説明

誘導加熱用シート、暖房便座及び誘導加熱用シートの製造方法

【課題】誘導加熱用コイルを所望の部位に容易に取り付けることができるようにすること。
【解決手段】誘導加熱を行う部材に取り付ける誘導加熱用シート60に、誘導加熱時に高周波電流を通電する誘導加熱用コイル61と、型枠80が有する型溝81に入れた状態の誘導加熱用コイル61を接着した後、型溝81から誘導加熱用コイル61を抜き取ることにより誘導加熱用コイル61が型溝81に沿った配線パターンで接着されるシート62と、を備える。このため、このシート62を所望の部位に取り付けることにより、誘導加熱用コイル61を型溝81に沿った配線パターンのまま、所望の部位に寄り付けることができる。この結果、誘導加熱用コイル61を所望の部位に容易に取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱用シート、暖房便座及び誘導加熱用シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、所望の部材を加熱する手段として、誘導加熱を用いるものが増加している。この誘導加熱は、加熱する部材として金属を使用し、この金属の近傍に配設された導線に高周波電流を流すことにより、導線の周囲の磁束を変化させて金属に誘導電流を発生させ、誘導電流に対する金属の抵抗によって、金属を加熱させる。誘導加熱では、このように高周波電流を使用するが、導線に高周波電流を流した場合、電気は主に導線の外周部を流れ、中心部には流れ難くなっている。このため、誘導加熱を行う場合は、電気が流れる部分を確保して抵抗を少なくするために、高周波電流を流す導線として、線径が細く、外周に絶縁被膜が施された素線を束ねたリッツ線を使用し、電気が流れる導線の外周部の面積を増加させている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された誘導加熱用コイルの形成方法では、薄膜熱収縮チューブで固縛したリッツ線をコイル形成用治具に巻きつけてコイル状に形成し、このコイル状に形成されたリッツ線を、樹脂系モールド材によって固めることにより、リッツ線を、誘導加熱用コイルに用いている。また、特許文献2に記載された誘導加熱調理器では、リッツ線を用いて適切な誘導加熱を行うために、リッツ線を融点の異なる絶縁層と溶着層とで被覆し、溶着層同士を溶融固化させることにより、リッツ線を用いて形成される加熱コイルの形状を所望の形状で安定化させる。
【0004】
また、このような誘導加熱は、特許文献1や特許文献2に記載されているような調理機器以外でも用いられている。例えば、特許文献3に記載された暖房便座装置では、便座に、誘導加熱に用いる誘導コイルと、この誘導コイルへの通電によって発熱する金属製の発熱体とを設けており、誘導コイルに通電して発熱体の誘導加熱を行うことにより、便座を加熱している。さらに、この特許文献3に記載された暖房便座装置では、誘導コイルを複数の種類設け、これらを組み合わせて便座に設けることにより、誘導加熱によって便座を加熱する際における温度の均一化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−92565号公報
【特許文献2】特開2009−245676号公報
【特許文献3】特開2009−291461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
誘導加熱は、これらのようにリッツ線を用いて形成する誘導加熱用コイルに高周波電流を流すことにより発熱体等を加熱するため、誘導加熱による温度分布を所望の温度分布にするには、誘導加熱用コイルを、目的とする温度分布に応じた形態で配設する。このため、誘導加熱用コイルは、誘導加熱を行う部材の形状に合わせつつ、目的とする温度分布に応じた形態で取り付ける必要がある。しかし、誘導加熱用コイルを取り付ける部材の形状が複雑な場合、誘導加熱用コイルを取り付ける部材に、直接誘導加熱用コイルを取り付けることは困難な場合がある。
【0007】
誘導加熱用コイルを取り付ける部材に誘導加熱用コイルを所定の形状で取り付けることができる枠を設け、この枠に沿って手で取り付ける場合、容易に取り付けることができるが、部材にこのような枠を設けた場合、重量が重くなるため、好ましいものでは無かった。
【0008】
また、誘導加熱用コイルを形成するリッツ線は、絶縁被膜が施された複数の細い素線を束ねたものであるが、絶縁被膜は薄膜となっており、傷付き易いため、リッツ線を、直接、誘導加熱コイルを取り付ける部材の複雑な形状に曲げて取り付けると、リッツ線の絶縁被膜に傷を付ける場合がある。このように、リッツ線の絶縁被膜に傷を付けてしまった場合、絶縁破壊が発生して高周波電流を適切に流す際の効率が低下する場合がある。これらのため、複雑な形状の部材に誘導加熱用コイルを取り付けるのは、大変困難なものとなっていた。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、誘導加熱用コイルを所望の部位に容易に取り付けることのできる誘導加熱用シート、暖房便座及び誘導加熱用シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る誘導加熱用シートは、誘導加熱時に高周波電流を通電する誘導加熱用コイルと、パターン枠に入れた状態の前記誘導加熱用コイルを接着した後前記パターン枠から前記誘導加熱用コイルを抜き取ることにより前記誘導加熱用コイルが前記パターン枠に沿ったパターンで接着されるシートと、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明では、誘導加熱用コイルをパターン枠に入れた状態でシートに接着し、その後、パターン枠から抜き取ることにより、誘導加熱用コイルをパターン枠に沿ったパターンでシートに接着することができる。さらに、このシートを誘導加熱用コイルを取り付ける部材の所望の部位に取り付けることにより、誘導加熱用コイルをパターン枠に沿ったパターンのまま、誘導加熱用コイルを取り付ける部材の所望の部位に容易に取り付けることができる。
