説明

試料加工方法および試料加工プログラム

【課題】 本発明は、磁気ヘッド等の製造プロセスのチェックを行うための試料作成に関し、より詳細には集束イオンビームを照射して試料の表面の所望する位置に断面を露出する凹部加工を行う試料加工方法と試料加工プログラムに関する。
【解決手段】 本発明の試料加工方法は、試料の表面に形成された基準マーカーを検出して基準マーカーから基準位置を求める基準位置算出工程と、基準位置と断面形成所望位置との距離から所定値を差し引いた第1のオフセット値と基準位置と第1の加工パターンとに基づいてFIBを前記試料に照射して加工する第1加工工程と、基準位置と第1加工工程によって加工された試料の所望位置に近い断面をなす端部との間の距離を計測する計測工程と、計測された距離から所望位置までの未加工距離を求めその未加工距離に第1のオフセット値を加えた第2のオフセットと基準位置と第2の加工パターンとに基づいてFIBを前記試料に照射して加工する第2加工工程と、を有するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッドや半導体デバイス等の製造プロセスのチェックを行うための試料作成に関し、より詳細には集束イオンビーム(以降、FIB(Focused Ion Beam)と言う)を照射して試料の表面の所望する位置に断面を露出するように凹部の加工を行う試料加工方法と試料加工プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ヘッドや半導体デバイス等の製造においては、製造プロセスの要所にチェックポイントを設け、製造条件が適切であるか否かをチェックし、次工程以降に不良品を流さないようにしている。これらのチェックの中には、良/不良を分別するものとは別に、前工程である程度の加工条件の変動を認めて加工された製品をチェックし、そのチェック結果に基づいて現工程の加工条件を定めて加工を行うことが行われている。
【0003】
例えば、磁気ヘッドの製造においてはメッキにより形成された主磁極の先端部を所望の寸法となるようにイオンミリングにより主磁極の側面や上面を削ることが行われている。その際の削り量は、主磁極先端部の断面の寸法を計測して所望寸法との差を求め、その値からイオンミリングの条件(例えば、ミリング時間)を設定して加工することが行われている。
【0004】
このチェックは、ウェーハ上に形成した複数の磁気ヘッドや半導体デバイスの素子の中からサンプリングしてチェックが行われるが、断面を露出させるためにサンプリングした素子の所定箇所に凹部加工を施す必要がある。この凹部加工はFIBを利用した微細加工が可能なFIB装置が用いられる。
【0005】
FIB装置による加工は、ビーム電流やビーム形状、ビーム間の重なり等の加工条件の設定に加えて加工位置や加工パターン等をパラメータとして指定することにより加工を行うことが一般に行われている。加工パターンは予めFIB装置に登録でき、加工時にその加工パターンを呼び出して加工する。図11は、基板1上に形成され薄膜パターン2と、その薄膜パターン2の一部に凹部加工により断面を露出するための加工パターン3の例を示している。加工パターン3は上から見た形状が幅w、高さhの矩形で、この形状を登録しておく(より詳細には、加工パターンには中心位置や深さ方向の位置や加工条件の情報を持たせ、加工パターン名を付けて登録する)。FIB加工時にこのパターン名が呼び出されると、例えば加工パターン3では加工パターン3の上部の辺を指定された断面を露出する位置に合わせ、FIBの開始位置を算出し、図11の下の図に示す加工パターン3内を左下の位置からFIBが矢印のように走査して試料の加工を行う。
【0006】
また、FIB装置はイオンの照射により、試料から発生する二次イオンを電子信号に変換して試料の表面を表示する電子顕微鏡としての機能もある。この機能を利用し試料表面に予め定めた基準マーカを形成しておき、基準マーカを検出して基準位置を求めることもできる。
【0007】
また、FIB装置はユーザによって一連の加工手順をプログラミング可能とするユーザインターフェースを備えている。前述したチェックのためにウェーハ上の所望する位置に断面が露出するように凹部加工を行う場合は、例えばオペレータが加工パターンと断面を露出させたい位置(基準位置からの距離であり、オフセット値と呼ぶ)を指定すると、FIB装置はまずウェーハ上の基準マーカを検出して基準位置を求め、この基準位置とオペレータから指定された加工パターンとオフセット値とに基づいて加工を行うようプログラムすることができる。また、このようなプログラムを加工レシピとして登録しておき、この加工レシピを指定することで一連の加工を行うこともできる。
