説明

誘導システム、誘導方法及び誘導プログラム

【課題】新規端末の移動可能距離の制約条件を考慮した上で、アクセスポイントの選択並びに移動すべき距離と最適な移動方向(すなわち、移動位置)を算出する。
【解決手段】複数のアクセスポイントと、アクセスポイントの何れかと接続する端末とを含むシステムを対象として、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示装置が、新たに前記接続を行う端末である新規端末の位置と、前記各アクセスポイントの位置と、前記端末数及びトラフィック量といった前記各アクセスポイントの通信状況と、当該新規端末の可動範囲と、を考慮して、最適アクセスポイント並びに当該最適アクセスポイントまでの距離及び移動方向を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークにおけるデータ通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、本発明の背景としてアクセスポイント選択と接近経路について順に説明する。
【0003】
アクセスポイントとは、無線端末の1つであり、バックボーンネットワークに接続されているもののことを広く意味する。ただし、ここでは、いわゆる基地局のことをアクセスポイントとして、説明を行う。また、アクセスポイントに接続する端末を単に端末と呼ぶこととする。
【0004】
端末は、複数のアクセスポイントに接続することが可能である。更に、端末は、接続したアクセスポイントに応じて、異なるスループットを得ることが出来る。ここで、スループットとは単位時間あたりの処理能力を示す文言であるとする。
【0005】
例えば、電波送受信状況が良好なアクセスポイントに接続した場合には、大きなスループットを得る。あるいは、混雑しているアクセスポイントに接続した場合には、小さなスループットを得る。
【0006】
また、アクセスポイントが提供できる全スループットには限界があり、これをリンク容量と呼ぶ。例えば、IEEE802.11bでは、11Mbps、802.11gでは54Mbpsが、リンク容量である。
【0007】
アクセスポイントに繋がっている端末は、このリンク容量を共有して使用する。そのため、アクセスポイントに繋がっている端末のスループットの合計がこのリンク容量と等しい。
【0008】
ここで、このアクセスポイントにすでにいくつかの端末(既存端末)が繋がっており、既に通信を行っている状況を想定する。そしてこの状況下で、新しく、どこかのアクセスポイントに接続を希望する端末(新規端末)が現れる。この場合に、この新規端末をどこのアクセスポイントに接続すべきかの選択が、アクセスポイント選択である。
【0009】
ここで、リンク容量をC、端末数をNとしたときに、各端末が得るスループットは、C/N(CをNで除算した値)ではなく、各端末の伝送速度で計算される値になり、この値の合計(実質容量C’)は、Cと等しいかCよりも小さくなる。
【0010】
この点について、非特許文献1及び非特許文献2に記載がある。非特許文献1に示されるように、端末の伝送速度が小さければ小さいほど、C’は、Cよりも小さくなる。また、端末の伝送速度は、端末とアクセスポイントの距離に依存し、一般的には、近接するほど高い伝送速度での通信が可能である。例えば、非特許文献2に、距離と伝送速度の関係が示されている。
【0011】
このアクセスポイント選択を行うには具体的に2つの方法が挙げられる。1番目の方法は、新規端末のスループットが最も大きくなるようなアクセスポイントを選択する方法である。2番目の方法は、新規端末を接続したときに、全てのアクセスポイントの合計スループット、すなわち各アクセスポイントの実質容量C’の合計が最も大きくなるようなアクセスポイントを選択する方法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Abusubaih, M.; Gross, J.; Wiethoelter, S.; Wolisz, A "On Access Point Selection in IEEE 802.11Wireless Local Area Networks" Local Computer Networks, Proceedings 2006 31st IEEE Conference on, Feb. 2007.
