説明

評価装置、評価方法及びコンピュータプログラム

【課題】石綿含有物を有する空間において、実施すべき当該石綿含有物に対する対策について迅速に判断することを可能とすること。
【解決手段】石綿含有物を有する空間において前記石綿含有物に対し気流が当てられ、この気流によって飛散した石綿が捕集されこの捕集された石綿の繊維数の入力を受け付けるステップと、石綿の繊維数に基づいて空間における石綿によるリスク度を取得するステップと、取得されたリスク度を出力するステップと、を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石綿含有物を有する空間における石綿のリスク度を評価するための評価装置、評価方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、石綿(アスベスト)は優れた物性を備えていることから過去には建材をはじめとして各方面で広く利用されてきた。しかしながら、近年、その粉塵が重大な健康被害をもたらすことが明らかになり、大きな社会問題となっている。
石綿粉塵対策を講じる上では、環境大気中の石綿粉塵濃度を把握することが不可欠である。そのため、環境大気中の石綿粉塵濃度を測定するための技術的指針として「アスベストモニタリングマニュアル」が策定されている(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】「アスベストモニタリングマニュアル(改訂版)」、環境庁大気保全局大気規制課、平成5年12月、p.1−6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非特許文献1に規定されている石綿粉塵濃度の測定手法は、測定対象地点において大気を長時間にわたって連続的にサンプリングして捕集用濾紙(メンブレンフィルター)に通すことによって大気中の石綿粉塵量を測定することを基本とするものである。
たしかに、そのような測定手法によって、測定対象地点付近の大気中の平均的な濃度は測定できる。しかしながら、この測定手法によっても、特定の建材からの発塵量を直接的に測定することや、発塵箇所を特定するようなことはできない。
【0004】
また、より高度の対策を講じるうえでは、単に環境大気中の平均的な濃度のみならず、石綿発塵の可能性やそれに至るような建材の劣化の程度をも把握し得るような測定手法の確立が必要とされている。そして、そのような測定方法を確立した上で、測定された結果に基づき、どのような対策を講じるべきかについて、迅速に判断することが必要とされている。
上記事情に鑑み、本発明は石綿含有物を有する空間において、実施すべき当該石綿含有物に対する対策について迅速に判断することを可能とする装置、方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、評価装置であって、入力手段、評価手段及び出力手段を備える。入力手段は、石綿の繊維数の入力を受け付ける。この石綿の繊維数は、石綿含有物を有する空間において石綿含有物に対し気流が当てられ、この気流によって飛散し捕集された石綿の繊維数である。評価手段は、入力された石綿の繊維数に基づいて、空間における石綿によるリスク度を取得する。出力手段は、取得されたリスク度を出力する。
このように構成された評価装置によれば、気流によって測定対象部位から飛散した石綿の繊維数に基づいて、この空間における石綿のリスク度を評価することが可能となる。そのため、単に環境大気中の平均的な濃度ではなく、石綿発塵の可能性やそれに至るような建材の劣化の程度を反映させたリスク度を取得することが可能となる。従って、このリスク度を用いてより信頼性の高い対策法を選択することが可能となる。
【0006】
また、本発明の評価装置は、リスク度に応じて空間における石綿含有物に対し講じるべき対処方法を記憶する記憶手段をさらに備えるように構成されても良い。この場合、評価手段は、取得されたリスク度に応じた対処方法を読み出すように構成される。また、出力手段は、評価手段によって読み出された対処方法を出力するように構成される。
このように構成された評価装置によれば、リスク度に応じた対処方法が出力される。そのため、リスク度に応じた対処方法に関する知識を有していないユーザが、講じるべき対処方法を容易に選択することが可能となる。
【0007】
