説明

試料中の細菌を検出する手段および方法

本発明は、無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法を提供する。その方法は、(a)前記無培養試料の吸収スペクトル(AS)を求める工程と、(b)前記特定の細菌についてのn次元体積の境界を求める工程と、(c)前記ASをデータ処理する工程と、(d)統計的相関m1および/または特徴mがn次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する工程、より特に選択された工程からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の特定の細菌についての分光学的な医療診断分野に関する。さらに詳細には、本発明は、分光測定法を用いて試料中の異なる種類の細菌を検出する手段および方法を提供する。当該検出手段および方法は、水、飲料、食料品中の細菌の検出、込み合った場所での有害性物質の検出などのような、医療および医療以外の双方において利用され得る。
【背景技術】
【0002】
微生物の同定は、医療分野において非常に重要である。さらに、近年では、環境微生物学および産業微生物学の顕著な発展により、効率的で相対的に迅速な同定技術の必要性がより一層差し迫ったものとなっている。ある分野では、呼吸器疾患における細菌の迅速で正確な同定が緊急を要する。
【0003】
呼吸器疾患は、肺、気管支、気管および咽頭の疾患に対する包括的用語である。これらの疾患は、軽症で自然治癒するもの(鼻感冒や感冒)から命を脅かすもの(例えば細菌性肺炎や肺塞栓症)まである。
【0004】
呼吸器疾患は、閉塞性のものまたは拘束性のものとして分類され得る。閉塞性は、空気などが肺に出入りする率を妨げる状態(例えば、喘息)であり、拘束性は、肺の機能的容積の低下を引き起こす状態(例えば、肺線維症)である。
【0005】
呼吸器疾患は、さらに、上気道または下気道の疾患(感染性の呼吸器疾患と関連して最も一般的に用いられる)、実質性肺疾患および血管性肺疾患として分類され得る。
【0006】
感染性の呼吸器疾患は、その名の通り、典型的に、哺乳類の呼吸器系に感染させ得る多くの感染性病原体の1つによって引き起こされ、その原因はウイルスまたは細菌(例えば、肺炎球菌)によるものである。
【0007】
感染性の呼吸器疾患にかかっている患者は、通常、咽頭炎に耐え、嚥下するのに苦労する。しかし、これらの症状は、インフルエンザの兆候を示している場合もある。
【0008】
感染症を正確に診断し適切な処置を施すため、通常、連鎖球菌に感染していると思われる患者の咽頭培養検査が行われる。
【0009】
咽頭培養検査や細胞分析は、通常、約3日を要する。さらに、検査は患者にいくらかの不便を感じさせる。
【0010】
細胞分析は、何が望ましく正確な処置および薬物療法であるかを決定する。
【0011】
他の検査としては、連鎖球菌迅速検査がある。この検査では、咽頭スワブを試薬の中に挿入し、細菌と試薬の化学反応により細菌が存在することを判定する。この検査は迅速に判定結果を示す(10分乃至30分)が、その感度は非常に悪く、利用しづらい。従って、この検査は、医療従事者によって一般的に利用されるものではない。
【0012】
通常、医師は、細菌が存在する場合に抗生物質を処方すべきかが分かることを望む。従って、医師にとって、同様に患者にとっても、咽頭試料に対する即時型反応を得ることは有益であろう。
【0013】
即時型反応は、咳で吐出されたデブリ(吐出されたガスと微量液体)やその他の人間の体液(唾液、粘膜など)を試料採取し、それらの内容物を光学的に特性化することによって得られるであろう。試料を光学的に特性化することは、患者にとって、通常の粘膜培養検査よりも、おそらく利便性が高いであろう。
【0014】
いくつかの分光技術は、当技術分野で既に周知である。例えば、ウィルフレッド・ネルソンの国際公開公報第WO98/41842号には、細菌抗体複合体を検出するシステムが開示されている。細菌の存在についての検査試料を、抗原抗体複合体を形成する特定の細菌に結合する表面に付着した抗体を含む培養液に入れる。培養液は、光エネルギーの入射ビームと接触する。光エネルギーのいくらかは、低共鳴増強ラマン後方散乱エネルギーとして培養液から放射される。微生物の存在または非存在の検出は、当該微生物の特徴的なスペクトルピークに基づく。換言すれば、国際公開公報第WO98/41842号では紫外共鳴ラマン分光法が用いられている。
【0015】
ローラ・エー・バンデルバーグの米国特許第6,599,715号は、試料中の生菌胞子の存在を検出するプロセスおよび胞子検出システムに関する。そのプロセスは、生菌胞子が出現することの関係付けに十分な一定の間、試料を発芽培地に置くことを含む。それから、試料は、ジピコリン酸と反応して蛍光錯体を生じることが可能なランタニド溶液と混合される。最後に、試料は、ジピコリン酸の存在について測定される。
【0016】
ウィルフレッド・H・ネルソンの米国特許第4,847,198号には、細菌の同定方法が開示されている。まず、分類標識が、紫外線エネルギー光線で、細菌中に励起される。それから、共鳴増強ラマン後方散乱エネルギーは、蛍光非存在下で実質的に収集される。次に、共鳴増強ラマン後方散乱エネルギーが、前記細菌中の分類標識に対応するスペクトルに変換される。最後に、スペクトルが示され、細菌が同定され得る。
【0017】
モスタファ・A・エルサイドの米国特許第6,379,920号には、分光学的手段を用いて生物学的試料中の特定の細菌を分析し診断する方法が開示されている。その方法は、対照区として用いる非感染患者の生物学的試料のスペクトルを求め、対照スペクトルを感染試料のスペクトルから減算し、得られた差スペクトルの指紋領域を細菌の対照スペクトルと比較することを含む。この診断技術を用いて、当該米国特許は、培養せずに特定の細菌を同定することを権利請求している。
【0018】
ナウマンらは、フーリエ変換赤外分光法を用いて、乾燥試料中の細菌検出および分類を論証した(ナウマン・Dら著「細菌学における赤外分光法」エンサイクロペディア・オブ・アナリティカル・ケミストリー、R.A.Meyers(Ed.)、102−131頁、ジョンワイリー・アンド・サンズ社、チチェスター、2000年)。マーシャルらは、フーリエ変換赤外ラマン分光法を用いて、生細菌を同定した(マーシャルら著「現存する化石細菌の振動分光法:火星の天文生物学的探査との関連性」振動分光法第41号(2006年)182−189頁)。上記の組み合わせの蛍光分光法を含む他の方法もある。
【0019】
培養せずに迅速にかつ正確に試料から細菌を検出できる手段および方法を開示した先行技術文献はなく、湿潤試料中の同定を実証したものはない。また、細菌をより良く検出するために、水の影響を試料から除去できる手段および方法を開示した先行技術文献はない。さらに、上記先行技術の全てが、細菌の検出のために、熟練のオペレータおよび/または試薬の使用または複雑な試料の調製を必要とする。
【0020】
したがって、試薬を使用せずおよび/または複雑な試料の調製をせずに、無培養の試料、特に湿潤試料から、正確な細菌同定をするための手段および方法が、永年にわたって要求されている。
【発明の概要】
【0021】
本発明の1つの目的は、無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法を提供することである。その方法は、
a.前記無培養試料の吸収スペクトル(AS)を求める工程と、
b.前記特定の細菌についてのn次元体積の境界を、
i.前記特定の細菌を含む試料の少なくとも1つの吸収スペクトル(AS2)を求め、
ii.ピーク波長、ピーク高さと幅、異なるピークの強度比またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴x(前記xは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記AS2から抽出し、
iii.前記AS2の少なくとも1つの導関数を算出し、
iv.前記特徴xにより、前記AS2を幾つかのセグメントに区分けし、
v.前記セグメントの夫々の統計的相関y(前記yは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出し、
vi.n次元空間(nは、前記特徴xと前記統計的相関yの和に等しい。)を定義し、
vii.前記特徴xの夫々および前記統計的相関yの夫々を前記特定の細菌にアサインし、
viii.前記特徴xの夫々および/または前記統計的相関yの夫々について、前記n次元空間のn次元体積を定義するガウス分布を算出し、
ix.前記n次元体積の境界を、二次元ガウス分類法、k最近傍法、ベイズ分類法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された手法を用いて決定する
ことにより求める工程と、
c.前記ASを、
i.移動平均法、Savitzky‐Golay法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された異なる平滑化技術を用いてノイズを除去し、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、ピーク波長、異なるピークの強度比、またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m(前記mは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記ASから抽出し、
iii.前記特徴mにより、前記ASを幾つかのセグメントに区分けし、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m1(前記m1は、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する
ことによりデータ処理する工程と、
d.前記統計的相関m1および/または前記特徴mが前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する工程
より特に選択された工程からなる。
【0022】
本発明の他の目的は、前記ASをデータ処理する前記工程(c)が、
i.前記ASのo次導関数(oは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)の少なくとも1つを算出し、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、異なるピークの強度比、ピーク波長またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m2を前記o次導関数から抽出し、
iii.前記特徴m2により、前記o次導関数を幾つかのセグメントに区分けし、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m3を算出し、
v.前記統計的相関m1および/または統計的相関m3および/または前記特徴mおよび/または特徴m2が前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する
工程をさらに含むことを特徴とする上記の方法を提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、前記セグメントの夫々の統計的相関関係を算出する前記工程が、ピアソンの相関係数を用いて実行されることを特徴とする上記の方法を提供することである。
【0024】
本発明の他の目的は、化膿連鎖球菌、C群およびG群β溶血性連鎖球菌、コリネバクテリウム・ヘモリチカム、ジフテリアおよびウルセランス、淋菌、マイコプラズマ肺炎、エンテロコリチカ菌、結核菌、トラコーマクラミジアおよび肺炎クラミジア、百日咳菌、レジオネラ菌種、カリニ肺炎菌、ノカルジア、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、インフルエンザ菌、A群β溶血性連鎖球菌および黄色ブドウ球菌からなる群より選択された前記特定の細菌を選択する工程をさらに含む上記の方法を提供することである。
【0025】
本発明の他の目的は、前記ASを求める前記工程が、
a.前記無培養試料に適応する少なくとも1つの光学セルを備え、
b.レーザ、ランプ、LED波長可変レーザ、単色光分光器からなる群より選択されたp光源(pは、1に等しいまたは1より大きい整数を意味し、前記p光源は、光を前記光学セルに放射するように構成される。)を備え、
c.前記無培養試料の分光学的データを受信する検出手段を備え、
d.異なる波長で前記p光源から光を前記光学セルに放射し、
e.前記検出手段によって前記光学セルから出射する前記光を集光して前記ASを求める
工程をさらに含むことを特徴とする上記の方法を提供することである。
【0026】
本発明の他の目的は、光を放射する前記工程が、紫外、可視、赤外、中間赤外、遠赤外およびテラヘルツの波長範囲で実行されることを特徴とする上記の方法を提供することである。
【0027】
本発明の他の目的は、約3000cm−1から約3300cm−1および/または約850cm−1から約1000cm−1および/または約1300cm−1から約1350cm−1の領域における前記ASを分析することによって前記特定の細菌を検出する工程をさらに含む上記の方法を提供することである。
【0028】
本発明の他の目的は、無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法を提供することである。その方法は、
a.前記無培養試料の水の影響を含む吸収スペクトル(AS)を求める工程と、
b.前記特定の細菌についてのn次元体積の境界を、
i.前記特定の細菌を含む試料の少なくとも1つの吸収スペクトル(AS2)を求め、
ii.ピーク波長、ピーク高さと幅、異なるピークの強度比またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴x(前記xは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記AS2から抽出し、
iii.前記AS2の少なくとも1つの導関数を算出し、
iv.前記特徴xにより、前記AS2を幾つかのセグメントに区分けし、
v.前記セグメントの夫々の統計的相関y(前記yは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出し、
vi.n次元空間(nは、前記特徴xと前記統計的相関yの和に等しい。)を定義し、
vii.前記特徴xの夫々および前記統計的相関yの夫々を前記特定の細菌にアサインし、
viii.前記特徴xの夫々および/または前記統計的相関yの夫々について、前記n次元空間のn次元体積を定義するガウス分布を算出し、
ix.前記n次元体積の境界を、二次元ガウス分類法、k最近傍法、ベイズ分類法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された手法を用いて決定する
ことにより求める工程と、
c.前記水の影響を、
i.前記ASの範囲内の波数(x)の夫々での吸収強度(Sigwith water(x))を備え、
ii.前記ASを少なくとも2つの波数範囲に区分けし、
iii.前記少なくとも2つの波数範囲の範囲内の波数(x)の夫々での補正率(CF)を算出(CF(x))し、
iv.前記水(Sigwater only(x1))およびそれに対応する波数(x1)に最も影響される少なくとも1つの吸収強度を、前記ASから求め、
v.少なくとも1つの波数(x1)での前記水の少なくとも1つの補正率(CFwater only(x1))を算出し、
vi.前記少なくとも1つのSigwater only(x1)を前記少なくとも1つの波数(x1)での前記少なくとも1つのCFwaterで除算(Sigwater only(x1)/CFwater only(x1))し、
vii.前記工程(vi)の平均値(AVG[Sigwater only(x1)/CFwater only(x1)])を算出し、
viii.前記AVG[Sigwater only(x1)/CFwater only(x1)]に前記ASの範囲内の前記波数(x)の夫々についての前記CF(x)を乗算し、
ix.前記ASの範囲内の前記波数(x)の夫々での前記Sigwith water(x)から前記工程(viii)の結果を減算する
ことにより前記ASから除去する工程と、
d.前記ASを、
i.移動平均法、Savitzky‐Golay法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された異なる平滑化技術を用いてノイズを除去し、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、ピーク波長、異なるピークの強度比、またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m(前記mは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記ASから抽出し、
iii.前記特徴mにより、前記ASを幾つかのセグメントに区分けし、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m1(前記m1は、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する
ことにより前記水の影響なしにデータ処理する工程と、
e.前記統計的相関m1および/または前記特徴mが前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する工程
より特に選択された工程からなる。
【0029】
本発明の他の目的は、前記ASを前記水の影響なしにデータ処理する前記工程(d)が、
i.前記ASのo次導関数(oは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)の少なくとも1つを算出し、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、異なるピークの強度比、ピーク波長またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m2を前記o次導関数から抽出し、
iii.前記特徴m2により、前記o次導関数を幾つかのセグメントに区分けし、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m3を算出し、
v.前記統計的相関m1および/または統計的相関m3および/または前記特徴mおよび/または特徴m2が前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する
工程をさらに含むことを特徴とする上記の方法を提供することである。
【0030】
本発明の他の目的は、前記セグメントの夫々の統計的相関関係を算出する前記工程が、ピアソンの相関係数を用いて実行されることを特徴とする上記の方法を提供することである。
【0031】
本発明の他の目的は、化膿連鎖球菌、C群およびG群β溶血性連鎖球菌、コリネバクテリウム・ヘモリチカム、ジフテリアおよびウルセランス、淋菌、マイコプラズマ肺炎、エンテロコリチカ菌、結核菌、トラコーマクラミジアおよび肺炎クラミジア、百日咳菌、レジオネラ菌種、カリニ肺炎菌、ノカルジア、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、インフルエンザ菌、A群β溶血性連鎖球菌および黄色ブドウ球菌からなる群より選択された前記特定の細菌を選択する工程をさらに含む上記の方法を提供することである。
【0032】
本発明の他の目的は、前記ASを求める前記工程が、
a.前記無培養試料に適応する少なくとも1つの光学セルを備え、
b.レーザ、ランプ、LED波長可変レーザ、単色光分光器からなる群より選択されたp光源(pは、1に等しいまたは1より大きい整数を意味し、前記p光源は、光を前記光学セルに放射するように構成される。)を備え、
c.前記無培養試料の分光学的データを受信する検出手段を備え、
d.異なる波長で前記p光源から光を前記光学セルに放射し、
e.前記検出手段によって前記光学セルから出射する前記光を集光して前記ASを求める
工程をさらに含むことを特徴とする上記の方法を提供することである。
【0033】
本発明の他の目的は、光を放射する前記工程が、紫外、可視、赤外、中間赤外、遠赤外およびテラヘルツの波長範囲で実行されることを特徴とする上記の方法を提供することである。
【0034】
本発明の他の目的は、試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定するように構成されたシステム1000を提供することである。そのシステムは、
a.前記試料の吸収スペクトル(AS)を求める手段100と、
b.前記特定の細菌についてのn次元体積の境界を求める手段であって、
i.前記特定の細菌を含む試料の少なくとも1つの吸収スペクトル(AS2)を求める手段201と、
ii.ピーク波長、ピーク高さと幅、異なるピークの強度比またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴x(前記xは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記AS2から抽出する手段202と、
