説明

試飲装置

【課題】小型で、構造が簡単で、洗浄の手間を低減できる飲料の試飲装置を提供することをその目的とする。
【解決手段】複数種類の飲料が充填された複数本の容器が上下反転されて回転手段に取り付けられ、当該容器の開口部には下側から押圧されることで開口部を開放する開閉手段を設け、回転手段により試飲対象の飲料が充填された容器を試飲可能位置に移動させるとともに、移動手段が、試飲のための試飲用の器を移動させて開閉手段を試飲用の器自体(または、器を移動させる際に器が載置されている載置台または、載置台と一体的に移動する部材)で押圧することで、試飲用の器に対象の飲料を注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は種々の飲料を試飲することができる試飲装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コインを投入することで飲料(例えば酒)を試飲可能とする技術としては、ボックスの内部に複数本のビン詰め酒を前側傾斜状態にして多段多列に配設し、ビン詰め酒の口部に連設した管体の先端部をボックスの正面の開口部からボックスの外に突出せしめた酒の試飲装置であって、管体の途中に貯め部を設け、貯め部内に常時一定量の酒が満たされるように構成し、ボックスにコインを投入することで、貯め部内の酒が導出されるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
しかしながら、上記の従来技術では、試飲装置内に、管体や貯め部など、飲料瓶の他に飲料が直接接触する部材が設けられているため、定期的に温水による洗浄作業を行わない限り、細菌やカビなどの発生を招くおそれがあった。特に試飲対象の飲料が日本酒の場合、糖分が多く熱量が高いため、頻繁に洗浄作業を行う必要性が高い。従って、上記の従来技術においては、管体や貯め部を洗浄のために頻繁に装置から取り外さねばならないなどの不都合が存在した。また、仮に自動的に洗浄作業が行われるようにするには、試飲装置の設置に際して給排水の設備や給湯設備を必要とするので、試飲装置の設置に関わる工数やコストを増大させる要因となっていた。
【0004】
また、断熱ボックスの内部に瓶の傾斜載置棚と、空調装置とを設置し、装置の全面部分に瓶内の飲料を外部に導く連結ホースのための連結孔と定量排出弁機構を設け、常に断熱ボックス内を飲料の貯蔵に最適な状態に維持する技術が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
しかしながら、この場合には、試飲装置の前面から、装置内の瓶と同数の定量排出弁機構が露出しており、選択した銘柄に対応する定量排出弁機構に試飲用の器を持っていかなければならず、使い勝手が悪く、且つ装置が大型化、複雑化する不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−272109号公報
【特許文献2】実開平6−3161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の従来技術の問題点に鑑みて案出されたものであり、小型で、構造が簡単で、洗浄の手間を低減できる飲料の試飲装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、飲料が充填された複数本の容器が収納されており、当該容器の開口部には下側から押圧されることで開口部を開放する開閉手段を設け、使用者が試飲用の器を載置台に載置した際に、搬送手段が、試飲用の器及び載置台を移動させて試飲用の器や載置台または載置台と一体的に移動する部材で開閉手段を押圧することで、試飲用の器に対象の飲料を注入することを最大の特徴とする。
【0009】
より詳しくは、飲料が充填された複数本の容器を収納し、
前記複数本の容器の各々の開口部に設けられ、前記開口部を常時閉鎖するとともに、下側から押圧部を押圧されることで前記開口部を開放して前記容器内の飲料を排出可能とする開閉手段と、
使用者が試飲用の器を載置する載置台と、
前記載置台及び該載置台に載置された前記試飲用の器を移動させ、前記容器に設けられた前記開閉手段の前記押圧部を、前記試飲用の器、前記載置台または前記載置台と一体的に移動する部材によって押圧する搬送手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
これによれば、使用者が載置台に載置した試飲用の器に容器から直接飲料を注入するので、試飲装置内に飲料を通過させる配管を設ける必要がない。従って、試飲装置の構造を簡略化できるとともに、飲料自体が接触する部材を、容器と、開閉手段と、試飲用の器のみに限定することができるので、洗浄対象を減少させることができる。具体的には、容器と、開閉手段と、試飲用の器とを交換式とすることで、装置自体の洗浄箇所を無くすことができ、容易に装置を清潔に維持することができる。
【0011】
また、本発明においては、前記複数本の容器のうち試飲対象の飲料が充填された容器を試飲可能位置に移動させる移動手段をさらに備え、
前記搬送手段は、前記載置台及び該載置台に載置された前記試飲用の器を移動させ、前記試飲可能位置おける、試飲対象の飲料が充填された前記容器に設けられた前記開閉手段の前記押圧部を、前記試飲用の器、前記載置台または前記載置台と一体的に移動する部材によって押圧するようにしてもよい。
【0012】
すなわち、本発明においては、移動手段によって試飲対象の飲料が充填された容器を試飲可能位置まで移動させ、搬送手段が、載置台に載置された試飲用の器を試飲可能位置に移動した容器の開口部まで移動させる。従って、載置台及び搬送手段は、試飲用の器を試飲可能位置まで搬送するものを一つだけ備えればよく、各容器に対して備える必要がない。これにより、装置の構造を簡略化及び小型化することができ、装置コストを低減することができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、試飲者が、試飲対象の飲料が充填された容器が試飲可能位置に移動して、自分が載置台に載置した試飲用の器が移動する過程を見ることができ、魅力的な視覚的効果を得ることができる。
【0014】
また、記試飲可能位置おける、試飲対象の飲料が充填された前記容器に設けられた前記開閉手段の前記押圧部を、前記試飲用の器、前記載置台または前記載置台と一体的に移動する部材によって押圧するようにしたので、前記容器から試飲用の器に注ぐための機構を簡略化することができる。
【0015】
また、本発明においては、前記移動手段は、
飲料が充填された前記複数本の容器を上下反転した状態で保持する保持手段と、
該保持手段を鉛直方向の軸回りに回転させ前記複数本の容器のうち試飲対象の飲料が充填された容器を試飲可能位置に配置させる回転手段と、
を有するようにしてもよい。
