子の存在または不存在を特定するステップを含む。
【0170】
別の実施形態では、本発明は、患者の前立腺上皮内腫瘍(PIN)、前立腺癌(PRC)状態を検査する方法であって、患者サンプル中のPSPU 43(配列番号3)または本発明の他の核酸分子の発現レベルを決定するステップを含み、該分子の発現レベルがコントロールレベルと比較して増加すれば、患者がPIN、PRC状態を有するか、またはPINまたはPRCを発生するリスクを有することを示す、方法を提供する。
【0171】
本発明の分子の発現レベルは、該発現レベルが統計学的に有意な量の単位でコントロールレベルと異なれば、改変(増加を含む)されていると見なすことができる。該変化量は、通常、コントロールレベルと比較して5%超、10%超、20%超、30%超、40%超、好ましくは50%超またはそれ以上である。別法では、統計学的有意性はP< 0.05として計算してよい。追加の別法では、アッセイの基準限界値または基準範囲に頼ることによって偏差を決定することができる。これらは直観評価またはノンパラメトリック法から算出することができる。概して前記方法は0.025を算出し、0.975は0.025 * (n+1)としてフラクタイル(fractiles)し、0.975 (n+1)とする。そのような方法は当技術分野において周知である。例えばImmunoassay Handbook, 3rd edition, ed. David Wild.Elsevier Ltd, 2005; およびSolber H. Approved Recommendation (1987) Collected reference values. Determination of reference limits. Journal of Clinical Chemistry and Clinical Biochemistry 1987, 25:645-656を参照のこと。
【0172】
コントロール中に存在しないマーカーの存在、またはコントロール中に存在するマーカーの不存在もまた発現レベルの変化として考慮される。
【0173】
サンプル中のマーカーの存在およびその発現レベルは当技術分野において公知の方法に従って決定することができ、該方法は、例えばサザンブロッティング、ノーザンブロッティング、FISHまたはmRNAの転写を定量するための定量的PCR[(Thomas, Pro. NAH, Acad. Sci. USA 77: 5201-5205 1980), (Jain KK, Med Device Technol. 2004 May; 15(4):14-7)]、ドットブロッティング、(DNA解析)または、本明細書中で提供されるマーカー配列に基づく、適切に標識されたプローブを使用するin situハイブリダイゼーションである。
【0174】
したがって、本発明はまた、サンプル中の本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)の存在を検出するためのアッセイであって、以下のステップ:
(a) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で核酸配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブとサンプルを接触させるステップ;および
(b) サンプル中のハイブリダイゼーション複合体の存在を検出するステップ
を含むアッセイ方法を提供する。
【0175】
好ましくは該ハイブリダイゼーションプローブは標識プローブである。標識の例には、蛍光、化学発光、放射性酵素およびビオチン-アビジン標識が含まれる。標識化および標識プローブの視覚化は、上記方法などの公知技術の方法に従って実行する。
【0176】
便宜のため、該核酸プローブは固体支持体上に固定することができる。該固体支持体には、樹脂(例えばポリアクリルアミド)、炭水化物(例えばセファロース)、プラスチック(例えばポリカーボナート)、およびラテックスビーズが含まれる。
【0177】
上で考察されるように、該核酸分子プローブはRNAまたはDNA分子であってよい。好ましいプローブには以下のものが含まれる。
【0178】

