説明

誘導加熱装置によって食品を調製するための方法及び誘導加熱装置

【課題】誘導加熱装置により調理容器内に含まれた液体中で調理される食品を調製するための方法を提供する。
【解決手段】誘導加熱装置は、誘導加熱コイルを持つ共振回路を含み、−共振回路の自然共鳴振動の継続期間Tpを連続的に決定すること、及び、加熱段階I時に:−調理容器に、加熱電力設定点SWを持つ加熱電力を供給するために共振回路に高周波方形電圧URを付与すること、−この期間内のパラメーター値の変化を決定すること、−液体の沸点を決定するためにパラメーター値の決定された変化を評価すること、及び−沸点が決定されたときに加熱段階を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱装置によって、調理容器内に含まれた液体中で調理される食品を調製するための方法、及びこの方法を実行するための誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱装置により、強磁性材料から作られた底部を持ち、かつ加熱される調理容器内に渦電流を誘導する交番磁界は、誘導加熱コイルにより作られ、磁化の逆転による損失を起こし、その結果として調理容器は加熱される。
【0003】
誘導加熱コイルは、誘導加熱コイル及び一つ以上のコンデンサーを含む共振回路の一部である。誘導加熱コイルは通常、フェライト芯を組み合わせて持つ平坦で螺旋形に巻かれたコイルとして設計され、例えば誘導ホブのガラスセラミック表面の下に配置される。そうすることで、加熱される調理機器と共に誘導加熱コイルは、共振回路の誘導部分及び抵抗部分を形成する。
【0004】
共振回路を駆動または励起するために、例えば50Hzまたは60Hzの主電源(mains)周波数を持つ低周波主電源交流電圧がまず整流され、次いで半導体スイッチにより高周波数の励起または駆動信号に変換される。励起信号または駆動電圧は通常、20KHzから50KHzの範囲の周波数を持つ方形電圧である。励起信号を発生する回路はまた、(周波数)変換器と呼ばれる。
【0005】
設定加熱電力設定点に依存して調理容器への加熱電力供給を調整するために様々な方法が開示されている。
【0006】
第一の方法では、励起信号または方形電圧の周波数は、放射されるかもしくは供給される加熱電力にまたは必要な電力伝達に依存して変動される。加熱電力放射を調整するためのこの方法は、最大加熱電力放射が共振回路がその共振周波数で励起されるときに起こるということを利用する。励起信号の周波数と共振回路の共振周波数との間の差が大きいほど、放射される加熱電力は小さい。
【0007】
しかし、もし誘導加熱装置が複数の共振回路を持つなら、例えば誘導加熱装置が異なる誘導加熱調理領域を持つ誘導ホブを形成し、かつ異なる加熱電力が共振回路のために設定されるとき、うるさいノイズに導きうるうなり周波数が、励起信号の異なる周波数の重なりのために発生されうる。
【0008】
この種のうなり周波数によるうるさいノイズを防ぐ、加熱電力を調整するための方法は、一定の励起周波数での励起信号のパルス幅調節であり、それにより加熱電力の有効値が励起信号のパルス幅を変えることにより調整される。しかし、一定の励起周波数でのパルス幅を変えることによるこの種の有効値の制御により、高いスイッチオン及びスイッチオフ電流が半導体スイッチに発生し、その結果として広帯域幅及びエネルギーに富んだ干渉スペクトルが作られる。
【0009】
沸点を決定するために及び/または自動調理機能を可能にするために、例えば特別な時間依存加熱プロファイルを発生することができるために、この方法で誘導加熱される調理容器の底部の温度を決定することがしばしば望ましい。
【0010】
DE102009047185A1は、調理容器の底部の温度依存性強磁性特性が高分解能で測定されかつ調理容器の底部の温度を決定するために評価される方法及び誘導加熱装置を開示する。
【0011】
水中に浮く食品(例えば米)を沸騰までもたらすときの調理容器の底部の温度の特性は、純水を沸騰までもたらすときとは異なる挙動をする。鍋の底部は完全に水で覆われておらず、かなりの範囲まで食品で覆われているため、水中の対流は妨げられる。これは、沸点の検出をより一層困難にする。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、誘導加熱装置によって、調理容器内に含まれた液体中で調理される食品を調製するための方法、及びこの方法を実行するための誘導加熱装置を提供する目的に基づいており、それらは、特にDE102009047185A1に開示された測定原理に基づいて、特に信頼性ある沸点の決定によって、信頼性のある温度制御されたまたは温度調節された調理が実行されることを可能にする。
