説明

試験紙マガジン、マガジンホルダ及び試験紙装着装置

【課題】携帯型検体分析装置に検体成分試験紙を容易に装着することである。
【解決手段】試験紙送込装置100は、複数の検体成分試験紙を整列して収納し、1枚ずつ送り出す送出口を有する試験紙マガジン200と、試験紙マガジン200を交換可能に保持するマガジンホルダ150と、試験紙マガジン200に収納されている複数の検体成分試験紙を整列の順序通りに送出口へ向けて付勢するトーションバネ182と、筒状ケース110とを備える。筒状ケース110は、その軸方向にマガジンホルダ150を移動可能に案内する凹溝114,118と、試験紙マガジン200の送出口220にある1枚の検体成分試験紙40に押し当てられる位置に配置される押出凸部122を有し、マガジンホルダ150の移動によって、送出口220にある1枚の検体成分試験紙40が試験紙マガジン200から押し出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試験紙マガジン、マガジンホルダ及び試験紙装着装置に係り、特に、複数の検体成分試験紙を収納する試験紙マガジンと、試験紙マガジンを交換可能に保持するマガジンホルダと、検体成分試験紙を保持する試験紙保持部を先端部に有する携帯型検体分析装置に検体成分試験紙を装着する試験紙装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人や動物の体液、例えばその血液、汗、尿等に含まれる成分、あるいは上下水道、工場廃水、土壌中に含まれる成分等を簡易に分析する手段として、呈色試験紙が用いられる。呈色試験紙とは、リトマス試験紙がその代表的なものとしてよく知られているが、スティック状の紙の先端に、検体をかけることで発色する試薬を含ませた試験片が取り付けられたものであり、発色の色調変化から検体に含まれる成分を分析することができる。
【0003】
例えば、血糖値を非観血法で調べる方法として尿成分試験紙による尿糖値の測定が行われる。尿糖値を調べる尿成分試験紙は、スティック状の紙の先端に、試薬を含んだ試験片が添付されたものである。その試験片の部分に尿がかけられると、その尿に含まれる糖分(ブドウ糖)の量に応じて異なる色調で発色する。発色の色調と尿糖値とを関係付けるため、標準色調表が作成され、その発色の色調に応じて、−、±、(+)、+、++、+++等の色調表記号がつけられる。例えば、±のときは50mg/デシリットルの尿糖値等と判定される。このように、尿成分試験紙による尿糖値の測定は簡便なため、被検者が自分で血糖値の変化を把握するためにも用いられる。
【0004】
しかしながら、呈色試験紙である検体成分試験紙の反応は化学反応のため、時間経過、あるいは尿や排水等の検体の色調による条件等で適切な判定が困難なことがある。そこで、本願の出願人は、特許文献1において、検体たまり部、検体検出器、検体検出経過タイマー、発色計測のためのセンサ部等を備える携帯型検体分析装置を提案した。
【0005】
また、検体成分試験紙の反応を光学的センサで検出する場合、外光の影響を受けると、正確な判定が困難なことがある。そこで本願の出願人は、特許文献2において、少なくとも片面が黒色で着色されて遮光性を有するスティック状ベースに試験片を取り付ける呈色試験紙を提案した。
【0006】
【特許文献1】特許第3738357号公報
【特許文献2】特許第3684458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1における携帯型検体分析装置の構成によれば、検体たまり部によって検体を確実に検体成分試験紙にかけることができ、また、検体検出経過タイマーによって呈色反応の時間管理を行うことができるので、再現性のよい分析を行うことができる。またセンサ部を用いて呈色反応を検出するので、検体成分を客観的に判断できる。そして、さらに特許文献2における呈色試験紙、すなわち検体特性試験紙を用いることで、外光等の影響を抑制することができる。
【0008】
本願発明者は、特許文献1の技術を検討し、検体特性試験紙を装着するのが面倒であり、これを容易に装着できることが利便性につながることを認識した。また、特許文献2の技術も考慮し、遮光性のある検体成分試験紙を容易に装着することが性能面において優れることを認識した。
【0009】
本発明の目的は、携帯型検体分析装置に検体成分試験紙を容易に装着することができる試験紙装着装置を提供することである。他の目的は、複数の検体成分試験紙を収納することができる試験紙マガジンを提供することである。さらなる他の目的は、試験紙マガジンを交換可能に保持できるマガジンホルダを提供することである。以下の手段は、これらの目的の少なくとも1つに貢献する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る試験紙マガジンは、外部押付力によって複数の検体成分試験紙を一方向に押付け整列して収納し、外部押出力によって検体成分試験紙を送出口から押し出すことができる試験紙マガジンであって、複数の検体成分試験紙を板厚方向に整列させて収納する内部空間を有する箱状筐体部と、箱状筐体部の側面部であって押付板の他方側面が向かいあう後側面部に少なくとも設けられ、押付板に押付力を供給するための開口と、箱状筐体部の上面部に設けられ、整列された検体成分試験紙の先頭の1枚が上下できる寸法で開口された試験紙送出口と、箱型筐体部の側面部であって検体成分試験紙が押付けられる前側面部に上下方向に渡って一様なスリット幅を有して設けられ、検体成分試験紙を上方に押し出す押出力を供給するためのスリットと、を含み、箱状筐体部の下面部において、スリットは、検体成分試験紙の板厚方向に沿った開口の長さとして、箱状筐体部の前側面部の厚さに検体成分試験紙の板厚を加えた長さである押出長さを有し、箱状筐体の上面部において、スリットは、試験紙送出口と接続し、検体成分試験紙の板厚方向に沿った開口の長さとして、押出長さに対応する長さを有し、押出長さとスリット幅で規定される押出面を用いて外部押出力を検体成分試験紙に供給することができることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る試験紙マガジンにおいて、箱型筐体部の内部空間の検体成分試験紙の整列方向に沿った長さは、検体成分試験紙が収納される最大枚数に検体成分試験紙の板厚を乗じた長さに、押付板の厚さを加えた長さに対応することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る試験紙マガジンにおいて、さらに、箱状筐体部の内部空間に配置され、検体成分試験紙と一方側面で接触し、他方側面で検体成分試験紙を整列方向に押付ける押付力を受け止める押付板を含むことが好ましい。
【0013】
また、押付板は、検体成分試験紙と同じ外形と寸法とを有し、検体成分試験紙と同様に外部押出力によって送出口から押し出されることができることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る試験紙マガジンにおいて、箱状筐体部は、最後に押し出される順序となる検体成分試験紙を他の通常の検体成分試験紙と異なる目印を有するものとして、複数の検体成分試験紙を板厚方向に整列させて収納することが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るマガジンホルダは、外部押付力によって複数の検体成分試験紙を一方向に押付け整列して収納することができる試験紙マガジンを交換可能に保持するマガジンホルダであって、試験紙マガジンの側面を案内支持して交換可能に収納する収納空間を有する枠状筐体部と、試験紙マガジンに収納される検体成分試験紙を一方向に押付けるための付勢手段と、枠状筐体部に設けられ、付勢手段を取り付ける取付部と、を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るマガジンホルダにおいて、取付部は、枠状筐体部の底面部に設けられ、付勢手段は、取付部に根元部が取り付けられ、先端部が試験紙マガジンに収納される検体成分試験紙に押付力を与えることのできるトーションバネであることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係るマガジンホルダにおいて、枠状筐体部は、試験紙マガジンを収納空間に案内して保持位置を固定するロック部であって、ロック部による固定が解除されると、トーションバネの付勢力によって試験紙マガジンを収納空間から押し出すことができるロック部を有することが好ましい。
【0018】
本発明に係る試験紙装着装置は、検体成分試験紙を保持する試験紙保持部を先端部に有する携帯型検体分析装置に検体成分試験紙を装着する試験紙装着装置であって、複数の検体成分試験紙を整列して収納し、1枚ずつ送り出す送出口を有する試験紙マガジンと、試験紙マガジンを交換可能に保持するマガジンホルダと、試験紙マガジンに収納されている複数の検体成分試験紙を整列の順序通りに送出口へ向けて付勢する試験紙付勢手段と、送出口の位置と携帯型検体分析装置の試験紙保持部の位置とを合わせ、送出口にある1枚の検体成分試験紙を試験紙保持部に押し出す押出機構と、を備え、押出機構は、送出口にある検体成分試験紙の押し出し方向にマガジンホルダを移動可能に案内する案内ケースと、案内ケースに設けられ、試験紙マガジンの送出口にある1枚の検体成分試験紙に押し当てられる位置に配置される押出部であって、マガジンホルダの移動に応じ、送出口にある1枚の検体成分試験紙を試験紙マガジン内部から押し出す押出部と、を有することを特徴とする。
