説明

試料ホルダ及びこれに用いられる樹脂フィルム

【課題】試料が、球体や円筒体や丸頭ネジのような半球部を持つものなどの、転がり易いものであっても、その試料の蛍光X線分析を安定して精度良く行う。
【解決手段】試料ホルダ1は、球体の試料100が上側に載置されて自身を介してX線が下側から試料100に照射される載置部としての樹脂フィルム11と、樹脂フィルム11が張設されるように樹脂フィルム11の周辺部を支持する筒状の支持体12と、を備えている。樹脂フィルム11には、その中央部に、試料100の転がりを防止する転がり防止部としての凹部11aが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ホルダ及びこれに用いられる樹脂フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、EU等からRoHS指令など、含有物質に関する規制があり、含有物質分析の必要性が高まっている。
【0003】
含有物質分析に用いる装置の一つに蛍光X線分析装置がある。蛍光X線分析装置には、励起X線を試料の上面に照射する上面照射方式の他に、励起X線を試料の下面に照射する下面照射方式の装置がある(下記特許文献1等)。
【0004】
下面照射方式の蛍光X線分析装置では、例えば、下記特許文献1に開示されているように、ベース板の下方に斜め上向きにX線管及び検出器が配置されている。ベース板には、X線管からの励起X線及び試料からの蛍光X線を通過させるための開口である照射窓が形成されている。試料が照射窓よりも大きい場合には、試料が照射窓を跨るようにベース板上に直接に置かれた状態で、励起X線がX線管から照射窓を介して試料に照射され、試料からの蛍光X線が照射窓を介して検出器によって検出され、蛍光X線分析が行われる。
【0005】
一方、下面照射方式の蛍光X線分析装置において、試料が照射窓よりも小さい場合には、筒状の支持体の底面にポリプロピレン等の樹脂フィルムを張設した構成を持つ試料ホルダが用いられる。このような試料ホルダは、市販されている。試料ホルダの樹脂フィルム上に金属やプラスチック等の試料を載置し、この試料ホルダをベース板上に置く。このとき、試料ホルダは、筒状の支持体がベース板における照射窓の周囲に位置して、試料ホルダの樹脂フィルムが照射窓を覆うように、配置される。この状態で、励起X線がX線管から照射窓及び樹脂フィルムを介して試料に照射され、試料からの蛍光X線が樹脂フィルム及び照射窓を介して検出器によって検出され、蛍光X線分析が行われる。その際、試料を試料ホルダの中心(すなわち、樹脂フィルムの中心)に置くとともに試料ホルダの中心を照射窓の所定位置(通常は、照射窓の中心)に一致させることと、試料の下面(実質的に、樹脂フィルムの下面)を設定基準平面(通常は、ベース板の上面を含む平面)に一致させることが、精度良く蛍光X線分析を行うために重要である。
【特許文献1】特開2000−162161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来の試料ホルダは、筒状の支持体の底面に、凹凸のない樹脂フィルムを張設したものであるため、樹脂フィルムは完全な平面をなしている。したがって、試料が、球体や円筒体や丸頭ネジのような半球状の頭部を持つものなどの、転がり易い形態を持つものである場合、試料を樹脂フィルムの中心に置こうとしても、試料が樹脂フィルムの中心で安定して留まることなく、試料が転がって支持体に当接する樹脂フィルムの周辺部へ移動してその位置で安定して留まってしまう。その状態で、試料が前記照射窓の中心に位置するように試料ホルダをベース板上に置くと、筒状の支持体の影響が生じてしまうため、その試料の蛍光X線分析を精度良く行うことはできない。
【0007】
したがって、下面照射方式の蛍光X線分析装置において用いられる前記従来の試料ホルダでは、試料が球体や円筒体や丸頭ネジのような半球部を持つものなどの、転がり易いものである場合、その試料の蛍光X線分析を安定して精度良く行うことができなかった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、試料が、球体や円筒体や丸頭ネジのような半球部を持つものなどの、転がり易いものであっても、その試料の蛍光X線分析を安定して精度良く行うことができる試料ホルダ、及びこれに用いられる樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様による試料ホルダは、試料を載置し、X線が下側から前記試料に照射される載置部と、前記載置部に形成された前記試料の転がりを防止する転がり防止部とを有するものである。
【0010】
