説明

誘電体の金属化

【課題】誘電体の金属化の提供。
【解決手段】組成物及び方法が開示される。この組成物は、金属堆積のために、誘電体をコンディショニングし且つ活性化する。金属を、無電解方法によって誘電体上に堆積させることができる。金属化された誘電体は、電子デバイスに使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体の金属化を対象とする。更に詳細には、本発明は、金属の誘電体への接着を促進し、且つ誘電体の金属化に触媒作用するための組成物及び方法を使用する、誘電体の金属化を対象とする。
【背景技術】
【0002】
誘電体上に金属パターンを作り出すための種々の方法が知られている。かかる方法としては、単独で又は種々の組合せにより、ポジ型及びネガ型印刷方法、ポジ型及びネガ型エッチング技術、電気めっき並びに無電解めっきが挙げられる。
【特許文献1】米国特許第5,413,817号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
誘電体基体を金属化するための多くの通常の方法では、コンディショニングや触媒化や無電解金属堆積の工程の前の表面処理の一部として、攻撃的な酸化剤、例えばクロム酸が用いられている。しかしながら、かかる方法は、作業者及び環境に対して危険であるだけでなく、冗長であり、時間を浪費する。無電解金属化方法を使用する産業では、生産効率を改良するために期間が短いことが望まれ、同時に、費用の掛かる危険な廃棄物処理を回避するために環境的に優しい方法が望まれている。
【0004】
酸化の後には、活性化又は触媒化工程が、無電解堆積の前に実施される。金属イオンを金属に還元することができる金属塩が、誘電体に適用される。次いで、この誘電体は、無電解浴中に入れられ、そこで、金属イオンは金属に還元されて、電流を使用することなく誘電体基体の上に金属層を形成する。無電解方法において還元触媒として機能する触媒又は活性化剤には、貴金属、例えば、パラジウム、白金、金、銀、イリジウム、オスミウム、ルテニウム及びロジウムが含まれる。典型的に、パラジウムは、それが、誘電体基体上で高い剥離強度を有する均一な金属層の形成をもたらすので、好ましい触媒である。また、無電解で堆積させるために、広範囲の種々の金属並びに例えば電子産業をはじめとする種々の産業のために重要な金属も用いられ得る。かかる金属には、スズ、銅、ニッケル及び多くのそれらのそれぞれの合金が含まれる。パラジウムは、しばしば、パラジウム/スズコロイドとして商業的に提供される。例えば、Chaoらへの米国特許5,413,817号には、金属皮膜をポリフェニレンエーテル−ポリスチレン物品に接着させる方法が開示されている。Chaoらは、最初に、ポリフェニレンエーテル−ポリスチレン物品を、四価のセリウム及び硝酸と接触させ、その後パラジウム含有触媒溶液で活性化させている。
【0005】
パラジウムは、多くの無電解方法において好ましい触媒であるけれども、この金属は高価であり、その価格は、時々、金の価格2倍以上を超える。他のより安価な金属、例えば銀が試みられた。しかしながら、銀には問題があった。銀は、多くの場合に適切な触媒活性を示さず、もしくは最適な堆積よりも低い堆積となる場合がある。これらの理由のために、銀は一般的に不評を招いている。従って、パラジウムの使用を回避する無電解金属化方法についての要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において、組成物には、1以上のセリウム(IV)イオン源、1以上の銀(I)イオン源及び1以上の水素イオン源が含まれる。
【0007】
他の態様において、組成物は、1以上のセリウム(IV)イオン源、1以上の銀(I)イオン源、1以上の水素イオン源、及び水からなる。
【0008】
別の面において、方法には、1以上のセリウム(IV)イオン源、1以上の銀(I)イオン源及び1以上の水素イオン源を含む組成物を提供する工程;誘電体を該組成物と接触させて、該誘電体をコンディショニングし且つ活性化する工程;並びに該誘電体上に金属を堆積させる工程、が含まれる。
【0009】
さらなる態様において、方法には、1以上のセリウム(IV)イオン源、1以上の銀(I)イオン源、1以上の水素イオン源を含む組成物を提供する工程:誘電体を該組成物と接触させて、該誘電体をコンディショニングし、且つ活性化する工程;該誘電体上に第一金属を無電解で堆積させる工程;並びに第一金属上に第二金属を堆積させる工程が含まれる。