【0008】
図12は、従来行っている主磁極先端部の断面を露出させるFIB加工の例を示すものである。図12(a)はウェーハ上に形成したチェック対象の主磁極10と基準マーカー20、21、および断面を露出させる位置AA’示している。図12(b)は、凹部加工に当たって、加工する箇所にデポジション膜30を生成した例を示している。この状態で、まず基準マーカー20、21を検知し、その基準マーカー20、21を基に基準位置(例えば、2つの基準マーカーの中心位置)を求める。そして、オペレータから入力された基準位置からAA’までの距離と予め登録してある加工パターンからオペレータが指定した加工パターンを用いて、図12(c)に示すFIBを照射して凹部を形成する加工を行う(矢印はFIBのイオン照射の方向を示す)。FIB加工により、主磁極先端の断面11が露出していることが判る。
【0009】
上記の基準位置、オペレータから入力された断面を露出させる位置および加工パターンを図13の平面図で説明する。図13において、基準位置22は図13の「×」印に示す2つの基準パターン20、21の中心位置であり、断面の露出位置AA’は、基準位置22からの距離「T」にある。加工パターン100は例えば図11に示されるものであり、FIBが基準位置22の方から断面の露出位置AA’まで加工パターン100内を走査しながら加工する。加工パターン100上に描いた矢印は、FIBにより加工される方向を示している。
【0010】
FIB装置による試料加工方法における提案がなされている(特許文献1)。これは、試料から離れた位置より試料と並行する一定長さのイオンビームを照射し、予め定めた深さになったとき徐々にイオンビームを試料に近づけ加工することを特徴とするものである。イオンビームが試料に近づく速度を制御することにより加工形状の均一化と形状変化や破損を防止できる、とするものである。
【特許文献1】特開2005−172565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記に述べたように、磁気ヘッドや半導体デバイス等の製造において、ウェーハに凹部加工を行って膜形成された素子の断面寸法をチェックすることが行われている。この場合に、凹部加工により露出する断面位置に高い精度が要求される場合がある。例えば、磁気ヘッドの主磁極の浮上面となる位置の断面を求め、その位置の主磁極断面寸法をチェックするような場合である。
【0012】
FIB装置は装置の使用に伴ってイオンビームを発生するイオン源やビームの絞りを行う部材等の消耗があり、消耗の程度に応じて少しずつ変動し、常に一定位置に加工することは不可能であった。このため、従来では試し加工を行い、試し加工後の加工量を計測して指定した位置と加工された位置との差分を求め、その差分を考慮して本番の加工を行うようにしていた。1回の試し加工で所望する位置に加工がなされなかった場合は再度試し加工を行っていた。磁気ヘッドの製造において、上述の寸法チェックは完成までに数回行うことが必要であり、試し加工とその確認に多大の時間を要していた。
【0013】
本発明は、FIB加工において指定した位置に正確に凹部加工を行う試料加工方法および試料加工プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)第1の発明
第1の発明の試料加工方法は、集束イオンビームにより所望位置に試料の断面を露出する凹部加工を行う試料加工方法であり、図1に示すように基準位置算出工程10、第1加工工程20、計測工程30および第2加工工程40とから構成する。図1は、各工程の流れを示すと共に、工程に入る前の基板の状態と工程を実施した後の基板の状態とを示している。各工程の内容は以下に示す通りである。
【0015】
基準位置算出工程10は、試料の表面に形成された基準マーカーまたは所定の形状を検出して、その基準マーカーまたは形状から基準位置を求める。
【0016】
第1加工工程20は、第1のオフセット値と、基準位置と、第1の加工パターンとに基づいてFIBを試料に照射して加工する。第1オフセット値は基準位置と所望位置との間の距離から所定値を差し引いたもの、第1の加工パターンは凹部加工形状とFIB加工条件の情報を含むものである。
【0017】
計測工程30は、基準位置と第1加工工程によって加工された試料の所望位置に近い断面をなす端部との間の距離を計測する。
【0018】
