説明

誘導標識

【課題】風のない場合にも十分な発光ができ、しかも、外力による損傷のおそれをなくし、さらに山間部などにおいても容易に設置可能とした誘導標識の提供。
【解決手段】ケース2は、中空ボックス状とされ、水平方向に離間して一対の開口部12,12が貫通して形成される。ケース2の下端部には、中空状の台座18を介して支持脚3が設けられる。ケース2の上壁には、太陽電池4が設けられる。ケース2内には、ケース2の開口部12に対応して垂直軸風車5が設けられると共に、垂直軸風車5の回転により発電される発電機が設けられる。台座18内には、太陽電池4および発電機6により発電される電力が蓄電される蓄電池が設けられる。ケース2の上壁には、蓄電池からの電力により発光する光源を有する表示部9が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者に対して光で視認させる誘導標識に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道端などに設置される誘導標識として、下記特許文献1には回転式視線誘導標が開示されている。下記特許文献1には、垂直回転軸に放射状に羽根が取り付けられており、垂直回転軸を中心にして羽根が回転することで発電され、その電力を用いて垂直回転軸の上端外周に装着した自発光体を発光させるものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−95459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された視線誘導標では、風が止まると発光できなくなり、しかも、車両にはねられて飛んでくる小石などの外力によって羽根が損傷し易いものであった。
【0005】
本発明は、風のない場合にも十分な発光ができ、しかも、外力による損傷のおそれをなくし、さらに山間部などにおいても容易に設置可能とした誘導標識を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、中空ボックス状に形成され、水平方向に離間して一対の開口部が貫通して形成されるケースと、このケースの下端部に設けられる支持脚と、前記ケースの上端部の外面に設けられる太陽電池と、前記ケース内に、前記開口部に対応して設けられる垂直軸風車と、前記垂直軸風車の回転により発電される発電機と、前記太陽電池および前記発電機により発電される電力が蓄電される蓄電池と、前記ケースの外側に設けられ、前記蓄電池からの電力により発光する光源を有する表示部とを備えることを特徴とする誘導標識である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記ケースは、略矩形の中空ボックス状に形成され、前記太陽電池は、前記ケースの上壁の外面に設けられ、前記ケースの開口部は、前記ケースの前後壁の左右方向略中央に貫通して形成される一対の前後開口部と、前記ケースの左右壁の前後方向略中央に貫通して形成される一対の左右開口部とからなり、前記垂直軸風車は、前記ケース内の略中央部で前記前開口部および前記後開口部と対応する位置と、前記略中央部の左側で前記左開口部と対応する位置と、前記略中央部の右側で前記右開口部と対応する位置とに設けられることを特徴とする請求項1に記載の誘導標識である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、周囲の明るさを検出する照度センサをさらに備え、前記光源は、前記照度センサの検出信号に基づき点灯および消灯が制御されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の誘導標識である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記光源が発光ダイオードとされることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導標識である。
【0010】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記垂直軸風車は、クロスフロー型とされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導標識である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、風のない場合にも十分な発光ができ、しかも、外力による損傷のおそれをなくし、さらに山間部などにおいても容易に設置可能とした誘導標識を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の誘導標識の一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の誘導標識のII−II線縦断面図である。