また、本発明の評価装置における評価手段は、空間における石綿の濃度を算出し、この濃度の値に基づいてリスク度を取得するように構成されても良い。この処理は、より具体的には以下のように行われる。評価手段は、入力された石綿の繊維数と、この石綿の捕集処理及び捕集処理が行われた空間に関するパラメータとに基づいて、この空間における石綿濃度(空間内アスベスト濃度)を算出する。そして、評価手段は、この算出結果に基づいてリスク度を取得する。
本発明は、コンピュータを、上述した評価装置として動作させるためのコンピュータプログラムとして特定されても良い。また、本発明は、上述した評価装置として機能するコンピュータが行う評価方法として特定されても良い。また、本発明は、リスク度の評価方法として特定されても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、石綿含有物を有する空間において、実施すべき当該石綿含有物に対する対策について迅速に判断することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
〔第一実施形態〕
本発明による評価装置が動作する際には、予め飛散量測定が実施され、その測定結果が評価装置に入力される。そして、この入力に基づいて、本発明による評価装置は石綿含有物に対する対策に関する指標を取得し出力する。まず、本発明による評価装置に入力される測定結果を得るための飛散量測定について説明する。
本発明による評価装置の動作において、予め実施される飛散量測定は、石綿含有物に対して所定流速・所定流量の空気流を吹きつけ、これによって発塵した石綿粉塵を含む空気を、フィルタを介して吸引することによりフィルタ上に石綿粉塵を捕集し、この石綿粉塵の繊維本数を計測することにより行われる。以下、このような飛散量測定の具体例について説明する。
【0010】
図1は、飛散量測定に用いられる測定装置の概略構成図である。この測定装置は、各種の石綿含有物、例えば図示例のように表面に石綿による耐火被覆がなされている鉄骨梁等の構造部材を測定対象とする。以下、このような測定対象となる物を測定対象物1という。測定装置は、測定対象物1の表面の特定部位からの石綿の発塵量を直接的に測定するための装置である。測定装置は、測定対象部位の周囲を覆うカバー2と、カバー2に装着された捕集機構3と、捕集機構3に接続されてカバー2内の空気を捕集機構3を介して吸引するための吸気管4と、その吸気管4の基端に接続された吸気ポンプ5と、吸気ポンプ5に内蔵されて吸気量を測定する流量計6と、カバー2を貫通して設けられて吸気ポンプ5による吸引力によってカバー2外の空気をその先端から測定対象部位に噴射状態で吹き付ける噴射管7と、噴射管7の基端部に装着された捕集機構8とを具備する。
【0011】
測定者は、上記構成の測定装置を用いて、測定対象部位にカバー2を装着してその周囲を気密な状態に覆い、吸気ポンプ5を運転させてカバー2内の空気を吸引することによって行う。
この作業によって、噴射管7からの噴射空気流が所定風速で測定対象部位に吹き付けられ、表層部の石綿が吹き飛ばされて、カバー2内に微量な発塵が生じる。カバー2内に飛散した石綿粉塵は、カバー2内の空気とともに、捕集機構3に吸引される。そして、吸引された全量が、メンブレンフィルター3aに捕集される。なお、石綿粉塵が捕集された後の清浄な空気のみが、吸気管4を通して吸気ポンプ5に吸引されて、系外に排気される。
【0012】
測定者は、このような捕集作業を所定時間行った後、測定装置の運転を停止し、カバー2から捕集機構3を取り外す。測定者は、さらに捕集機構3からメンブレンフィルター3aを取り出し、強制的に発塵させた石綿粉塵の繊維数を測定する。この測定は、顕微鏡を用いて目視によって実施されても良いし、顕微鏡による拡大画像を用いた画像処理によって自動的に実施されても良い。測定結果は、本発明による評価装置に入力される。評価装置は、この測定結果に基づいた評価を実施する。なお、上述した飛散量測定の方法や、飛散量測定に用いられる測定装置は、一つの具体例である。従って、本発明による評価装置の使用に際して実施される飛散量測定の方法や、この測定に用いられる装置は、上述したものに限定される必要は無い。
【0013】