【0019】
また、マガジンホルダは、携帯型検体分析装置の先端部がはまり込む先端案内部であって、先端部がはまり込むときに、送出口から押し出されてきた検体成分試験紙が試験紙保持部に受け取られるように、検体成分試験紙の送出口の位置が配置される先端案内部を有することが好ましい。
【0020】
また、案内ケースは、マガジンホルダを、押出部によって検体成分試験紙が押し出される押出位置と、押出部と干渉することのない通常位置との2つの位置の間で案内することが好ましい。
【0021】
また、案内ケースは、マガジンホルダの外形を保持して長手方向に移動可能に案内する筒状の形状であって、筒状形状の上部に、マガジンホルダを通常位置に保持する係止部を有し、筒状形状の下部にマガジンホルダを押出位置に保持する止まり部を有することが好ましい。
【0022】
また、押出機構は、マガジンホルダを押出位置から通常位置に向かって付勢するホルダ付勢手段を有することが好ましい。
【0023】
また、本発明に係る試験紙装着装置は、検体成分試験紙を保持する試験紙保持部を先端部に有する携帯型検体分析装置に検体成分試験紙を装着する試験紙装着装置であって、複数の検体成分試験紙を整列して収納し、1枚ずつ送り出す送出口を有する試験紙マガジンと、試験紙マガジンを交換可能に保持するマガジンホルダと、試験紙マガジンに収納されている複数の検体成分試験紙を整列の順序通りに送出口へ向けて付勢する試験紙付勢手段と、マガジンホルダに設けられ、携帯型検体分析装置の先端部がはまり込む先端案内部であって、先端部がはまり込むときに、送出口から押し出されてきた検体成分試験紙が試験紙保持部に受け取られるように、検体成分試験紙の送出口の位置が配置される先端案内部と、送出口の位置と携帯型検体分析装置の試験紙保持部の位置とを合わせ、送出口にある1枚の検体成分試験紙を試験紙保持部に押し出す押出機構と、を備え、押出機構は、送出口にある検体成分試験紙の押し出し方向にマガジンホルダを移動可能に案内する案内ケースであって、マガジンホルダを、押出部によって検体成分試験紙が押し出される押出位置と、押出部と干渉することのない通常位置との2つの位置の間で案内する案内ケースと、案内ケースに設けられ、試験紙マガジンの送出口にある1枚の検体成分試験紙に押し当てられる位置に配置される押出部であって、マガジンホルダの移動に応じ、送出口にある1枚の検体成分試験紙を試験紙マガジンから相対的に押し出す押出部と、マガジンホルダを押出位置から通常位置に向かって付勢するホルダ付勢手段と、を有し、通常位置にあるマガジンホルダの先端案内部に携帯型検体分析装置の先端部をはめ込み、携帯型分析装置を先端案内部に押し付けてマガジンホルダを押出位置まで押し込んで移動させるとき、押出部の作用によって試験紙マガジンの送出口から1枚の検体成分試験紙が携帯型分析装置の試験紙保持部に押し出される構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
上記構成の少なくとも1つにより、試験紙マガジンは、外部押付力によって複数の検体成分試験紙を一方向に押付け整列して収納し、外部押出力によって検体成分試験紙を送出口から押し出すことができる。このように、試験紙マガジンは、複数の検体成分試験紙を収納することができるので、この試験紙マガジンを用いることで、携帯型検体分析装置に検体成分試験紙を装着することが容易となる。
【0025】
また、箱状筐体部の内部空間には、複数の検体成分試験紙が配置され、押付力を供給するための開口が設けられる。このように、押付力を発生する要素等は原則として箱状筐体部の内部空間に配置されないので、試験紙マガジンにおける検体成分試験紙の収納効率を向上させることができる。
【0026】
また、検体成分試験紙の先頭の1枚が上下できる寸法で開口された試験紙送出口と、一様なスリット幅を有し、検体成分試験紙を上方に押し出す押出力を供給するためのスリットが設けられる。そして、スリットは、検体成分試験紙の板厚方向に沿った開口の長さとして、箱状筐体部の前側面部の厚さに検体成分試験紙の板厚を加えた長さである押出長さを有し、押出長さとスリット幅で規定される押出面を用いて外部押出力を検体成分試験紙に供給することができる。このように、検体成分試験紙を押し出すのに検体成分試験紙の断面積より広い押出面を用いて外部押出力を検体成分試験紙に供給できるので、押出部材を大きくできその強度を上げることができる。
【0027】
また、箱型筐体部の内部空間の検体成分試験紙の整列方向に沿った長さは、検体成分試験紙が収納される最大枚数に検体成分試験紙の板厚を乗じた長さに、押付板の厚さを加えた長さに対応することとするので、試験紙マガジンにおける検体成分試験紙の収納効率を理論限度の近くまで向上させることができる。
【0028】
また、箱状筐体部の内部空間に押付力を受け止める押付板が配置される。したがって、確実に押付力を受け止め、検体成分試験紙に押付力を伝達することができる。
【0029】
また、押付板は、検体成分試験紙と同じ外形と寸法とを有して、検体成分試験紙と同様に外部押出力によって送出口から押し出されることができる。したがって、押付板が押し出されることによって試験紙マガジンが使用済みになったこと、あるいは交換時期となったことを容易に知らせることができる。
【0030】
また、最後に押し出される順序となる検体成分試験紙を他の通常の検体成分試験紙と異なる目印を有するものとするので、異なる目印を有する検体成分試験紙が押し出されることによって試験紙マガジンが使用済みになったこと、あるいは交換時期となったことを容易に知らせることができる。
【0031】
また、上記構成の少なくとも1つにより、マガジンホルダは、外部押付力によって複数の検体成分試験紙を一方向に押付け整列して収納することができる試験紙マガジンを交換可能に保持する。このように、マガジンホルダは試験紙マガジンを交換可能に保持できるので、このマガジンホルダを用いることで、携帯型検体分析装置に検体成分試験紙を装着することが容易となる。
【0032】
また、マガジンホルダは、試験紙マガジンを案内支持する枠状筐体部と、試験紙マガジンに収納される検体成分試験紙を一方向に押付けるための付勢手段と、枠状筐体部に設けられ、付勢手段を取り付ける取付部とを含む。このように、試験紙マガジンを収納する部分と、付勢手段の取付部とを一体化したので、試験紙マガジンと付勢手段を含むマガジンホルダとを合わせたものを小型にすることができる。
【0033】
また、付勢手段として、取付部に根元部が取り付けられ、先端部が試験紙マガジンに収納される検体成分試験紙に押付力を与えることのできるトーションバネを用いるので、例えば、コイルバネ等を付勢手段として用いる場合に比べ、試験紙マガジンと付勢手段を含むマガジンホルダとを合わせたものを小型にすることができる。
【0034】
また、枠状筐体部にロック部を設け、ロック部による固定が解除されると、トーションバネの付勢力によって試験紙マガジンを収納空間から押し出すことができるものとするので、試験紙マガジンの取り外しが容易となる。
【0035】
上記構成の少なくとも1つにより、検体成分試験紙を複数収納して1枚ずつ送り出す送出口を有する試験紙マガジンと、試験紙マガジンを交換可能に保持するマガジンホルダと、検体成分試験紙を順序通りに送出口へ向けて付勢する試験紙付勢手段と、送出口にある1枚の検体成分試験紙を携帯型検体分析装置の試験紙保持部に押し出す押出機構とを備える。したがって、押出機構を作用させることで、携帯型検体分析装置の試験紙保持部に容易に装着でき、一々検体成分試験紙を携帯型検体分析装置の試験紙保持部に装着する必要がない。
【0036】
また、マガジンホルダには携帯型検体分析装置の先端部がはまり込む先端案内部が設けられ、先端部がはまり込むときに、送出口から押し出されてきた検体成分試験紙が試験紙保持部に受け取られるように、検体成分試験紙の送出口の位置が配置される。したがって、携帯型検体分析装置の先端部をマガジンホルダの先端案内部にはめ込んで、押出機構を作用させることで携帯型検体分析装置の試験紙保持部に容易に装着できる。
【0037】
また、マガジンホルダは、押出部によって検体成分試験紙が押し出される押出位置と、押出部と干渉することのない通常位置との2つの位置の間で案内される。したがって、マガジンホルダを通常位置から押出位置の間で移動することで、検体成分試験紙を容易に押し出す事ができる。
【0038】
また、マガジンホルダを通常位置に保持する係止部と、押出位置に保持する止まり部とを有するので、通常位置から押出位置に確実に移動させることが容易となる。
【0039】
