説明

認知欠損を治療する方法

本発明は、認知機能不全を治療し認知機能を改善する方法であって、トラン5(tran5)−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩を、その必要がある患者に投与することを含む方法に関する。さらに、本発明は、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンを含む組成物中の改良された結合剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知を改善するためのトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンの使用に関する。さらに、本発明は、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンを含む改良された医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の主題である化合物(化合物I、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン)は、式(I):
【0003】
【化1】

を有する。
【0004】
国際特許公開第WO2005/016900号(特許文献1)では、遊離塩基としてのこの化合物(すなわち化合物I)ならびにその対応するコハク酸塩およびマロン酸塩が開示されている。この化合物は、ドパミンD受容体(拮抗薬)およびD受容体(拮抗薬)、5−HT受容体(拮抗薬)ならびにα1アドレナリン受容体に対する高い親和性を有することが報告されている。WO2005/016900(特許文献1)においては、この化合物は、精神病、とりわけ統合失調症(陽性、陰性および/またはうつ性の症状)、または、精神病性症状を伴う他の疾患(例えば、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害など)、ならびに、精神病性症状を伴う他の精神病性の障害もしくは疾患(例えば、双極性障害における躁病)を含む、中枢神経系における数種の疾患の治療に有用であることが開示されている。WO2005/016900(特許文献1)においては、不安障害、情動障害(うつ病、睡眠障害、偏頭痛、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群を含む)または、コカイン乱用、ニコチン乱用、アルコール乱用および他の乱用障害の治療のための、ならびに双極性障害の維持のための化合物Iの使用も開示されている。
【0005】
前述の薬理学的プロファイルを有する化合物Iおよび関連化合物を開示している他の刊行物は、欧州特許第638073号(特許文献2)、Bogeso K.P.ら、J. Med. Chem.、1995、38、4380〜4392頁(非特許文献1)およびBogeso K.P.、「Drug Hunting, the Medicinal Chemistry of 1-Piperazino-3-phenylindans and Related Compounds」、1998、ISBN 87-88085-10-4(非特許文献2)(例えば、47頁の表3および101頁の表9Aの化合物69を参照)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/016900号
【特許文献2】欧州特許第638073号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bogeso K.P.ら、J. Med. Chem.、1995、38、4380〜4392頁
【非特許文献2】Bogeso K.P.、「Drug Hunting, the Medicinal Chemistry of 1-Piperazino-3-phenylindans and Related Compounds」、1998、ISBN 87-88085-10-4
【非特許文献3】Adler, L.E.ら、Schizophrenia Bulletin、第24巻、第2号、1998、189〜202頁
【非特許文献4】Mitchell ES、Neumaier JF.、「5-HT6 receptors: a novel target for cognitive enhancement.」、Pharmacol Ther.、2005、108、320〜33頁
【非特許文献5】Hertel P、Olsen CK、Arnt J.、Repeated administration of the neurotensin analogue NT69L induces tolerance to its suppressant effect on conditioned avoidance behaviour.、Eur J Pharmacol.、2002、439(1〜3)、107〜11頁
【非特許文献6】Stone JM、Davis JM、Leucht S、Pilowsky LS、Cortical Dopamine D2/D3 Receptors Are a Common Site of Action for Antipsychotic Drugs; An Original Patient Data Meta-analysis of the SPECT and PET In Vivo、Schizophr Bull.、2008年2月26日、[Epub in advance of print]
【非特許文献7】Farde L、Nordstrom AL、Wiesel FA、Pauli S、Halldin C、Sedvall G、Positron emission tomographic analysis of central D1 and D2 dopamine receptor occupancy in patients treated with classical neuroleptics and clozapine. Relation to extrapyramidal side effects.、Arch Gen Psychiatry.、1992、49(7)、538〜44頁
【非特許文献8】Rodeferら、Eur. J. Neurosci.、21、1070〜1076頁(2005)
【非特許文献9】Birrell & Brown、J. Neurosci.、20、4320〜4324頁(2000)
【非特許文献10】Rodeferら、Neuropsychopharmacol.、33、2657〜2666頁(2008)
【非特許文献11】Rodeferら、Int J. Neuropsychopharmacol、9、S140〜141頁(2006)
【非特許文献12】Grayson B.ら、Behavioural Brain Research、184、(2007)、31〜38頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、今回驚くべきことに、化合物I、すなわちトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンが認知向上特性を有することを見出したことから、本発明は、この目的および他の重要な目的を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、認知機能不全(例えば、ある一定の疾患に伴う認知機能不全など)を治療する方法であって、化合物Iまたは薬学上許容可能なその塩を、その必要がある患者に投与することを含む方法に関する。化合物Iの薬学上許容可能な塩は、医薬組成物の形態であってもよい。
【0010】
本発明は、さらに、認知機能不全(ある一定の疾患に伴う認知機能不全など)の治療用の医薬の製造における化合物Iまたは薬学上許容可能なその塩の使用にも関する。
【0011】
さらなる一態様では、本発明は、統合失調症などある一定の疾患に伴う認知機能不全の治療にとりわけ有用な、化合物Iを含む改良された医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による、認知欠損を伴う統合失調症のラット疾患モデルにおける化合物Iの効果(実行機能)を示す。
【図2】本発明の一実施形態による、認知欠損を伴う統合失調症のラット疾患モデルにおける化合物Iの効果(視覚的な学習および記憶(獲得))を示す。
【図3】本発明の一実施形態による、認知欠損を伴う統合失調症のラット疾患モデルにおける化合物Iの効果(視覚的な学習および記憶(保持))を示す。
【図4】本発明の一実施形態による、認知欠損を伴う統合失調症のラット疾患モデルにおける化合物Iの効果(視覚的な学習および記憶(弁別指数))を示す。
【図5】本発明の一実施形態による、認知欠損を伴う統合失調症のラット疾患モデルにおける化合物Iの効果(視覚的な学習および記憶(自発運動活性))を示す。
【図6】フィルム・コート錠の製造工程および工程管理のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
認知過程の低下(すなわち、認知障害、認知欠損、認知機能不全など)は、一部の患者群、例えば、統合失調症、うつ病または精神病の患者およびパーキンソン病患者において生じる場合がある。
【0014】
認知機能障害としては、例えば、注意、学習、記憶および実行機能(外部刺激に対する適切な反応)の困難など、認知機能または認知領域の低下が挙げられる。認知機能障害としては、さらに、以下を挙げることもできる:注意欠如、解体した思考、思考緩慢、理解困難、集中力欠如、問題解決障害、記憶力不足、思考表現および/または思考、感情および行動の統合および/または無関係な思考の消去の困難、ならびに、注意および警戒、言語の学習および記憶、視覚的な学習および記憶、処理スピード、社会認知、推理および問題解決(例えば実行機能)の困難。認知障害の治療に有効な薬物は市場において現在存在せず、そのような障害の治療において有効な薬物に対する大きな必要性および需要が存在する。
【0015】
記憶、注意および実行機能などの領域における障害を含めた認知欠損は、統合失調症における長期障害の主要な決定因子および予測因子である。残念ながら、現在入手可能な抗精神病薬は、認知向上においては比較的効果が低い。
【0016】