【0010】
他の態様において、方法には、1以上のセリウム(IV)イオン源、1以上の銀(I)イオン源、1以上の水素イオン源を含む組成物を提供する工程;誘電体を該組成物と接触させて、該誘電体をエッチングする工程;並びに該誘電体上に金属を無電解で堆積させる工程が含まれる。
【発明の効果】
【0011】
セリウム及び銀組成物は、共に、誘電体表面をコンディショニングして、金属と誘電体との間の確実な結合を提供し、且つ誘電体材料の上への金属の堆積に触媒作用することができる。他の態様において、セリウム及び銀組成物は、誘電体をエッチングし、それを自己触媒化することができる。例えばクロム酸のような、危険な酸化剤は回避され、誘電体を金属化するための、環境的に優しい組成物及び方法が提供される。また、一つの態様においては、クロム酸の使用が回避され、且つコンディショニングと触媒化の工程が組み合わされるので、処理工程の数が減少して、一層効率的な誘電体金属化の方法が提供される。更に、セリウムエッチへの銀イオンの添加によって、誘電体への金属の接着が改良される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書を通して使用するとき、下記の略語は、文脈が他を示さない限り、下記の意味を有するものとする。℃=摂氏度;g=グラム;mg=ミリグラム;L=リットル;mL=ミリリットル;cm=センチメートル;ppm=百万当たりの部;1mil=25.4ミクロン;M=モル;v=体積;ASD=アンペア/平方デシメートル;lbf=フィートポンド;及びin=インチ。
【0013】
用語「堆積」と「めっき」とは、本明細書を通して互換的に使用される。全てのパーセンテージは、他に注記しない限り、重量基準である。全ての数字範囲は、境界値を含み、且つかかる数字範囲が合計して100%に制約されることが論理的である場合を除いて、任意の順序で組み合わせ可能である。
【0014】
組成物には、1以上のセリウム(IV)イオン源、1以上の銀(I)イオン源及び1以上の水素イオン源が含まれる。セリウム(IV)イオンと水素イオンとの組合せは、誘電体表面をコンディショニングして、誘電体と、誘電体表面の上に堆積された金属との間の確実な結合を提供する。銀(I)イオンは、誘電体表面の上への金属堆積に触媒作用する。
【0015】
セリウム(IV)イオンを提供する全ての水溶性塩又は錯体を使用することができる。セリウム(IV)イオンは、錯体複塩(complex double salt)、例えば硝酸アンモニウムセリウム(NHCe(NOを、水中に添加し、混合することによって提供されてもよい。硝酸アンモニウムセリウムは、水中に溶解して、水中の溶液中のセリウム(IV)イオン(Ce4+)をもたらす。他のセリウム(IV)イオン源には、これらに限定されないが、セリウムテトラスルフェートCe(SO)・2HSO、例えば硫酸アンモニウムセリウム(NHCe(SO・2HOをはじめとする複塩、酸化セリウム(CeO)、硫酸セリウム(Ce(SO)及び硫酸セリウム四水和物(Ce(SO・4HO)が含まれる。一般的に、1以上の塩又は錯体は水と混合され、溶液中でセリウム(IV)イオンを5g/L〜500g/L又は例えば50g/L〜350g/L又は例えば100g/L〜250g/Lの量で提供する。
【0016】
銀(I)イオン(Ag)を与える任意の水溶性塩又は錯体を使用することができる。銀イオン源には、これらに限定されないが、硝酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、過塩素酸銀、フッ化銀、酢酸銀、炭酸銀、酸化銀、硫酸銀及び水酸化銀が含まれる。一般的に、1以上の銀(I)イオン源は、0.1g/L〜50g/L又は例えば0.2g/L〜30g/L又は例えば0.5g/L〜20g/L又は例えば1g/L〜15g/Lの量で含有される。
【0017】
水素イオンは、任意の好適な酸によって提供されることができ、セリウム(IV)イオンとの組み合わせにおいて、誘電体基体をコンディショニングする。典型的に、無機酸が使用され、これらは組成物のためのマトリックスを提供する。かかる無機酸には、これらに限定されないが、硫酸、硝酸、塩酸、フッ化水素酸、リン酸及びこれらの混合物が含まれる。典型的に、硝酸又は硫酸が使用される。最も典型的には、組成物マトリックスを与えるために、硝酸が使用される。1以上の酸は、組成物中に、50g/L〜750g/L又は例えば50g/L〜500g/L又は例えば100g/L〜300g/Lの量で含有されている。