【0016】
これによれば、回転手段が保持手段を所定角度回転させるという簡単な動作で、試飲対象の飲料が充填された容器を試飲可能位置に移動させることができる。また、容器内の飲料を自重のみの作用で試飲用の器に注ぐことができるので、機構を簡略化することができる。
【0017】
また、本発明においては、装置内部を所定の低温に維持する冷蔵機をさらに備え、
前記複数本の容器と、前記移動手段と、前記開閉手段は、装置内部に配置され、
前記載置台は、試飲時以外は装置の外部に配置され、
前記搬送手段は、試飲時に、前記載置台に載置された前記試飲用の器を、装置の外部から装置内部に移動させるようにしてもよい。
【0018】
これによれば、試飲用の飲料を常に低温保存することが可能である。また、冷蔵機によって冷却された装置内部を、必要最低限の機会に必要最低限の量だけ開放すればよいので、冷蔵装置の冷蔵効率を向上させることが可能である。
【0019】
また、本発明においては、各々の前記開閉手段に設けられた前記押圧部が押圧された回数を計数する計数手段と、
前記計数手段によって計数された、前記押圧部が押圧された回数が所定回数に達した場合に、当該開閉手段が設けられた前記容器からの試飲を禁止する試飲禁止手段をさらに備えるようにしてもよい。
【0020】
これによれば、各容器内の飲料の残量が少なくなり試飲不可能となる状態を、センサで水面高さを測るなどの処理なしに検出することが可能である。これにより、装置内の電気配線を可及的に減少させることができ、装置構成をより単純化できる。その結果、洗浄作業がより容易になり、装置コストを低減することが可能になる。
【0021】
また、本発明においては、装置内部を所定の低温に維持する冷蔵機をさらに備え、
前記複数本の容器と、前記移動手段、前記搬送手段、前記開閉手段及び前記載置台は、装置内部に配置され、
試飲時には前記試飲用の器を装置内部の前記載置台に載置させるために開かれて装置内部を外部に開放するとともに、非試飲時には閉鎖されて装置内部と外部とを遮断する器用開き戸をさらに備えるようにしてもよい。これによれば、簡単な機構で搬送手段を構成可能で装置コストの低減を促進できる。また、装置内部の密閉性を向上させることができ、装置内部を冷蔵する際の効率を向上させることが可能である。
【0022】
また、この場合は、前記器用開き戸が開かれている期間中は前記搬送手段の作動を禁止するようにしてもよい。そうすれば、器用開き戸が開放され外部から人の手や異物が侵入可能な状態で前記搬送手段が作動することを防止できる。従って、装置の信頼性及び安全性を向上させることができる。
【0023】
また、本発明においては、前記移動手段及び飲料が充填された前記複数本の容器を外部から観察可能とする透光性の窓と、
前記移動手段及び飲料が充填された前記複数本の容器を照明する照明手段をさらに備え、
前記照明手段は前記移動手段及び飲料が充填された前記複数本の容器を、装置内部の前記窓側から照明するようにしてもよい。
【0024】
これによれば、外部から、前記移動手段及び飲料が充填された前記複数本の容器をより明瞭に観察することが可能となり、試飲対象をより明確に認識することができるとともに、移動手段及び容器の動きをより明確に観察することができ、魅力的な視覚的効果を得ることが可能となる。
【0025】
なお、上記した本発明の課題を解決する手段については、可能なかぎり組み合わせて用いることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にあっては、試飲装置を小型化しまたは、構造を簡略化することができ、さらに、装置の洗浄方法を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1における試飲装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例1における運搬装置の水平方向の搬送機能を説明するための図である。
【図3】本発明の実施例1における運搬装置の垂直方向の搬送機能を説明するための図である。
【図4】本発明の実施例1における酒瓶の移動方法のバリエーションについて説明するための図である。
【図5】本発明の実施例2における試飲装置の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例3における試飲装置の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の実施例3における回転機構の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の実施例3における回転機構を上からみた図である。
【図9】本発明の実施例3における回転機構の詳細を説明するための図である。
【図10】本発明の実施例3における定量排出機構および定量排出機構ホルダの概略構成および取り付け方法を説明するための図である。
【図11】本発明の実施例3における回転機構及び昇降機構の概略構成を示す図である。
【図12】本発明の実施例3における昇降機構の概略構成を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施例3におけるメッセージ表示部に表示されるメッセージの例を示す図である。
【図14】本発明の実施例3における昇降機構の作動を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る試飲装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
〔実施例1〕
図1には、本発明の実施例に係る酒の試飲装置1の概略構成について示す。図1(a)は、試飲装置1の平面図を、図1(b)は、試飲装置1の正面図を示す。試飲装置1の正面には透光性の開き戸2が設けられており、内部の機構を見ることが可能となっている。この開き戸2は、その左端部を中心に外側に回動することで開扉可能になっている。そして、この開き戸2を開閉することで、後述する酒瓶10や定量排出機構12を交換することが可能になる。
【0030】
また、試飲装置1の正面には、操作部3が設けられている。操作部3には、酒の銘柄が表示された表示部3a、試飲する銘柄を選択するための選択ボタン3b、該当する銘柄の酒が売り切れ状態で試飲できない旨を表示する売り切れ表示部3cが設けられている。表示部3aの内部には照明装置が配置されており、暗闇でも酒の銘柄を識別することが可能になっている。また、該当する銘柄の酒が売り切れ状態になった場合には、選択ボタン3bが押せない状態となり、売り切れ表示部3cの表示色が緑から橙に切り替わるようになっている。また、操作部3の下側には、コインを投入するためのコイン投入部4が設けられている。試飲者は、指定された金額のコインをコイン投入部4に投入し、操作部3で所望の飲料を選択して選択ボタン3bを押すという作業を行う。
