説明

試料液中のアナライトを検出するための方法、および前記方法を実施するための装置

本発明は、試料液が、特に固定された反応物質を有する支持体の表面(38)上で混合処理を受ける、試料液中のアナライトを検出するための方法に関し、固定された反応物質に対する支持面として基本的に平坦な底面(38)を備える特にトラフ状の容器(12)が、試料液用の容器(12)として使用される。本発明によれば、混合処理中に、1方向に、好ましくは線または曲線に沿った容器(12)の振動運動により、試料液を、固定された反応物質に対して運動させることが提案される。さらに、本発明は、本発明による方法を実施するための装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料液中のアナライト(analyte)を検出するための方法、および前記方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本方法では、試料液は、特に固定された反応物質を有する支持体の表面上で混合処理を受け、固定された反応物質に対する支持面として基本的に平坦な底面を備える特にトラフ形状の容器が容器として使用される。このような支持体はまた、バイオチップと呼ばれる。
【0003】
このような方法は、例えば、EP1604734A2で知られている。そこで述べられる方法は、アナライトと反応物質の間の結合を改善するために、支持体表面にわたって流れる気体流を用いた、試料液または支持体の方向に向けた噴流を利用するが、試料液に衝突する気体の流れにより混合が改善されて、アナライトと反応物質の間で良好な加速された結合が得られる。
【0004】
知られた方法は、実際に良好な結果を生成するが、その方法は非常に複雑であり、特に、関連する装置が比較的複雑である。空気の流れは試料液を蒸発させることになり、また対応する噴流を各支持体に割り振る必要がある。さらに、外部からこのような気体を供給する場合、試料液が、汚染された気体と接触しないことを保証するためには、十分な洗浄およびフィルタ工程を必要とする汚染の問題が存在する。
【0005】
例えば米国特許第5,009,998号、または米国特許第6,063,564号からの従来技術で述べられている他の方法は、培養の後に、例えば、洗浄、試薬の添加、光学的測定などのさらなる処理ステップを上方から行うことが意図される場合、その平坦な底面に固定された反応物質を備える平坦なアナライト貯蔵器を有する支持体またはバイオチップには適切ではない。固定された反応物質と試料液容積の間の境界層にあるアナライトは、反応物質への結合により欠乏する。新しいアナライトは、約1μm/sの低いアナライト拡散速度であるため、液容積から十分な速度で再供給されない。出願人により行われた知られた方法に対する調査は、支持体またはバイオチップの底面にわたる強度の増加に関して均質性に劣っていることが、EP1604734A2で開示された方法を除きすべての知られた方法の主要な欠点であることを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記で述べた欠点を回避しかつ検出方法ならびに装置を簡単化する、方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
アナライトを検出するために方法に関して、本目的は、好ましくは線または曲線に沿って、1方向に容器を振動運動させることにより、試料液が、混合処理中に固定された反応物質に対して運動することで達成される。
【0008】
試料液の慣性の結果、容器の振動運動は、試料液を容器に対して動かし、また容器に結合された反応物質に対しても動かして、アナライトを含む試料液と反応物質の間の境界層で、アナライトの改善した蓄積を生ずる。振動運動は、好ましくは曲線、または円形の経路に沿って1方向に生じる。さらに、振動運動はまた、反応物質に対するアナライトの改良された均一な分布を生ずることができ、したがって、試料液中のアナライトの検出が向上されうる。全体の反応速度を加速することができる。
【0009】
さらに、試料液の蒸発速度は、EP1604734A2の知られた方法の場合よりもかなり低いことが見出されており、試料容器を振動させる場合、周囲温度18℃および相対空気湿度50%における、知られた空気噴流法による約0.6〜0.7μl/minと比較して、それは約0.3μl/minであった。
【0010】