また、マガジンホルダを押出位置から通常位置に向かって付勢するので、通常位置から押出位置に移動するときはこの付勢力に抗することになるが、検体成分試験紙を押し出した後はこの付勢力によって通常位置に復帰する。したがって、通常位置から押出位置へ移動させて検体成分試験紙を押し出させた後は、特別な操作を要せず、通常位置に復帰し、操作性がよい。ホルダ付勢手段を有することが好ましい。
【0040】
また、通常位置にあるマガジンホルダの先端案内部に携帯型検体分析装置の先端部をはめ込み、携帯型分析装置を先端案内部に押し付けてマガジンホルダを押出位置まで押し込んで移動させるとき、押込部の作用によって試験紙マガジンの送出口から1枚の検体成分試験紙が携帯型分析装置の試験紙保持部に押し出される構成であるので、いわゆるワンタッチ的に検体成分試験紙を携帯型分析装置の試験紙保持部に装着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下において、試験紙装着装置が適用される携帯型検体分析装置は、検体が尿である携帯型尿分析装置として説明するが、尿以外の検体の場合においても、検体に対応する検体成分試験紙を用い、その装着が必要な携帯型検体分析装置を対象とすることができる。
【0042】
携帯型検体分析装置に取り付けられる検体成分試験紙として、PH試験紙、半定量イオン試験紙、分析用試験紙、簡易水質検査試験紙等を対象とすることができる。半定量イオン試験紙には、食品添加物中の亜硝酸濃度を検出する亜硝酸イオン用試験紙、土壌中の硝酸態窒素濃度を検出する硝酸イオン用試験紙、飲料水や工業排水中の金属イオン濃度を検出するアルミニウムイオン用試験紙、銅イオン用試験紙、ニッケルイオン用試験紙等の金属イオン用試験紙、果汁等に含まれるビタミンC濃度を検出するアスコルビン酸イオン試験紙等を含む。分析用試験紙には、亜鉛成分を分析する亜鉛用試験紙、残留塩素を分析する塩素用試験紙、錫成分を分析する錫用試験紙、六価クロム成分を分析する六価クロム用試験紙等を含む。
【0043】
携帯型検体分析装置に取り付けられた検体成分試験紙にかけられる検体としては、例えば工場廃水等の液体についてはそのまま検体として用いることができる。また、例えば土壌中の成分を対象とするときは、検査対象の土壌を乾燥させて精製水を加えて十分に攪拌し、その土壌溶液を適当なろ紙等でろ過し、これを検体とすることができる。
【0044】
検体成分試験紙に検体をかけるには、文字通り検体を検体成分試験紙に注ぐようにしてかける他、例えば容器に工業排水等の検体を採取し、その容器中の検体に検体成分試験紙を取り付けた携帯型検体分析装置を浸すことでもよい。
【0045】
図1は、試験紙装着装置50の構成を示す図である。図1(a)は全体構成を示す正面図である。試験紙装着装置50は、携帯型検体分析装置10を立てかけておく筒状の保持具である装置ホルダ60と、携帯型検体分析装置10に検体成分試験紙40をいわばワンタッチで送り込んで取り付ける試験紙送込装置100とが基台52の上に並べて配置されたものである。図1(b)は試験紙送込装置100の側面図である。なお、図1では、試験紙装着装置50の構成要素ではないが、検体成分試験紙40と、携帯型検体分析装置10も図示されている。
【0046】
試験紙送込装置100については、後にその内容を詳述する。また、携帯型検体分析装置10における試験紙保持部周辺の構造についても、試験紙装着に関連する範囲について後述する。また、検体成分試験紙40の具体的内容についても後述する。そこで、ここでは、それ以外の構成要素について説明する。
【0047】
基台52は、装置を配置し取り付けるベースまたは基板である。例えば、適当な厚さのプラスチック板等を用いることができる。装置ホルダ60は、携帯型検体分析装置10の外形より一回り大きい開口を有する筒状の部材である。携帯型検体分析装置10を使用しないときは、この装置ホルダ60の開口に携帯型検体分析装置10の先端部を差し込み、あるいは立てかけることができ、便利である。特に、携帯型検体分析装置10は、液体状の検体がかけられ、またその後洗浄がなされるためにその先端部が濡れていることがあるので、装置ホルダ60は、濡れている携帯型検体分析装置10の先端部を乾くまで立てかけ、あるいは保持しておくのに便利である。
【0048】
試験紙送込装置100は、検体成分試験紙40を複数枚収容する試験紙マガジンを着脱自在に保持するマガジンホルダから、検体成分試験紙40を1枚ずつ押し出して携帯型検体分析装置10に送り込むための装置である。この試験紙送り込みをワンタッチ的に行うために、携帯型検体分析装置10を試験紙送込装置100に押し込む操作を利用する。すなわち、試験紙送込装置100の先端に設けられた先端案内部156に携帯型検体分析装置10を差し込んで押し込む操作のみで、検体成分試験紙40を試験紙マガジンから1枚の検体成分試験紙40を携帯型検体分析装置10の試験紙保持部に送り込む機能を有する装置である。
【0049】
試験紙送込装置100は、試験紙マガジンが内蔵されるが、試験紙マガジンの中の検体成分試験紙40の未使用分の状況が見えるように覗き窓130が設けられる。図1では、複数枚の検体成分試験紙40と、検体成分試験紙40を整列配置して押付ける押付板204とが、透明な試験紙マガジンを通して覗き窓130から見える様子が示されている。押付板204には、その様子が一目で分かるように、特別な色を付すことが好ましい。
【0050】
図2は、別の構成の試験紙送込装置101を示す図である。この試験紙送込装置101は、図1における試験紙送込装置100と装置ホルダ60と基台52とを一体化したものである。試験紙送込のための構成は、図1における試験紙送込装置100の構成と同じである。試験紙送込装置101には、携帯型検体分析装置10を差し込んで立てかけておくのに十分な深さの分析装置案内部157が設けられる。携帯型検体分析装置10を使用し終わった後、あるいは使用しないときには、この分析装置案内部157に携帯型検体分析装置10を差し込んで、例えばその先端部が十分乾くまで待ってかけておくことができる。そして、携帯型検体分析装置10を使用するときには、その差し込んだ状態から、そのまま携帯型検体分析装置10を試験紙送込装置101の下部に向かって押し込む操作のみで、検体成分試験紙40を試験紙マガジンから1枚の検体成分試験紙40を携帯型検体分析装置10の試験紙保持部に送り込むことができる。
【0051】
図3は、試験紙送り込みに関する要素を分解して並べて示す図である。図3(a)は、左側面図、(b)は正面図である。正面図は、図1(a)と同じ方向から見た図である。正面図、側面図には、X,Y,Zの方向を示してある。図3(a),(b)においては、紙面の上方から下方の順に、携帯型検体分析装置10、試験紙送込装置100を構成する試験紙マガジン200及びこれを保持するマガジンホルダ150、押出機構を内蔵する筒状ケース110が図示されている。これらのうち、筒状ケース110と、マガジンホルダ150と、試験紙マガジン200とが試験紙送込装置100の構成要素である。携帯型検体分析装置10は試験紙送込装置100によって検体成分試験紙40が送り込まれる対象であり、試験紙送込装置100の構成要素ではないが、上記のように、携帯型検体分析装置10の押し込み操作によって、試験紙送込装置100の検体成分試験紙40の送込みが行なわれるものであるので、試験紙送込装置100の構造、作用に密接に関係する。
【0052】
試験紙送込装置100を構成する筒状ケース110は、マガジンホルダ150を筒の軸方向に沿って移動可能に案内する機能を有し、その意味では案内ケースであるが、さらに、マガジンホルダ150の移動に従って、試験紙マガジン200の中の1枚の検体成分試験紙40を押し出す機能を有する。後者の機能は、いわば試験紙の押出機構に相当する。筒状ケース110は、内部が空洞で、略四角錐の頂上を切断した形状を有し、内部空洞の内壁自体が案内機能を有するが、さらに移動を規制する案内機能としてマガジンホルダ150を案内する案内溝を3つ有する。また、押出機能を有する押出部として、マガジンホルダ150に保持される試験紙マガジン200の送出口220に対応して設けられる押出凸部122を有する。また、筒状ケース110の内部空洞には、底部に一端が固定されたコイルバネ112が設けられている。コイルバネ112は、案内機能によって案内されるマガジンホルダ150を、上方に付勢する機能を有する付勢手段である。
【0053】
案内機能としての3つの案内溝のうち、2つの案内溝は、マガジンホルダ150の外形に上下方向に延びて設けられた凸状膨らみ160に対応する凹溝114である。凹溝114は、筒状ケース110の上部開口から筒状ケース110の軸方向に沿って下方に延び、下限端116を有する。この下限端116は、マガジンホルダ150が筒状ケース110の軸方向に沿って移動する際の最下限の位置を規定する。その意味で、下限端116は、マガジンホルダ150の止まり部でもある。残りの1つの案内溝は、マガジンホルダ150の外形に設けられたストッパ凸部164に対応して設けられる凹溝118である。この凹溝118は、筒状ケース110の上部開口の縁からやや下方を上限端120とし、そこから筒状ケース110の軸方向に沿って下方に延びる。この上限端120は、マガジンホルダ150をこの位置で係止し、筒状ケース110の軸方向に沿って移動する際の最上限の位置を規定する係止部でもある。