本発明の第2の態様による試料ホルダは、前記第1の態様において、前記載置部が樹脂フィルムであり、前記転がり防止部が前記樹脂フィルムの中央部に形成された凹部であるものである。
【0011】
本発明の第3の態様による試料ホルダは、前記第2の態様において、前記樹脂フィルムが張設されるように前記樹脂フィルムの周辺部を支持する筒状の支持体を、備えたものである。
【0012】
本発明の第4の態様による試料ホルダは、前記第3の態様において、前記支持体は、前記樹脂フィルムの前記凹部の下端が前記支持体の下端面と同一高さに位置するように、前記樹脂フィルムの周辺部を支持するものである。
【0013】
本発明の第5の態様による試料ホルダは、前記第3又は第4の態様において、前記支持体は、互いの少なくとも一部同士が前記樹脂フィルムの周辺部を挟んで嵌合することで前記樹脂フィルムを支持するものである。
【0014】
本発明の第6の態様による試料ホルダは、前記第1の態様において、前記載置部が板状部材であり、前記転がり防止部が前記板状部材の上面側に形成された凹部であるものである。
【0015】
本発明の第7の態様による試料ホルダは、前記第1の態様において、前記載置部が樹脂フィルムであり、前記転がり防止部が前記樹脂フィルムの上面に付着された凸部材であるものである。
【0016】
本発明の第8の態様による樹脂フィルムは、周辺部が支持されて張設され蛍光X線分析対象の試料が上側に載置されて自身を介してX線が下側から前記試料に照射される樹脂フィルムであって、中央部に凹部が形成されたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、試料が、球体や円筒体や丸頭ネジのような半球部を持つものなどの、転がり易いものであっても、その試料の蛍光X線分析を安定して精度良く行うことができる試料ホルダ、及びこれに用いられる樹脂フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明による試料ホルダ及びこれに用いられる樹脂フィルムについて、図面を参照して説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態による試料ホルダ1を下面照射方式の蛍光X線分析装置30において使用している状態を、模式的に示す概略断面図である。図1では、蛍光X線分析装置30については、その要部のみを示している。
【0021】
この蛍光X線分析装置30では、チャンバ31の内部に、斜め上向きにX線管33及び検出器34が配設されている。チャンバ31の上部壁は、試料ホルダ1(照射窓36よりも大きい試料の場合は当該試料)を載置するためのベース板32となっている。チャンバ31の側壁面には、図示しない真空ポンプに接続された排気口35が設けられている。ベース板32には、励起X線及び蛍光X線を通過させるための照射窓(円形開口)36と、チャンバ31の内部と下記カバーケース40の内部とを連通させるための連通口37とが開口している。X線管33及び検出器34は、試料100の下部がベース板32の上面の高さ位置Pと同一の高さ位置にあるとともに、水平方向において試料100が照射窓36の中心にあるときに、蛍光X線分析の精度が高まるように設置されている。
【0022】
ベース板32の上方には、側周壁が円筒形状に形成されるとともに上部端面が閉塞されたカバーケース40が、図示しない移動機構により上下方向に移動自在に設けられている。このカバーケース40の下端部は、外側に屈曲してフランジ41を形成している。フランジ41の下面には、全周に亘ってOリング(図示せず)が取り付けられている。このため、図1に示すようにフランジ41の下面がベース板32の上面に押し付けられる位置までカバーケース40が下降されると、カバーケース40内部は、照射窓36及び連通口37を除いて気密に保たれる。
【0023】
試料100を分析する場合には、カバーケース40を引き上げ、図1に示すように、試料100を保持した試料ホルダ1を照射窓36を閉塞するようにベース板2上に載置し、その後、カバーケース40を図1に示す位置まで下降させる。連通口37を介してチャンバ31の内部とカバーケース40の内部とは連なっているから、必要に応じて真空ポンプを作動させて排気口35から排気を行うと、チャンバ31の内部及びカバーケース40の内部は共に真空になる。これにより、空気中の成分が一部波長の蛍光X線を吸収しその検出を妨害することを防止できる。特にリン又はイオウよりも原子量が小さな、いわゆる軽い元素では蛍光X線の吸収の影響が大きいので、分析時に真空排気することが好ましい。一方、いわゆる重い元素ではその影響が比較的軽微であるため、必ずしも真空排気を必要としない。
【0024】