【0179】
該核酸マーカーの発現レベルは公知技術を使用して決定することができる。該技術は、例えばRT-PCRおよび、SDS-PAGEを含めた電気泳動技術である。前記技術を使用して、患者サンプル中の本発明の核酸分子、およびPSPU 43(配列番号3)のDNAまたはcDNA配列を増幅し、DNAまたはcDNAまたはRNAのレベルを測定する。
【0180】
別法では、該DNA、cDNAまたはRNAレベルを、増幅せずに、サンプル中で直接測定することができる。
【0181】
現在好ましい方法はノーザンブロットハイブリダイゼーション解析である。ノーザンブロットハイブリダイゼーション解析で使用するためのプローブは、本明細書中で特定されるマーカー配列に基づいて製造してよい。プローブは、好ましくは、参照配列の少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、好ましくは75、好ましくは100、より好ましくは200またはそれ以上の連続したヌクレオチドを含む。
【0182】
別法では、該発現レベルは、該核酸配列に特異的なプライマーを使用する逆転写に基づくPCR(RT-PCR)アッセイを使用して測定してよい。所望であれば、サンプル中のマーカーの発現レベルの比較は、その発現が測定されるパラメータまたは条件と無関係であるコントロール核酸分子を参照して、行うことができる。コントロール核酸分子とは、PIN/PRC状態と健常状態の間で発現が異ならない分子を表す。該コントロール分子の発現レベルを使用して、比較集団中の発現レベルを標準化することができる。そのようなコントロール分子の例はトランスゲリン2である。該マーカーは疾患に伴って発現レベルを変化させる。
【0183】
別法では、ペプチドマーカーに関して、特定の二重鎖、例えばDNA二重鎖、RNA二重鎖、およびDNA-RNAハイブリッド二重鎖またはDNA-タンパク質二重鎖を認識できる抗体を用いてよい。次いで該抗体を標識し、該二重鎖が表面に結合している場所でアッセイを行い、該二重鎖が該表面上で形成されている場合には該二重鎖と結合している該抗体の存在を検出されるようにすることができる。
【0184】
したがって、別の態様では、本発明は、本発明の核酸分子または機能上等価なその変異体または断片によってコードされるポリペプチドの患者サンプル中の存在を検出するためのアッセイであって、免疫複合体が形成される条件下で本発明の抗体とサンプルを接触させるステップ、およびサンプル中の結合したポリペプチドの存在を検出するステップを含む方法であるアッセイを提供する。
【0185】
サンプル中で本発明の抗体を検出する逆試験もまた実行可能である。その場合は、該サンプルを免疫複合体の形成に好適な条件下で本発明のペプチドと接触させ、結合した抗体の存在を検出する。
【0186】
この目的のために当技術分野で通常利用可能な免疫アッセイには、ラジオイムノアッセイ、(RIA)、酵素免疫吸着アッセイ(ELISA)などが含まれる(Lutz et al., Exp. Cell. Res. 175: 109-124 (1988))。
【0187】
別法では、免疫学的方法、例えば細胞または組織切片の免疫組織化学染色、および細胞培養物または体液のアッセイによって、マーカー発現を測定し、その発現レベルを直接定量することができる。免疫組織化学染色および/またはサンプル液のアッセイに有用な抗体は、好ましくは、モノクローナルまたはポリクローナルであり、以下で非常に詳細に考察される。好都合には、該抗体は、本発明のポリペプチドに対して、または本明細書中で開示されるDNA配列に基づく合成ペプチドに対して、または本発明の核酸分子(特にPSPU 43)のDNAに融合されている、特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して作製してよい。
【0188】
本発明のバイオマーカーを使用する血液細胞からの前立腺健康モニタリングは前記技術を使用して実行してよく、該技術は、例えばFehm et alの「Cytogenetic evidence that circulating epithelial cells in patients with carcinoma are malignant」Clinical Cancer Research, 8:2073-2084 (2002)に記載の技術である。
【0189】
尿サンプリングもまた実行可能である。尿道は前立腺を通過し、その結果、前立腺細胞は尿中に入る。尿中の核酸PCA3マーカーに関する前立腺検査はBostwick Laboratoriesによって開発された(http://bostwicklaboratories.com/patientservices/uPM3.html)。類似の検査をPSPU 43に関して用いることができる。
【0190】
患者サンプル中の1種以上のPSPUマーカーの発現が正常なコントロールレベルと比較して変化すれば、該患者がPINもしくはPRCを患っているか、またはPINもしくはPRCを発生するリスクを有することを示す。該変化が増加であるか減少であるかは該疾患の病期に依存する。一般に、PSPU 43は前立腺癌患者において過剰発現されることが示されている。しかし、例えば進行した段階の前立腺癌では過少発現も起こりうる。
【0191】
本発明のPSPUマーカーとともに他のマーカーを使用することもできる。有用なマーカーには、PCA3、PSAなどの前立腺癌の既知マーカーが含まれる。前立腺癌患者において過少発現されることが示されているトランスゲリン1を使用してもよい。疾患状態に伴って変化しないベンチマークまたは参照マーカーを含ませることも有用である。トランスゲリン2はこの目的で有用である。PSPUマーカーのレベルを他のマーカーと関連付ければ、本発明のPSPUマーカーのモニタリング値についての予測診断機能を高めることができる。PSPU 43を既知の前立腺癌マーカーとともに使用して、患者転帰の予測または診断価値を高めることができる。
【0192】
いくつかのペプチドマーカーの解析は単一試験サンプルを使用して同時または別々に実行することができる。同時または2部位形式(two site format)のアッセイが好ましい。微量検定法またはバイオチップ解析は特に有用である。該アッセイまたはチップは、本発明のPSPUマーカーを含めた1種以上のマーカーに対する抗体を含む多数の個別の(discreet)アドレス可能位置を有することができる。US2005/0064511は本発明において有用なチップおよび技術についての説明を提供する。
【0193】
したがって別の実施形態では、本発明は、被験体でのPINまたはPRCの治療に対する応答をモニターする方法であって、患者サンプル中の本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43(配列番号3)の発現レベルを決定するステップ、および該分子のレベルをコントロールレベルと比較するステップを含み、コントロールレベルと比べた測定レベルの統計学的に有意な変化は、治療に対する応答を示する、方法を提供する。
【0194】
PSPU分子、特にPSPU 43の統計学的に有意な増加は、PINまたはPRCを示すか、またはその結果は、上で考察されるマーカーを含めた非PSPU 43マーカーへの変化と相関しうる。コントロールと比較したそれらのマーカーレベルの変化は、コントロールと比較したPSPU分子の増加と結び付けられて、PRCまたはPINをより強く示す。
【0195】
被験体がモニター対象である場合、いくつかの生物学的サンプルを経時的に採取してよい。連続サンプリングは、マーカーレベル、特にPSPU 43の変化を経時的に測定することを可能にする。サンプリングは、癌の発症、癌の重症度、どの治療方式が適切であるか、用いられる治療方式に対する応答、および長期予後についての情報を提供することができる。解析は、医院などの医療拠点で、臨床症状に関して、入院中に、外来患者において、または日常的集団検診中に実行してよい。
【0196】
本発明の方法は、非限定的に年齢、家族歴および民族的背景などの1種以上の危険因子の解析と併せて実施してもよい。
【0197】
本明細書中の方法は治療の指針として使用することができる。例えば、どのような治療を開始するか、およびそれをいつにするか、である。
【0198】
別の態様では、本発明は、本発明のPSPU核酸マーカー分子または該核酸配列によってコードされるポリペプチドに特異的に結合する1種以上の検出試薬を含むキットを提供する。好ましくは、該キットはPSPU43(配列番号3)を含む。該検出試薬は、PSPUマーカーの一部分に相補的なオリゴヌクレオチド配列であってよく、それは該PSPUマーカーに隣接していることが知られている核酸またはペプチド配列に対して設計することができ、または該PSPUマーカーによってコードされるポリペプチドに結合する抗体であってよい。該試薬は上で考察される固体基質に結合させるか、またはそれらを該基質に結合させるための試薬とともにパッケージしてよい。該固体基質または基質は、ビーズ、プレート、チューブ、ディップスティック、ストリップまたはバイオチップの形式であってよい。アドレス可能な位置付けを伴うバイオチップまたはプレートおよび個別のマイクロタイタープレートは特に有用である。
【0199】
検出試薬には、洗浄試薬および結合抗体を検出可能な試薬(例えば標識二次抗体)、または標識抗体と反応可能な試薬が含まれる。
【0200】
該キットはまた、好都合には、コントロール試薬(ポジティブおよび/またはネガティブ)および/または核酸もしくは抗体を検出するための手段を含む。使用説明書を該キットとともに含ませてもよい。最も通常には、該キットは当技術分野において公知のアッセイ用の形式であり、より通常には、当技術分野において公知であるように、PCR、ノーザンハイブリダイゼーションまたはサザンELISAアッセイ用の形式である。
【0201】
キットはまた、疾患および疾患進行に伴う染色体再配置を検出するFISHなどのスクリーニング手順での使用のために本発明の核酸分子を使用することから生じる形式である。該キットは、さらに、核酸の検出試薬、およびコントロールを含んでよい。
【0202】
該キットは、前立腺癌の1種以上の追加マーカーまたはコントロールを含んでもよく、それにはトランスゲリン1、トランスゲリン2、PCA 3およびPSAが含まれる。一実施形態では、該マーカーの全てがキットに含まれる。
【0203】
該キットは1個以上の容器から構成され、収集用品、例えば、ボトル、バッグ(例えば静脈内液バッグ)、バイアル、シリンジ、および試験管を含んでもよい。少なくとも1容器は、PINまたはPRCを診断、モニター、または治療するために有効な組成物を含む。該組成物中の活性物質は、通常、本発明の化合物、ポリペプチドまたは抗体である。好ましい実施形態では、該容器の、または容器に付随する、説明書またはラベルは、該組成物がPINまたはPRCを診断、モニターまたは治療するために使用されることを示す。他の成分には、針、希釈剤およびバッファーが含まれる。有用には、該キットは、製薬的に許容されるバッファー、例えばリン酸緩衝生理食塩水、リンガー液およびブドウ糖液を含む少なくとも1個の容器を含んでよい。
【0204】
アッセイおよびキットにおいて使用される抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであってよく、任意の哺乳類において製造してよい。それらは、好ましくは、本発明のPSPU核酸配列によってコードまたは指定されるネイティブペプチド、または同核酸配列に基づく合成ペプチドに対して製造されるか、または本発明のPSPUペプチドをコードする核酸配列に融合された外因性配列に対して産生してよい。
【0205】
抗体結合研究は任意の公知アッセイ方法を使用して実行してよく、該方法は、例えば競合結合アッセイ、非競合アッセイ、直接および間接サンドイッチアッセイ、蛍光免疫測定法、免疫放射定量法、発光アッセイ、化学発光アッセイ、酵素結合免疫蛍光アッセイ(ELIFA)および免疫沈降アッセイである。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp.147-158 (CRC Press, Inc., 1987); Harlow and Lome (1998) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Publications, New York; US 5,221,685; US 5,310,687; US 5,480,792; US 5,525,524; US 5,679,526; US 5,824,799; US 5,851,776; US 5,885,527; US 5,922,615; US 5,939,272; US 5,647,124; US 5,985,579; US 6,019,944; US 6,113,855; US 6,143,576; US 5,955,371; US 5,631,171およびUS 2005/0064511。
【0206】
例えば、サンドイッチアッセイの1タイプはELISAアッセイであり、その場合、検出可能な部分は酵素である。ELISAはPINまたはPRCを予測、検出またはモニターするために特に有用である。
【0207】
本発明において有用な代替の分析技術には、質量分析、例えば表面増強レーザー脱離およびイオン化(SELDI)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)が含まれる。
【0208】
免疫組織化学では、該組織サンプルは生でも凍結サンプルでもよく、またはパラフィンに包埋して、例えば、ホルマリンなどの保存剤で固定してよい。
【0209】
キットの一実施形態では、PSPU検出試薬を多孔性ストリップなどの固体基質上に固定して、少なくとも1個のPSPU検出部位を形成させる。多孔性ストリップの測定または検出領域は多数の検出部位を含んでよく、そのような検出部位はPSPU検出試薬を含有する。該部位は棒状、十字状もしくは点状または他の配置で配置してよい。試験ストリップはネガティブおよび/またはポジティブコントロールの部位を含有してもよい。別法では、該コントロール部位は異なるストリップ上であってよい。異なる検出部位は異なる量の固定核酸を含有してよく、例えば最初の検出部位は多量の核酸を含み、それ以後の部位はより少ない量を含む。試験生物学的サンプルを加えるとき、検出可能なシグナルを示す部位の数が、サンプル中に存在するPSPUの量の定量的指標をもたらす。
【0210】
別の態様では、本発明は、PSPU 43の1種以上のPSPU核酸配列に結合する1種以上の核酸配列を含むアッセイを提供する。本発明のPSPUの核酸配列から広範囲のセンスおよびアンチセンスプローブおよびプライマーを設計することができる。該PSPU配列の発現レベルは、上で考察される公知技術を使用して特定する。該アレイは固体基質、例えば米国特許第5,744,305号に記載の「チップ」またはニトロセルロースメンブレンであってよい。
【0211】
本発明のPSPUマーカーによって発現されるタンパク質をアッセイにおいて使用してもよく、結果を正常なサンプル中で発現される同タンパク質の発現レベルと比較してもよい。当技術分野において公知のアッセイ形式および本明細書中で考察されるアッセイ形式を使用して、タンパク質の存在および量を評価することができる。
【0212】
別の態様では、本発明は、本発明の核酸分子、特にPSPU 43(配列番号3)の発現を改変する化合物のスクリーニング方法を提供する。大きく見ると、本発明の核酸分子(マーカー)によってコードされるペプチドと試験化合物を接触させ、該ペプチドの生物学的活性を評価し、該化合物の不存在下で該分子の生物学的活性を変化させる化合物、または該ペプチドに結合する化合物を選択する。代替の実施形態では、該分子を発現する試験細胞を試験化合物と接触させ、該化合物の不存在下の発現レベルと比較して該マーカーの発現レベルを改変する化合物を選択する。そのような化合物には、該核酸分子の発現をアゴナイズまたはアンタゴナイズする分子が含まれる。
【0213】
より具体的には、本明細書中で特定される核酸分子(マーカー)によってコードされるポリペプチドまたはその生物活性断片に、好ましくは特異的に、結合するか、またはそれと複合体形成するか、またはコード化ペプチドと他の細胞タンパク質の相互作用に別の様式で干渉する化合物を特定するように薬物候補のスクリーニングアッセイを設計する。そのようなスクリーニングアッセイには、化学物質ライブラリーのハイスループットスクリーニングに適用できるアッセイが含まれ、それらは小分子薬物候補を特定するために特に好適になる。概して500ダルトン未満の分子量を有する小分子候補には、合成有機または無機化合物、例えばペプチド、好ましくは可溶性ペプチド、(ポリ)ペプチド-免疫グロブリン融合物、および特に抗体、例えば非限定的にポリおよびモノクローナル抗体および抗体断片、単鎖抗体、抗イディオタイプ抗体、およびそのような抗体または断片のキメラまたはヒト化型、ならびにヒト抗体および抗体断片が含まれる。
【0214】
本発明の試験化合物は、天然供給源、例えば植物、抽出物および微生物から得られる広範囲の公知化合物、未知の化合物から得ることができ、または当技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法において多数のアプローチのいずれかを使用して得ることができる。例えばLam Anticancer Drug Des. 12: 1 145 (1997)およびDeWitt et al. PNAS 90:6909 (1993)を参照のこと。
【0215】
該アッセイは種々の形式で実施することができ、該形式には、タンパク質-タンパク質結合アッセイ、生化学スクリーニングアッセイ、免疫アッセイおよび細胞に基づくアッセイが含まれ、それらは当技術分野において十分に特徴付けされている。全てのアッセイは、それらが、本明細書中で特定されるPSPU核酸分子によってコードされるペプチドと薬物候補を、前記2成分が相互作用することを可能にするために十分な条件下でかつ期間で、接触させることを要求する点で共通している。
【0216】
候補化合物が本明細書中で特定されるマーカーによってコードされる特定のペプチドと相互作用するが結合しなければ、その該ペプチドとの相互作用は、タンパク質-タンパク質相互作用の検出に関して周知の方法によってアッセイすることができる。そのようなアッセイには、従来のアプローチ、例えば架橋、共免疫沈降、およびグラジエントまたはクロマトグラフィーカラムを介する共精製が含まれる。さらに、タンパク質-タンパク質相互作用は、酵母に基づく遺伝子系を使用することによってモニターすることができる。例えば、Fieldsおよび共同研究者[Chevray et al., PNAS 89: 5789-5793 (1991)]による説明を参照のこと。Clontech, California, USAは、ツーハイブリッド技術を使用して2種の特定タンパク質間のそのようなタンパク質-タンパク質相互作用を特定するためのキット(MATCHMAKERTM)を提供する。この系は、特定のタンパク質相互作用にかかわるタンパク質ドメインをマップするため、ならびに前記相互作用に重要なアミノ酸残基を突き止めるために拡張することもできる。
【0217】
試験化合物が結合を阻害する能力を試験するために、反応混合物を調製し、該試験化合物の不存在下および存在下で実施する。該反応混合物は、通常、本明細書中に記載のPSPUポリペプチド、試験化合物、およびマーカーポリペプチドが相互作用する成分を含有する。ポジティブコントロールを実施してもよい。試験化合物および、マーカーポリペプチドが相互作用する成分間の結合(複合体形成)は上記のようにモニターする。コントロール反応(群)中で複合体が形成され、試験化合物を含有する反応混合物中で形成されなければ、該試験化合物が試験化合物とその反応パートナーの相互作用に干渉することを示す。
【0218】
前記スクリーニングアッセイを使用して、PSPUマーカー、好ましくはPSPU 43の活性を改変する化合物を同定することができる。PSPUマーカーの機能を活性化する化合物はアゴニストである。同様に、PSPUマーカーの機能を阻害する化合物はアンタゴニストである。本発明のスクリーニング法を使用して特定される前記化合物もまた本発明の一部を形成する。
【0219】
検出対象の生物学的活性が細胞増殖、足場非依存的成長、浸潤および遊走である場合、例えば1種以上のPSPUペプチドを発現する細胞を調製し、試験化合物の存在下で該細胞を培養し、および細胞増殖の速度を決定し、細胞周期を測定し、および/または軟寒天中のコロニー形成活性を測定し、Boyden浸潤アッセイおよび遊走アッセイの変法を実施することによって、それを検出することができる。
【0220】
本発明のPSPU核酸配列によってコードされる1種以上のペプチドの結合活性または生物学的活性がマーカーの正常なコントロールレベルと比較して減少することが該スクリーニング法によって検出されれば、該試験化合物が該PSPUマーカーのインヒビターまたはアンタゴニストであることを示す。逆に、PSPUマーカーとの結合活性、または生物学的活性が正常なコントロールレベルと比較して増加すれば、該試験化合物が該マーカーのエンハンサーまたはアゴニストであることを示す。
【0221】
本発明のスクリーニング法において、ペプチド、非ペプチド化合物、合成マイクロモレキュラー(micromolecular)化合物および天然化合物を使用することができる。
【0222】
本発明の核酸分子に対するアゴニストおよびアンタゴニストのコンピュータモデリングもまた、周知のプログラム、例えばAUTODOCK(Dunbrack et al., 1997, Folding and Design 2:R27-42)CHARMmおよびQUANTAプログラム(Polygen Corporation, Massachusetts, USA)を使用して実行可能である。
【0223】
本発明はまた、PINまたはPRC参照発現プロファイルを提供する。これは、本発明の核酸分子、好ましくはPSPU 43を含めたマーカー発現のパターンを含む。有用には、該発現プロファイルは、PCA3、トランスゲリン1、トランスゲリン2、およびPSAから選択される1種以上の追加マーカーを含む。一実施形態では、該マーカーはPCA3およびPSAである。別の実施形態では、全ての追加マーカーが含まれる。上で考察される発現技術を使用して、プロファイルを作成し、PINもしくはPRCまたは同疾患の素因の診断において新規患者サンプル用の比較点として使用することができる。該プロファイルを使用して、PINまたはPRCの治療の経過をモニターすることもでき、PINまたはPRCを有すると同定される患者のための予後診断ツールとして使用することもできる。
【0224】
したがって、本発明の別の態様は、本発明のPSPU分子が過剰発現されている患者のPINまたはPRCを治療または予防する方法を提供する。該方法は、PSPUマーカーの発現または同マーカーによってコードされるペプチドの活性を改変するステップを含む。上記スクリーニング法によって得られる1種以上の化合物を投与することによって阻害を行うことができる。別法では、公知技術の方法、例えば該マーカーの発現を阻害またはアンタゴナイズする核酸の投与によって発現を阻害することができる。該マーカーの発現を崩壊させるアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、細胞内抗体および、リボザイムは全て、発現を阻害するために使用することができる。
【0225】
本発明のPSPU分子、好ましくはPSPU 43に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して、それが必要とされる状況において、該PSPU分子の発現レベルを低減することができる。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本発明のPSPU核酸分子、またはそれに対応するDNAもしくはmRNAによってコードされるポリペプチドに結合することによって作用し、それにより該マーカーの転写または翻訳を阻害し、該mRNAの分解を促進し、かつ/または該PSPU核酸分子によってコードされるタンパク質の発現を阻害し、最終的に該タンパク質の機能を阻害する。
【0226】
過剰発現される遺伝子の1種以上の遺伝子産物を阻害する核酸にはまた、該PSPUマーカーをコードするヌクレオチド配列のセンス鎖核酸およびアンチセンス鎖核酸の組み合わせを含む低分子干渉RNA(siRNA)が含まれる。用語「siRNA」とは、標的mRNAの翻訳を妨げる二本鎖RNA分子を表す。本発明のsiRNAを細胞に導入する標準的技術をPINまたはPRCの治療または予防において使用することができ、該技術には、DNAが、RNAがそこから転写される鋳型である技術が含まれる。該siRNAは、単一転写産物が標的遺伝子由来のセンスおよび相補的アンチセンス配列の両者、例えばヘアピンを有するように構築することができる。
【0227】
該方法を使用して、本発明のPSPU分子の発現が上方制御されている細胞の遺伝子発現を抑制する。標的細胞中のPINまたはPRCマーカー転写産物にsiRNAが結合すると、該細胞によるPINまたはPRCタンパク質生産の低減が生じる。該オリゴヌクレオチドの長さは少なくとも10ヌクレオチドであり、天然に存在する転写産物と同程度の長さであってよい。好ましくは、該オリゴヌクレオチドは100未満、75未満、50未満または25未満のヌクレオチド長である。好ましくは、該オリゴヌクレオチドは19〜25ヌクレオチド長である。
【0228】
siRNAのヌクレオチド配列は、Ambionウェブサイト(http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)から入手可能なsiRNAデザインコンピュータプログラムを使用して、Yuan et al., Nucleic Acids Research 2004 vol 32, W130-W134に記載のように設計することができる。siRNAのヌクレオチド配列は該コンピュータプログラムによって以下のプロトコルに基づいて選択する。
【0229】
siRNA標的部位の選択:
1. 転写産物のAUG開始コドンから出発し、AAジヌクレオチド配列に関して下流をスキャンする。各AAの出現および3'隣接19ヌクレオチドを潜在的siRNA標的部位として記録する。Harborth et al. (2003)は、5'および3'非翻訳領域(UTR)および開始コドン付近の領域(75塩基以内)に対するsiRNAの設計をしないよう推奨する。これらが調節タンパク質結合部位に富むからである。エンドヌクレアーゼおよび、前記領域に対して設計されたsiRNAの複合体はUTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体の結合を妨害する可能性がある。
【0230】
2. 該潜在的標的部位とヒトゲノムデータベースを比較し、他のコード配列に対して顕著なホモロジーを有する全ての標的配列を考慮から排除する。ホモロジー検索は上記のようにBLASTを使用して実施することができ、BLASTはNCBIサーバー:www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/に見出すことができる。
【0231】
3. 合成に適格な標的配列を選択する。Ambionウェブサイトで、該遺伝子の長さに沿っていくつかの好ましい標的配列を評価のために選択することができる。
【0232】
該siRNAはPSPU分子の発現を阻害し、したがって該タンパク質の生物学的活性を抑制するために有用である。したがって、該siRNAを含む組成物は、PSPU分子の過剰発現が関与するPINまたはPRCの治療または予防において有用である。
【0233】
過剰発現遺伝子の1種以上の遺伝子産物を阻害する核酸にはまた、過剰発現マーカーに対するリボザイムが含まれる。リボザイムは、一般に、DNA制限酵素に類似の様式で他の一本鎖RNAを切断する能力を有するRNA分子である。
【0234】
リボザイムを設計および構築するための方法は当技術分野において公知であり(例えばKoizumi et al. FEBS Lett. 228: 225 (1998); Kikuchi et al., NAR 19: 6751 (1992)を参照のこと)、過剰発現PINまたはPRCタンパク質の発現を阻害するリボザイムは、リボザイムを生産するための慣用の方法に従って、PINまたはPRCタンパク質をコードするヌクレオチド配列の配列情報に基づいて構築することができる。したがって、該リボザイムを含む組成物はPINまたはPRCの治療または予防において有用である。
【0235】
別法では、任意の過剰発現遺伝子の1種以上の遺伝子産物の機能は、該遺伝子産物に結合するか、または該遺伝子産物の機能を他の様式で阻害する化合物を投与することによって阻害することができる。例えば、過剰発現マーカー産物または産物群に結合する抗体はPIN/PRC治療ならびに診断および予後診断アッセイにおいて有用である。
【0236】
本発明はまた、抗体、または抗体の断片、の使用に関する。本明細書中で使用される用語「抗体」とは、該抗体の合成に使用される抗原を含む分子またはそれに密接に関連する抗原と特異的に相互作用(結合)する特定構造を有する免疫グロブリン分子を表す。抗体は、非PSPUポリペプチドに結合しないが本発明のPSPUポリペプチドに特異的に結合する。通常、該抗体は、該PSPU抗原に対して、わずか10-7M、好ましくは約10-8M未満、好ましくは約10-9M未満の結合親和性(解離定数(Kd)値)を有する。結合親和性は表面プラズマ共鳴を使用して評価することができる。
【0237】
本発明のPSPUマーカーポリペプチドに結合する抗体は、任意の形式、例えばモノクローナルまたはポリクローナル抗体であってよく、それには、動物、例えばマウス、ラットまたはウサギを該ポリペプチドで免疫化することによって得られる抗血清、遺伝子組換えによって生産される全てのクラスのポリクローナル、モノクローナル、ヒト抗体およびヒト化および細胞内抗体が含まれる。