統合失調症は、3つの広範な種類の症状群、すなわち、陽性症状(例えば幻覚)、陰性症状(例えば、情動鈍麻および社会的引きこもり)、ならびに、情報処理および認知機能(例えば、実行機能、注意および記憶など)の障害が特徴である。実行機能は、計画、体系化、精神的柔軟性および作業調整(task coordination)などの過程を包含し、統合失調症患者が最大の困難を有する領域であると考えられる。統合失調症における認知欠損は、「統合失調症に伴う認知機能障害」(CIAS)とも呼ばれる。しかし、認知機能障害は、精神病性症状および/または他の臨床的特徴を発症する前の多くの患者において観察される。さらに、患者においては、認知機能障害とコミュニティ機能(community functioning)と望ましくない結果との間には密接なつながりがあり、こうした症状の有効な治療は未だ見出されていない。
【0017】
統合失調症における認知機能障害の性質ならびに可能と考えられるその最良の評価および治療の方法に関するコンセンサスを得ることを目的として国立精神衛生研究所、カリフォルニア大学、Los Angelesおよび米国食品医薬品局の間で行われている米国におけるMATRICS(Measurement and Treatment Research to Improve Cognition in Schizophrenia、統合失調症における認知機能改善のための測定および治療の研究)イニシアチブは、作業記憶、注意および警戒、実行機能(すなわち、推理および問題解決)、言語学習、視覚的学習、処理スピードならびに社会認知を含む決定的に重要な7つの認知領域を特定している。現在の抗精神病薬は、統合失調症の陽性症状を主に治療し、陰性症状または認知症状に対する影響は限られている。さらに、現在市販されている多くの抗精神病薬は、薬物誘発性認知機能障害を引き起こしさえする。したがって、統合失調症に伴う認知機能不全を改善するためのより良好な療法を開発する真の必要性がある。
【0018】
本発明者らは、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンが、動物モデルにおいて誘発される注意能力障害を軽減することから、この化合物の認知向上特性が示唆されることを今回見出した(例えば、本明細書中の実施例1を参照)。注意セット・シフティング(attentional set−shifting)のパラダイムは、次元内(ID、intra−dimensional)対次元外(ED、extra−dimensional)のシフトの弁別学習により実行機能の評価を可能にする動物モデルであり、ヒトの前頭葉機能の感覚検査、すなわち、ウィスコンシン・カード分類検査(WCST、Wisconsin Card Sorting Test)またはコンピューターによる次元内−次元外検査に機能上は類似している。具体的には、この作業は、提示された2つの容器のどちらに餌報酬が入っているかを識別することによる一連の弁別問題を、2つまたは3つの非空間的な手がかり次元(non−spatial cue dimension)(におい、掘起し手段(digging medium)および/または触感)に基づいて解くことをラットに要求する。統合失調症疾患様の動物モデルへの亜慢性フェンシクリジン(PCP)投与+ウォッシュアウト期間を適用する。亜慢性PCP+ウォッシュアウトの処置レジメ(regime)は、EDシフト能力のみに限定された能力欠損を伴う最も選択的な障害を誘発するようであり、そのことから、この特定の薬理学的操作は初回エピソード統合失調症患者において観察される実行機能欠損をより効果的にモデル化できることが示唆される。
【0019】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンが、動物モデルにおいて誘発される視覚的な学習および記憶の障害を軽減することから、この化合物の認知向上特性も示唆されることを見出した(例えば、本明細書中の実施例3を参照)。
【0020】
したがって、前述のラットの注意セット・シフティング試験および新規物体認識試験の総合的な知見から、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンが認知向上特性を有することが示される。
【0021】
加えて、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンは、統合失調症において混乱することが周知の感覚ゲート機構に関する欠失の治療に有用であると期待される(例えば、Adler, L.E.ら、Schizophrenia Bulletin、第24巻、第2号、1998、189〜202頁(非特許文献3)を参照)。感覚ゲート機構は、それにより脳が刺激に対する自身の応答を調節する過程である。この機構は、大部分は自動的な過程である。1つの刺激が提示されると応答がある。しかし、その直後に第2の刺激が続くと、第2の刺激に対する応答は鈍る。これは、過剰刺激を予防するための適応機序である。この機序により、脳は、多数の他の正解でない選択肢の間の1つの刺激に集中できるようになる。感覚ゲート機構の機序には、知覚された刺激のフィードフォワード阻害およびフィードバック阻害が含まれる。この機序には、海馬のアンモン角(CA3)領域における錐体ニューロンのGABA作動性受容体およびα7ニコチン作動性受容体を介した阻害が含まれる。
【0022】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンが、既に公知のその薬理学的プロファイルに加え5−HT受容体での強力なin vitro拮抗作用を示し、正常状態および疾患状態の両方において認知向上効果と関連している受容体標的であることを見出した。(例えば、本明細書中の実施例2を参照)。このことは、5−HT拮抗薬と同様、5−HTアンチセンスオリゴヌクレオチドでの治療が認知向上の可能性を有することを示す非臨床試験に基づく(Mitchell ES、Neumaier JF.、「5-HT6 receptors: a novel target for cognitive enhancement.」、Pharmacol Ther.、2005、108、320〜33頁(非特許文献4))。5−HT拮抗薬と同様、化合物Iは、ラットにおいてPCPにより誘発されるEDシフト能力の欠損を回復させるが、このことは、この化合物の認知促進の可能性を示している。
【0023】
さらに、本発明者らは、化合物Iは、低用量(遊離塩基として計算した場合4〜14mgの量など)で治療上有効であることを見出した。
【0024】
式Iの化合物は、ドパミンD1受容体およびD2受容体の両方に親和性を有する抗精神病化合物であると推定される。条件回避反応(CAR、condition avoidance response)モデル(Hertel P、Olsen CK、Arnt J.、Repeated administration of the neurotensin analogue NT69L induces tolerance to its suppressant effect on conditioned avoidance behaviour.、Eur J Pharmacol.、2002、439(1〜3)、107〜11頁(非特許文献5)中に以前記載された実験手順)を用いたラットにおける前臨床実験により、式Iの化合物は非常に低レベルのD2受容体占拠率で抗精神病活性を有することが示唆されている。
【0025】
D1受容体およびD2受容体の追跡物質として11C−SCH23390および11C−ラクロプリドを用いた健常対象におけるポジトロン放出断層撮影(PET)試験において、式Iの化合物は、18日間毎日投与する用量を1日当たり2mgから10mgに増加させると、被殻中において11%〜43%のD2受容体占拠率を誘導することが見出された。そのようなレベルのD2受容体占拠率は、治療上有効である50%前後または50%超のD2受容体占拠率を一般に必要とする現在使用されている抗精神病薬のものと比較して低い(Stone JM、Davis JM、Leucht S、Pilowsky LS、Cortical Dopamine D2/D3 Receptors Are a Common Site of Action for Antipsychotic Drugs; An Original Patient Data Meta-analysis of the SPECT and PET In Vivo、Schizophr Bull.、2008年2月26日、[Epub in advance of print](非特許文献6))。同じPET試験において、式Iの化合物は、18日間毎日投与する用量を1日当たり2mgから10mgに増加させると、被殻中のD1受容体占拠率が32%から69%に増加することが見出された。そのような高レベルのD1占拠率は、現在使用されている抗精神病薬では通常見られない(Farde L、Nordstroem AL、Wiesel FA、Pauli S、Halldin C、Sedvall G、Positron emission tomographic analysis of central D1 and D2 dopamine receptor occupancy in patients treated with classical neuroleptics and clozapine. Relation to extrapyramidal side effects.、Arch Gen Psychiatry.、1992、49(7)、538〜44頁(非特許文献7))。したがって、式Iの化合物は、低い1日用量でD1受容体対D2受容体の独特な占拠率を呈する。
【0026】
前記に基づき、式Iの化合物は、低レベルのD2受容体占拠率のみを誘導する用量(2mg/日〜14mg/日、とりわけ4mg/日〜14mg/日)で、認知機能障害および/または感覚ゲート機構および/または統合失調症、とりわけ、統合失調症に伴う認知障害および/または感覚ゲート機構を有する患者において臨床的に顕著な治療効果を有することが期待される。このことは、式Iの化合物により示された高いD1受容体占拠率および独特のD1受容体対D2受容体占拠率の結果であると考えられる。治療上有効用量でのD2受容体占拠率が低いことは、D2受容体遮断が介在する厄介な副作用(錐体外路における副作用および高プロラクチン血症など)を誘発する傾向が低下するという観点から有益であろう。
【0027】
遊離塩基として計算した場合2〜14mg、とりわけ4〜14mgの治療上有効量の式Iの化合物は、経口投与され、そのような投与に適した任意の形態、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤または液剤の形態で提供されてもよい。一実施形態では、式Iの化合物の塩は、固形の医薬体(pharmaceutical entity)の形態で、適切には錠剤またはカプセル剤として投与される。
【0028】
