説明

誘導溶解炉の警報装置

【課題】炉壁の変化を精度よく検出することができ、安全性を向上させることができる誘導溶解炉の警報装置を提供する。
【解決手段】コントローラ10は、ロードセル8により計測された被加熱材Yの質量が定格閾値未満の場合に、警報閾値を補正する(STEP23)。また、測温計9により計測された被加熱材Yの温度が被加熱材Yの溶解温度より高温の温度閾値以上であることを条件に(STEP25)、負荷インピーダンスRを算出する(STEP26)。そして、算出された負荷インピーダンスRが、その警報閾値と同値またはこれを超える場合に(STEP27,28)、警報を出力する(STEP31,32)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
炉壁の外周に設けられた加熱コイルに電力供給手段を介して電力を供給することにより炉内に収納された被溶解材を溶解させる誘導溶解炉の警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導溶解炉の警報装置としては、下記特許文献1に示すように、炉壁の外周に設けられた加熱コイルに電力を供給する回路に電圧および電流を測定する手段を設け、計測する測定値から負荷インピーダンスを算出し、算出した負荷インピーダンスを予め定められた基準値と比較することで警報信号を出力するものが、本願出願人により考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平1−158097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、負荷インピーダンスは、測定条件によりその値が変化するものであるが、従来の警報装置では、負荷インピーダンスが大幅に変化する場合にこれを捉えて、警報を出力するものであるが、日々の誘導溶解炉の稼動状況の中で炉壁の変化を精度よく検出して、警報を出力することは困難であった。
【0005】
以上の事情に鑑みて、本発明は、炉壁の変化を精度よく検出することができ、安全性を向上させることができる誘導溶解炉の警報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1発明の誘導溶解炉の警報装置は、炉壁の外周に設けられた加熱コイルに電力供給手段を介して電力を供給することにより炉内に収納された被加熱材を溶解させる誘導溶解炉の警報装置であって、前記炉内に収納された被加熱材の質量を測定する質量測定手段と、前記炉内で溶解させた被加熱材の温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定手段により測定される前記被加熱材の温度が該被加熱材の溶解温度より高温の温度閾値以上であることを条件に、前記電力供給手段の前記加熱コイルへの電力供給状態から負荷インピーダンスを算出するインピーダンス算出手段と、前記インピーダンス算出手段により算出される負荷インピーダンスが、その警報閾値と同値またはこれを超える場合に警報を出力する警報出力手段と、前記質量測定手段により測定される質量に応じて前記警報閾値を補正する閾値補正手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
第1発明の誘導溶解炉の警報装置によれば、被加熱材の温度が溶融温度以下の場合に、負荷インピーダンスが変動することに着目し、被加熱材の温度が負荷インピーダンスの温度依存性がなくなる温度閾値以上の場合に、負荷インピーダンスを算出する。
【0008】
さらに、炉内に収納される被加熱材の質量に応じて負荷インピーダンスが変動することに着目し、被加熱材の質量に応じた警報閾値の補正を行った上で、算出した負荷インピーダンスが警報閾値と同値またはこれを超えるか否か判定する。
【0009】
これにより、負荷インピーダンスの測定条件に合わせて警報閾値を適切に設定することができ、炉壁の変化を精度よく検出することができる。そして、該検出結果に基づく警報出力を行うことで、誘導溶解炉の安全性を向上させることができる。
【0010】
第2発明の誘導溶解炉の警報装置は、第1発明の誘導溶解炉の警報装置において、前記警報出力手段は、前記インピーダンス算出手段により算出される負荷インピーダンスが、前記警報閾値としての上限閾値以上の場合に、前記炉壁に不純物が付着していると判定して補修警報を出力する補修警報出力と、前記警報閾値としての下限閾値以下の場合に、該炉壁が浸食されていると判定して解体警報を出力する解体警報出力とのいずれか一方または両方を行うことを特徴とする。
【0011】