【0013】
本発明は、請求項1の特徴を持つ方法、及び請求項6の特徴を持つ誘導加熱装置によりこの目的を達成する。
【0014】
この方法は、誘導加熱コイルを持つ共振回路を含む誘導加熱装置により、液体(例えば水、煮汁など)を含む調理容器内で調理される食品(例えば米)を調製するために使用される。この方法は次の工程:共振回路のパラメーター値、特に共振回路の自然共鳴周波数または自然共鳴周波数と関連する期間を連続的または周期的に決定することを含み、このパラメーター値は、調理容器の、特に調理容器の底部の温度に依存する。加熱段階時に高周波方形電圧が、調理容器に対して、特に調理容器の底部に対して加熱電力設定点を持つ加熱電力を供給するために共振回路に供給される。加熱電力設定点は周期的に変えられる。加熱電力設定点変更の期間内に、加熱電力設定点はその期間の第一間隔中、第一の値(例えば約48秒間)に設定される。加熱電力設定点変更の期間の残りの間隔中は、すなわち期間マイナス第一間隔(例えば12秒間)中は、加熱電力設定点は第二の、より小さな値に設定される。加熱電力設定点変更の期間は例えば60秒の期間を持つことができ、そこでは期間は一定であるかまたは変動可能であることができる。パラメーター値の変化は、この期間内に、特により小さな設定点を持つ期間内の残りの間隔中に決定され、パラメーター値の決定された変化は、液体の沸点を決定するために評価され、加熱段階は、沸点が決定されたときに終了される。
【0015】
一実施態様では、パラメーター値の決定された変化を評価するとき、パラメーター値の変化が特定された量より小さいときに沸点が決定される。
【0016】
一実施態様では、次の工程を持つ煮立てる段階は、加熱段階の完了により実行される:特に最大加熱電力設定点の5〜50%、好ましくは10〜20%に相当する加熱電力設定点を持つ共振回路へ高周波方形電圧を付与すること、監視期間内にパラメーター値が特定の量より多く変化するかどうかを監視すること、及びパラメーター値が監視期間内にパラメーター値が特定の量より多く変化するときに煮立てる段階を終了すること。
【0017】
一実施態様では、沸点を決定した後、特に沸点を決定した直後に、瞬間パラメーター値が記憶され、煮立てる段階の完了により次の工程を持つ保温段階が実行される:例えば特定のオフセット値の引き算によって、記憶されたパラメーター値に依存して決定されるパラメーター設定点へのパラメーター値の制御。
【0018】
一実施態様では、沸点を決定した後、特に沸点を決定した直後に、瞬間パラメーター値が記憶され、煮立てる段階が加熱段階の完了により実行される。煮立てる段階は次の工程を持つ:記憶されたパラメーター値に依存して決定されるパラメーター設定点へのパラメーター値の制御、制御目的のために消費される加熱電力の監視、及び消費される加熱電力が特定の量より小さいときに煮立てる段階の終了。この煮立てる段階の後、保温段階が行なわれることができる。
【0019】
誘導加熱装置は、誘導加熱コイルを持つ共振回路、及び上述の方法を実行するために設計された制御装置を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明は、本発明の好適実施態様を示す図面に関して以下に説明される。
【0021】
【図1】図1は、誘導加熱コイルを持つ共振回路及び制御装置を持つ誘導加熱装置を概略的に示す。
【0022】
【図2】図2は、図1に示された誘導加熱装置の加熱電力設定点の時間及び共振回路の自然周波数共鳴振動の期間に関する特徴を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、誘導加熱コイル1及びコンデンサー2及び3を持つ共振回路4、及び制御装置8により制御され、例えば50Hzの主電源周波数を持つ低周波主電源交流電圧UNに通常整流し、続いて半導体スイッチ(図示せず)により、それを20kHzから50kHzの範囲の周波数を持つ方形電圧URに変換する電力段7を持つ誘導加熱装置9を概略的に示し、そこでは方形電圧URは、加熱電力を調理容器5の強磁性底部に供給するために共振回路4またはその誘導加熱コイル1に付与され、さらに調理容器は水6を含み、そこに米10が2:1の比で置かれる。
【0024】