iii.前記AS2の少なくとも1つの導関数を算出する手段203と、
iv.前記特徴xにより、前記AS2を幾つかのセグメントに区分けする手段204と、
v.前記セグメントの夫々の統計的相関y(前記yは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する手段205と、
vi.n次元空間(nは、前記特徴xと前記統計的相関yの和に等しい。)を定義する手段206と、
vii.前記特徴xの夫々および前記統計的相関yの夫々を前記特定の細菌にアサインする手段207と、
viii.前記特徴xの夫々および/または前記統計的相関yの夫々について、前記n次元空間のn次元体積を定義するガウス分布を算出する手段208と、
ix.前記n次元体積の境界を、二次元ガウス分類法、k最近傍法、ベイズ分類法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された手法を用いて決定する手段209
によって特徴づけられる統計処理手段200と、
c.前記ASをデータ処理する手段であって、
i.移動平均法、Savitzky‐Golay法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された異なる平滑化技術を用いてノイズを除去する手段301と、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、ピーク波長、異なるピークの強度比、またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m(前記mは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記ASから抽出する手段302と、
iii.前記特徴mにより、前記ASを幾つかのセグメントに区分けする手段303と、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m1(前記m1は、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する手段304
によって特徴づけられる手段300と、
d.前記統計的相関m1および/または前記特徴mが前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する手段400
からなることを特徴とする。
【0035】
本発明の他の目的は、前記ASをデータ処理する前記手段300が、
i.前記ASのo次導関数(oは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)の少なくとも1つを算出する手段305と、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、異なるピークの強度比、ピーク波長またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m2を前記o次導関数から抽出する手段306と、
iii.前記特徴m2により、前記o次導関数を幾つかのセグメントに区分けする手段307と、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m3を算出する手段308と、
v.前記統計的相関m1および/または統計的相関m3および/または前記特徴mおよび/または特徴m2が前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する手段309
によってさらに特徴づけられた上記のシステムを提供することである。
【0036】
本発明の他の目的は、統計的相関関係を算出する前記手段308または304が、ピアソンの相関係数からなる群より選択されることを特徴とする上記のシステムを提供することである。
【0037】
本発明の他の目的は、前記特定の細菌が、化膿連鎖球菌、C群およびG群β溶血性連鎖球菌、コリネバクテリウム・ヘモリチカム、ジフテリアおよびウルセランス、淋菌、マイコプラズマ肺炎、エンテロコリチカ菌、結核菌、トラコーマクラミジアおよび肺炎クラミジア、百日咳菌、レジオネラ菌種、カリニ肺炎菌、ノカルジア、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、インフルエンザ菌、A群β溶血性連鎖球菌および黄色ブドウ球菌からなる群より選択されることを特徴とする上記のシステムを提供することである。
【0038】
本発明の他の目的は、前記試料の吸収スペクトル(AS)を求める前記手段100が、
a.無培養試料に適応する少なくとも1つの光学セルと、
b.レーザ、ランプ、LED波長可変レーザ、単色光分光器からなる群より選択されたp光源(pは、1に等しいまたは1より大きい整数を意味し、前記p光源は、異なる波長で光を前記光学セルに放射するように構成される。)と、
c.前記光学セルから出射する前記試料の分光学的データを受信する検出手段
をさらに備えていることを特徴とする上記のシステムを提供することである。
【0039】
本発明の他の目的は、前記p光源が、紫外、可視、赤外、中間赤外、遠赤外およびテラヘルツからなる群より選択された波長範囲で光を放射するように構成されることを特徴とする上記のシステムを提供することである。
【0040】
本発明の他の目的は、無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定するように構成されたシステム2000を提供することである。前記システム2000は、
a.前記無培養試料の水の影響を含む吸収スペクトル(AS)を求める手段100と、
b.前記特定の細菌についてのn次元体積の境界を求める手段であって、
i.前記特定の細菌を含む試料の少なくとも1つの吸収スペクトル(AS2)を求める手段201と、
ii.ピーク波長、ピーク高さと幅、異なるピークの強度比またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴x(前記xは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記AS2から抽出する手段202と、
iii.前記AS2の少なくとも1つの導関数を算出する手段203と、
iv.前記特徴xにより、前記AS2を幾つかのセグメントに区分けする手段204と、
v.前記セグメントの夫々の統計的相関y(前記yは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する手段205と、
vi.n次元空間(nは、前記特徴xと前記統計的相関yの和に等しい。)を定義する手段206と、
vii.前記特徴xの夫々および前記統計的相関yの夫々を前記特定の細菌にアサインする手段207と、
viii.前記特徴xの夫々および/または前記統計的相関yの夫々について、前記n次元空間のn次元体積を定義するガウス分布を算出する手段208と、
ix.前記n次元体積の境界を、二次元ガウス分類法、k最近傍法、ベイズ分類法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された手法を用いて決定する手段209
によって特徴づけられる統計処理手段200と、
c.前記水の影響を前記ASから除去する手段であって、
i.前記ASの範囲内の波数(x)の夫々での吸収強度(Sigwith water(x))を備える手段301と、
ii.前記ASを少なくとも2つの波数範囲に区分けする手段302と、
iii.前記少なくとも2つの波数範囲の範囲内の波数(x)の夫々での補正率(CF)を算出(CF(x))する手段303と、
iv.前記水(Sigwater only(x1))およびそれに対応する波数(x1)に最も影響される少なくとも1つの吸収強度を、前記ASから求める手段304と、
v.少なくとも1つの波数(x1)での前記水の少なくとも1つの補正率(CFwater only(x1))を算出する手段305と、
vi.前記少なくとも1つのSigwater only(x1)を前記少なくとも1つの波数(x1)での前記少なくとも1つのCFwaterで除算(Sigwater only(x1)/CFwater only(x1))する手段306と、
vii.前記工程(vi)の平均値(AVG[Sigwater only(x1)/CFwater only(x1)])を算出する手段307と、
viii.前記AVG[Sigwater only(x1)/CFwater only(x1)]に前記ASの範囲内の前記波数(x)の夫々についての前記CF(x)を乗算する手段308と、
ix.前記ASの範囲内の前記波数(x)の夫々での前記Sigwith water(x)から前記工程(viii)の結果を減算する手段309
を有する手段300と、
d.前記ASを前記水の影響なしにデータ処理する手段であって、
i.移動平均法、Savitzky‐Golay法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された異なる平滑化技術を用いてノイズを除去する手段401と、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、ピーク波長、異なるピークの強度比、またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m(前記mは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記ASから抽出する手段402と、
iii.前記特徴mにより、前記ASを幾つかのセグメントに区分けする手段403と、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m1(前記m1は、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する手段404
によって特徴づけられる手段400と、
e.前記統計的相関m1および/または前記特徴mが前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する手段500
からなることを特徴とする。
【0041】
本発明の他の目的は、前記ASを前記水の影響なしにデータ処理する前記手段400が、
i.前記ASのo次導関数(oは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)の少なくとも1つを算出する手段405と、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、異なるピークの強度比、ピーク波長またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m2を前記o次導関数から抽出する手段406と、
iii.前記特徴m2により、前記o次導関数を幾つかのセグメントに区分けする手段407と、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m3を算出する手段408と、
v.前記統計的相関m1および/または統計的相関m3および/または前記特徴mおよび/または特徴m2が前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する手段409
をさらに備えていることを特徴とする上記のシステムを提供することである。
【0042】
本発明の他の目的は、前記セグメントの夫々の統計的相関関係を算出する前記手段408および/または手段404が、ピアソンの相関係数からなる群より選択されることを特徴とする上記のシステムを提供することである。
【0043】
本発明の他の目的は、前記特定の細菌が、化膿連鎖球菌、C群およびG群β溶血性連鎖球菌、コリネバクテリウム・ヘモリチカム、ジフテリアおよびウルセランス、淋菌、マイコプラズマ肺炎、エンテロコリチカ菌、結核菌、トラコーマクラミジアおよび肺炎クラミジア、百日咳菌、レジオネラ菌種、カリニ肺炎菌、ノカルジア、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、インフルエンザ菌、A群β溶血性連鎖球菌および黄色ブドウ球菌からなる群より選択されることを特徴とする上記のシステムを提供することである。
【0044】
本発明の他の目的は、前記無培養試料の吸収スペクトル(AS)を求める前記手段100が、
a.前記無培養試料に適応する少なくとも1つの光学セルと、
b.レーザ、ランプ、LED波長可変レーザ、単色光分光器からなる群より選択されたp光源(pは、1に等しいまたは1より大きい整数を意味し、前記p光源は、異なる波長で光を前記光学セルに放射するように構成される。)と、
c.前記光学セルから出射する前記無培養試料の分光学的データを受信する検出手段
をさらに備えていることを特徴とする上記のシステムを提供することである。
【0045】
本発明の他の目的は、前記p光源が、紫外、可視、赤外、中間赤外、遠赤外およびテラヘルツからなる群より選択された波長範囲で光を放射するように構成されることを特徴とする上記のシステムを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係る試料中の細菌を検出するおよび/または同定するように構成されたシステム1000を示している。
【図2】本発明の実施形態に係る試料中の細菌を検出するおよび/または同定するように構成されたシステム2000を示している。
【図3】水の補正前の吸収スペクトルを示している。
【図4】水の補正後の吸収スペクトルを示している。
【図5】連鎖球菌の吸収ピークの例である。
【図6】ノイズ除去前後の連鎖球菌を100%含む乾燥試料の吸収信号を示している。
【図7】ノイズ除去前後の連鎖球菌を100%含む乾燥試料における吸収信号の一次導関数を示している。
【図8】950cm−1から1200cm−1の波数範囲での試料と対照試料の吸収スペクトルおよびそれに対応する統計的相関関係を示し、当該波数範囲での吸収スペクトルの一次導関数およびそれに対応する統計的相関関係を示している。
【図9】950cm−1から1200cm−1の波数範囲での試料と対照試料の吸収スペクトルおよびそれに対応する統計的相関関係を示し、当該波数範囲での吸収スペクトルの一次導関数およびそれに対応する統計的相関関係を示している。
【図10】950cm−1から1200cm−1の波数範囲での試料と対照試料の吸収スペクトルおよびそれに対応する統計的相関関係を示し、当該波数範囲での吸収スペクトルの一次導関数およびそれに対応する統計的相関関係を示している。
【図11】950cm−1から1200cm−1の波数範囲での試料と対照試料の吸収スペクトルおよびそれに対応する統計的相関関係を示し、当該波数範囲での吸収スペクトルの一次導関数およびそれに対応する統計的相関関係を示している。
【図12】950cm−1から1200cm−1の波数範囲での試料と対照試料の吸収スペクトルおよびそれに対応する統計的相関関係を示し、当該波数範囲での吸収スペクトルの一次導関数およびそれに対応する統計的相関関係を示している。
【図13】1220cm−1から1380cm−1の波数範囲での試料と対照試料の吸収スペクトルおよびそれに対応する統計的相関関係を示し、当該波数範囲での吸収スペクトルの一次導関数およびそれに対応する統計的相関関係を示している。
【図14】1220cm−1から1380cm−1の波数範囲での試料と対照試料の吸収スペクトルおよびそれに対応する統計的相関関係を示し、当該波数範囲での吸収スペクトルの一次導関数およびそれに対応する統計的相関関係を示している。
【図15】1220cm−1から1380cm−1の波数範囲での試料と対照試料の吸収スペクトルおよびそれに対応する統計的相関関係を示し、当該波数範囲での吸収スペクトルの一次導関数およびそれに対応する統計的相関関係を示している。
【図16】1220cm−1から1380cm−1の波数範囲での試料と対照試料の吸収スペクトルおよびそれに対応する統計的相関関係を示し、当該波数範囲での吸収スペクトルの一次導関数およびそれに対応する統計的相関関係を示している。
【図17】1220cm−1から1380cm−1の波数範囲での試料と対照試料の吸収スペクトルおよびそれに対応する統計的相関関係を示し、当該波数範囲での吸収スペクトルの一次導関数およびそれに対応する統計的相関関係を示している。
【図18】乾燥試料中の細菌を同定する二次元領域の境界を概略的に示している。
【図19】ノイズ除去前後の連鎖球菌を100%含む試料の吸収信号を示している。
【図20】ノイズ除去前後の連鎖球菌を100%含む試料における吸収信号の一次導関数を示している。
【図21】連鎖球菌を100%含む対照試料と連鎖球菌を100%含む試料の吸収スペクトルの一次導関数およびそれに対応する統計的相関関係を示している。
【図22】連鎖球菌を100%含む対照試料と連鎖球菌を100%含む試料の吸収スペクトルの一次導関数およびそれに対応する統計的相関関係を示している。
【図23】連鎖球菌を100%含む対照試料と連鎖球菌を100%含む試料の吸収スペクトルの一次導関数およびそれに対応する統計的相関関係を示している。
【図24】連鎖球菌を100%含む対照試料とブドウ球菌を100%含む溶液の吸収スペクトルの一次導関数および二者間の相関係数を示している。
【図25】連鎖球菌を100%含む対照試料とブドウ球菌を100%含む溶液の吸収スペクトルの一次導関数および二者間の相関係数を示している。
【図26】連鎖球菌を100%含む対照試料とブドウ球菌を100%含む溶液の吸収スペクトルの一次導関数および二者間の相関係数を示している。
【図27】連鎖球菌を100%含む対照試料と、ブドウ球菌を50%と連鎖球菌を50%含む溶液の吸収スペクトルの一次導関数および二者間の相関係数を示している。
【図28】連鎖球菌を100%含む対照試料と、ブドウ球菌を50%と連鎖球菌を50%含む溶液の吸収スペクトルの一次導関数および二者間の相関係数を示している。
【図29】連鎖球菌を100%含む対照試料と、ブドウ球菌を50%と連鎖球菌を50%含む溶液の吸収スペクトルの一次導関数および二者間の相関係数を示している。
【図30】連鎖球菌を100%含む対照試料と、ブドウ球菌を25%と連鎖球菌を75%含む溶液の吸収スペクトルの一次導関数および二者間の相関係数を示している。
【図31】連鎖球菌を100%含む対照試料と、ブドウ球菌を25%と連鎖球菌を75%含む溶液の吸収スペクトルの一次導関数および二者間の相関係数を示している。
【図32】連鎖球菌を100%含む対照試料と、ブドウ球菌を25%と連鎖球菌を75%含む溶液の吸収スペクトルの一次導関数および二者間の相関係数を示している。
【図33】連鎖球菌を100%含む対照試料と、ブドウ球菌を75%と連鎖球菌を25%含む溶液の吸収スペクトルの一次導関数および二者間の相関係数を示している。
【図34】連鎖球菌を100%含む対照試料と、ブドウ球菌を75%と連鎖球菌を25%含む溶液の吸収スペクトルの一次導関数および二者間の相関係数を示している。
【図35】連鎖球菌を100%含む対照試料と、ブドウ球菌を75%と連鎖球菌を25%含む溶液の吸収スペクトルの一次導関数および二者間の相関係数を示している。
【図36】溶液中の細菌を同定する二次元領域の境界を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明およびその実施する方法を理解できるようにするために、複数の実施例について添付の図面を参照して例示説明する。
【0048】
本発明を当分野の技術者が実施可能なように本発明の発明者が考える最良の実施形態に基づいて以下の各章に沿って順に説明する。分光測定法を用いて試料中の細菌を検出する手段および方法を提供することが本発明の基本概念であり、各種改変が可能なことは当該分野の技術者には自明のことである。
【0049】
蛍光、吸収、ラマン及び散乱といった分光測定法は、すべての光学的検知機器の基礎となっている。有害性物質(例えば細菌)を同定するために、有害性物質を含有する可能性のある試料は分光計にかけられ、試料の吸収スペクトルに有害性物質の分光的特徴が認められるか否か分析される。
【0050】
本発明は、細菌を含有する可能性のある試料の吸収スペクトルを分析することにより、細菌の検出又は同定をする手段および方法を提供する。
【0051】
用語「試料」は、ここでは、エアロゾル試料または液体試料のことをいう。本発明は液体中の細菌同様にエアロゾル中の細菌の検出も可能とする検出手段を提供する。この検出手段は、医療分野または医療以外の分野でも利用され得る。さらに、この検出手段は例えば、水、飲料、食料品中の細菌の検出、込み合った場所での有害性物質の検出などにおいても利用され得る。
【0052】
用語「ピアソンの相関係数」とは、以下において、2変数が関連している度合いを反映する2変数間の相関のことをいう。ピアソンの相関は2変数間の直線関係の度合いを反映する。その値域は+1から−1までである。−1の相関は変数間に完全な負の直線関係があることを意味する。0の相関は2変数間に直線関係が無いことを意味する。1の相関は2変数間に完全な直線関係があることを意味する。
【0053】
ピアソンの相関計数rを計算するための一般的な式を次に示す。:
【0054】
【数1】