第2発明の誘導溶解炉の警報装置によれば、前記警報閾値として、負荷インピーダンスの上限閾値と下限閾値を設定し、これらの閾値と同値またはこれを超える場合にそれぞれ固有の警報出力を行う。
【0012】
具体的に、炉壁は、被加熱材が炉内で溶解され撹拌されることにより、徐々に浸食される。この場合には、加熱コイルと被溶解物との距離が小さくなるため、負荷インピーダンスが徐々に小さくなる。これに対して、負荷インピーダンスの測定条件に合わせた下限閾値を適切に設定することで、炉壁の浸食状況を精度よく検出することができる。
【0013】
一方、炉壁には、被加熱材の加熱冷却を繰り返すうちに、不純物としてのスラグが付着し、蓄積される。この場合には、加熱コイルと被溶解物との距離が大きくなるため、負荷インピーダンスが徐々に大きくなる。これに対して、負荷インピーダンスの測定条件に合わせた上限閾値を適切に設定することができ、炉壁への不純物の付着状況を精度よく検出することができる。
【0014】
これにより、炉壁の変化を精度よく検出して、該検出結果に基づく警報出力を行うことで、誘導溶解炉の安全性を向上させることができる。
【0015】
第3発明の誘導溶解炉の警報装置は、第2発明の誘導溶解炉の警報装置において、前記閾値補正手段は、前記質量測定手段により測定された質量が予め設定された定格質量未満の場合に、予め設定された上限閾値および下限閾値に対して、前記炉内に収納された被加熱材の質量と負荷インピーダンスの関係から規定される補正値を乗算する補正を行うことを特徴とする。
【0016】
第3発明の誘導溶解炉の警報装置によれば、炉内に収納される被加熱材の質量が定格質量未満の場合には加熱コイルに無負荷の部分が生じて、負荷インピーダンスが非線形的に変動することに着目し、被加熱材の質量に応じた警報閾値の補正を次のように行う。すなわち、炉内に収納された被加熱材の質量と負荷インピーダンスの関係を規定するマップ等を参照して補正値を決定し、この補正値を警報閾値としての上限閾値および下限閾値に乗算する。
【0017】
これにより、定格質量未満で誘導溶解炉を稼動させている場合にも、警報閾値を適切に設定することができ、炉壁の変化を精度よく検出することができる。そして、該検出結果に基づく警報出力を行うことで、誘導溶解炉の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】誘導溶解炉の全体的な構成を示す構成図。
【図2】誘導溶解炉の警報処理手順を示すフローチャート。
【図3】被加熱材の質量に応じた警報閾値の補正方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、本実施形態の誘導溶解炉の警報装置について説明する。誘導溶解炉は、溶解炉本体X内に収納された被加熱材Yを溶解させるものである。
【0020】
具体的に、誘導溶解炉は、電源1と、高圧受電盤2と、高調波フィルタ3と、変換装置用変圧器4と、高周波インバータ5と、高周波整合装置6と、加熱コイル7と、ロードセル8と、測温計9と、コントローラ10とを備える。
【0021】
電源1は、定格の交流電源であって、高圧受電盤2に接続されている。
【0022】
高圧受電盤2は、誘導加熱装置への電源通電・停止と故障発生時の電源遮断を行う装置であって、パワーヒューズ21と、遮断機22と、計器用変流器23と、計器用変圧器24とを備える。
【0023】
パワーヒューズ21は、短絡事故時に電流遮断する手段であって、遮断機22は、電源の通電と停止に伴う開閉動作を行う。また、計器用変流器23は、この回路の回路電流ををコントローラ10への出力信号に変換し、計器用変圧器24は、この回路の回路電圧をコントローラ10への出力信号に変換する。そして、これらの出力信号は、信号Aとして、コントローラ10へ出力される。
【0024】
高調波フィルタ3は、高圧受電盤2に接続され、高周波インバータ5から高調波電流が電力系統に流出しないように抑制する装置であって、限流リアクトル31と、直列リアクトル32と、高調波コンデンサ33とから構成される。また、高調波フィルタ3は、高調波電流が所定値を超過した場合に異常信号である信号Bをコントローラ10へ出力する。
【0025】
変換装置用変圧器4は、高調波フィルタ3に接続され、高周波インバータ5が所定の出力電圧を出力するために、高周波インバータ5への入力電圧を調整する装置であって、温度上昇や内部ガス圧異常などの際に異常信号である信号Cを出力する。
【0026】
高周波インバータ5は、変換装置用変圧器4に接続され、50Hzまたは60Hzの商用電源から任意の高周波電流を生成するための装置であって、交流/直流変換器である順変換器51と、直流/交流変換器である逆変換器52から構成され、コントローラ10からの運転・停止・出力制御信号により制御される。
