説明

試料液の脱気方法及び光学測定方法

【課題】測定セル内に収容された試料液中の気泡を安定して除去することができる試料液の脱気方法及び光学測定方法を提供する。
【解決手段】試料液収容室、排気口、試料液供給路、試料液採取口、試料液供給路内に設けられた吸水膨張剤、及び試料液供給路内に設けられ吸水膨張剤の膨張により試料液供給路を塞ぐ試料液供給路封止部材を備える測定セル、並びに測定セルが取付けられる測定セル取付部、及び測定セルの排気口を通じて試料液収容室内の気体を吸引する吸引部を備える脱気装置を用い、吸引部を用いて試料液収容室内に試料液を供給し、試料液と接触した吸水膨張剤が膨張して試料液供給路封止部材が試料液供給路を塞ぐまで待機し、試料液供給路封止部材が試料液供給路を塞いだ状態で、吸引部を用いて試料液収容室内を減圧状態にして、試料液内の気泡を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料液中に含まれる気泡を除去するための脱気方法および試料液中に含まれる気泡を除去した後に試料液の光学特性を測定するための光学測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、臨床検査分野で血液や尿のような生体試料を測定する機器として、大規模自動化機器やPOCT(Point of Care Testing)機器などが主に使用されている。
【0003】
大規模自動化機器は、病院の中央臨床検査部門もしくは臨床検査受託業務を中心とする会社に設置されており、多数の患者の検体を多項目にわたり検査することができるものである。例えば、日立製作所製の大型自動化機器(型番7170)は最大36項目について毎時800テストの検査を完了することができる。従ってこれら大規模自動化機器は、多くの被験者を抱える病院等において検査の効率化に大きく貢献している。
【0004】
一方、POCT機器とは、病院の検査室や検査センターを除く医療現場で行われる臨床検査において用いられる機器を示し、在宅医療において用いられる機器として開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
POCT機器の例としては、血糖センサ、妊娠診断薬、排卵検査薬、HbA1c−微量アルブミン測定機器(例えば、バイエル製DCA2000)等が挙げられる。これらのPOCT機器は、大規模自動化機器に比較して汎用性には乏しいが、ある病態に特異的なマーカー物質にフォーカスして、当該マーカー物質を簡易、迅速に測定することができるため、被験者のスクリーニングおよびモニタリングに効果的である。また、POCT機器は、小型であるため携帯性に優れて低コストで採取でき、さらに操作性においても特に専門性を必要とせず誰にでも使用することができる。これらの特徴からPOCT機器は病院の検査部門等を除く医療現場において広く用いられるようになってきた。
【0006】
試料液が気泡を発生しやすい成分を含んでいる場合や試料液と試薬とを撹拌するときに気泡が発生した場合、光学測定装置の測定セル内に収容された試料液中で発生した気泡が、測定セルの内壁に付着したりすることにより測定セル内に滞留することがある。気泡が測定セル内に滞留した状態で光学測定を行うと、測定セル内で測定光の散乱等が起ることにより正確に被検物質の濃度を測定することができなくなるため、光学測定の前に、測定セル内の気泡を除去することが行われている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3には、アスピレータにより試料液を測定セル内に導入する装置において、アスピレータが作動している状態で測定セルの入口側の電磁バルブを閉じることにより、測定セル内への試料液の導入を止めるとともに、測定セル内を減圧状態にして測定セル内の気泡を除去することが開示されている。
【0007】
一方、光学測定装置に用いられる測定セルの試料液供給路を塞ぐために、吸水膨張剤を用いることが提案されている(例えば、特許文献4参照)。特許文献4には、測定セルの試料液供給路である注射針の内壁に、水を吸収することにより膨張するポリマーを塗布することにより塗膜を形成しておくことが開示されている。注射針の内部を通過して測定セル内に試料液が供給された後、試料液中の水分によって塗膜が膨張することにより注射針の内部が塞がれる。
【特許文献1】特開平07−248310号公報
【特許文献2】特開平03−046566号公報
【特許文献3】特開2002−131222号公報
【特許文献4】特開2004−093536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献3に記載の装置で用いられている電磁バルブに代えて特許文献4に記載の吸水膨張剤を用いた場合、測定セル内を減圧状態にするときに、試料液供給路を塞いでいる吸水膨張剤が圧力により破損するおそれがあった。
【0009】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑み、測定セル内を減圧状態にすることにより測定セル内に収容された試料液中の気泡を安定して除去することができる試料液の脱気方法及び光学測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、本発明の試料液の脱気方法は、試料液を収容する試料液収容室と、
前記試料液収容室と連通する排気口と、
前記試料液収容室と連通し、前記試料液を前記試料液収容室に供給するための試料液供給路と、
前記試料液供給路と連通し、前記試料液を採取するための試料液採取口と、
前記試料液供給路内に設けられ、前記試料液と接触することにより前記試料液供給路を塞ぐように膨張する吸水膨張剤と、