第2加工工程40は、第2のオフセットと、基準位置と、第2の加工パターンとに基づいてFIBを試料に照射して加工する。第2のオフセットは、計測された距離を基に、前記の端部から所望位置までの未加工距離を求め、該未加工距離に前記第1のオフセット値を加えたものである。また、第2の加工パターンは、凹部加工形状とFIB加工条件の情報を含むものである。
(2)第2の発明
第2の発明の試料加工方法は、第1加工工程の所定値がFIBの加工誤差に基づいて定められ、第1のオフセット値はその所定値の少なくとも10倍以上の値である、ことを特徴とする。
【0019】
FIBの加工誤差は予め計測により求められている既知の誤差で、所定値はこの加工誤差を考慮してその値を定め、第1のオフセット値はその所定値の少なくとも10倍以上の値とする。10倍以上の値とすることで、第1オフセット値は所定値より充分大きな値となる。
(3)第3の発明
第3の発明の試料加工方法は、第1と第2の発明の第1加工工程と第2加工工程とを経て試料が加工される形状が、上面が矩形で、その矩形の断面を露出する辺は試料の表面から垂直に所定深さの断面となる面を形成し、その面の底辺から矩形の断面を露出する辺に対向する辺に向かって傾斜する面が形成される、ことを特徴とする。
(4)第4の発明
第4の発明の試料加工方法は、第1から第3の発明の試料が、薄膜素子が形成されたウェハーである、ことを特徴とする。
(5)第5の発明
第5の発明の試料加工プログラムは、集束イオンビームにより所望位置に試料の断面を露出する凹部加工を行う試料加工プログラムであり、コンピュータを加工パターン記憶手段、加工情報取得手段、基準位置算出手段、第1加工手段、計測手段および第2加工手段として機能させるものである。
【0020】
加工パターン記憶手段は、凹部加工形状とFIB加工条件の情報を含む加工パターンを記憶部に登録する。
【0021】
加工情報取得手段は、基準位置から所望位置までの距離と、記憶部から選択された第1の加工パターンと第2の加工パターンとを取得する。
【0022】
基準位置算出手段は、試料の表面に形成された基準マーカーまたは所定の形状を検出して、その基準マーカーまたは形状から基準位置を求める。
【0023】
第1加工手段は、加工情報取得手段で取得した距離から所定値を差し引いた第1のオフセット値と、基準位置と、第1の加工パターンとに基づいてFIBを試料に照射して加工する。
【0024】
計測手段は、基準位置と第1加工工程によって加工された試料の所望位置に近い断面をなす端部との間の距離を計測する。
【0025】
第2加工手段は、計測された距離を基に、前記の端部から所望位置までの未加工距離を求め、その未加工距離に第1のオフセット値を加えた第2のオフセット値と、基準位置と、第2の加工パターンとに基づいてFIBを試料に照射して加工する。
【発明の効果】
【0026】
上述した本発明によれば、次に示す効果が得られる。
【0027】
第1の発明により、1回目の加工によって生じたFIBの変動を2回目の加工で吸収できるので、正確な位置に断面を露出できる試料加工方法を提供できる。
第2の発明により、1回目のFIB加工で全体で行う加工の大部分を行い、残りの僅かの部分を2回目のFIB加工としたので、より2回目のFIB加工が1回目の加工で生じるFIBの変動分を吸収でき、正確な位置に断面を露出できる試料加工方法を提供できる。
第3の発明により、断面寸法チェックの計測は断面の斜めからイオンあるいは電子のビームを照射して行うので、加工形状をチェックに必要とする部分のみの加工となり、第1と第2の発明の効果に加えて更に加工時間の短縮が図れる。
【0028】
第4の発明により、第1から第3の発明の試料が薄膜素子を形成したウェハーとしたので、この形態の試料加工に最適な加工方法を提供できる。
【0029】
第5の発明により、第1と同様の効果を奏する試料加工プログラムの提供ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施形態を磁気ヘッドの主磁極の例で図2から図10を用いて説明する。
【0031】
最初に本発明による試料加工方法を、図2と図3を用いて説明する。図2は従来技術による加工例で説明した図13に対応させたもので、図13と同一のものは同じ符号を付けている。
【0032】
まず図2(a)において、ウェーハ上には主磁極10と基準マーカー20、21とが形成されており、その主磁極10の断面を露出する部分にデポジション膜30を生成しておく。デポジション膜30は堆積性ガス(デポガス)にFIBを照射してその反応によりタングステンやカーボン等の膜を局所的に生成する。デポジション膜30を形成する目的は、FIBによる加工部周辺の不要なエッチングを防止することにある。
【0033】