【0018】
セリウム及び銀組成物の成分は、水中で任意の順序で共に混合することができる。所望により、1以上の成分の可溶化を開始するために、この混合物を30℃まで加熱してもよく、さもなければ、成分を室温で一緒に混合することができる。セリウム及び銀組成物は貯蔵安定性を有するが、任意に、通常の抗菌剤を添加して、それらの貯蔵寿命を延長させることができる。貯蔵の間に成分の幾らかの沈殿が生じる場合もあるが、それにもかかわらず、この組成物はなお使用することができ又はこれらは加熱して、成分を再溶解させることができる。組成物には、1以上のセリウム(IV)イオン源、1以上の銀(I)イオン源、1以上の水素イオン源及び水が含まれる。組成物のpHは、1未満から5まで又は例えば1〜3の範囲である。典型的に、このpHは1未満である。
【0019】
1以上のセリウム(IV)イオン源、1以上の銀(I)イオン源及び1以上の源に加えて、組成物には、それらの性能を、個々の誘電体に合わせるための添加物が含有されていてもよい。かかる添加物としては、これらに限定されないが、1以上の界面活性剤、例えば、カチオン性、アニオン性、双性イオン性及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。かかる界面活性剤は、通常の量で使用することができる。典型的に、これらは、0.005g/L〜10g/Lの量で使用される。典型的には、組成物は、1以上のセリウム(IV)イオン源、1以上の銀(I)イオン源及び1以上の水素イオン源からなる。
【0020】
セリウム(IV)及び銀(I)組成物は、誘電体をエッチングするための任意の好適な方法によって、誘電体基体に適用することができる。かかる方法としては、これらに限定されないが、誘電体基体を、セリウム(IV)及び銀(I)組成物を含有する浴中に浸漬すること、組成物を誘電体の上に噴霧すること、又は組成物を誘電体の上に刷毛塗りすることが挙げられる。典型的には、組成物を、誘電体基体と、5分間〜30分間又は例えば10分間〜20分間接触させたままにする。次いで、誘電体を水で洗浄する。
【0021】
コンディショニング及び活性化工程は、金属が誘電体表面との確実な結合を形成得る手段を提供する表面を形成する。かかるコンディショニング及び活性化工程において、セリウム(IV)イオンを含む塩又は錯体の量は、5g/L〜50g/L又は例えば20g/L〜40g/Lの量で使用される。銀(I)イオン源は、上記で開示されたのと同様の量で含有される。かかる組成物は自己触媒作用性である。典型的に、コンディショニングされた表面は、如何なる観察可能な形態的変化も示さない。金属が、コンディショニングされた表面上に堆積されるとき、それは誘電体表面との確実な結合を形成する。剥離強度は、Instron(登録商標)シリーズ4400材料試験器械で測定したとき、1.7g/mm〜175g/mm又は例えば10g/mm〜120g/mm又は例えば20g/mm〜80g/mmの範囲内であり得る。セリウム(IV)及び水素イオンの組合せの表面コンディショニング能力は、作業者及び環境のいずれに対しても危険である望ましくない酸化化合物、例えば、クロム酸に対する必要性を排除する。
【0022】
セリウム及び銀組成物によって誘電体をコンディショニングする前に、場合によっては、誘電体を溶媒膨潤剤により処理してもよい。その後、組成物の1つでコンディショニングする前に誘電体を水で洗浄してもよい。
【0023】
通常の溶媒膨潤剤を使用することができる。商業的に入手可能な溶媒膨潤剤の例は、Conditioner PM−920(商標)(米国マサチューセッツ州マールボロのローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズから入手可能)である。異なる種類の誘電体に対しては、異なる溶媒膨潤剤が使用される。例えば、異なるポリマーは、異なる溶媒の影響を受けやすい。従って、誘電体の処理を最適化するためには、若干の試行錯誤が必要である場合がある。溶媒には、これらに限定されないが、グリコールエーテルエステル、例えば、アセテート、N−アルキルピロリドン、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、アルカリ金属水酸化物、ブチル及びエチルセロソルブ(Cellosolve(登録商標))(2−ブトキシエタノール)、ブチルカルビトール(Carbitol(登録商標))(2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール)並びにエチレングリコールが挙げられる。他の有用な溶媒としては、これらに限定されないが、2−ブトキシエチルアセタート(EBA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol(商標)PM)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(Dowanol(商標)PMA)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