次に、本発明による評価装置について説明する。図2は、本発明による評価装置の第一実施形態である評価装置100aの機能構成を示す機能ブロック図である。評価装置100aは、入力部10、出力部20、及び評価部30aを含んで構成される。評価装置100aは、演算装置や記憶装置がバスによって接続され、記憶装置に記憶されているプログラムに基づいて動作する情報処理装置を用いて構成することができる。評価装置100aの各機能部やその一部は、専用のハードウェアを用いて構成されても良い。以下、図2を用いて、評価装置100aが備える各機能部について説明する。
入力部10は、評価装置100aに接続された不図示の入力装置を介して、ユーザからの命令や数値の入力を受け付ける。入力装置は、例えばキーボードやポインティングデバイス(マウス,トラックボール,タブレットなど)や、ダイヤル式入力装置や、タッチパネルや、テンキーや、各種ボタンや、音声入力装置などを用いて構成されても良い。入力装置は、評価装置100aのユーザが、評価装置100aに対して命令や数値の入力操作を行うことが可能であれば、その他どのような装置を用いて構成されても良い。
入力部10は、予め実施された飛散量測定における測定結果や測定条件に関するデータの入力を受け付ける。測定結果や測定条件に関するデータの詳細については後述する。
【0014】
出力部20は、評価装置100aに接続された不図示の出力装置を介し、評価装置100aのユーザに対してデータの出力を行う。出力装置は、例えば画像や文字を画面に出力する装置を用いて構成されても良い。例えば、出力装置は、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescent)ディスプレイ等を用いて構成できる。また、出力装置は、画像や文字をシートに印刷(印字)する装置を用いて構成されても良い。例えば、出力装置は、インクジェットプリンタやレーザープリンタ等を用いて構成できる。また、出力装置は、文字を音声に変換して出力する装置を用いて構成されても良い。この場合、出力装置は、音声合成装置及び音声出力装置(スピーカー)を用いて構成できる。以下、出力装置が画像表示装置を用いて構成されている場合について説明する。
【0015】
評価部30aは、入力部10を介して入力された飛散量測定の測定結果を用いて、この測定が行われた空間における石綿含有物のリスク度(リスクの度合い)について評価する。評価部30aは、測定対象となった空間における石綿濃度を算出し、この値に基づいてリスク度を取得する。まず、評価部30aによる石綿濃度の算出方法について、具体例を示す。
評価部30aは、単位時間に単位面積から発生する石綿繊維数(以下、「単位面積アスベスト繊維飛散数」という。)を算出する。式1は、単位面積アスベスト繊維飛散数を算出するための式である。
【数1】

式1において、F.E.は、単位面積アスベスト繊維飛散数を示す。単位は、本/m・分である。Nは、予め実施された飛散量測定によって得られた捕集繊維のうち、プレパラート上の所定範囲(以下、「視野」という。)内、所定視野数で計数された総繊維数(以下、「計数分析繊維数」という。)を示し、単位は本である。Aは、飛散量測定において石綿粉塵の捕集の際に使用されたフィルタ(上述した測定装置においては捕集機構3のメンブレンフィルター3aが相当する)の有効面積を示し、単位はmmである。Aは、飛散量測定において、石綿含有物に対して空気流を吹き付けるために使用されたノズル(上述した測定装置においては噴射管7が相当する)の面積を示し、単位はmである。aは、顕微鏡で計数分析繊維数を計数分析する際の一の視野の面積を示し、単位はmmである。nは、計数分析を行った視野の数を示す。例えば、捕集された石綿粉塵を含むプレパラート上の50視野において計数分析を行った場合は、この50という数字がnに相当する。Tは、飛散量測定を行った時間を示し、単位は分である。例えば、上述した測定装置において、測定対象部位にカバー2を装着して吸気ポンプ5によって吸気を行った時間がTに相当する。
【0016】
次に、評価部30aは、評価の対象となっている空間に1分間に飛散される石綿繊維数(以下、「全アスベスト繊維飛散速度」という。)を算出する。式2は、全アスベスト繊維飛散速度を算出するための式である。
【数2】

式2において、T.F.E.は、全アスベスト繊維飛散速度を示し、単位は本/分である。F.E.は、t種類目の石綿含有物から飛散する単位面積アスベスト繊維飛散数を示し、単位は本/m・分である。Aは、t種類目の石綿含有物が、評価対象空間内においてそれぞれ使用されている面積を示し、単位はmである。式2においては、石綿含有物の種類毎にF.E.及びAが算出され、それを乗じたものを石綿含有物全種類分加算することにより、全アスベスト繊維飛散速度が算出される。