【0031】
試飲装置1内の底部付近には冷蔵機5が備えられている。この冷蔵機5によって試飲装置1の内部は5〜10℃に維持されるようになっている。このことにより、試飲装置1内に保存されている酒類の品質を良好に維持することが可能になっている。
【0032】
試飲装置1の開き戸2から見える部分には、保持手段としての円板状の保持部11が軸が鉛直方向になるように設けられている。この保持部11は、回転手段としての図示しないモータによって軸の周りに(水平方向に)回転可能となっている。また、保持部11の外周付近には、60度間隔で、酒瓶10を固定するための固定部11aが備えられている。固定部11aには、酒瓶10が注ぎ口を下にした状態で固定される。ここで、保持部11、固定部11a及びモータは、本実施例における移動手段を構成する。
【0033】
また、酒瓶10の注ぎ口には開閉手段としての定量排出機構12が取り付けられている。この定量排出機構12は、常時は注ぎ口を閉鎖しており、押圧部12aが猪口などの器により上側に押圧されることで、酒瓶10の注ぎ口を開放し、酒瓶10の中の酒をノズル12bより器に注入することが可能となる。そして、器内の液面がノズル12bの先端に達した時点で注入が自動的に停止する。これは、液面がノズル12bの先端に達することで、酒瓶10内に空気が侵入不可能となるため、酒瓶10内の酒も排出不可能となる原理を用いたものである。
【0034】
また、試飲装置1の開き戸2の下側には、試飲者が試飲用の器を載置するとともに酒が注入された器を取り上げるためのカウンタ7が備えられている。カウンタ7の近傍には、試飲者がセットした器を装置内に運搬し、この器に定量排出機構12を押圧させて酒を注入させ、さらに酒が満たされた器を試飲者の手元に戻す搬送手段としての運搬装置15が備えられている。この運搬装置15の詳細について図2及び図3を用いて説明する。図2において、図2(a)は試飲者による試飲を待つ待機状態を示している。すなわち、試飲者が試飲用の器150を、載置台151に載置可能な状態を示す。この時点では、載置台151は、開き戸2の外部に、カウンタ7の上に載置されるように配置されている。
【0035】
次に図2(b)は、運搬装置15が第一段階として器150を水平方向に運搬した状態を示している。運搬装置15は、前述のように器150を載置する載置台151を備えている。また、載置台151を試飲装置1の前後方向に水平移動させる第一エアシリンダ152を備えている。その結果、載置台151はカウンタ7及びベース153に対して、前後方向(図2(a)における左右方向)に移動可能に第一エアシリンダ152と連結されている。また、第一エアシリンダ152はベース153に固定されている。
【0036】
第一エアシリンダ152を作動させることで、図2(b)に示すように、ロッド152a及び載置台151が図2(b)中の矢印方向に空気圧で引き寄せられる。この際に、観音戸2a、2bは、図示しない観音戸用エアシリンダの作動により内部側に開く。そして、載置台151及び器150は、観音戸2a、2bが開いている間に観音戸2a、2bを通過して、試飲装置1の内部に移動する。
【0037】
次に、図3について説明する。図3(a)は、図2(b)と同等の状態、すなわち、第一エアシリンダ152によって載置台151及び器150が試飲装置1の内部に運搬された状態を示す。図3(b)は、その後に器150、載置台151及びベース153が垂直上方に移動した状態を示す。図3(b)に示すように、運搬装置15は、ベース153を試飲装置1の上下方向に垂直移動させる第二エアシリンダ154を備えている。第二エアシリンダ154は空気圧によって上下運動可能なロッド154aによってベース153と連結されている。
【0038】
そして、図3(a)の状態において、第二エアシリンダ154が作動することで、ベース153と、第一エアシリンダ152、載置台151が試飲装置1の上側に移動する。そして、その停止位置において、器150は、定量排出機構12の押圧部12aを押圧し、酒瓶10内の酒が器150内に注入される。そして、その水面がノズル12bの先端に達
した時点で注入が停止する。その後、第二エアシリンダ154が逆に作動し、ベース153と、器150、載置台151は装置内を垂直に下降し、図3(a)の状態に戻る。さらに第一エアシリンダ152が逆に作動して、図2(a)の待機状態と同じ位置まで戻る。その後、観音戸2a、2bが閉じ、試飲装置1内の冷気が保存される。なお、観音戸2a、2bには、閉じた状態でもロッド152aが貫通可能な微小孔(図示せず)が設けられている。
【0039】
次に、試飲装置1の試飲動作時の作動について説明する。試飲者は、試飲用の器150を載置台151に置くとともに、コイン投入口4に所定金額のコインを投入する。そして、操作部3において表示部3aを見ながら所望の銘柄の酒を選択し、また、売り切れ表示部3cを見て選択した酒が売り切れていないことを確認し、選択ボタン3bを押す。そうすると、まず、図示しないモータの作動により保持部11が回転して、選択された銘柄の酒の入った酒瓶10が試飲装置1の正面まで移動する。この位置は本実施例において試飲可能位置に相当する。そして、運搬装置15の第一エアシリンダ152が作動して載置台151及び器150が水平奥方向に移動するとともに、観音戸2a、2bが開く。そして、第一エアシリンダ152は、器150が試飲装置1内部に進入し、装置正面側に移動した酒瓶10の注ぎ口の真下になる位置で停止する。なお、載置台151には、試飲者が試飲用の器150を載置台151に置いたことを検出するセンサ(不図示、例えば光電センサ)が設けられており、このセンサが器150の存在を検出しない限り、試飲者が選択ボタン3bを押しても、上記の作動が行われないようになっている。
【0040】
次に、第一エアシリンダ152が作動している状態で、さらに第ニエアシリンダ154が作動する。これにより、器150、載置台151及び第一エアシリンダ152及びベース153が鉛直上側に移動する。そして、器150が、定量排出機構12の押圧部12aを押圧した状態で停止する。従って、その停止位置において酒瓶10内の所望の銘柄の酒が器150内に自重で注入される。そして、液面が定量排出機構12のノズル12bの先端の位置に達したところで、空気が酒瓶10内に流入することができなくなるので、それ以上の酒の注入が禁止される。
【0041】
第二エアシリンダ154は、停止位置において酒瓶10から器150に酒が注入され停止するために充分な時間だけ正方向(図3における上方向)への作動を継続した後、逆方向(図3における下方向)に作動する。そうすると、器150、載置台151、第一エアシリンダ152及びベース153は下降し、図3(a)に示した垂直位置に戻る。さらに、第一エアシリンダ152が逆方向に作動し、器150及び載置台151が装置前方側に水平移動し、装置の外部に出て待機位置に戻る。そして、観音戸2a、2bが閉じる。これにより、試飲者は、試飲用の器150を取り上げて所望の銘柄の酒を試飲することが可能になる。
