説明

誘電体膜の製造方法、デカップリングキャパシタの製造方法及びデカップリングキャパシタ

【課題】 誘電体膜の製造方法、デカップリングキャパシタの製造方法及びデカップリングキャパシタに関し、内部端子のピッチを外部端子のピッチより大きくして容量をより大きくすることを可能にする膜強度を有する粒子充填度の高い誘電体膜を得る。
【解決手段】 平均粒径が600nm乃至800nmに分級した第1の母粒子群と、前記第1の母粒子群と同じ組成で且つ平均粒径が150nm乃至200nmに分級した第2の母粒子群と、前記第1の母粒子群と同じ組成で且つ平均粒径が50nm以下の第3の母粒子群とを気体中に浮遊させ、前記浮遊した第1乃至第3の母粒子群をノズルにより成膜基板上に吹き付けて、前記成膜基板上に誘電体膜を成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体膜の製造方法、デカップリングキャパシタの製造方法及びデカップリングキャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・高性能化に向けて、実装技術に関してもさらなる高性能化が求められている。現在、パーソナルコンピュータやサーバなどに搭載されている大規模半導体集積回路装置等の素子に使用されている実装パッケージには、 素子の周りにデカップリングキャパシタなどを配置して電源電圧降下時の電流供給やノイズ除去などを行っている。
【0003】
特に、素子の高速化・低電圧化に伴い、この機能は益々重要視されている。電流供給を高速で処理するためには、 デカップリングキャパシタおよび電源供給系のインピーダンスを低く抑える必要がある。このために、 高容量でインダクタンスの低いキャパシタおよびキャパシタ配線長の低減が求められている。
【0004】
キャパシタの配置位置は、素子直下部がもっとも有効であり、キャパシタ内蔵パッケージが求められている。また、低コスト化にも効果があり、その実現が期待されている。キャパシタとしては、大規模半導体集積回路装置の極近傍に配置して高速・高容量の電流を供給するために、キャパシタは多層・微細・貫通ビア構造であることが望ましい。
【0005】
従来の電子機器においては、パッケージレベルでは、大規模半導体集積回路装置への電源供給のために、一般に、パッケージのグランド層と電源層間に電気的に配置するキャパシタから電流を供給することが行われている。
【0006】
通常はグランド層と電源層間に配置するキャパシタは配線で接続されるために、その配線長分のインダクタンスが加味され、さらに、キャパシタの電源供給端子から大規模半導体集積回路装置の電源端子までの配線分のインダクタが加味される。そのため、電源供給系のインピーダンスが上昇して電源供給能力を低下させる。
【0007】
高速・高容量の電源を大規模半導体集積回路装置に供給していくためには、不要な配線を減らし、大規模半導体集積回路装置の電源端子に直接接続された構造が望ましい。このような要請に応える方法として、セラミックスのグリーンシート工法が知られている。
【0008】
グリーンシート工法においては、電源配線パターン形成済みのグリーンシートと接地配線パターン形成済みのグリーンシートを交互に積層して一体化させたのち、この積層体を焼成することによってキャパシタを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−027044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、グリーンシート工法の場合には、プロセスの制限により、誘電体膜の膜厚は5μm以上が一般的であり、ビア径やビアピッチの微細化に限界があった。また、プロセス温度の制約から内部導体にも比較的抵抗の大きなNi等を使用する必要があり、低インピーダンス化が制限されていた。
【0011】
また、構造としては、大規模半導体集積回路装置側のビアビッチが狭くなるに従い、ビア体積(平面内でのビア面積)が大きくなり、有効電極面積が低下してキャパシタの高容量化が困難になるという問題がある。
【0012】