【0238】
さらにまた、PINまたはPRCの治療または予防方法において使用される抗体は、本発明のマーカー遺伝子によってコードされる1種以上のタンパク質に結合する限り、抗体の断片または修飾抗体であってよい。該断片は、通常、抗原結合領域またはその相補性決定領域、または両者を含む。該抗体断片は、Fab、F(ab')2、およびFcまたはFvまたは単鎖Fv(scFv)(HおよびL鎖由来のFv断片が適切なリンカーによってライゲートされている)であってよい(Huston et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-83 (1988))。
【0239】
抗体の調製方法は当技術分野において周知である(例えばAntibodies: A Laboratory Manual, CSH press, eds, Harlow and Lane (1988)を参照のこと)。最も一般的に使用される抗体は、上で考察されるように好適な宿主哺乳類を免疫化することによって生産される。PSPUタンパク質との融合タンパク質を免疫原として使用してもよい。
【0240】
抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)などの種々の分子とコンジュゲートすることによって修飾してよい。抗体を化学修飾することによって修飾抗体を得ることができる。これらの修飾方法は当分野で慣用的である。
【0241】
別法では、非ヒト抗体由来の可変領域とヒト抗体由来の定常領域間のキメラ抗体として、または非ヒト抗体由来の相補性決定領域(CDR)、ヒト抗体由来のフレームワーク領域(FR)、および定常領域を含むヒト化抗体として、抗体を得ることができる。そのような抗体は公知技術の方法を使用して調製することができる。
【0242】
端的には、ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に公知である。ポリクローナル抗体は、哺乳類において、例えば免疫物質および、所望であれば、アジュバントの1回以上の注射によって産生させることができる。典型的には、免疫物質および/またはアジュバントを複数回の皮下または腹腔内注射によって哺乳類に注射する。免疫物質には、PSPUポリペプチドまたはその融合タンパク質が含まれる。免疫化対象の哺乳類において免疫原性であることが知られているタンパク質に免疫物質をコンジュゲートすることが有用であるかもしれない。そのような免疫原性タンパク質の例には、非限定的に、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、およびダイズトリプシンインヒビターが含まれる。使用できるアジュバントの例には、フロイント完全アジュバントおよびMPL TDMアジュバント(モリオホスホリル(moriophosphoryl)脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート(dicorynomycolate))が含まれる。当業者は過度の実験を行うことなく免疫化プロトコルを選択することができる。
【0243】
細胞内抗体は概して本明細書中の単鎖抗体であり、それらはPSPUポリペプチドに特異的に結合する単鎖抗体を含む。それらは、該抗体をコードする配列を組換えベクターに組み込み、PSPUポリペプチドを過剰発現している細胞に投与して、それに結合させ、かつその機能を阻害させることによって、遺伝子治療において使用することができる。前記抗体の生産方法は当技術分野において公知である。(例えばTanaka et al., Nucleic Acids Research 31(5):e23 (2003)を参照のこと)。
【0244】
モノクローナル抗体は、当技術分野においてやはり周知のハイブリドーマ法を使用して調製することができる。例えばKohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)を参照のこと。該ハイブリドーマ細胞を好適な培養培地中で培養してよく、別法では、該ハイブリドーマ細胞を哺乳類の腹水としてin vivoで成長させてよい。好ましい不死化セルラインはマウス骨髄腫セルライン、例えばMPC-11およびMOPC-21であり、それらは例えばAmerican Type Culture Collection, Virginia, USAから入手することができる。免疫アッセイを使用して、目的の抗体を分泌する不死化セルラインをスクリーニングしてよい。本発明のPSPUマーカーによってコードされるポリペプチドまたはその変異体もしくは断片をスクリーニングにおいて使用してよい。
【0245】
したがって、PSPUペプチド特異的モノクローナル抗体を分泌可能な不死化セルラインであるハイブリドーマもまた本発明において考慮される。
【0246】
ハイブリドーマ細胞によって生産されるモノクローナル抗体の結合特異性を確立するための周知の手段には、免疫沈降、放射性結合イムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびウエスタンブロットが含まれる。(Lutz et al., Exp. Cell. Res. 175:109-124 (1988))。免疫化動物由来の抗ウイルス剤を、ポリクローナル抗体の存在に関して同様にスクリーニングすることができる。
【0247】
検出を容易にするために、蛍光、生物発光、および化学発光化合物、ならびに放射性同位体、磁気ビーズ、および親和性標識(例えばビオチンおよびアビジン)などの、抗体結合の直接測定を可能にする検出可能なマーカーで本発明の抗体および断片を標識してよい。結合の間接測定を可能にする標識の例には、基質が有色蛍光産物をもたらす酵素が含まれ、好適な酵素には、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼなどが含まれる。蛍光色素(例えばTexas Red、フルオレセイン、フィコビリタンパク質、およびフィコエリトリン)を蛍光活性化セルソーターとともに使用することができる。標識技術は当技術分野において周知である。
【0248】
該細胞によって分泌されるモノクローナル抗体は、慣用の免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーによって培養培地または腹水から単離または精製することができる。
【0249】
該モノクローナル抗体または断片は組換えDNA手段によって生産してもよい(例えば米国特許第4,816,567号を参照のこと)。DNA修飾、例えばヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を相同マウス配列の代わりに用いる修飾(米国特許第4,816,567号; 上記)も可能である。キメラ二価抗体の生産もまた本発明において考慮される。
【0250】
該抗体は一価抗体であってよい。一価抗体の調製方法は当技術分野において周知である。
【0251】
本発明の抗PSPU抗体はさらにヒト化抗体またはヒト抗体を含んでよい。そのようなヒト化抗体は治療用途に好ましい。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が非ヒト種のCDR由来の残基に置き換えられているヒト免疫グロブリンを含む。非ヒト供給源、例えばウサギ、ラットおよびマウス由来のヒト化抗体の生産は周知である。(Verhoeyen et al, Science, 239:1534-1536 (1988); Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);)
ヒト抗体は当技術分野において公知の種々の技術を使用して生産することもでき、該技術にはファージディスプレイ技術(Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol. 227:381 (1991));およびトランスジェニック法が含まれる。例えばNature Biotechnology 14, 826 (1996); およびVaughan et al, Nature Biotechnology 16:535-539 (1998)を参照のこと。
【0252】
二重特異性抗体は、少なくとも2種の異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナルの、好ましくはヒトまたはヒト化の、抗体である。結合特異性の一方がPSPUマーカーに対する結合特異性であり、他方が任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質または受容体または受容体サブユニットに対する結合特異性である二重特異性抗体が本発明において意図される。
【0253】
二重特異性抗体の作製方法は当技術分野において公知である。例えばMilstein and Cuello, Nature, 305:537-539 (1983)およびSuresh et al., Methods in Enzymology, 121:210 (1986), Brennan et al., Science 229:81 (1985)を参照のこと。
【0254】
二重特異性抗体は本発明の所定のPSPUポリペプチド上の2種の異なるエピトープに結合する。別法では、それらは、該PSPUを発現している細胞の細胞防御に関与する分子(群)に結合する抗PSPUおよびエピトープに結合する。例えば、白血球T細胞受容体分子、およびIgGのFc受容体である。別の代替法では、二重特異性抗体は、細胞傷害性物質、例えばリシンA鎖、サポリン(saporin)、またはメトトレキセートまたは放射性核種キレート剤、例えばEOTUBE、またはDOTAに結合するエピトープを含む。
【0255】
2種を超える特異性を有する抗体、例えば三重特異性抗体もまた本発明において意図される。
【0256】
2種の共有結合によって連結されている抗体からなるヘテロコンジュゲート抗体もまた本発明において意図される。前記抗体は望ましくない細胞に対する免疫系細胞のターゲティングにおける有用性を提案している(米国特許第4,676,980号)。該抗体は当技術分野において公知の架橋技術を使用してin vitroで作製することができる。
【0257】
該抗体の有効性を高めることができる。例えば、システイン残基(群)をFe領域に導入し、それによってこの領域で鎖間ジスルフィド結合の形成を可能にすることによって、ホモ二量体抗体を得る。ホモ二量体抗体は、Wolff et al., Cancer Research, 53: 2560-2565 (1993)に記載されるような当技術分野において公知の架橋剤を使用して作製することができる。
【0258】
抗イディオタイプ抗体を、本明細書中で考察される治療において使用して、PSPUタンパク質を発現している細胞に対する免疫応答を誘発することもできる。前記抗体の生産もまた周知である(例えばWagner et al., Hybridoma 16:33-40 (1997)を参照のこと)。
【0259】
本発明の抗体を固体支持体上に固定することができ、好適な支持体には、該核酸配列に関して上で考察される支持体が含まれる。固体支持体に対する抗体の結合は公知技術を使用して達成することができる。例えばHandbook of Experimental Immunology, 4th Edition, Blackwell Scientific Publications, Oxford (1986)を参照のこと。結合抗体は本明細書中で考察されるアッセイにおいて有用である。
【0260】
本発明は、PSPUポリペプチドに対する抗体を使用して、それを必要としている患者のPINまたはPRCを治療または予防するための方法を提供する。該方法では、PINまたはPRCポリペプチドに対する抗体の医薬有効量を患者に投与する。投与は、本発明のPSPU分子、特にPSPU 43の過剰発現がPINまたはPRCにかかわっている場合のPINまたはPRCポリペプチドの活性を低減するために十分な用量である。別法では、腫瘍細胞に特異的な細胞表面マーカーに結合する抗体を薬物送達のツールとして使用することができる。ゆえに、例えば、細胞傷害性物質(例えばメイトンシノイド(maytonsinoid)、フルオロウラシル、タキソール、リシンA鎖、アブリンA鎖、ジフテリア毒素、ドキソルビシン、メトトレキセート、エノマイシン(enomycin)、ゲロニン(gelonin)、放射性核種、例えば186Re、212Bi、p32、I125および131I)とコンジュゲートされているPSPUポリペプチドに対する抗体を、腫瘍細胞を損傷または死滅させるために十分な用量で投与することができる。該治療方法は1種以上の抗体を投与することを含む。そのような方法において有用な免疫コンジュゲートの調製方法は、例えばVitetta et al., Science, 238: 1098 (1987)に記載されている。
【0261】
本発明はまた、本発明のPSPUポリペプチドの発現または活性を改変する化合物を投与することによって患者のPINまたはPRCを治療または予防する方法に関する。過剰発現の場合、PSPUポリペプチドの発現または活性を減少させる化合物を投与する。該化合物または組成物は、本発明のPSPUポリペプチドまたは該ポリペプチドの免疫学的に活性な断片、または該ポリペプチドもしくはその断片をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンであってよい。該ポリペプチドの投与は被験体の抗腫瘍免疫を誘発する。該ポリペプチドまたはその免疫学的に活性な断片はまた、PINまたはPRCに対するワクチンとして有用である。本発明の1種以上のPSPUポリペプチドを含むワクチンは、単一PSPUポリペプチドを含む複数ワクチンの投与のような投与に関して考慮される。被験体の抗腫瘍免疫を誘発することによって良性腫瘍を治療または予防することができる。いくつかの事例では、該タンパク質またはその断片を、T細胞受容体(TCR)に結合している形式または抗原提示細胞(APC)、特に樹状細胞(DC)上で提示されている形式で投与してよい。
【0262】
本発明では、用語PINまたはPRCワクチンとは、抗腫瘍免疫を誘発するか、または免疫系を介して作用して、接種するとPSPUを抑制する物質を表す。一般に、抗腫瘍免疫には、免疫応答、腫瘍に対する細胞傷害性リンパ球の誘導、腫瘍を認識する抗体の誘導、および抗腫瘍サイトカイン生産の誘導が含まれる。
【0263】
抗腫瘍免疫の誘発は、該タンパク質に対する宿主動物中の免疫系応答を観察することによって検出することができる。応答を検出するための系は当技術分野において周知である。
【0264】
腫瘍細胞に対する細胞傷害性Tリンパ球を誘導するポリペプチドは、細胞傷害性Tリンパ球が誘導されるようなPINまたはPRCに対するワクチンにおいて有用である。PINまたはPRCに対する細胞傷害性Tリンパ球を誘導する能力を有する抗原提示細胞はまた、PINまたはPRCに対するワクチンにおいて有用である。細胞傷害性Tリンパ球の誘導は、異なる構造のタンパク質/ペプチドの組み合わせを使用して高めることができる。このような組み合わせは本明細書中で考察される免疫療法での使用に関して意図される。
【0265】
ポリペプチドによる抗腫瘍免疫は、腫瘍に対する抗体生産を決定することによって評価することもできる。腫瘍細胞の成長、増殖または転移が抗体によって抑制される場合、該抗体を作製するために使用されるポリペプチドは抗腫瘍免疫を誘発する能力を明らかに有する。
【0266】
したがって、本発明のワクチンを投与すると、抗腫瘍免疫を誘発することによってPINまたはPRCを治療および/または予防することが可能になる。PINまたはPRCの治療および予防処置には、任意の腫瘍細胞の成長の阻害、および腫瘍細胞の出現の抑制、血液中のPINまたはPRCマーカーレベルの変化、PINまたはPRCに付随する検出可能な症状の軽減、および患者死亡率の減少が含まれる。そのような治療および予防効果は好ましくは統計学的に有意である。例えば、コントロールと比較して、5%以上、好ましくは10%以上の有意水準である。
【0267】
本発明のワクチンを製剤化する場合、免疫学的活性を有するポリペプチド、または該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはベクターをアジュバントと組み合わせてよい。アジュバントとは、免疫学的活性を有するタンパク質とともに(または連続して)投与された場合に、該タンパク質に対する免疫応答を高める化合物を表す。アジュバントの例には、コレラ毒素、サルモネラ毒素、およびミョウバンが含まれるが、それらに限定されない。本発明のワクチンを、製薬的に許容される担体、例えば滅菌水、生理食塩水および、リン酸バッファーと組み合わせてよい。さらにまた、該ワクチンは必要に応じて安定剤、懸濁液、保存剤、界面活性剤などを含有してよい。該ワクチンは一回または複数回投与において全身または局所投与してよい。該ポリペプチドは、免疫原として使用される場合に、担体、例えばKLH、BSAまたは当技術分野において公知の他のタンパク質とコンジュゲートしてよい。他の治療用組成物は以下で考察する。
【0268】
本発明はまた、本発明のPSPU核酸分子またはPSPUポリペプチドの発現または生物学的活性を改変する化合物を投与することによって被験体のPINまたはPRCを治療または予防する方法を提供する。
【0269】
この方法の一実施形態では、治療用化合物には、過少発現マーカーのポリペプチド産物、またはその生物活性断片、PINまたはPRC細胞中の遺伝子の発現を可能にする発現調節要素の下流の過少発現遺伝子をコードする核酸、PINまたはPRC細胞中に内因的に存在するマーカーの発現レベルを増加させる化合物が含まれる。本発明のスクリーニング法を使用してこれらの化合物を得ることができる。欠けている遺伝子またはタンパク質を細胞に送達するために、レトロウイルス系を使用することができる。そのような系は当技術分野において公知である。例えばUS 5,082,670および「Retroviral Vectors」in DNA cloning: A Practical Approach, Volume 3, DRL Press, Washington (1987)を参照のこと。上で考察されるように、特にマイクロインジェクション、トランスフェクション、形質導入およびエレクトロポレーションなどの技術によって、ベクターを細胞に組み入れることができる(Sambrook et al., 上記)。遺伝子治療を使用して、不適切な過剰発現を阻害するか、またはPSPU 43分子またはポリペプチドの発現を高めることができる。
【0270】
本発明はまた、医薬有効量の、本発明の方法によって特定される化合物;または本発明のPSPUポリペプチドに結合する抗体またはその断片を含む、PINまたはPRCを治療または予防するための組成物を提供する。該組成物は、2種以上のそのような化合物、抗体およびポリペプチドまたはその組み合わせを含んでよい。製薬的に許容される担体賦形剤または希釈剤もまた該組成物に含まれる。また、少なくとも1つのPSPUアンチセンス配列、siRNA、リボザイムまたはポリペプチドの有効量を、製薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤とともに含む医薬組成物を提供する。
【0271】
本発明の化合物、アンチセンス配列、siRNA、リボザイム、ポリペプチドまたは抗体を含有する治療用組成物は、有効量のその活性分子を、随意選択の製薬的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することによって調製することができる(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. [1980])。
【0272】
本明細書中で使用される有効量とは、指定の目的を実行するために十分な量の任意の活性物質、例えば本明細書中で開示されるポリペプチド、抗体、小分子、siRNA、アンチセンス配列、リボザイム、アゴニストまたはアンタゴニストを表す。当業者は通常の方法を使用して経験的にその量を決定することができる。同様に、「医薬有効量」または「治療有効量」とは、上記PINまたはPRCを予防または治療(「治療(処置)」の定義を参照のこと)するために有効な、本明細書中で開示される活性物質の量を表す。
【0273】
該組成物は、経口投与用(例えばカプセル、錠剤、ロゼンジ、粉末、シロップ、など)、非経口投与用(例えば静脈内溶液、皮下、筋肉内または坐剤製剤)、局所投与用(例えばクリーム、ゲル)、吸入用(例えば鼻腔内、肺内)または当技術分野において公知のそのような他の投与剤形に製剤化してよい。
【0274】
許容される担体、賦形剤、または安定剤は当技術分野において周知である。それらは、使用される用量および濃度でレシピエントに対して無毒である必要があり、バッファー(例えばリン酸およびクエン酸(citratic acid))、水、油、特にオリーブ、ゴマ、ココナツおよび無機および植物油;炭水化物、例えばラクトース、グルコース、マンノース、またはデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成カウンターイオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);非イオン性界面活性剤、例えばTWEENTM、またはポリエチレングリコール(PEG))が含まれる。
【0275】
錠剤では、希釈剤、例えば炭酸塩(例えばナトリウムおよびカルシウム)リン酸塩(例えばリン酸カルシウム)またはラクトースを、酸化防止剤、造粒剤および崩壊剤(例えばコーンスターチ)、結合剤、例えばデンプン、および潤滑剤、例えばステアリン酸およびステアリン酸マグネシウムとともに、通常使用する。錠剤をコーティングして、摂取、安定性または崩壊を容易にしてよい。
【0276】
注射用組成物は、湿潤剤(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、レシチン、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)および懸濁化剤(例えばメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、およびトラガカントガム)ならびに希釈剤を伴って通常調製される。
【0277】
該組成物には、添加物、例えば着色剤、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸)、甘味料、増粘剤、(例えばパラフィン、蜜ろう)、香味物質および保存剤(例えばアルキルパラベン、フェノール、レゾルシノールおよび塩化ベンザルコニウム)を必要に応じて含ませてもよい。
【0278】
任意の慣用テクノロジーを用いて、錠剤、局所および静脈内製剤、シロップ、水中油乳化剤、吸入剤などを生産することができる(Remington's上記)。
【0279】
リポソームを使用して、活性物質を細胞内に送達することもできる。抗体断片が使用される場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の阻害断片が好ましい。ペプチドは化学合成するか、上で考察されるように組換え生産するか、または当技術分野において公知の他の様式で生産することができる。例えばPNAS USA 90,7889-7893 (1993)を参照のこと。
【0280】
該治療用組成物は1種以上の追加の活性物質を含有してもよい。選択される他の活性物質は、上で考察される主要な活性物質に対して重大な悪影響を有するべきではないであろう。追加の活性物質の例は、細胞傷害性物質、サイトカイン、化学療法剤、例えばタキソール(登録商標)およびシスプラチン、およびまたは成長阻害剤である。該活性物質は組み合わせ中に治療有効量で存在する。該活性物質は治療用組成物の部分として製剤化するか、または治療用組成物と同時または逐次使用するために別々に製剤化してよい。
【0281】
該活性物質は、マイクロカプセルまたは水性懸濁液中で、例えば懸濁化剤、例えばアルギン酸ナトリウム、メチルセルロース(例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシルポピルメチルセルロース(hydroxlpopylmethyl cellulose))とともに、またはマクロエマルジョン中で製剤化してもよい。そのような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
【0282】
in vivo投与に使用される組成物は滅菌されている必要がある。これは、滅菌ろ過膜を介するろ過または他の公知技術によって容易に達成できる。
【0283】
徐放性調製物を調製することができる。徐放性調製物の好適な例は、上で考察されるマイクロカプセルである。徐放性基質の例には、ポリエステル、およびヒドロゲルが含まれる。
【0284】
免疫アジュバント治療では、本発明のタンパク質、抗体または化合物の投与を、化学療法、化学的アンドロゲン除去療法、または放射線療法または他の抗癌剤の別々の、同時のまたは逐次投与と組み合わせて使用してよい。物質の調製および投薬スケジュールは、製造元の使用説明書に従って使用するか、または専門家によって決定されるように使用してよい。化学療法剤の調製および投薬スケジュールは、例えばChemotherapy Service Ed., M.C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992)に記載されている。PINもしくはPRCまたはその症状の処置または重症度の低減に関して、本発明の活性物質の適切な用量は、周知の医学的原則に従って、患者の年齢、処置対象の疾患のタイプおよび重症度、該物質が予防目的で投与されるか、治療目的で投与されるか、以前のまたは他の同時治療、投与の経路、患者の臨床歴および活性物質に対する応答に依存する。該化合物を、一度だけ、連続的に、または反復して、患者に投与してよい。例えば、毎日、毎週、毎月、1日に複数回であり、投与は、定期的、断続的または離間した間隔であってよい。
【0285】
疾患のタイプおよび重症度に応じて、約1μg/kg〜15 mg/kg(例えば0.005〜20 mg/kg、好ましくは0.1〜1mg/kg)の本発明の活性物質、例えば本発明の化合物、組成物、核酸分子、ポリペプチドまたは抗体は、一回量または分割量中で、または持続注入によって、患者に投与するための初期用量候補である。典型的な一日量は、上で強調される要因に応じて、約1μg/kg〜100 mg/kg、より通常は1 mg〜75 mg/kg、またはそれ以上の範囲であるかもしれない。処置は、疾患またはその症状が和らぐか、または終結の決定が下されるまで行うことができる。該処置方式は、考察される本発明のアッセイまたは他の慣用モニタリング技術を使用することによってモニターすることができる。
【0286】
本明細書で、特許明細書、他の外部文書、または他の情報供給源が参照されている場合、概して、本発明の特徴を考察するための背景を提供するためのものである。特に指定されない限り、そのような外部文書への参照は、そのような文書;またはそのような情報供給源が、いかなる範囲においても、先行技術であるか、または当技術分野の共通の一般的知識の部分を形成すると認めるものとして解釈されないものとする。
【0287】
以下、下記実施例を参照することによって非限定的な様式で本発明を説明する。
【実施例1】
【0288】
8番染色体の、前立腺に集積された配列:Pspu1, Pspu2, Pspu8およびPspu43の同定
序論
発明者らは、自動データマイニング(発明者らはデータパニングと称する)の系を開発した。この系の出発点は、組織サンプルからの転写産物(mRNA)を捕捉し、さらにそれをcDNAライブラリーの形態の安定な産物(cDNA)に変換することである。cDNAライブラリーの大規模なシークエンシングの結果、GenBankに多数の発現配列タグ(Expressed Sequence Tag)(EST)が蓄積された。これらの発現配列はUniGeneデータベース(Schuler et al. 1996)中のESTの起源である。現在、ヒトUniGeneデータベースには約410万のヒトEST/mRNAが存在する。
【0289】
UniGeneはGenBankから取り込んだESTを非重複セットの遺伝子指向性クラスターに区分し、各UniGeneクラスターは名目上単一遺伝子からの転写産物に当たる配列を含有する(Schuler et al. 1996)。UniGeneの重要な特徴は、dbESTライブラリーIDをESTに割り当てることである。dbESTライブラリーIDは該dbESTライブラリーを構築した起源となる組織を特定するため、このIDは、UniGeneクラスター中のESTの組織起源の、コンピュータ上での明確なマーカーである。
【0290】
dbESTライブラリーは広範囲の器官および組織に由来している。これらのライブラリーが全体として身体を代表するものであるならば、個々のライブラリートランスクリプトームの集合は全身のトランスクリプトームを反映する。同時に、個々のライブラリーは、器官および組織に起因するトランスクリプトームの領域差を反映する。単一組織由来のESTを高い割合で含有するUniGeneクラスターはUniGeneバックグラウンド全体と比して識別可能である。
【0291】
発明者らはこのコンピューターを利用した方法を使用して前立腺組織における集積(enrichment)遺伝子発現プロファイルを特定した。これらの遺伝子の機能またはありうる分布についての予備知識は必要とされない。発明者らのアプローチを使用して8番染色体上に位置する4つの転写産物を特定した。それらをここで報告する。発明者らは、これらの転写産物を前立腺特異的unigene 1(Pspu1)、前立腺特異的unigene 2(Pspu2)、前立腺特異的unigene 8(Pspu8)および前立腺特異的unigene 43(Pspu43)と命名した。そのESTの詳細は以下の通りである。
【0292】