固形の医薬組成物または調製物の調製の方法は、当技術分野で周知である。したがって、錠剤は、活性成分を慣用の佐剤、増量剤および希釈剤と混合し、次いで適当な打錠機中でこの混合物を圧縮することにより調製できる。佐剤、増量剤および希釈剤の例は、トウモロコシデンプン、乳糖、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、ゴムなどを含む。典型的な増量剤は、乳糖、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび微結晶性セルロースから選択される。着色剤、アロマ、保存剤など任意の他の佐剤または添加剤を使用してもよいが、この活性成分と適合することが条件である。
【0029】
したがって、本発明は、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(化合物I)もしくは薬学上許容可能なその塩または前記塩を含む医薬組成物の一定の医薬的使用に関する。
【0030】
本明細書を通じて使用される場合の式Iの化合物(または化合物I)は、遊離塩基、薬学上許容可能なその塩(例えば、コハク酸塩およびマロン酸塩など薬学上許容可能な酸付加塩)、遊離塩基の水和物もしくは溶媒和物またはその塩、ならびに無水体、非晶質体または結晶体など、任意の形態の化合物を示すことを意図したものである。
【0031】
本発明の組成物中に含まれることになる式Iの化合物は、その塩、典型的には、薬学上許容可能な塩も含む。そのような塩としては、薬学上許容可能な酸付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、無機酸および有機酸の塩が挙げられる。適当な無機酸の代表例としては、塩酸、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸などが挙げられる。適当な有機酸の代表例としては、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、イタコン酸、乳酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、テオフィリン酢酸および8−ハロテオフィリン、例えば8−ブロモテオフィリンなどが挙げられる。
【0032】
さらに、式Iの化合物は、非溶媒和体および溶媒和体で、水、エタノールなどの薬学上許容可能な溶媒と共に存在してもよい。一般に、溶媒和体は、本発明の目的にとっては非溶媒和体と同等であると考えられる。
【0033】
この組成物、使用または治療方法のさらなる一実施形態では、この組成物は、結合剤としてポビドンまたはコポビドン(Kollidone VA64など)をさらに含む。結合剤は、2〜4%、4〜6%、6〜8%、8〜10%、2〜8%、4〜8%、4〜10%または6〜10%(w/w)など、2〜10%(w/w)の濃度範囲で典型的に存在する。
【0034】
さらなる一態様では、本発明は、式(I)の化合物と、結合剤としてポビドンまたはコポビドンとを含む医薬組成物にも関する。典型的には、結合剤はKollidone VA64である。特定の一実施形態では、前記医薬組成物は、認知機能障害または統合失調症の治療用、とりわけ、統合失調症に伴う認知機能障害の治療用である。
【0035】
一実施形態では、結合剤は、2〜10%(w/w)の濃度範囲で、典型的には2〜4%、4〜6%、6〜8%または8〜10%(w/w)の濃度範囲で存在する。結合剤がポビドンまたはコポビドンである場合、典型的な増量剤は、リン酸水素カルシウム、乳糖、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび微結晶性セルロース、好ましくは、乳糖など、乳糖、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび微結晶性セルロースから選択される。一実施形態では、増量剤(前記のいずれか一つなど)は、15〜50%(w/w)の濃度範囲内である。典型的には、増量剤(乳糖、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび微結晶性セルロースのいずれか一つなど)は、15〜25%、20〜50%、30〜45%(w/w)の濃度範囲内である。
【0036】
本明細書中で使用する場合、語句「認知欠損(cognitive deficit(s))」、「認知機能障害(cognitive impairment(s))」および「認知機能不全(cognitive dysfunction(s))」は同じものを示すことを意図しており、互換的に使用される。したがって、これらの語句は、1つまたは2つ以上の認知過程、認知機能および/または認知領域の阻害または混乱を指す。場合により、「認知欠損(複数可)」、「認知機能障害(複数可)」および「認知機能不全(複数可)」は、結果としてしばしば社会/コミュニティ適応不足および作業障害に至る1つまたは2つ以上の機能障害に関連しており、および/またはこれを伴う。
【0037】
別の態様では、本発明は、有効量の化合物Iまたは薬学上許容可能なその塩を、その必要がある患者に投与することを含む、認知機能を改善する方法に関する。
【0038】
本件に関する場合、用語「〜を改善する」、「〜を改善する(こと)」などは、より良くすること、すなわち向上させることを意味する。場合により、この用語は、エンドポイントとしてのコンセンサス・バッテリー(例えば、MATRICS Consensus Cognitive Batteryの総合的な複合スコア。これは認知機能の改善を測定するうえでの第一次エンドポイントとしての重み付けの等しい7つの領域スコアから成る)に基づくような認知能力の向上を指す。
【0039】
本発明は、認知機能不全を治療する方法であって、有効量の化合物Iまたは薬学上許容可能なその塩を、その必要がある患者に投与することを含む方法にも関する。
【0040】
本件に関する場合、用語「治療」、「〜を治療する(こと)」などは、疾患、障害または状態(本明細書中では、限定するものではないが認知機能不全)に対抗する目的での患者の管理および看護を意味する。この用語は、患者が罹患している本明細書中に記載のような所与の疾患、障害または状態についての全範囲の治療(そうした疾患、障害または状態の症状(複数可)または合併症(複数可)を軽減もしくは緩和するため、疾患、障害または状態の進行を遅らせるため、および疾患、障害または状態を予防するための活性化合物の投与など)を包含することを意図しており、この場合の予防は、疾患、状態または障害に対抗する目的での患者の管理および看護として理解されるものであり、症状(複数可)または合併症(複数可)の発症を予防するための活性化合物の投与を包含する。用語「治療」、「〜を治療する(こと)」などは、疾患、障害または状態を治癒または排除することも意味する。但し、予防的(予防的)および治療的(治癒的)な治療は、本発明の2つの別々の態様である。治療対象となる患者は、例えば、ヒトなどの哺乳動物である。
【0041】
本明細書中で使用する場合、語句「有効量」は、本発明の化合物に適用する際は、意図した生物学的効果をもたらすのに十分な量を表すことを意図している。語句「治療上有効量」は、本発明の化合物に適用する際は、疾患、障害もしくは状態の状況の、または疾患、障害もしくは状態の症状の進行を軽減、緩和、安定化、回復、低速化または遅延させるのに十分な化合物の量を表すことを意図している。
【0042】
別の態様では、本発明は、本発明の一方法において使用するための化合物Iまたは薬学上許容可能なその塩に関し、この場合の方法は、限定するものではないが、認知機能不全に罹患している患者などにおける認知機能を改善するためのものである。
【0043】
別の態様では、本発明は、限定するものではないが認知機能不全を有する(すなわち、これに罹患している)患者などの認知機能の改善用の医薬を製造するための化合物Iまたは薬学上許容可能なその塩の使用に関する。本発明は、認知機能不全を治療するための医薬を製造するための化合物Iまたは薬学上許容可能なその塩の使用にも関する。
【0044】
本発明は、さらに、統合失調症、精神病性症状を伴う疾患、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害および物質誘発性精神病性障害、情動障害(例えば、うつ病、双極性障害および躁病など)、パーキンソン病、睡眠障害を伴う疾患、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群ならびに乱用障害(例えば、コカイン乱用、ニコチン乱用およびアルコール乱用など)から成る群から選択される疾患における認知機能不全を治療するための化合物Iまたは薬学上許容可能なその塩を提供する。
【0045】
本発明は、さらに、統合失調症に伴う認知機能障害(CIAS)を治療する方法であって、治療上有効量のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩を、その必要がある患者に投与することを含む方法を提供する。
【0046】
本発明は、さらに、治療上有効量の化合物Iまたは薬学上許容可能なその塩と、薬学上許容可能な佐剤、増量剤、希釈剤、添加剤またはそれらの組合せとを含む、本明細書中に記載のような使用のための医薬組成物を提供する。
【0047】
本発明の一実施形態では、薬学上許容可能な塩は、コハク酸塩またはマロン酸塩である。一実施形態では、薬学上許容可能な塩は、化合物Iの結晶性のコハク酸水素塩、化合物Iの結晶性のマロン酸水素塩の形態、例えば、結晶型αの化合物Iのコハク酸水素塩または結晶型αの化合物Iのマロン酸水素塩である。化合物Iのコハク酸塩およびマロン酸塩およびその調製については、国際公開第2005/016900号(特許文献1)中に記載がある。
【0048】
本発明の一実施形態では、化合物Iまたは薬学上許容可能なその塩は、精製された形態のものである。用語「精製された形態」は、化合物Iまたはその塩に、他の化合物、または場合によっては当該化合物の他の形態(多形体など)が本質的に含まれていないことを示すことを意図したものである。
【0049】
一実施形態では、本発明の患者は、認知機能不全に罹患している。本発明の一実施形態では、患者は、認知機能不全に罹患していない。一実施形態では、本発明の患者は、初回エピソード統合失調症患者である。一実施形態では、本発明の患者は、認知機能障害を有していると診断されており、そのための治療を受けている。
【0050】
一実施形態では、本発明の認知機能不全は、疾患と関連がある。そのような一実施形態では、疾患は、精神病性症状を伴う疾患(例えば統合失調症など)、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、物質誘発性精神病性障害、情動障害(例えば、うつ病、双極性障害および躁病など)、パーキンソン病、睡眠障害を伴う疾患、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群および乱用障害(例えば、コカイン乱用、ニコチン乱用およびアルコール乱用など)から成る群から選択される。