この様な問題を解決するために、グリーンシート工法による積層キャパシタの表面に、ビルドアップ工法で薄膜キャパシタを付加積層することが考えられる。しかし、ビルドアップ工法の場合には、下部の膜の凹凸の影響や膜応力の問題により、多層化が可能な層数が3層程度に制限され、結果的に高容量化を得ることは困難である。
【0013】
また、エアロゾルデポジッション法等のナノ粒子成膜法を用いて積層キャパシタを形成することも可能ではある。しかし、通常のエアロゾルデポジッション法による誘電膜はナノ粒子の充填度が低いために、膜の強度が低く、内部におけるビア数を多くする必要があり、その結果、キャパシタ電極面積が少なくなるため、高容量化が困難であるという問題がある。なお、充填度を高めるためにナノ粒子の粒径を小さくすると、十分な膜厚を堆積することができないという問題がある。
【0014】
したがって、本発明は、内部端子のピッチを外部端子のピッチより大きくして容量をより大きくすることを可能にする膜強度を有する粒子充填度の高い誘電体膜を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
開示する一観点からは、平均粒径が600nm乃至800nmに分級した第1の母粒子群と、前記第1の母粒子群と同じ組成で且つ平均粒径が150nm乃至200nmに分級した第2の母粒子群と、前記第1の母粒子群と同じ組成で且つ平均粒径が50nm以下の第3の母粒子群とを気体中に浮遊させ、前記浮遊した第1乃至第3の母粒子群をノズルにより成膜基板上に吹き付けて、前記成膜基板上に誘電体膜を成膜することを特徴とする誘電体膜の製造方法が提供される。
【0016】
また、開示する別の観点からは、平均粒径が600nm乃至800nmに分級した第1の母粒子群と、前記第1の母粒子群と同じ組成で且つ平均粒径が150nm乃至200nmに分級した第2の母粒子群と、前記第1の母粒子群と同じ組成で且つ平均粒径が50nm以下の第3の母粒子群とを気体中に浮遊させ、前記浮遊した第1乃至第3の母粒子群をノズルにより成膜基板上に吹き付けて、前記成膜基板上に誘電体膜を成膜する工程とを有することを特徴とするデカップリングキャパシタの製造方法が提供される。
【0017】
また、開示するさらに別の観点からは、平均粒径が300nm乃至800nmの大粒径の第1の粒子群と、前記第1の粒子群と同じ組成で且つ平均粒径が50nm乃至200nmの中粒径の第2の粒子群と、前記第1の粒子群と同じ組成で平均粒径が30nm以下の小粒径の第3の粒子群とからなる誘電体膜をキャパシタ誘電体膜とした薄膜キャパシタ要素を多層積層した多層積層構造を有するとともに、表面側に積層した前記薄膜キャパシタ要素のビア径或いはビアピッチの少なくとも一方が、内部側に積層した前記薄膜キャパシタ要素のビア径或いはビアピッチよりも小さいことを特徴とするデカップリングキャパシタが提供される。
【発明の効果】
【0018】
開示の誘電体膜の製造方法、デカップリングキャパシタの製造方法及びデカップリングキャパシタによれば、内部端子のピッチを外部端子のピッチより大きくして容量をより大きくすることを可能にする膜強度を有する粒子充填度の高い誘電体膜を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態の誘電体膜の製造工程の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態の誘電体膜のモデル構造図である。
【図3】本発明の実施の形態の誘電体膜の顕微鏡写真である。
【図4】本発明の実施の形態に用いるナノ粒子成膜装置の概念的構成図である。
【図5】成膜ノズルの頂面図である。
【図6】本発明の実施の形態に用いる分級装置の概念的断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に用いる他の分級装置の概念的断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の誘電体膜の途中までの製造工程の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態の誘電体膜の図8以降の製造工程の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態の多層デカップリングキャパシタとインターポーザの概略的断面図である。