【0055】
ここでの用語「約」とは、記載された値の25%以上又は25%以下の範囲のことをいう。
【0056】
ここでの用語「セグメント」とは、吸収スペクトル内の波長範囲のことをいう。
【0057】
ここでの用語「n次元体積」とは、対象細菌を同定するのに適用されるn次元空間における体積のことをいう。このn次元体積は、吸収スペクトルまたはその導関数などから抽出された特徴及び統計的相関により構成される。
【0058】
ここでの用語「n次元空間」とは、その細菌の分光的特徴、又は計算されたスペクトル及びその導関数の範囲外について計算された統計的相関、又はスペクトルのセグメントおよび/またはその導関数、から抽出された特徴又は統計的相関である各々の座標をもつ空間のことをいう。
【0059】
ここでの用語「n次元体積の境界」とは、対象細菌の約95%にあり得る特徴及び相関値を含む範囲のことをいう。
【0060】
本発明は、微生物/細菌/有害性物質の独特な分光的特徴を利用して構成された細菌検出のための手段と方法及びこれらが試料中の微生物/細菌/有害性物質の検出を可能とすることを提供する。
【0061】
本発明の一実施形態に係る試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定するように構成されたシステム1000を示す図1について説明する。システム1000は、
a.前記試料の吸収スペクトル(AS)を求める手段100と、
b.前記特定の細菌についてのn次元体積の境界を求める手段であって、
i.前記特定の細菌を含む試料の少なくとも1つの吸収スペクトル(AS2)を求める手段201と、
ii.ピーク波長、ピーク高さと幅、異なるピークの強度比またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴x(xは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記AS2から抽出する手段202と、
iii.前記AS2の少なくとも1つの導関数を算出する手段203と、
iv.前記特徴xにより、前記AS2を幾つかのセグメントに区分けする手段204と、
v.前記セグメントの夫々の統計的相関y(yは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する手段205と、
vi.n次元空間(nは、前記特徴xと前記統計的相関yの和に等しい。)を定義する手段206と、
vii.前記特徴xの夫々および前記統計的相関yの夫々を前記特定の細菌にアサインする手段207と、
viii.前記特徴xの夫々および/または前記統計的相関yの夫々について、前記n次元空間のn次元体積を定義するガウス分布を算出する手段208と、
ix.前記n次元体積の境界を、二次元ガウス分類法、k最近傍法、ベイズ分類法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された手法を用いて決定する手段209
を有する統計処理手段200と、
c.前記ASをデータ処理する手段であって、
i.移動平均法、Savitzky‐Golay法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された異なる平滑化技術を用いてノイズを除去する手段301と、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、ピーク波長、異なるピークの強度比、またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m(mは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記ASから抽出する手段302と、
iii.前記特徴mにより、前記ASを幾つかのセグメントに区分けする手段303と、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m1(m1は、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する手段304
を有する手段300と、
d.前記統計的相関m1および/または前記特徴mが前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する手段400
からなることを特徴とする。
【0062】
本発明の別の態様としては、前記ASをデータ処理する(システム1000の)手段300が、
i.前記ASのo次導関数(oは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)の少なくとも1つを算出する手段305と、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、異なるピークの強度比、ピーク波長またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m2を前記o次導関数から抽出する手段306と、
iii.前記特徴m2により、前記o次導関数を幾つかのセグメントに区分けする手段307と、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m3を算出する手段308と、
v.前記統計的相関m1および/または統計的相関m3および/または前記特徴mおよび/または特徴m2が前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する手段309
によってさらに特徴づけられる。
【0063】
本発明の別の態様としては、統計的相関関係を算出する(システム1000の)手段308または304が、ピアソンの相関係数からなる群より選択される。
【0064】
本発明のさらなる態様としては、システム1000によって同定される前記特定の細菌が、化膿連鎖球菌、C群およびG群β溶血性連鎖球菌、コリネバクテリウム・ヘモリチカム、ジフテリアおよびウルセランス、淋菌、マイコプラズマ肺炎、エンテロコリチカ菌、結核菌、トラコーマクラミジアおよび肺炎クラミジア、百日咳菌、レジオネラ菌種、カリニ肺炎菌、ノカルジア、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、インフルエンザ菌、A群β溶血性連鎖球菌および黄色ブドウ球菌からなる群より選択される。
【0065】
本発明の別の態様としては、(システム1000の)前記試料の吸収スペクトル(AS)を求める前記手段100が、
a.前記試料に適応する少なくとも1つの光学セルと、
b.レーザ、ランプ、LED波長可変レーザ、単色光分光器からなる群より選択されたp光源(pは、1に等しいまたは1より大きい整数を意味し、前記p光源は、異なる波長で光を前記光学セルに放射するように構成される。)と、
c.前記光学セルから出射する前記試料の分光学的データを受信する検出手段
をさらに備えていることを特徴とする。
【0066】
本発明のさらなる態様としては、(システム1000の)前記p光源が、紫外、可視、赤外、中間赤外、遠赤外およびテラヘルツからなる群より選択された波長範囲で光を放射するように構成される。
【0067】
本発明の他の実施形態に係る試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定するように構成されたシステム2000を示す図2について説明する。システム2000は、
a.前記試料の水の影響を含む吸収スペクトル(AS)を求める手段100と、
b.前記特定の細菌についてのn次元体積の境界を求める手段であって、
i.前記特定の細菌を含む試料の少なくとも1つの吸収スペクトル(AS2)を求める手段201と、
ii.ピーク波長、ピーク高さと幅、異なるピークの強度比またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴x(xは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記AS2から抽出する手段202と、
iii.前記AS2の少なくとも1つの導関数を算出する手段203と、
iv.前記特徴xにより、前記AS2を幾つかのセグメントに区分けする手段204と、
v.前記セグメントの夫々の統計的相関y(yは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する手段205と、
vi.n次元空間(nは、前記特徴xと前記統計的相関yの和に等しい。)を定義する手段206と、
vii.前記特徴xの夫々および前記統計的相関yの夫々を前記特定の細菌にアサインする手段207と、
viii.前記特徴xの夫々および/または前記統計的相関yの夫々について、前記n次元空間のn次元体積を定義するガウス分布を算出する手段208と、
ix.前記n次元体積の境界を、二次元ガウス分類法、k最近傍法、ベイズ分類法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された手法を用いて決定する手段209
を有する統計処理手段200と、
c.前記水の影響を前記ASから除去する手段であって、
i.前記ASの範囲内の波数(x)の夫々での吸収強度(Sigwith water(x))を備える手段301と、
ii.前記ASを少なくとも2つの波数範囲に区分けする手段302と、
iii.前記少なくとも2つの波数範囲の範囲内の波数(x)の夫々での補正率(CF)を算出(CF(x))する手段303と、
iv.前記水(Sigwater only(x1))およびそれに対応する波数(x1)に最も影響される少なくとも1つの吸収強度を、前記ASから求める手段304と、
v.少なくとも1つの波数(x1)での前記水の少なくとも1つの補正率(CFwater only(x1))を算出する手段305と、
vi.前記少なくとも1つのSigwater only(x1)を前記少なくとも1つの波数(x1)での前記少なくとも1つのCFwaterで除算(Sigwater only(x1)/CFwater only(x1))する手段306と、
vii.前記工程(vi)の平均値(AVG[Sigwater only(x1)/CFwater only(x1)])を算出する手段307と、
viii.前記AVG[Sigwater only(x1)/CFwater only(x1)]に前記ASの範囲内の前記波数(x)の夫々についての前記CF(x)を乗算する手段308と、
ix.前記ASの範囲内の前記波数(x)の夫々での前記Sigwith water(x)から前記工程(viii)の結果を減算する手段309
を有する手段300と、
d.前記ASを前記水の影響なしにデータ処理する手段であって、
i.移動平均法、Savitzky‐Golay法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された異なる平滑化技術を用いてノイズを除去する手段401と、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、ピーク波長、異なるピークの強度比、またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m(mは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記ASから抽出する手段402と、
iii.前記特徴mにより、前記ASを幾つかのセグメントに区分けする手段403と、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m1(m1は、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する手段404
によって特徴づけられる手段400と、
e.前記統計的相関m1および/または前記特徴mが前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する手段500
からなることを特徴とする。
【0068】
本発明の別の態様としては、前記ASを前記水の影響なしにデータ処理する(システム2000の)手段400が、
i.前記ASのo次導関数(oは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)の少なくとも1つを算出する手段405と、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、異なるピークの強度比、ピーク波長またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m2を前記o次導関数から抽出する手段406と、
iii.前記特徴m2により、前記o次導関数を幾つかのセグメントに区分けする手段407と、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m3を算出する手段408と、
v.前記統計的相関m1および/または統計的相関m3および/または前記特徴mおよび/または特徴m2が前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する手段409
をさらに備えていることを特徴とする。
【0069】
本発明の別の態様としては、前記セグメントの夫々の統計的相関関係を算出するシステム2000の手段408および/または手段404が、ピアソンの相関係数からなる群より選択される。
【0070】
本発明の別の態様としては、(システム2000の)前記特定の細菌が、化膿連鎖球菌、C群およびG群β溶血性連鎖球菌、コリネバクテリウム・ヘモリチカム、ジフテリアおよびウルセランス、淋菌、マイコプラズマ肺炎、エンテロコリチカ菌、結核菌、トラコーマクラミジアおよび肺炎クラミジア、百日咳菌、レジオネラ菌種、カリニ肺炎菌、ノカルジア、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、インフルエンザ菌、A群β溶血性連鎖球菌および黄色ブドウ球菌からなる群より選択される。
【0071】
本発明の別の態様としては、前記試料の吸収スペクトル(AS)を求める手段100が、
a.前記試料に適応する少なくとも1つの光学セルと、
b.レーザ、ランプ、LED波長可変レーザ、単色光分光器からなる群より選択されたp光源(pは、1に等しいまたは1より大きい整数を意味し、p光源は、異なる波長で光を前記光学セルに放射するように構成される。)と、
c.前記光学セルから出射する前記試料の分光学的データを受信する検出手段
をさらに備えていることを特徴とする。
【0072】
本発明のさらなる態様としては、前記p光源が、紫外、可視、赤外、中間赤外、遠赤外およびテラヘルツからなる群より選択された波長範囲で光を放射するように構成される。
【0073】
本発明のさらなる別の目的は、試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法を提供することである。その方法は、
a.前記試料の吸収スペクトル(AS)を求める工程と、
b.前記特定の細菌についてのn次元体積の境界を、
i.前記特定の細菌を含む試料の少なくとも1つの吸収スペクトル(AS2)を求め、
ii.ピーク波長、ピーク高さと幅、異なるピークの強度比またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴x(xは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記AS2から抽出し、
iii.前記AS2の少なくとも1つの導関数を算出し、
iv.前記特徴xにより、前記AS2を幾つかのセグメントに区分けし、
v.前記セグメントの夫々の統計的相関y(yは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出し、
vi.n次元空間(nは、前記特徴xと前記統計的相関yの和に等しい。)を定義し、
vii.前記特徴xの夫々および前記統計的相関yの夫々を前記特定の細菌にアサインし、
viii.前記特徴xの夫々および/または前記統計的相関yの夫々について、前記n次元空間のn次元体積を定義するガウス分布を算出し、
ix.前記n次元体積の境界を、二次元ガウス分類法、k最近傍法、ベイズ分類法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された手法を用いて決定する
ことにより求める工程と、
c.前記ASを、
i.移動平均法、Savitzky‐Golay法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された異なる平滑化技術を用いてノイズを除去し、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、ピーク波長、異なるピークの強度比、またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m(mは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記ASから抽出し、
iii.前記特徴mにより、前記ASを幾つかのセグメントに区分けし、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m1(m1は、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する
ことによりデータ処理する工程と、
d.前記統計的相関m1および/または前記特徴mが前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する工程
より特に選択された工程からなる。
【0074】
上述した各々のシステム(1000または2000のいずれか)において、統計処理手段200は各々の特定の細菌に対し1回だけ用いられることに注目されたい。境界が統計処理手段200によっていったん提供されると、試料中に存在する特定の細菌であるか否かの決定は、統計的相関m1及び/又は統計的相関m3及び/又は特徴m及び/又は特徴m2が境界内にあるか否かの検証により行われる。さらに、いったん境界が提供されれば、再び同じ特定細菌の統計処理については必要としない。
【0075】
本発明のさらなる別の目的は、試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法を提供することである。その方法は、
a.前記試料の水の影響を含む吸収スペクトル(AS)を求める工程と、
b.前記特定の細菌についてのn次元体積の境界を、
i.前記特定の細菌を含む試料の少なくとも1つの吸収スペクトル(AS2)を求め、
ii.ピーク波長、ピーク高さと幅、異なるピークの強度比またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴x(xは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記AS2から抽出し、
iii.前記AS2の少なくとも1つの導関数を算出し、
iv.前記特徴xにより、前記AS2を幾つかのセグメントに区分けし、
v.前記セグメントの夫々の統計的相関y(yは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出し、
vi.n次元空間(nは、前記特徴xと前記統計的相関yの和に等しい。)を定義し、
vii.前記特徴xの夫々および前記統計的相関yの夫々を前記特定の細菌にアサインし、
viii.前記特徴xの夫々および/または前記統計的相関yの夫々について、前記n次元空間のn次元体積を定義するガウス分布を算出し、
ix.前記n次元体積の境界を、二次元ガウス分類法、k最近傍法、ベイズ分類法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された手法を用いて決定する
ことにより求める工程と、
c.前記水の影響を、
i.前記ASの範囲内の波数(x)の夫々での吸収強度(Sigwith water(x))を備え、
ii.前記ASを少なくとも2つの波数範囲に区分けし、
iii.前記少なくとも2つの波数範囲の範囲内の波数(x)の夫々での補正率(CF)を算出(CF(x))し、
iv.前記水(Sigwater only(x1))およびそれに対応する波数(x1)に最も影響される少なくとも1つの吸収強度を、前記ASから求め、
v.少なくとも1つの波数(x1)での前記水の少なくとも1つの補正率(CFwater only(x1))を算出し、
vi.前記少なくとも1つのSigwater only(x1)を前記少なくとも1つの波数(x1)での前記少なくとも1つのCFwaterで除算(Sigwater only(x1)/CFwater only(x1))し、
vii.前記工程(vi)の平均値(AVG[Sigwater only(x1)/CFwater only(x1)])を算出し、
viii.前記AVG[Sigwater only(x1)/CFwater only(x1)]に前記ASの範囲内の前記波数(x)の夫々についての前記CF(x)を乗算し、
ix.前記ASの範囲内の前記波数(x)の夫々での前記Sigwith water(x)から前記工程(viii)の結果を減算する
ことにより前記ASから除去する工程と、
d.前記ASを、
i.移動平均法、Savitzky‐Golay法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された異なる平滑化技術を用いてノイズを除去し、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、ピーク波長、異なるピークの強度比、またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m(mは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記ASから抽出し、
iii.前記特徴mにより、前記ASを幾つかのセグメントに区分けし、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m1(m1は、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する
ことにより前記水の影響なしにデータ処理する工程と、
e.前記統計的相関m1および/または前記特徴mが前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する工程
より特に選択された工程からなる。
【0076】
上述した各々の方法において、統計処理は各々の特定の細菌に対し1回だけ用いられる。境界が統計処理によっていったん提供されると、試料中に存在する特定の細菌であるか否かの決定は、統計的相関m1及び/又は特徴mが境界内にあるか否かの検証により行われる。さらに、いったん境界が提供されれば、再び同じ特定細菌の統計処理については必要としない。
【0077】
本発明の別の態様としては、前記ASをデータ処理する工程(d)が、
i.前記ASのo次導関数(oは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)の少なくとも1つを算出し、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、異なるピークの強度比、ピーク波長またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m2を前記o次導関数から抽出し、
iii.前記特徴m2により、前記o次導関数を幾つかのセグメントに区分けし、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m3を算出し、
v.前記統計的相関m1および/または統計的相関m3および/または前記特徴mおよび/または特徴m2が前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する
工程を上記の方法においてさらに含むことを特徴とする。
【0078】
本発明の別の態様としては、前記セグメントの夫々の統計的相関関係を算出する前記工程が、上記の方法においてピアソンの相関係数を用いて実行される。
【0079】
本発明の別の態様としては、化膿連鎖球菌、C群およびG群β溶血性連鎖球菌、コリネバクテリウム・ヘモリチカム、ジフテリアおよびウルセランス、淋菌、マイコプラズマ肺炎、エンテロコリチカ菌、結核菌、トラコーマクラミジアおよび肺炎クラミジア、百日咳菌、レジオネラ菌種、カリニ肺炎菌、ノカルジア、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、インフルエンザ菌、A群β溶血性連鎖球菌および黄色ブドウ球菌からなる群より選択された前記特定の細菌を選択する工程を上記の方法においてさらに含むことを特徴とする。
【0080】
本発明の別の態様としては、前記ASを求める前記工程が、
a.前記試料に適応する少なくとも1つの光学セルを備え、
b.レーザ、ランプ、LED波長可変レーザ、単色光分光器からなる群より選択されたp光源(pは、1に等しいまたは1より大きい整数を意味し、p光源は、光を前記光学セルに放射するように構成される。)を備え、
c.前記試料の分光学的データを受信する検出手段を備え、
d.異なる波長で前記p光源から光を前記光学セルに放射し、
e.前記検出手段によって前記光学セルから出射する前記光を集光して前記ASを求める
工程を上記の方法においてさらに含むことを特徴とする。
【0081】
本発明の別の態様としては、光を放射する前記工程が、紫外、可視、赤外、中間赤外、遠赤外およびテラヘルツの波長範囲で実行される。
【0082】
本発明の別の態様としては、約3000cm−1から約3300cm−1および/または約850cm−1から約1000cm−1および/または約1300cm−1から約1350cm−1の領域における前記ASを分析することによって前記特定の細菌を検出する工程を上記の方法においてさらに含むことを特徴とする。
【0083】
本発明のさらなる別の態様によると、どのシステム(1000又は2000)、又は上述した方法での吸収スペクトルとは、フーリエ変換赤外分光計、蛍光光度計、ラマン分光計からなる群より選択された機器を用いて得られたものである。
【0084】
本発明のさらなる別の態様によると、どのシステム(1000又は2000)、又は上述した方法での無培養試料とは、血液、唾液、尿、胆液、膣分泌物、中耳吸引物、膿液、胸水、滑液、腫瘍、腔ぬぐい液及び血清といった人体から採取した流体から選択されたものである。
【0085】
前述の記載において、好ましい態様を含んでいる本発明の態様は、図面および明細書上に表されている。これらは本発明を包括したり、開示された形態に限定したりすることを意図しない。明らかな改良または改変が上記教示により可能である。主発明及びその実用化の最もわかりやすい説明を提供するために、そして、種々の態様及び意図した特定の使用に適する種々の改変とともに当業者が本発明を利用できるように、これらの態様は選択されて記載された。定められた特許請求の範囲がその範囲に従って解釈されたとき、このような改良および改変のすべては本発明の範囲内にあり、これらは正しく、合法的で公平な権利を有する。
【実施例】
【0086】
本発明において請求された態様を証明するために実施例を示す。これらの実施例は本発明の方法と処理過程を記載し、本発明を行うにあたり発明者により意図された最良の態様を説明するが、発明を限定するものとしてみなされるものではない。
【実施例1】
【0087】
水の影響
液体試料(及び特にエアロゾルスペクトル)のスペクトルから細菌を同定する際の重大な課題のひとつは水の影響である(例えば、水のスペクトルにより所望のスペクトルがマスクされてしまう、水のノイズなど)。
【0088】
水分子はさまざまな形で振動している。気体状態において、その振動は共有結合の対称伸縮(ν1)、非対称伸縮(ν3)及び変角(ν2)の組み合わせを含む。何万から何百万もの吸収線を有する水蒸気中で、豊富に組み合わされた振動回転スペクトルを生じさせる回転において水分子は非常に小さな慣性モーメントを有する。水分子は3つの振動モードx、y及びzを有する。以下の表(表1)は水の振動、水の波長と各々の振動のアサインメントを示す。:
【0089】
【表1】