【0042】
ここで、試飲装置1の使用にあたっては、予め指定された形状の器150が用いられる。また、酒瓶10の容量は計測可能であるので、各々の酒瓶10内の酒が何回の試飲で空になるかを予め知ることができる。従って、保持部材11に保持された酒瓶10における定量排出機構12の作動回数から、酒瓶10内の酒の量が充分に多いかどうかを計数手段としてのカウンタによって判定することが可能である。すなわち、酒瓶10の交換時にカウンタをリセットしておき、その酒瓶10が試飲者によって選択され試飲された回数をカウントすることで、酒瓶10内の酒が無くなったか、あるいは試飲不能なほど少なくなったことを検知する。そして、本実施例では、酒瓶10内の酒が無くなったか、あるいは試飲不能なほど少なくなったことが検知された場合には、前述のように、選択ボタン3bが押せない状態となり、売り切れ表示部3cの表示色が緑から橙に切り替わるが、この作動は装置内に設けられたマイコン(不図示)によって行われる。このマイコン及び選択ボタン3b、売り切れ表示部3cは、本実施例において試飲禁止手段を構成する。
【0043】
以上、説明したように、本実施例に係る試飲装置1においては、試飲者が所望の銘柄の酒を選択することで、目的の酒が入った酒瓶10がモータと保持部材11の作動によって試飲可能位置まで移動させる構成になっている。従って、各酒瓶10から器150近傍まで酒を流動させる配管が不要となり、装置の構造を簡略化することができる。また、器150への酒の注入場所は1箇所に限定されるので、載置台151は一つだけ備えていればよく、装置全体を小型化することができる。
【0044】
また、本実施例においては、試飲装置1の内部が5〜10℃の低温に維持されているところ、器150の載置台151は、待機状態においては試飲装置1の外部にあり、運搬装置15の作動によって装置内に移動するので、装置内外の物の移動を最低限に抑えることができ、冷蔵機5による装置内部の冷蔵効率を高くすることができる。なお、上記の実施例では観音戸2a、2bは、観音戸用エアシリンダで自動的に開閉する方式としたが、載置台151及び器150が通過する際に観音戸2a、2bを押し開けるような構成にしてもよい。また、観音戸2a、2bを省略して、例えば待機状態においては、載置台151自体が、観音戸2a、2bが設けられるべき開き戸2の開口部を閉鎖し、載置台151及び器150が装置内部に進入している間だけは開口部と外部の間の空気の流通が許可されるような構成にしてもよい。
【0045】
さらに、本実施例では、酒瓶10から定量排出機構12を介して直接に器150に酒が注入される。従って、酒が接触する部材を必要最低限に抑えることができ、装置の洗浄が著しく簡素化される。実際には、酒瓶10を交換する際には、酒瓶10と定量排出機構12とが一体となって保持部材11から取り外されるので、試飲装置1の外部で酒瓶10及び定量排出機構12を洗浄すれば済む。また、交換用の酒瓶10と洗浄済みの定量排出機構12とを予め準備しておくことで、交換作業が簡略化するとともに、交換前後の酒が不用意に混ざり合うここともない。また、本実施例では洗浄作業のための給排水設備や給湯設備が不要であるので、試飲装置1の設置場所の自由度を大幅に向上させることができる。
【0046】
加えて、本実施例では、各酒瓶10内の酒の量を、センサを用いずに、定量排出機構12の作動回数をカウントすることのみで行なっているため、センサ自体や当該センサからの配線を不要にすることができ、装置が簡略化できる。また、装置の洗浄や酒瓶の交換をより容易にすることができる。
【0047】
なお、上記の実施例においては、酒の試飲装置を例にとって説明したが、試飲の対象は酒に限られないことは当然である。例えば試飲対象は、果汁などを含んだジュース飲料の他、コーヒー、茶、牛乳、豆乳、ココア、水、酢、焼酎、洋酒などの飲料であってもよい。しかしながら、酒(日本酒)は糖分が多く熱量が高いため、放置しておくとカビなどが非常に発生し易いことが知られている。従って、本発明に係る試飲装置を日本酒に適用することで、本発明の効果をより顕著にすることができる。
【0048】
なお、本実施例においては、載置台151及び器150の移動のために、第一エアシリンダ152及び、第二エアシリンダ154を用いたが、載置台151及び器150を移動させるための駆動源はこれらのエアシリンダに限られない。例えば、モータとボールねじを用いた直動装置を用いてもよいし、リニアモータを用いてもよいことはもちろんである。
【0049】
また、本実施例においては、試飲者が選択ボタン3bを押すことで保持部11が回転し、選択された銘柄の酒の入った酒瓶10が試飲装置1の正面(試飲可能位置)まで移動する構成とした。しかしながら、酒瓶10を試飲装置1の正面(試飲可能位置)まで移動さ
せる機構はこれに限られるものではない。例えば、図4に示すような機構を用いてもよい。
【0050】
図4(a)には、直線運動によって、選択された銘柄の酒の入った酒瓶10を試飲装置1の正面まで移動させる例を示す。この場合は、円板状ではなく矩形状の保持部材21を有しており、酒瓶10は保持部材21において直線状に並べられて固定されている。この保持部材21は、図示しないモータと、ラック及びピニオンギアまたは、ボールねじを用いて、試飲装置1の幅方向(図4(a)の左右方向)に直線運動することが可能となっている。そして、試飲者が選択ボタン3bを押すことで選択された銘柄の酒瓶10を直線的に試飲装置1の正面に移動させる。
【0051】
これによれば、図4(a)に示すように、試飲装置1の厚みを抑えることが可能である。また、開き戸2aを開放することで保持部材21に保持されている酒瓶10の全てを交換することが可能である。
【0052】
次に、図4(b)には、楕円状の曲線運動によって、選択された銘柄の酒の入った酒瓶10を試飲装置1の正面まで移動させる例を示す。この場合は、保持部材31は変形可能なベルトまたは、多部材が連結したチェーン状の部材を楕円状または長円状に形成し、この保持部材31に酒瓶10を複数個固定している。そして、保持部材31は図示しないモータ及び、ベルトに圧接されたローラまたはチェーン状の部材とかみ合うギアを用いて楕円または長円の外形に沿って移動することが可能になっている。そして、試飲者が選択ボタン3bを押すことで選択された銘柄の酒瓶10を楕円または長円の軌道上を移動させ試飲装置1の正面に移動させる。
【0053】
これによれば、図4(a)に示すように、保持部材を円板状にした場合と比較して試飲装置1の厚みを抑えることが可能である。また、保持する酒瓶の数に応じて、楕円または長円の長さ、幅などを容易に変更することが可能である。なお、ベルトやチェーン状の部材の形状は楕円または長円に限られず、より自由な形状を採用することも可能である。