【図11】本発明の多層デカップリングキャパシタを組み込んだインターポーザを用いた実装構造の説明図である。
【図12】各多層デカップリングキャパシタの特性の比較図である。
【図13】比較例1の多層デカップリングキャパシタの概略的断面図である。
【図14】比較例2の多層デカップリングキャパシタの概略的断面図である。
【図15】比較例4の多層デカップリングキャパシタの概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、図1乃至図11を参照して、本発明の実施の形態の誘電体膜及びその製造工程を説明する。図1(a)に示すように、平均粒径が600nm乃至800nmに分級した大粒子1と、大粒子1と同じ組成で且つ平均粒径が150nm乃至200nmに分級した中粒子2と、大粒子1と同じ組成で且つ平均粒径が50nm以下の小粒子3を準備する。
【0021】
次いで、図1(b)に示すように、この大粒子1、中粒子2及び小粒子3を気体中に浮遊させてエアロゾル化したのち、エアロゾル4をノズル5により成膜基板6上に吹き付けるナノ粒子成膜法によって、成膜基板6上に誘電体膜7を成膜する。このとき、各粒子は一部が若干破砕されて、多少小径の粒子になる。
【0022】
図2(a)は、誘電体膜7の粒子構造を示すモデル構造図であり、大粒子1の作る隙間に中粒子2が入り込み、また、中粒子2の作る隙間に小粒子3が入り込んで充填度の高い緻密な構造になっている。
【0023】
即ち、大粒子1の粒径をR、中粒子2の粒径をR、小粒子3の粒径2をRとすると、
(21/2−1)R=R
であれば、大粒子1による最密充填構造の空間が中粒子2によって効率的に充填される。また、小粒子3の粒径RがMより十分小さければ、大粒子1と中粒子2との間の間隙を効率的に充填することができる。因みに、大粒子1の粒径Rが500nmであれば、中粒子2の粒径Rは100nm程度になり、小粒子3の粒径Rは10nm以下であれば良い。
【0024】
図2(b)は、比較のために単一の平均粒子径の粒子を用いたナノ粒子成膜法により成膜した誘電体膜の粒子構造を示すモデル構造図である。図に示すように、単一の平均粒子径の粒子8による最密充填構造に近い構造を示すが、粒子間には隙間ができるので粒子充填度が低く、膜強度が弱くなる。
【0025】
図3は、本発明の実施の形態の誘電体膜の顕微鏡写真であり、平均粒径が500nm程度の大粒子1と平均粒径が100nm程度の中粒子2と、平均粒径が10nm程度の小粒子3が緻密に組み込んだ構造を示している。
【0026】
図4は、本発明の実施の形態に用いるナノ粒子成膜装置の概念的構成図であり、成膜基板6を保持する基板保持部材12と、成膜ノズル13とを備えた成膜室11を有する。成膜室11には、エアロゾル用配管14を介してエアロゾル状態のナノ粒子を供給するエアロゾル発生器15と、エアロゾル発生器15にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段16とが接続され。また、成膜室11には真空ポンプ17が接続されており、エアロゾル発生器15にも配管18を介して接続されている。また、エアロゾル発生器15には超音波振動器19が設けられている。
【0027】
キャリアガス供給手段16は、酸素ガスタンク20と、酸素ガスタンク20とエアロゾル発生器15とを結ぶ配管21と、配管21の途中に設けられた流量計(MFC)22と、窒素ガスタンク23と、窒素ガスタンク23とエアロゾル発生器15とを結ぶ配管24と、配管24の途中に設けられた流量計25とからなる。また、基板保持部材12には支柱26を介してXYZθステージ27が設けられており、成膜基板6を移動させながら成膜を行う。
【0028】
図5は、成膜ノズル13の頂面図であり、先端部に例えば、10mm×0.5mmのスリット状の開口28が設けられており、この開口から分級されたナノ粒子を含んだエアロゾル29が噴射される。なお、成膜ノズル13に接続されている配管径は直径10mmであり、内部では断面積がスリット開口寸法に連続的に変化している。
【0029】