【0293】
系および方法
各UniGeneクラスター中の記録データは、そのcDNAライブラリーがシークエンシングされておりdbESTライブラリーIDが割り当てられている任意の組織または細胞タイプに関して集積遺伝子発現プロファイルを作製する方法を提供する。UniGeneアルゴリズムによってクラスター化された各セットのESTにUniGene番号を割り当てる。この番号は、クラスターの起源の遺伝子、該遺伝子に関するSTSマーカー、可能性としてのタンパク質類似性、染色体局在、などについての任意の既知の情報を伴う、UniGeneデータベース中のクラスターエントリーを表す。「scount」と称されるUniGene記録内のフィールドは、UniGeneクラスターを形成する配列の数を示す。各UniGene記録の最終セクションは該クラスターを形成する全ての配列を列挙している。このリストの形式は、各配列のアクセッション番号、および該ESTがcDNAライブラリーの一部分としてシークエンシングされた場合には、dbESTライブラリーID番号を含む。該dbEST ID番号は所定の配列の生物学的起源に関するマーカーとして機能している。
【0294】
この情報からの遺伝子発現プロファイルの作成は、多数のランダムシークエンスcDNAライブラリーおよびdbESTライブラリーナンバリングシステムに依存する。遺伝子が1つの組織によってのみ発現される場合、該組織から構築されたライブラリーのみが該遺伝子由来の代表的配列を有する。各UniGeneクラスターのdbESTライブラリーIDを決定することによって、単一組織からのみ構築されたライブラリーから全てのESTが得られている場合の組織特異的遺伝子発現が示される。
【0295】
ほとんどの遺伝子は1つの組織に完全に特異的ではなく、一定範囲の組織にわたる分布を示す。ランダムシークエンスcDNAライブラリーでは、大量に発現される遺伝子は低レベルで発現される遺伝子よりずっと頻繁にシークエンシングされるであろう。これはUniGeneにおいて反映されるであろう。配列は、該遺伝子が低レベルで発現される組織由来ではなく、それよりも高頻度に高度に発現される組織由来のdbESTライブラリーIDでタグ付けされる。これは、UniGeneクラスター内の目的の組織由来のdbEST ID番号で配列がタグ付けされる回数が該組織での遺伝子発現のレベルを示しうることを意味する。これは、該UniGeneクラスターに寄与したESTの総数のパーセンテージとして表すことができる。発明者らはこのアプローチを使用して、前立腺に特異的なバイオマーカーを得た。
【0296】
アルゴリズム
UniGene データファイル(Hs.data.gz)をftp://ftp.ncbi.nlm.nih.gov/repository/UniGeneからダウンロードした。Bioperlツールキット(Stajich et al. 2002)を利用する3つのPerlスクリプトを使用して前記ファイルを編集した。具体的には、これらスクリプトはBio::Cluster::UnigeneおよびBio::ClusterIOモジュールを呼び出す。第一のスクリプト、「lib_extract」では、各UniGeneクラスター中のEST配列系統の数を自動的に検査し、寄与する配列の数が指定の閾値レベルを超えた場合はこれらUniGeneを排除した。
【0297】
この閾値レベルは、変数「$threshold」を=4と定め、それを各UniGeneクラスターのscountと比較することによって設定した。Scountは該クラスターに寄与した配列の総数である。該クラスターに寄与する配列の数が該閾値と同じまたはそれ以下である場合は、記録は破棄した。該閾値を越える配列系統の数を有するものを解析して、以後のデータパニングのために社内データベースに入れた(下記参照のこと)。
【0298】
生のHs.dataファイルからScountを解析し、識別用dbESTライブラリーID番号を有さない系統を含めた。その後の演算処理はdbESTライブラリーIDに基づくため、規定される閾値数未満のESTしか有さないと思われるいくつかのクラスターを排除した。これが行われた場合、そのより少ない数しか、dbESTライブラリーIDを有するUniGene クラスター中のESTの数を反映しない。
【0299】
NIHからダウンロードされたUniGeneファイルは大きい(ヒトでは400Mb)。その後の演算処理は、UniGeneクラスター番号および寄与する各ESTのdbEST IDをもっぱら保持する一連の編集済み社内データベースを作成することによって非常に容易になる。この手順では、「lib_extract」スクリプトを使用して、ヒトデータファイルを40Mbに低減した。
【0300】
いくつかの記述子を伴うライブラリーカタログ(Hs.lib.info.gz)はUniGeneウェブサイトで入手可能である。ライブラリー構築に関する追加の詳細はUniGene Library Browser (http://ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)から入手可能である。全てのUniGeneライブラリーはdbESTライブラリーIDを有する。
【0301】
データパニングは、「lib_percentage」スクリプトを使用して行った。これは、研究者が指定したUniGeneライブラリーのセットを取り上げて、編集済み社内データベースに問い合わせを行う。これらの社内データベースは、閾値数より少ない数の配列しか有さないUniGeneクラスターはもはや含有しない。該スクリプトは、指定したセットのライブラリーに由来する各UniGeneクラスター内のEST配列系統の数を決定する。これらをUniGeneクラスター中のEST系統の総数のパーセンテージとして表す。
【0302】
実行
ヒトdbESTライブラリーリストをウェブサイトhttp://ftp.ncbi.nih.gov/repository/dbESTからダウンロードした。該リストをプログラムBBeditで開き、前立腺ライブラリーを特定し、GREP機能を使用して編集済みリストを得た。前立腺組織から構築された290のライブラリーを特定した。ヒト前立腺特異的配列を同定するためにこの解析に使用されたdbESTライブラリーは以下のものであった:689, 787, 792, 876, 910, 924, 925, 926, 928, 934, 935, 940, 994, 1016, 1017, 1053, 1054, 1055, 1333, 1410, 1498, 1654, 1655, 1668, 1670, 1671, 1672, 1673, 4267, 4268, 4711, 4712, 4713, 4714, 4715, 4716, 4717, 4718, 4719, 4720, 6013, 6014, 6015, 6016, 6017, 6018, 6019, 6020, 6021, 6022, 6023, 6024, 6025, 6026, 6027, 6028, 6029, 6030, 6031, 6032, 6033, 6034, 6035, 6036, 6037, 6038, 6039, 6040, 6041, 6042, 6043, 6044, 6045, 6046, 6047, 6048, 6049, 6050, 6051, 6052, 6053, 6054, 6055, 6056, 6057, 6058, 6059, 6060, 6061, 6062, 6063, 6064, 6065, 6066, 6067, 6068, 6069, 6070, 6071, 6072, 6073, 6074, 6075, 6076, 6077, 6078, 6079, 6080, 6081, 6082, 6083, 6084, 6085, 6086, 6087, 6088, 6089, 6090, 6091, 6092, 6093, 6094, 6095, 6096, 6097, 6098, 6099, 6100, 6101, 6102, 6103, 6104, 6105, 6106, 6107, 6308, 6309, 6310, 6311, 6312, 6313, 6314, 6315, 6316, 6317, 6318, 6319, 6320, 6321, 6322, 6323, 6324, 6325, 6326, 6327, 6328, 6329, 6330, 6331, 6332, 6333, 6334, 6335, 6336, 6337, 6338, 6339, 6340, 6341, 6342, 6343, 6344, 6345, 6346, 6347, 6348, 6349, 6350, 6351, 6352, 6353, 6354, 6355, 6356, 6357, 6358, 6359, 6360, 6361, 6362, 6363, 6364, 6365, 6366, 6367, 6368, 6369, 6370, 6371, 6372, 6373, 6374, 6375, 6376, 6377, 6378, 6379, 6380, 6381, 6382, 6383, 6384, 6385, 6386, 6387, 6388, 6389, 6390, 6391, 6392, 6393, 6394, 6395, 6396, 6397, 6398, 6399, 6400, 6401, 6402, 6601, 6602, 6603, 6763, 6831, 7180, 7181, 8480, 8481, 8482, 8483, 8484, 8485, 8486, 8487, 8488, 8489, 8490, 8491, 8492, 8493, 8494, 8495, 8496, 8497, 8498, 8499, 8500, 8501, 8502, 8503, 8504, 8505, 8506, 8507, 8508, 8509, 8510, 8511, 8512, 8513, 8514, 8515, 8585, 8834, 9134, 9135, 9136, 9137, 9138, 10161, 10549, 11034, 11037, 14129, 14130, 14131。前記ライブラリーは全て、正常または罹患前立腺材料から構築された。2004年3月4日に入手可能なヒトUniGeneビルドについて演算処理を行った。その結果をソートのためにMicrosoft Excelにインポートした。
【0303】
結果および考察
複数の研究で、ほとんど全ての前立腺癌において、および重要なことに、前立腺癌の前駆症である可能性が非常に高い前立腺上皮内腫瘍(PIN)(Bostwick, 1996)において、8番染色体の短腕(8p)からの遺伝子配列の喪失がその初期分子イベントであることが提唱されている(Cher et al., 1994; Macoska et al., 1994; 1995; 2000; Haggman et al., 1997)。100%、75%および80%の集積レベル(下記表2)でデータパニングアルゴリズムを使用して同定される3種の転写産物は8p上に位置する。2種は、in silicoで、正常組織と罹患組織の間での発現の喪失と一致するパターンを示した。前立腺発現に関して83%集積を示す別の転写産物は8qに位置した。発明者らは、これらの転写産物を前立腺特異的unigene 1(Pspu1)、前立腺特異的unigene 2(Pspu2)、前立腺特異的unigene 8(Pspu8)および前立腺特異的unigene 43(Pspu43)と命名した。これらの転写産物は以前に報告されていない。Pspu1は8p12に位置し、Pspu2は8p21に見出され、Pspu8は8p22-23に位置し、Pspu43は8q23に位置する。
【0304】