容器の振動運動は、好ましくは容器の平坦な底面に対して基本的に平行であり、また容器は、約1から50ヘルツ、好ましくは約10から20ヘルツの周波数で、かつ6ミリメートル未満の振幅で、好ましくは約0.2から4ミリメートル、最も好ましくは約1から2ミリメートルの振幅で振動することが示唆される。容器の平坦な底面に基本的に平行な振動運動であるため、試料液の一部が付着して残っている可能性のある、容器を覆っているキャップに試料液が接触するのを阻止することが可能になる。さらに、振動運動の前記の周波数および振幅は、容器とキャップの間の上側境界領域と遷移領域を濡らすことになる、試料液の一種のこぼれを生ずるおそれのある試料液中への流入を導くことはない。
【0011】
さらに、疑似線形振動は、例えば、DE202006001514U1から知られているように、一致した(according)装置の機械的な変更を行うことなく、振動の振幅を変化させることができる。
【0012】
容器は容器ホルダ中で振動すること、またはいくつかの容器が、共通の容器ホルダ中で同時に振動することが提案される。これに関連して、各容器は、各容器に割り振られた駆動装置により振動させることができるが、あるいは容器ホルダ中のいくつかの、特にすべての容器は、共通の駆動装置により振動させることもできる。容器に対する共通の容器ホルダを駆動することによりいくつかの容器を振動させることは、すべての容器において基本的に同一の反応条件が存在するように、すべての容器の一様かつ同一の運動を可能にする。
【0013】
振動運動中、蒸発による容器からの試料液の損失がない、またはわずかな損失だけであるようにするために、容器は、振動させる前に覆われる、特にカバー要素により密封されるように提案される。
【0014】
本方法を実施するための装置は、試料液のための少なくとも1つの容器を受け入れるための少なくとも1つの容器ホルダを備えており、また本発明によれば、装置は、容器ホルダ、およびその中に含まれる容器が、振動して運動できるように設計された少なくとも1つの駆動装置を有することが提供される。
【0015】
装置は、いくつかの容器受入れ器を備える単一の容器ホルダと、容器受入れ器内に保持されるすべての容器を同時に振動させることのできる単一の駆動装置とを備えることが好ましい。すべての容器を同時に振動させるこのような駆動の概念は、装置の構成を簡単にする。さらに、このような装置のためには1つの駆動装置だけが必要であり、コストに対して有利な効果を有する。
【0016】
代替的には、各試料液を、圧電素子または同様のものなどそれ自体の駆動装置に割り振ることも考えられる。
さらに、装置は、容器搭載手段を備えることも提案され、その場合、容器搭載手段、および容器ホルダは、容器を特定の容器受入れ器に挿入する、またはそこから取り外すために、互いに対して移動することができる。
【0017】
容器ホルダの駆動装置は、振動運動を生成するための機能に加えて、各容器受入れ器の中に容器を挿入するために、または容器をこの容器受入れ器から取り出すために、各容器受入れ器を容器搭載手段に対して所定の位置に配置できるように、静的な容器搭載手段に対して容器ホルダを移動させる少なくとも1つのさらなる機能を有するように設計されることが好ましい。容器ホルダは、円形の設計を有し、かつその円周の縁部に沿って規則的な間隔で容器受入れ器を有することが好ましい。このような円形の容器ホルダを用いると、容器搭載手段により容器受入れ器は容器を搭載することができ、あるいは容器は容器受入れ器から取り外すことができる。例えば、容器ホルダは、12個の容器受入れ器を有することができる。試料液を含む容器を容器ホルダに搭載するために、容器ホルダは、駆動装置により、容器搭載手段に対して各容器受入れ器と位置合せされ、したがって、容器は、容器搭載手段により各容器受入れ器内に挿入されうる。第1の容器、または第1の支持体が、容器ホルダの容器受入れ器内に受け入れられるとすぐに、容器ホルダの振動運動を開始することができる。さらなる容器が他の容器受入れ器に挿入される、またはそこから取り外されると、振動運動を中断することができる。容器ホルダは、望ましい培養期間中、振動して動くことができ、その場合、培養期間は、容器ごとに決定することができ、培養時間に達した後に、この容器を容器ホルダから取り外すことができるが、他の容器は、なおその培養時間が終了するまで、容器ホルダ中にとどまる。当然であるが、12個の容器受入れ器の数は、単なる例に過ぎず、8、10、16などの他の数の容器受入れ器を提供することもできる。容器受入れ器の数は、特に容器の寸法に、さらに、容器ホルダそれ自体の寸法にも依存する。さらに、何も容器を挿入できないタイプのプレースホルダ(ダミー)もまた、少なくとも1つの容器受入れ器に代えて設けることができる。このようなプレースホルダは、例えば、プレースホルダが容器搭載手段に対して位置合せされるように、すべての容器に対する培養期間中、容器ホルダを調整するために使用することができる。