【非特許文献2】Fumie Miki, Daiki Nobayashi, Yutaka Fukuda, Takeshi Ikenaga, "Performance Evaluation of Multi-Rate Communication in Wireless LAN," IEEE CCNC'2010, Research Student Workshop, Jan. 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した2つの方法を用いることによりアクセスポイントを選択することが可能となる。
【0014】
もっとも、前述のように、端末の伝送速度、すなわち距離に応じて実質容量C’が異なる。そのため、アクセスポイントと新規端末の距離や、既存端末の伝送速度、等の状況により、異なる新規端末のスループットおよびC’が得られる。このため、1番目の方法と2番目の方法とでは、状況により選択するアクセスポイントが異なることがあり得る、という点に関して問題がある。
【0015】
すなわち1番目の方法と2番目の方法においては、新規端末の位置が決まれば、接続すべきアクセスポイントは一意に定まった。つまり、1番目の方法と2番目の方法は新規端末が移動しないという前提であれば有益なものであった。
【0016】
しかしながら、新規端末がもし移動できると仮定したときの移動距離の制約条件を考慮して、アクセスポイントを選択し、さらにその場合、どの程度まで移動すべきかを明示する方法は、存在していない。
【0017】
関連する技術について、更に述べる。電波状況の善し悪しを地図上などに示す技術は既に開示されている。また、電波の強い方に移動するという技術も既に開示されている。また、アクセスポイントに接続するために移動するという行為自体も自明である。更に、アクセスポイントの選択を行う方法としては、前述の2つの方法以外にも多くの方法が、開示されている。その中には、電波の強弱や既存端末数を考慮して、アクセスポイントを選択する方法もある。また、ハンドオーバ技術においては、予め決められた経路に沿って移動するときに、どの位置でアクセスポイントを切り替えるか(選択を行うか)に関する技術が開示されている。
【0018】
しかしながら、前述の2つの方法や前述の関連する技術の全てを鑑みても、新規端末がもし移動できると仮定したときの移動距離の制約条件を考慮して、アクセスポイントを選択し、さらにその場合、どの程度まで移動すべきかを明示する方法は、存在していない。
【0019】
そこで、本発明は、新規端末の移動可能距離の制約条件を考慮した上で、アクセスポイントの選択並びに移動すべき距離と最適な移動方向(すなわち、移動位置)を算出することが可能な、誘導システム、誘導方法及び誘導プログラム、アクセスポイント及び端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の観点によれば、複数のアクセスポイントと、前記アクセスポイントの何れかと接続する端末とを含むシステムを対象として、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示装置において、新たに前記接続を行う端末である新規端末の位置と、前記各アクセスポイントの位置と、前記端末数及びトラフィック量といった前記各アクセスポイントの通信状況と、当該新規端末の可動範囲と、を考慮して、最適アクセスポイント並びに当該最適アクセスポイントまでの距離及び移動方向を出力することを特徴とする選択指示装置が提供される。
【0021】
本発明の第2の観点によれば、複数のアクセスポイントと、前記アクセスポイントの何れかと接続する端末と、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示装置とを含む通信システムにおいて、前記選択指示装置が上記本発明の第1の観点により提供される選択指示装置であることを特徴とする通信システムが提供される。
【0022】
本発明の第3の観点によれば、複数のアクセスポイントと、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示装置と、のそれぞれと接続する端末において、前記選択指示装置に対して、当該端末の移動可能距離、当該端末の到着位置及び当該端末の許容可能スループット、の値を送信することを特徴とする端末が提供される。
【0023】
本発明の第4の観点によれば、アクセスポイントに接続する端末と、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示装置と、のそれぞれと接続するアクセスポイントにおいて、前記選択指示装置に対して、当該アクセスポイントの設置位置、当該アクセスポイントに繋がっている端末数及び当該アクセスポイントのトータルスループット、の値を送信することを特徴とするアクセスポイントが提供される。
【0024】