【0305】
Stanton and Green(2001)に記載のメタ分析系を使用して、Pspu1およびPspu2についてのin silico遺伝子発現プロファイルを決定した。簡潔に言えば、配列決定済み前立腺cDNAライブラリーをNCBI(http://ncbi.nlm.nih.gov)からダウンロードした。各ライブラリーを、それを作製した起源の組織によって決定されるカテゴリーに入れた。これは、PIN組織から作成された全てのライブラリーが一緒にグループ化され、一方、正常組織由来の全てのcDNAライブラリーが別のグループを形成することを意味した。各ライブラリー中のESTをUniGeneに基づいてクラスター化した。これにより、各カテゴリーに含まれる転写単位のリストを得た。所定のUniGeneについて各カテゴリー中のESTの数を集計することによって、各組織タイプにより発現される特定の転写産物のレベルを示すin silico遺伝子発現プロファイルを作成する。このデータを使用して下記表3を作成した。Pspu8およびPspu43は、それらを生じたライブラリーがその構築の性質に起因してメタ分析から排除されたため、含まれなかった。
【0306】

【0307】
前立腺癌進行中に発現が変化することが知られている複数の遺伝子との比較はこのメタ分析と一致する。例えば、デジタル発現プロファイルは前立腺上皮内腫瘍における前立腺特異抗原(PSA)の発現の増加を示し、それは広く受け入れられている結果と一致する(表3)。さらにまた、メタ分析は前立腺酸性ホスファターゼの下方制御を示す(表3)。前立腺酸性ホスファターゼはPSA検査以前に前立腺癌を診断するために使用された(Bostwick, 1996)。現在、前立腺酸性ホスファターゼは前立腺腫瘍のアンドロゲン応答性の喪失と関連していると考えられている(Meng et al., 2000)。
【0308】
Pspu1、Pspu2、Pspu8およびPspu43の配列を独立したライブラリーから複数回サンプリングして、それらが本物の転写産物である信頼性を得た。発明者らがPspu1と称する配列コンティグであるUniGeneクラスターHs.197095には5つのESTが寄与する。これらは3つのcDNAライブラリー、NCI_CGAP_Pr28(dbESTライブラリーID.1410)、NCI_CGAP_Pr22(dbESTライブラリーID.910)およびNCI_CGAP_Sub2(dbESTライブラリーID.2359)から生成されたものである。ライブラリー1410および910は正常な前立腺組織から構築された。ライブラリー2359は、乳房特異的遺伝子を同定するために組み立てられたcDNAサブトラクションライブラリー(Bonaldo et al. 1996)から作製されたものである。
【0309】
UniGene Hs.444680すなわちPspu2には4つのESTが寄与した。これらのESTは、cDNAライブラリー、NCI_CGAP_Pr28(dbESTライブラリーID.1410)、NCI_CGAP_Pr22(dbESTライブラリーID.910)およびNCI_CGAP_Sub4(dbESTライブラリーID.2721)において同定された。これらのライブラリーのうち2つは正常な前立腺から作製された(1410および910)。三番目のライブラリーは、前立腺特異的遺伝子を発見するために組み立てられた別のサブトラクションライブラリー(2721)(Bonaldo et al. 1996)であった。発明者らのデータパニングアルゴリズムは、前立腺から構築されているためサブトラクションライブラリー2721を同定するためには実行されず、ゆえにこのクラスターに付与された集積レベルは75%だけであった。実際、このUniGeneは、もっぱら前立腺に限定された転写産物を反映するであろう。
【0310】
Pspu8は、UniGene Hs.458397を含む3つのクローンから得た4つのEST配列から構成された。これらクローンは、双方とも前立腺癌セルラインから構築された2つのライブラリーから単離された。これらのライブラリーはdbESTライブラリー14129およびライブラリー8834であった。
【0311】
6つのESTがUniGene Hs.161160を構成した。これらEST配列から形成されるコンティグをPspu43と称する。これらESTは2つのcDNAライブラリーにおいて見出される5つのクローンから生成される。これらのライブラリーはNCI_CGAP_Pr28(dbESTライブラリーID.1410)およびNCI_CGAP_Pr2(dbESTライブラリーID. 574)であった。データパニングアルゴリズムは、この転写産物が前立腺において83%しか集積されなかったことを示した。しかし、ライブラリー574は前立腺特異的ライブラリーのリストに組み込まれておらず、したがって、このライブラリー由来のESTは前立腺起源のものとしてタグ付けされなかった。Pspu2と同様に、この転写産物はもっぱら前立腺起源である可能性が高い。
【0312】
Pspu1、Pspu2、Pspu8およびPspu43を構成するEST同士をアライメントして、各候補に関して最良のコンセンサス配列を得た。該コンセンサス配列を図1に示し、NCBIの非冗長GenBankデータベースに対するBLASTN(Altschul et al. 1990)の結果を下記表4に示す。
【0313】