【0054】
〔実施例2〕
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2においては、運搬装置は、試飲者により載置された器を前後方向には運搬せず、上下方向にのみ運搬する例について図5を用いて説明する。
【0055】
図5(a)には本実施例における試飲装置20の正面図を、図5(b)にはA−A断面図を示す。図5から判るように、本実施例における試飲装置20では、運搬装置25は、試飲装置20の前後方向に器250を運搬する機能を有さず、上下方向にだけ運搬する機能を有する。
【0056】
試飲者が器250を載置台251に載置し、選択ボタン3bを押すと、まず実施例1と同様、選択された銘柄の酒が入った酒瓶10が試飲装置20の正面に移動する。そして、エアシリンダ254が作動し載置台251及び器250を上方に押し上げる。そして、押し上げられた載置台251及び器250は、観音戸22aを押し開けて試飲装置20の内部に進入する。そして、そのまま定量排出機構12の押圧部12aを器250で押圧することで、酒瓶10内の酒が器250内に注入される。
【0057】
そして、その水面がノズル12bの先端に達した時点で注入が停止し、エアシリンダ254が逆に作動し、器250と載置台251を装置内を垂直に下降させ、図5に示す状態に戻る。
【0058】
本実施例によれば、運搬機構25の構成をより簡単にすることができ、試飲装置20のコストを低減することが可能になる。また、保持部材11を回転させるためのモータ11bをより簡単に装置内に配置することができ、このことによっても装置内の構造を簡略化することが可能になる。
【0059】
なお、本実施例においても、酒瓶10は、円板状の保持部材に保持され回転により試飲可能位置に移動される構成には限られない。前述のように、直線運動により移動してもよいし、ベルトやチェーン状の部材により他の曲線運動により移動してもよい。また、載置台251を上下に移動させる駆動源も、エアシリンダでなく、モータと、ラック、ピニオンギアあるいはボールねじなどの運動変換機構を組み合わせたものであってもよい。さらに、観音戸22a、22bは、フリーに構成されており載置台251または器250により押し開けられる構成としてもよいし、他の駆動源により自動的に開閉する構成としてもよい。
【0060】
また、上記の実施例においては、試飲装置内に冷蔵機5が備えられ、装置内を冷却する例について説明したが、本発明は、冷蔵機5が備えられていない試飲装置にも適用することが可能である。その場合でも、本発明の冷気の維持効果以外の効果を充分に発揮することができる。
【0061】
また、上記の実施例においては、器150または器250が、運搬装置の作動により、直接に定量排出機構12の押圧部12aを押圧する例について説明したが、定量排出機構12の押圧部12aの押圧方法はこれに限られない。例えば、器150、250ではなく、載置台151、251の一部によって押圧部12aを押圧するようにしてもよいし、また、載置台151、251と一体に移動する部材によって押圧部12aを押圧するようにしてもよい。
【0062】
〔実施例3〕
図6には、本発明の実施例3に係る酒の試飲装置30の概略構成について示す。図6(a)は、試飲装置30の正面図を、図6(b)は、試飲装置30の側面図を示す。試飲装置30の正面には透光性の窓23aを有する開き戸32が設けられており、後述する内部の機構及び試飲用の酒瓶40が収納された空間である機構収納室300を外部から観察することが可能となっている。この開き戸32は、その左端部を中心に外側に回動することで開扉可能になっている。そして、この開き戸32を開閉することで、試飲用の酒瓶40や定量排出機構42を交換することが可能になる。
【0063】
また、試飲装置30の正面には、操作部33が設けられている。操作部33には、酒の銘柄が表示された表示部33a、試飲する銘柄を選択するための選択ボタン33b、該当する銘柄の酒が売り切れ状態で試飲できない旨を表示する売り切れ表示部33cが設けられている。表示部33aの内部には照明装置が配置されており、暗闇でも酒の銘柄を識別することが可能になっている。また、該当する銘柄の酒が売り切れ状態になった場合には、選択ボタン33bを押しても機能しない状態となり、売り切れ表示部33cの表示色が緑から橙に切り替わるようになっている。
【0064】
また、操作部33の下側には、コインを投入するためのコイン投入部34が設けられている。試飲者は、試飲する際には、指定された金額のコインをコイン投入部34に投入し、操作部33で所望の銘柄を選択して選択ボタン33bを押すという作業を行う。なお、本実施例における試飲装置30は液晶画面であるメッセージ表示部35を備えており、試飲者は、このメッセージ表示部35に表示されるメッセージに従って試飲装置30を操作すれば良くなっている。
【0065】
本実施例においても、試飲装置30内には図示しない冷蔵機が備えられており、この冷蔵機によって試飲装置30の内部は5〜10℃に維持されるようになっている。このことにより、試飲装置30内に保存されている酒類の品質を良好に維持することが可能になっている。
【0066】
また、試飲装置30の開き戸32には、試飲者が試飲用の器350を後述する載置台352に載置するための小扉である器用開き戸36が備えられている。この器用開き戸36は、右端を中心に開閉可能となっており、試飲者は試飲の際にはこの器用開き戸36を開いて試飲用の器350を載置台352に載置し、器用開き戸36を閉める。このように本実施例においては、載置台352は、試飲装置30の内部に備えられており、試飲装置30の外部には露出していない。また、この器用開き戸36には器用開き戸36が正常に閉扉していないことを検出する図示しない開閉センサが備えられている。そして、器用開き戸36が正常に閉扉していない場合には、後述する昇降装置60が作動せず、試飲用器350が昇降しないようになっている。従って、器用開き戸36から機構収納室300内に人の手や異物が差し入れられた状態で昇降装置60が作動することが抑制され、高い安全性を確保することが可能になっている。
【0067】
次に、図7を用いて、本実施例における回転機構50について説明する。本実施例では、保持手段としての保持部41が中心軸が鉛直方向を向くように設けられている。この保持部41は、上から見て略六角形の形状を有している。そして、保持部41は、下方から鉛直上方に延びるように機構収納室300の床部300aに回転可能に備えられたメインシャフト43の上端とその中心部において結合している。また、保持部41の上板41aには、上方向から見て60度間隔で同心円状に、垂直上方に延びるように固定用シャフト44が設けられている。この固定用シャフト44には、酒瓶40を保持するための下部ホルダ45が固定されている。