【0051】
一実施形態では、本発明の方法は、有効量の化合物Iまたは薬学上許容可能なその塩を、その必要がある患者に投与することを含む。
【0052】
本発明の一実施形態では、化合物Iまたは薬学上許容可能なその塩は、統合失調症と関連のある認知機能不全を治療するために使用される。一実施形態では、認知機能不全はCIASである。一実施形態では、この使用により、統合失調症患者における認知症状が低下する。一実施形態では、患者は、統合失調症の少なくとも1つの認知症状を有する。一実施形態では、患者は、統合失調症の2つ以上の認知症状を有する。本明細書中で使用する場合、語句「認知症状(cognitive symptom(s))」は、認知欠損(複数可)、認知機能不全(複数可)および認知機能障害(複数可)を指し、しばしば統合失調症に伴う。本明細書中で使用する場合、用語「低下する、「低下する(こと)」などは、例えば、重症度、効果および存在などが減るまたは小さくなることを指す。
【0053】
本発明のさらなる一実施形態では、本明細書中に記載のような、疾患(例えば統合失調症)に伴う認知機能障害を治療する方法は、該認知機能障害が、作業記憶、注意、言語の学習および記憶、問題解決(例えば実行機能)、処理スピードおよび社会認知から成る群から選択される少なくとも1つの機能または領域の低下として顕在化する場合をさらに含む。
【0054】
本発明のさらなる実施形態では、治療対象となる認知機能不全(複数可)(すなわち、認知機能障害(複数可)、認知機能不全(複数可))としては、認知機能または認知領域、例えば、作業記憶、注意および警戒、言語の学習および記憶、視覚的な学習および記憶、推理および問題解決(例えば実行機能)、処理スピード、社会認知ならびにそれらの組合せ(視覚的な学習および記憶と組み合わさった注意能力など)から成る群から選択されるものの低下が挙げられる。さらに、認知欠損、認知機能障害などは、注意欠如、解体した思考、思考緩慢、理解困難、集中力欠如、問題解決障害、記憶力不足、計画、体系化の欠如、精神的柔軟性の欠如、作業調整力の欠如、思考表現の困難、思考、感情および行動の統合困難、無関係な思考の消去の困難またはそれらの組合せを指すこともある。
【0055】
化合物Iの合成(定義を含む)
化合物I(そのコハク酸塩およびマロン酸塩を含む)は、国際公開第2005/016900号(特許文献1)中に概説されているように調製できる。
【0056】
立体異性体を特定するときは、その立体異性体が化合物の主要な構成要素であると理解される。例えば、化合物のエナンチオマー体を特定する場合、その化合物は、エナンチオマー的に過剰な特定のエナンチオマー体を有する。
【0057】
本発明においては、医薬としての使用については、式(I)について行っているように化合物トランス−4−(6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンのエナンチオマー体を特定する場合、この化合物は、立体化学的に比較的純粋である、例えば、エナンチオマー過剰率が少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約96%または少なくとも約98%のものであると理解され、このとき、例えば、「少なくとも約80%の場合にエナンチオマー的に過剰」とは、化合物I対そのエナンチオマーの比率が、当該化合物の混合物中で90:10であることを意味する。一実施形態では、化合物Iのジアステレオマー過剰率(すなわち、シス/トランス比)は、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%または少なくとも約98%であり、このとき、例えば、90%のジアステレオマー過剰率は、化合物I対シス−4−((1S,3S))−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンの比率が95:5であることを意味する。
【0058】
化合物Iのエナンチオマー過剰率は、例えば、国際公開第2005/016900号(特許文献1)中に記載のように決定してもよく、これは、手短に言えば、以下の条件を用いた融合シリカのキャピラリー電気泳動法(CE)による:Capillar:50μm ID X 64.5cm L、溶出用緩衝液:25mMのリン酸二水素ナトリウム中1.25mMのβシクロデキストリン、pH1.5、電圧:16kV、温度:22℃、注入:50mbarで5秒間、検出:カラムダイオードアレイ検出192nm、試料濃度:500μg/ml。このシステムにおいては、化合物Iの保持時間はおよそ33分であり、他方のエナンチオマーの保持時間はおよそ35分である。化合物Iのジアステレオマー過剰率は、例えば、Bogeso K.P.ら、J. Med. Chem.、1995、38、4380〜4392頁(非特許文献1)(4388頁、右欄)中に記載のように決定してもよい。
【0059】
本発明においては、薬学上許容可能な塩は、化合物Iの任意の薬学上許容可能な塩を包含する。そのような塩の非限定例は、化合物Iの結晶性のコハク酸水素塩および結晶性のマロン酸塩である。
【0060】
化合物Iの投与および用量:
化合物Iまたはその塩は、任意の適当な方式、例えば、経口、バッカル、舌下または非経口により投与してもよく、この塩は、そのような投与に適した任意の形態、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤もしくは液剤または注射用分散剤の形態で提供してもよい。一実施形態では、本発明の塩は、固形の医薬体の形態で、適切には錠剤またはカプセル剤として投与される。
【0061】
固形の医薬調製物の調製方法は、当技術分野で周知である。したがって、錠剤は、活性成分を通常の佐剤、増量剤および希釈剤と混合し、次いでこの混合物を好都合な打錠機中で圧縮することにより調製できる。佐剤、増量剤および希釈剤の非限定例は、トウモロコシデンプン、乳糖、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、乳糖、ゴムなどを含む。着色剤、アロマ、保存剤など任意の他の佐剤または添加剤を使用してもよいが、それらが活性成分と適合することが条件である。
【0062】
注射用液剤は、本発明の塩および可能な添加剤を滅菌水など注射用溶剤の一部に溶解し、この溶液を所望の体積に調節し、溶液を滅菌し、適当なアンプルまたはバイアルの中に充填することにより調製できる。等張化剤、保存剤、酸化予防剤、安定化剤など、当技術分野で慣用の任意の適当な添加剤を加えてもよい。
【0063】
遊離塩基として計算した場合の化合物Iの1日用量は、適切には、約2〜約55mgの間または約3〜約55mgの間である。したがって、本発明は、化合物Iまたは薬学上許容可能なその塩を、その必要がある患者に投与することを含む本明細書中に記載のような認知機能障害を治療する方法であって、遊離塩基として計算した場合の化合物Iの1日用量が、約2〜約55mgの間または約3〜約55mgの間である方法である。
【0064】
組成物、使用または治療方法のいくつかの実施形態では、遊離塩基として計算した場合の化合物Iの量は、4mg〜14mgの間である。
【0065】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、4〜12mgである。
【0066】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、5〜14mgである。
【0067】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、4〜6mg(5mgなど)である。
【0068】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、6〜8mg(7mgなど)である。
【0069】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、8〜10mgである。
【0070】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、10〜12mgである。
【0071】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、12〜14mg(14mgなど)である。
【0072】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、5〜7mgである。
【0073】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、7〜9mgである。
【0074】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、9〜11mg(10mgなど)である。
【0075】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、11〜13mgである。
【0076】
本発明が使用または治療方法に関する場合には、上に示した4〜14mgの用量(4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mgまたは14mgなど)は、1日当たりである。好ましい一実施形態では、用量は、5mg、7mgまたは10mgである。
【0077】
特定の一実施形態では、用量は、1日当たり化合物Iわずか2mgまたは3mgである。
【0078】
本発明を以下の非限定的な例において例証していく。
【実施例】
【0079】
実施例1
認知欠損を伴う統合失調症のラット疾患モデル、実行機能
実行機能としては、計画、体系化、精神的柔軟性および作業調整などの過程が挙げられ、統合失調症患者が最も困難を有する領域であると考えられる。注意セット・シフティングのパラダイムは、次元内(ID)対次元外(ED)のシフトの弁別学習により実行機能の評価を可能にする動物モデルである。統合失調症疾患様動物モデルへの亜慢性フェンシクリジン(PCP)投与+ウォッシュアウト期間を適用する。亜慢性PCP+ウォッシュアウト処置のレジメは、EDシフト能力のみに限定された能力欠損を伴う最も選択的な障害を誘発するようであり、そのことから、この特定の薬理学的操作は初回エピソード統合失調症患者において観察される実行機能欠損をより効果的にモデル化できることが示唆される。
【0080】