【0012】
また、上記誘導加熱用シートにおいて、前記誘導加熱用コイルは、束ねたリッツ線の表面が、さらに、絶縁性のある保護被膜で覆われていることが好ましい。
【0013】
この発明では、誘導加熱用コイルは、絶縁性のある保護被膜で覆われているので、誘導加熱用コイルの保護性を向上させることができる。これにより、誘導加熱用コイルをパターン枠に入れる際に誘導加熱用コイルに傷が付いたり破損したりすることを抑制することができ、誘導加熱用コイルの取り扱いの容易性を向上させることができる。この結果、誘導加熱用コイルを、より確実に所望の部位に容易に取り付けることができる。
【0014】
また、上記誘導加熱用シートにおいて、前記シートには、前記誘導加熱用コイルが接着されている側の面の反対側の面に、他の部材に対して接着可能な接着層が設けられていることが好ましい。
【0015】
この発明では、シートには接着層が設けられているので、誘導加熱用コイルが接着されているシートを、容易に他の部材に接着して取り付けることができる。この結果、誘導加熱用コイルを、より確実に所望の部位に容易に取り付けることができる。
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る暖房便座は、着座面を有する便座本体部と、前記便座本体部に取り付けられる上記誘導加熱用シートと、前記便座本体部における前記誘導加熱用シートよりも前記着座面側に配設され、且つ、前記誘導加熱用シートが有する前記誘導加熱用コイルに高周波電流を通電することにより発熱する発熱体と、を備えることを特徴とする。
【0017】
この発明では、便座本体部に上記誘導加熱用シートを取り付けるので、発熱体が配設される便座本体部に、誘導加熱用コイルを所望のパターンで容易に取り付けることができる。この結果、誘導加熱用コイルを所望の部位に容易に取り付けることができる。
【0018】
また、上記暖房便座において、さらに、前記誘導加熱用シートから見た場合における前記発熱体が位置する側の反対側に配設され、且つ、電気の抵抗値が前記発熱体の抵抗値以下の金属からなるシールド部が設けられていることが好ましい。
【0019】
この発明では、電気の抵抗値が発熱体の抵抗値以下の金属からなるシールド部が設けられているので、誘導加熱時に外部への磁界の漏出を抑制できる。この結果、使い勝手のよい暖房便座を実現することができる。また、シールド部の抵抗値を発熱体の抵抗値以下にすることで、シールド部の無駄な発熱を抑制することができる。
【0020】
また、上記暖房便座において、さらに、前記誘導加熱用シートを、前記便座本体部に取り付けられている方向に押圧する押圧手段が設けられていることが好ましい。
【0021】
この発明では、誘導加熱用シートを、便座本体部に取り付けられている方向に押圧する押圧手段が設けられているので、誘導加熱用シートを便座本体部に取り付けた状態を維持することができ、誘導加熱用コイルを便座本体部に取り付ける際の確実性を向上させることができる。この結果、誘導加熱用コイルを所望の部位に容易に、且つ、確実に取り付けることができる。
【0022】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る誘導加熱用シートの製造方法は、誘導加熱時に高周波電流を通電する誘導加熱用コイルをパターン枠に入れる手順と、前記パターン枠に入れた状態の前記誘導加熱用コイルに対してシートを接着する手順と、前記パターン枠に沿って接着された前記誘導加熱用コイルを前記パターン枠から抜き取る手順と、を含むことを特徴とする。
【0023】
この発明では、誘導加熱用コイルをパターン枠に入れた状態でシートに接着し、その後、パターン枠に沿ってシートに接着された誘導加熱用コイルを前記パターン枠から抜き取っている。これにより、誘導加熱用コイルをパターン枠に沿ってシートに接着することができる。このため、このシートを所望の部位に取り付けることにより、誘導加熱用コイルをパターン枠に沿って、所望の部位に容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る誘導加熱用シートは、誘導加熱用コイルを所望の部位に容易に取り付けることができる、という効果を奏する。また、本発明に係る暖房便座は、誘導加熱用コイルを所望の部位に容易に取り付けることができる、という効果を奏する。また、本発明に係る誘導加熱用シートの製造方法は、誘導加熱用コイルを所望の部位に容易に取り付けることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施形態に係る暖房便座を備える便器の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す便座ユニットの斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す便座ユニットを便器本体側から見た斜視図である。