オペレータからは、加工パターンと断面を露出させる基準位置からの距離(図2のTで、以降「距離T」という)を含んだ加工レシピが指定され、この加工レシピに基づいて加工を行うものとする(記憶部には予め複数の加工レシピが登録されている)。加工レシピの指定によって選択された加工パターンは、第1加工パターン200と第2加工パターン300の2つの加工パターンである。後述するが、第1加工パターン200は1次加工に用い、第2加工パターン300は2次加工に用いる。また、第1加工パターン200は第1の発明の「第1の加工パターン」に、第2加工パターン300は「第2の加工パターン」に相当する。
【0034】
オペレータから上記の指定を受けると、ウェーハ上の基準マーカー20、21を検知し、基準位置22を求める。指定された断面を露出させる距離Tから予め定めた所定値をマイナスした値(図2のF)を算出し、この値を第1オフセット値として第1加工パターン200により1次加工を行う。図2(a)は、基準位置22と第1オフセット値と第1次加工パターン200とに基づいてFIB加工している状態(1次加工)を示している。なお、加工パターンで加工する基準マーカーに対する位置の方向は、予め決められているものとする(例えば、2つの基準マーカーは常に水平に配置しておき、露出する断面はその水平の基準マーカーの上部の方向に形成するものとする)。
【0035】
なお、第1オフセット値は所定値に較べて充分大きい値である。また、第1オフセット値は、第1の発明の「第1のオフセット値」に相当する。
【0036】
1次加工が終了すると、加工された凹部の断面露出位置に近い端部から距離Tの位置までの未加工距離(図2(b)のE)を求める。具体的には、第1オフセット値によって加工された前述の端部の位置を基準位置22から計測し(図2(b)の「F’」)、Tからその計測値(F’)を差し引いて未加工距離Eを求める。そして、このようにして求めた未加工距離Eに第1オフセット値Fを加えた値(即ち、F+E)を第2オフセット値として算出する。第2オフセット値は、第1の発明の「第2のオフセット値」に相当する。
【0037】
続いて、基準位置22と第2オフセット値と第2加工パターン300とに基づいてFIB加工(2次加工)を行う。図2(c)は、この2次加工の状態を示しており、加工された凹部の断面は、オペレータから指定された断面露出位置Tに正確に加工される。
【0038】
図3は、以上に述べた基準位置22に対するオフセット値や指定距離、加工距離との関係をまとめて示すものである。図3の(1)は基準位置から断面露出位置までの距離(距離T)、(2)は距離Tから所定距離を指し引いた第1オフセット値、(3)は第1オフセット値で実際に加工された距離、(4)は未加工距離、(5)は第2オフセット値、即ちF+E、そして(6)は第2オフセット値で加工された距離である。
【0039】
次に、図3で示したオフセット値に対して実際に加工された距離の実例を図4に示す。図4のX軸はウェーハNo.で1〜100までのウェーハを時系列に並べたものである。Y軸は、各ウェーハに対して定めた1点の第1オフセット値と第2オフセット値、およびそのオフセット値に対するそれぞれの加工距離を、断面を露出させたい所望加工位置を基準(0.00)として示している。図4のデータは下から、第1オフセット値、第1オフセット値に対する加工距離、第2オフセット値、第2オフセット値に対する加工距離である。オフセット値と加工距離の差がFIB加工の変動分となり、図4に示された変動はオフセット値に対して加工距離はプラス側に変動している。
【0040】
図4では、1次加工のオフセット値(即ち第1オフセット値)を所望加工位置から−0.29μm(第1の発明の所定値に相当)としたものである。これに対する加工距離の平均値は−0.21μmであり、その最大最小のレンジは0.05μmであった。即ち、図4に示す例のFIBの位置誤差は平均で+0.08μm(0.29μm−0.21μm)で、最大値で+0.11μmを示している(所定値は少なくともこの位置誤差の最大値以上あることと、FIBの加工径を考慮し、且つ第1オフセット値が所定値より充分大きくなることを考慮してここでは−0.29μmとした)。
【0041】
そして、この第1オフセット値に対する加工距離の変動を踏まえて、本発明に示す方法で求めた第2オフセット値で加工した加工距離の平均値は0.00、最大最小のレンジは0.03μmであり、FIBの変動を吸収して高い精度で断面を露出させる加工がなされていることが確認できた。
【0042】