その後、X線管33から発したX線を照射窓36を通して更に試料ホルダ1の樹脂フィルム11を介して試料100の下面に照射し、その照射部位から放出された蛍光X線を検出器34によって検出する。
【0025】
次に、図1の他に図2乃至図4を参照して、本実施の形態による試料ホルダ1について、詳細に説明する。図2は、図1中のA−A’矢視図である。ただし、図2は、試料ホルダ1及び試料100のみを示している。図3は組立前の樹脂フィルム11を示す図であり、図3(a)はその平面図、図3(b)は図3(a)中のB−B’線に沿った断面図である。図4は、試料ホルダ1の組立前の分解断面図である。なお、図1では断面のみを示しているが、図4では、理解を容易にするため、支持体本体13及び押さえ部材14については、断面の奥側の形状も合わせて示している。
【0026】
本実施の形態による試料ホルダ1は、蛍光X線分析対象の試料100が上側に載置されて自身を介してX線が下側から試料100に照射される載置部としての樹脂フィルム11と、樹脂フィルム11が張設されるように樹脂フィルム11の周辺部を支持する筒状の支持体12と、を備えている。本例では、試料100は球体となっている。
【0027】
樹脂フィルム11としては、例えば、厚さ数ミクロンのポリエステル、ポリプロピレン等のフィルムを用いることができる。そして、樹脂フィルム11には、その中央部に、試料100の転がりを防止する転がり防止部としての凹部11aが形成されている。本実施の形態では、凹部11aは、図1に示すように、試料100に合わせた曲率を有している。勿論、凹部11aの形状や大きさ等は、保持しようとする試料に合わせて、その試料100の転がりを防止するのに適するように設定する。
【0028】
本実施の形態では、樹脂フィルム11は、図3及び図4に示すように、組立前に、平面視で円形状に構成され、その中央部に予め凹部11aが形成されている。凹部11aの形成手法としては、樹脂フィルムに凹部を形成する種々の公知の手法を採用することができる。例えば、特開平11−171108号公報の段落[0010],[0014]〜[0020]等に記載されている手法と同様に、ポリプロピレンやポリエチレン等の凹凸のないフラット状のフィルムをヒータで加熱した後にメインドラムと成形ドラムとの間の成形部に供給し、メインドラムと成形ドラムとによって挟んで熱成形することによって凹部11aを形成し、その後、個々の樹脂フィルム11に切り分ければよい。このとき、メインドラムの外周面には凹部11aに対応する複数のポケット(凹部)を形成しておき、それらの各凹部の底部には真空吸引穴を形成し、各凹部内を負圧にできるようにしておく。また、成形ドラムの外周面には、メインドラムの各ポケットに対応させて空気噴射口を形成しておき、空気噴射口に圧縮空気を供給できるようにしておく。ヒータで加熱されたフラット状のフィルムが、前記成形部において、前記空気噴射口から供給された圧縮空気と前記真空吸引穴から加えられた負圧とによって、前記ポケットに密着するように成形され、これにより、前記凹部11aが形成される。
【0029】
本実施の形態では、支持体12は、第1の部材としての支持体本体13と、第2の部材としての押さえ部材14とから構成されている。支持体本体13及び押さえ部材14は、回転体として構成されており、例えば、ポリエチレン等の樹脂で構成されている。支持体本体13は、外周にリング状突起13aを有する筒体として構成されている。押さえ部材14は、内周の径が相対的に大きい上側の薄肉部14aと、内周の径が相対的に小さい下側の厚肉部14bとを有し、それらの間に段差14cが形成されている。薄肉部14aの内周の径は、支持体本体13におけるリング状突起13aよりも下側部分が、樹脂フィルム11を介して薄肉部14aの内側に嵌合するように、設定されている。薄肉部14aの高さは、支持体本体13のリング状突起13aが樹脂フィルム11を介して薄肉部14aの上端に当接したときに、支持体本体13の下端から段差14cまでの寸法が樹脂フィルム11の厚さよりもわずかに広くなるように、設定されている。図面表記の便宜上、これにより段差14cの付近に生ずるわずかな隙間は、図1では省略している。そして、本実施の形態では、図4に示すように支持体本体13と押さえ部材14との間に樹脂フィルム11の周辺部を挟んで嵌合させることで、図1に示すように樹脂フィルム11が張設されて試料ホルダ1が組み立てられている。本実施の形態では、このとき、樹脂フィルム11の凹部11aの下端が支持体12の下端面(すなわち、押さえ部材14の下端面)と同一高さに位置するように、押さえ部材14の厚肉部14bの高さが設定されている。
【0030】