本発明の第5の観点によれば、複数のアクセスポイントと、前記アクセスポイントの何れかと接続する端末とを含むシステムを対象として、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示プログラムにおいて、新たに前記接続を行う端末である新規端末の位置と、前記各アクセスポイントの位置と、前記端末数及びトラフィック量といった前記各アクセスポイントの通信状況と、当該新規端末の可動範囲と、を考慮して、最適アクセスポイント並びに当該最適アクセスポイントまでの距離及び移動方向を出力する選択指示装置としてコンピュータを機能させることを特徴とする選択指示プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、新規端末の可動範囲に応じて、可動範囲内で、接続可能なアクセスポイントに接続したときの実質容量C’を計算し、それを全てのアクセスポイントに対して行い、比較することから、新規端末の移動可能距離の制約条件を考慮した上で、アクセスポイントの選択並びに移動すべき距離と最適な移動方向(すなわち、移動位置)を算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態全体の基本的構成を表す図である。
【図2】本発明の実施形態におけるアクセスポイント(AP)の基本的構成を表す図である。
【図3】本発明の実施形態における移動端末(MN)の基本的構成を表す図である。
【図4】本発明の実施形態における選択指示装置の基本的構成を表す図である。
【図5】本発明の実施形態における情報の入出力について表す図である。
【図6−1】本発明の実施形態における選択指示装置の基本的動作を表すフローチャート(1/2)である。
【図6−2】本発明の実施形態における選択指示装置の基本的動作を表すフローチャート(2/2)である。
【図7】本発明の実施形態における移動距離に応じた該MNの得られるスループットを導出するための変換表について表す図である。
【図8】本発明の実施形態におけるMNの移動可能距離に応じたシステムスループット特性の例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
まず、本発明の実施形態の概略を説明する。
【0028】
本発明の実施形態は、複数のアクセスポイントと、該1つ以上のアクセスポイントに接続する新規端末に対して、新規端末の接続を行うに当たって、新規端末の位置および該各アクセスポイントの位置および既存端末数やトラフィック量といった各アクセスポイントの通信状況および新規端末の移動可能範囲を考慮して、アクセスポイントの選択および移動すべき距離と最適な移動方向(すなわち、移動位置)を出力することにより、課題を解決する。
【0029】
具体的には、新規端末が、端末の可動範囲に応じて、存在する位置からどの程度、どこまで移動すると、最適な位置になり、最適なアクセスポイントを選択できるかが示される。新規端末の可動範囲に応じて、可動範囲内で、接続可能なアクセスポイントに接続したときの実質容量C’を計算し、それを全てのアクセスポイントに対して行い、比較することで、最適なアクセスポイントを知ることが出来、またそのときの位置(動く方向θと距離d)を知ることが出来る。
【0030】
また、距離と伝送速度の関係は、連続値での変化ではなく、ステップでの変化であるため、距離dは、同じ伝送速度になるが、dよりも小さいd’にすることが可能であり、このd’を計算により出力することで、最適な距離を示すことができる。
【0031】
以上が本願発明の実施形態の概略である。
【0032】
次に、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0033】
図1は本実施形態の通信システム全体を表す図である。
【0034】
図1を参照すると本実施形態は、複数のアクセスポイント(AP)100、複数の移動端末(MN)200及び選択指示装置300を有している。
【0035】
各アクセスポイント(AP)、各移動端末(MN)200及び選択指示装置300は相互に無線通信を行うことが可能である。なお、本実施形態では無線通信をどのような方式により実現してもよく、方式に制限は無い。例えば、IEEE802.11b、IEEE802.11gといった規格に準拠した無線LANにより無線通信を実現してもよい。
【0036】
また、図1では、アクセスポイント(AP)100−1、100−2及び100−nの3つのアクセスポイントを図示しているがこれはあくまで例示に過ぎず、アクセスポイント(AP)100は任意の数が存在していてよい。同様に移動端末(MN)200の数にも制限はなく、任意の数が存在していてよい。
【0037】
続いて、図2を参照するとアクセスポイント(AP)100は、設置位置取得部101、接続端末数取得部102、トータルスループット取得部103、制御部104及び送受信部105を含む。
【0038】
設置位置取得部101は、当該アクセスポイント(AP)100が設置されている位置を取得し制御部105に通知する機能を有する。
【0039】
接続端末数取得部102は、当該アクセスポイント(AP)100に接続されている移動端末(MN)200の数を取得し制御部104に通知する機能を有する。