【0090】
本発明は吸収スペクトルの水の影響を有意に減らし、まさに除去する方法を提供する。
【0091】
水の影響がある試料及び影響がない試料の吸収スペクトルを示す図3、4について説明する。水の影響のない試料のスペクトルの一例を図4で示す。図3は水の補正前のスペクトルを示す。
【0092】
水の影響を除去するための方法は以下の工程を含む。:
【0093】
第一に吸収スペクトルは数個のセグメント(つまり、波長範囲)に区分けされた。そのスペクトルは、約1800cm−1から約2650cm−1、約1400cm−1から約1850cm−1、約1100cm−1から約1450cm−1、約950cm−1から約1100cm−1、約550cm−1から約970cm−1のセグメント(波長範囲)に区分けされた。
【0094】
そのセグメントは、(i)水の吸収スペクトルの範囲内での異なる強度ピーク、および(ii)信号の傾向により決定された。
【0095】
次に、夫々のセグメントは、以下の方法により水の影響を除去された。
(a)吸収スペクトルの範囲内の波数(x)の夫々での吸収強度(以下、「Sigwith water(x)」という。)を備え、
(b)夫々のセグメントの範囲内の夫々の波長(以下、「x」という。)での補正率(CF)を算出(以下、「CF(x)」という。)し、
(c)対応する波数(x1)での水(以下、「Sigwater only(x1)」という。)に最も影響される少なくとも1つの吸収強度を、吸収スペクトルから求め、
(d)少なくとも1つの波数(x1)での前記水の少なくとも1つの補正率(CFwater only(x1))を算出し、
(e)少なくとも1つのSigwater only(x1)を前記少なくとも1つの波数(x1)での少なくとも1つのCFwaterで除算(Sigwater only(x1)/CFwater only(x1))し、
(f)工程(e)の結果の平均値(以下、「AVG[Sigwater only(x1)/CFwater only(x1)]」という。)を算出し、
(g)前記AVG[Sigwater only(x1)/CFwater only(x1)]に前記波数(x)の夫々についての前記CF(x)を乗算し、
(h)xごとにSigwith water(x)から工程(g)の夫々の結果を減算する。
【0096】
いいかえると、以下方程式により、スペクトル内の各々の吸収強度は水の影響から除去されている。:
【0097】
【数2】