【図4】図4は、便座ユニットに設けられる電気部品の説明図である。
【図5】図5は、図4のA−A断面図である。
【図6】図6は、図4のB−B断面図である。
【図7】図7は、図6のC部詳細図である。
【図8】図8は、図6のD−D矢視図である。
【図9】図9は、図8に示す誘導加熱用シートに形成される誘導加熱用コイルの配線パターンの説明図である。
【図10】図10は、誘導加熱用コイルを型枠に嵌め込む状態を示す説明図である。
【図11】図11は、図10のE−E矢視図である。
【図12】図12は、型枠に嵌め込んだ誘導加熱用コイルにシートをかぶせる状態を示す説明図である。
【図13】図13は、熱板で押さえてシートに誘導加熱用コイルを接着する際における説明図である。
【図14】図14は、誘導加熱用コイルが接着されたシートを型枠から取り外す状態を示す説明図である。
【図15】図15は、枠を設けて誘導加熱コイルを設ける場合における説明図である。
【図16】図16は、図15のF−F断面図である。
【図17】図17は、実施形態に係る暖房便座の変形例を示す要部断面図である。
【図18】図18は、図17のG−G断面図である。
【図19】図19は、実施形態に係る暖房便座の変形例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る誘導加熱用シート、暖房便座及び誘導加熱用シートの製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0027】
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る暖房便座を備える便器の斜視図である。同図に示す便器1は、便器本体5の上部に、便蓋6と、実施形態に係る暖房便座50を備える便座ユニット10とが設けられている。これらの便蓋6と暖房便座50とは、共に水平方向の回動軸を中心として便器本体5に対して回動可能に設けられており、便蓋6と暖房便座50とは、この回動軸を中心として回動することにより、共に起立させたり倒したりすることが可能に設けられている。また、これらの便蓋6と暖房便座50との回動軸は、互いに平行な向きになっており、この回動軸を中心として回動させることにより、便蓋6と暖房便座50とを共に倒した場合には、暖房便座50が便器本体5側となって便蓋6と暖房便座50とが重なった状態で、便器本体5に対して閉じるように設けられている。
【0028】
また、このうち暖房便座50は、便器本体5の上部の縁に沿った形状で形成されており、即ち、暖房便座50は、便器本体5に対して開口して形成されている。これに対し、便蓋6は、開口していない板状の形状で形成されている。このため、便蓋6と暖房便座50を共に倒した場合、便蓋6は、暖房便座50の開口部分、或いは、便器本体5を閉じる。つまり、便蓋6は、便器本体5の開閉蓋として設けられている。
【0029】
図2は、図1に示す便座ユニットの斜視図である。図3は、図1に示す便座ユニットを便器本体側から見た斜視図である。暖房便座50を備える便座ユニット10は、さらに、便座ユニット10における便器本体5への固定部分である便座支持体12を有している。また、暖房便座50は、当該暖房便座50の本体部分である便座本体部52と、この便座本体部52に結合されると共に、暖房便座50を倒した際に便器本体5側に位置し、便器本体5に対向する裏蓋58とを有している。このうち、便座本体部52は、暖房便座50を倒した場合における当該便座本体部52の上側の面が、便器1を使用する使用者が着座する際の着座面53として設けられている。
【0030】
また、便座本体部52には、ヒンジ部54が設けられており、暖房便座50と便座支持体12とは、この便座本体部52のヒンジ部54と便座支持体12とが支持軸16によって接続されることにより、この支持軸16を介して接続されている。暖房便座50は、この支持軸16を中心として便座支持体12に対して回動可能に設けられており、便座支持体12は、便器本体5への固定部分として設けられている。このため、便座支持体12を便器本体5に固定した状態で、暖房便座50を、支持軸16を中心として回動させた場合には、暖房便座50は、便器本体5に対して回動する。
【0031】
図4は、便座ユニットに設けられる電気部品の説明図である。図5は、図4のA−A断面図である。暖房便座50は、電磁誘導によって加熱を行う誘導加熱が可能に設けられている。便座ユニット10には、この誘導加熱に用いる電気部品を含め、複数の電気部品が設けられており、これらの電気部品の制御部として、便座支持体12には支持体側制御部20が配設されており、暖房便座50には便座側制御部21が配設されている。
【0032】
便座支持体12は箱状に形成され、支持体側制御部20は、便座支持体12に内設されている。支持体側制御部20は、外部の電源40に接続されており、電源40から供給された電気を、便座ユニット10が有する各電気部品に送電している。
【0033】