【図3】図2の誘導標識のIII−III線横断面図である。
【図4】図1の誘導標識の使用状態を示す斜視図である。
【図5】図1の誘導標識の使用状態を示す部分断面図である。
【図6】図1の誘導標識の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1から図3は、本発明の誘導標識の一実施例を示す図であり、図1は斜め上方から見た斜視図、図2は図1のII−II線縦断面図(但し表示部も断面にして示している)、図3は図2のIII−III線横断面図である。図4および図5は、図1の誘導標識の使用状態を示す図であり、図4は斜視図、図5は装着状態を示す部分断面図である。
【0014】
本実施例の誘導標識1は、中空ボックス状のケース2と、ケース2の下端部に設けられる支持脚3と、ケース2の上端部に設けられる太陽電池4と、ケース2内に設けられる垂直軸風車5と、垂直軸風車5の回転により発電される発電機6と、太陽電池4および発電機6により発電される電力が蓄電される蓄電池7と、蓄電池7からの電力により発光する光源8を有する表示部9とを主要部として備える。
【0015】
ケース2は、左右方向が長手方向とされる略矩形の中空ボックス状に形成されている。ケース2の左右両側壁は、前後方向両端から前後方向中央へ行くに従って外方へ膨出するよう湾曲して形成されている。すなわち、横断面形状が、左右方向両端部が略円弧状とされた略長方形状に形成されている。ケース2は、上ケース10と下ケース11とから構成されている。
【0016】
上ケース10は、中空ボックス状に形成されている。上ケース10には、水平方向に離間して一対の開口部12,12が貫通して形成されている。図示例では、前壁の左右方向略中央に略矩形状の前開口部13が貫通して形成されていると共に、後壁の左右方向略中央に略矩形状の後開口部14が貫通して形成されている。また、上ケース10は、左壁の前後方向略中央に略矩形状の左開口部15が貫通して形成されていると共に、右壁の前後方向略中央に略矩形状の右開口部16が貫通して形成されている。
【0017】
下ケース11は、上方へ開口した中空ボックス状に形成されている。下ケース11は、その下壁と上ケース10の下壁との間に隙間を形成するように、上ケース10の下端部に設けられる。すなわち、下ケース11と上ケース10の下壁により中空部が形成されている。
【0018】
支持脚3は、上下方向に開口した円筒状に形成されており、周側壁にネジ穴17が形成されている。支持脚3は、軸線が上下方向に沿うようにして、下ケース11の下端部に設けられる。図示例では、支持脚3は、台座18を介して下ケース11の下端部に設けられる。台座18は、縦断面略台形の中空ボックス状に形成されている。
【0019】
太陽電池4は、上ケース10の上壁の外面に設けられる。図示例では、三つの略矩形板状の太陽電池4が左右に等間隔に離隔して固定されているが、太陽電池4の形状や個数はこれに限定されるものではなく、適宜に変更可能とされる。
【0020】
垂直軸風車5は、回転軸が風の向きに対して垂直な風車であり、図示例では、クロスフロー型とされる。具体的には、棒状の軸19に、上板20と下板21との間を複数の羽根22で接続したものが設けられて構成される。上板20と下板21とは、円板状に形成されており、上下に離隔して平行に配置される。各羽根22は、上下方向が長手方向とされる略矩形板状に形成されており、上端部が上板20に接続される一方、下端部が下板21に接続される。各羽根22は、上板20と下板21との間に、周方向へ沿って等間隔に配置される。なお、各羽根22は、周方向へ膨出するように湾曲している。軸19は、丸棒状に形成されており、上板20および下板21の中央部同士を架け渡すように設けられる。その際、上板20および下板21は、軸19に対して回転不能とされている。
【0021】
垂直軸風車5の軸19は、上板20および下板21を貫通しており、上側の貫通部が上ケース10の上壁に接続される一方、下側の貫通部が上ケース10の下壁に接続される。垂直軸風車5の軸19は、上ケース10の上壁および上ケース10の下壁に対して回転可能に接続される。取付状態では、垂直軸風車5の軸19の下端部が、上ケース10の下壁を貫通しており、下ケース11内に突出している。
【0022】
垂直軸風車5は、上ケース10内の略中央部と、その左右両側に間隔を空けて配置される。その際、上ケース10内の略中央部に配置される垂直軸風車5は、上ケース10の前開口部13および後開口部14と対応している。上ケース10内の左側に配置される垂直軸風車5は、上ケース10の左開口部15と対応しており、上ケース10内の右側に配置される垂直軸風車5は、上ケース10の右開口部16と対応している。
【0023】