【0068】
下部ホルダ45は締め付け部材45a及び締め付けノブ45bを有しており、締め付けノブ45bを回転させることにより締め付け部材45aが固定用シャフト44を締め付けることで、下部ホルダ45は固定用シャフト44に固定される。また、締め付けノブ45bを回転させて締め付け部材45aによる固定用シャフト44の締め付けを緩めることで、下部ホルダ45の高さ調整をすることが可能になっている。下部ホルダ45は概略円筒状のホルダ部45cを有しており、このホルダ部45cで酒瓶40の肩の部分を受けることで酒瓶40を保持する。このホルダ部45cにおける保持部41の外周側にはスリット45dが設けられており、このスリット45dを通じて酒瓶40を下部ホルダ45に横方向からセットすることが可能となっている。
【0069】
また、下部ホルダ45にはさらに、上部ホルダ用シャフト47が垂直上方に延びるように設けられている。そして上部ホルダ用シャフト47の上端付近には酒瓶40の底部を保持するための上部ホルダ49が上下に摺動移動可能に設けられている。また、この上部ホルダ49は、引張りバネ48によって下方に付勢されている。
【0070】
また、保持部41の側板41bには定量排出機構42が定量排出機構ホルダ52を介して固定されている。この定量排出機構42は、常時は酒瓶40の注ぎ口を閉鎖しており、押圧部42aが上側に押圧されることで、酒瓶40の注ぎ口を開放し、酒瓶40の中の酒を定量排出機構42内の貯留室42cに移動させる。同時に、既に貯留室42cに貯留している酒をノズル42bより試飲用の器350に注入する。このように、酒瓶40は、その注ぎ口が定量排出機構42に結合して支えられるとともに、肩部が下部ホルダ45によって保持され且つ底部が上部ホルダ49によって保持されている。このことにより、酒瓶40は保持部41に固定されている。
【0071】
図8には、本実施例の回転機構50を上から見た場合の図を示す。図8(a)は図7における断面A−A、図8(b)は図7における断面B−B、図8(c)は上空から見た平面図を示す。図8に示すとおり、本実施例における回転機構50は、メインシャフト43を中心として定量排出機構42、酒瓶40が上から見て同心円状(または放射状)に並んだ構成をしており、これが回転することで、外部から機構収納室300を見る者が魅力的な視覚的効果を得ることが可能となっている。さらに、本実施例において各々の酒瓶40において銘柄のラベルが外周側になるように酒瓶40を保持部41に固定することで、外部から各酒瓶40の銘柄を視認し易くすることができる。
【0072】
なお、図8に模式的に示すように、本実施例における機構収納室300内には前方(開き戸32側)から回転機構50及び酒瓶40を照らす照明手段としての照明装置57を有している。また、機構収納室300の内壁の色は白色になっている。これによれば、照明装置57で酒瓶40を照らし外部から見えやすくするとともに、酒瓶40を透過した光により機構収納室300の内壁に酒瓶40を投影させることが可能となり、さらに回転機構50の回転することで投影された像が動くことになる。このことにより、さらに幻影的な視覚効果を作り出すことが可能となっている。なお、照明装置57としてはLED照明装置を用いても良い。そうすれば、照明による酒の劣化を抑制することができる。
【0073】
図9は、本実施例の回転機構50において、酒瓶40、下部ホルダ45、定量排出機構42を取り外した状態を示す部分断面図である。図9から分かるように、本実施例における保持部41は、SUSなどの金属板の絞り加工により、あるいは金属板の曲げ加工及び溶接により形成されている。この保持部41の横断面図を見ると前述のように上板41aと側板41bとから成っていることが分かる。また、保持部41の上板41aの上面に6本の固定用シャフト44がねじ止めされている。(図には4本のみ現れている。)また、保持部41における6面の側板41bの表面には定量排出機構ホルダ52がねじ止めされている。この定量排出機構ホルダ52は、蓋部52aとホルダ本体52bとからなり、蓋部52aとホルダ本体52bとの間の隙間であるホールド部52cに、定量排出機構42の固定アーム(後述)を挟み込むことによって定量排出機構42を固定している。この定量排出機構ホルダ52の構成は後に詳説する。
【0074】
保持部41の上板41aの下面には、メインシャフト43がねじ止めされている。このメインシャフト43は機構収納室300の床部300aにベアリング51を介して回転可能に支持されている。また、機構収納室300の床部300aの床下において、メインシャフト43の下端には、第一プーリ53が固定されている。また、機構収納室300の床部300aの床下には、メインシャフト43に回転力を与えるモータ55が設置されている。このモータ55は、モータ本体55aと減速器55bからなり、減速器55bの出力軸には第二プーリ56が設けられている。第一プーリ53と第2プーリ56とは、タイミングベルト54で結合されている。そして、モータ本体55aの回転運動が減速器55bで減速され、第二プーリ56、タイミングベルト54、第一プーリ53を介してメインシャフト43に伝達される。
【0075】
次に、図10を用いて、定量排出機構ホルダ52の詳細な構成について説明する。図10(a)は、定量排出機構ホルダ52を保持部41の外周側から見た図である。定量排出機構ホルダ52は、蓋部52aとホルダ本体52bを有し、ホルダ本体52bの中央部には紙面奥方向に溝状のホールド部52cが形成されている。ホールド部52cには、位置決めピン52eが設けられている。蓋部52aはホルダ本体52bに対して、図中右端の回転軸52gの周りに回動可能に結合されている。また、定量排出機構ホルダ52は、蓋部52aが閉じてホルダ本体52bの蓋がされた状態でロックするロック部材52fを有している。
【0076】
図10(b)は、定量排出機構42を定量排出機構ホルダ52で固定する際の固定方法を示している。ここで定量排出機構42には固定アーム42cが設けられている。固定アーム42cの下面42dは定量排出機構42の取り付け基準となっている。すなわち、押圧部42aやノズル42bの位置の基準はこの下面42dとなっており、この下面42dの高さを管理することで押圧部42aやノズル42bの高さを精度よく管理することができる。また、固定アーム42cには位置決め孔42eが形成されており、定量排出機構42の水平方向の位置はこの位置決め孔42eを利用して規制することが可能である。
【0077】