次に、本発明の実施の形態に用いる分級装置の一例を説明する。図6は、本発明の実施の形態に用いる分級装置の概念的断面図であり、例えば、外平面積が20cm×20cmで、高さが30cmの分級室31、分級室31の内部に設けられた衝撃板32、分級室31にエアロゾルを流入させる直径が8cmで長さが50cmの流入管33、分級室31からエアロゾルを流出させる直径が12cmから8cmにテーパ状に変化する長さが50cmの流出管34、流入管33と直径が1cmのエアロゾル導入部36とを接続するテーパ部35、流出管34と直径が1cmのエアロゾル取出部38とを接続するテーパ部37を有する。なお、分級室31のコーナ部には丸みを持たせる或いは截頭状とすることによって角のない形状として角部にナノ粒子39が滞留することを防止する。
【0030】
衝撃板32は、右下に模式的に横断面図を示したように、例えば、幅が10mm、高さが8cm、厚さが5mmのステンレス片からなり、ナノ粒子39の粒子進行に垂直な方向で例えば15mmのピッチでチドリ状に配列されている。この分級室31にエアロゾル29が入ると、キャリアガスの流量及び流速を制御することによって、600nm〜800nm以上の粒径のナノ粒子は容器下部の粒子回収部40に堆積する。衝撃板32に当たって破砕されて粒径が600nm〜800nm以下となったナノ粒子は、分級室31から排出して回収する。
【0031】
次いで、回収した600nm〜800nm以上の粒径のナノ粒子は、再び、衝撃板32を有さない分級室31に導入して分級する。平均粒径が600nmのナノ粒子を分級する場合には、キャリアガスの流量及び流速を制御することによって、600nmを超える粒径のナノ粒子を容器下部の粒子回収部40に堆積させる。一方、平均粒径が600nmのナノ粒子のみを分級室31から排出して回収することによって平均粒径が600nmに分級された大粒子1が得られる。なお、平均粒径が800nmのナノ粒子を分級する場合には、キャリアガスの流量及び流速をより大きくする。
【0032】
また、回収した600nm〜800nm以下の粒径のナノ粒子は、再び、衝撃板32を備えた分級室31に導入して、キャリアガスの流量及び流速を制御することによって、150nm〜200nm以上の粒径のナノ粒子は容器下部の粒子回収部40に堆積する。衝撃板32に当たって破砕されて粒径が150nm〜200nm以下となったナノ粒子は、分級室31から排出される。
【0033】
次いで、回収した150nm〜200nm以上の粒径のナノ粒子は、再び、衝撃板32を有さない分級室31に導入して分級する。平均粒径が150nmのナノ粒子を分級する場合には、キャリアガスの流量及び流速を制御することによって、150nmを超える粒径のナノ粒子を容器下部の粒子回収部40に堆積させる。一方、平均粒径が150nmのナノ粒子のみを分級室31から排出して回収することによって平均粒径が150nmに分級された中粒子2が得られる。なお、平均粒径が200nmのナノ粒子を分級する場合には、キャリアガスの流量及び流速をより大きくする。
【0034】
また、回収した150nm〜200nm以下の粒径のナノ粒子は、再び、衝撃板32を備えた分級室31に導入して、キャリアガスの流量及び流速を制御することによって、50nm以上の粒径のナノ粒子は容器下部の粒子回収部40に堆積する。衝撃板32に当たって破砕されて粒径が50nm以下となったナノ粒子は、分級室31から排出され、小粒子3として回収される。
【0035】
このように、複数の分級工程を繰り返すことによって、平均粒径が600nm乃至800nmに分級された大粒子1と、平均粒径が150nm乃至200nmに分級された中粒子2と、平均粒径が50nm以下に分級された小粒子3が得られる。
【0036】
図7は、本発明の実施の形態に用いる他の分級装置の概念的断面図であり、例えば、外平面積が20cm×20cmで、高さが50cmの分級室31に直径が8cmで長さが50cmの流入管33を設けるとともに、同じ側面に直径が12cmから8cmにテーパ状に変化する長さが50cmの流出管34を設ける。なお、流入管33及び流出管34はテーパ部35,37を介してエアロゾル導入部36及びエアロゾル取出部38とそれぞれ接続している。
【0037】