【0040】
トータルスループット取得部103は、当該アクセスポイント(AP)100のトータルスループットを取得し制御部104に通知する機能を有する。
【0041】
制御部104は、当該アクセスポイント(AP)100全体を制御している、そして、制御部104は、各部から通知された情報を、送受信部105を用いて選択指示装置300に送信する。
【0042】
送受信部105は各移動端末(MN)200及び選択指示装置300と信号を送受信するための機能を有する。
【0043】
続いて、図3を参照すると移動端末(MN)200は、移動可能距離取得部201、到着位置取得部202、許容可能スループット取得部203、制御部204及び送受信部205を含む。
【0044】
移動距離取得部201は、当該移動端末(MN)200が移動することが可能な距離を取得し制御部204に通知する機能を有する。
【0045】
到着位置取得部202は、当該移動端末(MN)200が到着している位置を取得し制御部204に通知する機能を有する。
【0046】
許容可能スループット取得部203は、当該移動端末(MN)200が許容できるスループットの値を取得し制御部204に通知する機能を有する。許容可能なスループット値は本実施形態を実装する環境等に応じて任意に設定することが可能である。
【0047】
制御部204は、当該移動端末(MN)200全体を制御している、そして、制御部204は、各部から通知された情報を、送受信部205を用いて選択指示装置300に送信する。
【0048】
送受信部205は各アクセスポイント(AP)100及び選択指示装置300と信号を送受信するための機能を有する。
【0049】
続いて、図4を参照すると選択指示装置300は、算出部301、出力部302、制御部303及び送受信部304を含む。
【0050】
算出部301はアクセスポイント(AP)100及び移動端末(MN)200から送信されてきた各情報に基づいてアクセスポイント(AP)100の選択および移動すべき距離と最適な移動方向(すなわち、移動位置)を算出する機能を有する。なお具体的な算出方法については後述する。
【0051】
出力部302は、算出部301の算出結果を出力する機能を有する。
【0052】
制御部303は、選択指示装置300全体を制御している、そして、制御部303は、アクセスポイント(AP)100及び移動端末(MN)200から送信されてきた各情報を算出部301に通知して算出を行わせる。
【0053】
送受信部205は各アクセスポイント(AP)100及び移動端末(MN)200と信号を送受信するための機能を有する。
【0054】
本実施形態においては、送受信部304を介して算出部301の算出結果を移動端末(MN)200に通知するようにしてもよい。また、移動端末(MN)200に対する通知に代えて又は通知と共に算出結果を出力部302から算出してもよい。出力部302における出力方法は任意の方法であってよく、例えば出力部302をディスプレイ等の表示装置として実現し、算出結果を表示するようにしてもよい。又は、算出結果を紙媒体に印刷したり、何らかの記憶媒体に記憶させることにより出力するようにしてもよい。
【0055】
更に、選択指示装置300は、全てのアクセスポイント(AP)100及び移動端末(MN)200と無線接続されていてもよいが、その一部と有線接続されていてもよい。例えば何れかのアクセスポイント100と有線接続されていてもよい。
【0056】
なお、上述したアクセスポイント(AP)100、移動端末(MN)200及び選択指示装置300が有する各部はハードウェアにより実現することもできるが、演算処理装置がプログラムを実行することによっても実現することができる。すなわち本実施形態はハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現される。
【0057】
また、選択指示装置300は本実施形態特有の装置により実現されてもよいが、汎用のパーソナルコンピュータにソフトウェアを組み込むことにより実現してもよい。
【0058】
続いて図5を参照して本実施形態におけるAP選択方法の処理に用いる情報の概要について説明する。
【0059】
なお、以下の説明及び図中ではアクセスポイント(AP)100を適宜「AP」と呼ぶ。また、移動端末(MN)200を適宜「MN」と呼ぶ。
【0060】
本実施形態におけるアクセスポイント選択方法では、最適な選択アクセスポイント407、MNの最適な移動距離408、MNの最適な移動方向409を出力するために、最適なアクセスポイント選択並びに最適な移動距離d及び最適な移動方向θを計算する計算機である選択指示装置300で計算を行う。
【0061】
ここで、選択指示装置300で計算を行うために用いられる移動端末(MN)200の情報は、上述した移動可能距離取得部201、到着位置取得部202、許容可能スループット取得部203により取得される。また、アクセスポイント(AP)100の情報は、上述した設置位置取得部101、接続端末数取得部102、トータルスループット取得部103により取得される。
【0062】