【0018】
代替的には、容器ホルダはまた、容器受入れ器のいくつかの行および列が形成される基本的に垂直に方向付けられたプレートとして設計することができる。例えば、それぞれが、あるタイプの容器受入れ器の行列もしくはアレイとなる4つの容器受入れ器を備える3列を提供することができる。垂直に方向付けられたプレートとして設計された容器ホルダは、例えば、容器受入れ器およびその中に保持される容器が、対応して同様に動くように、プランジャコイルにより水平方向に振動して動くことができる。静的な容器ホルダ中の容器受入れ器のこのような構成の場合、容器搭載手段がそれ自体の駆動装置を有しており、その駆動装置により、容器搭載手段は、容器受入れ器の所望の位置へと移動できることが好ましい。特に、容器搭載手段は、静的な容器ホルダに対して垂直または/および水平方向に移動できることが望ましい。容器ホルダは、例えば、水平方向にだけ、また容器搭載手段は垂直方向にだけ移動できることも考えられる。
【0019】
培養期間中に試料液の蒸発を制限するために、装置は、容器が容器受入れ器内に挿入されたとき、容器を覆うカバー手段を備えることが提案される。
カバー手段は、特にアルミニウムなどの金属から、またはプラスチックから製作することができる。カバー手段は、上側の容器外周部に対して近い距離に配置されることが好ましく、それは、容器を、容器受入れ器に挿入すること、またはそこから取り外すことを簡単化する。カバー手段はまた、培養期間中に試料を加熱するための熱導体として使用することもできる。
【0020】
カバー手段は、代替的に、容器受入れ器内に挿入された状態にある容器を密封する密封手段の形態とすることもできる。このような密封手段は、上側の容器外周部の上に密封して配置される弾性的な薄膜またはカバーとすることができる。これはさらに、試料液の蒸発を低減する。カバーの場合、カバーは、上方に窪んでおり、かつ容器のトラフから離れる形状である領域(キャビティ)を有することがさらに提案される。このようなカバーの設計は、カバーの内側と試料液の間の距離を増加させて、振動運動中に、試料液がカバーと接触するのをさらに良好な方法で阻止する。
【0021】
容器搭載手段は、容器把持装置を備えることが好ましく、密封手段および容器把持装置は、密封手段が、容器を容器受入れ器内に挿入する、またはそこから取り外す過程におけるそれらの相互作用により、容器から離れて保持されるように設計される。これに関連して、互いに相互作用する案内面が、特に容器把持装置上に、または密封手段上、特にカバー上に形成されうる。このような案内面は、容器把持装置が容器受入れ器内に挿入されたとき、密封手段またはカバーが、一定の方法で自動的に持ち上げられるように、密封手段またはカバーを持ち上げるために必要な傾斜を有することができる。密封手段は、任意選択で、例えば、密封手段の弾性的な設計により、またはばねもしくは同様のものを用いることにより、その閉じた位置で、すなわち、上側の容器外周部上に接触して支持する位置で、事前に張力を加えることができる。
【0022】
トルクモータが容器ホルダのための駆動装置として提案される。トルクモータは、一方で、大きなトルクを生成することができること、また他方で、振動運動を生成するのに特に利点のある、非常に精密で、かつ非常にわずかな動きを実行することもできることを特徴とする。振動運動に加えて、容器を各容器受入れ器内に挿入する、または前記受入れ器から取り外すことができるように、容器受入れ器のそれぞれを容器搭載手段へと移動させるために、トルクモータを用いて送り運動を実行することも可能である。したがって、容器ホルダに搭載する、またはそこから外すために、かつその振動運動のために、異なる駆動装置を有することは必要ではなく、両方の運動は、ただ1つの駆動装置、すなわち、トルクモータにより実行することができる。提案の構成は、装置および方法を、全体としてより頑強かつ安価に実施できるようにする。代替的には、適切に設計されたステッピングモータを、または静的な容器ホルダの場合にはプランジャコイルを使用することもまた可能である。
【0023】
提案の方法を制御するために、装置は、容器ホルダの駆動装置を、また特に振動運動または/および容器搭載手段への送り運動を制御する、または規制できるように設計された制御ユニットを有することが提案される。
【0024】