【0017】
次に、評価部30aは、評価の対象となっている空間におけるアスベスト濃度(以下、「空間内アスベスト濃度」という。)を算出する。式3は、空間内アスベスト濃度を算出するための式である。
【数3】

式3において、A.A.A.C.は、空間内アスベスト濃度を示し、単位は本/リットルである。Cは、外気アスベスト濃度を示し、単位は本/リットルである。なお、外気アスベスト濃度はゼロに近い値であると仮定することにより、評価部30aの動作において、ゼロが代入されても良い。Nは、評価の対象となっている空間における一時間当たりの換気回数を示す。Vは、評価の対象となっている空間の気積を示し、単位はmである。
【0018】
評価部30aは、入力部10を介して、飛散量測定の測定結果や測定条件に関するデータ(以下、各数値をまとめて「パラメータ」という。)が入力されると、上述した式1から式3を用いて、評価の対象となっている空間について空間内アスベスト濃度を算出する。そして、算出された空間内アスベスト濃度を、出力部20を介してユーザに対し出力する。
次に、評価装置100aの動作例について説明する。図3は、評価装置100aの動作例を示すフローチャートである。まず、評価部30aは、出力部20を介して画像表示装置に入力画面を表示させる(S01)。
【0019】
図4は、入力画面の例を示す図である。以下、図4を用いて入力画面について説明する。入力画面には、各パラメータを入力するための入力欄が設けられる。図4の場合は、パラメータとして、サンプリング時間、フィルタ有効面積、ノズル面積、計数分析繊維数、視野数、及び視野径を入力するために、それぞれの入力欄(横長の矩形で表される欄)が設けられている。ここで、式1から式3を用いた計算において必要となる値として、換気回数、石綿含有物の空間内での使用面積、及び空間の気積を入力するための入力欄は入力画面には表示されていない。これは、これらの値は、仮定条件として、実際の数値ではなく仮想的な値を用いて評価部30aが評価を行うためである。仮定条件とは、評価装置100aの設計者や使用者によって適宜設定される。例えば、全ての石綿含有物に対し毎秒約1.8メートルの風速で風が当たり、建築基準法及び同施行令で定められた最低必要換気回数である0.5回/時の換気が行われており、石綿含有物の空間内での使用面積は1000mであり、空間の気積は3000mである場合を、仮定条件とすることができる。なお、評価部30aは、これらの値について仮定条件を用いることなく、入力された値を用いて評価を行うように構成されても良い。この場合、入力画面にこれらの値を入力するための入力欄が設けられる。また、上述した仮定条件のうち、石綿含有物に対し毎秒約1.8メートルの風速で風が当たるという条件は、飛散量測定を行う際に、噴射管7から噴射される空気流の風速として用いられる。
【0020】
なお、上述した式1では視野面積が用いられるが、この値は、評価部30aが視野径の1/2を二乗し円周率を乗じることによって算出することができる。また、図4の場合、評価の精度を向上させるために、ユーザによって飛散量測定が3回実施された場合のそれぞれの計数分析繊維数、視野数、及び視野径を入力できるように入力欄が設けられている。何回分の計数分析繊維数、視野数、及び視野径を入力可能とするかは、評価装置100aの設計者や使用者によって自由に設計されて良い。また、サンプリング時間、フィルタ有効面積、ノズル面積、視野数、及び視野径の全て又はいずれかは、飛散量測定の実施において固定的な数字を用いることにより、入力を省くように構成されても良い。
【0021】
評価装置100aの動作例の説明に戻る。入力画面に対し、ユーザが入力装置を用いて各パラメータを入力すると、入力結果が入力部10によって受け付けられ、評価部30aに渡される(S02)。評価部30aは、入力された各パラメータを用いて、式1から式3に基づき、空間内アスベスト濃度を算出する(S03)。評価部30aは、算出された空間内アスベスト濃度に基づき、評価対象となっている空間における石綿含有物のリスク度を取得する(S04)。このリスク度の取得方法は、どのような方法が適用されても良い。例えば、評価部30aは、算出された空間内アスベスト濃度の常用対数を算出し、この値をリスク度として取得しても良い。また、評価部30aは、空間内アスベスト濃度の常用対数を算出し、小数点以下を切り捨てることによって、よりユーザにとって理解しやすい正数としてリスク度を取得しても良い。また、評価部30aは、算出されたアスベスト濃度そのものをリスク度として取得しても良い。また、複数の閾値とそれに応じたリスク度が設けられ、算出された空間内アスベスト濃度と閾値との関係から、リスク度を取得しても良い。そして、評価部30aは、取得されたリスク度を、出力部20を介して、画像表示装置に表示させる(S05)。例えば、評価部30aは、図4に示される入力画面下方の「判定」の欄に、リスク度を出力する。