前記試料液供給路内であって前記吸水膨張剤よりも前記試料液収容室に近い位置に設けられ、前記吸水膨張剤の膨張に伴って前記試料液供給路内を移動し、前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞ぐ試料液供給路封止部材とを備える測定セル、及び
前記測定セルが着脱自在に取付けられる測定セル取付部と、
前記測定セル取付部に取付けられた前記測定セルの前記排気口を通じて前記試料液収容室内の気体を吸引するための吸引部とを備える脱気装置を用い、
(A)前記吸引部を用いて前記試料液収容室内の気体を排気することにより、前記試料液採取口から前記試料液供給路を通して前記試料液収容室内に前記試料液を供給する工程、
(B)前記試料液供給路内において前記試料液と接触した前記吸水膨張剤が膨張して前記試料液供給路封止部材を移動させることにより、前記試料液供給路封止部材が前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞ぐまで待機する工程、及び
(C)前記試料液供給路封止部材が前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞いだ状態において、前記吸引部を用いて前記試料液収容室内を減圧状態にすることにより、前記試料液内の気泡を除去する工程を含む。
【0011】
また、本発明の試料液の光学測定方法は、試料液を収容する試料液収容室と、
前記試料液収容室内に設けられ、前記試料液中の被検物質と反応する試薬と、
前記試料液収容室と連通する排気口と、
前記試料液収容室と連通し、前記試料液を前記試料液収容室に供給するための試料液供給路と、
前記試料液供給路と連通し、前記試料液を採取するための試料液採取口と、
前記試料液供給路内に設けられ、前記試料液と接触することにより前記試料液供給路を塞ぐように膨張する吸水膨張剤と、
前記試料液供給路内であって前記吸水膨張剤よりも前記試料液収容室に近い位置に設けられ、前記吸水膨張剤の膨張に伴って前記試料液供給路内を移動し、前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞ぐ試料液供給路封止部材とを備える測定セル、及び
前記測定セルが着脱自在に取付けられる測定セル取付部と、
前記測定セル取付部に取付けられた前記測定セルの前記排気口を通じて前記試料液収容室内の気体を吸引するための吸引部と、
前記試料液収容室内に収容された前記試料液に光を照射する光源と、
前記試料液を透過または前記試料液中において散乱した光を受光する光検知器とを備える光学測定装置を用い、
(A)前記吸引部を用いて前記試料液収容室内の気体を排気することにより、前記試料液採取口から前記試料液供給路を通して前記試料液収容室内に前記試料液を供給する工程、
(B)前記試料液供給路内において前記試料液と接触した前記吸水膨張剤が膨張して前記試料液供給路封止部材を移動させることにより、前記試料液供給路封止部材が前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞ぐまで待機する工程、
(C)前記試料液供給路封止部材が前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞いだ状態において、前記吸引部を用いて前記試料液収容室内を減圧状態にすることにより、前記試料液内の気泡を除去する工程、
(D)前記光源を用いて前記試料液に光を照射する工程、及び
(E)前記光検知器を用いて前記試料液を透過または前記試料液中において散乱した光を受光する工程を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の試料液の脱気方法及び光学測定方法によれば、測定セル内を減圧状態にすることにより測定セル内に収容された試料液中の気泡を安定して除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の試料液の脱気方法は、試料液を収容する試料液収容室と、
前記試料液収容室と連通する排気口と、
前記試料液収容室と連通し、前記試料液を前記試料液収容室に供給するための試料液供給路と、
前記試料液供給路と連通し、前記試料液を採取するための試料液採取口と、
前記試料液供給路内に設けられ、前記試料液と接触することにより前記試料液供給路を塞ぐように膨張する吸水膨張剤と、
前記試料液供給路内であって前記吸水膨張剤よりも前記試料液収容室に近い位置に設けられ、前記吸水膨張剤の膨張に伴って前記試料液供給路内を移動し、前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞ぐ試料液供給路封止部材とを備える測定セル、及び
前記測定セルが着脱自在に取付けられる測定セル取付部と、
前記測定セル取付部に取付けられた前記測定セルの前記排気口を通じて前記試料液収容室内の気体を吸引するための吸引部とを備える脱気装置を用い、
(A)前記吸引部を用いて前記試料液収容室内の気体を排気することにより、前記試料液採取口から前記試料液供給路を通して前記試料液収容室内に前記試料液を供給する工程、
(B)前記試料液供給路内において前記試料液と接触した前記吸水膨張剤が膨張して前記試料液供給路封止部材を移動させることにより、前記試料液供給路封止部材が前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞ぐまで待機する工程、及び
(C)前記試料液供給路封止部材が前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞いだ状態において、前記吸引部を用いて前記試料液収容室内を減圧状態にすることにより、前記試料液内の気泡を除去する工程を含む。
【0014】