また、便座支持体12には、支持体側制御部20に接続されるスイッチ基板25が設けられている。このスイッチ基板25は、便座支持体12の外面に位置するスイッチボタン(図示省略)を有しており、スイッチボタンの操作状態は、スイッチ基板25から支持体側制御部20に伝達される。支持体側制御部20は、スイッチ基板25から伝達されたスイッチボタンの操作状態に基づいて、便座ユニット10が有する各電気部品の制御を行う。
【0034】
また、暖房便座50は、支持軸16を介して便座支持体12に接続されており、支持軸16を中心として便座支持体12に対して回動可能に設けられているが、便座支持体12には、この支持軸16を回動させることができる駆動モータ15が設けられている。この
駆動モータ15は、支持体側制御部20によって制御可能に設けられており、駆動モータ15を作動させて支持軸16を回動させることにより、暖房便座50を起立させたり倒したりすることが、電気制御によって可能になっている。
【0035】
また、暖房便座50は、電源40に接続される支持体側制御部20に対して電気的に直接接続されておらず、暖房便座50には、給電装置30を介して電気の供給が可能に設けられている。この給電装置30は、便座支持体12側に配設される送電部31と、暖房便座50側に配設される受電部34とにより構成される。このうち、送電部31は、一次側コイル32を外周に巻き付けた一次側コア33を有しており、支持体側制御部20に接続されている。また、受電部34は、二次側コイル35を外周に巻き付けた二次側コア36を有しており、便座側制御部21に接続されている。
【0036】
一次側コア33と二次側コア36との配置は、少なくとも暖房便座50を倒した状態の場合に互いに近接する位置に設けられている。給電装置30による支持体側制御部20から暖房便座50側への給電は、支持体側制御部20から一次側コイル32に対して適当な周波数の交流電流を供給することにより、二次側コイル35で誘導起電力が発生する。このように発生した電力が、暖房便座50に設けられる便座側制御部21に伝達されることにより、暖房便座50側に電気が供給される。
【0037】
また、暖房便座50には、本実施形態に係る誘導加熱用シート60が配設されている。誘導加熱用シート60が有する誘導加熱用コイル61は、便座側制御部21に接続されており、便座側制御部21は、誘導加熱用コイル61に高周波電流を送電している。また、暖房便座50には発熱体70が設けられており、誘導加熱用コイル61に高周波電流を送電することにより、発熱体70を加熱させることが可能になっている。即ち、暖房便座50は、誘導加熱用コイル61と発熱体70とにより、誘導加熱が可能になっている。さらに、暖房便座50には、サーミスタ(図示省略)等の温度検出手段が設けられており、温度検出手段での検出結果に基づいて、誘導加熱の制御を行う。
【0038】
図6は、図4のB−B断面図である。図7は、図6のC部詳細図である。暖房便座50には、このように誘導加熱用シート60が設けられているが、この誘導加熱用シート60について説明すると、誘導加熱用シート60は、PET(Polyethylene terephthalate)等の部材からなるシート62に、誘導加熱時に高周波電流を通電する誘導加熱用コイル61が接着されている。この誘導加熱用コイル61は、シート62における一方の面に、誘導加熱に適した配線パターンで接着されており、例えば、熱を与えることによって接着力を発生する感熱接着剤65によって、誘導加熱用コイル61はシート62に接着されている。このように、高周波電流を通電する誘導加熱用コイル61として用いられる導線としては、線径が細く、外周に数μm程度の厚さの絶縁被膜が施された素線を複数本撚り合わせたリッツ線が用いられている。
【0039】
また、シート62には、誘導加熱用コイル61が接着されている面の反対の面に、他の部材に対して接着可能な接着層63が設けられている。誘導加熱用シート60は、この接着層63が便座本体部52に接着されることにより、暖房便座50に設けられている。このように、誘導加熱用シート60が便座本体部52に接着される位置は、便座本体部52における着座面53の反対の面になっている。
【0040】
詳しくは、便座本体部52は、樹脂材料からなると共に、便器本体5の上部の縁に沿って形成されている。さらに、便座本体部52は、便器本体5の上部の縁に沿っている部分の各断面形状が、支持軸16を中心として暖房便座50を倒した場合における上側に凸となる方向に、概ね湾曲している。
【0041】
誘導加熱用シート60は、このように湾曲して形成されている便座本体部52の凹側の面、或いは、暖房便座50を倒した場合における便座本体部52の下側の面に、接着層63で接着することにより、取り付けられている。
【0042】
また、便座本体部52には、暖房便座50を倒した場合における便器本体5側の位置である便座本体部52の下方側に、裏蓋58(図3参照)が結合される。即ち、裏蓋58は、湾曲して形成される便座本体部52において、凹んでいる側の部分を閉じる蓋として設けられている。裏蓋58は、このように便座本体部52と結合することにより便座本体部52を閉じることができるように設けられており、便座本体部52は、裏蓋58が結合することにより、内側が閉塞した状態になる。このため、誘導加熱用シート60は、暖房便座50に内設された状態になる。
【0043】
また、湾曲して形成されている便座本体部52の凸側の面であり、暖房便座50を倒した場合における便座本体部52の上側の面には、鉄やアルミニウム等の金属材料によって形成される発熱体70が配設されている。この発熱体70は、便座本体部52の上面のほぼ全域を覆って配設されている。