そして、取得後の情報として図5に示すように、MN移動可能距離401、MN到着位置402、MN許容可能スループット403、APaの設置位置404、APa端末数405,APaのトータルスループット406を取得する。そして、取得された各情報は選択指示装置300に送信される。これらの情報を選択指示装置300の入力値とし、選択指示装置300が計算を行う。
【0063】
次に、図6−1及び6−2のフローチャートを参照して選択指示装置300の動作について説明する。
【0064】
まず、選択指示装置300は、MN移動可能距離401、MN到着位置402、MN許容可能スループット403、APaの設置位置404、APa端末数405及びAPaのトータルスループット406の値を受け付ける(ステップS501)。なお、数式及びフローチャートにおける説明においては、適宜、MN移動可能距離401を|mth|、MN到着位置402をx、MN許容可能スループット403をtpth、APaの設置位置404をxa´、APa端末数405をna、APaのトータルスループット406をr(a,m)とおく。
【0065】
続いて、MN移動可能距離401の距離をMNが移動した際に、各APへ接続した場合の、移動したMN自身のスループット値であるtpnewを導出する(ステップS502)。
【0066】
このステップS502では、各APへ接続した場合の移動したMN自身のスループットを計算するために、まず、MN移動可能距離401とMN到着位置402と各APaの設置位置404を利用してAPaとMNの距離を計算する。そして、計算したAPaとMNの距離と、図7に示すAPaとMNの距離に応じたスループットを表す変換表を照らし合わせることにより移動したMN自身のスループットを導出する。なお、変換表は選択指示装置300が予め有しているものとする。
【0067】
次に、ステップS502において導出した各APに接続した際の、移動したMN自身のスループットと、APaの端末数405、APaのトータルスループット406を用いて、MNを接続した後のAPaのトータルスループットを、下記の数式1を用いて導出する(ステップS503)。
【0068】
【数1】

そして、MNを接続した後のトータルスループットを全てのAPに対して計算したかを確認し、全てのAPに対して計算してない場合(ステップS504においてNo)は、対象とするAPを代えて計算を継続する。一方、全てのAPに対して計算した場合(ステップS504においてYes)は、ステップS505に進む。
【0069】
本実施形態におけるAP選択方法では、移動したMN自身のスループットがMN許容可能スループット403以上になる条件を満たすAPの中で、システムスループットが最大になる最適な選択AP群を選択する。
【0070】
そこで、この最適な選択AP群を選択するため、全てのAPに対して、MNを接続する前の全APのシステムスループットとMNを接続した後のシステムスループットの差分値を計算する。そして、全てのAPに対するシステムスループットの差分値の中で最大となるAP群を、最適な選択AP群とする(ステップS505)。
【0071】
この最適な選択AP群を選択する計算は、
【0072】
【数2】

に従いながら導出する。導出は例えば総当りを用いて導出する。
【0073】
ただし、APごとのシステムスループットの差分値が小さく、図8の700に示すように、システムスループットの値がほぼ同じ値になる場合には、同じシステムスループットとみなし、このようなシステムスループットをみたすAPはすべて、最適な選択AP群に含めることとする。
【0074】
例えば、APごとのシステムスループットの差分値が、システムスループットが最大となる値から0.0001[Mbps]以内の(差分にある)APは、すべて最適な選択AP群に含めることとする。
【0075】
続いて、図6−2のステップS505の計算の結果、最適な選択AP群が1つ以上存在するかどうかを判定する(ステップS506)。
【0076】
最適選択AP群が1つも存在しなかった場合(ステップS506においてNo)には、接続を要求していたMN移動可能距離401とMNのMN許容可能スループット403を満たすAPが存在しなかったことと等価となるため、最適なAP選択並びに最適な移動距離d及び最適な移動方向θは、出力されず、このMNはネットワーク資源の不足によって通信ができないことを表す「呼損(call blocking)」となり、接続が拒否される(ステップS509)。
【0077】
一方で、最適な選択AP群が1つ以上存在する場合(ステップS506においてYes)には、MN移動可能距離401とMNのMN許容可能スループット403を満たすAPが複数存在することを意味するため、最適な選択AP群の中から最適な選択AP407を選択する必要がある。
【0078】
最適な選択AP群の中で、最適な選択AP407、MNの最適な移動距離408、MNの最適な移動方向409を導出するために同じシステムスループットをもつ最適な選択AP群の中で、MN到着位置402からの移動距離が最少となるAPを上記の数式(2)をみたすように計算する。
【0079】