本発明の試料液の脱気方法に用いられる測定セルは、試料液供給路において吸水膨張剤に加えて試料液供給路封止部材を備えており、試料液との接触により膨張した吸水膨張剤が試料液供給路封止部材を移動させることにより試料液供給路を塞ぐ。したがって、膨張した吸水膨張剤のみの場合に比べて機械的強度が増すので、試料液収容室内を減圧状態にすることにより試料液内の気泡を除去する工程においても、試料液供給路を塞いでいる部材が破損することなく安定して試料液中の気泡を除去することができる。
【0015】
本発明において、試料液供給路封止部材は機械的強度に優れた材質により構成されていることが好ましい。また、試料液供給路内における試料液の流れにより動かないように、試料液供給路封止部材は試料液よりも比重の大きい材質により構成されていることが好ましい。このような材質としては、金属、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ガラス等が挙げられる。
【0016】
吸水膨張剤としては、水分を吸収して膨張する高分子吸収剤等が挙げられる。高分子吸収剤としては、例えば、アクリル酸−ビニルアルコール重合体、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル酸重合体、ポリビニールアルコール、デンプン−アクリル酸グラフト重合体等が挙げられる。吸水膨張剤は、粒状または粉末状であることが好ましい。
【0017】
測定セルが、試料液供給路内であって試料液採取口と吸水膨張剤が設けられた位置との間に、試料液を通過させ、かつ吸水膨張剤の移動を遮断する隔壁部材をさらに具備することが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、試料液と接触することにより膨張した吸水膨張剤が試料液供給路封止部材の設けられた位置とは反対の方向に押し出されることによって試料液供給路封止部材を移動させることができなくなることを防ぐことができる。
【0019】
測定セルの試料液供給路のうち、試料液供給路封止部材が移動する範囲の形状が、試料液収容室に向かうほど細くなっていることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、試料液との接触により膨張した吸水膨張剤が試料液供給路封止部材を移動させた際に、試料液供給路封止部材の幅が試料液供給路の太さと等しくなった位置で試料液供給路封止部材の動きが停止するので、気密性良く試料液供給路を封止することができる。
【0021】
ここでさらに、試料液供給路封止部材の試料液供給路に沿った方向に対して垂直な方向の断面が、試料液収容室に向かうほど小さくなるように試料液供給路封止部材が配置されていることが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、試料液との接触により膨張した吸水膨張剤が試料液供給路封止部材を移動させた際に、試料液供給路の内面と試料液供給路封止部材の外面とが咬み合うことにより、さらに気密性良く試料液供給路を封止することができる。
【0023】
また、本発明の試料液の光学測定方法は、試料液を収容する試料液収容室と、
前記試料液収容室内に設けられ、前記試料液中の被検物質と反応する試薬と、
前記試料液収容室と連通する排気口と、
前記試料液収容室と連通し、前記試料液を前記試料液収容室に供給するための試料液供給路と、
前記試料液供給路と連通し、前記試料液を採取するための試料液採取口と、
前記試料液供給路内に設けられ、前記試料液と接触することにより前記試料液供給路を塞ぐように膨張する吸水膨張剤と、
前記試料液供給路内であって前記吸水膨張剤よりも前記試料液収容室に近い位置に設けられ、前記吸水膨張剤の膨張に伴って前記試料液供給路内を移動し、前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞ぐ試料液供給路封止部材とを備える測定セル、及び
前記測定セルが着脱自在に取付けられる測定セル取付部と、
前記測定セル取付部に取付けられた前記測定セルの前記排気口を通じて前記試料液収容室内の気体を吸引するための吸引部と、
前記試料液収容室内に収容された前記試料液に光を照射する光源と、
前記試料液を透過または前記試料液中において散乱した光を受光する光検知器とを備える光学測定装置を用い、
(A)前記吸引部を用いて前記試料液収容室内の気体を排気することにより、前記試料液採取口から前記試料液供給路を通して前記試料液収容室内に前記試料液を供給する工程、
(B)前記試料液供給路内において前記試料液と接触した前記吸水膨張剤が膨張して前記試料液供給路封止部材を移動させることにより、前記試料液供給路封止部材が前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞ぐまで待機する工程、
(C)前記試料液供給路封止部材が前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞いだ状態において、前記吸引部を用いて前記試料液収容室内を減圧状態にすることにより、前記試料液内の気泡を除去する工程、
(D)前記光源を用いて前記試料液に光を照射する工程、及び
(E)前記光検知器を用いて前記試料液を透過または前記試料液中において散乱した光を受光する工程を含む。
【0024】
本発明の試料液の光学測定方法に用いられる測定セルは、試料液供給路において吸水膨張剤に加えて試料液供給路封止部材を備えており、試料液との接触により膨張した吸水膨張剤が試料液供給路封止部材を移動させることにより試料液供給路を塞ぐ。したがって、膨張した吸水膨張剤のみの場合に比べて機械的強度が増すので、試料液収容室内を減圧状態にすることにより試料液内の気泡を除去する工程においても、試料液供給路を塞いでいる部材が破損することなく安定して試料液中の気泡を除去することができる。そこで、本発明の試料液の光学測定方法によれば、試料液中の気泡が取り除かれた後で測定することができるので、高精度に光学測定を行うことができる。
【0025】