本発明の試料加工方法は、FIB装置のコンピュータに試料加工プログラムを搭載し実際の加工に適用することができる。図5は、その実施形態を示すもので、FIB装置500は、FIB加工のデータを処理するデータ処理部600、FIBを照射し試料の加工を行うFIB加工部700、オペレータからの指示を取得する入力部800およびオペレータに対し情報入力の指示や処理状況を表示する表示部900から構成する。
【0043】
更にデータ処理部600は、全体を制御する制御部610、試料加工プログラムを搭載し、プログラムの実行を行う主メモリ620、複数の加工レシピを記憶する加工レシピ記憶部630、入力部800と表示部900を制御する入出力制御部640、試料加工プログラムによって処理されたデータに基づいてFIBの制御を行うFIB加工制御部650、指定されたエリアにデポジション膜を生成するデポジション加工制御部660、および基準マーカーを検出したり距離を計測する表面観察/計測部670から構成する。なお、FIBの加速電圧やビーム電流、フォーカス等FIB装置として必要な機能は備えているが、これらは本発明に直接関係しないので説明を省略している。
【0044】
次に、図5に示した試料加工プログラムの処理フローの例について図6を用いて説明する。試料であるウェーハには薄膜素子と共に基準マーカーが形成されているものとする。
【0045】
まず、試料加工プログラムはオペレータに加工レシピの指定を促し、オペレータが入力部800から入力(指定)した加工レシピ名を取得する。取得した加工レシピ名に基づいて加工レシピ記憶部630に記憶している加工レシピの情報(第1加工パターン、第2加工パターン、距離Tを含む情報)を取り出す(S100、S110)。
【0046】
表面観察/計測部670を介してウェーハ上の基準マーカーを検出し、基準位置22をを求める。デポジション加工制御部660を介して、この基準位置22とオペレータから取得した距離Tとを基に堆積ガスを噴射しFIBを照射してデポジション膜を生成する(S120、S130)。
【0047】
距離Tから所定値(例えば、0.29μm)差し引いた値を第1オフセット値とする。基準位置22と第1オフセット値および第1加工パターンの各データをFIB加工制御部650に渡してFIB加工を行う。即ち、1次加工を実施する(S140、S150)。
【0048】
1次加工が終了すると、基準位置22から最も断面露出位置に近く加工された端部までの距離(図2のF’)を表面観察/計測部670を介して計測する(S160)。
【0049】
オペレータから取得した距離Tから距離F’を差し引き、未加工距離(図2のE)を求める(即ち、E=T−F’)。この値に第1オフセット値を加えた値を第2オフセット値とする(即ち、F+E)。基準位置22と第2オフセット値および第2加工パターンの各データをFIB加工制御部650に渡してFIB加工を行う。即ち、2次加工を実施する(S170、S180)。
【0050】
以上により、ウェーハ上の所望の位置に凹部加工を施しチェックしたい薄膜素子の断面を露出させることができる。断面を露出させた以降は、従来行っていた方法で薄膜素子の断面形状をチェックのため計測することになる。
【0051】
断面を露出させる加工位置の精度を、本発明と従来技術との方法による結果を図7と図8に示す。図7は、本発明による結果で、加工位置のバラツキ3σは11nmである。これに対し、図8は従来技術によるもので3σは28nmであり、本発明による効果が確認された。
【0052】
以上に述べた第1加工パターンを、粗加工用の加工パターンと仕上げ加工用の加工パターンの2つを組み合わせるようにしてもよい。図9は、その例を示すもので、図9(a)が粗加工による加工パターンで加工している状態を示している。この場合、粗加工用の加工パターンは1次オフセット値より手前の距離Rまでを加工し、図9(b)に示す仕上げ加工用の加工パターンによる加工は、距離Rから第1オフセット値のFまでを加工するようにしている。以降の図9(c)、(d)は前述と同様である。このようにすることで、加工時間を短時間化することができる。また、第2加工パターンを、第1加工パターンと同一のものとしてもよい。
【0053】
また、FIBによる凹部の深さの形状を基準位置側から断面を露出させる位置に向かって深くなるように傾斜が付くように加工してよい。図10(a)はこのように加工する加工パターンの例を示したものである(図11の下方に示した加工パターン3の図に相当する)。FIBは図10(a)の左下を開始位置として矢印に示すように走査させるが、そのとき1つの走査が終わって次の走査に移るとFIBの照射時間を前の走査より多くする(図10(a)の矢印の太さが照射時間の長さを示している)。このようにすることで、深さ方向に傾斜を付けた加工ができる。傾斜角度は、例えば45°である。傾斜のある加工を行った例を図10(b)に示す。薄膜素子の断面11の計測は斜めからイオンビームや電子ビームを照射して計測するので、このように傾斜した加工を行うことで不要な加工に加工時間を要すことがなくなる。