他の溶媒膨潤剤としては、これらに限定されないが、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリドン)、ニトリル(例えば、アセトニトリル)、アミン(例えば、トリエタノールアミン)、ジメチルスルホキシド、プロピレンカルボネート及びγ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンズアルデヒド、ケトン、例えば、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸、二硫化炭素並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
組成物によってコンディショニング及び活性化され得る誘電体には、これらに限定されないが、熱可塑性樹脂、ポリエチレン樹脂、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分枝低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン又は超高分子量ポリエチレン、ポリオレフィン樹脂、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン、ポリブテン樹脂、ポリブチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ハロゲン化樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニリデン−ポリ塩化ビニルポリマー樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン及びテトラフルオロエチレン、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エステル樹脂、例えば、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレンコポリマー樹脂、無水マレイン酸−スチレンコポリマー樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、例えば、プロピオン酸セルロース樹脂及び酢酸セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリエステル樹脂、例えば、PET樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、例えば、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−塩化ビニルコポリマー並びにこれらのコポリマー及び混合物、熱硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、フタル酸ジアリル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂及び尿素樹脂並びにこれらの混合物が包含される。
【0026】
別の実施形態において、セリウム(IV)及び銀(I)組成物は、誘電体をエッチングし及び自己触媒化するために使用することができる。かかる誘電体は前記の通りである。エッチングを行うとき、セリウム(IV)イオンを含有する塩又は錯体を、溶液中のセリウムイオンが、50g/L〜500g/L又は例えば60g/L〜400g/L又は例えば80g/L〜300g/L又は例えば100g/L〜200g/Lの範囲であるような量で添加する。
【0027】