定量排出機構42を保持部41に固定する場合には、まず、保持部41の側板41bに定量排出機構ホルダ52のホルダ本体52bをねじ止め固定し、蓋部52aを開いた状態とする。ここでホルダ本体52bの基準面はホールド部52cの底面52dであり、ホルダ本体52bを側板41bにネジ止め固定する際には、底面52dの床部300aからの高さ及び水平度が調整される。そして、定量排出機構42の固定アーム42cを位置決め孔42eが位置決めピン52eに勘合するようにホールド部52cに装着する。ここで、ホールド部52cの幅(紙面垂直方向の寸法)は、固定アーム42cの幅(紙面垂直方向の寸法)より若干大きく設定されている。従って、固定アーム42cを位置決め孔42eが位置決めピン52eに勘合するようにホールド部52cに装着することで、定量排出機構42の定量排出機構ホルダ52に対する水平方向の位置を決めることが可能である。
【0078】
そして、蓋部52aを閉じてロック部材52fで蓋部52aをホルダ本体52bにロックする。ここで、固定アーム42cの厚みはホールド部52cの高さよりも若干厚く設定されている。従って、蓋部52aを閉めることで、固定アーム42cをホルダ本体52bと蓋部52aで挟み込むことができ、定量排出機構42の基準面である下面42dと、ホールド部52cの基準面である底面52dとが密接する状態にした上で固定することが可能となる。
【0079】
次に、本実施例における昇降機構60について説明する。図11には、前述の回転機構50に加えて昇降機構60を示す。試飲装置30においては、試飲用の器350は、上述のように器用開き戸36を開いて載置台352に載置されるが、この載置台352には試飲用の器350の水平方向の位置を安定させるための樹脂製のリング部351が設けられている。このリング部351は断面矩形状の部材がリング状に繋がった形状をしており、その内側に試飲用の器350が載置される。
【0080】
また、載置台352は移動台353の上に固定されており、移動台353に連結され床部300aの床下に位置する図示しないエアシリンダによって上下に移動する。また、移動台353には2本のシャフト354aが垂直上方に延びるように設けられており、この2本のシャフト354aに支えられる形で押圧部材354が固定されている。この押圧部材354は、上から見て矩形状の平板形状を有しており、試飲用の器350の上方に相当する部分にはノズル用孔354bが形成されている。
【0081】
また、機構収納室300の床部300aには、器検出装置70が設けられている。器検出装置70は、投受光部シャフト71に支持された投受光部72と、反射部シャフト73に支持された反射鏡75とからなり、載置台352に試飲用の器350が載置されていることを検出する。
【0082】
図12は、本実施例における昇降機構60の詳細な斜視図である。載置台352は、外枡352aと中蓋352bからなる。外枡352aは有底の枡状の形状をしており中蓋352bは枡状の器を上下反転させたような形状を有している。外枡352a及び中蓋352bはともにSUSなどの金属で形成されている。そして、中蓋352bには落水孔352cが多数形成されており、試飲用の器350から万が一に酒がこぼれた場合や酒の飛沫
が飛んだ場合に、外枡352aの内側に貯留されるようになっている。また、中蓋352bは外枡352aの内側に載置されているだけであるので、容易に外して清掃することが可能となっている。
【0083】
また、器センサ70の投受光部72には図示しないレーザーダイオード(以下、LDともいう。)が内蔵されており、LDから照射された光は、試飲用の器350がない場合には、載置台352の上空を通過して反射鏡75で反射され投受光部72に戻る。従って、試飲用の器350が載置台352に載置されていない場合には、投受光部72によって検出される反射光強度は多くなる。一方、試飲用の器350が載置台352に載置されている場合には、LDから照射された光は試飲用の器350に当たって乱反射されるため、投受光部72によって検出される反射光の強度は弱くなる。このように投受光部72で検出される反射光の強度によって、試飲用の器350が載置台352に載置されているか否かが判定される。
【0084】
次に、試飲装置30の試飲時の作動について順を追って説明する。まず初期状態においては、試飲装置30において回転機構50が作動しており、照明装置57で機構収納室300内が照明されることで、酒瓶40がゆっくり回転している姿が外部から観賞可能な状態となっている。また、表示部33aが点灯し試飲対象の酒の銘柄が容易に確認状態となっている。さらに、液晶画面であるメッセージ表示部35には、図13に示すようなメッセージが表示されている。
【0085】
試飲者は、試飲を行う際には先ず、メッセージ表示部35のメッセージに従い、器用開き戸36を開いて試飲用の器350を載置台352のリング部351に載置する。そして、器用開き戸36を閉じる。これにより、昇降機構60が作動可能な状態となる。次に、コイン投入口34に所定金額のコインを投入する。そして、操作部33において表示部33aを見ながら所望の銘柄の酒を選択し、また、売り切れ表示部33cを見て選択した酒が売り切れていないことを確認し、選択ボタン33bを押す。そうすると、選択された銘柄の酒の入った酒瓶40が試飲装置30の正面まで移動した際に、回転機構50は一旦停止する。なお、この位置は本実施例において試飲可能位置に相当する。ここで、図14(a)にはこの状態における回転機構50及び昇降機構60の状態を示す。
【0086】
続いて、図14(b)に示すように、昇降機構60の作動により載置台352及び押圧部材354が試飲用の器350とともに上昇する。そして、押圧部材354が、定量排出機構42の押圧部42aを押圧した状態で停止する。そうすると、定量排出機構42の貯留室42cに一時的に貯留されている所望の銘柄の酒がノズル42bから排出されノズル用孔354bを介して試飲用の器350内に注入される。
【0087】
昇降機構60は、上記の停止位置において定量排出機構42の貯留室42c内の酒が試飲用の器350に注入されるのに充分な時間だけ停止した後、元の位置まで下降する。そうすると、試飲用の器350、載置台352及び押圧部材354は図14(a)に示した位置に戻る。試飲者はこの動作を確認した後、器用開き戸36を再度開いて中から試飲用の器350を取り出し試飲する。この時点で回転機構50の回転運動は再開される。
【0088】
以上、説明したように、本実施例に係る試飲装置30においては、非試飲時でも常時、酒瓶40が回転機構50の作動によって回転している。従って、試飲機30を見る者に非常に魅力的な視覚的効果を与える。また、機構収納室300にはLED照明による照明装置57が設置されているため、照明装置57から照射され酒瓶40を照らす光が、酒瓶40を透過した後、機構収納室300の壁面に投影され、さらにその投影像自体が、酒瓶40の回転とともに移動するため、特別な視覚的効果を生ずる。
【0089】
