説明

誘導加熱機構を備えた配膳装置および配膳車

【課題】 食器自体が重くならず、その取り扱い性を損ねることがなく、しかも火傷のおそれがないようにする。
【解決手段】 加熱コイルが収容された加熱コイル収容部または棚と、加熱コイル収容部または棚の上に載せられたトレイと、トレイ上に載置された食器とを有する配膳装置または配膳車であって、トレイ上には磁性材料からなる発熱体がトレイと断熱された状態で保持され、発熱体上には耐熱性を有する食器が載せられており、加熱コイルに通電することでトレイに取り付けられた発熱体が発熱し、その熱が食器に伝わることで食器内の食品が加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や老人ホームなどにおける給食時に用いられる配膳装置および配膳車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導加熱装置としては、トレイに載せた複数の食器類のうち、保温加熱を必要とする食器の外底部に発熱体を装着する一方、トレイが載置されたケース内に加熱コイルを設け、該加熱コイル上のトレイには開口部を形成し、該開口部上に前記発熱体が装着された食器を配置することにより、該食器が誘導加熱されるようにしたものが知られている。
【0003】
また、誘導加熱機構を備えた配膳車としては、上下方向に多段に設けられた棚内に加熱コイルを配置し、棚に載せられるトレイ上には、その外底面に磁性材料からなる発熱体が装着された種々の食器を載せたものも知られている。
【特許文献1】特開2001−143856
【特許文献2】特開2001−52848
【特許文献3】特開2001−15257
【特許文献4】特開2000−300354
【特許文献5】特開2004−159682
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
病院や老人ホームなどにおいては、一度に多くの入院患者や入所者に食事を配膳することから、配膳にある程度の時間を要し、その間にご飯、スープおよび味噌汁などのように本来温かい状態で飲食するものが冷めてしまい易いという問題がある。
【0005】
また、近年、設備および人件費を含む給食の費用を削減するため、老人ホームなどでは、ホーム内で料理をつくらずに、業者が料理を搬入する場合が増えており、この場合、料理は、その保存上、冷凍状態で搬入されてくることから、これを速やかに解凍して配膳する必要がある。
【0006】
そのため、前述した誘導加熱機構を備えた配膳車などが開発されているのであるが、前述したいずれのものも、トレイを載せる棚やケースに加熱コイルを設ける一方、トレイ上に載置する食器の外底部に磁性材料からなる発熱体を取り付けるという構造となっている。
【0007】
そのため、前記食器は誘導加熱用の専用のものを用意する必要がある上、発熱体が一体に取り付けられた食器は通常のものより重くて取り扱い難い上、発熱体が十分に放熱していないうちに人が食器を持った場合、発熱体で火傷をするおそれがあった。
【0008】
本発明の目的は、前述した種々の不都合を有する発熱体付の食器を用いることなく、料理を誘導加熱することができる配膳装置および配膳車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の本発明は、加熱コイルが収容された加熱コイル収容部と、加熱コイル収容部上に載せられたトレイと、トレイ上に載置された食器とを有する配膳装置であって、トレイ上には磁性材料からなる発熱体がトレイと断熱された状態で保持され、発熱体上には耐熱性を有する食器が載せられている誘導加熱機能を備えた配膳装置である。
【0010】
請求項2記載の本発明は、加熱コイルが収容された複数段の棚と、棚上に載せられたトレイと、トレイ上に載置された食器とを有する配膳車であって、トレイ上には磁性材料からなる発熱体がトレイと断熱された状態で保持され、発熱体上には耐熱性を有する食器が載せられている誘導加熱機能を備えた配膳車である。
【0011】
請求項3記載の本発明は、前記請求項1記載の配膳装置について、トレイ上に平面から見てリング状の凸部からなる発熱体保持部が形成され、発熱体保持部上に発熱体がトレイと断熱状態で載置されているものである。
【0012】
請求項4記載の本発明は、前記請求項2記載の配膳車について、トレイ上に平面から見てリング状の凸部からなる発熱体保持部が形成され、発熱体保持部上に発熱体がトレイと断熱状態で載置されているものである。
【0013】
請求項5記載の本発明は、前記請求項1記載の配膳装置について、トレイ上に平面から見てリング状の凸部からなる発熱体保持部が形成され、発熱体保持部内に発熱体がトレイと断熱状態で嵌め入れられているものである。
【0014】