【0027】
また、高周波インバータ5には、直流リアクトル53が内蔵されており、順変換器51で生成する直流電圧に重畳するリプル成分を除去すると共に、逆変換器52や加熱コイル7などの負荷破損時の過電流の急激な流出を抑制する。
【0028】
さらに、高周波インバータ5は、故障時にコントローラ10に故障状態を伝える信号や、電圧・電流・電力・周波数といった稼動時の電気データ(本発明の電力供給状態に相当する)を、信号Dとしてコントローラ10へ出力する。
【0029】
高周波整合装置6は、高周波インバータ5に接続され、高周波インバータ5と加熱コイル7とのインピーダンス整合を図る装置である。高周波整合装置6は、インピーダンス整合を図るための高周波整合変圧器61と、加熱コイル7の遅れ力率を進み力率に補償する力率調整コンデンサ62とを備え、これらの構成要素の温度上昇や破損などの異常信号を信号Eとしてコントローラ10へ出力する。
【0030】
なお、これらの構成要素1〜6が、本発明の電力供給手段に相当する。
【0031】
加熱コイル7は、高周波インバータ5から供給されれた高周波電力により、溶解炉本体X内に収納された鉄等の被加熱材Yにうず電流を発生させ,うず電流により金属材料間に発生するジュール熱で被加熱材Yを昇温させて溶解させる。このとき、図示しない温度検出手段や冷却水路の循環機構などの際に異常信号である信号Fがコントローラ10に出力される。
【0032】
ロードセル8は、溶解炉本体Xの下方に設けられた質量測定手段であって、溶解炉本体X内に収納された被加熱材Yの質量を計測し、その質量信号を信号Gとしてコントローラ10へ出力する。
【0033】
放射温度計9は、加熱コイル7により溶解された被加熱材Yの温度を非接触式に計測する温度測定手段であって、計測温度を信号Hとしてコントローラ10へ出力する。
【0034】
コントローラ10は、誘導溶解炉の運転・停止、出力調整等の制御を行うと共に、前記構成要素1〜9の破損あるいは定格状態を超過した運転条件になった場合に、誘導溶解炉を保護する運転制御手段としての機能を備える。
【0035】
また、コントローラ10は、誘導溶解炉の警報装置としてのインピーダンス算出手段、警報出力手段および閾値補正手段としての機能を備える(コントローラ10が本発明の警報装置に相当する)。
【0036】
具体的に、コントローラ10は、高周波インバータ5から出力された電気データ信号(信号D)を常時監視しており、後述する所定の条件(図2のSTEP25)を満たす場合に、現在の負荷インピーダンスRを算出する。なお、負荷インピーダンスRの算出方法については、本願出願人による前記特許文献1に記載されているため、詳細な説明は省略するが、これに限らず、加熱コイル7へ供給される高周波電力から負荷インピーダンスを算出する種々の方法が採用され得る。
【0037】
また、コントローラ10は、算出した負荷インピーダンスRが、後述する警報閾値(図図2のSTEP27,28)と同値またはこれを超える場合に警報を出力すると共に、ロードセル8により計測された質量に応じて警報閾値を補正する。
【0038】
なお、コントローラ10は、かかる制御処理を実行するプログラムが図示しないメモリに記憶保持され、必要なプログラムがメモリから読み出されることにより、制御処理を実行するための演算装置(シーケンサ)として機能する。
【0039】
また、コントローラ10を構成する各手段は、CPU,ROM、RAM等のハードウェアにより構成されているが、これらの各手段は共通のハードウェアによって構成されていてもよく、これらの各手段の一部又は全部が、異なるハードウェアによって構成されていてもよい。
【0040】
さらに、コントローラ10には、モニタ11と、スピーカ12とが接続されている。モニタ11は、例えば、タッチパネル等から構成され、誘導溶解炉の運転状態や各種警報等が表示される。また、スピーカ12からは、誘導溶解炉の運転状態や各種警報が、音声または各種ブザ音等により出力される。
【0041】
次に、図2を参照して、コントローラ10による警報処理について説明する。
【0042】
まず、コントローラ10は、誘導溶解炉の稼動を開始すると、使用する誘導溶解炉が新たに築炉されたものであるか否かをチェックする(STEP11)。
【0043】
そして、コントローラ10は、当該誘導溶解炉が新たに築炉されたものである場合には(STEP11でYES)、当該誘導溶解炉の耐火材の仕様から予め定められる各種閾値等(カウンタ閾値、警報閾値、定格)をコントローラ10に設定した上で(STEP12)当該誘導溶解炉での溶解作業回数を指し示す溶解カウンタをリセットする(STEP13)。