発電機6は、各垂直軸風車5の軸19の下端部に接続されて、下ケース11内に収容される。また、蓄電池7は、台座18内に収容される。このようにして、発電機6および蓄電池7は、誘導標識1内に収容される。これにより、発電機6および蓄電池7は、車両にはねられて飛んでくる石ころや雨などから保護できる。また、外部に露出しないため、見た目にも美しい。
【0024】
表示部9は、左右方向に等間隔に配置される光源8を有する光源ユニット23と、光源ユニット23に被せられるカバー24とを備える。光源8は、特に問わないが、省電力と長寿命の観点から、発光ダイオードとされるのが好ましい。カバー24は、下方へ開口した左右に細長い略矩形の中空ボックス状に形成されており、前壁には、透光性を有する素材で形成された円形状の表示窓25が、左右方向に並んで複数形成されている。
【0025】
光源ユニット23にカバー24が被せられた状態において、光源8からの光は、表示窓25を介して外部へ出射される。図示例では、表示部9は、カバー24の表示窓25が前方へ向いた状態で、上ケース10の上壁外面の前端部に沿って設けられる。従って、表示部9は、前方へ向けて発光される。
【0026】
以上のような構成の誘導標識1は、ガードレール26などの防護柵の支柱27に取り付けられて使用される。誘導標識1の支柱27への取り付けは、誘導標識1の支持脚3を支柱27の上端部に被せた状態で、支持脚3のネジ穴17に外方からボルト28をねじ込み、ボルト28の先端部を支柱27に当接させることでなされる。そして、ボルト28に進退可能にねじ込まれたナット29が、支持脚3の外周面に締め込まれる。その際、車両の運転者が誘導標識1の表示部9の光を視認できるように、カバー24の表示窓25が車道側へ向けられる。
【0027】
本実施例の誘導標識1では、垂直軸風車5が、上ケース10内において、上ケース10に形成された開口部12に対応した位置に設けられる。従って、上ケース10により、風に乗って運ばれてくるビニール袋や紙片などのゴミが垂直軸風車5に絡み難く、車両にはねられて飛んでくる小石などが垂直軸風車5を破損させるおそれを少なくできる。また、上ケース10の開口部12を介して、上ケース10内を風が通り抜けて、垂直軸風車5を回転させることができる。このようにして誘導標識1は、垂直軸風車5の回転が良好に維持されるという点を満足しつつ、垂直軸風車5の保護を図ることができる。
【0028】
また、本実施例の誘導標識1では、太陽電池4が、上ケース10の上壁に設けられている。従って、誘導標識1をガードレール26に設置した際、太陽電池4が誘導標識1の下端部に設けられた場合と比較して、ガードレール26付近の丈の低い樹木や看板などによって、太陽電池4に影がかかるおそれを少なくできる。さらに、本実施例の誘導標識1では、垂直軸風車5や発電機6などがケース2内部に収容され、太陽電池4がケース2に設置されているため、シンプルなデザインとなり、景観にマッチさせることができる。
【0029】
図6は、本実施例の誘導標識1の概略説明図である。この図に示すように、誘導標識1は、太陽電池4に光が当たると、太陽電池4により発電することができる。これにより得られる電力は、直流電力であり、蓄電池7に供給可能とされている。また、誘導標識1は、風を受けて垂直軸風車5が回転することで、発電機6により発電することができる。これにより得られる電力は、交流電力であるため、電力変換手段30にて直流電力に変換される。そして、変換後、蓄電池7に供給可能とされている。
【0030】
このようにして蓄電池7に蓄えられた電力によって、光源8を発光させることができる。光源8は、制御手段31により制御される。制御手段31は、照度センサ32からの検出信号などに基づいて、光源8を制御する手段である。具体的には、光源8は、照度センサ32により検出される周囲の明るさに基づき制御される。すなわち、夜間や霧が発生した場合などのように周囲が暗くなると、光源8が点灯される。そして、夜が明けたり、霧が晴れたりして周囲が明るくなると、点灯していた光源8が消灯される。
【0031】
前述したように、誘導標識1は、周囲が暗くなると光源8が点灯されるため、夜間などにおいて、車両の運転者に確実に視認させることができ、車両を安全に通行させることができる。また、本実施例の誘導標識1では、照度センサ32により検出される周囲の明るさに基づき制御されるため、電力を無駄に消費することがなく、必要な時に安定して光源8に電力を供給することができる。
【0032】
また、本実施例の誘導標識1は、風力発電および太陽光発電により得られる電力が蓄電池7に蓄電される構成である。風力発電だけの場合、風がない時が長く続くと必要な電力を蓄えることができず、太陽光発電だけの場合、夜間や、曇り空や雨の時などに発電することができない。従って、本実施例の誘導標識1は、風力発電と太陽光発電のどちらか一方の場合と比較して、確実に蓄電することができる。
【0033】