【0054】
ストッパ凸部164を含めたマガジンホルダ150の外形は、筒状ケース110の内部空洞の内形より僅かに大きく設定される。つまり、寸法上では筒状ケース110の上部開口からマガジンホルダ150を挿入することはできないが、筒状ケース110及びマガジンホルダ150の弾性により、マガジンホルダ150を筒状ケース110の開口から押し込んで、ストッパ凸部164を凹溝118の中に落とし込むことができる。そのときに、筒状ケース110の内部に設けられるコイルバネ112の上端がマガジンホルダ150の底面を支え、上方に向けて付勢するので、マガジンホルダ150は、ストッパ凸部164が凹溝118の上限端120に押し付けられて、その位置に落ち着く。この位置は、押出機能の押出凸部122がマガジンホルダ150と干渉しない位置であるので、通常位置と呼ぶことができる。すなわち、凹溝118の上限端120は、マガジンホルダ150の通常位置を規定する。
【0055】
マガジンホルダ150を筒状ケース110の軸方向に沿って押し下げると、押出機能の押出凸部122がマガジンホルダ150と干渉し、後述のように試験紙マガジン200の中の1枚の検体成分試験紙40を上方に押し出す。そして、マガジンホルダ150は、凹溝114の下限端116まで押し下げられると、そのときに、1枚の検体成分試験紙40は、試験紙マガジン200から完全に上方に押し出されるように、下限端116の位置と、押出凸部122の位置が設定される。したがって、マガジンホルダ150が下限端116にまで押し下げられた位置は、検体成分試験紙40を押し出す押出位置を規定する。
【0056】
このように、筒状ケース110のコイルバネ112、凹溝114の下限端116、凹溝118の上限端120は、マガジンホルダ150を通常位置と押出位置との間で移動可能に案内する案内機能を有し、押出凸部122は、マガジンホルダ150の移動に応じて1枚の検体成分試験紙40をマガジンホルダ150内部から押し出す押出機能を有する。
【0057】
筒状ケース110以外の各要素の詳細図は、図4,5,6,8に示される。すなわち、図4には試験紙マガジン200に収納される検体成分試験紙40の四面図、図5には、携帯型検体分析装置10の構造のうち、試験紙送り込みに関する部分の三面図、図6には試験紙マガジン200の五面図、図8にはマガジンホルダ150の四面図がそれぞれ示されている。なお、図3の左側面図、平面図との対応をつけるために、必要な図にX,Y,Zの方向を表示してある。
【0058】
検体成分試験紙40は、尿をかけることで発色する試験片を保持するスティック状のものである。「試験紙」とは慣習上呼ばれるもので、いわゆる和紙、洋紙等の紙材料以外に、プラスチックシートあるいはプラスチック薄板、金属薄板等試験片を保持するベースの材料として使用することができる。図4には検体成分試験紙40の様子が四面図で示される。
【0059】
検体成分試験紙40は、プラスチック製のベース41と、ベースの片側の面に貼り付けられ検体がかけられることで発色する試験片42とを有する。試験片42に含まれる試薬は、検出しようとする尿成分により異なる。例えばブトウ糖(尿糖)、蛋白質、潜血、尿中ウロブリノーゲン、ケトン体、ビリルビン、亜硝酸塩、白血球等の検出対象毎に異なる試薬を含む試験片を用いることができる。また、尿成分中のヒト絨毛性ゴナドトロビン(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)を検出する試薬を含む試験片を用いることで、妊娠反応を発色反応で検出するものとすることもできる。図4では1種類の試験片42が貼り付けられている例が示されているが、1つの検体成分試験紙に2ないし3種類の試験片を貼り付け、携帯型検体分析装置でこれら複数種類の試験片の発色を同時に分析するものとすることもできる。
【0060】
検体成分試験紙40のベース41は、黒色プラスチック薄板で構成され、遮光性を有する。全体が黒色でなくても、少なくとも片面が黒色であって、試験片42に対し外光を遮光するものであってもよい。
【0061】
検体成分試験紙40は、平面形状が略矩形であるが、そのベース41には、試験片42を貼り付ける前後に浅いくぼみ46,48が設けられる。この試験片42の前後とは、携帯型検体分析装置10において尿たまりから尿が試験片42に向かって流れるときの上流側及び下流側に対応する。したがって、くぼみ46は、尿が試験片42に向かって流れやすくし、くぼみ48は尿が試験片から排出されやすくする作用を有する。
【0062】
検体成分試験紙40のベース41の外周は、テーパ斜面49を有する。このテーパ斜面49は、検体成分試験紙40が携帯型検体分析装置10の試験紙保持部に滑らかに挿入されて保持されるためのものである。
【0063】
検体成分試験紙40のベースの2つの長辺には、それぞれくぼみ44が設けられる。このくぼみ44を用いて、試験紙マガジン200に複数の検体成分試験紙40を整列配置して収納することができる。例えば、試験紙マガジン200の内壁に、このくぼみ44に対応する凸形状ガイドを設けることで、複数の検体成分試験紙40をこの凸形状ガイドを案内とし整列させて並べることができる。また、整列配置した検体成分試験紙40をこの凸形状ガイドに沿って順次移動させることもできる。
【0064】
かかる検体成分試験紙40の寸法の一例としては、平面寸法が約19mm×約9mmの矩形で、厚みが約1mmとすることができる。試験片42の平面寸法は、約5mm角とすることができる。ただし、この寸法は、あくまでも一例であり、携帯型検体分析装置10の用途、形状等により適宜変更することが可能である。
【0065】
図5は、携帯型検体分析装置10の先端部、すなわち検体成分試験紙40が取り付けられ、尿がかけられる部分を示す図である。図5の三面図のうち、XZ平面で示されている正面図に対応するものとして、正面方向から見た断面図が示されている。携帯型検体分析装置10の先端部には検体たまり部14が設けられ、検体分析に当っては図5の白抜き矢印で示されるように尿が検体たまり部14に注がれる。また、検体たまり部14からさらに先端側に、検体成分試験紙40を保持するための試験紙保持部30が設けられる。試験紙保持部30は、図4で説明した検体成分試験紙40の長手辺のテーパ斜面49に対応した案内溝で形成される。検体成分試験紙40は、試験片42が貼り付けられる側を携帯型検体分析装置10に向かい合うようにして試験紙保持部30によって保持される。
【0066】
携帯型検体分析装置10の先端部は、検体たまり部14と防水壁で仕切られた電子部品収納領域20が設けられる。電子部品収納領域20には、センサ部24が配置される。センサ部24は、受発光素子26と、光を通す検出窓28とを有する。検体成分試験紙40を試験紙保持部30に保持するとき、ちょうど試験片42と検出窓28とが向かい合うように、試験紙保持部30の位置関係が設定される。また、そのとき、図4で説明した下流側のくぼみ48に一対の導電性端子22が来るように、試験紙保持部30の位置関係が設定される。
【0067】
このような位置関係において、試験紙保持部30に検体成分試験紙40が取り付けられ、検体たまり部14に尿が注がれると、尿は、検体成分試験紙40の試験片42が貼り付けられた側の面と、検出窓28が設けられる面との間に流れる。この流路が検体流し路になる。そして、検体流し路を流れてきた尿が一対の導電性端子22に到達すると、この一対の導電性端子22の間の抵抗が変化し、尿がかけられた時刻を検出する。また、センサ部24において受発光素子26から光を発し、尿がかけられて発色する試験片42の反射光を受発光素子26で受け取り、これによって、発色の程度等を計測する。このようにして、尿検出と、試験片の発色の計測が行われる。
【0068】
また、携帯型検体分析装置10の先端部には、外形が膨らんだ一対の案内凸部32が設けられる。案内凸部32は、正面図でいえば、携帯型検体分析装置10の先端部の正面外壁と裏面外壁のそれぞれにZ方向に延びて配置される。この案内凸部32に対応して、後述のマガジンホルダ150には、凸状膨らみ160が設けられ、これらは、携帯型検体分析装置10の先端部を差し込むときの案内として機能する。
【0069】
図6に示される試験紙マガジン200は、図4で説明した検体成分試験紙40を複数枚整列して収納するケースであり、検体成分試験紙40を1枚ずつ外部に送り出すためのスリット222と、送出口220を有する。試験紙マガジン200を単体で考えると、これは、外部押付力によって複数の検体成分試験紙を一方向に押付け整列して収納し、外部押出力によって検体成分試験紙を送出口から押し出すことができる機能を有する。図3で説明する構成の下では、外部押付力が後述のトーションバネ182によって与えられ、外部押出力が筒状ケース110の押出凸部122によって携帯型検体分析装置10の押し込み操作の反力として与えられる。
【0070】