本発明の試料液の光学測定方法は、前記工程Cと前記工程Dとの間に、(F)前記試料液収容室内の減圧状態を解除する工程をさらに含むことが好ましい。
【0026】
このような構成によれば、減圧後に気泡が残っていた場合であっても、試料液収容室内を常圧に戻すことにより気泡の大きさを小さくすることができるので、光学測定に対する影響を低減することができる。
【0027】
本発明の試料液の光学測定方法において、前記光学測定装置は前記試料液収容室内に収容された前記試料液を攪拌するための攪拌部をさらに備え、前記工程Bにおいてさらに、前記攪拌部により前記試料液を攪拌することが好ましい。
【0028】
このような構成によれば、試料液収容室内の試料液と試薬とを攪拌することができ、さらに減圧よりも前の段階にて攪拌を行うことによって、もし攪拌時に気泡が混入してもその後の減圧時に除去できるので、高精度に光学測定を行うことができる。
【0029】
測定セルは、光学的に透明な材料により構成されていることが好ましい。好ましい材料としては、ポリスチレン、石英、ガラス、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。測定セルを使い捨てにする場合には、コストの観点からポリスチレンが好ましい。
【0030】
試料液としては、尿、血清、血漿、血液等の体液および培地の上清液等が挙げられる。この中で、試料液が尿の場合は非侵襲的に在宅での日常の健康管理を行うことができるので好ましい。被検物質としては、アルブミン、hCG、LH、CRP、IgG等が挙げられる。
【0031】
試薬としては、酵素、抗体、ホルモンレセプター、化学発光試薬、DNA等が挙げられる。特に抗体は、公知の方法により産生することができるので、試薬を作製しやすいという点で有利である。例えば、アルブミンなどの尿中に含まれる蛋白やhCG、LHなどの尿中に含まれるホルモンを抗原として、マウス・ウサギ等に免疫することにより、抗原に対する抗体を容易に得ることができる。
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る試料液の脱気方法について説明する。まず、本実施の形態に係る試料液の脱気方法に用いる測定セルの構成について図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る試料液の脱気方法に用いる測定セル100の構成を示す断面図である。
【0034】
測定セル100の測定セル本体101は、四角柱部分と四角錐部分とから構成されている。測定セル本体101の四角柱部分の内部には一端が測定セル本体101外部に向けて開口した中空部が形成されており、その中空部が試料液を収容するための試料液収容室108として機能する。試料液収容室108の開口部は排気口107として機能する。
【0035】
測定セル本体101の四角錐部分の内部には一端が測定セル本体101外部に向けて開口し、他方の端が試料液収容室108とつながっている中空の通路が形成されており、その通路が試料液を試料液収容室108に供給するための試料液供給路104として機能する。試料液供給路104の開口部は試料液を採取するための試料液採取口105として機能する。
【0036】
試料液供給路104内には粒状の高分子吸収剤103が設けられている。高分子吸収剤103は、試料液と接触することにより試料液供給路104を塞ぐように膨張する機能を有する。高分子吸収剤103は本発明における吸水膨張剤に相当する。本実施の形態では、ポリアクリル酸ナトリウムからなる高分子吸収剤103を用いている。
【0037】
試料液供給路104内であって高分子吸収剤103よりも試料液収容室108に近い位置には、外側がゴムでコーティングされたステンレス片102が設けられている。ステンレス片102は、高分子吸収剤103の膨張に伴って試料液供給路104内を移動し、試料液収容室108と試料液供給路104との連通部分を塞ぐ機能を有する。ステンレス片102は本発明における試料液供給路封止部材に相当する。
【0038】
試料液供給路104内であって試料液採取口105と高分子吸収剤103が設けられた位置との間にはスポンジ111が設けられている。スポンジ111は、試料液を通過させ、かつ高分子吸収剤103の移動を遮断する機能を有する。スポンジ111は本発明における隔壁部材に相当する。
【0039】
試料液供給路104のうち、ステンレス片102が移動する範囲の形状は、試料液収容室108に向かうほど細くなっている。また、ステンレス片102の試料液供給路104に沿った方向に対して垂直な方向の断面は、試料液収容室108に向かうほど小さくなるようにステンレス片102が配置されている。初期状態では、ステンレス片102と試料液供給路104の内壁との間には試料液は通過するが高分子吸収剤103の粒子は通過しない程度の隙間が空いた状態となるように、ステンレス片102が配置されている。
【0040】
なお、試料液収容室108とステンレス片102との間にさらにスポンジを備えていてもよい。このようにすることにより、高分子吸収剤103が試料液供給路104の内壁とステンレス片102と間の隙間を通過したとしても、高分子吸収剤103が試料液収容室108に入り込むことを防ぐことができる。
【0041】
次に、本実施の形態に係る試料液の脱気方法に用いる脱気装置の構成について図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態に係る試料液の脱気方法に用いる脱気装置に測定セルを取付けた状態を示す断面図である。
【0042】
脱気装置200の筐体211内部には、測定セル取付部208、シリンダ216、プランジャ206、リニアモータ215及び制御部250が設けられている。測定セル取付部208はシリンダ216の端部に設けられている。測定セル100と測定セル取付部208との接続部には気密を保つようにパッキン220が設けられている。測定セル100はその内周部がパッキン220と嵌合することにより、測定セル取付部208において着脱自在に保持される。