【0314】
Pspu1およびPspu2コンセンサス配列は長さがそれぞれ368bpおよび394bpであるが、ただし両者は、実際には可変長(それぞれ18bpおよび15bp)でありうるポリAストレッチで終結する。両配列はヒトゲノム上に位置付けられるが、既知の発現遺伝子に対して高スコアの適合を生じない。Pspu43コンセンサス配列は392bp長であり、これもヒトゲノム上に位置付けられ、発現配列に位置付けられない。Pspu8は1320bp長であり、ヒトアシル-マロニル縮合酵素の発現配列に位置付けられる。
【0315】
結論
発明者らは、UniGeneデータマイニングアルゴリズムを使用して、前立腺に特異的な4つの核酸配列、Pspu1、Pspu2、Pspu8およびPspu43を同定した。Pspu1、Pspu2およびPspu8はそれぞれ8p12/21境界、8p21および8p22-p23に位置する。これらの遺伝子座からの欠失は前立腺癌における既知の初期イベントである(MacGrogan et al. 1994)。疾患において前記配列のうち2つが喪失することが、正常な前立腺と前立腺癌との間の遺伝子発現のメタ分析によって裏付けられる。Pspu43は8番染色体の長腕の8q23に位置する。隣接領域8q24は、最近、前立腺癌感受性に遺伝的に結び付けられた(Amundadottir et al. 2006)。発明者らは、Pspu1、Pspu2、Pspu8およびPspu43が、前立腺癌の発生における初期イベントとして生じる8番染色体の変化についての有用なマーカーであることを提唱する。
【実施例2】
【0316】
Pspu43: 8番染色体の長腕上の前立腺疾患マーカーの特徴付け
序論
上記実施例1に記載のデータパニングアルゴリズムを使用してcDNA組織ライブラリーをデータマイニングすることによって、Pspu43が前立腺に対して重要であると特定した。データパニングアプローチを使用して、合計で、8番染色体に位置付けられる4つの配列を同定した。3つの配列は8番染色体の短腕上に位置し、一方、Pspu43はこの染色体の長腕上に位置した。Pspu43は、前立腺腫瘍においてしばしば変化し、前立腺癌への遺伝的感受性と結び付けられている(Amundadottir et al., 2006)8番染色体上の領域に、近接して位置する。
【0317】
本実施例では、Pspu43に関する発明者らの知見をまとめる。該知見には、ゲノム配列の確認、細胞培養系における発現プロファイルおよび組織特異性データが含まれる。
【0318】
系および方法
PCRプライマー設計
ESTクラスターHs.161160によって生成されたコンティグからPspu43に対するPCRプライマーを設計した。該コンティグをBLASTN(Altschul et al., 1990)で解析し、クローニングベクター配列が該コンティグ中に含まれないことを確実にした。この編集済み配列をPCRプライマー設計プログラム(Primer3, Rozen and Skaletsky, 2000)に読み込ませた。最長アンプリコンを生じた最適なプライマーペアを選択し、BLASTNを使用してNCBIの非冗長遺伝子配列データベースと比較した。AMPLIFYプログラム(William Engles, Genetics Department, University of Wisconsin)を使用して、コンティグおよびプライマー配列を用いて、PCRシミュレーションを実施し、適合の忠実度を確実にし、プライマー二量体形成を回避し、可能性のあるプライマー二次構造を試験した。プライマーはInvitrogen(USA)によって合成された。プライマー配列を表5に示す。
【0319】

【0320】
RNAおよびゲノムDNAの抽出および増幅
正常な前立腺上皮細胞および間質細胞(PrECおよびPrSC; Clonetics, San Diego CA)を培養し、専用培地(PrEGM BulletKit; Clonetics, San Diego CA)で維持した。一方、前立腺癌セルラインLNCaP(ATCC CRL 1740, Manassas, VA)、DU145(ATCC HTB-81, Manassas, VA)およびRWPE-2(ATCC CRL-11610, Manassas, VA)を培養し、10%ウシ胎児血清を補充したRPMI 1640培地で維持した。
【0321】
RWPE-2はv-Ki-rasによって形質転換されたヒトパピローマウイルス不死化前立腺上皮細胞セルライン(RWPE-1)の誘導細胞である。それはアンドロゲン応答性、浸潤性および腫瘍原性(tumorogenic)である(Bello et al. 1997; Webber et al. 1997a)。LNCaPは前立腺癌転移病変の誘導体であり、アンドロゲンに応答性である(Webber et al., 1997b)。DU-145は転移性前立腺癌病変から誘導されたものであり、アンドロゲンに不応性であり、高度に浸潤性および腫瘍原性である(Webber et al., 1997b)。
【0322】
PrECおよびLNCaP細胞をそれぞれ2500細胞.cm-2または4000細胞.cm-2の密度で播き、25 cm2通気式フラスコ中で5%CO2の加湿雰囲気中で37℃で70%集密まで培養した。トリプシン処理によって細胞を回収し、トリプシンを含まない培地中で洗浄し、500 gで遠心分離した。TriZol(Invitrogen, Carlsbad, USA)を製造元のプロトコルに従って使用して、ゲノムDNA(gDNA)およびRNAを細胞ペレットから抽出した。Superscript II(Invitrogen, Carlsbad, USA)を製造元の使用説明書通りに使用してRNAをcDNAに変換した。160ngゲノムDNAまたは37.5ng cDNAに対して上記プライマーを使用してPCR増幅を実施した。Amplitaq GoldTM master mix(Applied Biosystems, NJ, USA)を使用してPCRを行った。PCR条件を最適化し、65℃の有効なアニーリング温度を確立した。全ての前立腺セルライン由来のサンプルを比較した。
【0323】
さまざまな組織由来のRNAは、Clontech laboratories Inc.(Mountain View, CA, USA)から購入したか、または他の研究プログラムから提供を受けた。これらサンプルは乳腺、卵巣、精巣、腎臓および血液を起源とした。これらを上記のようにcDNAに変換し、37.5ng RNA当量の濃度でPCRアッセイに使用した。
【0324】
PCR産物のシークエンシング
QIAgen PCR精製系(QIAGEN GmbH, Hilden, Germany)を使用してPCR産物をゲル精製した。QX1バッファーを製造元の使用説明書に従って使用して1%アガロースゲルからDNAを取り出した。精製カラムから滅菌milliQ水中にDNAを溶出させた。
【0325】
BigDye Terminator v3.1化学を使用し、フォワードおよびリバース両PCRプライマー(10μM)を用いて、精製済みPCRアンプリコンを配列決定した。
【0326】
結果
表6は、3つの前立腺セルラインから合成されたゲノムDNAおよびcDNAの両者から得られたPCRの結果を示す。これらはLNCaP、PrECおよびPrSCセルラインであった。PrECおよびPrSCはそれぞれ正常な前立腺上皮細胞および間質細胞に由来する。LNCaPは前立腺癌患者からのリンパ節転移病変に由来する。3つのセルラインから単離された全てのゲノムDNA中でPspu43配列を検出した。これは、Pspu43がヒトゲノムの一部分であり、LNCaPセルラインから完全には失われていないことを示す。
【0327】

【0328】
各前立腺セルラインから合成されたcDNA鋳型からRT-PCRを使用して遺伝子発現の結果を得た。5つのセルライン全てに関する結果を表7にまとめる。少なくとも2つの鋳型に関して最低3回RT-PCRを反復した。5つのセルラインのうち4つでPspu43が発現された。すなわち、それはPrEC、LNCaP、DU145およびRWPE2サンプル中に存在するが、PrSCサンプル中には存在しない。トランスゲリン2およびPSAに関するRT-PCRの結果を比較のために含める。
【0329】

卵巣、腎臓、乳腺、精巣および血液から単離されたいくつかの異なるRNAサンプルについて、RT-PCRを使用して、Pspu43に対する組織特異性を検査した。Pspu43配列は乳腺および腎臓の両者において検出されたが、他の被験組織では検出されなかった(表8)。
【0330】

【0331】
前立腺生物学に対する目的のUniGeneクラスターとしてHs.161160が最初に同定されて以来、それは142のEST、7つのmRNA配列とともにグループ化され、TFCP2L3(Grainyhead-like 2 (Drosophila))と名付けられている。コンティグPspu43を構成する元の6つのESTは依然としてこのUniGeneクラスターに位置する。しかし、コンティグPspu43は、現在ではTFCP2L3と関連付けられているmRNA配列のいずれにも位置付けられない。これは、コンティグPspu43と7つのmRNA配列全てとの間で2-way BLASTを使用して示された。Pspu43コンティグを非冗長配列データベースに対してBLASTアライメントすると、2つのゲノムクローン:AP000426およびAP001207に対してのみ完全な適合が示された。これらのクローンは、それぞれ239,116および153,936核酸の、注釈付けされていない大きなDNA配列である。
【0332】
TFCP2L3(Grainyhead-like 2 (Drosophila))ESTは、前立腺において(発現プロファイラー- NCBI)およびノーザンブロッティングによって(Peters et al., 2002)高度に示されている。しかしTFCP2L3はPspu43配列を含まないと思われる。TFCP2L3は、聴力低下を生じさせる突然変異と関連付けられている転写因子である(Peters et al. 2002)。
【0333】
結論
Pspu43は、正常および癌性の前立腺組織の両方から作製されたcDNAライブラリーにもっぱら存在するとして同定された発現RNA配列である。それは、通常、前立腺上皮で発現されるようである。したがってPspu43発現は前立腺の健康についての可能性のあるマーカーである。
【実施例3】
【0334】
尿分析
序論
発明者らは、前立腺疾患の臨床検査を受けた男性群の尿中でPspu43が検出可能かどうかを試験したいと考えた。尿サンプルはDepartment of Urology, Dunedin Hospital, Dunedin, New Zealandから収集した。それら尿サンプルからRNAを抽出し、RT-PCRに付して、Pspu43、トランスゲリン2およびPSAを検出した。これらアッセイはスコア化した。RT-PCRの結果を得た後にのみ患者の診断が可能になった。
【0335】
方法
この研究への全参加者は承諾書を提出し、このプロジェクトはLower South Regional Ethics Committeeから倫理上の承認を受けた(「Development of non-invasive, diagnostic and prognostic tests of prostate cancer」LRS/05/05/016)。男性群は、その前立腺の物理的状態を判定するための通常の検査手順の部分として前立腺触診を受けた。前立腺触診では、人差し指を両側面に3回滑らせることによる右葉および左葉ならびに先端から基部までの指診を行った。その後、20〜30 mlの尿サンプルを収集した。等しい容量のリン酸バッファー(pH7.0)を尿サンプルに加えた。このサンプルを4℃で一晩保存した。4℃で15分間2500gで遠心分離することによって細胞を回収し、上清を除去し、細胞ペレットを800μlのTriZol(Invitrogen, Carlsbad, USA)に再懸濁した。グリコーゲン(Invitrogen, Carlsbad, USA)を加えて、終濃度250μg/mlとした。製造元のプロトコルに従ってRNAを抽出した。RNAペレットを16.5μlのH2Oに再懸濁した。8マイクロリットルのサンプルをDnase I(Roche, Switzerland)で製造元の使用説明書通りに処理した。Superscript II(Invitrogen, Carlsbad, USA)を製造元の使用説明書通りに使用して、Dnase I処理サンプルの半分をcDNAに変換した。下記プライマーを使用して、1〜2.5μlの範囲のcDNAおよび等量のDnase I処理RNAに対してPCR増幅を実施した(表9)。Amplitaq GoldTM master mix(Applied Biosystems, NJ, USA)を使用してPCRを行った。PCR条件を最適化し、65℃の有効なアニーリング温度を確立した。
【0336】

【0337】
結果および考察
発明者らは、疑われる疾患について前立腺検査を受けた8人の男性によって提供された尿サンプル、および前立腺疾患の症状を有さない男性からの1つの尿サンプルから信頼性のあるRT-PCRの結果を得た。RNAのみのサンプルがPCR産物を生じなければ、PCRの結果は信頼性ありとした。発明者らのPCR系で使用される酵素は鋳型としてRNAを利用できない。したがってRNAのみの反応から生じるPCR産物はサンプル中のゲノムDNAの存在を示す。これが事実である場合、遺伝子発現をゲノム混入と識別することができない。これらの結果を表10にまとめる。
【0338】