したがって、化合物の認知向上特性は、ラットにおける亜慢性PCP投与により誘発される「注意能力障害」を当該化合物が軽減しているかどうかを試験することにより、調査できる。
【0081】
方法。「注意セット・シフティング能力」のin vivo評価を、Rodeferら(Eur. J. Neurosci.、21、1070〜1076頁(2005)(非特許文献8))が記載したように実行し、Birrell & Brown(J. Neurosci.、20、4320〜4324 頁(2000)(非特許文献9))が設計した作業の改変版を基にした。手短に言えば、試験開始時に体重およそ250gのオスのLong−Evansラット(Harlan、Indianapolis、IN)を4群で(各群n=12)使用した。コロニー・ルームの環境に馴化させた後、ラットに一連の亜慢性のPCP(5mg/kg、腹腔内)または生理食塩水の注射を1日2回7日間投与し、次いでウォッシュアウト期間を10日おいてからセット・シフティング法を開始したが、この方法では、動物には、次元の手掛かりとしての掘起し手段または香り付けによるにおいのいずれかを用いて、容器内を掘り起こして餌報酬(半量のHoney Nut Cheerio(登録商標)(General Mills、Minneapolis、MN、USA))を取ってくることが要求された。試験チャンバは、箱の3分の1を残りと分ける(箱の長軸に沿って)不透明な障壁のついたPlexiglas(登録商標)箱(50×37.5×25cm)であった。
【0082】
各試行時には、2個の掘起し用容器を箱の大区域中に互いに隣接させて配置し、ラットを小区域の中で待機させた。間仕切りを上げることによりラットが容器に近付けるようにし、その後、一旦試行を開始したら、間仕切りを元通りに下ろした。試験前の数日間馴化を実施した。すなわち、ラットのホーム・ケージ中で使用される木片の敷材を詰め、いくつかのCheerio(登録商標)を仕掛けた容器を各ラット・ケージ中に配置し、容器から餌報酬を取ってくるようにラットを慣れさせた。次に、ラットを試験箱中に数日間毎日配置し、木片の敷材が詰められいくつかのCheerio(登録商標)が仕掛けられた2個の容器に近付けるようにした。ラットが、餌報酬を取ってくることを確信して掘り起こしている状態になるまで、カップには餌を継続的に補充した。この期間の終わりに、ラットを2つの単純な弁別問題(SD、simple discrimination problem)について連続6回の正解試行の基準に至るまで訓練したが、問題にはそれぞれ、においおよび手段の次元が含まれた。全ての弁別問題において、掘起しは、掘起し手段の活発な移動として定義されたが、その理由は、報酬は容器内深く(約2.5cm)埋まっていたからである。そのため、ラットは「掘起し」応答を実行する前に足または鼻を用いて掘起し手段を調べることができたが、このような選択は勘定に入れなかった。その理由は、ラットは、掘り起こす前に触れることにより掘起し手段を試してみることが可能であり、手段の触覚または視覚的な特徴(またはその両方)を用いて、この次元に基づいて選択できた可能性があるからである。隠れている報酬をにおいのみにより探知しようとする気がラットになくなるように、全ての手段には少量の粉末状のCheerio(登録商標)が入っていた。この予備段階の目的は、弁別学習法と、においおよび手段という可能性のある2つの適切次元をラットに熟知させることであった。この訓練段階に費やされた合計時間は、各動物が餌報酬を見つけるために確信して勢いよく掘り起こすことを学習する早さにより異なった(平均しておよそ5〜7訓練日)。この手順は、全ての動物が活発且つ一貫した様式で確信して掘り起こし、それにより各ラットに試験1セッションにおける全作業を完了させることが確実にできるように開発した。そのため、試験セッションには、亜慢性PCP投与の完了後、少なくともおよそ2〜3週間かかった。
【0083】
試験日に、ある用量のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(1kg当たり1.25mgまたは2.5mg、皮下注射)またはビヒクル(ヒドロキシルプロピル−β−シクロデキストリンの5%水溶液)を、試験セッションの30分前にラットに投与した。ラットが最初に掘り起こし始めた場所に関わらず、各弁別の最初の4試行で、両方の容器中でラットが掘り起こすことが可能になった発見期間を構成した。ラットが最初、餌の仕掛けられていない容器中で掘起しを行った場合にはエラーを記録した。最初の4試行が完了しラットが餌の仕掛けられていない容器中で最初に掘起しを行った後、ラットを箱の小区域に戻し、他方の容器中で餌報酬を見つけることができないようにした。試験は、ラットが連続6回の正解試行の基準に到達するまで続けた。
【0084】
単一の試験セッション中、ラットは、これまでに用いられた手順と似た一連の弁別を実施した(Birrell & Brown、J. Neurosci.、20、4320〜4324頁(2000)(非特許文献9)、Rodefer ら、Neuropsychopharmacol.、33、2657〜2666頁(2008)(非特許文献10))。まず、2つのにおいまたは2つの掘起し手段のいずれかの間の単純弁別(SD)を提示し、次いで、最初のSDと同じ正の刺激を用いた複合弁別(CD、compound discrimination)を提示した。CDにおいては新しい次元を導入したが、この次元は、餌報酬位置の信頼性の高い予測因子ではなかった。次に、CD問題を入れ替え(Rev1)、以前は非強化刺激であったものを強化刺激であるように変更し、不適切次元が報酬の位置を予測させないようにした。次に、次元内シフト(IDS)の弁別問題を提示したが、このIDS問題は、適切次元内および不適切次元内両方の特定の刺激を変更したが適切次元(においまたは手段のいずれか)は同じままの複合弁別であった。次に、IDS問題を入れ替える(Rev2)ことにより、以前は非強化刺激であったものが強化刺激になるように変更し、不適切次元は報酬の位置を予測させないままであるようにした。次に、以前の不適切次元が適切次元となり、元は適切次元であったものはもはや予測的価値をもたない、次元外シフト(EDS)問題をラットに提示した。最後に、EDS問題を入れ替える(Rev3)ことにより、以前は非強化刺激であったものが強化刺激になるように変更した。
【0085】
データ分析。以前のデータ(Rodeferら、Int J. Neuropsychopharmacol、9、S140〜141頁(2006)(非特許文献11); Rodeferら、Eur. J. Neurosci.、21、1070〜1076頁(2005)(非特許文献8))に基づき、亜慢性PCP投与はEDS作業能力を選択的に障害するであろうと仮説を立てた。したがって、最初に調べたのは、2つの対象間因子(弁別問題、薬物前処置)と問題×薬物の相互作用との分散分析(ANOVA)を用いての、亜慢性のPCPまたは生理食塩水で処置したラットのセット・シフティング能力(基準到達試行、trial to criterion)であった。次いで、ボンフェローニ補正による事後解析を用いて、平均値の差を検定した。
【0086】
結果の説明。
亜慢性PCP処置の効果。亜慢性PCP処置は、弁別問題(F(6,132)=22.06、p<0.01)について有意な主効果をもたらしたが、前処置条件の場合は有意な主効果をもたらさなかった(F(1,132)=2.92、p>0.05)。前処置条件と弁別問題との間の相互作用は有意であった(F(6,132)=4.04、p<0.01)。ボンフェローニ事後解析により、EDS弁別問題における基準に到達することが求められる試行においてのみ、PCP処置動物と生理食塩水処置動物との間の有意差が明らかになった(t=4.51、p<0.01)(図1を参照)。他の弁別問題のいずれについての基準到達試行についてもPCP誘発性の障害は示唆されなかった(全てp>0.05)。したがって、これらのデータは、亜慢性PCP投与はEDS作業能力を選択的に障害するであろうという本発明者らの仮説を支持した。
【0087】
化合物Iの効果。次に試験したのは、化合物Iの用量がPCP誘発性のEDS機能欠損(直前の記載内容を参照)の回復に及ぼす効果であった。これらの分析により、弁別問題の有意な主効果が明らかになった(F(6,198)=20.54、p<0.01)が、化合物Iの用量の効果については明らかにならなかった(F(2,198)=0.23、p>0.05)。しかし、化合物Iの用量と弁別問題との間には有意な相互作用があった(F(12,198)=2.07、p<0.05)。ボンフェローニ事後比較により、PCP+ビヒクル群と1.25mg/kgの化合物Iでの処置群(t=3.09、p<0.05)および2.5mg/kgの化合物Iでの処置群(t=3.80、p<0.01)の両方との間のEDS弁別能力については有意差が明らかになった(図1を参照)。化合物Iのいずれかの用量が他の全ての弁別問題について強く作用したという証拠は見出されなかった(全てp>0.05)。したがって、化合物Iは、調べた用量の両方にわたり、PCP誘発性のEDS学習欠損を有意に軽減させた。
【0088】
作業を完了する時間に薬物が及ぼす効果。明らかに、化合物Iは作業完了の遅延を生じさせた。一元配置ANOVA(F(2,33)=11.95、p<0.01)により、こうした時間の差は有意であることが明らかになった。2.5mg/kgの化合物I(M=3.33時間、SD=1.5)を投与されたラットは、セット・シフティング作業を完了するのに、1.25mg/kgの化合物Iを投与されたラット(M=2.05時間、SD1.1、t=2.89、p<0.05)またはビヒクル処置ラット(M=1.18時間、SD=0.25、t=4.86、p<0.01)より平均して有意に長い時間がかかった。1.25mg/kgの化合物Iを投与されたラットは、ビヒクル処置ラットと有意差はなかった(t=1.97、p>0.05)。観察から、化合物I処置ラットは、試験期間中、小休止をはさみながら集中的に活動することが示唆された。したがって、PCP誘発性欠損は有意に軽減したものの、選択用量の薬物によりセッション継続時間も増加した。しかし、こうした時間の増加は、EDSまたは他の作業の期間における全体的な正確さに影響しなかった。さらに、試験セッション期間がより長い動物は、高齢の動物、運動調整に大きく影響する傷害を受け、その後薬理化合物を投与されたことのある動物で、これまでに観察されている。
【0089】