試料100の蛍光X線分析を行う場合には、試料100を試料ホルダ1の樹脂フィルム11の中央部に載置する。このとき、本実施の形態による試料ホルダ1では、試料100が載置される載置部である樹脂フィルム11の中央部に凹部11aが形成されているので、試料100が転がり易い球体であるにも拘わらず、試料100が凹部11aに係合して試料100が樹脂フィルム11の中央部に安定して保持される。そして、このように試料100が保持された試料ホルダ1は、ベース板32上に置かれる。このとき、試料ホルダ1は、図1に示すように、筒状の支持体12がベース板32の照射窓36の周囲に位置して、樹脂フィルム11がベース板32の照射窓36を覆うように配置され、しかも、試料ホルダ1の水平方向の中心が照射窓36の中心と一致するように配置される。
【0031】
このように、本実施の形態による試料ホルダ1を用いることで、試料100を樹脂フィルム11の中央部に安定して保持することができるとともに、試料100をベース板32の照射窓36の水平方向の中心に配置することができる。また、本実施の形態による試料ホルダ1では、樹脂フィルム11の凹部11aの下端が支持体12の下端面と同一高さに位置するので、試料100の下端が実質的に、試料100の下部がベース板32の上面の高さ位置Pと同一の高さに位置することになる。したがって、本実施の形態による試料ホルダ1を用いることで、転がり易い球体の試料100の蛍光X線分析を、安定して精度良く行うことができる。
【0032】
ここで、本実施の形態による試料ホルダ1と比較される比較例による試料ホルダ20について、図5及び図6を参照して説明する。この比較例による試料ホルダ20は、従来の試料ホルダに相当している。図5は、この比較例による試料ホルダ20を蛍光X線分析装置30において使用している状態を、模式的に示す概略断面図であり、図1に対応している。図6は、この比較例による試料ホルダ20の組立前の分解断面図であり、図4に対応している。図5において、図1中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0033】
この比較例による試料ホルダ20は、凹凸のない樹脂フィルム21と、樹脂フィルム21が張設されるように樹脂フィルム21の周辺部を支持する筒状の支持体22と、を備えている。支持体22は、支持体本体23と、押さえ部材24とから構成されている。支持体本体23は、外周にリング状突起23aを有する筒体として構成されている。押さえ部材24は単なる筒体として構成され、その内周の径は、支持体本体23におけるリング状突起23aよりも下側部分が、樹脂フィルム11を介して押さえ部材24の内側に嵌合するように、設定されている。この比較例では、図6に示すように支持体本体23と押さえ部材24との間に樹脂フィルム21の周辺部を挟んで嵌合させることで、図5に示すように樹脂フィルム21が張設されて試料ホルダ20が組み立てられている。この試料ホルダ20では、樹脂フィルム21は、筒状の支持体22の底面をなすように張設されている。
【0034】
この比較例による試料ホルダ20では、図5に示すように、筒状の支持体22の底面において、樹脂フィルム21が完全な平面をなし、樹脂フィルム21には凹部は形成されていない。したがって、球体の試料100を樹脂フィルム21上に載置すると、試料100を図5中の破線で示すように樹脂フィルム21の中心に置こうとしても、試料100が樹脂フィルム21の中心で安定して留まることなく、図5中の実線で示すように、試料100が転がって支持体22に当接する樹脂フィルム21の周辺部へ移動してその位置で安定して留まってしまう。したがって、図5に示すように、試料ホルダ20の中心を照射窓36の中心と一致させたままとすれば、試料100の蛍光X線分析の精度は著しく低下してしまう。そこで、試料ホルダ20の水平方向の位置をずらして、試料100が照射窓36の中心に位置するように試料ホルダ20をベース板上に置く。しかし、この場合には、筒状の支持体22の影響が生じてしまうため、結局、その試料100の蛍光X線分析を精度良く行うことはできない。
【0035】
これに対し、本実施の形態による試料ホルダ1を用いれば、前述したように、樹脂フィルム11の中央部に凹部11aが形成されていることなどによって、転がり易い球体の試料100の蛍光X線分析を、安定して精度良く行うことができるのである。
【0036】
なお、本実施の形態による試料ホルダ1を得るに際し、前述した例では、樹脂フィルム11には、組立前に、凹部11aが予め形成されている。しかしながら、図4に示すように組み立てるときに、図3に示すような予め凹部11aが形成された樹脂フィルム11に代えて、図6に示すような凹部11aが形成されていない樹脂フィルムを用いて、それらの組立を行い、その組立後に、樹脂フィルムの中央部に例えば押し棒で加圧することで、簡易的に、凹部11aを形成することが可能である。このようにして、本実施の形態による試料ホルダ1を製造することも可能である。