【0044】
また、便座本体部52の上側の面は、暖房便座50の着座面53として設けられているため、発熱体70は着座面53に位置し、暖房便座50は、発熱体70の表面が着座面53となって形成されている。このため、誘導加熱用コイル61に高周波電流を通電することにより発熱する発熱体70は、便座本体部52における誘導加熱用シート60よりも着座面53側に配設されている。
【0045】
なお、着座面53は、発熱体70の表面を着座面53として用いるのではなく、発熱体70の表面の一部、または全部を覆う薄い化粧板(図示省略)を設け、この化粧板の表面を着座面53として使用してもよい。
【0046】
また、このように上側の面に発熱体70が配設される便座本体部52の下側の面には、誘導加熱用シート60が取り付けられている。便座本体部52において、このように発熱体70や誘導加熱用シート60が取り付けられている部分は、湾曲した形状で形成されている。このため、発熱体70と誘導加熱用シート60とは、便座本体部52を介して近接して配設されている。
【0047】
図8は、図6のD−D矢視図である。図9は、図8に示す誘導加熱用シートに形成される誘導加熱用コイルの配線パターンの説明図である。これらのように、暖房便座50に内設されている誘導加熱用シート60は、2つに分割されて設けられている。詳しくは、誘導加熱用シート60は、支持軸16を中心とする暖房便座50の回動方向に直交する方向を中心として、線対称になるように2分割されている。即ち、誘導加熱用シート60は、2つのシート62が対称となる形状で形成されており、このそれぞれのシート62に、誘導加熱用コイル61が対称となる配線パターンで接着されている。このように、2つに分割された誘導加熱用シート60は、誘導加熱用コイル61の配線パターンが、シート62と共にほぼ線対称になって形成されている。
【0048】
この実施形態に係る誘導加熱用シート60、及び暖房便座50は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。本実施形態に係る暖房便座50を備える便器1では、スイッチ基板25に設けられるスイッチボタンの状態と、便蓋6が開いているか否か等の便器1の状態に応じて、支持体側制御部20で、電源40から供給された電気を各電気部品に送電したり、各電気部品の作動を制御したりする。また、暖房便座50に電気を供給する際には、給電装置30を介して、便座支持体12側から暖房便座50に対して給電する。
【0049】
給電装置30を介して暖房便座50に給電された電気は、便座側制御部21に送電される。便座側制御部21では、この電気を、所定の周波数、例えば、20kHz〜100kHz程度の周波数の高周波電流にして、誘導加熱用シート60が有する誘導加熱用コイル61に送電する。この高周波電流が誘導加熱用コイル61に通電されると、誘導加熱用コイル61の周囲の磁束が高周波に応じて変化する。
【0050】
高周波電流の通電によって誘導加熱用コイル61の周囲の磁束が変化した場合、発熱体70がこの磁束の変化の影響を受け、発熱体70内に渦電流が流れる。発熱体70内を電気が流れた場合、発熱体70は、当該発熱体70を構成する金属の電気抵抗によって発熱し、暖房便座50の着座面53の温度は上昇する。即ち、暖房便座50は、誘導加熱用コイル61と発熱体70との誘導加熱によって温度が上昇する。
【0051】
また、このように誘導加熱によって暖房便座50の温度を上昇させる場合には、サーミスタ(図示省略)等の温度検出手段によって暖房便座50の温度を検出しながら、温度調節を行う。つまり、温度検出手段での検出結果が、予め設定された温度や、スイッチ基板25のスイッチボタンによって設定された温度よりも低い状態を示している場合には、誘導加熱の出力を大きくする、または、誘導加熱の状態を維持する。これに対し、温度検出手段での検出結果が、予め設定された温度や、スイッチ基板25のスイッチボタンによって設定された温度よりも高い状態を示している場合には、誘導加熱の出力を小さくする、または、誘導加熱を停止する。これにより、誘導加熱によって上昇させる着座面53の温度を、所望の温度にする。
【0052】
次に、本実施形態に係る誘導加熱用シート60の製造方法について説明する。図10は、誘導加熱用コイルを型枠に嵌め込む状態を示す説明図、図11は、図10のE−E矢視図、図12は、型枠に嵌め込んだ誘導加熱用コイルにシートをかぶせる状態を示す説明図、図13は、熱板で押さえてシートに誘導加熱用コイルを接着する際における説明図、図14は、誘導加熱用コイルが接着されたシートを型枠から取り外す状態を示す説明図である。誘導加熱用シート60の製造時に誘導加熱用コイル61をシート62に接着する場合には、まず、誘導加熱用コイル61の配線パターンの形状で形成された溝状のパターン枠である型溝81が形成された型枠80に、誘導加熱用コイル61を嵌め込む(図10)。この型枠80に形成された型溝81は、誘導加熱用コイル61の線径よりも若干溝幅が広くなっており、誘導加熱用シート60の製造後における誘導加熱用コイル61の配線パターンの形状、即ち、所望の配線パターンの形状で形成されている。誘導加熱用コイル61は、このように形成される型溝81に入れて型溝81に嵌め込むが、その際に、誘導加熱用コイル61には、周囲に感熱接着剤65を塗布してから嵌め込む。
【0053】