【0098】
補正率の計算
補正率(CF)は波長範囲、各々の波長での水の吸収ピーク形状、ピーク幅、ピーク高さ、吸収スペクトル傾向及びそれらの組み合わせによって決まる。以下は補正率として用いられた(χはcm−1における波数を表す。)。
【0099】
1.波長範囲1846cm−1から2613cm−1
係数:
a11= 137.2;
b11= 2170;
c11= 224.3;
a21= 19.02;
b21= 2063;
c21= 37.53;
a31= 0.7427;
b31= 2224;
c31= 13;
a41= 98.33;
b41= 2124;
c41= 109.8;
a51= −4.988;
b51= 2192;
c51= 33.87;
a61= 20.19;
b61= 1998;
c61= 40.22;
a71= 228.3;
b71= 1496;
c71= 1329;
a81= 6.751e+012;
b81= −1226;
c81= 592.1;
【0100】
【数3】

【0101】
2.波長範囲1461cm−1から1846cm−1
a12= −300.2;
b12= 1650;
c12= 13.65;
a22= −51.65;
b22= 1665;
c22= 6.48;
a32= 142.4;
b32= 1623;
c32= 7.584;
a42= 1450;
b42= 1649;
c42= 32.62;
a52= 96.34;
b52= 1617;
c52= 2.387;
a62= 608;
b62= 1470;
c62= 369.3;
a72= 0;
b72= 1873;
c72= 2.625;
a82= 1037;
b82= 1664;
c82= 76.21;
【0102】
【数4】

【0103】
3.波長範囲1111cm−1から1461cm−1
a13= 1368;
b13= 2167;
c13= 767;
a23= 80.67;
b23= 1356;
c23= 68.83;
a33= 36.85;
b33= 1307;
c33= 33.79;
a43= 142.5;
b43= 1244;
c43= 67.19;
a53= 260.4;
b53= 1130;
c53= 88.91;
a63= 66.54;
b63= 1093;
c63= 31;
a73= 7.126;
b73= 1345;
c73= 20.9;
a83= 4.897;
b83= 1280;
c83= 11.05;
【0104】
【数5】

【0105】
4.波長範囲961cm−1から1111cm−1
a14= 692.6;
b14= 952;
c14= 31.04;
a24= 48.46;
b24= 983.2;
c24= 15.72;
a34= 287.5;
b34= 994.6;
c34= 27.98;
a44= 434.9;
b44= 1032;
c44= 40.86;
a54= 17.05;
b54= 1052;
c54= 13.55;
a64= 48.61;
b64= 1068;
c64= 16.56;
a74= 70.71;
b74= 1086;
c74= 21.23;
a84= 497.3;
b84= 1124;
c84= 64.42;
【0106】
【数6】

【0107】
5.波長範囲570cm−1から961cm−1
a15= −2877;
b15= 36.23;
c15= 29.09;
a25= 0;
b25= −124.3;
c25= 22.09;
a35= −190.7;
b35= 18.97;
c35= 16.45;
a45= 1.589e+004;
b45= −3.427;
c45= 56.25;
a55=−1.352e+004;
b55= −5.861;
c55= 40.75;
a65= 476.7;
b65= 82.38;
c65= 17.29;
a75= 1286;
b75= 62.29;
c75= 180.3;
a85= 802.9;
b85= 102.8;
c85= 18.79;
【0108】
【数7】

【0109】
主に水に影響された吸収強度
水の影響を除去する前の吸収スペクトルを示す図3について再び説明する。
【0110】
図より明らかなように、水に最も影響された吸収強度は2000cm−1およびそれ以上の波数領域にある。この領域における強度は約0.2吸光度単位であった。本実施例においては、x1は2000であり、Sigwater only(x1)は0.2であった。
【0111】
水の影響が除去された後の試料の吸収スペクトルを示す図4について再び説明する。
【0112】
よりよい解析結果を得るために、両グラフ(3および4)は2に標準化される(つまり、2を乗じた)ことがあげられる。
【実施例2】
【0113】
細菌の吸収スペクトル
各々の細菌は固有の分光的特徴を有する。多くの細菌種は同じような分光的特徴を有するが、それでも、細胞膜上のタンパク質の違い、DNA/RNA構造における違いに起因するスペクトルの相違は存在する。
【0114】
以下の表2では、細菌を同定するために用いられ得るIR領域での波長を示す。
【0115】
【表2】

【0116】
この表はナウマン・D著「細菌学における赤外分光法」エンサイクロペディア・オブ・アナリティカル・ケミストリー、R.A.Meyers(Ed.)、102−131頁、ジョンワイリー・アンド・サンズ社、チチェスター、2000年より引用された。
【0117】
以下の表3及び図5は、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)の吸収ピークの一実施例である。ピークのいくつかは表2中のピークに関連している。その他のピーク、化膿連鎖球菌固有のものであることが本発明により明らかにされたピーク番号1、2、9、12、13および14は検出や同定に用いられる。
【0118】
【表3】

【実施例3】
【0119】
固体混合物中の細菌2種の識別
以下に示す生体外(エキソビボ)での実施例は、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の固体混合物中の2種細菌を識別するための方法と、この試料内に化膿連鎖球菌が存在するか否かを同定及び/または決定するための方法を提供する。
【0120】
以下のプロトコールに従い、化膿連鎖球菌と黄色ブドウ球菌の5つの混合物を調製した。
【0121】
1.β溶血性連鎖球菌(カタログ番号−ATCC19615)と黄色ブドウ球菌(カタログ番号−ATCC25923)の溶液を以下のように調製した。
【0122】

【0123】
2.光学プレート(ZnSe)上の印が付けられたスロットに、各々の溶液30μLを入れた。もう一方のスロットには対照区として30μLのddHOを入れた。
【0124】
3.乾燥剤(5酸化2リン、カタログ番号79610、シグマ・アルドリッチ製品)をいれた数個のペトリ皿が入っているデシケーター(デシケーター:250mmポリプロピレン、Yavin Yeda、イスラエル製品)にプレートを静置した。
【0125】
4.約30分間デシケーター中で真空乾燥させた。
【0126】
試料をFTIR分光計(ブルカー製)内に置き、試料のスペクトル感度を求めた(スペクトル範囲4000cm−1から400cm−1)。
【0127】
各々の試料の吸収スペクトルはブラックマン−ハリス3項アポダイズ関数(以下の方程式参照)に導入した。
【0128】
【数8】