そして、MN到着位置402からの移動距離が最少となるMNの最適な移動距離408、そのときに接続すべきAPを最適な選択AP407、最適な選択AP407に向かう方向をMNの最適な移動方向409として出力する。
【0080】
具体例を挙げて説明する。例えば、図8にあるように、MN移動可能距離401が603と同値だった場合、ほぼ同じシステムスループットをもつAP1とAP2の二つが最適選択AP群に含まれることとなる。そして、この中で、最適な距離は、AP2を選択した場合の602ではなく、より短い移動距離となる601となる。そのため最適選択AP407は、AP1となり、結果的に最適移動方向409は、AP1に向かった方向となる。
【0081】
そして、算出された最適な選択AP407、MNの最適な移動距離408、MNの最適な移動方向409を出力する(ステップS507)。これにより本実施形態は動作を終了する。
【0082】
以上説明したように本実施形態では、最適なAP選択並びに最適な移動距離d及び最適な移動方向θを出力することが可能となるという有利な効果を奏する。
【0083】
続いて上述した実施形態を変形した変形例について説明する。
【0084】
上述した実施形態では、ステップS506においてNoであった場合、ステップS509に進み「接続を要求していたMN移動可能距離401とMNのMN許容可能スループット403を満たすAPが存在しなかったことと等価となるため、最適なAP選択および最適な移動距離dと最適な移動方向θは、出力されず、このMNは呼損となり、接続が拒否される。」という処理を行っていた。
【0085】
この点、本変形例では、最適選択AP群が1つも存在しなかった場合(ステップS506においてNo)には、MN移動可能距離401とMNのMN許容可能スループット403をそれぞれ順次漸増および漸減させながら、それらを満たすAPが存在すれば、そのときの、最適なAP選択並びに最適な移動距離d及び最適な移動方向θを出力する。
【0086】
すなわち、本変形例では移動端末(MN)200が、MN移動可能距離401とMNのMN許容可能スループット403の組み合わせを複数持ち、それを優先度順に複数を111に提示するという方式をとる。このようにすることで、呼損と判断されるような場合でも、次善の条件により接続をすることが可能となるという効果を奏する。
【0087】
なお、上記実施形態では、プログラムが、各装置に予め組み込まれているものとして説明した。しかし、コンピュータを、各装置の全部又は一部として動作させ、あるいは、上述の処理を実行させるためのプログラムを、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto Optical Disk(Disc))BD(Blu-ray Disc)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、これを別のコンピュータにインストールし、上述の手段として動作させ、あるいは、上述の工程を実行させてもよい。
【0088】
さらに、インターネット上のサーバ装置が有するディスク装置等にプログラムを格納しておき、例えば、搬送波にプログラムを重畳させて、コンピュータにダウンロード等してプログラムを実行してもよい。
【0089】
また、本発明の実施形態によるアクセスポイント選択並びに接近経路指示方法は、ハードウェアにより実現することもできるが、コンピュータにその方法を実行させるためのプログラムをコンピュータがコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み込んで実行することによっても実現することができる。
【0090】
また、上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0091】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0092】
(付記1) 複数のアクセスポイントと、前記アクセスポイントの何れかと接続する端末とを含むシステムを対象として、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示装置において、
新たに前記接続を行う端末である新規端末の位置と、前記各アクセスポイントの位置と、前記端末数及びトラフィック量といった前記各アクセスポイントの通信状況と、当該新規端末の可動範囲と、を考慮して、最適アクセスポイント並びに当該最適アクセスポイントまでの距離及び移動方向を出力することを特徴とする選択指示装置。
【0093】
(付記2) 付記1に記載の選択指示装置において、
前記最適アクセスポイント群に含ませるアクセスポイントを選択する際には、
前記新規端末を接続した後のトータルスループットを、全アクセスポイントについて算出し、
前記新規端末を接続する前と後でのトータルスループットの差分が最大となるアクセスポイントを前記最適アクセスポイント群に含ませることを特徴とする選択指示装置。
【0094】
(付記3) 付記2に記載の選択指示装置において、