試験紙マガジン200は、試験紙送込装置100に搭載されたとき、図1で説明したとおり、筒状ケース110の覗き窓130から収容されている検体成分試験紙40の残り状態を見ることができるように、透明のプラスチックで成形されることが望ましい。もちろん、覗き窓130に対応する部分のみを透明な材料で構成し、その他の部分を不透明な材料で構成してもよい。
【0071】
試験紙マガジン200は、直方体の形状を有する箱状筐体部201を有し、箱状筐体部201の内部空間202に、複数の検体成分試験紙40と、それらを送出口220方向に押し付けるための押付板204とが配置される。そして、内部空間202の内壁には、複数の検体成分試験紙40をその板厚方向に整列して並べるために、検体成分試験紙40の長辺に設けられているくぼみ44に対応する凸状ガイド206が整列方向に沿って設けられる。凸状ガイド206の延びる方向は、図6に示すX方向である。すなわち、検体成分試験紙40は、その板厚方向をX方向に揃え、長辺方向をZ方向にして積層するように、試験紙マガジン200の内部空間202に収納される。
【0072】
検体成分試験紙40の表裏方向については、図5で説明した携帯型検体分析装置10の試験紙保持部30に検体成分試験紙40が取り付けられる方向を考えると、試験片42が貼り付けられる方を表側として、裏側を送出口220側に向けて配置されることになる。このようにすることで、図3(b)に示すように、試験紙マガジン200の送出口220の位置に携帯型検体分析装置10の試験紙保持部30の位置を合わせる構成を容易にとることができる。この構成によれば、送出口220から検体成分試験紙40が押し出される方向がZ方向となり、筒状ケース110の軸方向、すなわち筒状ケース110がマガジンホルダ150を移動可能に案内する方向と一致することになる。
【0073】
試験紙マガジン200の内部空間202には、検体成分試験紙40の他に、上記のように、押付板204が配置される。押付板204に押付力を与えるために後述するトーションバネ182の先端部が入り込むことを除くと、内部空間202に検体成分試験紙40と押付板204以外の要素は配置されない。すなわち、試験紙マガジン200の内部空間202は、押付板204の占める部分以外の空間には複数の検体成分試験紙40が配置される。換言すれば、箱型筐体部201の内部空間202の検体成分試験紙40の整列方向、すなわち図6におけるX方向に沿った長さは、検体成分試験紙40が収納される最大枚数に検体成分試験紙40の板厚を乗じた長さに、押付板204の厚さを加えた長さに対応することになる。
【0074】
例えば、上記の検体成分試験紙40の寸法例を用いて検体成分試験紙40の板厚を約1mmとし、検体成分試験紙40の収納最大枚数を18枚とすると、押付板204の厚さを約2mmとするときは、試験紙マガジン200の内部空間202のX方向に沿った長さを、18×1mm+2mm+α=20mm+αとすることができる。ここでαは、各要素の寸法誤差を考慮した余裕寸法で、例えばα=1mmとすれば十分である。この例では、内部空間202における検体成分試験紙40の収納効率は、18/21=約86%で、理論収納効率18/20=90%に近い、きわめて高い収納効率で検体成分試験紙40が収納されることが分かる。このように、高い収納効率を達成できるのは、上記のように、押付板204に付勢力を与える手段としてトーションバネ182を用いることで、押付板204に押付力を与えるために後述するトーションバネ182の先端部が入り込むことを除くと、内部空間202に検体成分試験紙40と押付板204以外の要素は配置されないからである。
【0075】
押付板204は、複数の検体成分試験紙40の外側に配置され、これらを送出口220の方向に押し付けるための部材である。上記のように、試験紙マガジン200を単体で考えるときは、押付板204は、箱状筐体部201の内部空間202に配置され、検体成分試験紙40と一方側面で接触し、他方側面で検体成分試験紙40を整列方向に押付ける押付力を受け止める機能を有することになる。押し付けのための付勢力は、後述するマガジンホルダ150のトーションバネ182によって与えられるが、検体成分試験紙40の試験片42が貼り付ける側が押し付けられる側とすると、試験片42を損傷する可能性がある。これらの理由のために、トーションバネ182によって検体成分試験紙40を直接押し付けるのではなく、押付板204を介在して押し付けることとしたものである。押付板204の平面形状は、検体成分試験紙40とほぼ同じで、凸状ガイド206に対応するくぼみも有する。
【0076】
また、図3で説明したように、覗き窓130から検体成分試験紙40の残り状態を見ることができるためのマーカーは、検体成分試験紙40に付すのではなく、この押付板204に付すことが好ましい。要するに、押付板204は、検体成分試験紙40を保護し、その動きを現わす手段として用いられる。かかる押付板204は、適当なプラスチック材料を適当な形状に加工したものを用いることができる。
【0077】
試験紙マガジン200の底面と、左側面部すなわち後側面部には、押付板204を付勢するためにマガジンホルダ150のトーションバネ182が入り込むことができる切り欠き212,214が設けられる。トーションバネ182は、検体成分試験紙40を一方向に押付け整列させる押付力を与えるものであるので、この切り欠き212,214は、押付板204に押付力を供給するための開口ということができる。また、試験紙マガジン200の上面には、マガジンホルダ150に試験紙マガジン200を搭載するときの案内となる凸状ガイド208が設けられる。凸状ガイド208は、X方向に延びて配置される。これに対応して、後述のマガジンホルダ150には凹溝162が設けられるので、これらに案内されて試験紙マガジン200は、マガジンホルダ150にX方向に移動可能に搭載され、交換のための着脱を自在に行うことができる。
【0078】
また、マガジンホルダ150に試験紙マガジン200を搭載するとき、マガジンホルダ150に試験紙マガジン200の位置を固定するためのロック凸部209が、凸状ガイド208と別に、試験紙マガジン200の上面に設けられる。これに対応して、後述のマガジンホルダ150にはロック凹部163が設けられるので、凸状ガイド208と凹溝162とによってマガジンホルダ150に試験紙マガジン200が案内されて搭載されるとき、例えばユーザがさらに押し込み操作を行ってロック凹部163にロック凸部209をはめ込むことで、マガジンホルダ150に対し試験紙マガジン200の位置が固定される。また、ユーザの反対方向の押し出し操作を行うことで、ロック凹部163とロック凸部209との間の固定を解除でき、これによってマガジンホルダ150から試験紙マガジン200を取り外すことができる。
【0079】
押付板204によって検体成分試験紙40が押し付けられる側の試験紙マガジン200の側面には、スリット222と、送出口220とが設けられる。図6においては、X方向に沿って整列配置される検体成分試験紙40の最も+X側に押付板204が配置されるので、−X側、すなわち試験紙マガジン200の左側面の側にスリット222と送出口220とが設けられている。
【0080】
スリット222と送出口220の違いは、前者が試験紙マガジン200の左側面の側から見て開口する幅の部分を示すものであるのに対し、送出口220は、試験紙マガジン200の上面に設けられ、検体成分試験紙40がちょうど上下できる寸法に設定された開口部分を示すものであることである。送出口220は、試験紙マガジン200の左側面におけるスリット222の開口よりも内側に入ったところに設けられる。スリット222の開口幅は、送出口220の幅よりも狭い。その様子は、図6の上面図において示されている。下面図では、スリット224として示されている。したがって、押付板204によって送出口220側に押付けられた検体成分試験紙40の最も左側にある1枚の検体成分試験紙40は、送出口220とスリット222の幅の差に相当する壁、すなわち試験紙マガジン200の前側面部の内側壁に突き当たり、そこで止まる。すなわち押付板204から見ると最も先にある1枚の検体成分試験紙40は、押付板204の付勢力によって、ちょうど送出口220のところに位置決めされていることになる。
【0081】
上記のように、送出口220は、試験紙マガジン200の内部空間202に整列して収納される検体成分試験紙40の先頭の1枚を試験紙マガジン200の外部に送り出す機能を有する開口部である。送出口220は、箱状筐体部201の上面部に設けられ、整列された検体成分試験紙40の先頭の1枚が上下できる寸法で開口される。すなわち、送出口220の開口のY方向の寸法である幅寸法は、検体成分試験紙40の幅よりやや大きく、X方向の寸法である長さ寸法は、検体成分試験紙40の板厚よりやや大きく設定される。
【0082】
スリット222,224は、箱型筐体部201の側面部であって検体成分試験紙40が押付けられる前側面部に上下方向に渡って一様なスリット幅を有して設けられる開口で、検体成分試験紙40を上方に押し出す押出力を供給するための空間を提供する機能を有する。具体的には、このスリット222,224の中を、筒状ケース110の押出凸部122が相対的に移動することで、検体成分試験紙40の下端部に押出力を与える。
【0083】