また、このように誘導加熱用コイル61が嵌め込まれる型溝81には、溝の長さ方向における所定の間隔で、対向する溝壁のうちの一方の溝壁に、他方の溝壁の方向に突出した凸部82が形成されている(図11)。この凸部82は、他方の溝壁の方向に突出した形状で型溝81の溝深さの方向に沿って形成されており、型溝81の開口部側の端部は、面取りが施されている。このため、誘導加熱用コイル61を型溝81に嵌め込んだ際には、型溝81は対向する溝壁によって誘導加熱用コイル61を支持するのではなく、凸部82が形成されている溝壁側は、凸部82が誘導加熱用コイル61に接触して誘導加熱用コイル61を支持する。これにより、誘導加熱用コイル61と型溝81との接触面積が減少するため、誘導加熱用コイル61を型溝81に嵌め込む際における誘導加熱用コイル61の嵌め込みや、誘導加熱用コイル61を型溝81から取り外す際における誘導加熱用コイル61の取り外しを行い易くなる。
【0054】
このように形成される型枠80の型溝81に誘導加熱用コイル61を嵌め込んだら、次に、型溝81に嵌め込まれた状態の誘導加熱用コイル61に対してシート62をかぶせる(図12)。このように、誘導加熱用コイル61にシート62をかぶせる際には、シート62の一方の面に感熱接着剤65を塗布し、この感熱接着剤65を塗布した側の面が、型枠80側、即ち誘導加熱用コイル61側に面する向きで、型溝81に嵌め込まれた状態の誘導加熱用コイル61に対してかぶせる。
【0055】
型溝81に嵌め込まれた状態の誘導加熱用コイル61に対してシート62をかぶせたら、次に、シート62を熱板85で押さえる(図13)。これにより、熱板85の熱がシート62と誘導加熱用コイル61とに伝わり、共に温度が上昇するが、シート62における誘導加熱用コイル61側の面と、誘導加熱用コイル61の周囲とには、感熱接着剤65が塗布されている。つまり、シート62と誘導加熱用コイル61との接触部分、及びその周囲には、感熱接着剤65が位置している。この感熱接着剤65は、温度を上昇させることにより接着力を発生するので、熱板85の熱が感熱接着剤65に伝達された場合、これらの部分に位置している感熱接着剤65も接着力を発生する。これにより、誘導加熱用コイル61は、感熱接着剤65によってシート62に接着される。また、この場合、誘導加熱用コイル61は、誘導加熱用コイル61の所望の配線パターンの形状で形成された型溝81に沿って配設された状態になっているので、シート62に接着された誘導加熱用コイル61は、所望の配線パターンで接着される。
【0056】
誘導加熱用コイル61をシート62に接着したら、次に、誘導加熱用コイル61が接着されたシート62を型枠80から取り外す(図14)。つまり、誘導加熱用コイル61は、感熱接着剤65によってシート62に接着された状態になっているので、シート62を型枠80から取り外すことにより、型溝81に嵌め込まれた誘導加熱用コイル61も、シート62を型枠80から取り外す際に型溝81から抜き取られる。このように型溝81から抜き取られた誘導加熱用コイル61は、型溝81に沿った配線パターンで接着されることにより所望の配線パターンとなってシート62に接着されているため、シート62を型枠80から取り外すことにより、誘導加熱用シート60は誘導加熱用コイル61が所望の配線パターンとなって製造される。
【0057】
なお、シート62に設けられ、誘導加熱用シート60を便座本体部52に取り付ける際に用いる接着層63は、シート62を型枠80から取り外す前に、シート62における誘導加熱用コイル61が接着されている側の面の反対側の面に設けるのが好ましい。例えば、シート62を型枠80から取り外す前に、シート62における接着層63を設ける面に、両面粘着シート(図示省略)を貼り付けたり、接着剤(図示省略)を塗布したり、或いは、耐熱性のある両面粘着シートを誘導加熱用コイル61を接着する前に、予めシート62に貼付しておいたりすることにより、容易に接着層63を設けることができる。また、感熱接着剤65は、誘導加熱用コイル61にのみ、或いは、シート62にのみ設けておくこともできる。
【0058】
以上の誘導加熱用シート60は、誘導加熱用コイル61を、型枠80に形成される型溝81に入れた状態で誘導加熱用コイル61をシート62に接着し、その後、誘導加熱用コイル61を型溝81から抜き取ることにより、誘導加熱用コイル61を型溝81に沿った配線パターンでシート62に接着することができる。さらに、このシート62を所望の部位に取り付けることにより、誘導加熱用コイル61を型溝81に沿った配線パターンのまま、所望の部位に取り付けることができる。この結果、誘導加熱用コイル61を所望の部位に容易に取り付けることができる。
【0059】
また、誘導加熱用シート60が有するシート62には、誘導加熱用コイル61が接着されている面の反対面に、他の部材に対して接着可能な接着層63が設けられている。これにより、誘導加熱用コイル61が接着されているシート62を、この接着層63の接着力を用いて、容易に他の部材に接着して取り付けることができる。この結果、誘導加熱用コイル61を、より確実に所望の部位に容易に取り付けることができる。
【0060】
また、以上の暖房便座50は、便座本体部52に、誘導加熱用コイル61が接着された誘導加熱用シート60を取り付けるので、発熱体70が配設される便座本体部52に、誘導加熱用コイル61を所望のパターンで容易に取り付けることができる。この結果、誘導加熱用コイル61を所望の部位に容易に取り付けることができる。