【0129】
ブラックマン−ハリス3項アポダイズ関数のω(n)において;nは0からN−1までの整数、Nはブラックマン−ハリス3項アポダイズ関数が適用される範囲をいう。
【0130】
次に、ノイズに対するシグナルの比率が3000:1以上となるように、十分な回数(64回)試料がスキャンされた。
【0131】
特定の細菌の同定及び/または検出は以下のとおりである。
(a)Savitzky‐Golay法を用いて、吸収スペクトルの夫々におけるノイズが除去された。
(b)信号の一次導関数が算出された。
(c)ピーク波長、ピーク高さと幅、ピーク高さ比など(限定するものではない。)の特徴mが吸収スペクトルから抽出された。特徴mの合計が抽出された。mは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。
(d)前記特徴mにより、信号および/またはその一次導関数が幾つかの領域(セグメント、すなわち幾つかの波数領域)に区分けされた。
(e)(i)夫々の領域でのスペクトル信号について、および(ii)夫々の領域での信号導関数について、統計的相関m1が算出された。統計的相関m1の合計が抽出された。m1は、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。夫々の領域(信号およびその導関数)についての統計的相関は、ピアソンの相関係数を用いて算出された。
(f)特徴mおよび統計的相関m1が(統計処理によって求めた)n次元体積の境界の範囲内であるか否かを検証され確認された。
(g)特徴mおよび/または統計的相関m1がn次元体積の境界の範囲内であった場合に、特定の細菌の同定が陽性と決定された。
【0132】
統計処理
統計処理は、特に、n次元体積の境界を与えるのに適している。この境界を決定するにあたり、各々の特定細菌についての統計処理は一回のみ行なわれた。いったんこの境界が与えられると、試料中に特定の細菌が存在するか否かの決定は、上述のように行われた(すなわち、特徴または相関が境界の範囲内であるか否かの検証を行う)。
【0133】
さらに、いったんこの境界が与えられると、同じ特定の細菌について再び統計処理を行う必要はない。
【0134】
各々の特定の細菌についての統計処理は、以下に示す手順で行われる。
(a)特定の細菌を含む試料の幾つかの吸収スペクトル(AS2)を求める。
(b)ピーク波長、ピーク高さと幅、異なるピークの強度比など(限定するものではない。)の特徴xを吸収スペクトルから抽出する。xの合計を抽出する。xは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。
(c)信号の一次導関数を算出する。
(d)前記特徴xにより、信号および/またはその一次導関数を幾つかの領域(セグメント)に区分けする。
(e)吸収スペクトル内の異なるセグメントについて相関yを算出する。
(f)n次元空間を定義する。nは、特徴xと統計的相関yの和に等しい。
(g)特徴xの夫々および相関yの夫々を同定が必要とされる特定の細菌にアサインするおよび/またはインターリンクする。
(h)(i)特徴xの夫々について、および/または(ii)統計的相関yの夫々について、ガウス分布を算出する。算出されたガウス分布の全ては、n次元空間のn次元体積を構成する。
(i)夫々の体積の境界を、二次元ガウス分類法または類似する手法(例えばk最近傍法、ベイズ分類法など)を用いて決定する。
【0135】
(スペクトルより抽出された)特徴及び相関がn次元体積の境界の範囲内であれば、特定の細菌が同定される。それ以外の場合には細菌は同定されない。
【0136】
択一的にまたは付加的に、特徴xの各々および/または、統計的相関yについて、重み付け係数が与えられる。この重み付け係数は、特徴又は相関それぞれが細菌決定予測をどのように向上させるか検証することにより決定される(たとえば、最大尤度やベイジアン推定を用いることによる)。いったん重み付け係数が特徴x及び統計的相関yのそれぞれにアサインされると、この境界は、細菌予測にもっとも重要な貢献を与える特徴及び/又は統計的相関について決定される。
【0137】
択一的にまたは付加的に、AS2はノイズの除去により平滑化される。ノイズの除去は、移動平均法、Savitzky‐Golay法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された異なる平滑化技術を用いて行われる。
【0138】
まず、平滑化技術の一例を示す。ノイズが示される前後の完全なシグナルとその一次導関数についてである。
【0139】
次に、スペクトルの偏差の例を示す。そして、最後に前記境界の例を示す。目的を明らかにするため、前記境界は試料に対し最も重要な貢献をもたらす特徴および/または統計的相関に従って算出されたことに注目されたい。
【0140】
さらに、以下実施例の目的は、連鎖球菌の同定である。
【0141】
スペクトルの平滑化
ノイズ除去前後の連鎖球菌を100%含む試料の吸収信号を示す図6について説明する(記録されたシグナル対平滑化シグナル)。
【0142】
ノイズ除去前後の連鎖球菌を100%含む試料のシグナルの一次導関数を示す図7について説明する(記録されたシグナル対平滑化シグナル)。
【0143】
吸収スペクトルの分割とその一次導関数
異なる試料(連鎖球菌とブドウ球菌の量が異なる)の吸収スペクトルとその一次導関数が与えられる。この吸収スペクトルと一次導関数は、例えば、選択された2つのセグメント(950cm−1から1200cm−1及び1230cm−1から1360cm−1)において与えられる。
【0144】
(シグナルと一次導関数の両方について区分けされた)セグメント全体は表3及び4にその相関とともに記載されている。
【0145】
波数範囲950cm−1から1200cm−1における試料(実線)及び対照試料(破線)の吸収スペクトルとそれに対応する統計的相関を示す図8から図12について説明する。図8から図12は同範囲におけるスペクトルの一次導関数とそれに対応する統計的相関をも示す。
【0146】
各々の吸収スペクトルは種々の技術(たとえば、移動平均法、Savitzky‐Golay法など)を用いて平滑化された(すなわち、ノイズの除去を意味する)。
【0147】
図8は連鎖球菌を100%含む試料(実線)と連鎖球菌を100%含む対照試料(破線)を示している。
【0148】
図9はブドウ球菌を100%含む試料(実線)と連鎖球菌を100%含む対照試料(破線)を示している。
【0149】
図10は連鎖球菌を50%、ブドウ球菌を50%含む試料(実線)と連鎖球菌を100%含む対照試料(破線)を示している。
【0150】
図11は連鎖球菌を75%、ブドウ球菌を25%含む試料(実線)と連鎖球菌を100%含む対照試料(破線)を示している。
【0151】
図12は連鎖球菌を25%、ブドウ球菌を75%含む試料(実線)と連鎖球菌を100%含む対照試料(破線)を示している。
【0152】
波数範囲1220cm−1から1380cm−1における試料(実線)及び対照試料(破線)の吸収スペクトルとそれに対応する統計的相関を示す図13から図17について説明する。図13から図17は同範囲におけるスペクトルの一次導関数とそれに対応する統計的相関をも示す。
【0153】
各々の吸収スペクトルは種々の技術(たとえば、移動平均法、Savitzky‐Golay法など)を用いて平滑化された(すなわち、ノイズの除去を意味する)。
【0154】
図13は連鎖球菌を100%含む試料の一次導関数(実線)と連鎖球菌を100%含む対照試料の一次導関数(破線)を示している。
【0155】
図14はブドウ球菌を100%含む試料の一次導関数(実線)と連鎖球菌を100%含む対照試料の一次導関数(破線)を示している。
【0156】
図15は連鎖球菌を50%、ブドウ球菌を50%含む試料の一次導関数(実線)と連鎖球菌を100%含む対照試料の一次導関数(破線)を示している。
【0157】
図16は連鎖球菌を75%、ブドウ球菌を25%含む試料の一次導関数(実線)と連鎖球菌を100%含む対照試料の一次導関数(破線)を示している。
【0158】
図17は連鎖球菌を25%、ブドウ球菌を75%含む試料の一次導関数(実線)と連鎖球菌を100%含む対照試料の一次導関数(破線)を示している。
【0159】
スペクトルから抽出された特徴m
次に示す特徴は、抽出されたピーク波長、ピーク高さ及び幅、異なるピークの強度比、ピーク高さ比である。このシグナル及びシグナルの一次導関数は、ある領域中では、検出対象の特定の細菌(すなわち、連鎖球菌)とその他の細菌(たとえば、ブドウ球菌)との間で前記特徴が相違するという事実に基づき、上述したセグメントに区分けされた。
【0160】
各々のセグメントの統計的相関m1及び重み付け係数
以下に示す表4では、各々のセグメントに対するシグナルの一次導関数の統計的相関m1を示す。波数範囲はcm−1であり、角かっこで示されている。表4には各々の重み付け係数も示されている。
【0161】
【表4】

【0162】
以下に示す表5では、各々のセグメントに対するシグナルの統計的相関m1を示す。波数範囲はcm−1であり、角かっこで示されている。表5は各々の重み付け係数も示されている。
【0163】
【表5】

【0164】
各々の特徴又は相関の重み付け係数は最尤法により決定された。
【0165】
表(4及び5)に示すように、相関1と相関2はシグナルとその一次導関数双方において最も大きな重み付け係数を有する。次に、これら相関について算出された境界を示す。
【0166】
境界の算出
上述したように、上記境界は、試料中の特定細菌の同定に最も重大な貢献を与えた特徴及び/又は相関に従って算出される。
【0167】
細菌を同定可能な2次元空間の境界を示す図18について説明する。この境界は細菌予測に重大な貢献を与えた2つの特徴又は相関、一次導関数から算出された相関1(990cm−1から1190cm−1の波数範囲間)及び相関2(1235cm−1から1363cm−1の波数範囲間)に基づいて算出された。同定する特定細菌は連鎖球菌である。
【0168】
図18に示すように、連鎖球菌が試料中に存在する場合には、試料の中の菌の存在の有無を光学的に検出または同定することが可能である。
【0169】
特徴又は相関が境界内にあるか否かの検査
いったん検出のための試料(たとえば、連鎖球菌を50%含む試料)が得られると、吸収信号が示され、一次導関数が算出されてデータが処理される。
【0170】
そして、その相関及び/または特徴に従って連鎖球菌が試料中に存在するかどうか決定される。図18に示される相関は第1および第2の相関である。
【0171】
図15に示すように、一次導関数の第2の相関(1235cm−1から1363cm−1の波数範囲から算出された相関)は0.9016であり、一次導関数の第1の相関(990cm−1から1190cm−1の波数範囲から算出された相関)は0.9753である(図10)。
【0172】
再び図18についてみると、連鎖球菌の領域に点(0.9016、0.9753)があることがわかる。このことより、連鎖球菌が試料内に存在することを患者に知らせることができる。
【0173】
ブドウ球菌を100%含む別の試料(すなわち、連鎖球菌でない試料)について確認する。
【0174】
図14に示すように、一次導関数の第2の相関(1235cm−1から1363cm−1の波数範囲から算出された相関)は0.7467であり、一次導関数の第1の相関(990cm−1から1190cm−1の波数範囲から算出された相関)は0.7845である(図9)。
【0175】
そして、図18からは、ブドウ球菌の領域に点(0.7467、0.7845)があることが観察される。このことより、連鎖球菌は試料内に存在しないことを患者に知らせることができる。
【0176】
特定の細菌の特徴mと相関m1の間の関連
以下の特徴及び相関は連鎖球菌に関連する:
表3及び990cm−1から1190cm−1、1235cm−1から1363cm−1の範囲における一次導関数相関由来のピーク1、2、9、12、13及び14。
【0177】
本願発明は、膜上のたった一つのタンパク質だけでなく、全体として細菌を検出することに注目されたい。
【実施例4】
【0178】
溶液中の2種細菌の識別
次の生体外(エキソビボ)での実施例は、溶液中に含まれる2種細菌の識別をするための方法を提供する。この溶液は、化膿連鎖球菌と黄色ブドウ球菌の混合物を含む。さらに、このエキソビボ実施例は、連鎖球菌が試料中に存在するか否かを同定及び決定するための方法を提供する。
【0179】
次に示す実施例は、溶液中に含まれる2種細菌の識別をするための方法を提供する。この溶液は、化膿連鎖球菌と黄色ブドウ球菌の混合物を含む。
【0180】
化膿連鎖球菌と黄色ブドウ球菌の5つの混合物を調製した。試料の分光吸収スペクトルの一次導関数は、上述したピアソンの相関係数を用いて異なる波長領域で分析された。
【0181】
この混合物は以下のように調製された。:
【0182】
3回の継代後(注:変異するまで2回継代可能)のβ溶血性連鎖球菌(ロット番号6919)と黄色ブドウ球菌(ロット番号6985)を購入した(HY Labs社、08−9366475、
www.hylabs.co.il)。
【0183】
次に、2つのエッペンドルフチューブの重さを測定した。そして、菌種ごとに1ストーク溶液を調製した。その全量は160μLであり、それには2つの測定されたプレート中の各々の区画から白金耳で10回拭い取られたものが含まれていた。
【0184】
次に、光学プレート(ZnSe)上の印が付けられたスロットに、溶液30μLを入れた。:1つのスロットには、30μLの連鎖球菌を入れ、もう一方のスロットには対照区として30μLのddHOを入れた。そして、別の光学プレート(ZnSe)上の印が付けられたスロットに、溶液30μLを入れた。:1つのスロットには、30μlのブドウ球菌を入れ、もう一方のスロットには対照区として30μLのddHOを入れた。
【0185】
次に、乾燥剤(5酸化2リン、カタログ番号79610、シグマ・アルドリッチ製品)をいれた数個のペトリ皿が入っているデシケーター(デシケーター:250mmポリプロピレン、Yavin Yeda)にプレートを静置し、30分間デシケーター中で真空乾燥させた。
【0186】
次に、2つのチューブは140000rpmで5分間遠心分離された(HSIANGTAI製CNM2000)。そして、上清が取り除かれた。チューブの重さを測定し、ddHOで乾燥した細菌を希釈して濃度を調製した。
【0187】
以下に示す計算結果が記録された。
【0188】