スリット222は、図6の上面図、下面図等に示されるように、試験紙マガジン200の左側面においてZ方向の全範囲に渡って設けられる。下面図では、スリット224として示されている。
【0084】
スリット222,224の寸法についてさらに説明すると、箱状筐体部201の下面部において、スリット224は、検体成分試験紙40の板厚方向に沿った開口の長さは、箱状筐体部201の前側面部の厚さに検体成分試験紙40の板厚を加えた長さである。また、箱状筐体の上面部において、スリット222は、試験紙送出口220と接続するが、この接続した開口のうち、スリット222の幅に相当する部分は、試験紙送出口220の機能も有し、スリット222の機能も有する。つまり、試験紙送出口220の一部でもあり、スリット222の一部でもある。したがって、スリット222は、検体成分試験紙40の板厚方向に沿った開口の長さとしては、スリット224の長さと同様に、箱状筐体部201の前側面部の厚さに検体成分試験紙40の板厚を加えた長さである。
【0085】
上記のように、スリット222,224の中を、筒状ケース110の押出凸部122が相対的に移動することで、検体成分試験紙40の下端部に押出力を与えるので、この箱状筐体部201の前側面部の厚さに検体成分試験紙40の板厚を加えた長さを、押出長さと呼ぶこととすると、押出長さとスリット幅で規定される押出面の領域を用いて、押出凸部122を相対的に移動させ、押出力を検体成分試験紙40に供給することができる。
【0086】
このスリット222,224は、上記のように、筒状ケース110の押出凸部122に対応するもので、同様なものは後述のマガジンホルダ150にもスリット172,176として設けられる。したがって、マガジンホルダ150に搭載された試験紙マガジン200が筒状ケース110の中をZ方向に移動するとき、押出凸部122は、これらのスリット222,224,172,176の中を相対的に移動することになる。つまり、マガジンホルダ150が筒状ケース110の中を下方に押し下げられると、押出凸部122は、試験紙マガジン200のスリット222,224の中を相対的に上方に移動し、そこに検体成分試験紙40があれば、上方に押し出す。
【0087】
その様子を模式的に図7に示す。ここでは試験紙マガジン200が−Z方向に移動すると、押出凸部122が試験紙マガジン200の送出口220にある1枚の検体成分試験紙40を+Z方向に押し出す様子が示されている。図7にも示されているように、スリット222を設けることで、押出凸部のX方向の厚みを検体成分試験紙40の板厚より厚くでき、押し出しを確実に行えると共に、押出凸部122の強度を十分なものとすることができる。
【0088】
図6に戻って、試験紙マガジン200の左側面において、スリット222,224 の両側の外壁面に2つのスライド凸部210が設けられる。スライド凸部210は、Z方向に延びて配置される。このスライド凸部210は、マガジンホルダ150に搭載された試験紙マガジン200が筒状ケース110の中をZ方向に移動するときに、筒状ケース110の内面との接触面積を減少させるために設けられたものである。これにより、試験紙マガジン200が筒状ケース110の中をZ方向に移動するときの摩擦抵抗を抑制することができる。
【0089】
上記においては、試験紙マガジン200を透明なものとし、検体成分試験紙40と押付板204とが箱状筐体部201の内部空間202に収納され、検体成分試験紙40が1枚ずつ送出口220から押し出されるものとして説明した。これ以外にも次のような変形例が可能である。
【0090】
例えば、押付板204に吸湿防止材としての機能をもたせることができる。この場合には、吸湿防止材そのもので押付板を構成するほか、押付板204の一部に吸湿防止材を含ませる構造とすることができる。吸湿防止材としては、シリカゲル等の適当な材料のものを用いることができる。
【0091】
例えば、押付板204の外形と寸法を検体成分試験紙40と同じとし、検体成分試験紙40と同様に外部押出力によって送出口から押し出されることができるようにしてもよい。この場合は、押出板204が押し出されることで、試験紙マガジン200が使用済み、あるいは交換時期になったことを知らせることができる。
【0092】
例えば、押付板を用いないものとすることができる。この場合には、最後に押し出される順番となる検体成分試験紙によって押付力が受け止められる。したがって、最後に押し出される順番となる検体成分試験紙を、他の通常の検体成分試験紙と異なるものとし、検体成分の分析には使用しないものとすることが好ましい。もちろん、分析に支障ないと考えるときは、そのまま使用してもかまわない。
【0093】
また、最後に押し出される順序となる検体成分試験紙に、他の通常の検体成分試験紙と異なる目印を付してもよい。これは、押付板を用いる場合であってもよく、押付板を用いない場合であってもよい。このように、他の通常の検体成分試験紙と異なることを示す目印をつけることで、その目印を付したものが最後に押し出された検体成分試験紙であることを知らせることができる。目印としては、黒と異なる色のマークを付すこと、検体成分試験紙のベース自体を黒と異なる色とすることなどができる。黒と異なる色としては、交換時期を知らせるものとして一般に使われている赤あるいはピンクを用いることができる。また、白色を用いて黒との相違を明確にすることもできる。
【0094】
また、試験紙マガジン200を透明でない材質で構成してもよい。その場合には、検体成分試験紙40の使用状況が目視では判断できないので、上記のように、最後に押付板が押し出されてくる構成、あるいは他の通常と異なる検体成分試験紙が最後に押し出される構成とすることが好ましい。
【0095】
図8に示されるマガジンホルダ150は、試験紙マガジン200を保持するもので、さらに、図3で示されるように、携帯型検体分析装置10と筒状ケース110との間に設けられて、携帯型検体分析装置10の押し込み操作によって筒状ケース110の押し出し機構としての作用を発揮させる働きをする要素である。ここで、マガジンホルダ150を単体で考えると、これは、外部押付力によって複数の検体成分試験紙を一方向に押付け整列して収納することができる試験紙マガジンを交換可能に保持する機能を有する。図3で説明する構成の下では、外部押付力がトーションバネ182によって与えられる。
【0096】
マガジンホルダ150は、試験紙マガジン200の側面を案内支持して交換可能に収納する収納空間を有する枠状筐体部152と、枠状筐体部152の底面に設けられ、トーションバネ182を取り付けるバネ取付部154と、枠状筐体部152の上面に設けられ、携帯型検体分析装置10の先端部を差し込むことができる先端案内部156とを有する複合的な部品である。このように、試験紙マガジン200を収納保持する機能と、押付力を試験紙マガジン200に収納されている検体成分試験紙40を付勢する機能と、付勢手段を取り付ける機能と、携帯型検体分析装置10の先端部が差し込まれる機能とを合わせて一体化しているので、全体の大きさを小型にすることができる。
【0097】
枠状筐体部152は、試験紙マガジン200を着脱可能に収納し保持する収納空間158を有する枠体である。収納空間158は、試験紙マガジン200の外形よりやや大きめの内側形状を有する。枠状筐体部152の正面から見た側面には、筒状ケース110に設けられる覗き窓130に対応する覗き窓166が設けられる。
【0098】
また、枠状筐体部152の収納空間158の上部天井には、試験紙マガジン200の上面に設けられる凸状ガイド208に対応する凹溝162がX方向に延びて配置される。また、試験紙マガジン200のスリット222,224に対応して、枠状筐体部152の左側面にはスリット174,176が設けられる。さらに、枠状筐体部152の底面には、トーションバネ182が入り込むための切り欠き184が設けられる。この切り欠き184は、試験紙マガジン200の底面の切り欠き212に対応している。
【0099】
また、枠状筐体部152の収納空間158の上部天井には、試験紙マガジン200の上面に設けられるロック凸部209に対応するロック凹部163が配置される。上記のように、例えばユーザがさらに押し込み操作を行ってロック凹部163にロック凸部209をはめ込むことで、マガジンホルダ150に対し試験紙マガジン200の位置が固定され、また、ユーザの反対方向の押し出し操作を行うことで、ロック凹部163とロック凸部209との間の固定を解除できる。なお、試験紙マガジン200は、検体成分試験紙40を介してトーションバネ182によって付勢力が与えられているので、この固定解除がなされると、試験紙マガジン200は、枠状筐体部152の収納空間158から自動的に押し出されることになる。この作用によって、試験紙マガジン200のマガジンホルダ150からの取り外しが容易となる。
【0100】