請求項6記載の本発明は、前記請求項2記載の配膳車について、トレイ上に平面から見てリング状の凸部からなる発熱体保持部が形成され、発熱体保持部内に発熱体がトレイと断熱状態で嵌め入れられているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の配膳装置や配膳車によれば、加熱コイルの通電に伴ってトレイに取り付けられた発熱体が発熱し、その熱が食器に伝わることで食器内の料理が加熱される。そして、本願のいずれの請求項にかかる発明においても、前述したように、発熱体は食器ではなく、トレイに設けられているため、発熱体が食器に設けられていた従来の配膳車のように、食器自体が重くなって取り扱い難くなったり、食器における発熱体に人の手が触れて火傷をするといったことがない。すなわち、本発明によれば、食器自体は、前述したように、発熱体を有さず、トレイに設けられた発熱体の発熱温度に耐え得る耐熱性さえ有していれば良いのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1に示すように、1は配膳車本体、2は配膳車本体1の下部に取り付けられたキャスター、3は配膳車本体の中央に形成された仕切壁、4A・4Bは仕切壁3を挟んで左右に設けられた庫室、5は各庫室4A・4B内にそれぞれ多段に設けられた棚、6は料理の入った食器20A、20B、20Cおよび20Dが載せられたトレイであって、棚5上に載置される。また、配膳車本体1の両側縁には枠体10aと透明板状体10bからなる扉10が取り付けられている。
【0018】
図1および図2に示すように、棚5内には2つの誘導加熱コイル7が配置され、その位置はトレイ6上における加熱しようとする食器20A、20Bの位置に対応している。
【0019】
図3〜図5に示すように、トレイ6において、誘導加熱コイル7に対応する位置には平面から見てリング状の凸部からなる発熱体保持部8が形成され、発熱体保持部8の内縁には断面L形の段部9が形成されている。そして、段部9には横断面L形状の発泡シリコーン等の断熱性と耐熱性を兼ね備えたパッキン12を介して磁性材料からなる円板状の発熱体11が嵌め込まれている。そして、該発熱体11の上面には加熱する食器20Aの外底部20aが当接されている。また、食器20Bも同様の要領で加熱される。
【0020】
図6および図7は前記トレイ6と異なる構造のトレイ26であって、その前記棚5内の加熱コイル7に対応する位置には平面から見てリング状の凸部からなる発熱体保持部28が形成されている。そして、発熱体保持部28内における両側面および底面には同心状に複数のリング状凹部13が形成され、更に発熱体保持部28内には平面から見て円形であって、断面上向きコ字形のパッキン22が収容され、該パッキン22を介して発熱体保持部28内に円板状の発熱体21が嵌め込まれている。そして、該発熱体21の上面には前記と同様に加熱する食器20Aの外底部20aが当接される。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、誘導加熱の発熱体は食器ではなく、トレイに設けられているため、食器自体は誘導加熱しない通常の食器と同様の重さとすることができ、そのため誘導加熱される食器の取り扱い性が向上し、また前述したように、火傷のおそれもないため、配膳装置や配膳車の分野で幅広い利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態にかかる配膳車の斜視図である。
【図2】配膳車における棚の平面図である。
【図3】トレイの平面図である。
【図4】棚およびトレイ部分の断面図である。
【図5】図4において、トレイ上に食器を載せた状態の部分拡大断面図である。
【図6】他の実施形態を示す棚およびトレイ部分の断面図である。
【図7】図6において、トレイ上に食器を載せた状態の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 配膳車本体
5 棚
6 トレイ
7 加熱コイル
8 発熱体保持部
11 発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱コイルが収容された加熱コイル収容部と、加熱コイル収容部上に載せられたトレイと、トレイ上に載置された食器とを有する配膳装置であって、トレイ上には磁性材料からなる発熱体がトレイと断熱された状態で保持され、発熱体上には耐熱性を有する食器が載せられている、誘導加熱機能を備えた配膳装置。
【請求項2】
加熱コイルが収容された複数段の棚と、棚上に載せられたトレイと、トレイ上に載置された食器とを有する配膳車であって、トレイ上には磁性材料からなる発熱体がトレイと断熱された状態で保持され、発熱体上には耐熱性を有する食器が載せられている、誘導加熱機能を備えた配膳車。
【請求項3】
トレイ上に、平面から見てリング状の凸部からなる発熱体保持部が形成され、発熱体保持部上に発熱体がトレイと断熱状態で載置されている請求項1記載の配膳装置。
【請求項4】
トレイ上に、平面から見てリング状の凸部からなる発熱体保持部が形成され、発熱体保持部上に発熱体がトレイと断熱状態で載置されている請求項2記載の配膳車。
【請求項5】
トレイ上に平面から見てリング状の凸部からなる発熱体保持部が形成され、発熱体保持部内に発熱体がトレイと断熱状態で嵌め入れられている請求項1記載の配膳装置。
【請求項6】
トレイ上に平面から見てリング状の凸部からなる発熱体保持部が形成され、発熱体保持部内に発熱体がトレイと断熱状態で嵌め入れられている請求項2記載の配膳車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−82168(P2009−82168A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251754(P2007−251754)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(504288627)株式会社井上製作所 (16)
【Fターム(参考)】