【0043】
測定セル取付部208からシリンダ216の内部へは連通孔219が形成されている。この連通孔219は、測定セル取付部208に取付けられた測定セル100の排気口107と連通する。
【0044】
シリンダ216の回転中心には柱状のシャフト213が嵌通されている。シャフト213の一方の端部にはリニアモータ215が設置され、シャフト213の他端はプランジャ206と連結している。制御部250からの制御信号によってリニアモータ215が作動することによりシャフト213が図2における矢印の方向に運動すると、シャフト213に連結されたプランジャ206がシリンダ216内を矢印の方向に摺動する。プランジャ206のこの摺動によってシリンダ216内が負圧状態となるため、連通孔219から空気が吸引される。シリンダ216、プランジャ206、シャフト213及びリニアモータ215は本発明における吸引部に相当する。
【0045】
筐体211には、開始スイッチ217及び電源スイッチ218が設けられている。
【0046】
次に、脱気装置200を用いて試料液中の気泡を除去する方法及び脱気装置200の動作について、図2〜7を用いて説明する。図3は、脱気装置200を用いて測定セル100の試料液収容室108内に試料液が供給された状態を示す断面図、図4は、脱気装置200を用いて測定セル100の試料液収容室108内に試料液が供給された直後における測定セル100の一部を示す断面図、図5は、脱気装置200を用いて測定セル100の試料液収容室108内に試料液が供給されてから所定時間経過後における測定セル100の一部を示す断面図、図6は、脱気装置200を用いて測定セル100の試料液収容室108内に試料液が供給された後、シャフト213がさらに上方に平行移動した状態を示す断面図、図7は、脱気装置200を用いて測定セル100の試料液収容室108内に試料液が供給された後、シャフト213がさらに上方に平行移動したときにおける測定セル100の一部を示す断面図である。
【0047】
まず使用者が、測定セル100の排気口107とシリンダ216の連通孔219とが連通するように、測定セル100を測定セル取付部208に取り付ける。使用者が電源スイッチ218を入れると、リニアモータ215が作動して図2に示すようにプランジャ206を最下端まで下降させることにより、脱気装置200が準備状態になる。
【0048】
次に使用者が、コップ401に入った試料液400中に測定セル100の試料液採取口105を浸した状態で、開始スイッチ217を押す。これによりリニアモータ215が作動し、シャフト213が上方に平行移動する。シャフト213の動きに伴いシャフト213に連結されたプランジャ206も矢印方向に移動するので、シリンダ216内は負圧となる。シリンダ216の端部に設けられた連通孔219と測定セル100の排気口107とが接続されているので、測定セル100内の空気は排気口107及び連通孔219を通ってシリンダ216内に吸引される。これにより測定セル100内部は負圧になるので、図3に示すように試料液採取口105から試料液供給路104を通して試料液収容室108内に試料液400が採取される。
【0049】
所定量の試料液が測定セル100内に採取された時点で、制御部250はリニアモータ215の動作を停止させる。試料液供給路104が試料液400により満たされると、図4に示すように高分子吸収剤103は試料液400を吸収することにより膨張を始める。尿や血液などの検体はその採取の過程において気泡を混入することが多く、検体の粘性が高いほど気泡は浮力を得られず、試料液収容室108内に採取された試料液400中に長時間滞留する。
【0050】
試料液収容室108内への試料液の供給完了から所定時間(例えば、30秒)経過すると、十分に膨張した高分子吸収剤103がステンレス片102を押し上げることにより、図5に示すように、ステンレス片102は試料液供給路104の狭くなったところに上向きに力を与える形で試料液供給路104を塞ぐ。試料液供給路104のうちステンレス片102が移動する範囲の形状は試料液収容室108に向かうほど細くなっており、ステンレス片102の試料液供給路104に沿った方向に対して垂直な方向の断面が試料液収容室108に向かうほど小さくなるようにステンレス片102が配置されているので、ステンレス片102は試料液供給路104を気密性良く塞ぐことができる。
【0051】
次に、図6に示すように、制御部250がリニアモータ215を所定時間の間作動させることにより、シャフト213がさらに上方に平行移動する。この際、ステンレス片102により試料液供給路104が塞がれているため、試料液収容室108内の空気の体積だけが増加することにより試料液収容室108内の圧力が低下する。
【0052】
図7に示すように、試料液収容室108内の圧力が低下すると、ボイルの法則より試料液中に滞留していた気泡301が拡大する。ここで、所定時間(例えば、30秒)シャフト213を平行移動したまま保持する。気泡301が拡大するとアルキメデスの原理より気泡301の浮力が増大し、気泡301は短時間で試料液収容室108内の試料液400の気液界面まで到達して破泡する。これにより、試料液400中の気泡301を減少させることができる。
【0053】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る試料液の光学測定方法について説明する。まず、本実施の形態に係る試料液の光学測定方法に用いる測定セルの構成について図8を用いて説明する。図8は、本実施の形態に係る試料液の光学測定方法に用いる測定セル600の構成を示す断面図である。
【0054】