【0022】
このように構成された評価装置100aを用いることにより、噴射空気流によって測定対象部位から強制的に発塵させた石綿発塵量を、吸気量(=噴射空気量)と関連づけて直接的にしかも定量的に求め、この値に基づいたリスク度を容易に判定することが可能となる。このような方法によってリスク度が取得されることにより、単に環境大気中の平均的な濃度ではなく、石綿発塵の可能性やそれに至るような建材の劣化の程度を反映させたリスク度を取得することが可能となる。従って、このリスク度を用いてより高度な対策を講じることが可能となる。
また、評価部30aが、リスク度を常用対数や閾値を用いた方法で取得し出力するように構成されることにより、ユーザは空間内アスベスト濃度などについての専門的な知識を有していないとしても、リスク度を感覚的に理解することが可能となる。そのため、評価対象となっている空間において、石綿含有物による飛散のリスクが低いのか高いのかを容易に判断することが可能となる。
【0023】
〔第二実施形態〕
第一の実施形態である評価装置100aはリスク度を出力するが、このリスク度に基づいてどのような対処方法を講じるべきかは、専門的な知識を有していないユーザにとっては判断することが困難であった。第二の実施形態は、このような問題点を鑑みて提案される発明である。
【0024】
図5は、本発明による評価装置の第二実施形態である評価装置100bの機能構成を示す機能ブロック図である。評価装置100bは、評価部30aに代えて評価部30bを備える点、及び記憶部40をさらに備える点で、評価装置100aと異なる。以下、評価装置100bと評価装置100aとの異なる点について説明する。
評価部30bは、記憶部40に記憶されているリスク度データベースの内容に基づいて出力を行う点で、評価部30aと異なる。評価部30bは、評価部30aと同様の処理によってリスク度を取得すると、このリスク度に対応するコメント及び対処方法についての情報を、記憶部40から読み出す。そして、出力部20を介して、リスク度、コメント、及び対処方法に関する情報を出力する。
【0025】
記憶部40は、ハードディスクや半導体記憶装置などの、いわゆる不揮発性記憶装置を用いて構成される。記憶部40は、リスク度データベースを記憶する。図6は、リスク度データベースの内容を示す図である。リスク度データベースは、リスク度と、各リスク度に応じて必要となる対処方法に関する情報とを対応付けて有する。
対処方法とは、評価対象となった空間における石綿含有物に対する対処方法である。このような対処方法の具体例として、経過観察、封じ込め、囲い込み、除去などがある。各対処方法は、その効果や、要する費用などが異なる。一般的には、経過観察、封じ込め、囲い込み、除去の順に費用も効果も高くなる。リスク度データベースには、リスク度毎に、複数種類の対処方法について、その対処方法の実施で十分か否かが示される。十分な場合は二重丸又は○、十分とは言えないが一時的であれば許される場合は三角、不十分な場合はバツ印が付与される。さらに、リスク度毎に、コメントも付与される。
【0026】
図7は、第二実施形態の評価装置100bによって出力される画面の例を示す図である。第二実施形態における画面には、評価部30bによって取得されたリスク度に応じて、リスク度データベースから読み出された情報が出力される。即ち、評価部30bによって取得されたリスク度に応じて、対処方法に関する情報が出力される。
このように構成された評価装置100bによれば、リスク度のみならず、そのリスク度に応じて講じるべき対処方法に関する情報も出力される。そのため、リスク度に応じた対処方法に関する知識を有していないユーザも、講じるべき対処方法を容易に判断することが可能となる。例えば、図7に示されたリスク度4の情報が出力されることにより、資金に余裕の無い者は、除去ではなく囲い込みを行うことによって、費用を抑えつつ有効な対策を講じることが可能となる。