急性投与した場合には、PCPにより混乱した注意能力の回復において効果がないことが示されているクロザピン、リスペリドンおよびハロペリドール(例えば、Rodeferら(2008)を参照)とは対照的に、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンは、調べた用量の両方にわたりPCP誘発性のEDS学習欠損を有意に軽減することが見出された。選択用量のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンは作業を完了する時間の量を増加させるようではあるが、時間の増加により試験のEDSまたは他の作業の期間の正確性は影響を受けず、そのような時間の増加は、他の未知の変数によるものである可能性がある。したがって、前述のラットの注意セット・シフティング試験の総合的な知見から、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンが認知向上特性を有することが示される。
実施例2
【0090】
5−HT受容体での化合物Iのin vitro拮抗作用
5−HT受容体は、正常状態および疾患状態の両方における認知向上効果と関連があった。5−HT受容体でのトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(化合物I)のin vitro拮抗作用を、以下の放射性リガンド結合アッセイにより評価した。
【0091】
ヒト5−ヒドロキシトリプタミン受容体6を安定に形質移入したHeLa細胞(NHI、1994年11月)をスクリーニングプレート中で培養した。コンフルエンスに達した(5〜7日)時点で、セル・スクレーパーを使用して細胞を氷冷のD−PBS(ダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水)中に回収し、1000rpmで10分間遠心分離にかけ、1プレート当たりD−PBS1mL中で再懸濁させた。細胞膜を−80℃で保存した。
【0092】
実験前に、膜を速やかに解凍し、氷冷の50mMトリス緩衝液(pH7.7)中で、Ultra−Turrax(登録商標)ホモジナイザー(IKA(登録商標)Werke GmbH&Co.KG、Staufen、ドイツ)を用いてホモジナイズした。さらに、実験前に、全ての試験化合物を50mMトリス緩衝液(pH7.7)中で希釈した。
【0093】
試験化合物/全体/非特異的10μL、放射性リガンド[H]5−LSD([N−メチル−H]リゼルギン酸、ジエチルアミド)(#TRK1041、最終1nM、GE Healthcare、Hillerod、デンマーク、旧Amersham Biosciences)10μLおよび膜懸濁液180μLから成る一定分量(最終10μg)を、室温で30分間インキュベートした。Tomtec(登録商標)Harvester96 Mach3u(Tomtec、Hamden、CT)で濾過することにより、結合リガンドを遊離リガンドと分離した。氷冷の50mMトリス緩衝液(pH7.7)0.5mLでフィルターを2回洗浄した。フィルターを20分(37℃)乾燥させてから、OptiPhase SuperMix(Perkin Elmer Wallac、Gaithersburg、MD、USA)を加え、MicroBeta(登録商標)TriLux1450(Perkin Elmer Wallac、Gaithersburg、MD、USA)計測器で1分間計数した。
【0094】
トリス緩衝液を用いて合計結合量を定量し、10μMの5−フルオロ−1−(4−フルオロフェニル)−3−[1−[2−(2−イミダゾリジノン−1−イル)エチル]−4−ピペリジル]−1H−インドール(H.Lundbeck A/S、Valby、デンマーク)を用いて非特異的な結合を定量した。
【0095】
XlFit(IDBS)を用いた非線形のカーブフィッティングによりIC50値を決定し、Cheng−Prusoff式:
=IC50/(1−[L]/K
(式中、[L]は放射性リガンドの濃度であり、Kは、飽和等温線から求めた受容体でのその解離定数である)
からK値を計算した。
【0096】
3つの異なるバッチの化合物IについてのK値は、0.78nM、1.4nMおよび0.84nMであった。したがって、化合物Iは、5−HT受容体での強力なin vitro拮抗作用を示しており、このことから認知向上効果が示唆される。
実施例3
【0097】
認知欠損を伴う統合失調症のラット疾患モデル
新規物体認識(NOR、novel object recognition)試験との組合せでの亜慢性PCP(フェンシクリジン)処置は、統合失調症に伴う認知機能不全の総体的症状を治療するうえでの治療可能性を有する化合物を探索するための有用なモデルであることが実証されている(Grayson B.ら、Behavioural Brain Research、184、(2007)、31〜38頁(非特許文献12))。
【0098】
先に引用した参考文献(Grayson、2007)に記載のように、NOR試験を実施した。
【0099】
獲得試行。ラット群は全て、獲得段階において同一の物体(AおよびB)の探索に同等な時間を費やした。図2は、亜慢性のPCP処置ラットおよびビヒクル処置ラットにおける急性のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(0.5〜2.5mg/kg、皮下注射)またはクロザピン(2.5mg/kg、腹腔内)後の新規物体認識作業(NOR)の獲得段階における同一物体の平均探索時間を示すものである。データは、平均±s.e.m(1群当たりn=9〜10)として表してあり、ANOVAおよび事後スチューデントt検定により分析した。統計分析により、いずれの群においても獲得段階における同一物体の探索に費やされる時間に有意差はないことが示された。
【0100】
保持試行。図3は、亜慢性のPCP処置ラットおよびビヒクル処置ラットにおける急性のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(0.5〜2.5mg/kg、皮下注射)またはクロザピン(2.5mg/kg、腹腔内)後の新規物体認識作業(NOR)の保持段階におけるなじみのある物体および新規の物体の平均探索時間を示すものである。データは、平均±s.e.m(1群当たりn=9〜10)として表してあり、ANOVAおよび事後スチューデントt検定により分析した。統計分析により、なじみのある物体の探索に費やされる時間と新規の物体の探索に費やされる時間との間で有意差が示された:P<0.05〜***P<0.001。
【0101】
亜慢性的にビヒクル処置したラットは、なじみのある物体と比較して、新規の物体の探索に、有意に(p<0.001)長い時間を費やした(図3)。なじみのある物体と新規の物体とを弁別する能力は、亜慢性PCP処置の後で消滅したことにより、新規の物体の探索となじみのある物体の探索とにおいて有意差はなかった(図3)。
【0102】
なじみのある物体と比較して新規の物体の探索に費やされた時間の有意な増加が再度観察された(p<0.05)ように、2.5mg/kgの用量のクロザピンを用いた急性処置は、亜慢性PCP誘発性の障害を有意に軽減した。
【0103】
トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンの急性処置は、3通りの用量(0.5mg/kg、1.25mg/kg、2.5mg/kg)全てで亜慢性PCP誘発性の障害を有意に軽減し、なじみのある物体と比較して新規の物体の探索に費やされた時間の有意な増加が再度観察された。この軽減は、クロザピンでの処置の場合よりトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンでの処置の場合に、さらにより顕著であった。
【0104】
図4は、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(0.5〜2.5mg/kg、皮下注射)またはクロザピン(2.5mg/kg、腹腔内)の投与が、亜慢性PCP処置ラットにおける弁別指数に及ぼす効果を示すものである。データは、平均±s.e.m(1群当たりn=9〜10)として表してあり、ANOVAに次いで事後ダネットt検定により分析した。弁別指数は、亜慢性PCP処置後は有意に(p<0.05、ビヒクルとの比較)低下したのに対し、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンで処置した場合には、2通りの用量(1.25mg/kg、2.5mg/kg)で、この効果は有意に(p<0.05、p<0.01、PCPとの比較)軽減した。このことは、処置の有意な効果が観察されないクロザピン(2.5mg/kg)での処置とは対照的である。
【0105】
自発運動活性。図5は、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン(0.5〜2.5mg/kg、皮下注射)またはクロザピン(2.5mg/kg、腹腔内)の投与が、新規物体認識作業における線越え(line crossing)の総回数について、亜慢性PCP処置ラットに及ぼす効果を示すものである。データは、平均±s.e.m(1群当たりn=9〜10)として表してあり、ANOVAおよび事後ダネットt検定により分析した。
【0106】
亜慢性PCP処置ラットは有意に(p<0.05、ビヒクルとの比較)高い自発運動活性を示したのに対し、最も高い用量(2.5mg/kg)でトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンで処置した際には、自発運動活性は有意に低下した(p<0.05、ビヒクルとの比較)。他の処置が自発運動活性に及ぼす有意な効果は観察されなかった。
【0107】
したがって、前述のNOR試験の総合的な知見から、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンが認知向上特性を有することが示される。
実施例4
【0108】
経口投与を意図した速放性フィルム・コート錠の調製I
医薬開発
賦形剤と式Iの化合物との適合性の試験から、錠剤製剤中で使用される成分はこの化合物と適合することが実証された。これに基づき、標準的な方法および賦形剤を用いた従来型の湿式造粒、打錠およびフィルム・コーティングの工程を開発した。
【0109】
薬物製品の説明
式Iの化合物を、経口投与を意図した速放性フィルム・コート錠として製剤化する。この実施例における式Iの化合物を含有する錠剤を、2通りの力価、5mgおよび7mgで作製する。式Iの化合物を含有する製品は、茶色がかった赤色の硬カプセル中に封入された白色のフィルム・コート錠である。他の力価(2mg、3mg、4mg、6mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mgまたは14mgなど)を同じ様式で調製してもよい。
【0110】
組成
5mg錠および7mg錠の組成を、以下、表1に示す。
【0111】
【表1】