場合によっては、エッチングに続いて、金属堆積に使用される通常の触媒プリディップ、及び通常の触媒による誘電体の更なる活性化を行ってもよい。任意の好適な通常の触媒プリディップ及び通常の触媒を使用することができる。かかる触媒プリディップ及び触媒は、当該技術分野でよく知られており、且つ文献に基づいて容易に得ることができる。使用することができる通常の触媒プリディップの一つは、マサチューセッツ州マールボロのローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ、L.L.C.から入手可能なCataprep(商標)404である。通常のパラジウム触媒の一例は、様々の程度のコロイド形でパラジウム金属を含有する懸濁液である。これは、塩化パラジウムを酸性溶液中で塩化第一スズによって還元することにより調製することができる。還元されたパラジウムが凝集するのを防止するために、塩酸が存在する。典型的に、塩化パラジウムを、塩酸及び蒸留水の1:1溶液中に溶解させ、次いで攪拌しながら、塩化パラジウムの10倍重量の量で塩化第一スズを添加して、パラジウムに還元する。これらの代わりに、セリウム(IV)及び銀(I)組成物が、触媒として機能することができる。
【0028】
次いで、通常の促進剤を添加することができる。かかる促進剤は当該技術分野でよく知られており、且つ文献に基づいて容易に得ることができる。通常の促進剤の一例は、塩酸又は過塩素酸の弱酸性溶液である。
【0029】
誘電体をコンディショニングし且つ活性化した後、金属を、誘電体の表面上に無電解で堆積させる。無電解又は浸漬堆積によって堆積させることができる任意の金属を、コンディショニングされた誘電体表面上にめっきすることができる。かかる金属としては、これらに限定されないが、銅、ニッケル、スズ、金、銀、及びエッチングされた誘電体の上に堆積させることができる各金属の合金が挙げられる。めっきすることができる合金の例は、銅/スズ、銅/金、銅/銀/金、ニッケル/リン及びスズ/鉛である。
【0030】
誘電体の上に金属及び金属合金を堆積させるために、通常の無電解浴を使用することができる。該浴は、文献中の説明に基づいて製造することができるか又は商業的に入手することができる。商業的に入手可能な無電解浴の例は、C3000(商標)無電解銅およびCircuposit(商標)71浴である。浴は、ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズから入手可能である。
【0031】
無電解浴は、任意の好適な方法によって、コンディショニングおよび活性化した誘電体に適用することができる。通常の無電解金属堆積方法を使用することができる。典型的に、誘電体を浴の中に浸漬するか又は表面の上に噴霧する。めっき回数は様々であり得る。めっき回数は、所望する金属層の厚さに依存する。厚さは、0.5ミクロン〜50ミクロン又は例えば5ミクロン〜30ミクロン又は例えば10ミクロン〜20ミクロンの範囲であってよい。金属又は金属合金堆積物は導電性であり、且つふくれがない。ふくれは、堆積した金属フィルムが基体から分離して接着不良になっている、めっきされた誘電体上の領域である。
【0032】
無電解金属堆積の後で、金属層を、任意に酸洗浄液によって処理することができる。典型的に、酸洗浄液は、1以上の無機酸の希薄溶液である。かかる酸としては、これらに限定されないが、硫酸、硝酸、塩酸、フッ化水素酸又はリン酸が挙げられる。酸洗浄は、室温で行うことができる。
【0033】
場合によっては、無電解金属層を、1以上の電解金属層でめっきすることができる。通常の電解金属浴並びに通常の堆積条件を用いることができる。無電解金属化した誘電体の上に堆積させることができる金属には、これらに限定されないが、銅、クロム、ニッケル、スズ、金、銀、コバルト、インジウム及びビスマスが包含される。電解的に堆積させることができる金属合金には、これらに限定されないが、銅/スズ、銅/金/銀、銅/ビスマス、銅/スズ/ビスマス、銅/ニッケル/金、ニッケル/リン、ニッケル/コバルト/リン、スズ/ビスマス、スズ/銀、及び金/銀が包含される。電解金属堆積のための電解浴は、文献において知られており、又は多くは、商業的に入手可能である。
【0034】
電気めっきにおいて、無電解的に金属化した誘電体は、カソードとして機能する。第二電極として、可溶性又は不溶性アノードが使用される。通常のパルスめっき若しくは直流(DC)めっき、又はDCめっきとパルスめっきとの組合せを使用することができる。電流密度及び電極電位は、堆積される金属又は合金に依存して変化し得る。一般的に、電流密度は0.05ASD〜100ASDの範囲である。典型的に、電流密度は1ASD〜50ASDの範囲である。めっきは、所望の金属厚さが達成されるまで続けられる。一般的に、電解的に堆積された金属層は、1ミクロン〜100ミクロン、又は例えば15ミクロン〜80ミクロン、又は例えば25ミクロン〜50ミクロンの範囲である。