【0339】
これらの実験では、非定量的RT-PCRアッセイを使用した。それらの患者に関する長期追跡データは入手可能でなかった。サンプルU"S"は明らかな疾患を有さない男性からのサンプルである。それら尿サンプルにおいて細胞集団を特徴付ける試みは行われなかった。尿サンプルから一貫して高品質なRNAを抽出することは難題であることがわかり、得られるRNAの量は様々であった。結果として、この技術を確立することに起因する実験的変動に多数のサンプルを失った。
【0340】
Pspu43、トランスゲリン2およびPSAの転写産物を尿中で検出できることはこれら結果から明らかである。既知の癌患者のうち2人(U6 & U22)、腫瘍無しの1人(U7)および良性の1人(U14)においてPspu43が検出された。しかし、発明者らはこれらの患者に関する長期追跡データを有さない。Pspu43が疾患進行の早期指標であるならば、患者U7およびU14は誤診されていて、疾患のごく初期段階であることがありうる。Pspu43は、正常(U"S")、腫瘍無し(U1)または良性(U20)のサンプルでは検出されず、また癌患者の1人(U12)では検出されなかった。
【0341】
トランスゲリン2は全てのサンプル中で検出されたが、U12の読み取り値は疑わしかった。非RTコントロールからも産物が生成されたからである。これはまた、Pspu43について陽性応答をもたらさない唯一の既知の腫瘍サンプルであった。3回の試行を行って、このサンプルから2つの無関連の産物を増幅し、毎回一貫しない結果が生じた(データは示していない)。PSAアッセイは1回のみ試みた。このサンプルから得られた結果の最も有利な解釈は、このサンプルから単離されたRNAの低い品質または低い濃度のせいでRT-PCR反応の信頼性がなかったことである。
【0342】
PSAは、疾患状態にかかわらず、全てのサンプルで検出された。これは、尿サンプルからのPSAの存在または不存在は、もしそれが該個体の前立腺の健康または病理にかかわらず検出される場合には、診断に役立つ可能性が低いことを示す。
【0343】
結論
Pspu43を男性の尿中で検出することができた。後に前立腺生検により前立腺腫瘍を有すると診断された患者においては、腫瘍を有さないかまたは良性前立腺肥大(BPH)を有する男性よりも頻繁にPspu43が検出された。PSAおよびトランスゲリン2は全てのサンプル中で検出された。したがって、マーカーの有無を調べる単純な診断検査には、PSAまたはトランスゲリン2は適さないであろう。他方、Pspu43は、腫瘍を有する患者において検出することができるであろう。このことは、前立腺癌のマーカーとしてのPspu43の用途を裏付ける。前立腺癌の進行の予測因子としてのPSA増大に伴う問題は、それが前立腺癌と他の病理を識別できないことである。BPHおよび前立腺炎でも、ともに、血中PSAスコアが高くなりうる。Pspu43はBPHと前立腺癌を識別できるので、癌存在のマーカーとしてより高い感度を潜在的に有する。
【実施例4】
【0344】
前立腺腫瘍組織におけるPspu43の発現
序論
この実験の目的は、疾患状態を有する前立腺におけるPspu43発現の変化を調べることであった。
【0345】
この研究では、単一個体由来の正常生検試料および病変生検試料の適合ペア10組を使用した。これらサンプルは、前立腺腺癌(prostate adenocarcinoma)に対して前立腺摘除を受けた男性から収集し、それらは全てグレアソン等級6およびそれ以上であった。これらのサンプルからRNAを抽出し、定量的PCR(qPCR)に付して、いずれも前立腺においてPspu43が発現されたかどうかを判定し、かつ腫瘍 対 正常組織における発現の相対レベルを比較した。適合(matched)生検により、異なる個体間に存在する遺伝的変異がその結果を混乱させないことを確保した。発明者らは、他の癌において下方制御されることが示されている(Chang et al.,2001, Shields et al., 2002)トランスゲリン1をPspu43発現に対する比較として使用した。
【0346】
方法
組織
組織生検試料はCancer Society Tissue Bank(Christchurch, New Zealand)から入手した。組織バンクに材料を提供した全ての患者から承諾書を得た。また、このプロジェクトに対する個別の承認をCancer Society Tissue Bank Governing BoardおよびLower South Regional Ethics Committeeから得た(「Development of non-invasive, diagnostic and prognostic tests of prostate cancer」LRS/05/05/016)。組織は、患者から取り出された後15〜30分以内に液体窒素中で瞬間凍結された凍結組織ブロックとして供給された。組織および対応する患者の詳細を表11および12に示す。全ての腫瘍は組織学的タイプでは前立腺腺癌であり、全てが神経周囲の浸潤を示した。
【0347】

【0348】

【0349】
RNA単離
各前立腺組織ブロックをOCT(Lab Tek products, Tennessee, USA)中、Cryomould内にマウントした。次いでRNA調製のために組織を切片にした。採取された最初および最後の切片は8μm切片からなり、それをスライドガラス上にマウントした。このスライドガラスを-80℃で保存し、必要であれば組織学参照試料として使用した。最初および最後の切片の間で10個の60μm切片を切り出してポトル容器に入れた。
【0350】
4ミリリットルのTriZol(Invitrogen, Carlsbad, USA)をポトル容器に加え、切片をすぐに30秒間ホモジナイズした。ホモジネートを15 mlファルコンチューブに移し、1.5mlのクロロホルムを加えた。ホモジネートを15秒間ボルテックスし、すぐに氷上に置いた。次いでこれらホモジネートを4℃で15分間4000rpmで遠心分離した。上層を新たなチューブに取り出した後、1 mlのクロロホルムで再抽出し、4℃で15分間4000rpmでの遠心分離を反復した。再び上層を収集し、新たなチューブに移した。0.53倍量の100%エタノールを強くボルテックスしながらサンプルに加えた。次いで核酸/エタノール混合物全体を、真空マニホールドに連結されているRneasyカラム(Qiagen, Germany)に移し、真空を適用した。次いで結合した核酸を有しているカラムを700μlのRW1洗浄バッファーで洗浄した後、再び真空を適用した。次いで500μlの洗浄バッファーRPEを真空下でカラムから抜いた。カラムは、分解した後、15〜30秒間8000rpmで遠心分離することによって乾燥させた。カラムを新たな1.5ml遠心チューブに入れ、該カラムに30μlの水を加えた後、さらに15〜30秒間8000rpmで遠心分離した。30μlのフロースルー量をカラムの上部に加え戻し、そのユニットを15〜30秒間8000rpmで再遠心分離した。このカラムの溶離液は、各組織ブロックから得られた各セット10個の60μm切片から抽出されたRNAを含有した。Nanodrop分光計を使用して光学密度および260/280比を決定することによって、さらにExperion Bio-analyzer chip system(Bio-Rad, California, USA)を使用する電気泳動によって、回収したRNAの品質を検査した。使用時までRNAを-80℃で保存した。
【0351】
cDNA合成
1マイクロリットルの5μg/μlランダムヘキサマー(Roche, Switzerland)を600ngのRNAに加えた。この混合物を5分間95℃に加熱し、次いで5分間25℃にした。次いでサンプルを氷に移した。4μl 第一鎖バッファー(Invitrogen, Carlsbad, USA)、4μl dNTP(それぞれ2.5mM)、2μl 0.1M DTT、0.5μl 40U/μl Rnaseインヒビター(Invitrogen, Carlsbad, USA)および1μl 200U/μl Superscript II(Invitrogen, Carlsbad, USA)からなる反応混液をRNAに加え、ピペッティングすることによって混合した。これを42℃で120分間インキュベートし、次いで70℃で10分間インキュベートし、80℃で1分間インキュベートした。
【0352】
Qiagen PCR洗浄カラム(Qiagen, Germany)を使用してcDNAを精製した。80マイクロリットルの水および500μlのPBバッファーを20μlのcDNA合成反応液に加えた。これをQiagen洗浄カラムに通して12000rpmで1分間遠心分離した。フロースルー液を捨て、750μl PEバッファーを12000rpmで1分間遠心分離することによって結合cDNAを含有するカラムを洗浄した。次いで12000rpmで1分間遠心分離することによってカラムを乾燥した。このカラムを新たな溶離液収集装置に移し、40μlの水を加えた。8000rpmで1分間遠心分離することによってカラムからcDNAを溶出させた。第二の40μlアリコートをカラムに加え、遠心分離ステップを反復した。清浄な溶出cDNAサンプルは使用時まで-80℃で保存した。
【0353】
qPCR
cDNAを7.5ng/μlの濃度に希釈し、各サンプルの2 x 5μlアリコートを96ウェルオプティプレートのウェル中にピペットで加えた。またRNAサンプルを7.5ng/μlに希釈し、1 x 5μlアリコートを96ウェルプレート上のウェル中にピペットで加えた。PCR混入を確認し、かつ標準曲線cDNAを複製するための鋳型コントロールは各96ウェルプレートに加えなかった。各サンプルに、適切なプローブ/プライマー混合物またはSYBR green(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を加え、qPCR master mix(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を加えた。該プレートを密封し、混合した後、短時間遠心分離して内容物が各ウェルの底に集まることを確保した。ABI7000装置(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)でqPCRを実施した。
【0354】
プライマーおよびプローブセットを表13に示す。2つの系を使用してRNA転写産物レベルを測定した。解離分析によって単一産物が検出された場合には、非特異的インターキレート色素としてSYBR greenを使用し、DNA増幅を検出した。解離分析において複数のバンドが存在する場合、二重標識Taqmanプローブを使用してアンプリコン識別を提供した。各系は96ウェル形式で製造元のプロトコルに従って使用した。Applied Biosystems, California, USAのSDSソフトウェアパッケージ(バージョン1.2.3)を使用して結果を解析した。
【0355】

【0356】
結果および考察
前立腺摘除を受けた個体から採取された前立腺由来の適合した腫瘍および正常サンプルの各ペアからRNAを抽出した。各抽出物から得られたRNAの平均量は586ng/μlであり、260/280比は1.77〜2の範囲であった。
【0357】
PC3前立腺癌セルライン(ATCC CRL 1435, Virginia, USA)由来のcDNAを使用するqPCR反応を各プライマー/プローブの組み合わせに対して最初に最適化した。解離ピーク分析(図2)から決定される通り、SYBR green技術を使用するアッセイはT1およびT2に関して良好に機能したが、Pspu転写産物アッセイのいずれについても良好に機能しなかった。したがって、TaqMan qPCRシステムとともに使用するPspu候補に対してプライマー/プローブセットを設計した。
【0358】
絶対定量法を使用して各サンプル中の転写産物量を決定した。各プライマー/プローブセットに対し、汎用標準品である複数の安定なセルラインから作成された標準曲線は、0.9998〜0.9932の範囲のR2値を示した(図3)。各サンプルペアに対する生のトータルCT値を図4に示す。重複したqPCR反応からCTの標準偏差を算出し、それを各サンプルについての+/-1標準偏差として図4に記載する。次いで平均CTに対して転写産物cDNAの相対濃度を算出し、対応するcDNA値を標準曲線から算出した。次いでRNAのみのqPCR反応から決定された相対cDNA濃度を決定し、転写cDNAを使用するqPCRから得られる値からこれを減算することによって、その値をゲノムDNA混入に関して補正した。各組織ペア由来の各マーカーに対して補正した相対cDNA量を図5に示す。データの概要を各患者の腫瘍のグリアソン等級とともに表14に示す。
【0359】