本発明が、実施形態に基づき、また添付図を参照して例示的かつ非限定的な方法で述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1aは、本発明による装置の実施形態の概略的な斜視図である。 図1bは、Iで示された図1aにおける円形領域の拡大図である。
【図2】図1の装置の横方向立面図である。
【図3】装置の上部から見た上面図である。
【図4】容器受入れ器を有する回転体の上面図である。
【図5】概略的な部分図で容器受入れ器を、またその中に保持される試料液のための容器を示す図である。
【図6】容器のためのカバー手段の概略的な正面図である。
【図7】下から、すなわち、試料容器の上側側部に対して配置される側からのカバー手段の概略的な斜視図である。
【図8】図8aは、容器搭載手段と、容器を密封するカバー手段との間の相互作用の斜視図である。
【0026】
図8bは、VIIIで示された図8aの円形領域の拡大図である。
【図9】図9aは、代替的なカバー手段を有する容器ホルダとして回転体を示す図である。
【0027】
図9bは、破線で境界が付けられ、かつIXで示された図9aの領域の拡大図である。
【図10】本発明による装置の代替的な実施形態の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、試料液用の容器12を保持するための装置10の斜視概略図を示す。この目的のために、装置10は、複数の容器受入れ器16がその円周に沿って形成される容器ホルダとして、円板形状に設計された回転体14を有する。容器12は、把持装置18(容器搭載手段)により、対応する容器受入れ器16へと挿入され、またはそこから取り外される。この目的のために、把持装置18は、2つの把持アーム17、19を有しており、それらは、回転体14(図1b)の方向に延び、かつ試料容器12の側部を把持し、かつ締め付けることができ、したがって、試料容器12を回転体14に対して基本的に半径方向に回転体14から取り外す、またはこのように回転体の方向に移動させることができるようにする。回転体14は、回転軸Dに関して回転することができ、したがって、すべての受入れ器16は、試料容器12がそこに搭載されるように、把持装置18へと移動することができる。
【0029】
図2は、側面からの立面図で図1の装置10を示す。回転体14は、この場合、ハウジング22に収容されるいわゆるトルクモータ20の形である電気モータに、見えていないスピンドルを介して接続される。さらに、トルクモータ20に電気エネルギーを供給する電気ケーブル24がハウジング22に取り付けられる。スリップリング送信機26は、ハウジング22の下側に位置する。さらに、コード化ホイール30が、トルクに影響されない方法で下側でトルクモータ20に接続されることがわかる。この符号化ホイール30は、センサ32により走査されて、トルクモータ20の回転を登録し、かつここでは示されていない制御装置にこの情報を送る。前記制御装置は、トルクモータの動作、したがって、回転体14の動作を制御または規制するように働く。
【0030】
トルクモータ20は、トルクモータ20により生成される回転運動が、回転体14に直接移送されうるように、速度を増加する、または低下させるためのさらなる機械的な伝達装置を使用することなく、回転体14に直接接続されるいわゆる直接駆動装置である。トルクモータ20は、回転体14に保持された試料容器が、約1〜50ヘルツ、好ましくは約10〜20ヘルツの周波数で、かつ6mm未満の振幅で、好ましくは約0.2〜4mm、特に1〜2mmの振幅で振動するような方法で、振動運動を実行するように制御することができる。この振動運動は、1方向に沿った、好ましくは曲線に沿った疑似線形運動を示す矢印OSZによりすべての対応する図で示される。この運動では、容器12は、その通常平坦な底面に対して基本的に平行に動く。しかし、トルクモータ20は、振動運動を生成するためにだけに使用されうるのではなく、それはさらに、試料容器を受入れ器16に挿入するために、またはこの受入れ器から試料容器を取り外すために、把持装置18に対して容器受入れ器16を移動する、または配置するようにも働く。したがって、単一の駆動装置は、図示されていない制御ユニットによる適切な制御により、回転体14のすべての適切な運動パターンを実行することができる。
【0031】