【0027】
なお、上述した実施形態における評価装置100a及び100bの一部、例えば、評価部30a及び30bの機能をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この情報管理機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、石綿含有物を有する空間において、この石綿含有物に対する対処方法を判断する場面で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】飛散量測定に用いられる測定装置の概略構成図である。
【図2】本発明による評価装置の第一実施形態の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明による評価装置の第一実施形態の動作例を示すフローチャートである。
【図4】本発明による評価装置の第一実施形態により出力される入力画面の例を示す図である。
【図5】本発明による評価装置の第二実施形態の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図6】リスク度データベースの内容を示す図である。
【図7】本発明による評価装置の第二実施形態により出力される入力画面の例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1…測定対象物 2…カバー 3…捕集機構 3a…メンブレンフィルター 4…吸気管 5…吸気ポンプ 6…流量計 7…噴射管 8…捕集機構 10…入力部 20…出力部 30a,30b…評価部 40…記憶部 100a,100b…評価装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石綿含有物を有する空間において前記石綿含有物に対し気流が当てられ、この気流によって飛散した石綿が捕集され、この捕集された石綿の繊維数の入力を受け付ける入力手段と、
入力された石綿の繊維数に基づいて、前記空間における石綿によるリスク度を取得する評価手段と、
取得されたリスク度を出力する出力手段と、
を備える評価装置。
【請求項2】
前記リスク度に応じて、前記空間における石綿含有物に対し講じるべき対処方法を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記評価手段は、取得されたリスク度に応じた前記対処方法を読み出し、
前記出力手段は、前記評価手段によって読み出された対処方法を出力する、
請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
石綿含有物を有する空間において前記石綿含有物に対し気流が当てられ、この気流によって飛散した石綿が捕集され、この捕集された石綿の繊維数の入力をコンピュータが受け付けるステップと、
コンピュータが、前記石綿の繊維数に基づいて、前記空間における石綿によるリスク度を取得するステップと、
コンピュータが、取得されたリスク度を出力するステップと、
を含む評価方法。
【請求項4】
コンピュータに対し、
石綿含有物を有する空間において前記石綿含有物に対し気流が当てられ、この気流によって飛散した石綿が捕集され、この捕集された石綿の繊維数の入力を受け付けるステップと、
前記石綿の繊維数に基づいて、前記空間における石綿によるリスク度を取得するステップと、
取得されたリスク度を出力するステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項5】
石綿含有物を有する空間において、前記石綿含有物に対し気流を当て、この気流によって飛散した石綿を捕集するステップと、
捕集された石綿の繊維数を計数するステップと、
前記石綿の繊維数に基づいて、前記空間における石綿によるリスク度を取得するステップと、
を含む評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−162576(P2009−162576A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340910(P2007−340910)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】