【0044】
一方、コントローラ10は、当該誘導溶解炉が新たに築炉されたものでない場合には(STEP11でNO)、これらの初期設定および処理(STEP12,13)を行うことなく、溶解カウンタをカウントアップし(STEP14)、カウントアップした溶解カウンタが、カウンタ閾値(例えば200回)以上となっているか否かをチェックする(STEP15)。
【0045】
そして、溶解カウンタが、カウンタ閾値以上となっている場合には(STEP15でYES)、当該誘導溶解炉は溶解作業回数がその上限に達したため、溶解炉本体Xを解体すべき旨の解体警報をモニタ11およびスピーカ12を介して出力し(STEP31)、当該誘導溶解炉の稼動を終了する。
【0046】
一方、溶解カウンタが、カウンタ閾値未満の場合には(STEP15でNO)、被加熱材(溶解材料)Yを溶解炉本体Xに収納し(STEP16)、前記電力供給手段1〜7を介して、高周波電力を加熱コイル7に供給して被加熱材Yを昇温・溶解させる(STEP17)。
【0047】
次いで、コントローラ10は、ロードセル8を介して被加熱材Yの質量を計測し(STEP18)、溶解作業が終了しているか否かをチェックする(STEP19)。
【0048】
そして、溶解作業が未だ終了していない場合には(STEP19でNO)、STEP18で計測した被加熱材Yの質量が、当該誘導溶解炉の定格質量以上となっているか否かをチェックする(STEP20)。
【0049】
ここで、被加熱材Yの質量が定格質量未満の場合には(STEP20でNO)、新たに被加熱材Yを溶解炉本体Xに追加収納し(STEP21)、STEP17にリターンして、STEP17以下の処理を実行する。
【0050】
一方、被加熱材Yの質量が定格質量以上の場合には(STEP20でYES)、測温計9を介して被加熱材Yの温度を計測し(STEP24)、計測した温度が、負荷インピーダンスRの算出条件を満たす温度閾値以上であるか否かをチェックする(STEP25)。具体的に、温度閾値は、定格溶湯となる温度であって、誘導溶解炉の耐熱温度(1600℃〜1700℃)未満の温度(例えば1550℃)に設定されている。
【0051】
そして、被加熱材Yの温度が温度閾値以上の場合には(STEP25でYES)、コントローラ10は、高周波インバータ5から出力された電気データ信号(信号D)に基づいて、負荷インピーダンスRを算出する。一方、被加熱材Yの温度が温度閾値未満の場合には(STEP25でNO)、新たに被加熱材Yを追加することなく、STEP17にリターンして、STEP17以下の処理を実行する。
【0052】
一方、STEP19で、溶解作業が終了している場合には(STEP19でYES)、STEP18で計測した被加熱材Yの質量が、当該誘導溶解炉の定格質量以上となっているか否かをチェックする(STEP22)。
【0053】
そして、被加熱材Yの質量が定格質量以上の場合には(STEP22でYES)、STEP24以下の処理を実行し、被加熱材Yの質量が定格質量未満の場合には(STEP22でNO)、質量に基づく警報閾値の補正処理を実行した上で(STEP23)、STEP24以下の処理を実行する。
【0054】
ここで、STEP23の質量に基づく警報閾値の補正処理は、溶解炉本体X内に収納される被加熱材の質量が定格質量未満の場合には、図3に示すように、定格質量の場合の負荷インピーダンスを100%とすると、負荷インピーダンスRが非線形的に大きくなる。そのため、かかる関係式(マップやデータテーブルを含む)に基づいて、インピーダンスRの上限閾値および下限閾値を次のように補正する。すなわち、上限閾値および下限閾値に対して、それぞれ質量比例値および前記関係式により規定される補正値を乗算する。これにより、定格質量未満で誘導溶解炉を稼動させている場合にも、警報閾値を適切に設定することができる。
【0055】
次に、STEP26で負荷インピーダンスRが算出されると、コントローラ10は、算出された負荷インピーダンスRが、警報閾値としての下限閾値以下となっているか否かをチェックする(STEP27)。
【0056】
ここで、下限閾値は、溶解炉本体Xの仕様に応じて、例えば、数十%炉壁厚が浸食された場合にこれを検出するように設定される。また、STEP23で下限閾値が補正された場合には、補正後の下限閾値を用いてチェックを行う。
【0057】
そして、負荷インピーダンスRが下限閾値以下の場合には(STEP27でYES)、当該誘導溶解炉は炉壁が規定値以下に浸食されているため、溶解炉本体Xを解体すべき旨の解体警報をモニタ11およびスピーカ12を介して出力し(STEP31)、当該誘導溶解炉の稼動を終了する。
【0058】