【0037】
[第2の実施の形態]
【0038】
図7は、本発明の第2の実施の形態による試料ホルダ51を蛍光X線分析装置30において使用している状態を、模式的に示す概略断面図であり、図1に対応している。図7において、図1中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0039】
本実施の形態による試料ホルダ51が前記第1の実施の形態による試料ホルダ1と異なる所は、球体の試料100の代わりに、半球状の頭部101aを有する丸頭ねじである試料101に適するように変更されている点のみである。すなわち、本実施の形態では、樹脂フィルム11の中央部の凹部11aの形状及び大きさは、試料101の頭部101aに合わせて設定され、これに伴い、押さえ部材14の厚肉部14bの高さも変更されている。
【0040】
本実施の形態による試料ホルダ51を用いれば、図7に示すように、頭部101aを下にして試料101を立てた状態で安定して保持することができる。したがって、本実施の形態による丸頭ねじである試料101の蛍光X線分析を、安定して精度良く行うことができる。図5に示す比較例による試料ホルダ20を用いると、樹脂フィルム21上において頭部101aを下にして試料101を立てようとしても、試料101が転がって倒れてしまい、試料101を樹脂フィルム21の中央部に安定して保持することができず、試料101の蛍光X線分析を、安定して精度良く行うことは、不可能である。
【0041】
[第3の実施の形態]
【0042】
図8は、本発明の第3の実施の形態による試料ホルダ61を蛍光X線分析装置30において使用している状態を、模式的に示す概略断面図であり、図1に対応している。図9は、試料ホルダ61の組立前の分解断面図であり、図4に対応している。図8及び図9において、図1及び図4中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0043】
本実施の形態による試料ホルダ61が前記第1の実施の形態による試料ホルダ1と異なる所は、押さえ部材14に代えて、上側の内周の径が徐々に大きくなるように側壁が傾斜した押さえ部材64が用いられている点のみである。
【0044】
本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。また、本実施の形態による試料ホルダ61では、前記第1の実施の形態による試料ホルダ1と比べて、支持体本体13と押さえ部材64との間に挟持される樹脂フィルム11の領域が少なくなるので、樹脂フィルム11の交換等に際して、支持体本体13と試料ホルダ61との嵌合を外して分解し易くなるという利点も得られる。
【0045】
[第4の実施の形態]
【0046】
図10は、本発明の第4の実施の形態による試料ホルダ71を蛍光X線分析装置30において使用している状態を、模式的に示す概略断面図であり、図1に対応している。図10において、図1中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0047】
本実施の形態による試料ホルダ71は、蛍光X線分析対象の試料100が上側に載置されて自身を介してX線が下側から試料100に照射される載置部としての板状部材72で構成され、、板状部材72の中央部の上面側には、試料100の転がりを防止する転がり防止部としての凹部72aが形成されている。板状部材72は、例えば、ポリエチレン等の樹脂で構成することができる。
【0048】
本実施の形態による試料ホルダ71によっても、板状部材72の上面側に凹部72aが形成されているので、試料100が転がり易い球体であるにも拘わらず、試料100が凹部72aに係合して試料100が板状部材72の中央部に安定して保持される。したがって、本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0049】
[第5の実施の形態]
【0050】
図11は、本発明の第5の実施の形態による試料ホルダ81を蛍光X線分析装置30において使用している状態を、模式的に示す概略断面図であり、図1及び図5に対応している。図11において、図1及び図5中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0051】
本実施の形態による試料ホルダ81が前述した図5に示す比較例による試料ホルダ20と異なる所は、樹脂フィルム21の上面に、試料100の転がりを防止する転がり防止部として、凸部材(樹脂フィルム21の上面に対して凸をなす部材)であるリング部材82が規制物質の含有のない接着剤等により付着されている点のみである。リング部材82は、例えば、ポリエチレン等の樹脂で構成することができる。