【0054】
また、本実施形態では基準位置を求めるためにウェーハ上に形成した基準マーカーを用いるようにしたが、この基準マーカーに代えてウェーハ上に形成している特定の形状のパターンを用いるようにしてもよい。
【0055】
上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
集束イオンビーム(FIB)により所望位置に試料の断面を露出する凹部加工を行う試料加工方法であって、
前記試料の表面に形成された基準マーカーを検出して該基準マーカーから基準位置を求める基準位置算出工程と、
前記基準位置と前記所望位置との間の距離から所定値を差し引いた第1のオフセット値と、該基準位置と、凹部加工形状とFIB加工条件の情報を含む第1の加工パターンとに基づいてFIBを前記試料に照射して加工する第1加工工程と、
前記基準位置と前記第1加工工程によって加工された試料の前記所望位置に近い断面をなす端部との間の距離を計測する計測工程と、
前記計測された距離を基に、前記端部から前記所望位置までの未加工距離を求め、該未加工距離に前記第1のオフセット値を加えた第2のオフセット値と、前記基準位置と、凹部加工形状とFIB加工条件の情報を含む第2の加工パターンとに基づいてFIBを前記試料に照射して加工する第2加工工程と
を有することを特徴とする試料加工方法。
(付記2)
前記所定値は前記FIBの加工誤差に基づいて定め、前記第1のオフセット値は該所定値の少なくとも10倍以上の値である
ことを特徴とする付記1に記載の試料加工方法。
(付記3)
前記第1加工工程と前記第2加工工程とを経て前記試料が加工される形状は、上面が矩形で、該矩形の断面を露出する辺は該試料の表面から垂直に所定深さの断面となる面を形成し、該面の底辺から該矩形の断面を露出する辺に対向する辺に向かって傾斜する面が形成される
ことを特徴とする付記1または付記2に記載の試料加工方法。
(付記4)
前記試料は、薄膜または厚膜素子が形成されたウェハーである
ことを特徴とする付記1乃至付記3に記載の試料加工方法。
(付記5)
集束イオンビーム(FIB)により所望位置に試料の断面を露出する凹部加工を行う試料加工プログラムであって、
コンピュータに、
凹部加工形状とFIB加工条件の情報を含む加工パターンを記憶部に登録する加工パターン記憶手段と、
基準位置から前記所望位置までの距離と、前記記憶部から選択された第1の加工パターンと第2の加工パターンとを取得する加工情報取得手段と、
前記試料の表面に形成された基準マーカーを検出して該基準マーカーから基準位置を求める基準位置算出手段と、
前記加工情報取得手段で取得した距離から所定値を差し引いた第1のオフセット値と、前記基準位置と、前記第1の加工パターンとに基づいてFIBを前記試料に照射して加工する第1加工手段と、
前記基準位置と前記第1加工工程によって加工された試料の前記所望位置に近い断面をなす端部との間の距離を計測する計測手段と、
前記計測された距離を基に、前記端部から前記所望位置までの未加工距離を求め、該未加工距離に前記第1のオフセット値を加えた第2のオフセット値と、前記基準位置と、前記第2の加工パターンとに基づいてFIBを前記試料に照射して加工する第2加工手段
として機能させるための試料加工プログラム。
(付記6)
前記第1の加工パターンは、粗加工後に仕上げ加工を行う
をことを特徴とする付記1乃至付記4に記載の試料加工方法。
(付記7)
前記第1の加工パターンと前記第2の加工パターンとは同一である
をことを特徴とする付記6に記載の試料加工方法。
(付記8)
前記第1加工工程は、前記試料の加工に先立って少なくとも前記所望位置にデポジション加工を行い、デポジション膜を生成する
をことを特徴とする付記1乃至付記4に記載の試料加工方法。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の原理図である。
【図2】本発明によるFIB加工の実施形態である。
【図3】基準位置からのオフセット値と実加工距離である。
【図4】オフセット値に対する加工距離の例である。
【図5】試料加工プログラムのFIB装置搭載例である。
【図6】試料加工プログラムの処理フロー例である。
【図7】本発明による断面位置の加工位置精度である。
【図8】従来技術による断面位置の加工位置精度である。
【図9】本発明による粗加工と仕上加工の組み合わせ例である。
【図10】本発明による傾斜加工例である。