【0035】
セリウム(IV)及び銀(I)組成物並びに方法は、一般的に、例えば、これらに限定されないが、オプトエレクトロニクス構成要素、装飾物品、例えば、家具付属品、宝飾品類、衛生器具及び自動車部品、フレックス電気回路、通信装置、例えば、携帯電話、EMI遮蔽材及びRF遮蔽材並びにコンピュータ部品をはじめとする物品のための誘電体基体を金属化するために使用することができる。
【0036】
下記の実施例は、本発明を更に説明するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0037】
実施例1(比較)
8cm×9cmの寸法を有する、ゼネラル・エレクトリック社から入手したアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)プラーク(plaque)(General Electric Cycolac(商標)MG37EP−BK4500)を、六価クロム処理溶液により70℃で8分間エッチングして、プラークの表面を粗くした。クロム処理溶液は、490g/Lの(9モル%)クロム酸及び295g/Lの(5.5モル%)硫酸及び水から構成されていた。次いで、プラークを脱イオン水で4回洗浄して、クロム酸を除去した。
【0038】
このプラークを、Neutralizer PM(商標)954(米国ペンシルベニア州フィラデルフィアのローム・アンド・ハース・カンパニーから入手可能)の水溶液中に、45℃で更に3分間浸漬して、クロム(VI)をクロム(III)に還元させ、脱イオン水で洗浄した。
【0039】
次いで、このプラークを、ローム・アンド・ハース・カンパニーから入手可能なCuposit Catalyst(商標)44(塩化第一スズ−パラジウム触媒)中に浸漬させて、プラークを無電解金属化のために活性化させた。触媒の温度は45℃であった。このプラークを活性化剤中に2分間浸漬し、次いで脱イオン水で2回洗浄した。
【0040】
次いで、活性化したプラークを、促進剤Accelerator PM(商標)964(ローム・アンド・ハース・カンパニーから入手可能)を含有する浴中に、45℃で2分間浸漬し、続いて脱イオン水で洗浄した。次いで、このプラークに、銅を60℃で無電解めっきした。めっきを20分間実施して、プラークの上に銅の0.5ミクロン厚さの層を形成させた。水性浴の組成を、下記の表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
銅被覆したプラークを、脱イオン水で洗浄し、続いて脱イオン水で噴霧洗浄した。次いで、銅被覆したプラークを、水性酸電解銅浴から銅の1.5mil層で電気めっきした。電流密度は4ASDであった。浴のpHは1未満であった。通常の電気めっき装置を使用した。使用した浴は、下記の表2に開示した配合を有していた。
【0043】
【表2】

【0044】
次いで、このプラークを、通常の対流オーブン内で80℃で1時間ベークした。次いで、剥離強度を、Instron(登録商標)シリーズ4400材料試験器械を使用して試験した。剥離強度は89g/mmであった。
【0045】
下記の表3は、従来の方法を使用してABSプラークの上に金属層を調製し、堆積させるために使用した20工程の概略を示す。
【0046】
【表3】

【0047】
金属めっきのための多数の工程は、高い生産量が望まれる産業においては、非効率的であり、望ましくない。
【0048】
実施例2
8cm×9cmの寸法を有するABSコポリマーを、Crownplate(商標)コンディショナーPM−920(ローム・アンド・ハース・カンパニーから入手可能)中で、室温で1分間処理した。次いで、このプラークを脱イオン水で1分間洗浄した。
【0049】
次いで、このプラークを、5g/Lの硝酸銀、30g/Lの硝酸アンモニウムセリウム(IV)及び600mL/Lの(95%)硝酸を含有する水溶液で、コンディショニングし、活性化させた。コンディショナー−活性化剤組成物のpHは、1未満であった。ABSプラークのコンディショニング及び活性化を、65℃で15分間行った。次いで、このプラークを脱イオン水で2分間洗浄した。
【0050】
コンディショニングおよび活性化したプラークの上に、銅層を、下記の表4中の水性無電解浴を用いて無電解でめっきした。