測定セル600は、測定セル本体601の一部が透明であり、試料液収容室108内に試薬109及び磁気攪拌子106を備えている点で、実施の形態1における測定セル100と異なる。測定セル600のその他の構成については実施の形態1における測定セル100と同じであるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0055】
試薬109は、試料液収容室108の壁面に試薬溶液を直接塗布した後乾燥することにより配置される。これに代えて、ガラス繊維や濾紙等からなる多孔性の担体に試薬溶液を含浸させた後、乾燥させることにより担体に試薬を担持させたものを試料液収容室108に配置してもよい。
【0056】
また、磁気攪拌子106は軸方向に2極着磁した永久磁石である。
【0057】
次に、本実施の形態に係る試料液の光学測定方法に用いる光学測定装置300の構成について図9及び10を用いて説明する。図9は、本実施の形態に係る試料液の光学測定方法に用いる光学測定装置に測定セルを取付けた状態を示す断面図、図10は、図9のA−Aにおける断面図である。
【0058】
光学測定装置300は、光源201a及び光検知器201bからなる光学測定部201と、測定セル600内に収容された試料液と試薬109とを攪拌する機構を備えている点で、実施の形態1における脱気装置200と異なる。光学測定装置300のその他の構成については実施の形態1における脱気装置200と同じであるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0059】
図9に示すように、光源201aと光検知器201bは、測定セル取付部208に取付けられた測定セル600の透明部を挟むように、筐体611内に設けられている。測定制御部500は、光検知器201bによる受光量と試料液中の被検物質濃度との相関を示す検量データを格納するメモリを備え、その検量データを参照して、光検知器201bによる受光量を試料液中の被検物質濃度に換算する機能を有する。
【0060】
図10に示すように、光学測定装置300の筐体611内には、軸方向に2極着磁した永久磁石である磁気回転子202が設けられている。磁気回転子202は第2のシャフト203の一方の端部に連結され、第2のシャフト203の他端にはモータ110が連結されている。磁気回転子202は、磁気攪拌子106と同一平面状で軸が対向するように設置される。また、磁気回転子202は、回転をしても測定セル600に接触せず、かつ可能な限り測定セル600に近接する位置に設置される。ここで、磁気回転子202、第2のシャフト203、及びモータ110は本発明における撹拌部に相当する。
【0061】
次に、光学測定装置300を用いた試料液の光学測定方法について図9〜17を用いて説明する。本実施の形態では、試料液として尿を、試薬として抗ヒトアルブミン抗体を用い、尿中のヒトアルブミン濃度を測定する場合について説明する。光源201aとしては、650nmの波長の光を出射する半導体レーザを用いている。図11は、光学測定装置300を用いて測定セル600の試料液収容室108内に試料液が供給された状態を示す断面図、図12は、光学測定装置300を用いて測定セル600の試料液収容室108内に試料液が供給された直後における測定セル600の一部を示す断面図、図13は、光学測定装置300を用いて測定セル600の試料液収容室108内に試料液が供給されてから所定時間経過後における測定セル600の一部を示す断面図、図14は、光学測定装置300を用いて測定セル600の試料液収容室108内に試料液が供給された後、シャフト213がさらに上方に平行移動した状態を示す断面図、図15は、光学測定装置300を用いて測定セル600の試料液収容室108内に試料液が供給された後、シャフト213がさらに上方に平行移動したときにおける測定セル600の一部を示す断面図、図16は、光学測定装置300を用いて測定セル600の試料液収容室108内に試料液が供給された時点の位置までシャフト213が下方に平行移動した状態を示す断面図、図17は、光学測定装置300を用いて測定セル600の試料液収容室108内に試料液が供給された時点の位置までシャフト213が下方に平行移動したときにおける測定セル600の一部を示す断面図である。
【0062】
まず使用者が、測定セル600の排気口107とシリンダ216の連通孔219とが連通するように、測定セル600を測定セル取付部208に取り付ける。使用者が電源スイッチ218を入れると、リニアモータ215が作動して図9に示すようにプランジャ206を最下端まで下降させることにより、光学測定装置300が準備状態になる。
【0063】
次に使用者が、コップ401に入った試料液400である尿中に測定セル600の試料液採取口105を浸した状態で開始スイッチ217を押すと、実施の形態1と同様に、図11に示すように試料液収容室108内に試料液400である尿が採取される。
【0064】
所定量の尿が測定セル600内に採取された時点で、測定制御部500はリニアモータ215の動作を停止させる。試料液収容室108内の試薬109である抗ヒトアルブミン抗体は、図12に示すように試料液収容室108内に採取された尿と接触することにより尿中に溶解する。
【0065】
測定制御部500はリニアモータ215の動作を停止させた後、モータ110を作動させる。これにより磁気回転子202が回転する。磁気回転子202の回転とともに、磁気回転子202の磁化方向と同じ方向で磁気攪拌子106の磁化が交互に対向するように配置しようとするため、結果的に回転加振力が磁気攪拌子106に与えられることになる。このようにして、磁気攪拌子106の動力を試料液収容室108内の試料液400に伝達し、試料液400である尿と試薬109とを攪拌することができる。この攪拌動作により、尿と試薬とが混合され、尿中の抗原であるヒトアルブミンと抗ヒトアルブミン抗体との免疫反応が進行する。撹拌開始後所定時間(例えば、30秒)経過すると、測定制御部500がモータ110の動作を停止させることにより、攪拌が停止する。
【0066】