【0061】
特に、暖房便座50は、誘導加熱式の調理機器とは異なり、複雑な形状で形成されており、そのため暖房便座50の場所ごとに、必要な誘導加熱用コイル61の本数や間隔が異なっている。このため、誘導加熱用コイル61が接着された誘導加熱用シート60を取り付けることにより、配線パターンが複雑になる暖房便座50用の誘導加熱用コイル61を、容易に便座本体部52の所望の部位に取り付けることができる。
【0062】
また、誘導加熱用コイル61として用いられるリッツ線は、素線の外周に施されている絶縁被膜が数μm程度の厚さとなっているため、傷が付いた際に、絶縁破壊が発生し易くなっている。このため、暖房便座50に複雑な配線パターンで設ける誘導加熱用コイル61を直接配設した場合には、誘導加熱用コイル61として用いられるリッツ線に傷が付き、短絡や電気抵抗の増加等の不具合が発生し易くなる。このため、所望の配線パターンで誘導加熱用コイル61をシート62に接着した誘導加熱用シート60を便座本体部52に取り付けることにより、リッツ線を直接配設した場合の不具合を抑制することができる。この結果、暖房便座50の誘導加熱の性能を、より確実に確保することができる。
【0063】
また、誘導加熱用コイル61が接着された誘導加熱用シート60を便座本体部52に取り付けることによって誘導加熱用コイル61を配設することにより、暖房便座50の軽量化を図ることができる。図15は、枠を設けて誘導加熱コイルを設ける場合における説明図である。図16は、図15のF−F断面図である。つまり、誘導加熱用コイル61を所定の部材に取り付ける際に、この部材に図15、図16に示すような枠91を設け、この枠91に沿って誘導加熱用コイル90を配設した場合、この枠91は、誘導加熱用コイル90を所望の配線パターンで配設した後は不要なものとなる。このため、枠91を設けて誘導加熱用コイル90を配設した場合には、この枠91の分、重量が重くなる。これに対し、本実施形態に係る暖房便座50では、誘導加熱用コイル61を所望の配線パターンでシート62に接着する際に用いる型枠80は、誘導加熱用コイル61をシート62に接着した後は誘導加熱用コイル61から外し、暖房便座50自体には取り付けられないため、重量の増加を抑制できる。この結果、重量の増加を招くことなく、誘導加熱用コイル61を所望の配線パターンで配設することができる。
【0064】
図17は、実施形態に係る暖房便座の変形例を示す要部断面図である。図18は、図17のG−G断面図である。なお、上述した実施形態に係る暖房便座50では、裏蓋58側に設ける部材については説明していないが、裏蓋58には、磁界を遮蔽するシールド部であるシールド75が設けられるのが好ましい。このシールド75は、電気の抵抗値が発熱体70の抵抗値以下の金属材料からなる薄膜によって形成され、裏蓋58における便座本体部52側の面、即ち、暖房便座50の内側における裏蓋58に取り付けられるが好ましい。これにより、シールド75は、誘導加熱用シート60から見た場合における、発熱体70が位置する側の反対側に配設される。このようなシールド75としては、例えば、20μm程度のアルミニウムのシートを裏蓋58に貼り付けることにより設ける。裏蓋58に、このような金属材料からなるシールド75を設けることにより、誘導加熱時に外部への磁界の漏出を抑制できる。
【0065】
つまり、誘導加熱時に誘導加熱用コイル61に高周波電流を通電した場合、誘導加熱用コイル61の周囲に発生した磁界のうち、発熱体70が位置する側の磁界は発熱体70によって遮蔽されるため、外部に漏れることはない。これに対し、誘導加熱用シート60から見た場合における発熱体70が位置する側の反対側、即ち、裏蓋58側に、このような磁界を遮蔽するものが存在しない場合には、この部分から磁界が漏出する場合があるが、裏蓋58にシールド75を設けることにより、裏蓋58側の磁界も、シールド75によって遮蔽することができる。これにより、誘導加熱時に、誘導加熱用コイル61の周囲に発生した磁界が暖房便座50の外部に漏出することを抑制することができる。この結果、外部に磁界が漏れず、使い勝手のよい暖房便座50を実現することができる。
【0066】
なお、このように、裏蓋58にシールド75を設ける場合において、シールド75を複数の薄膜によって設ける場合、複数の板の接続部76は、ハンダ付け等で切れ目なく接続するのが好ましい。このように、接続部76を切れ目なく接続することにより、電気的に切れた部分がなく、シールド75を一体に形成することができるので、より確実に磁界をシールド75で遮蔽し、磁界の漏出を抑制することができる。
【0067】
また、このような磁界の漏出を抑制するシールド75を設ける場合には、金属薄膜以外によって設けてもよく、例えば、裏蓋58に、低抵抗の導電メッキを施してもよい。このように、シールド75を、導電メッキを施すことにより設けた場合には、暖房便座50の組み立て時における組付け工数を削減することができる。これにより、製造コストの上昇を抑えつつ、磁界の漏出を抑制することができる。
【0068】