分級室31の流入管33及び流出管34を設けた側面と反対の内側面は弧状に成形されており、この弧状部41が衝撃部材になるとともに、ナノ粒子を含むエアロゾル29を底面方向に方向転換させる。この場合も、相対的に大粒径のナノ粒子は粒子回収部40で回収され、相対的に小粒径のナノ粒子はエアロゾル取出部38から排出される。また、分級する粒子の平均粒径はエアロゾル中のキャリアガスの流量及び流速に依存する。
【0038】
この様な分級した3種類のナノ粒子群により多層構造デカップリングキャパシタを形成する場合には、図8(a)に示すように、銅箔51上に3種類のサイズの粒子を用いたナノ粒子成膜法により、誘電体膜52を成膜し、次いで、図8(b)に示すように、フォトリソプロセス工法などでビアホール53を形成する。次いで、図8(c)に示すように、スパッタ法或いはめっき法等を用いてビアホール53を銅、金或いは銀で埋め込んでビア54を形成して下層の薄膜キャパシタ要素50を形成する。
【0039】
次いで、図8(d)に示すように、銅箔61(61)上に3種類のサイズの粒子を用いたナノ粒子成膜法により、誘電体膜62(62)を成膜したのち、フォトリソプロセス工法などでビアホール63(63)を形成する。次いで、図8(e)に示すように、スパッタ法或いはめっき法等を用いてビアホール63(63)を銅、金或いは銀で埋め込んでビア64(64)を形成する。
【0040】
次いで、図8(f)に示すように、めっき法或いはスパッタ法によって、銅、金或いは銀からなる導体層を成膜する。次いで、導体層を所定のパターンにエッチングすることによってキャパシタ電極65或いは65を形成して電源用薄膜キャパシタ片面要素60或いは接地用薄膜キャパシタ片面要素60とする。
【0041】
次いで、図9(g)に示すように、薄膜キャパシタ要素50上に、電源用薄膜キャパシタ片面要素60或いは接地用薄膜キャパシタ片面要素60をビア同士が対向するように位置合わせして加熱処理を行う。ここでは、電源用薄膜キャパシタ片面要素60を積層する。次いで、図9(h)に示すように、電源用薄膜キャパシタ片面要素60の銅箔61をエッチングで除去する。
【0042】
次いで、図9(i)に示すように、電源用薄膜キャパシタ片面要素60上に接地用薄膜キャパシタ片面要素60をビア同士が対向するように位置合わせして加熱処理を行う。次いで、図9(j)に示すように、接地用薄膜キャパシタ片面要素60の銅箔61をエッチングで除去する。
【0043】
以降は、電源用薄膜キャパシタ片面要素60の積層と接地用薄膜キャパシタ片面要素60の積層を交互に必要回数繰り返すことによって多層構造デカップリングキャパシタの基本構造が完成する。
【0044】
図10(a)は、本発明の実施の形態の多層デカップリングキャパシタの概略的断面図であり、表面側のビアピッチより内部側のビアピッチの大きな構造となる。これは、本発明の実施の形態の誘電体膜が、3種類のサイズの粒子を用いたナノ粒子成膜法を用いて成膜しているので、充填率の高い緻密な膜となり、その結果、膜強度が大きくなるため、膜の強度を補うためのビアの数を少なくできるためである。ビアの数が少なくなることで、キャパシタ電極の専有面積の比率を高めることができ、容量を従来より大きくすることができる。
【0045】
なお、図10(b)は、本発明の多層デカップリングキャパシタを組み込んだインターポーザであり、多層デカップリングキャパシタとともに多層膜を貫通する信号用ビア66を設けている。
【0046】
図11は、本発明の多層デカップリングキャパシタを組み込んだインターポーザを用いた実装構造の説明図であり、実装基板71上にインターポーザ72を介して半導体集積回路装置73を実装する。
【0047】
このように、本発明の誘電体膜をキャパシタ誘電体膜として用いたデカップリングキャパシタは、支持体を用いずに積層していくため、表面の凹凸や膜応力などの影響を受けないため、多層化が容易である。
【0048】
また、従来のナノ粒子膜に比べて膜強度が2倍程度高いため内部のビアピッチを大きくすることができ、この点からも高容量化が実現でき、焼結セラミックスキャパシタ・薄膜キャパシタより良好な特性が得られる。
【0049】
例えば、従来の焼結セラミックスキャパシタと比較して、表面ビア径、ビアピッチは、100μm,350μm →50μm,150μm
へ微細化が可能である。また、リーク電流密度も
10−3A/cm → 10−7A/cm
へ改善することができる。また、積層数も10層以上100層程度まで積層が可能である。