【0189】
次に5つの溶液を以下表のように調製した。
【0190】

【0191】
そして、上記チューブは140000rpmで5分間遠心分離され(HSIANGTAI製CNM2000)、上清が取り除かれた。次に、2−3回1μLの液滴を光学プレートの両側に置き、スペクトル信号を測定した。
【0192】
特定の細菌の同定及び/又は検出は以下のように行なわれる。
(a)Savitzky‐Golay法を用いて、吸収スペクトルの夫々におけるノイズが除去された。
(b)信号の一次導関数が算出された。
(c)ピーク波長、ピーク高さと幅、ピーク高さ比など(限定するものではない。)の特徴mが吸収スペクトルから抽出された。特徴mの合計が抽出された。mは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。
(d)前記特徴mにより、信号および/またはその一次導関数が幾つかの領域(セグメント)に区分けされた。
(e)(i)夫々の領域でのスペクトル信号について、および(ii)夫々の領域での信号導関数について、統計的相関m1が算出された。統計的相関m1の合計が抽出された。m1は、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。夫々の領域(信号およびその導関数)についての統計的相関は、ピアソンの相関係数を用いて算出された。
(f)特徴mおよび統計的相関m1が(統計処理によって求めた)n次元体積の境界の範囲内であるか否かを検証され確認された。
(g)特徴mおよび/または統計的相関m1がn次元体積の境界の範囲内であった場合に、特定の細菌の同定が陽性と決定された。
【0193】
統計処理
統計処理は、特に、n次元体積の境界を与えるのに適している。この境界を決定するにあたり、各々の特定細菌についての統計処理は一回のみ行なわれた。いったんこの境界が与えられると、試料中に特定の細菌が存在するか否かの決定は、上述のように行われた(すなわち、特徴または相関が境界の範囲内であるか否かの検証を行う)。
【0194】
さらに、いったんこの境界が与えられると、同じ特定の細菌について再び統計処理を行う必要はない。
【0195】
各々の特定の細菌についての統計処理は、以下に示す手順で行われる。
(a)特定の細菌を含む試料の幾つかの吸収スペクトル(AS2)を求める。
(b)ピーク波長、ピーク高さと幅、異なるピークの強度比など(限定するものではない。)の特徴xを前記AS2から抽出する。xの合計を抽出する。xは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。
(c)信号の一次導関数を算出する。
(d)前記特徴xにより、信号および/またはその一次導関数を幾つかの領域(セグメント)に区分けする。
(e)吸収スペクトル内の異なるセグメントについて相関yを算出する。
(f)n次元空間を定義する。nは、特徴xと統計的相関yの和に等しい。
(g)特徴xの夫々および相関yの夫々を同定が必要とされる特定の細菌にアサインするおよび/またはインターリンクする。
(h)(i)特徴xの夫々について、および/または(ii)統計的相関yの夫々について、ガウス分布を算出する。算出されたガウス分布の全ては、n次元空間のn次元体積を構成する。
(i)夫々の体積の境界を、二次元ガウス分類法または類似する手法(例えばk最近傍法、ベイズ分類法など)を用いて決定する。
【0196】
(スペクトルより抽出された)特徴及び相関がn次元体積の境界の範囲内であれば、特定の細菌が同定される。それ以外の場合には細菌は同定されない。
【0197】
択一的にまたは付加的に、特徴xの各々および/または、統計的相関yについて、重み付け係数が与えられる。この重み付け係数は、特徴又は相関それぞれが細菌決定予測をどのように向上させるか検証することにより決定される(たとえば、最大尤度やベイジアン推定を用いることによる)。いったん重み付け係数が特徴x及び統計的相関yのそれぞれにアサインされると、この境界は、細菌予測にもっとも重要な貢献を与える特徴及び/又は統計的相関について決定される。
【0198】
択一的にまたは付加的に、AS2はノイズの除去により平滑化される。ノイズの除去は、移動平均法、Savitzky‐Golay法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された異なる平滑化技術を用いて行われる。
【0199】
まず、平滑化技術の一例を示す。ノイズが示される前後の完全なシグナルとその一次導関数についてである。
【0200】
次に、スペクトルの偏差の例を示す。そして、最後に前記境界の例を示す。目的を明らかにするため、前記境界は試料に対し最も重要な貢献をもたらす特徴および/または統計的相関に従って算出されたことに注目されたい。
【0201】
さらに、以下実施例の目的は、連鎖球菌の同定である。
【0202】
スペクトルの平滑化
ノイズ除去前後の連鎖球菌を100%含む試料の吸収信号を示す図19について説明する(記録されたシグナル対平滑化シグナル)。
【0203】
ノイズ除去前後の連鎖球菌を100%含む試料のシグナルの一次導関数を示す図20について説明する(記録されたシグナル対平滑化シグナル)。
【0204】
吸収スペクトルの分割とその一次導関数
異なる試料(連鎖球菌とブドウ球菌の量が異なる)の吸収スペクトルの一次導関数が与えられる。この一次導関数は、例えば、選択された3つのセグメント(950cm−1から1200cm−1、1220cm−1から1380cm−1及び1710cm−1から1780cm−1)において与えられる。
【0205】
(シグナルと一次導関数の両方について区分けされた)セグメント全体は表5及び6にその相関とともに記載されている。
【0206】
連鎖球菌を100%含む対照試料(破線)と連鎖球菌を100%含む試料(実線)の吸収スペクトルの一次導関数及びそれに対応する統計的相関を示す図21−23について説明する。
【0207】
図21は、第1領域範囲950cm−1から1200cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。図22は、第2領域範囲1220cm−1から1380cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。図23は、第3領域範囲1710cm−1から1780cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。
【0208】
連鎖球菌を100%含む対照試料(破線)とブドウ球菌を100%含む試料(実線)の吸収スペクトルの一次導関数を示す図24−26について説明する。図はそれに対応する統計的相関をも示す。
【0209】
図24は、第1領域範囲950cm−1から1200cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。
【0210】
図25は、第2領域範囲1220cm−1から1380cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。
【0211】
図26は、第3領域範囲1710cm−1から1780cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。
【0212】
連鎖球菌を100%含む対照試料(破線)とブドウ球菌を50%と連鎖球菌を50%含む試料(実線)の吸収スペクトルの一次導関数を示す図27−29について説明する。図はそれに対応する統計的相関をも示す。
【0213】
図27は、第1領域範囲950cm−1から1200cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。
【0214】
図28は、第2領域範囲1220cm−1から1380cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。
【0215】
図29は、第3領域範囲1710cm−1から1780cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。
【0216】
連鎖球菌を100%含む対照試料(破線)とブドウ球菌を25%と連鎖球菌を75%含む試料(実線)の吸収スペクトルの一次導関数を示す図30−32について説明する。図はそれに対応する統計的相関をも示す。
【0217】
図30は、第1領域範囲950cm−1から1200cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。
【0218】
図31は、第2領域範囲1220cm−1から1380cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。
【0219】
図32は、第3領域範囲1710cm−1から1780cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。
【0220】
連鎖球菌を100%含む対照試料(破線)とブドウ球菌を75%と連鎖球菌を25%含む試料(実線)の吸収スペクトルの一次導関数を示す図33−35について説明する。図はそれに対応する統計的相関をも示す。
【0221】
図33は、第1領域範囲950cm−1から1200cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。
【0222】
図34は、第2領域範囲1220cm−1から1380cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。
【0223】
図35は、第3領域範囲1710cm−1から1780cm−1における対照試料及び試料の一次導関数を示す。
【0224】
スペクトルから抽出された特徴m
次に示す特徴は、ピーク波長、ピーク高さ及び幅、異なるピークの強度比、ピーク高さ比から抽出されたものである。このシグナル及びシグナルの一次導関数は、ある領域中では、検出対象の特定の細菌(すなわち、連鎖球菌)とその他の細菌(たとえば、ブドウ球菌)との間で前記特徴が相違するという事実に基づき、上述したセグメントに区分けされた。
【0225】
各々のセグメントの統計的相関m1及び重み付け係数
以下に示す表6では、各々のセグメントに対するシグナルの一次導関数の統計的相関m1を示す。波数範囲はcm−1であり、角かっこで示されている。表6には各々の重み付け係数も示されている。
【0226】
【表6】

【0227】
以下に示す表7では、各々のセグメントに対するシグナルの統計的相関m1を示す。波数範囲はcm−1であり、角かっこで示されている。表7には各々の重み付け係数も示されている。
【0228】
【表7】