攪拌が停止した時点では、試料液収容室108内への試料液の供給完了から所定時間(例えば、30秒)経過しているため、図13に示すように高分子吸収剤103が十分膨張しステンレス片102を押し上げることにより、ステンレス片102は試料液供給路104の狭くなったところに上向きに力を与える形で試料液供給路104を塞ぐ。攪拌の過程において気泡が混入されることが多く、試料液の粘性が高いほど浮力を得られず、気泡は試料液400の内部に滞留しやすい。
【0067】
次に、図14に示すように、測定制御部500がリニアモータ215を所定時間の間作動させることにより、シャフト213がさらに上方に平行移動する。この際、ステンレス片102により試料液供給路104が塞がれているため、試料液収容室108内の空気の体積だけが増加することにより試料液収容室108内の圧力が低下する。
【0068】
図15に示すように、試料液収容室108内の圧力が低下すると、ボイルの法則より試料液中に滞留していた気泡301が拡大する。ここで、所定時間(例えば、30秒)シャフト213を平行移動したまま保持する。気泡301が拡大するとアルキメデスの原理より気泡301の浮力が増大し、気泡301は短時間で試料液収容室108内の試料液400の気液界面まで到達して破泡する。これにより、試料液400中の気泡301を減少させることができる。
【0069】
次に、測定制御部500がリニアモータ215を所定時間の間逆回転させることにより、図16に示すように、試料液収容室108内に試料液を採取した時点の位置までシャフト213を下方に移動させる。シャフト213が下方に移動することにより、試料液収容室108内の減圧状態が解除されて圧力が常圧まで増加する。これにより、図17に示すように気泡301が試料液収容室108内の圧力を減圧状態にする前の微小なサイズに戻るため、光学測定に与える影響が低減される。
【0070】
次に、測定制御部500が光源201aを作動させることにより試料液の光学測定が行われる。光源201aから出射したレーザ光は、測定セル600の透明部を通過して試料液収容室108内の尿に照射される。尿中を透過したレーザ光は、測定セル600の透明部を通過して光検知器201bにより受光される。測定制御部500はメモリに格納されている検量データを読み出し、その検量データを参照することにより光検知器201bによる受光量を試料液中のヒトアルブミン濃度に換算する。得られたヒトアルブミン濃度は表示部510に表示される。表示部510にヒトアルブミン濃度が表示されることにより、使用者はヒトアルブミン濃度測定が完了したことがわかる。測定が終了後、使用者は測定セル600を取り外して廃棄する。
【0071】
なお、本実施の形態においては、測定セル600のうちレーザ光が透過する部分のみが透明である例について示したがこれに限定されず、測定セル全体が透明な材料であるポリスチレンにより構成されていてもよい。
【0072】
光源201aとしては、650nmの波長の光を出射する半導体レーザを用いたが、これに代えて同様の波長を含む光を出射する発光ダイオードを用いてもよい。なお、本発明の実施の形態においては免疫比濁法による測定を適用して650nmの照射および受光波長を選択したが、測定法や測定対象に応じて適宜適切な波長を選択してもよい。
【0073】
なお、試薬として用いた抗ヒトアルブミン抗体は従来公知の方法により得ることができる。例えば、ヒトアルブミンを免疫したウサギ抗血清を、プロテインAカラムクロマトグラフィーにより精製した後、透析チューブを用いて透析することにより抗ヒトアルブミン抗体を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、測定セル内に収容された試料液中の気泡を安定して除去することができるので、試料液の測定、特に光学測定を行う前の前処理の際などに広く有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施の形態に係る試料液の脱気方法に用いる測定セルの構成を示す断面図
【図2】同脱気方法に用いる脱気装置に測定セルを取付けた状態を示す断面図
【図3】同脱気装置を用いて測定セルの試料液収容室内に試料液が供給された状態を示す断面図
【図4】同脱気装置を用いて測定セルの試料液収容室内に試料液が供給された直後における測定セルの一部を示す断面図
【図5】同脱気装置を用いて測定セルの試料液収容室内に試料液が供給されてから所定時間経過後における測定セルの一部を示す断面図
【図6】同脱気装置を用いて測定セルの試料液収容室内に試料液が供給された後、シャフトがさらに上方に平行移動した状態を示す断面図
【図7】同脱気装置を用いて測定セルの試料液収容室内に試料液が供給された後、シャフトがさらに上方に平行移動したときにおける測定セルの一部を示す断面図
【図8】本発明の他の実施の形態に係る試料液の光学測定方法に用いる測定セルの構成を示す断面図
【図9】同光学測定方法に用いる光学測定装置に測定セルを取付けた状態を示す断面図
【図10】図9のA−Aにおける断面図
【図11】同光学測定装置を用いて測定セルの試料液収容室内に試料液が供給された状態を示す断面図
【図12】同光学測定装置を用いて測定セルの試料液収容室内に試料液が供給された直後における測定セルの一部を示す断面図
【図13】同光学測定装置を用いて測定セルの試料液収容室内に試料液が供給されてから所定時間経過後における測定セルの一部を示す断面図
【図14】同光学測定装置を用いて測定セルの試料液収容室内に試料液が供給された後、シャフトがさらに上方に平行移動した状態を示す断面図
【図15】同光学測定装置を用いて測定セルの試料液収容室内に試料液が供給された後、シャフトがさらに上方に平行移動したときにおける測定セルの一部を示す断面図
【図16】同光学測定装置を用いて測定セルの試料液収容室内に試料液が供給された時点の位置までシャフトが下方に平行移動した状態を示す断面図