また、本実施例の誘導標識1では、外部から電力を供給する必要がないため、道路の近くに電力供給設備がない過疎地や山間部などでも使用することができる。また、本実施例の誘導標識1では、電力供給設備から電力を供給するための工事を行う必要がないため、設置にかかるコストを低減でき、工事中に道路規制を行う必要がなく、交通に支障をきたすおそれがない。さらに、本実施例の誘導標識1は、自然エネルギーを利用して発電するため、二酸化炭素の排出を抑制でき、環境問題に貢献することができる。
【0034】
本発明の誘導標識は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、ケース2は、略矩形の中空ボックス状に形成されたが、中空状であれば、外形は適宜に変更可能である。また、前記実施例では、ケース2に形成される一対の開口部12,12は、前後壁の左右方向略中央に形成される略矩形状の前後開口部13,14と、左右壁の前後方向略中央に形成される略矩形状の左右開口部15,16とされたが、水平方向に離間して形成すれば、その形成位置や形状や個数は、適宜に変更可能である。この場合、垂直軸風車5は、開口部12に対応してケース2内に適宜に配置される。また、前記実施例では、垂直軸風車5は、クロスフロー型とされたが、これに限定されるものではなく、ジャイロミル型などでもよい。
【0035】
また、前記実施例では、表示部9は、左右方向に細長い略矩形状に形成されたが、その形状は適宜に変更可能である。また、表示部9は、ケース2の上壁に設けられたが、これに代えてまたはこれに加えて、ケース2の前壁や下壁などに設けてもよい。たとえば、表示部9は、左右方向のどちらか一方を示す矢印状に形成され、ケース2の前壁に設けられてもよい。
【0036】
さらに、前記実施例では、図4に示すように、誘導標識1は、ガードレール26の支柱27に連続して取り付けられたが、これに限定されるものではなく、たとえば、ガードレール26の支柱27に一つおきに取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 誘導標識
2 ケース
3 支持脚
4 太陽電池
5 垂直軸風車
6 発電機
7 蓄電池
8 光源
9 表示部
12 開口部
13 前開口部
14 後開口部
15 左開口部
16 右開口部
31 制御手段
32 照度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空ボックス状に形成され、水平方向に離間して一対の開口部が貫通して形成されるケースと、
このケースの下端部に設けられる支持脚と、
前記ケースの上端部の外面に設けられる太陽電池と、
前記ケース内に、前記開口部に対応して設けられる垂直軸風車と、
前記垂直軸風車の回転により発電される発電機と、
前記太陽電池および前記発電機により発電される電力が蓄電される蓄電池と、
前記ケースの外側に設けられ、前記蓄電池からの電力により発光する光源を有する表示部と
を備えることを特徴とする誘導標識。
【請求項2】
前記ケースは、略矩形の中空ボックス状に形成され、
前記太陽電池は、前記ケースの上壁の外面に設けられ、
前記ケースの開口部は、前記ケースの前後壁の左右方向略中央に貫通して形成される一対の前後開口部と、前記ケースの左右壁の前後方向略中央に貫通して形成される一対の左右開口部とからなり、
前記垂直軸風車は、前記ケース内の略中央部で前記前開口部および前記後開口部と対応する位置と、前記略中央部の左側で前記左開口部と対応する位置と、前記略中央部の右側で前記右開口部と対応する位置とに設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の誘導標識。
【請求項3】
周囲の明るさを検出する照度センサをさらに備え、
前記光源は、前記照度センサの検出信号に基づき点灯および消灯が制御される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の誘導標識。
【請求項4】
前記光源が発光ダイオードとされる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導標識。
【請求項5】
前記垂直軸風車は、クロスフロー型とされる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導標識。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−219966(P2011−219966A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89230(P2010−89230)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(507396161)株式会社TECone (1)
【Fターム(参考)】