コンデンサー2及び3は通常、中間回路電圧の極UZK+とUZK−の間に直列にループ化され、そこではコンデンサー2及び3の接続ノードは誘導加熱コイル1の端子に連結されている。
【0025】
誘導加熱装置9は測定手段を持ち、それは、詳細には示されておらず、共振回路4の自然周波数共鳴振動の期間Tp(図2参照)の形の共振回路4のパラメーター値の連続的または周期的な決定を可能にし、そこでは期間Tpは、調理容器の底部の温度に依存し、すなわち実効インダクタンスが調理容器の底部の増加する温度と共に増加するとき、増加する温度と共に増加し、従って共振周波数は減少し、従って期間は増加する。期間Tpは、例えばマイクロ制御器のタイマーにより決定されることができる。
【0026】
測定手段の設計及び基本的な機能、測定方法、及び加熱電力調整に関して、反復を避けるために、DE102009047185A1を参照されたい。それは、かかる参照によってここで本明細書の内容とする。
【0027】
図2は、図1に示された誘導加熱装置9の定格加熱電力の0.5%における加熱電力設定点SWの時間及び共振回路4の自然周波数共鳴振動の期間Tpに関する特性を示す。
【0028】
制御装置8は、共振回路4の自然周波数共鳴振動の期間Tpを連続的または周期的に決定し、そこでは加熱電力供給は、この目的のために簡単に中断され、共振回路4の自然周波数共鳴操作に切り換えられる。これらの段階は、低い時間分解能のため図2に示されていない。
【0029】
加熱段階または沸騰をもたらす段階を形成する時間間隔Iでは、調理容器の底部に加熱電力を供給するために高周波方形電圧URが共振回路4に付与され、そこでは関連する加熱電力設定点SWは周期的に変わる。例えば定格加熱電力の100%に相当する第一の値は、特定の期間P内の第一間隔(例えば48秒間)に設定され、例えば定格加熱電力の10%に相当する第二のより小さい値が残りの間隔(例えば12秒間)に設定される。
【0030】
期間P内に、制御装置8は、期間Tp内、特により小さな設定点が設定されている間の変化を決定し、かつ期間Tp内の変化が特定の量より小さいときに沸点を決定する。
【0031】
これは、沸騰をもたらす時間間隔Iの完了で煮立てる段階IIが実行される沸騰をもたらす時間間隔Iの終わりで当てはまる。煮立てる段階II中、加熱電力設定点は、最大加熱電力設定点の約10%から20%である。システムは、期間Tpが監視期間、例えば10秒間に特定の量より多く変わるかどうかを監視し、それは、例えば水6が米10により吸収されたときまたは蒸発したときに比較的迅速に上昇する底部の温度により起こりうる。
【0032】
煮立てる段階IIは次いで終了され、その後、保温段階IIIが行なわれ、その段階中、期間Tpは、この値から特定のオフセット値を差し引くことによって沸点を決定した直後に設定される期間Tpに依存して決定される設定点に制御される。
【0033】
述べられた煮立てる段階II及び保温段階IIIのそれぞれの代わりに、煮立てたり、保温するために、次のように進めることもまた可能である。沸点を決定した直後、期間Tpは設定点として記憶される。期間Tpは次いでこの設定点に制御される。制御目的のために消費される加熱電力は監視され、もし消費される加熱電力が特定の量より小さいなら、煮立てる段階は終了される。煮立てる段階の後、保温段階を行なうことができる。
【0034】
米10は、いわゆる膨潤法を使用して調製されることができる。この目的のために、一定量の米10が一定量の水6により、例えば1:2の比で、沸騰させられ、水6が完全に米10により吸収されるかまたは蒸発されてしまうまで調理される。そうすることで、煮立てる電力は、非常に少ない水が蒸発するように調整される。この工程は、上述の調理システム9により自動化することが非常に容易である。
【0035】
この方法は、加熱、調理、及び調理の完了の検出の3段階に分割されることができる。3段階を特徴とする調理プログラムは、沸点検出により沸騰をもたらす機能、温度監視により煮立てる機能、及び調理の完了を検出する機能を必要とする。
【0036】
水中に浮く米、または他の食品を沸騰にもたらすときの底部の温度の特性は、純水を沸騰にもたらすのとは異なる。鍋の底部は完全に水で覆われておらず、かなりの範囲まで食品で覆われているため、水の対流は妨げられる。
【0037】
沸点を検出するために、加熱電力が周期的に、例えば1分毎に、例えば12秒間減少され、温度特性または代表的期間Tpの特性が鍋の底部で測定される。電力変動による温度変化の大きさは、沸点に達した後に一定値をとるために水温の増加と共に減少する。この特性は、沸騰状態を検出するために使用されることができる。