図3の上面図は、容器12、または支持体もしくはバイオチップがその受入れ器16内に保持される回転体14が12個の容器受入れ器16を有することを示す。ここで示された12個の容器受入れ器16の数は、単なる例であり、実際には、より少ない、または多い容器受入れ器が、回転体のサイズ、および試料容器12のサイズに応じて提供されうる。回転体14は、その上側側面にカバー手段34を有し、その各カバーは、その中に、特に密封させて、受入れ器16および試料容器12が保持される。これに関連して、これらのキャップ状のカバー手段34は、トラフ形状の試料容器12の反対側に中空の空間(湿潤空間キャビティ35(図7))を有しており、したがって、カバー手段が試料液で湿るのを実質的に阻止するために、十分な空間が、試料容器12の上側外周部の上方に存在する。さらに、カバー34は、試料液の蒸発を妨げるように働く。
【0032】
図4は、カバー手段のないその12個の容器受入れ器16を有する回転体14の概略的な上面図を示す。試料容器12は、例として、容器受入れ器に挿入される。この試料容器12は、図5で拡大された斜視図で示される。試料容器12は、基本的に平坦な底面38を備えるトラフ状の凹部36を有する。試料液中に存在するアナライトと相互作用する固定された反応物質(図示せず)は、行列またはアレイの形でこの底面上に配置される。この相互作用は、試料容器およびその中に含まれる試料液の前記振動運動OSZにより確実に影響を受け、特に、境界領域におけるアナライトの反応物質に対する濃度が振動運動により改善され、したがって、十分なアナライトが反応物質と反応することが可能になり、その結果、アナライトを検出するために必要な培養期間を短縮することができる。
【0033】
図3に関してすでに言及したカバー手段34は、回転体14に取り付けられた個々のキャップの形態とすることができるが、あるいはそれらは、すべてのキャップを接続する連続したリング40(図3)により共に接続することもできる。
【0034】
図6および7の部分的な図は、下からの斜視図(図7)ならびに正面からの断面図(図6)でこのような密封キャップ34を示す。図7は、試料液がキャップ34と接触するのを阻止するために試料液とキャップ34の間に十分な空間を有するように、試料容器12のトラフ36の上方に配置されたキャップ34における湿潤空間キャビティ35を示す。自由空間48、50の領域がまたこの図に見られるが、その中に、把持装置17、19を挿入することができ、その空間は、把持装置17、19が、試料容器12の方向に、かつそこから離れる把持動作を実行できるような寸法である。さらに、案内面52、54が示されており、それは、把持装置17、19と共に、キャップ34を持ち上げることを可能にする。密封リップ部42が、湿潤空間キャビティ35の周囲に配置されており、キャップ34が閉じられたとき、液が漏れないように支持トラフ36を閉じる。
【0035】
このような密封キャップ34は、図8aおよび図8bで示されるように、把持装置17、19(図3)により持ち上げることができ、したがって、キャップ34は、把持装置17、19により試料容器を容器受入れ器16の中に挿入し、またはそこから取り外すために、試料容器12に対して枢動される。この目的のために、把持装置17、19、またはキャップ34は、対応する案内面52、54をそれらの下側に有しており、その結果、把持装置17、19の位置に応じて、キャップ34を持ち上げる、または下げるようにする。キャップ34は、重力および弾性リング40により事前に張力が加えられて、試料容器12上に載る閉じた位置になる。
【0036】
密封キャップ34は、個々に取り替えることができるが、リング40により共に接続される場合にはキャップリング全体として取り替えることができ、必要に応じて交換することができる。連続的なキャップリングは、取替えに要する時間を短く保つことができるため、このようなキャップ34の取替えには特に有利である。
【0037】
密封手段として設計されたキャップ34による密封カバーに対する代替として、図9で示された試料容器12の上方に、アルミニウムで特に作られた金属リング134を配置することも可能である。このような金属カバーはまた、リングの形態とすることができるが、あるいは容器受入れ器16ごとの個々のカバー要素とすることもできる。このようなカバーは、試料容器12の上側外周部と密封接触を行わないが、わずかな、かつ可能な限り最小の間隙Aが、カバー要素の下側と試料容器12の上側外周部との間に存在し、それが、試料容器12を、静的なカバー要素に下に挿入し、外すことを可能にする。密封のないカバー134のこの簡単な構成により、試料容器12は、試料液の蒸発を十分に制限できることが示されている。さらに、金属から作られるこのようなカバー134はまた、カバー134上に試料液が凝縮するのを阻止するために、かつ/または任意選択で、全体の培養期間中に、試料液を一定の温度へと加熱できるようにするために、熱導体として使用することもできる。カバー134が、非熱伝導性材料、または熱伝導性の低い材料から作られる場合、加熱装置、特に、赤外線加熱または同様のものなどを、カバーを加熱するためにさらに使用することができる。