【0112】
代表的なバッチ・サイズである10,000錠用のバッチ組成を表2に示す。
【0113】
【表2】

【0114】
製造工程および工程管理の説明
造粒の方法は、乾燥結合剤としてコポビドン(Kollidone VA64)を、造粒液として水を使用する従来型の湿式造粒法である。10リットルのPMA1高せん断混合機においては、2kgのバッチの場合、工程は以下のとおりである:
式Iの化合物のコハク酸塩、無水リン酸水素カルシウム、トウモロコシデンプンおよびコポビドンを500rpmで2分間混合する。
精製水を加えて凝集を開始させる。
800rpmでおよそ4分間造粒すると、適当な顆粒サイズが達成される。
この湿った顆粒をふるいにかける。
この顆粒を、製品の相対湿度(RH)がRH25〜55%になるまで、50℃のトレー乾燥機中で乾燥させる。
乾燥した顆粒をふるいにかける。
この顆粒を微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびタルクと共にミキサー中で混合する。
ステアリン酸マグネシウムをミキサーに加えて混合する。
錠剤圧縮機でこの粒状体を圧縮して錠剤とする。
表3に示す工程パラメーターを用い、錠剤コアをフィルム・コート機中でフィルム・コーティングする。
【0115】
【表3】

【0116】
製造工程および工程管理のフロー図を図6に示す。
【0117】
錠剤製剤I中の結合剤の予想外の効果
凝集工程を最適化するために、2種類の異なる錠剤製剤を作製し、式Iの化合物の化学安定性に及ぼすその効果を評価した。
【0118】
これらの錠剤の組成を表4に示すが、製造工程は前述のものと同様であった。
【0119】
【表4】

【0120】
結合剤としてコポビドンを使用すると、表5に示すように、より良好な医薬技術特性(例えば、崩壊時間を損なわずに、摩損度の損失率が低い、より固い錠剤を作製することができること)を有する錠剤がもたらされる。
【0121】
【表5】

【0122】
さらに、表6に示すように、結合剤の違いにより驚くべき安定性の差が生じる。
【0123】
【表6】

実施例5
【0124】
経口投与を意図した速放性フィルム・コート錠の調製II
医薬開発
賦形剤と化合物Iとの適合性の試験から、錠剤製剤中で使用される成分はこの化合物と適合することが実証された。これに基づき、標準的な方法および賦形剤を用いた従来型の湿式造粒、打錠およびフィルム・コーティングの工程を開発した。
【0125】
薬物製品の説明
化合物Iを、経口投与を意図した速放性フィルム・コート錠として製剤化する。この実施例における式Iの化合物を含有する錠剤を、2通りの力価、2.5mgおよび5mgで作製する。式Iの化合物を含有する製品は、茶色がかった赤色の硬カプセル中に封入された白色のフィルム・コート錠である。他の力価(2mg、3mg、4mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mgまたは14mgなど)を同じ様式で調製してもよい。
【0126】
組成
2.5mg錠および5mg錠の組成を、以下、表7に示す。
【0127】
【表7】

【0128】
代表的なバッチ・サイズである10,000錠用のバッチ組成を表8に示す。
【0129】
【表8】

【0130】
製造工程および工程管理は例4に記載のとおりである。
製造工程および工程管理のフロー図を図6に示す。
【0131】
錠剤製剤II中の結合剤の予想外の効果
凝集工程を最適化するために、各結合剤について錠剤製剤(2.5mg)1つを作製し、化合物Iの化学安定性に及ぼす結合剤の効果を評価した。これらの錠剤の組成を表9に示すが、製造工程は、前述のものと同様であった。
【0132】
【表9】