【図11】従来技術における加工パターンの形状例である。
【図12】従来技術におけるウェーハへのFIB加工例(その2)である。
【図13】従来技術におけるウェーハへのFIB加工例(その2)である。
【符号の説明】
【0057】
1 基板
2 薄膜パターン
3 加工パターン
10 磁気ヘッド主磁極
11 主磁極の浮上面
20 基準マーカー
21 基準マーカー
22 基準位置
30 デポジション膜
100 加工パターン
200 第1加工パターン
201 第1加工パターンの粗加工用加工パターン
202 第1加工パターンの仕上工用加工パターン
300 第2加工パターン
500 FIB装置
600 データ処理部
610 制御部
620 主メモリ
630 加工レシピ記憶部
640 入出力制御部
650 FIB加工制御部
660 デポジション加工制御部
670 表面観察/計測部
700 FIB加工部
800 入力部
900 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束イオンビーム(FIB)により所望位置に試料の断面を露出する凹部加工を行う試料加工方法であって、
前記試料の表面に形成された基準マーカーまたは所定の形状を検出して、該基準マーカーまたは該形状から基準位置を求める基準位置算出工程と、
前記基準位置と前記所望位置との間の距離から所定値を差し引いた第1のオフセット値と、該基準位置と、凹部加工形状とFIB加工条件の情報を含む第1の加工パターンとに基づいてFIBを前記試料に照射して加工する第1加工工程と、
前記基準位置と前記第1加工工程によって加工された試料の前記所望位置に近い断面をなす端部との間の距離を計測する計測工程と、
前記計測された距離を基に、前記端部から前記所望位置までの未加工距離を求め、該未加工距離に前記第1のオフセット値を加えた第2のオフセット値と、前記基準位置と、凹部加工形状とFIB加工条件の情報を含む第2の加工パターンとに基づいてFIBを前記試料に照射して加工する第2加工工程と
を有することを特徴とする試料加工方法。
【請求項2】
前記所定値は前記FIBの加工誤差に基づいて定め、前記第1のオフセット値は該所定値の少なくとも10倍以上の値である
ことを特徴とする請求項1に記載の試料加工方法。
【請求項3】
前記第1加工工程と前記第2加工工程とを経て前記試料が加工される形状は、上面が矩形で、該矩形の断面を露出する辺は該試料の表面から垂直に所定深さの断面となる面を形成し、該面の底辺から該矩形の断面を露出する辺に対向する辺に向かって傾斜する面が形成される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の試料加工方法。
【請求項4】
前記試料は、薄膜または厚膜素子が形成されたウェハーである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の試料加工方法。
【請求項5】
集束イオンビーム(FIB)により所望位置に試料の断面を露出する凹部加工を行う試料加工プログラムであって、
コンピュータに、
凹部加工形状とFIB加工条件の情報を含む加工パターンを記憶部に登録する加工パターン記憶手段と、
基準位置から前記所望位置までの距離と、前記記憶部から選択された第1の加工パターンと第2の加工パターンとを取得する加工情報取得手段と、
前記試料の表面に形成された基準マーカーまたは所定の形状を検出して、該基準マーカーまたは該形状から基準位置を求める基準位置算出手段と、
前記加工情報取得手段で取得した距離から所定値を差し引いた第1のオフセット値と、前記基準位置と、前記第1の加工パターンとに基づいてFIBを前記試料に照射して加工する第1加工手段と、
前記基準位置と前記第1加工工程によって加工された試料の前記所望位置に近い断面をなす端部との間の距離を計測する計測手段と、
前記計測された距離を基に、前記端部から前記所望位置までの未加工距離を求め、該未加工距離に前記第1のオフセット値を加えた第2のオフセット値と、前記基準位置と、前記第2の加工パターンとに基づいてFIBを前記試料に照射して加工する第2加工手段
として機能させるための試料加工プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−276300(P2009−276300A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130141(P2008−130141)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】