【0360】
前記結果から、正常組織および腫瘍組織の両方で全てのマーカーがRNA転写産物として発現されることが実証された。全体としては、腫瘍組織には、より少ないT1転写産物しか存在せず、一方、Pspu43転写産物は増加していた(腫瘍 対 正常組織でのPspu43増加の有意な相関(P = 0.0055)。2x3分割表、フィッシャーの正確確率検定による)。T1の低下は他の癌についての知見と一致し(Chang et al.,2001, Shields et al., 2002)、細胞の細胞骨格の完全性の喪失および転移と対応するであろう。
【0361】
各個体から採取された正常なサンプルと比較して、6〜8のグリアソン等級を有する全ての腫瘍でPspu43が上方制御された。各サンプル間の差異は標準誤差より大きかった。最も重篤な病変(14B9/C1、グリアソン9)では、前立腺の正常部分に相対的に多くのPspu43マーカーが存在した。この特定器官における該疾患の程度(その腺の85%が関連する)を考慮すると、この「正常な」サンプルが正常に機能する前立腺を反映したことは問題があり、これは該疾患の進行した性質を反映するのかもしれない。グリアソン等級9の腫瘍のトランスクリプトーム特性が重篤でない形態の該疾患と大きく異なる可能性はあまりない。
【0362】
マーカーPspu1、Pspu2、Pspu8またはT2の発現には明らかに一貫するパターンは観察されなかった。したがって、発明者らのバイオインフォマティクスアルゴリズムによってPspuマーカー1、2および8が同定されたが、それらがこの試験で腫瘍を正常な前立腺と識別できることは立証されなかった。
【0363】
結論
この実験は、疾患状態にかかわらず、トランスゲリン1および2、ならびにPspu 1、2、8および43は全て前立腺組織において発現されることを示した。マーカーT2、Pspu1、Pspu2またはPspu8に関して明らかな癌を識別する発現パターンは実証されなかった。しかし、T1は腫瘍組織において下方制御される傾向を示し、これは肺、乳房および結腸癌に関する他者の知見と一致した(Chang et al., 2001, Shields et al., 2002)。反対に、Pspu43は、正常なサンプルと比較して腫瘍組織において上方制御される傾向を示した。これは顕である。発明者らは、8番染色体のこの領域が多数の男性の早期疾患過程で変化することを承知している。それらの結果はPspu43の増加が前立腺癌の指標になることを示す。
【0364】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3の配列または機能上等価なその断片もしくは変異体、またはストリンジェントな条件下で配列番号3にハイブリダイズする配列またはその断片もしくは変異体を含む単離された核酸分子。
【請求項2】
配列番号3に対して70%、好ましくは75%、好ましくは80%、好ましくは90%、好ましくは95%、好ましくは99%の配列同一性を有する、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
請求項1に記載の核酸配列、好ましくは配列番号3、の少なくとも10ヌクレオチドの断片またはその相補配列を含む単離された核酸分子であって、該断片または相補配列が以下の配列:
(a) 請求項1に記載の核酸配列、好ましくは配列番号3、またはその相補配列;
(b) 請求項1に記載の核酸配列またはその相補配列に対応するcDNAの完全長コード配列;
(c) (a)または(b)の逆相補配列
とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、核酸分子。
【請求項4】
少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも60ヌクレオチド、少なくとも70ヌクレオチド、少なくとも80ヌクレオチド、少なくとも90ヌクレオチド、または好ましくは少なくとも100ヌクレオチド長である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子を含む遺伝子構築物。
【請求項6】
発現構築物である、請求項5に記載の遺伝子構築物。
【請求項7】
請求項6に記載の遺伝子構築物を含むベクター。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の遺伝子構築物またはベクターを含む宿主細胞。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子によってコードされる単離されたポリペプチドまたは機能上等価なその変異体もしくは断片。
【請求項10】
少なくとも5アミノ酸長である、請求項9に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項11】
(a)配列番号9、(b)配列番号10、(c)配列番号11、(d)配列番号12、(e)配列番号13、または(f)配列番号14の配列;または(a)、(b)、(c)、(d)、(e)または(f)の機能上等価な変異体もしくは断片、またはストリンジェントな条件下で(a)、(b)、(c)、(d)、(e)もしくは(f)のいずれかにハイブリダイズする配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチドであって、請求項9〜11のいずれか一項に記載のポリペプチドに対して少なくとも70% 好ましくは75%、好ましくは80%、好ましくは85%、好ましくは90%、好ましくは95%、好ましくは99%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは該ポリペプチドの機能上等価な変異体もしくは断片に特異的に結合する抗体。
【請求項14】
ポリクローナル、モノクローナル、単鎖抗体もしくはヒト化抗体、または免疫学的に活性なその断片である、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
モノクローナル抗体である、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
検出可能なマーカーで標識されている、請求項13〜15のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項17】
請求項9〜12のいずれか一項に記載のポリペプチドを組換え生産する方法であって、以下のステップ:
(a) 請求項9〜12のいずれか一項に記載のポリペプチドを発現可能な、請求項5または請求項6に記載の遺伝子構築物を含む宿主細胞を培養するステップ;および
(b) 本発明のポリペプチドを発現する細胞を選択するステップ;
(c) 発現されたポリペプチドを細胞から分離するステップ;および場合により
(d) 発現されたポリペプチドを精製するステップ
を含む方法。
【請求項18】
宿主細胞を前記構築物でトランスフェクトすることを事前ステップとして含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
PSPU43(配列番号3)に結合する1種以上の核酸配列を含むアレイ。
【請求項20】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の1種以上の核酸配列を含むアレイ。
【請求項21】
トランスゲリン1(配列番号7)に結合する1種以上の核酸配列をさらに含む、請求項19または請求項20に記載のアレイ。
【請求項22】
トランスゲリン2(配列番号8)に結合する1種以上の核酸配列をさらに含む、請求項19〜21に記載のいずれか一項のアレイ。
【請求項23】
PCA3(配列番号6)に結合する1種以上の核酸配列をさらに含む、請求項19〜22のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項24】
前立腺特異抗原(PSA)(配列番号5)に結合する1種以上の核酸配列をさらに含む、請求項19〜23のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項25】
核酸配列がRNAである、請求項19〜24のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項26】
核酸配列がDNAである、請求項19〜25のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項27】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子の発現を改変する化合物のスクリーニング方法であって、以下のステップ:
(a) 該核酸分子を発現する細胞を試験化合物と接触させるステップ;
(b) 該核酸分子の発現レベルを決定するステップ;および
(c) 試験化合物の不存在下での発現レベルと比較して発現レベルを改変する化合物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項28】
核酸分子がPSPU43(配列番号3)である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子の活性を改変する化合物のスクリーニング方法であって、以下:
(a) 該核酸分子によってコードされるペプチドと試験化合物を接触させること;
(b) ペプチドの生物学的活性を検出すること;および以下のいずれか:
(c) 化合物の不存在下で検出される生物学的活性と比較してペプチドの生物学的活性を改変する化合物を選択すること;または
(d) ペプチドに結合する化合物を選択すること
を含む方法。
【請求項30】
核酸分子がPSPU43(配列番号3)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項27〜30のいずれか一項に記載のスクリーニング方法によって選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子、好ましくはPSPU43(配列番号3)、の発現または活性を改変する化合物。
【請求項32】
前立腺上皮内腫瘍(PIN)または前立腺癌(PRC)を治療または予防するための医薬の製造における請求項31に記載の化合物の使用。
【請求項33】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子を含めたマーカー発現のパターンを含むPINまたはPRCの発現プロファイル。
【請求項34】
核酸分子がPSPU43(配列番号3)である、請求項33に記載のプロファイル。
【請求項35】
PCA3(配列番号6)、トランスゲリン1(配列番号7)、トランスゲリン2(配列番号8)およびPSA(配列番号5)から選択される1種以上のマーカーをさらに含む、請求項33または34に記載のプロファイル。
【請求項36】
マーカーPSPU 43(配列番号3)、PCA3(配列番号6)、トランスゲリン1(配列番号7)、トランスゲリン2(配列番号8)およびPSA(配列番号5)を含む、請求項33〜35のいずれか一項に記載のプロファイル。
【請求項37】
患者のPINまたはPRCを治療または予防する方法であって、患者の請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子の発現レベルを改変することを含むか、または請求項9〜12のいずれか一項に記載のポリペプチドの活性を改変することによる方法。
【請求項38】
核酸分子がPSPU43(配列番号3)である、請求項374に記載の方法。
【請求項39】
アンチセンス組成物、siRNA組成物、またはリボザイム組成物であって請求項1に記載の核酸分子に相補的な1種以上のヌクレオチド配列を含む組成物を患者に投与することによって発現を阻害する、請求項37または請求項38に記載の方法。
【請求項40】
核酸分子がPSPU43(配列番号3)である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
組成物がワクチンである、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
請求項9〜12のいずれか一項に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体を投与することによって発現を阻害する、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
ポリペプチドがPSPU43(配列番号3)によってコードされる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項42または請求項43に記載の方法。
【請求項45】
患者のPINまたはPRCを治療または予防する方法であって、請求項9〜12のいずれか一項に記載のポリペプチドの発現または活性を改変する化合物を該患者に投与することを含む方法。
【請求項46】
ポリペプチドが配列番号3によってコードされる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
請求項1に記載の核酸分子が過剰発現されている患者のPINまたはPRCを治療または予防する方法であって、該核酸分子によってコードされるポリペプチドの発現または活性を減少させる化合物を該患者に投与することを含む方法。
【請求項48】
核酸分子がPSPU43(配列番号3)である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子または請求項9〜12のいずれか一項に記載のポリペプチドの医薬有効量を含む組成物。
【請求項50】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたはsiRNAの医薬有効量を含む組成物。
【請求項51】
核酸分子がPSPU43(配列番号3)である、請求項49または請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
請求項9〜12のいずれか一項に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその断片の医薬有効量を含む組成物。
【請求項53】
ポリペプチドが配列番号3によってコードされる、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
請求項27〜30のいずれか一項に記載のスクリーニング方法によって選択される化合物の医薬有効量を含む組成物。
【請求項55】
製薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤をさらに含む、請求項49〜54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
患者のPINまたはPRCを治療または予防する方法であって、それを必要としている患者に、請求項31に記載の化合物または請求項49〜55のいずれか一項に記載の組成物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項57】
患者のPINまたはPRCを治療または予防するための医薬の製造におけるPSPU43(配列番号3)、または同核酸によってコードされるポリペプチドの使用。
【請求項58】
患者のPINまたはPRCを治療または予防するための医薬の製造における、請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子、または請求項9〜12のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項59】
請求項1に記載の核酸分子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、またはリボザイム。
【請求項60】
PSPU43(配列番号3)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、またはリボザイム。
【請求項61】
サンプル中の請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子、好ましくはPSPU43(配列番号3)、の存在を検出するためのアッセイであって、以下:
(a) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で請求項1に記載の核酸配列にハイブリダイズするヌクレオチドプローブとサンプルを接触させること;および
(b) サンプル中のハイブリダイゼーション複合体の存在を検出すること
を含む方法であるアッセイ。
【請求項62】
プローブが標識されたプローブである、請求項61に記載のアッセイ。
【請求項63】
プローブが蛍光標識されている、請求項62に記載のアッセイ。
【請求項64】
プローブが配列番号3の相補配列である、請求項59〜63のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項65】
患者サンプル中の請求項1に記載の核酸分子、好ましくはPSPU43(配列番号3)、の発現レベルを決定する方法であって、該核酸分子を直接的または間接的に測定することを含む方法。
【請求項66】
核酸分子をin situハイブリダイゼーションまたはRT-PCR解析に用いる、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
患者サンプル中の請求項1に記載の核酸分子の発現レベルを決定する方法であって、以下:
(a) 該核酸分子のDNA配列またはその相補配列を増幅すること;または
(b) 該核酸分子のcDNA配列またはその相補配列を増幅すること;および
(c) 該サンプル中の1種以上のDNA、cDNAまたはRNAのレベルを測定すること
を含む方法。
【請求項68】
核酸分子がPSPU43(配列番号3)である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
PCRを使用してDNAまたはcDNAを増幅する、請求項67または請求項68に記載の方法。
【請求項70】
電気泳動を使用してサンプル中のDNA、cDNA、またはRNAのレベルを測定する、請求項65〜69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
患者サンプル中の、請求項9〜12のいずれか一項に記載のポリペプチドの存在を検出するためのアッセイであって、以下:
(a) 請求項13〜16のいずれか一項に記載の抗体とサンプルを接触させること;および
(b) サンプル中の結合ポリペプチドの存在を検出すること
を含む方法であるアッセイ。
【請求項72】
該抗体が検出可能に標識されている、請求項71に記載のアッセイ。
【請求項73】
患者における前立腺上皮内腫瘍(PIN)、前立腺癌(PRC)またはPINもしくはPRCの発生の素因を診断する方法であって、患者サンプル中の請求項1に記載の核酸分子の発現レベルを決定することを含み、コントロールレベルと比較した該核酸分子の発現レベルの変化が、患者がPIN、PRCを有するかまたはPINもしくはPRCを発生するリスクを有することを示す、方法。
【請求項74】
変化が発現レベルの増加である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
発現レベルの変化が正常なコントロールレベルを少なくとも10%上回ることである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
正常な前立腺由来のサンプル中でコントロールレベルを測定する、請求項73〜75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
患者における前立腺上皮内腫瘍(PIN)、前立腺癌(PRC)状態を検査する方法であって、患者サンプル中の請求項1に記載の核酸分子の発現レベルを決定することを含み、コントロールレベルと比較した該分子の発現レベルの増加が、患者がPINもしくはPRC状態を有するかまたはPINもしくはPRCを発生するリスクを有することを示す、方法。
【請求項78】
被験体でのPINまたはPRCの治療に対する応答をモニターする方法であって、患者サンプル中の請求項1に記載の核酸分子の発現レベルを決定すること、および該核酸分子のレベルをコントロールレベルと比較することを含み、コントロールレベルからの決定レベルの統計学的に有意な変化が、治療に対する応答を示す、方法。
【請求項79】
核酸分子がPSPU43(配列番号3)である、請求項73〜78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
PINまたはPRCの1種以上の追加のマーカーのレベルを決定することおよび該レベルをコントロール由来のマーカーレベルと比較することをさらに含み、コントロールレベルからの該レベルの有意な偏差、およびそれと併せた請求項1に記載の核酸分子、好ましくはPSPU43(配列番号3)、のレベルの統計学的に有意な増加が、PRCもしくはPINを示し、またはそれをPINもしくはPRC状態をモニターするために使用することができる、請求項73〜79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
追加のマーカーが、トランスゲリン1(配列番号7)、前立腺特異抗原(配列番号5)、およびPCA3(配列番号6)からなる群から選択される、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
サンプルが、尿、リンパ液、血液、血漿、精液、前立腺マッサージ液(prostate massage fluid)、または前立腺組織サンプルである、請求項73〜81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
トランスゲリン2(配列番号8)を参照マーカーとして使用する、請求項73〜82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
請求項73〜82のいずれか一項に記載の方法における参照マーカーとしての、トランスゲリン2(配列番号8)の使用。
【請求項85】
サンプル中の請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子、好ましくはPSPU43(配列番号3)、の存在を検出するためのキットであって、請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子が含まれる少なくとも1つの容器を含むキット。
【請求項86】
該核酸分子を検出するための1種以上の試薬をさらに含む、請求項85に記載のキット。
【請求項87】
請求項1に記載の核酸分子、好ましくはPSPU43(配列番号3)、または該核酸分子によってコードされるポリペプチドに結合する、1種以上の検出試薬を含むキット。
【請求項88】
請求項85〜87のいずれか一項に記載のキットであって、以下:
(a) トランスゲリン1をコードする核酸分子(配列番号7)またはその相補配列;
(b) トランスゲリン2をコードする核酸分子(配列番号8)またはその相補配列;
(c) PCA3をコードする核酸分子(配列番号6)またはその相補配列;および
(d) PSAをコードする核酸分子(配列番号5)またはその相補配列
のうち1種以上をさらに含むキット。
【請求項89】
(a)、(b)、(c)および(d)を含む、請求項88に記載のキット。
【請求項90】
請求項1に記載の核酸分子が改変、破壊、除去または付加されているゲノムを有する非ヒト動物。
【請求項91】
マウスである、請求項90に記載の動物。
【請求項92】
核酸分子がPSPU 43(配列番号3)である、請求項90または請求項91に記載の動物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−539370(P2009−539370A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514225(P2009−514225)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/NZ2007/000142
【国際公開番号】WO2007/142540
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(508125852)オタゴ イノベーション リミテッド (2)
【Fターム(参考)】