【0133】
【表10】

【0134】
結合剤としてコポビドンを使用すると(製剤番号6)、良好な医薬技術特性(例えば、崩壊時間が比較的長いために錠剤全体として錠剤を飲み込むようにできること(表10に示すように)、および、許容可能な安定性データ(表11に示すように)が可能になる)を有する錠剤がもたらされる。
【0135】
【表11】

【0136】
異なる結合剤を含有する製品の安定性にいくらか差があることを表11で見ることができる(次頁)。
【0137】
【表12】

【0138】
【表13】

実施例6
【0139】
経口投与を意図した速放性フィルム・コート錠の調製III
医薬開発
賦形剤と化合物Iとの適合性の試験から、錠剤製剤中で使用される成分はこの化合物と適合することが実証された。これに基づき、標準的な方法および賦形剤を用いた従来型の湿式造粒、打錠およびフィルム・コーティングの工程を開発した。
【0140】
薬物製品の説明
化合物Iを、経口投与を意図した速放性フィルム・コート錠として製剤化する。この実施例における式Iの化合物を含有する錠剤は、2通りの力価、2.5mgおよび5mgで作製する。式Iの化合物を含有する製品は、茶色がかった赤色の硬カプセル中に封入された白色のフィルム・コート錠である。他の力価(2mg、3mg、4mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mgまたは14mgなど)を同じ様式で調製してもよい。
【0141】
組成
2.5mg錠および5mg錠の組成を、以下、表12および表13に示す。
【0142】
【表14】

【0143】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩を、その必要がある患者に投与することを含む、認知機能を改善する方法。
【請求項2】
前記患者が認知機能不全に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有効量のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩を、その必要がある患者に投与することを含む、疾患に関連する認知機能不全(cognitive dysfunction)を治療する方法であって、前記疾患が、統合失調症、精神病性症状を伴う疾患、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、物質誘発性精神病性障害、情動障害、パーキンソン病、睡眠障害を伴う疾患、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群および乱用障害から成る群から選択される方法。
【請求項4】
前記乱用障害が、コカイン乱用、ニコチン乱用およびアルコール乱用から成る群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記情動障害が、うつ病、双極性障害および躁病から成る群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記疾患が統合失調症である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
統合失調症患者における認知症状を低減することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
認知機能を改善するための、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩。
【請求項9】
認知機能不全に罹患している患者における認知機能を改善する、請求項8に記載のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたはその塩。
【請求項10】
精神病性症状を伴う疾患、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、物質誘発性精神病性障害、情動障害、パーキンソン病、睡眠障害を伴う疾患、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群および乱用障害から成る群から選択される疾患における認知機能不全を治療するための、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩。
【請求項11】
前記乱用障害が、コカイン乱用、ニコチン乱用およびアルコール乱用から成る群から選択される、請求項10に記載のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたはその塩。
【請求項12】
前記情動障害が、うつ病、双極性障害および躁病から成る群から選択される、請求項10に記載のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたはその塩。
【請求項13】
前記疾患が統合失調症である、請求項10に記載のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたはその塩。
【請求項14】
さらに統合失調症患者における認知症状を低下させるための、請求項10に記載のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたはその塩。
【請求項15】
認知機能を改善するための医薬を調製するための、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩の使用。
【請求項16】
認知機能不全に罹患している患者の治療用の医薬を調製するための、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩の使用。
【請求項17】
精神病性症状を伴う疾患、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、物質誘発性精神病性障害、情動障害、パーキンソン病、睡眠障害を伴う疾患、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群および乱用障害から成る群から選択される疾患に関連する認知機能不全を治療するための、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩の使用。
【請求項18】
前記乱用障害が、コカイン乱用、ニコチン乱用およびアルコール乱用から成る群から選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記情動障害が、うつ病、双極性障害および躁病から成る群から選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
前記疾患が統合失調症である、請求項17に記載の使用。
【請求項21】
認知欠損(cognitive deficits)を有する統合失調症患者における認知症状を低下させるための、請求項17に記載の使用。
【請求項22】
治療上有効量のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩と、薬学上許容可能な佐剤、増量剤、希釈剤、添加剤またはそれらの組合せとを含む、認知機能を改善するための医薬組成物。
【請求項23】
認知機能不全に罹患している患者における認知機能を改善する、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
精神病性症状を伴う疾患、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、物質誘発性精神病性障害、情動障害、パーキンソン病、睡眠障害を伴う疾患、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群、乱用障害、コカイン乱用、ニコチン乱用、アルコール乱用、うつ病、双極性障害および躁病から成る群から選択される疾患に関連する認知機能不全を治療するための、治療上有効量のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩と薬学上許容可能な佐剤、増量剤、希釈剤、添加剤またはそれらの組合せとを含む医薬組成物。
【請求項25】
統合失調症の認知症状を治療するための医薬の製造におけるトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩の使用。
【請求項26】
トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンの前記薬学上許容可能な塩がコハク酸塩である、請求項1〜25のいずれか一つに記載の方法または塩または使用または医薬組成物。
【請求項27】
前記コハク酸塩が結晶性のコハク酸水素塩である、請求項26に記載の方法または塩または使用または医薬組成物。
【請求項28】
前記結晶性のコハク酸水素塩が結晶型αを有する、請求項27に記載の方法または塩または使用または医薬組成物。
【請求項29】
トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンの前記薬学上許容可能な塩がマロン酸塩である、請求項1〜25のいずれか一つに記載の方法または塩または使用または医薬組成物。
【請求項30】
前記マロン酸塩が結晶性のマロン酸水素塩である、請求項29に記載の方法または塩または使用または医薬組成物。
【請求項31】
有効量のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩を、その必要がある患者に投与することを含む、統合失調症に伴う認知機能障害(CIAS)を治療する方法。
【請求項32】
統合失調症に伴う認知機能障害(CIAS)を治療するための、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩。
【請求項33】
統合失調症に伴う認知機能障害(CIAS)を治療するための医薬を製造するための、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩の使用。
【請求項34】
前記患者が、認知機能障害を有すると診断されている、請求項1〜7、9、14、16、21、23および31のいずれか一つに記載の方法、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン、塩または医薬組成物。
【請求項35】
前記患者が初回エピソード統合失調症を有する、請求項1〜7、9、14、16、21、23、31および34のいずれか一つに記載の方法、トランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン、塩または医薬組成物。
【請求項36】
有効量のトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩を、その必要がある患者に投与することを含む、初回エピソード統合失調症を治療する方法。
【請求項37】
初回エピソード統合失調症を治療するためのトランス−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンまたは薬学上許容可能なその塩の使用。
【請求項38】
式(I)
【化1】

の化合物を、遊離塩基として計算して4〜14mgの治療上有効量で含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項39】
錠剤またはカプセル剤など経口投与用に製剤化される、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記式(I)の化合物がコハク酸塩またはマロン酸塩の形態である、請求項38〜39のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項41】
前記式(I)の化合物の前記量が、4〜12mg、5〜14mg、4〜6mg、6〜8mg、8〜10mg、10〜12mg、12〜14mg、5〜7mg、7〜9mg、9〜11mg、11〜13mg、5mg、7mg、10mgまたは14mgである、請求項38〜40のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項42】
1日1回経口投与するための、請求項38〜41のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項43】
結合剤としてKollidone VA64などのコポビドンをさらに含む、請求項38〜42のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項44】
認知機能不全、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、双極性障害における躁病、不安障害、うつ病、双極性障害の維持、睡眠障害、偏頭痛、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群、またはコカイン乱用、ニコチン乱用もしくはアルコール乱用の治療のための、請求項38〜43のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項45】
式(I)
【化2】

の化合物と、結合剤としてのポビドンまたはコポビドンとを含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記結合剤が、2〜4%、4〜6%、6〜8%または8〜10%など、2〜10%(w/w)の濃度範囲で存在する、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記結合剤がKollidone VA64である、請求項45〜46のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項48】
前記式(I)の化合物がコハク酸塩の形態である、請求項45〜47のいずれか一つに記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−519873(P2011−519873A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507792(P2011−507792)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050107
【国際公開番号】WO2009/135495
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】