また、本実施例においては、定量排出機構42の取り付け基準である固定アーム42cの下面42dを、定量排出機構ホルダ52の基準面であるホールド部52cの底面52dで受けて保持するため、定量排出機構42の押圧部42aの高さを精度よく管理することができる。従って、昇降機構60の昇降動作によって押圧部材354が定量排出機構42の押圧部42aを押圧する際の、押圧量を精度よく制御することができ、定量排出機構42から試飲用の器350への酒の注入量を精度よく調整することが可能である。
【0090】
また、本実施例では、試飲者が器用開き戸36を自分で開閉して試飲用の器350を載置台352に載置し、また、自分で器用開き戸36を開閉して載置台352上の試飲用の器350を取り出すこととしているので、機構が簡略化でき装置コストを押えることが可能となる。また、試飲装置30の密閉性を向上させることができ、装置内の冷蔵効果を向上させることが可能である。また、器用開き戸36が開いている場合には昇降機構60の作動が禁止されるので、装置の安全性を向上させることが可能である。
【0091】
さらに、本実施例では、試飲者がメッセージ表示器35に表示されるメッセージに従って試飲機30の操作を続けることができるので、より容易に正確に、試飲機30の操作を実行することが可能である。
【0092】
なお、本実施例において搬送手段は、移動台353及び床部300aの床下に位置する図示しないエアシリンダを含んで構成される。開閉手段は定量排出機構42を含んで構成される。保持手段は、保持部41、下部ホルダ45、上部ホルダ49を含んで構成される。回転手段はモータ55、第一プーリ53、第二プーリ56、タイミングベルト54を含んで構成される。また、載置台と一体的に移動する部材は押圧部材354を含んで構成される。
【0093】
なお、本実施例においても実施例1と同様、酒の試飲装置を例にとって説明したが、試飲の対象は酒に限られないことは当然である。また、本発明において移動手段は、試飲動作の有無に関わらず常時一定速度で移動(回転)をしていても構わないし、試飲動作時、例えば試飲者により試飲対象が選択された際に、移動速度(回転速度)を速くするなど変更するようにしても構わない。さらに保持部41は上から見て略六角形である必要はなく、五角形、八角形などの多角形状あるいは円形でも構わない。
【符号の説明】
【0094】
1・・・試飲装置
2・・・開き戸
2a、2b・・・観音戸
3・・・操作部
4・・・コイン投入部
5・・・冷蔵機
6・・・操作部
10・・・酒瓶
11・・・保持部
12・・・定量排出機構
15・・・運搬装置
20・・・試飲装置
22a、22b・・・観音戸
25・・・運搬装置
30・・・試飲装置
32・・・開き戸
35・・・メッセージ表示部
36・・・器用開き戸
40・・・酒瓶
50・・・回転機構
60・・・昇降機構
70・・・器検出装置
150・・・器
151・・・載置台
152・・・第一エアシリンダ
153・・・ベース
154・・・第二エアシリンダ
250・・・器
251・・・載置台
254・・・エアシリンダ
350・・・器
352・・・載置台
354・・・押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料が充填された複数本の容器を収納し、
前記複数本の容器の各々の開口部に設けられ、前記開口部を常時閉鎖するとともに、下側から押圧部を押圧されることで前記開口部を開放して前記容器内の飲料を排出可能とする開閉手段と、
使用者が試飲用の器を載置する載置台と、
前記載置台及び該載置台に載置された前記試飲用の器を移動させ、前記容器に設けられた前記開閉手段の前記押圧部を、前記試飲用の器、前記載置台または前記載置台と一体的に移動する部材によって押圧する搬送手段と、
を備えることを特徴とする試飲装置。
【請求項2】
前記複数本の容器のうち試飲対象の飲料が充填された容器を試飲可能位置に移動させる移動手段をさらに備え、
前記搬送手段は、前記載置台及び該載置台に載置された前記試飲用の器を移動させ、前記試飲可能位置おける、試飲対象の飲料が充填された前記容器に設けられた前記開閉手段の前記押圧部を、前記試飲用の器、前記載置台または前記載置台と一体的に移動する部材によって押圧することを特徴とする請求項1に記載の試飲装置。
【請求項3】
前記移動手段は、
飲料が充填された前記複数本の容器を上下反転した状態で保持する保持手段と、
該保持手段を鉛直方向の軸回りに回転させ前記複数本の容器のうち試飲対象の飲料が充填された容器を試飲可能位置に配置させる回転手段と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の試飲装置。
【請求項4】
装置内部を所定の低温に維持する冷蔵機をさらに備え、
前記複数本の容器と、前記移動手段と、前記開閉手段は、装置内部に配置され、
前記載置台は、試飲時以外は装置の外部に配置され、
前記搬送手段は、試飲時に、前記載置台に載置された前記試飲用の器を、装置の外部から装置内部に移動させることを特徴とする請求項2または3に記載の試飲装置。
【請求項5】
各々の前記開閉手段に設けられた前記押圧部が押圧された回数を計数する計数手段と、
前記計数手段によって計数された、前記押圧部が押圧された回数が所定回数に達した場合に、当該開閉手段が設けられた前記容器からの試飲を禁止する試飲禁止手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の試飲装置。
【請求項6】
装置内部を所定の低温に維持する冷蔵機をさらに備え、
前記複数本の容器、前記移動手段、前記搬送手段、前記開閉手段及び前記載置台は、装置内部に配置され、
試飲時には前記試飲用の器を装置内部の前記載置台に載置させるために開かれて装置内部を外部に開放するとともに、非試飲時には閉鎖されて装置内部と外部とを遮断する器用開き戸をさらに備えることを特徴とする請求項2または3に記載の試飲装置。
【請求項7】
前記器用開き戸が開かれている期間中は前記搬送手段の作動を禁止することを特徴とする請求項6に記載の試飲装置。
【請求項8】
前記移動手段及び飲料が充填された前記複数本の容器を外部から観察可能とする透光性の窓と、
前記移動手段及び飲料が充填された前記複数本の容器を照明する照明手段をさらに備え、
前記照明手段は前記移動手段及び飲料が充填された前記複数本の容器を、装置内部の前記窓側から照明することを特徴とする請求項2または3に記載の試飲装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−252688(P2012−252688A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−75243(P2012−75243)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(506160710)有限会社村上商店 (2)
【Fターム(参考)】