一方、負荷インピーダンスRが下限閾値を上回っている場合には(STEP27でNO)、コントローラ10は、該負荷インピーダンスRが、警報閾値としての上限閾値以上となっているか否かをチェックする(STEP28)。
【0059】
ここで、上限閾値は、溶解炉本体Xの仕様に応じて、例えば、数十%炉壁厚に対して、不純物であるスラグ等が付着した場合にこれを検出するように設定される。また、STEP23で上限閾値が補正された場合には、補正後の上限閾値を用いてチェックを行う。
【0060】
そして、負荷インピーダンスRが上限閾値以上の場合には(STEP28でYES)、当該誘導溶解炉は炉壁に規定値以上に不純物が付着しているため、溶解炉本体Xの補修を行うべき旨の補修警報をモニタ11およびスピーカ12を介して出力し(STEP32)、当該誘導溶解炉の稼動を終了する。
【0061】
一方、負荷インピーダンスRが上限閾値を下回っている場合には(STEP28でNO)、コントローラ10は、ユーザによる稼動の終了指示があるか否かをチェックし(STEP33)、稼動終了が指示された場合には(STEP33でYES)、この処理を終了し、稼動終了が指示されない場合には(STEP33でNO)、STEP14にリターンし、STEP14以下の処理を実行する。
【0062】
以上、詳細に説明したように、本実施形態のコントローラ10によれば、負荷インピーダンスRの測定条件に合わせて警報閾値(上限閾値および下限閾値)を適切に設定することができ、溶解炉本体Xの炉壁の変化を精度よく検出することができる。そして、検出結果に基づいて警報出力を行うことで、誘導溶解炉の安全性を向上させることができる。
【0063】
尚、本実施形態において、上限閾値および下限閾値は、それぞれ1つの閾値としているが、それぞれ複数の閾値を段階的に設けて、溶解炉本体Xの炉壁の変化を段階的に捉えると共に、これらの段階に合わせて警報のレベルを変化させてもよい。
【符号の説明】
【0064】

1…電源、2…高圧受電盤、3…高調波フィルタ、4…変換装置用電圧器、5…高周波インバータ、6…高周波整合装置、7…加熱コイル、8…計量装置(質量測定手段)、9…測温計(温度検出手段)、10…コントローラ(警報装置)、X…溶解炉本体、Y…被加熱材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉壁の外周に設けられた加熱コイルに電力供給手段を介して電力を供給することにより炉内に収納された被加熱材を溶解させる誘導溶解炉の警報装置であって、
前記炉内に収納された被溶解材の質量を測定する質量測定手段と、
前記炉内で溶解させた被加熱材の温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段により測定される前記被加熱材の温度が該被加熱材の溶解温度より高温の温度閾値以上であることを条件に、前記電力供給手段の前記加熱コイルへの電力供給状態から負荷インピーダンスを算出するインピーダンス算出手段と、
前記インピーダンス算出手段により算出される負荷インピーダンスが、その警報閾値と同値またはこれを超える場合に警報を出力する警報出力手段と、
前記質量測定手段により測定される質量に応じて前記警報閾値を補正する閾値補正手段と
を備えることを特徴とする誘導溶解炉の警報装置。
【請求項2】
請求項1記載の誘導溶解炉の警報装置において、
前記警報出力手段は、前記インピーダンス算出手段により算出される負荷インピーダンスが、前記警報閾値としての上限閾値以上の場合に、前記炉壁に不純物が付着していると判定して補修警報を出力する補修警報出力と、前記警報閾値としての下限閾値以下の場合に、該炉壁が浸食されていると判定して解体警報を出力する解体警報出力とのいずれか一方または両方を行うことを特徴とする誘導溶解炉の警報装置。
【請求項3】
請求項2記載の誘導溶解炉の警報装置において、
前記閾値補正手段は、前記質量測定手段により測定された質量が予め設定された定格質量未満の場合に、予め設定された上限閾値および下限閾値に対して、前記炉内に収納された被加熱材の質量と負荷インピーダンスの関係から規定される補正値を乗算する補正を行うことを特徴とする誘導溶解炉の警報装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−236723(P2010−236723A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83108(P2009−83108)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000242127)北芝電機株式会社 (53)
【Fターム(参考)】