前記差分が最大となるアクセスポイントである第1のアクセスポイントの当該差分と比較した場合に、差分が所定の値以下の違いしかないアクセスポイントである第2のアクセスポイントも差分が最大となるアクセスポイントとみなして前記最適アクセスポイント群に含ませることを特徴とする選択指示装置。
【0095】
(付記4) 付記2又は3に記載の選択指示装置において、
前記新規端末とアクセスポイントまでの距離と、当該距離でアクセスポイントに接続した場合に前記新規端末が得られるスループットとの関係を表した変換表を備えており、
前記新規端末を接続した後のトータルスループットの算出は、前記新規端末とアクセスポイントまでの距離と前記変換表とを照らし合わせることにより行われることを特徴とする選択指示装置。
【0096】
(付記5) 付記1乃至4の何れか1に記載の選択指示装置において、
前記最適アクセスポイント群に含ませるアクセスポイントが存在しない場合は、前記新規端末の移動可能距離を漸増させ、前記新規端末が許容できるスループットを漸減させることにより新たな条件下で前記最適アクセスポイント群に含ませるアクセスポイントを選択することを特徴とする選択指示装置。
【0097】
(付記6) 付記1乃至5の何れか1に記載の選択指示装置において、
前記新規端末から、当該新規端末の移動可能距離、当該新規端末の到着位置及び当該新規端末の許容可能スループット、の値を受け取り、
前記アクセスポイントから、当該アクセスポイントの設置位置、当該アクセスポイントに繋がっている端末数及び当該アクセスポイントのトータルスループット、の値を更に受け取り、
前記受け取った各値に基づいて前記アクセスポイント選択及び接近経路指示を行うことを特徴とする選択指示装置。
【0098】
(付記7) 複数のアクセスポイントと、前記アクセスポイントの何れかと接続する端末と、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示装置とを含む通信システムにおいて、
前記選択指示装置が付記1乃至6の何れか1に記載の選択指示装置であることを特徴とする通信システム。
【0099】
(付記8) 複数のアクセスポイントと、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示装置と、のそれぞれと接続する端末において、
前記選択指示装置に対して、当該端末の移動可能距離、当該端末の到着位置及び当該端末の許容可能スループット、の値を送信することを特徴とする端末。
【0100】
(付記9) アクセスポイントに接続する端末と、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示装置と、のそれぞれと接続するアクセスポイントにおいて、
前記選択指示装置に対して、当該アクセスポイントの設置位置、当該アクセスポイントに繋がっている端末数及び当該アクセスポイントのトータルスループット、の値を送信することを特徴とするアクセスポイント。
【0101】
(付記10) 複数のアクセスポイントと、前記アクセスポイントの何れかと接続する端末とを含むシステムを対象として、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示プログラムにおいて、
新たに前記接続を行う端末である新規端末の位置と、前記各アクセスポイントの位置と、前記端末数及びトラフィック量といった前記各アクセスポイントの通信状況と、当該新規端末の可動範囲と、を考慮して、最適アクセスポイント並びに当該最適アクセスポイントまでの距離及び移動方向を出力する選択指示装置としてコンピュータを機能させることを特徴とする選択指示プログラム。
【符号の説明】
【0102】
100 アクセスポイント(AP)
101 設置位置取得部
102 接続端末数取得部
103 トータルスループット取得部
104 制御部
105 送受信部
200 移動端末(MN)200
201 移動可能距離取得部
202 到着位置取得部
203 許容可能スループット取得部
204 制御部
205 送受信部
300 選択指示装置
301 算出部
302 出力部
303 制御部
304 送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクセスポイントと、前記アクセスポイントの何れかと接続する端末とを含むシステムを対象として、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示装置において、
新たに前記接続を行う端末である新規端末の位置と、前記各アクセスポイントの位置と、前記端末数及びトラフィック量といった前記各アクセスポイントの通信状況と、当該新規端末の可動範囲と、を考慮して、
最適アクセスポイント並びに当該最適アクセスポイントまでの距離及び移動方向を出力することを特徴とする選択指示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の選択指示装置において、
前記最適アクセスポイントを選択するに際し、最適アクセスポイントの候補の集合である最適アクセスポイント群を選択し、