【0038】
金属カバー134はまた、全体的にリング形状の設計である場合、洗浄または交換のために、回転体14から取り外して、再度配置することもできる。
図10は、本発明による方法を実施するための装置の代替的な実施形態を示す。この装置110では、容器受入れ器116が、行列またはアレイ状に、互いに対して垂直上方に配置され、また互いに対して隣に水平に配置される。容器ホルダ114は、プレート状の、またはブロック設計を有しており、また容器受入れ器116は、開口部としてその中に形成される。容器ホルダ114、および容器受入れ器116内に保持された容器112を振動して運動できるようにするために、容器ホルダ114は、振動運動のための駆動装置としてフランジ117上のプランジャコイル120に接続される。さらに、容器ホルダ114は、振動方向にレール125に沿って動くことのできる軸受121を有する。レール125は、さらなるフレーム要素122に取り付けられる。容器搭載手段118は、容器受入れ器116に搭載し、取り外すために使用され、容器ホルダ114に対して、水平方向HRならびに垂直方向VRに動くことができ、容器搭載手段118が任意の容器受入れ器116へと移動できるようにする。代替的に、容器ホルダ114は、1方向、すなわち、垂直方向または水平方向に移動することができ、また容器搭載手段118は、個々の容器受入れ器116が、容器搭載手段118および容器ホルダ114の同時の相対運動によりアクセスされうるように、他の方向に動くことができることも考えられる。第1の実施形態と同様に、容器112はまた、キャップ134で覆われることが好ましい。例えば、さらに加熱フォイル(図示せず)を、容器ホルダ114の背面側に取り付けることもできる。完全にするために、容器ホルダ114の振動運動を検出し、かつそれに応じて、図示されていない制御ユニットにより、プランジャコイル120を制御できる線形センサが127で示されることも言及しておく。
【図1a)】

【図1b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液が、特に固定された反応物質を有する支持体の表面(38)上で混合処理を受ける、前記試料液中のアナライトを検出するための方法であって、前記固定された反応物質に対する支持面として基本的に平坦な底面(38)を備える特にトラフ状の容器(12)が、前記試料液用の容器(12)として使用され、
前記試料液が、前記混合処理中に、1方向に、好ましくは線または曲線に沿った前記容器(12)の振動運動により、前記固定された反応物質に対して動くことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記容器(12)が、約1から50ヘルツ、好ましくは約10から20ヘルツの周波数で、かつ6ミリメートル未満の振幅、好ましくは約0.2から4ミリメートル、最も好ましくは約1から2ミリメートルの振幅で振動することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容器(12)の前記振動運動が、前記容器(12)の前記平坦な底面(38)に対して基本的に平行に行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記容器(12)が、容器ホルダ(14)内で振動する、またはいくつかの容器(12)が、共通の容器ホルダ(14)内で同時に振動することを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の方法。
【請求項5】
各容器(12)が、前記各容器に割り振られた駆動装置により振動する、または前記容器ホルダ(14)内のいくつかの容器(12)、および特にすべての容器(12)が、共通の駆動装置(20)により振動することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記容器(12)が、前記振動の前にカバー要素(34)により覆われ、かつ特に密封されることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6の一項に記載された方法を実施するための装置であって、試料液に対する少なくとも1つの容器(12)を受け入れるための少なくとも1つの容器ホルダ(14)を備え、前記容器ホルダ(14)、およびその中に含まれる前記容器(12)が、1方向に、好ましくは線または曲線に沿って振動して動くことができるように設計された少なくとも1つの駆動装置(20)を有することを特徴とする装置。