【図17】同光学測定装置を用いて測定セルの試料液収容室内に試料液が供給された時点の位置までシャフトが下方に平行移動したときにおける測定セルの一部を示す断面図
【符号の説明】
【0076】
100,600 測定セル
101,601 測定セル本体
102 ステンレス片
103 高分子吸収剤
104 試料液供給路
105 試料液採取口
106 磁気攪拌子
107 排気口
108 試料液収容室
109 試薬
110 モータ
111 スポンジ
200 脱気装置
201 光学測定部
201a 光源
201b 光検知器
202 磁気回転子
203 第2のシャフト
206 プランジャ
208 測定セル取付部
211,611 筐体
213 シャフト
215 リニアモータ
216 シリンダ
217 開始スイッチ
218 電源スイッチ
219 連通孔
220 パッキン
250 制御部
300 光学測定装置
301 気泡
400 試料液
401 コップ
500 測定制御部
510 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液を収容する試料液収容室と、
前記試料液収容室と連通する排気口と、
前記試料液収容室と連通し、前記試料液を前記試料液収容室に供給するための試料液供給路と、
前記試料液供給路と連通し、前記試料液を採取するための試料液採取口と、
前記試料液供給路内に設けられ、前記試料液と接触することにより前記試料液供給路を塞ぐように膨張する吸水膨張剤と、
前記試料液供給路内であって前記吸水膨張剤よりも前記試料液収容室に近い位置に設けられ、前記吸水膨張剤の膨張に伴って前記試料液供給路内を移動し、前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞ぐ試料液供給路封止部材とを備える測定セル、及び
前記測定セルが着脱自在に取付けられる測定セル取付部と、
前記測定セル取付部に取付けられた前記測定セルの前記排気口を通じて前記試料液収容室内の気体を吸引するための吸引部とを備える脱気装置を用い、
(A)前記吸引部を用いて前記試料液収容室内の気体を排気することにより、前記試料液採取口から前記試料液供給路を通して前記試料液収容室内に前記試料液を供給する工程、
(B)前記試料液供給路内において前記試料液と接触した前記吸水膨張剤が膨張して前記試料液供給路封止部材を移動させることにより、前記試料液供給路封止部材が前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞ぐまで待機する工程、及び
(C)前記試料液供給路封止部材が前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞いだ状態において、前記吸引部を用いて前記試料液収容室内を減圧状態にすることにより、前記試料液内の気泡を除去する工程を含む試料液の脱気方法。
【請求項2】
試料液を収容する試料液収容室と、
前記試料液収容室内に設けられ、前記試料液中の被検物質と反応する試薬と、
前記試料液収容室と連通する排気口と、
前記試料液収容室と連通し、前記試料液を前記試料液収容室に供給するための試料液供給路と、
前記試料液供給路と連通し、前記試料液を採取するための試料液採取口と、
前記試料液供給路内に設けられ、前記試料液と接触することにより前記試料液供給路を塞ぐように膨張する吸水膨張剤と、
前記試料液供給路内であって前記吸水膨張剤よりも前記試料液収容室に近い位置に設けられ、前記吸水膨張剤の膨張に伴って前記試料液供給路内を移動し、前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞ぐ試料液供給路封止部材とを備える測定セル、及び
前記測定セルが着脱自在に取付けられる測定セル取付部と、
前記測定セル取付部に取付けられた前記測定セルの前記排気口を通じて前記試料液収容室内の気体を吸引するための吸引部と、
前記試料液収容室内に収容された前記試料液に光を照射する光源と、
前記試料液を透過または前記試料液中において散乱した光を受光する光検知器とを備える光学測定装置を用い、
(A)前記吸引部を用いて前記試料液収容室内の気体を排気することにより、前記試料液採取口から前記試料液供給路を通して前記試料液収容室内に前記試料液を供給する工程、
(B)前記試料液供給路内において前記試料液と接触した前記吸水膨張剤が膨張して前記試料液供給路封止部材を移動させることにより、前記試料液供給路封止部材が前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞ぐまで待機する工程、
(C)前記試料液供給路封止部材が前記試料液収容室と前記試料液供給路との連通部分を塞いだ状態において、前記吸引部を用いて前記試料液収容室内を減圧状態にすることにより、前記試料液内の気泡を除去する工程、
(D)前記光源を用いて前記試料液に光を照射する工程、及び
(E)前記光検知器を用いて前記試料液を透過または前記試料液中において散乱した光を受光する工程を含む試料液の光学測定方法。
【請求項3】
前記工程Cと前記工程Dとの間に、
(F)前記試料液収容室内の減圧状態を解除する工程をさらに含む、請求項2記載の光学測定方法。
【請求項4】
前記光学測定装置は前記試料液収容室内に収容された前記試料液を攪拌するための攪拌部をさらに備え、
前記工程Bにおいてさらに、前記攪拌部により前記試料液を攪拌する、請求項2記載の光学測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−31022(P2009−31022A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192802(P2007−192802)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】