前記最適アクセスポイント群に含ませるアクセスポイントを選択する際には、
前記新規端末を接続した後のトータルスループットを、全アクセスポイントについて算出し、
前記新規端末を接続する前と後でのトータルスループットの差分が最大となるアクセスポイントを前記最適アクセスポイント群に含ませ、
前記最適アクセスポイント群の中から前記最適アクセスポイントを選択することを特徴とする選択指示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の選択指示装置において、
前記差分が最大となるアクセスポイントである第1のアクセスポイントの当該差分と比較した場合に、差分が所定の値以下の違いしかないアクセスポイントである第2のアクセスポイントも差分が最大となるアクセスポイントとみなして前記最適アクセスポイント群に含ませることを特徴とする選択指示装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の選択指示装置において、
前記新規端末とアクセスポイントまでの距離と、当該距離でアクセスポイントに接続した場合に前記新規端末が得られるスループットとの関係を表した変換表を備えており、
前記新規端末を接続した後のトータルスループットの算出は、前記新規端末とアクセスポイントまでの距離と前記変換表とを照らし合わせることにより行われることを特徴とする選択指示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の選択指示装置において、
前記最適アクセスポイント群に含ませるアクセスポイントが存在しない場合は、前記新規端末の移動可能距離を漸増させ、前記新規端末が許容できるスループットを漸減させることにより新たな条件下で前記最適アクセスポイント群に含ませるアクセスポイントを選択することを特徴とする選択指示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の選択指示装置において、
前記新規端末から、当該新規端末の移動可能距離、当該新規端末の到着位置及び当該新規端末の許容可能スループット、の値を受け取り、
前記アクセスポイントから、当該アクセスポイントの設置位置、当該アクセスポイントに繋がっている端末数及び当該アクセスポイントのトータルスループット、の値を更に受け取り、
前記受け取った各値に基づいて前記アクセスポイント選択及び接近経路指示を行うことを特徴とする選択指示装置。
【請求項7】
複数のアクセスポイントと、前記アクセスポイントの何れかと接続する端末と、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示装置とを含む通信システムにおいて、
前記選択指示装置が請求項1乃至6の何れか1項に記載の選択指示装置であることを特徴とする通信システム。
【請求項8】
複数のアクセスポイントと、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示装置と、のそれぞれと接続する端末において、
前記選択指示装置に対して、当該端末の移動可能距離、当該端末の到着位置及び当該端末の許容可能スループット、の値を送信することを特徴とする端末。
【請求項9】
アクセスポイントに接続する端末と、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示装置と、のそれぞれと接続するアクセスポイントにおいて、
前記選択指示装置に対して、当該アクセスポイントの設置位置、当該アクセスポイントに繋がっている端末数及び当該アクセスポイントのトータルスループット、の値を送信することを特徴とするアクセスポイント。
【請求項10】
複数のアクセスポイントと、前記アクセスポイントの何れかと接続する端末とを含むシステムを対象として、アクセスポイント選択及び接近経路指示を行う選択指示プログラムにおいて、
新たに前記接続を行う端末である新規端末の位置と、前記各アクセスポイントの位置と、前記端末数及びトラフィック量といった前記各アクセスポイントの通信状況と、当該新規端末の可動範囲と、を考慮して、
最適アクセスポイント並びに当該最適アクセスポイントまでの距離及び移動方向を出力することを特徴とする選択指示装置としてコンピュータを機能させることを特徴とする選択指示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−209822(P2012−209822A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74893(P2011−74893)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人情報通信研究機構「新世代ネットワーク技術戦略の実現に向けた萌芽的研究 無線・有線コグニティブ環境におけるユーザを主体としたネットワーク制御」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】