【0051】
【表4】

【0052】
銅の無電解堆積を70℃で20分間行って、1ミクロンの、プラーク上の銅層を形成させた。次いで、銅めっきしたプラークを、希硫酸で1分間洗浄した。
【0053】
次いで、銅めっきしたプラークを、実施例1における表2に示すような酸銅電解めっき浴から、1.5milの厚さで電気めっきした。
【0054】
次いでこのプラークを、通常の対流オーブン内で80℃で1時間ベークした。次いで、剥離強度を、Instron(登録商標)シリーズ4400材料試験器械を使用して試験した。剥離強度は112g/mmであった。
【0055】
下記の表5は、本発明の方法を使用してABSプラークの上に金属層を調製し、堆積させるために使用した7工程の概略を示す。
【0056】
【表5】

【0057】
本発明の実施例の方法は、実施例1における方法のように、危険で且つ環境的に優しくないクロム酸及び費用の掛かるパラジウム触媒を使用する必要なしに、導電性銅層上に銅が堆積された、導電性銅層を提供した。更に、本発明の方法は、工程の数を20個から僅かに7個まで減少させ、したがって、より効率的な方法を提供した。
【0058】
実施例3
8cm×9cmのABSプラークを、10g/Lの硝酸銀、50g/Lの硝酸アンモニウムセリウム(IV)及び350mL/Lの(95%)硝酸を含有するコンディショナー−活性化剤溶液中に浸漬する。該エッチ剤−活性化剤組成物のpHは、1未満である。ABSプラークのコンディショニング及び活性化を、65℃で20分間行う。次いで、このプラークを脱イオン水で1分間洗浄する。
【0059】
次いでABSプラークを、下記の表6に開示した配合を有する無電解銅浴中に浸漬させる。
【0060】
【表6】

【0061】
無電解銅めっきを70℃で10分間行って、0.5ミクロン厚さの銅の接着層を得る。
【0062】
次いで、銅めっきしたプラークを、下記の表7に開示した配合を有するニッケル電解めっき浴から、1milの厚さにまでニッケルで電解的にめっきする。
【0063】
【表7】

【0064】
ニッケルの電解めっきを、3ASDで、60℃の温度で1時間行う。この一連の方法は、プラークに確実に結合した光沢のある接着した金属堆積物を生じさせると期待される。
【0065】
実施例4
10cm×10cmのポリフェニレンエーテル−ポリスチレンプラークを、N−メチル−2−ピロリドン溶媒膨潤剤で処理する。これを室温で2分間行う。次いで、このプラークを脱イオン水で5分間洗浄する。
【0066】
次いで、このプラークを、40g/Lの硝酸アンモニウムセリウム(IV)、20g/Lのフルオロホウ酸銀及び400mL/Lの(95%)硝酸を含有する水性組成物で、コンディショニングし且つ活性化させる。コンディショニング及び活性化を、65℃で15分間行う。次いで、この試片(coupon)を脱イオン水で5分間洗浄する。
【0067】
次いで、コンディショニングし、且つ活性化したプラークを、下記の表8中の配合を有する無電解銅浴中に浸漬する。
【0068】
【表8】

【0069】
無電解銅めっきを45℃で15分間行って、0.5ミクロンの厚さを有する、プラーク上の銅フィルムを形成させる。次いで、このプラークを、希硫酸洗浄液で2分間洗浄する。
【0070】
次いで、銅めっきしたプラークを、下記の表9中の水性酸スズ電解浴を使用して、スズを電解めっきする。
【0071】
【表9】

【0072】
スズの電解めっきを、30ASDで、55℃の温度で15分間行う。スズ層の厚さは2milである。
【0073】
ふくれは、スズ層上に観察されないと期待され、金属層はプラークに確実に結合されると期待される。
【0074】
実施例5
10cm×15cmの高密度ポリエチレン試片を、プロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowenol(商標)PM)を使用して、1分間処理する。これは室温で行う。次いで、この試片を、脱イオン水で1分間洗浄する。
【0075】
この試片を、40g/Lのセリウムテトラスルフェート、500mL/Lの(95%)硝酸及び10g/Lの硝酸銀を含有する水性組成物で、コンディショニングし且つ活性化させる。該溶液のpHは、1未満である。コンディショニング及び活性化を、70℃の温度で10分間行う。次いで、この試片を脱イオン水で洗浄する。
【0076】
次いでコンディショニングし活性化した試片を、下記の表10中の配合を有する無電解銅浴中に浸漬させる。