また、枠状筐体部152及び先端案内部156に渡って、それらの正面外壁及び裏面外壁がに凸状膨らみ160が形成される。この凸状膨らみ160は、枠状筐体部152において、正面外壁及び裏面外壁の肉厚が厚くなる盛り上がりとして形成され、先端案内部156においては、同じ板厚で外形が外側に出っ張る張り出しとして形成される。この凸状膨らみ160の外形は、筒状ケース110の凹溝114に対応するもので、これらは、マガジンホルダ150が筒状ケース110の中をZ方向に移動するときの案内として作用する。また、先端案内部156における凸状膨らみ160の内側形状部分は、携帯型検体分析装置10の先端部に設けられる案内凸部32に対応するもので、これらは、携帯型検体分析装置10の先端部を先端案内部156に差し込んだときの案内として作用する。
【0101】
上記のように、枠状筐体部152の左側面にはスリット174,176が設けられるが、左側面の上面に設けられるスリット174は、先端案内部156の底面に設けられるスリット172とつながっている。また、先端案内部156の底面には、検体成分試験紙40が押し出されてくる送出口170がスリット172と接続して設けられる。送出口170は、試験紙マガジン200の送出口220と対応する。また、この送出口170は、先端案内部156に携帯型検体分析装置10の先端部が差し込まれたときに、携帯型検体分析装置10の試験紙保持部30に対応する位置に配置される。したがって、図7で説明したように、押出凸部122の作用によって、検体成分試験紙40が試験紙マガジン200の上方に押し出されてくると、その1枚の検体成分試験紙40は、試験紙マガジン200の送出口220、マガジンホルダ150の送出口170を経て、携帯型検体分析装置10の試験紙保持部30に受け取られ、ちょうどセンサ部24に試験片42が向かい合うように位置決めされて取り付けられることになる。
【0102】
枠状筐体部152と先端案内部156との境界付近の右側面外壁に、ストッパ凸部164が設けられる。ストッパ凸部164は、マガジンホルダ150の外形を少しに盛り上がらせた凸部で、これがあることで、通常ではマガジンホルダ150は筒状ケース110に押し込むことができない。ストッパ凸部164に対応して、筒状ケース110には上記のように凹溝118が設けられている。ストッパ凸部164の作用は、筒状ケース110の凹溝118に関連して説明したように、マガジンホルダ150を通常位置に保持することである。
【0103】
マガジンホルダ150のバネ取付部154には、Y軸方向に延びる取付軸180の周りにトーションバネ182が取り付けられる。トーションバネ182は、試験紙マガジン200に収納される検体成分試験紙40を一方向に押付けるための付勢手段である。具体的には、取付軸180に根元部が取り付けられ、取付軸180の周りに回転することで、Y軸に直角なX軸方向の付勢力をその先端部に発生する。トーションバネ182の先端部は、マガジンホルダ150に試験紙マガジン200が搭載されるときに、試験紙マガジン200の押付板204の背面を押して、押付板204をX軸方向に付勢する。その付勢方向は、図3等に示されるように、試験紙マガジン200において各検体成分試験紙40を送出口220側に押付ける方向である。
【0104】
このようにして、マガジンホルダ150に試験紙マガジン200が搭載されるとき、トーションバネ182の作用により、試験紙マガジン200にX方向に積層し整列配置された検体成分試験紙40が、送出口220の方向に付勢される。したがって、送出口220から1枚の検体成分試験紙40が押し出されると、その空いた空間に次の検体成分試験紙40が付勢力によって移動し、送出口220の位置に来る。つまり、トーションバネ182は、積層して整列配置された複数の検体成分試験紙40を、積層整列の順序通りに送出口に向けて付勢する手段である。
【0105】
図9は、かかる構成を有する試験紙送込装置100の押出機能を模式的に説明する図である。図9(a)は、筒状ケース110に対し、マガジンホルダ150が通常位置にある場合を示す図で、筒状ケース110の押出凸部122は、マガジンホルダ150における検体成分試験紙40と接触していない。マガジンホルダ150に搭載される試験紙マガジンの中の各検体成分試験紙40は、トーションバネ182と押付板204によって送出口170側の方に付勢され押付けられている。図9(b)は、マガジンホルダ150の先端案内部に携帯型検体分析装置10が差し込まれ、矢印の方向にマガジンホルダ150を押し込んでいる様子を示す図である。ここでは、筒状ケース110の押出凸部122が、マガジンホルダ150における1枚の検体成分試験紙40と接触し、上方に押し出している。すなわち、携帯型検体分析装置10を矢印の方向に押し込むことで、押出凸部122に対しマガジンホルダ150が相対的に下方に移動し、その結果、押出凸部122が検体成分試験紙40を上方に押し出す。
【0106】
図10は、試験紙送込装置100に携帯型検体分析装置10を押し込む操作で、新しい検体成分試験紙40が自動的に携帯型検体分析装置10に送り込まれ取り付けられる様子を時間経過と共に示す図である。図10(a)は、携帯型検体分析装置10がまだ試験紙送込装置100に差し込まれていない状態を示す。このとき、筒状ケース110に対しマガジンホルダ150は通常位置にある。図10(a)に示される詳細図は、XZ断面についてのもので、筒状ケース110の凹溝180の上限端120が、マガジンホルダ150のストッパ凸部164を規制している様子を示している。マガジンホルダ150は、コイルバネ112の付勢力と、この上限端120の規制作用によって、通常位置に保持される。通常位置では、筒状ケース110の押出凸部122は、検体成分試験紙40に接触していない。
【0107】
図10(b)は、試験紙送込装置100の先端案内部に携帯型検体分析装置10を差し込み、コイルバネ112の付勢力に抗して、矢印の方向に押し込んだときの途中を示す図である。図10(b)に示される詳細図は、筒状ケース110の押出凸部122が、スリット222の中を相対的に移動し、検体成分試験紙40を上方に押し上げる様子を示している。
【0108】
図10(c)は、さらに携帯型検体分析装置10を矢印の方向に押し込み、最下限になった状態を示す図である。図10(c)に示される詳細図は、筒状ケース110の凹溝の下限端116にマガジンホルダ150が突き当たってそれ以上下方に移動できない様子を示している。この状態では、マガジンホルダ150から押し出された検体成分試験紙40は、押出凸部122によって、完全に試験紙マガジンから外部に押し出され、携帯型検体分析装置10の先端部の試験紙保持部に送り込まれている。したがって、この状態のマガジンホルダ150の位置が押出位置である。
【0109】
図10(d)は、図10(c)において最も下限に押し込んだ後に、再び携帯型検体分析装置10を上方に引き上げた状態を示す図である。ここでは、携帯型検体分析装置10に、新しい検体成分試験紙40が取り付けられている様子が示される。このとき、筒状ケース110のコイルバネの付勢力によって、マガジンホルダ150は再び通常位置に復帰する。したがって、図10(a)の状態に戻るので、次の必要なときに、新しい検体成分試験紙40を携帯型検体分析装置10に取り付けたいときは、携帯型検体分析装置10を試験紙送込装置100に差し込み、最も下限まで押し下げればよい。このようにして、携帯型検体分析装置10を試験紙送込装置100に差し込み、最も下限まで押し下げるというワンタッチ的な操作のみで、新しい検体成分試験紙40を携帯型検体分析装置10に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明に係る実施の形態における試験紙装着装置の構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態における試験紙装着装置の別の構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、試験紙送り込みに関する要素を分解して並べて示す図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、検体成分試験紙の四面図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、携帯型検体分析装置の構造のうち、試験紙送り込みに関する部分の三面図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、試験紙マガジンの五面図である。
【図7】本発明に係る実施の形態において、試験紙マガジンから検体成分試験紙が押し出される様子を示す模式図である。
【図8】本発明に係る実施の形態において、マガジンホルダの四面図である。
【図9】本発明に係る実施の形態において、試験紙送込装置の押出機能を模式的に説明する図である。
【図10】本発明に係る実施の形態において、新しい検体成分試験紙がワンタッチ的に携帯型検体分析装置に送り込まれ取り付けられる様子を時間経過と共に示す図である。
【符号の説明】
【0111】