【0052】
本実施の形態による試料ホルダ81によっても、樹脂フィルム21の上面にリング部材82が付着されているので、試料100が転がり易い球体であるにも拘わらず、試料100がリング部材82に係合して試料100が樹脂フィルム21の中央部に安定して保持される。したがって、本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0053】
なお、転がり防止部として、樹脂フィルム21の上面に、試料100の転がりを防止する転がり防止部として、リング部材82に代えて、平面視で120゜ずつの3箇所において凸部材を離散的に付着してもよい。
【0054】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。例えば、試料は円筒体などでもよく、その場合には、図1中の凹部11aの形状及び大きさは、その試料の形状及び大きさに合わせて適宜変更すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施の形態による試料ホルダの使用状態を模式的に示す概略断面図である。
【図2】図2は、図1中のA−A’矢視図である。
【図3】図1に示す試料ホルダにおいて使用される組立前の樹脂フィルムを示す図である。
【図4】図1に示す試料ホルダの組立前の分解断面図である。
【図5】比較例による試料ホルダの使用状態を模式的に示す概略断面図である。
【図6】図5に示す試料ホルダの組立前の分解断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態による試料ホルダの使用状態を模式的に示す概略断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態による試料ホルダの使用状態を模式的に示す概略断面図である。
【図9】図8に示す試料ホルダの組立前の分解断面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態による試料ホルダの使用状態を模式的に示す概略断面図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態による試料ホルダの使用状態を模式的に示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1,51,61,71,81 試料ホルダ
11 樹脂フィルム
11a 凹部
12 筒状の支持体
13 支持体本体
14 押さえ部材
30 蛍光X線分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置し、X線が下側から前記試料に照射される載置部と、前記載置部に形成された前記試料の転がりを防止する転がり防止部とを有することを特徴とする試料ホルダ。
【請求項2】
前記載置部が樹脂フィルムであり、前記転がり防止部が前記樹脂フィルムの中央部に形成された凹部であることを特徴とする請求項1記載の試料ホルダ。
【請求項3】
前記樹脂フィルムが張設されるように前記樹脂フィルムの周辺部を支持する筒状の支持体を、備えたことを特徴とする請求項2記載の試料ホルダ。
【請求項4】
前記支持体は、前記樹脂フィルムの前記凹部の下端が前記支持体の下端面と同一高さに位置するように、前記樹脂フィルムの周辺部を支持することを特徴とする請求項3記載の試料ホルダ。
【請求項5】
前記支持体は、互いの少なくとも一部同士が前記樹脂フィルムの周辺部を挟んで嵌合することで前記樹脂フィルムを支持する第1及び第2の部材を有することを特徴とする請求項3又は4記載の試料容器。
【請求項6】
前記載置部が板状部材であり、前記転がり防止部が前記板状部材の上面側に形成された凹部であることを特徴とする請求項1記載の試料ホルダ。
【請求項7】
前記載置部が樹脂フィルムであり、前記転がり防止部が前記樹脂フィルムの上面に付着された凸部材であることを特徴とする請求項1記載の試料ホルダ。
【請求項8】
周辺部が支持されて張設され蛍光X線分析対象の試料が上側に載置されて自身を介してX線が下側から前記試料に照射され、中央部に凹部が形成されたことを特徴とする樹脂フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−300291(P2009−300291A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156101(P2008−156101)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】