【0077】
【表10】

【0078】
無電解銅めっきを65℃で30分間行って、0.75ミクロンの銅フィルムを試片の上に形成させる。次いで、試片を脱イオン水で2分間洗浄する。
【0079】
次いで、銅めっきした試片を、下記の表11中の水性酸スズ−ニッケル合金めっき浴を使用して、スズ−ニッケル合金で電解めっきする。
【0080】
【表11】

【0081】
スズ−ニッケル合金の電解めっきを、2ASDで、50℃の温度で10分間行う。スズ−ニッケル層の厚さは、1ミクロンである。
【0082】
ふくれは、スズ−ニッケル層上に観察されないと期待され、金属層は試片に確実に結合されると期待される。
【0083】
実施例6
水性セリウム(IV)及び銀(I)エッチ組成物を、400mL/Lの硝酸、300g/Lの硝酸セリウムアンモニウム及び10g/Lの硝酸銀から調製する。この組成物を使用して、10cm×15cmの高密度ポリエチレン試片をエッチングして、それを金属化のために調製する。下記の表12に、このセリウム(IV)及び銀(I)組成物を使用する金属化方法の概略を示す。
【0084】
【表12】

【0085】
電気めっき浴は通常のものである。セリウム(IV)及び銀(I)エッチによる誘電体材料のエッチングは、無電解で堆積させた銅層と誘電体材料との間の強い接着結合を可能にすると期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のセリウム(IV)イオン源、1以上の銀(I)イオン源、及び1以上の水素イオン源を含む組成物。
【請求項2】
1以上のセリウム(IV)イオン源が、硝酸アンモニウムセリウム、セリウムテトラスルフェート、硫酸アンモニウムセリウム、酸化セリウム、硫酸セリウム、及び硫酸セリウム四水和物から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
1以上の銀イオン源が、硝酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、過塩素酸銀、フッ化銀、酢酸銀、炭酸銀、酸化銀、硫酸銀及び水酸化銀から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
1以上の水素イオン源が、硫酸、硝酸、塩酸、フッ化水素酸及びリン酸から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
1以上のセリウム(IV)イオン源、1以上の銀(I)イオン源、1以上の水素イオン源及び水からなる組成物。
【請求項6】
a)1以上のセリウム(IV)イオン源、1以上の銀(I)イオン源及び1以上の水素イオン源を含む組成物を提供する工程;
b)誘電体を該組成物と接触させて、該誘電体をコンディショニングし、且つ活性化する工程;並びに
c)該誘電体上に金属を堆積させる工程
を含む方法。
【請求項7】
金属が、銅、ニッケル、スズ、金、銀、コバルト、インジウム、及びビスマスから選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
金属が、銅/スズ、銅/金、銅/ビスマス、銅/スズ/ビスマス、銅/ニッケル/金、ニッケル/リン、ニッケル/コバルト/リン、スズ/ビスマス、スズ/銀、及び金/銀から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
a)1以上のセリウム(IV)イオン源、1以上の銀(I)イオン源、及び1以上の水素イオン源を含む組成物を提供する工程;
b)誘電体を該組成物と接触させて、該誘電体をコンディショニングし且つ活性化する工程;
c)誘電体上に第一金属を無電解で堆積させる工程;並びに
d)第一金属上に第二金属を堆積させる工程
を含む方法。
【請求項10】
a)1以上のセリウム(IV)イオン源、1以上の銀(I)イオン源及び1以上の水素イオン源を含む組成物を提供する工程;
b)誘電体を該組成物と接触させて、該誘電体をエッチングする工程;並びに
c)誘電体上に金属を堆積させる工程
を含む方法。

【公開番号】特開2007−182627(P2007−182627A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−328013(P2006−328013)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】