【請求項8】
いくつかの容器受入れ器(16)を備える単一の容器ホルダ(14)と、前記容器受入れ器(16)内に保持されるすべての容器(12)を同時に振動させることのできる単一の駆動装置(20)とを備えることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
容器搭載手段(18)をさらに備え、前記容器搭載手段(18)および前記容器ホルダ(14)が、容器(12)を特定の容器受入れ器(16)へと挿入するために、互いに対して移動できることを特徴とする、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
前記容器ホルダの前記駆動装置(20)が、前記振動運動を生成する機能に加えて、容器(12)を各容器受入れ器(16)に挿入するために、またはこの容器受入れ器から取り出すために、前記各容器受入れ器(16)を、前記容器搭載手段(18)に対して所定の位置に配置できるように、静的な前記容器搭載手段(18)に対して前記容器ホルダ(14)を移動させる少なくとも1つのさらなる機能を有するように設計されることを特徴とする、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記容器ホルダ(14)が、円形の設計を有しており、また特に規則的に分布した、その円周縁部に沿って前記容器受入れ器(16)を有することを特徴とする、請求項8から10の一項に記載の装置。
【請求項12】
前記容器(12)が前記容器受入れ器(16)内に挿入されたとき、前記容器(12)を覆うカバー手段(34、134)をさらに備えることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記カバー手段(34)が、密封手段(34、42)として構成され、かつ挿入状態にある前記容器(12)を密封して閉じることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記容器搭載手段(18)は容器把持装置(17、19)を備え、前記密封手段(34、42)および前記容器把持装置(17、19)が、前記容器(12)を前記容器受入れ器(16)中に挿入する、またはそこから取り外す過程におけるそれらの相互作用の結果、前記密封手段(34、42)が、前記容器(12)から離れて保持されるように設計されることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記振動運動のための前記駆動装置が、トルクモータ(20)、ステッピングモータ、あるいは前記容器ホルダ(14)に接続されたプランジャコイルであることを特徴とする、請求項7から14の一項に記載の装置。
【請求項16】
前記容器ホルダ(14)の前記駆動装置(20)を、特にその振動運動、および好ましくは前記容器搭載手段(18)に対する送り運動、または前記容器搭載手段の送り運動を制御する、または規制することができるように設計された制御ユニットをさらに有することを特徴とする、請求項7から15の一項に記載の装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a)】
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【図8b)】
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【図9a)】
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【図9b)】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−509571(P2013−509571A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535714(P2012−535714)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063452
【国際公開番号】WO2011/051048
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】