図19は、実施形態に係る暖房便座の変形例を示す要部断面図である。この例では、誘導加熱用シート60が有する誘導加熱用コイル61は、その表面を絶縁性のある保護被膜68っている。誘導加熱用コイル61として用いられるリッツ線は、素線の外周に施されている絶縁被膜が数μm程度の厚さとなっているため、傷が付いた際に、絶縁破壊が発生し易くなっているが、リッツ線の束である誘導加熱用コイル61の表面を絶縁性のある保護被膜68で覆うことにより、誘導加熱用コイル61の保護性を向上させることができる。これにより、誘導加熱用コイル61を型枠80の型溝81に入れる際に誘導加熱用コイル61に傷が付いたり破損したりすることを抑制することができ、誘導加熱用コイル61の取り扱いの容易性を向上させることができる。この結果、誘導加熱用コイル61を、より確実に所望の部位に容易に取り付けることができる。
【0069】
また、暖房便座50は、起立させたり倒したりするため、その際における振動が生じ易くなっており、また、便器本体5の上に配設されるため、高湿度である場合が多いなど、使用環境が苛酷なものとなっている。このため、誘導加熱用コイル61の表面を保護被膜68で覆って保護性を向上させることにより、このような過酷な環境においても、誘導加熱用コイル61を用いた誘導加熱を、より確実に行うことができる。この結果、より信頼性の向上を図ることができる。
【0070】
また、裏蓋58における誘導加熱用シート60が配設されている側の面には、ウレタンフォーム等の弾性部材により形成され、誘導加熱用シート60に当接することにより、誘導加熱用シート60を便座本体部52に取り付けられている方向に押圧する押圧手段(図示省略)が設けられているのが好ましい。このような押圧手段を設けることにより、便座本体部52に取り付けられている誘導加熱用シート60の取り付け状態を維持することができ、誘導加熱用コイル61を便座本体部52に取り付ける際の確実性を向上させることができる。この結果、誘導加熱用コイル61を所望の部位に容易に、且つ、確実に取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明に係る誘導加熱用シート、暖房便座及び誘導加熱用シートの製造方法は、誘導加熱を行う誘導加熱用コイルにリッツ線が用いられる場合に有用であり、特に、誘導加熱用コイルを取り付ける部分の形状が複雑な形状である場合や、誘導加熱用コイルの配線パターンが複雑な場合に適している。
【符号の説明】
【0072】
1 便器
5 便器本体
6 便蓋
10 便座ユニット
12 便座支持体
20 支持体側制御部
21 便座側制御部
30 給電装置
40 電源
50 暖房便座
52 便座本体部
53 着座面
58 裏蓋
60 誘導加熱用シート
61 誘導加熱用コイル
62 シート
63 接着層
65 感熱接着剤
68 保護被膜
70 発熱体
75 シールド
80 型枠
81 型溝
85 熱板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱時に高周波電流を通電する誘導加熱用コイルと、
パターン枠に入れた状態の前記誘導加熱用コイルを接着した後、前記パターン枠から前記誘導加熱用コイルを抜き取ることにより前記誘導加熱用コイルが前記パターン枠に沿ったパターンで接着されるシートと、
を備えることを特徴とする誘導加熱用シート。
【請求項2】
前記誘導加熱用コイルは、表面が絶縁性のある保護被膜で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱用シート。
【請求項3】
前記シートには、前記誘導加熱用コイルが接着されている側の面の反対側の面に、他の部材に対して接着可能な接着層が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の誘導加熱用シート。
【請求項4】
着座面を有する便座本体部と、
前記便座本体部に取り付けられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱用シートと、
前記便座本体部における前記誘導加熱用シートよりも前記着座面側に配設され、且つ、前記誘導加熱用シートが有する前記誘導加熱用コイルに高周波電流を通電することにより発熱する発熱体と、
を備えることを特徴とする暖房便座。
【請求項5】
さらに、前記誘導加熱用シートから見た場合における前記発熱体が位置する側の反対側に配設され、且つ、電気の抵抗値が前記発熱体の抵抗値以下の金属からなるシールド部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の暖房便座。
【請求項6】
さらに、前記誘導加熱用シートを、前記便座本体部に取り付けられている方向に押圧する押圧手段が設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載の暖房便座。
【請求項7】
誘導加熱時に高周波電流を通電する誘導加熱用コイルをパターン枠に入れる手順と、
前記パターン枠に入れた状態の前記誘導加熱用コイルに対してシートを接着する手順と、
前記パターン枠に沿ったパターンで前記シートに接着された前記誘導加熱用コイルを前記パターン枠から抜き取る手順と、
を含むことを特徴とする誘導加熱用シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−243417(P2011−243417A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114540(P2010−114540)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】