10 携帯型検体分析装置、14 検体たまり部、20 電子部品収納領域、22 導電性端子、24 センサ部、26 受発光素子、28 検出窓、30 試験紙保持部、32 案内凸部、40 検体成分試験紙、41 ベース、42 試験片、44,46,48 くぼみ、49 テーパ斜面、50 試験紙装着装置、52 基台、60 装置ホルダ、100,101 試験紙送込装置、110 筒状ケース、112 コイルバネ、114,118,162,180 凹溝、116 下限端、120 上限端、122 押出凸部、130,166 覗き窓、150 マガジンホルダ、152 枠状筐体部、154 バネ取付部、156 先端案内部、157 分析装置案内部、158 収納空間、160 凸状膨らみ、163 ロック凹部、164 ストッパ凸部、170,220 送出口、172,174,176,222,224 スリット、180 取付軸、182 トーションバネ、184,212,214 切り欠き、200 試験紙マガジン、201 箱状筐体部、202 内部空間、204 押付板、206 凸状ガイド、208 凸状ガイド、209 ロック凸部、210 スライド凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部押付力によって複数の検体成分試験紙を一方向に押付け整列して収納し、外部押出力によって検体成分試験紙を送出口から押し出すことができる試験紙マガジンであって、
複数の検体成分試験紙を板厚方向に整列させて収納する内部空間を有する箱状筐体部と、
箱状筐体部の側面部であって押付板の他方側面が向かいあう後側面部に少なくとも設けられ、押付板に押付力を供給するための開口と、
箱状筐体部の上面部に設けられ、整列された検体成分試験紙の先頭の1枚が上下できる寸法で開口された試験紙送出口と、
箱型筐体部の側面部であって検体成分試験紙が押付けられる前側面部に上下方向に渡って一様なスリット幅を有して設けられ、検体成分試験紙を上方に押し出す押出力を供給するためのスリットと、
を含み、
箱状筐体部の下面部において、スリットは、検体成分試験紙の板厚方向に沿った開口の長さとして、箱状筐体部の前側面部の厚さに検体成分試験紙の板厚を加えた長さである押出長さを有し、
箱状筐体の上面部において、スリットは、試験紙送出口と接続し、検体成分試験紙の板厚方向に沿った開口の長さとして、押出長さに対応する長さを有し、
押出長さとスリット幅で規定される押出面を用いて外部押出力を検体成分試験紙に供給することができることを特徴とする試験紙マガジン。
【請求項2】
請求項1に記載の試験紙マガジンにおいて、
箱型筐体部の内部空間の検体成分試験紙の整列方向に沿った長さは、検体成分試験紙が収納される最大枚数に検体成分試験紙の板厚を乗じた長さに、押付板の厚さを加えた長さに対応することを特徴とする試験紙マガジン。
【請求項3】
請求項1に記載の試験紙マガジンにおいて、さらに、
箱状筐体部の内部空間に配置され、検体成分試験紙と一方側面で接触し、他方側面で検体成分試験紙を整列方向に押付ける押付力を受け止める押付板を含むことを特徴とする試験紙マガジン。
【請求項4】
請求項3に記載の試験紙マガジンにおいて、
押付板は、検体成分試験紙と同じ外形と寸法とを有し、検体成分試験紙と同様に外部押出力によって送出口から押し出されることができることを特徴とする試験紙マガジン。
【請求項5】
請求項1又は請求項3に記載の試験紙マガジンにおいて、
箱状筐体部は、
最後に押し出される順序となる検体成分試験紙を他の通常の検体成分試験紙と異なる目印を有するものとして、複数の検体成分試験紙を板厚方向に整列させて収納することを特徴とする試験紙マガジン。
【請求項6】
外部押付力によって複数の検体成分試験紙を一方向に押付け整列して収納することができる試験紙マガジンを交換可能に保持するマガジンホルダであって、
試験紙マガジンの側面を案内支持して交換可能に収納する収納空間を有する枠状筐体部と、
試験紙マガジンに収納される検体成分試験紙を一方向に押付けるための付勢手段と、
枠状筐体部に設けられ、付勢手段を取り付ける取付部と、
を含むことを特徴とするマガジンホルダ。
【請求項7】
請求項6に記載のマガジンホルダにおいて、
取付部は、枠状筐体部の底面部に設けられ、
付勢手段は、取付部に根元部が取り付けられ、先端部が試験紙マガジンに収納される検体成分試験紙に押付力を与えることのできるトーションバネであることを特徴とするマガジンホルダ。
【請求項8】
請求項7に記載のマガジンホルダにおいて、
枠状筐体部は、試験紙マガジンを収納空間に案内して保持位置を固定するロック部であって、ロック部による固定が解除されると、トーションバネの付勢力によって試験紙マガジンを収納空間から押し出すことができるロック部を有することを特徴とするマガジンホルダ。
【請求項9】
検体成分試験紙を保持する試験紙保持部を先端部に有する携帯型検体分析装置に検体成分試験紙を装着する試験紙装着装置であって、
複数の検体成分試験紙を整列して収納し、1枚ずつ送り出す送出口を有する試験紙マガジンと、
試験紙マガジンを交換可能に保持するマガジンホルダと、
試験紙マガジンに収納されている複数の検体成分試験紙を整列の順序通りに送出口へ向けて付勢する試験紙付勢手段と、
送出口の位置と携帯型検体分析装置の試験紙保持部の位置とを合わせ、送出口にある1枚の検体成分試験紙を試験紙保持部に押し出す押出機構と、
を備え、
押出機構は、
送出口にある検体成分試験紙の押し出し方向にマガジンホルダを移動可能に案内する案内ケースと、
案内ケースに設けられ、試験紙マガジンの送出口にある1枚の検体成分試験紙に押し当てられる位置に配置される押出部であって、マガジンホルダの移動に応じ、送出口にある1枚の検体成分試験紙を試験紙マガジン内部から押し出す押出部と、
を有することを特徴とする試験紙装着装置。
【請求項10】
請求項9に記載の試験紙装着装置において、
マガジンホルダは、
携帯型検体分析装置の先端部がはまり込む先端案内部であって、先端部がはまり込むときに、送出口から押し出されてきた検体成分試験紙が試験紙保持部に受け取られるように、検体成分試験紙の送出口の位置が配置される先端案内部を有することを特徴とする試験紙装着装置。
【請求項11】
請求項9に記載の試験紙装着装置において、
案内ケースは、
マガジンホルダを、押出部によって検体成分試験紙が押し出される押出位置と、押出部と干渉することのない通常位置との2つの位置の間で案内することを特徴とする試験紙装着装置。
【請求項12】
請求項11に記載の試験紙装着装置において、
案内ケースは、
マガジンホルダの外形を保持して長手方向に移動可能に案内する筒状の形状であって、筒状形状の上部に、マガジンホルダを通常位置に保持する係止部を有し、筒状形状の下部にマガジンホルダを押出位置に保持する止まり部を有することを特徴とする試験紙装着装置。
【請求項13】
請求項11に記載の試験紙装着装置において、
押出機構は、
マガジンホルダを押出位置から通常位置に向かって付勢するホルダ付勢手段を有することを特徴とする試験紙装着装置。
【請求項14】
検体成分試験紙を保持する試験紙保持部を先端部に有する携帯型検体分析装置に検体成分試験紙を装着する試験紙装着装置であって、
複数の検体成分試験紙を整列して収納し、1枚ずつ送り出す送出口を有する試験紙マガジンと、
試験紙マガジンを交換可能に保持するマガジンホルダと、
試験紙マガジンに収納されている複数の検体成分試験紙を整列の順序通りに送出口へ向けて付勢する試験紙付勢手段と、
マガジンホルダに設けられ、携帯型検体分析装置の先端部がはまり込む先端案内部であって、先端部がはまり込むときに、送出口から押し出されてきた検体成分試験紙が試験紙保持部に受け取られるように、検体成分試験紙の送出口の位置が配置される先端案内部と、
送出口の位置と携帯型検体分析装置の試験紙保持部の位置とを合わせ、送出口にある1枚の検体成分試験紙を試験紙保持部に押し出す押出機構と、
を備え、
押出機構は、
送出口にある検体成分試験紙の押し出し方向にマガジンホルダを移動可能に案内する案内ケースであって、マガジンホルダを、押出部によって検体成分試験紙が押し出される押出位置と、押出部と干渉することのない通常位置との2つの位置の間で案内する案内ケースと、
案内ケースに設けられ、試験紙マガジンの送出口にある1枚の検体成分試験紙に押し当てられる位置に配置される押出部であって、マガジンホルダの移動に応じ、送出口にある1枚の検体成分試験紙を試験紙マガジンから相対的に押し出す押出部と、
マガジンホルダを押出位置から通常位置に向かって付勢するホルダ付勢手段と、
を有し、
通常位置にあるマガジンホルダの先端案内部に携帯型検体分析装置の先端部をはめ込み、携帯型分析装置を先端案内部に押し付けてマガジンホルダを押出位置まで押し込んで移動させるとき、押出部の作用によって試験紙マガジンの送出口から1枚の検体成分試験紙が携帯型分析装置の試験紙保持部に押し出される構成であることを特徴とする試験紙装着装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−327783(P2007−327783A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157603(P2006−157603)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(592018179)株式会社創成電子 (10)
【Fターム(参考)】