【0229】
各々の特徴又は相関の重み付け係数は最尤法により決定された。
【0230】
表(6及び7)に示すように、相関1と相関4はシグナルとその一次導関数双方において最も大きな重み付け係数を有する。次に、これら相関について算出された境界を示す。
【0231】
境界の算出
上述したように、上記境界は、試料中の特定細菌の同定に最も重大な貢献を与えた特徴及び/又は相関に従って算出される。
【0232】
細菌を同定可能な2次元空間の境界を示す図36について説明する。この境界は細菌予測に重大な貢献を与えた2つの特徴又は相関、一次導関数から算出された相関1(990cm−1から1190cm−1の波数範囲間)及び相関2(1235cm−1から1363cm−1の波数範囲間)に基づいて算出された。同定する特定細菌は連鎖球菌である。
【0233】
上述したように、相関体積の境界と同様、その他の特徴は二次元ガウス分類または類似の方法により決定される。
【0234】
さらに、乾燥試料について図36が示すように、連鎖球菌が試料中に存在する場合には、試料の中の菌の存在の有無を光学的に検出または同定することが可能である。
【0235】
特徴又は相関が境界内にあるか否かの検査
いったん検出のための試料(たとえば、連鎖球菌を25%含む試料)が得られると、吸収信号が示され、一次導関数が算出されてデータが処理される。
【0236】
そして、その相関及び/または特徴に従って連鎖球菌が試料中に存在するかどうか決定される。図36に示される相関は第1および第4の相関である。
【0237】
図35に示すように、一次導関数の第4の相関(1720cm−1から1780cm−1の波数範囲から算出された相関)は−0.1936であり、一次導関数の第1の相関(990cm−1から1190cm−1の波数範囲から算出された相関)は0.90358である(図33)。
【0238】
再び図36についてみると、連鎖球菌の領域に点(−0.1936、0.90358)があることがわかる。このことより、連鎖球菌が試料内に存在することを患者に知らせることができる。
【0239】
ブドウ球菌を100%含む別の試料(すなわち、連鎖球菌でない試料)について確認する。
【0240】
図26に示すように、一次導関数の第4の相関(1720cm−1から1780cm−1の波数範囲から算出された相関)は−0.43181であり、一次導関数の第1の相関(990cm−1から1190cm−1の波数範囲から算出された相関)は0.89313である(図24)。
【0241】
そして、図36からは、ブドウ球菌の領域に点(−0.43181、0.89313)があることが観察される。このことより、連鎖球菌は試料内に存在しないことを患者に知らせることができる。
【0242】
特定の細菌の特徴mと相関m1の間の関連
以下の特徴及び相関は、表3及び990cm−1から1190cm−1、1235cm−1から1363cm−1の範囲における一次導関数相関由来の連鎖球菌のピーク1、2、9、12、13及び14に関連する。
【0243】
本願発明は、膜上のたった一つのタンパク質だけでなく、全体として細菌を検出することに注目されたい。
【0244】
さらに、この特定の実施例において、水の影響が除去されていないことに注目されたい。それゆえ、水の影響が除去されることなしに細菌を同定することは、本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法であって、
前記方法は、
a.前記無培養試料の吸収スペクトル(AS)を求める工程と、
b.前記特定の細菌についてのn次元体積の境界を、
i.前記特定の細菌を含む試料の少なくとも1つの吸収スペクトル(AS2)を求め、
ii.ピーク波長、ピーク高さと幅、異なるピークの強度比またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴x(前記xは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記AS2から抽出し、
iii.前記AS2の少なくとも1つの導関数を算出し、
iv.前記特徴xにより、前記AS2を幾つかのセグメントに区分けし、
v.前記セグメントの夫々の統計的相関y(前記yは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出し、
vi.n次元空間(nは、前記特徴xと前記統計的相関yの和に等しい。)を定義し、
vii.前記特徴xの夫々および前記統計的相関yの夫々を前記特定の細菌にアサインし、
viii.前記特徴xの夫々および/または前記統計的相関yの夫々について、前記n次元空間のn次元体積を定義するガウス分布を算出し、
ix.前記n次元体積の境界を、二次元ガウス分類法、k最近傍法、ベイズ分類法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された手法を用いて決定する
ことにより求める工程と、
c.前記ASを、
i.移動平均法、Savitzky‐Golay法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された異なる平滑化技術を用いてノイズを除去し、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、ピーク波長、異なるピークの強度比、またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m(前記mは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記ASから抽出し、
iii.前記特徴mにより、前記ASを幾つかのセグメントに区分けし、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m1(前記m1は、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する
ことによりデータ処理する工程と、
d.前記統計的相関m1および/または前記特徴mが前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する工程
からなることを特徴とする無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法。
【請求項2】
前記ASをデータ処理する前記工程(c)が、
i.前記ASのo次導関数(oは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)の少なくとも1つを算出し、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、異なるピークの強度比、ピーク波長またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m2を前記o次導関数から抽出し、
iii.前記特徴m2により、前記o次導関数を幾つかのセグメントに区分けし、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m3を算出し、
v.前記統計的相関m1および/または統計的相関m3および/または前記特徴mおよび/または特徴m2が前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する
工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法。
【請求項3】
前記セグメントの夫々の統計的相関関係を算出する前記工程が、ピアソンの相関係数を用いて実行されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法。
【請求項4】
化膿連鎖球菌、C群およびG群β溶血性連鎖球菌、コリネバクテリウム・ヘモリチカム、ジフテリアおよびウルセランス、淋菌、マイコプラズマ肺炎、エンテロコリチカ菌、結核菌、トラコーマクラミジアおよび肺炎クラミジア、百日咳菌、レジオネラ菌種、カリニ肺炎菌、ノカルジア、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、インフルエンザ菌、A群β溶血性連鎖球菌および黄色ブドウ球菌からなる群より選択された前記特定の細菌を選択する工程をさらに含む請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法。
【請求項5】
前記ASを求める前記工程が、
a.前記無培養試料に適応する少なくとも1つの光学セルを備え、
b.レーザ、ランプ、LED波長可変レーザ、単色光分光器からなる群より選択されたp光源(pは、1に等しいまたは1より大きい整数を意味し、前記p光源は、光を前記光学セルに放射するように構成される。)を備え、
c.前記無培養試料の分光学的データを受信する検出手段を備え、
d.異なる波長で前記p光源から光を前記光学セルに放射し、
e.前記検出手段によって前記光学セルから出射する前記光を集光して前記ASを求める
工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法。
【請求項6】
光を放射する前記工程が、紫外、可視、赤外、中間赤外、遠赤外およびテラヘルツの波長範囲で実行されることを特徴とする請求項5に記載の無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法。
【請求項7】
約3000cm−1から約3300cm−1および/または約850cm−1から約1000cm−1および/または約1300cm−1から約1350cm−1の領域における前記ASを分析することによって前記特定の細菌を検出する工程をさらに含む請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法。
【請求項8】
無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法であって、
前記方法は、
a.前記無培養試料の水の影響を含む吸収スペクトル(AS)を求める工程と、
b.前記特定の細菌についてのn次元体積の境界を、
i.前記特定の細菌を含む試料の少なくとも1つの吸収スペクトル(AS2)を求め、
ii.ピーク波長、ピーク高さと幅、異なるピークの強度比またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴x(前記xは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記AS2から抽出し、
iii.前記AS2の少なくとも1つの導関数を算出し、
iv.前記特徴xにより、前記AS2を幾つかのセグメントに区分けし、
v.前記セグメントの夫々の統計的相関y(前記yは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出し、
vi.n次元空間(nは、前記特徴xと前記統計的相関yの和に等しい。)を定義し、
vii.前記特徴xの夫々および前記統計的相関yの夫々を前記特定の細菌にアサインし、
viii.前記特徴xの夫々および/または前記統計的相関yの夫々について、前記n次元空間のn次元体積を定義するガウス分布を算出し、
ix.前記n次元体積の境界を、二次元ガウス分類法、k最近傍法、ベイズ分類法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された手法を用いて決定する
ことにより求める工程と、
c.前記水の影響を、
i.前記ASの範囲内の波数(x)の夫々での吸収強度(Sigwith water(x))を備え、
ii.前記ASを少なくとも2つの波数範囲に区分けし、
iii.前記少なくとも2つの波数範囲の範囲内の波数(x)の夫々での補正率(CF)を算出(CF(x))し、
iv.前記水(Sigwater only(x1))およびそれに対応する波数(x1)に最も影響される少なくとも1つの吸収強度を、前記ASから求め、
v.少なくとも1つの波数(x1)での前記水の少なくとも1つの補正率(CFwater only(x1))を算出し、
vi.前記少なくとも1つのSigwater only(x1)を前記少なくとも1つの波数(x1)での前記少なくとも1つのCFwaterで除算(Sigwater only(x1)/CFwater only(x1))し、
vii.前記工程(vi)の平均値(AVG[Sigwater only(x1)/CFwater only(x1)])を算出し、
viii.前記AVG[Sigwater only(x1)/CFwater only(x1)]に前記ASの範囲内の前記波数(x)の夫々についての前記CF(x)を乗算し、
ix.前記ASの範囲内の前記波数(x)の夫々での前記Sigwith water(x)から前記工程(viii)の結果を減算する
ことにより前記ASから除去する工程と、
d.前記ASを、
i.移動平均法、Savitzky‐Golay法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された異なる平滑化技術を用いてノイズを除去し、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、ピーク波長、異なるピークの強度比、またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m(前記mは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記ASから抽出し、
iii.前記特徴mにより、前記ASを幾つかのセグメントに区分けし、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m1(前記m1は、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する
ことにより前記水の影響なしにデータ処理する工程と、
e.前記統計的相関m1および/または前記特徴mが前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する工程
からなることを特徴とする無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法。
【請求項9】
前記ASを前記水の影響なしにデータ処理する前記工程(d)が、
i.前記ASのo次導関数(oは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)の少なくとも1つを算出し、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、異なるピークの強度比、ピーク波長またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m2を前記o次導関数から抽出し、
iii.前記特徴m2により、前記o次導関数を幾つかのセグメントに区分けし、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m3を算出し、
v.前記統計的相関m1および/または統計的相関m3および/または前記特徴mおよび/または特徴m2が前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する
工程をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法。
【請求項10】
前記セグメントの夫々の統計的相関関係を算出する前記工程が、ピアソンの相関係数を用いて実行されることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法。
【請求項11】
化膿連鎖球菌、C群およびG群β溶血性連鎖球菌、コリネバクテリウム・ヘモリチカム、ジフテリアおよびウルセランス、淋菌、マイコプラズマ肺炎、エンテロコリチカ菌、結核菌、トラコーマクラミジアおよび肺炎クラミジア、百日咳菌、レジオネラ菌種、カリニ肺炎菌、ノカルジア、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、インフルエンザ菌、A群β溶血性連鎖球菌および黄色ブドウ球菌からなる群より選択された前記特定の細菌を選択する工程をさらに含む請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法。
【請求項12】
前記ASを求める前記工程が、
a.前記無培養試料に適応する少なくとも1つの光学セルを備え、
b.レーザ、ランプ、LED波長可変レーザ、単色光分光器からなる群より選択されたp光源(pは、1に等しいまたは1より大きい整数を意味し、前記p光源は、光を前記光学セルに放射するように構成される。)を備え、
c.前記無培養試料の分光学的データを受信する検出手段を備え、
d.異なる波長で前記p光源から光を前記光学セルに放射し、
e.前記検出手段によって前記光学セルから出射する前記光を集光して前記ASを求める
工程をさらに含むことを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれかに記載の無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法。
【請求項13】
光を放射する前記工程が、紫外、可視、赤外、中間赤外、遠赤外およびテラヘルツの波長範囲で実行されることを特徴とする請求項12に記載の無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定する方法。
【請求項14】
無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定するように構成されたシステム1000であって、
前記システム1000は、
a.前記無培養試料の吸収スペクトル(AS)を求める手段100と、
b.前記特定の細菌についてのn次元体積の境界を求める手段であって、
i.前記特定の細菌を含む試料の少なくとも1つの吸収スペクトル(AS2)を求める手段201と、
ii.ピーク波長、ピーク高さと幅、異なるピークの強度比またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴x(前記xは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記AS2から抽出する手段202と、
iii.前記AS2の少なくとも1つの導関数を算出する手段203と、
iv.前記特徴xにより、前記AS2を幾つかのセグメントに区分けする手段204と、
v.前記セグメントの夫々の統計的相関y(前記yは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する手段205と、
vi.n次元空間(nは、前記特徴xと前記統計的相関yの和に等しい。)を定義する手段206と、
vii.前記特徴xの夫々および前記統計的相関yの夫々を前記特定の細菌にアサインする手段207と、
viii.前記特徴xの夫々および/または前記統計的相関yの夫々について、前記n次元空間のn次元体積を定義するガウス分布を算出する手段208と、
ix.前記n次元体積の境界を、二次元ガウス分類法、k最近傍法、ベイズ分類法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された手法を用いて決定する手段209
によって特徴づけられる統計処理手段200と、
c.前記ASをデータ処理する手段であって、
i.移動平均法、Savitzky‐Golay法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された異なる平滑化技術を用いてノイズを除去する手段301と、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、ピーク波長、異なるピークの強度比、またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m(前記mは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記ASから抽出する手段302と、
iii.前記特徴mにより、前記ASを幾つかのセグメントに区分けする手段303と、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m1(前記m1は、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する手段304
によって特徴づけられる手段300と、
d.前記統計的相関m1および/または前記特徴mが前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する手段400
からなることを特徴とするシステム1000。
【請求項15】
前記ASをデータ処理する前記手段300が、
i.前記ASのo次導関数(oは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)の少なくとも1つを算出する手段305と、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、異なるピークの強度比、ピーク波長またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m2を前記o次導関数から抽出する手段306と、
iii.前記特徴m2により、前記o次導関数を幾つかのセグメントに区分けする手段307と、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m3を算出する手段308と、
v.前記統計的相関m1および/または統計的相関m3および/または前記特徴mおよび/または特徴m2が前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する手段309
によってさらに特徴づけられた請求項14に記載のシステム1000。
【請求項16】
統計的相関関係を算出する前記手段308または304が、ピアソンの相関係数からなる群より選択されることを特徴とする請求項14または請求項15に記載のシステム1000。
【請求項17】
前記特定の細菌が、化膿連鎖球菌、C群およびG群β溶血性連鎖球菌、コリネバクテリウム・ヘモリチカム、ジフテリアおよびウルセランス、淋菌、マイコプラズマ肺炎、エンテロコリチカ菌、結核菌、トラコーマクラミジアおよび肺炎クラミジア、百日咳菌、レジオネラ菌種、カリニ肺炎菌、ノカルジア、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、インフルエンザ菌、A群β溶血性連鎖球菌および黄色ブドウ球菌からなる群より選択されることを特徴とする請求項14乃至請求項16のいずれかに記載のシステム1000。
【請求項18】
前記無培養試料の吸収スペクトル(AS)を求める前記手段100が、
a.前記無培養試料に適応する少なくとも1つの光学セルと、
b.レーザ、ランプ、LED波長可変レーザ、単色光分光器からなる群より選択されたp光源(pは、1に等しいまたは1より大きい整数を意味し、前記p光源は、異なる波長で光を前記光学セルに放射するように構成される。)と、
c.前記光学セルから出射する前記無培養試料の分光学的データを受信する検出手段
をさらに備えていることを特徴とする請求項14乃至請求項16のいずれかに記載のシステム1000。
【請求項19】
前記p光源が、紫外、可視、赤外、中間赤外、遠赤外およびテラヘルツからなる群より選択された波長範囲で光を放射するように構成されることを特徴とする請求項18に記載のシステム1000。
【請求項20】
無培養試料中の特定の細菌を検出するおよび/または同定するように構成されたシステム2000であって、
前記システム2000は、
a.前記無培養試料の水の影響を含む吸収スペクトル(AS)を求める手段100と、
b.前記特定の細菌についてのn次元体積の境界を求める手段であって、
i.前記特定の細菌を含む試料の少なくとも1つの吸収スペクトル(AS2)を求める手段201と、
ii.ピーク波長、ピーク高さと幅、異なるピークの強度比またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴x(前記xは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記AS2から抽出する手段202と、
iii.前記AS2の少なくとも1つの導関数を算出する手段203と、
iv.前記特徴xにより、前記AS2を幾つかのセグメントに区分けする手段204と、
v.前記セグメントの夫々の統計的相関y(前記yは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する手段205と、
vi.n次元空間(nは、前記特徴xと前記統計的相関yの和に等しい。)を定義する手段206と、
vii.前記特徴xの夫々および前記統計的相関yの夫々を前記特定の細菌にアサインする手段207と、
viii.前記特徴xの夫々および/または前記統計的相関yの夫々について、前記n次元空間のn次元体積を定義するガウス分布を算出する手段208と、
ix.前記n次元体積の境界を、二次元ガウス分類法、k最近傍法、ベイズ分類法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された手法を用いて決定する手段209
によって特徴づけられる統計処理手段200と、
c.前記水の影響を前記ASから除去する手段であって、
i.前記ASの範囲内の波数(x)の夫々での吸収強度(Sigwith water(x))を備える手段301と、
ii.前記ASを少なくとも2つの波数範囲に区分けする手段302と、
iii.前記少なくとも2つの波数範囲の範囲内の波数(x)の夫々での補正率(CF)を算出(CF(x))する手段303と、
iv.前記水(Sigwater only(x1))およびそれに対応する波数(x1)に最も影響される少なくとも1つの吸収強度を、前記ASから求める手段304と、
v.少なくとも1つの波数(x1)での前記水の少なくとも1つの補正率(CFwater only(x1))を算出する手段305と、
vi.前記少なくとも1つのSigwater only(x1)を前記少なくとも1つの波数(x1)での前記少なくとも1つのCFwaterで除算(Sigwater only(x1)/CFwater only(x1))する手段306と、
vii.前記工程(vi)の平均値(AVG[Sigwater only(x1)/CFwater only(x1)])を算出する手段307と、
viii.前記AVG[Sigwater only(x1)/CFwater only(x1)]に前記ASの範囲内の前記波数(x)の夫々についての前記CF(x)を乗算する手段308と、
ix.前記ASの範囲内の前記波数(x)の夫々での前記Sigwith water(x)から前記工程(viii)の結果を減算する手段309
を有する手段300と、
d.前記ASを前記水の影響なしにデータ処理する手段であって、
i.移動平均法、Savitzky‐Golay法またはこれらの組み合わせからなる群より選択された異なる平滑化技術を用いてノイズを除去する手段401と、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、ピーク波長、異なるピークの強度比、またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m(前記mは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を前記ASから抽出する手段402と、
iii.前記特徴mにより、前記ASを幾つかのセグメントに区分けする手段403と、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m1(前記m1は、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)を算出する手段404
によって特徴づけられる手段400と、
e.前記統計的相関m1および/または前記特徴mが前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する手段500
からなることを特徴とするシステム2000。
【請求項21】
前記ASを前記水の影響なしにデータ処理する前記手段400が、
i.前記ASのo次導関数(oは、1より大きいまたは1に等しい整数を意味する。)の少なくとも1つを算出する手段405と、
ii.ピーク幅、強度、幅/強度比、異なるピークの強度比、ピーク波長またはこれらの組み合わせからなる群より選択された特徴m2を前記o次導関数から抽出する手段406と、
iii.前記特徴m2により、前記o次導関数を幾つかのセグメントに区分けする手段407と、
iv.前記セグメントの夫々の統計的相関m3を算出する手段408と、
v.前記統計的相関m1および/または統計的相関m3および/または前記特徴mおよび/または特徴m2が前記n次元体積の範囲内である場合に、前記特定の細菌を検出するおよび/または同定する手段409
をさらに備えていることを特徴とする請求項20に記載のシステム2000。
【請求項22】
前記セグメントの夫々の統計的相関関係を算出する前記手段408および/または手段404が、ピアソンの相関係数からなる群より選択されることを特徴とする請求項20または請求項21に記載のシステム2000。
【請求項23】
前記特定の細菌が、化膿連鎖球菌、C群およびG群β溶血性連鎖球菌、コリネバクテリウム・ヘモリチカム、ジフテリアおよびウルセランス、淋菌、マイコプラズマ肺炎、エンテロコリチカ菌、結核菌、トラコーマクラミジアおよび肺炎クラミジア、百日咳菌、レジオネラ菌種、カリニ肺炎菌、ノカルジア、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、インフルエンザ菌、A群β溶血性連鎖球菌および黄色ブドウ球菌からなる群より選択されることを特徴とする請求項20乃至請求項22のいずれかに記載のシステム2000。
【請求項24】
前記無培養試料の吸収スペクトル(AS)を求める前記手段100が、
a.前記無培養試料に適応する少なくとも1つの光学セルと、
b.レーザ、ランプ、LED波長可変レーザ、単色光分光器からなる群より選択されたp光源(pは、1に等しいまたは1より大きい整数を意味し、前記p光源は、異なる波長で光を前記光学セルに放射するように構成される。)と、
c.前記光学セルから出射する前記無培養試料の分光学的データを受信する検出手段
をさらに備えていることを特徴とする請求項20乃至請求項23のいずれかに記載のシステム2000。
【請求項25】
前記p光源が、紫外、可視、赤外、中間赤外、遠赤外およびテラヘルツからなる群より選択された波長範囲で光を放射するように構成されることを特徴とする請求項24に記載のシステム2000。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公表番号】特表2010−523970(P2010−523970A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501667(P2010−501667)
【出願日】平成20年4月6日(2008.4.6)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000472
【国際公開番号】WO2008/122975
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(509276629)オプティカル ダイアグノスティックス エルティーディー. (1)
【Fターム(参考)】