【0038】
沸騰状態が検出された後、電力は煮立てる電力に、例えば定格電力の10%から20%に減らされ、温度は連続的に監視される。水が米により吸収されるかまたは蒸発されたとき、底部の温度は比較的迅速に増加する。この増加は検出され、完了信号が使用者に与えられることができる。
【0039】
同時に、沸点以下の制御された温度で保温するモードに切り替えることも可能である。沸点は、期間Tpの形の参照温度またはその均等温度として以前の調理工程から知られているので、希望の温度は、負のオフセット値の助けにより、好適な保温温度に、例えば80〜90℃に設定され、かつこの値に制御されることができる。
【0040】
期間Tpの形の共振回路のパラメーター値の代わりに、他の/追加のパラメーター値、例えば共振回路電圧の大きさ、誘導加熱コイルを横切る電圧、共振回路電流の大きさ、及び/または共振回路電圧と共振回路電流の間の位相シフトが使用されることができることは理解される。
【0041】
本発明はまた、完全なブリッジ制御を持つ並列共振回路または直列共振回路において使用されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱装置(9)によって、調理容器(5)内に含まれた液体(6)中で調理される食品(10)を調製するための方法であって、誘導加熱装置が、誘導加熱コイル(1)を持つ共振回路(4)を含み、該方法が以下の工程を含むことを特徴とする方法:
− 共振回路のパラメーター値、特に共振回路の自然共鳴振動の継続期間(Tp)を連続的に決定すること、但し、パラメーター値は、調理容器の温度、特に調理容器の底部の温度に依存する、及び
− 加熱段階(I)時に:
− 調理容器に、特に調理容器の底部に、加熱電力設定点(SW)を持つ加熱電力を供給するために共振回路に高周波方形電圧(UR)を付与すること、但し、加熱電力設定点は周期的に変えられ、さらに期間(P)内で加熱電力設定点は第一間隔時に第一の値に設定され、残りの間隔時に第二のより小さい値に設定される、
− この期間内のパラメーター値の変化を決定すること、
− 液体の沸点を決定するためにパラメーター値の決定された変化を評価すること、及び
− 沸点が決定されたときに加熱段階を終了すること。
【請求項2】
パラメーター値の決定された変化を評価するとき、パラメーター値の変化が特定された量より小さいときに沸点が決定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
次の工程を持つ煮立てる段階(II)が加熱段階の完了により実行されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法:
− 特に最大加熱電力設定点の5%から50%に相当する加熱電力設定点を持つ共振回路へ高周波方形電圧を付与すること、
− パラメーター値が監視期間内に特定された量より多く変化しているかどうかを監視すること、及び
− パラメーター値が監視期間内に特定された量より多く変化しているときに煮立てる段階を終了すること。
【請求項4】
− 沸点を決定した後に、瞬間パラメーター値が記憶されること、及び
− 以下の工程を持つ保温段階(III)が煮立てる段階の完了により実行されること:
− 記憶されたパラメーター値に依存して決定されるパラメーター設定点へパラメーター値を制御すること、
を特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
− 沸点を決定した後に、瞬間パラメーター値が記憶されること、及び
− 以下の工程を持つ煮立てる段階が加熱段階の完了により実行されること、
− 記憶されたパラメーター値に依存して決定されるパラメーター設定点へパラメーター値を制御すること、
− 制御目的のために消費される加熱電力を監視すること、及び
− 消費される加熱電力が特定された量より小さいときに煮立てる段階を終了すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
− 誘導加熱コイル(1)を持つ共振回路(4)、及び
− 請求項1から5のいずれか一つに記載の方法を実行するために設計された制御装置(8)
を持つことを特徴とする誘導加熱装置(9)。

【図1】
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【図2】
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