【実施例1】
【0050】
以上を前提として、次に、本発明の実施例1の多層デカップリングキャパシタを説明する。なお、製造工程は図8乃至図9と同じであるので、図示は省略する。まず、平均粒径が700nmのチタン酸バリウム粉末をエアロゾル発生容器に入れ、 容器全体に超音波を加え、150℃で加熱しながら、30分真空脱気して、 粉末表面に形成した水分を除去する。同じ工程を、平均粒径が150nmのチタン酸バリウム粉末及び平均粒径が20nmのチタン酸バリウム粉末に対しても行う。
【0051】
次いで、前処理を施した各原料粉末をエアロゾル発生器に入れ、 高純度酸素ガス(ガス圧:2kg/cm、ガス流量:4L/分) を導入し、原料をエアロゾル化し、このエアロゾルを配管を通して、製膜室のノズルに送り込む。ノズルは、内側形状が搬送用配管(断面積:円10mmφ)からスリット状(10mm×0.5mm)に連続して変形し、排出口側にスリット部が45mm形成されたものを使用した。
【0052】
製膜室は、予め真空に引いて製膜室の圧力を10Pa以下にする。製膜室に形成したエアロゾルを管を介して供給し、ノズルから銅箔に向けて2分間噴射を行った。この時の製膜室中の圧力は200Paと一定であった。銅箔上に形成された誘電体膜の膜厚は、2μmであり、この時の成膜速度は1±0.5μm/分であった。
【0053】
この誘電体膜に対してレジスト形成し、露光、パターニングし、ふっ硝酸で誘電体膜を選択的にエッチングしてビアホールを形成する。次いで、銅箔をシード層として銅をめっき成長させてビア導体を形成する。次いで、窒素雰囲中において1000℃で30分間熱処理を行い、この層を多層構造の最下層とする。
【0054】
次に、最下層と同様に、銅箔上に形成されたチタン酸バリウムからなる誘電体膜にレジスト形成し、露光、パターニングし、ふっ硝酸で誘電体膜を選択的にエッチングしビア孔を形成する。次いで、銅箔をシード層として、銅をめっき成長させてビア導体を形成する。次いで、その上にさらに、銅スパッタ膜を形成したのち、レジスト形成し、露光、パターニングし、銅を選択的にエッチングしてキャパシタ電極となる銅パターンを形成して第2層目とする。
【0055】
次いで、第2層目を最下層の箔に対して位置合わせし、 圧力をかけながら窒素雰囲気1000℃で、30分間熱処理を行う。次いで、第2層目に形成されている銅箔はすべてエッチングで除去する。これを、電源用と接地用とについて交互に積層して多層キャパシタを作製する。
【0056】
次いで、多層キャパシタの容量、内部電極寸法、インダクタンス、キャパシタ構造(スルービア構造の有無)及び信頼性を評価した。図12は、評価結果を纏めた図であり、比較例1乃至比較例4を参考のために示している。
【0057】
比較例1は、従来のグリーンシート工法による多層デカップリングキャパシタであり、図13に示す断面構造となる。ここでは、チタン酸バリウムグリーンシートにビア孔を形成し、Niペーストを充填し、Niペーストをスクリーン印刷法により印刷して所定パターンを形成し、パターン形成済みの電源用グリーンシート及び接地用グリーンシートを作製する。
【0058】
これらの電源用グリーンシートと接地用グリーンシートを交互に位置合わせして積層し、 一体化させたのち、この積層体の焼成を1350℃で30分間行った。その後、多層キャパシタの容量、内部電極寸法、インダクタンス、キャパシタ構造(スルービア構造の有無)、信頼性を評価し、結果を図12に示している。
【0059】
比較例2は、比較例1の多層デカップリングキャパシタの表面側に薄膜キャパシタをビルドアップ工法で形成したもので、図14に示す断面構造となる。ここで、比較例1のグリーンシート工法によるキャパシタの表面にチタン酸バリウム組成に調整したアルコキシド液をディップコーティングもしくはスピンコーティングを行ってゾルゲル膜を形成する。
【0060】
次いで、ゾルゲル膜の液体成分の乾燥およびアニールを600℃で30分間行った後、Ptによるビア孔形成、ビア充填を行うとともに、スパッタによりPt電極パターンを形成して薄膜キャパシタを作製する。この工程を繰り返すことによって多層構造を形成する。但し、ビルドアップ工法であるため、表面の凹凸や膜応力の影響を受けて誘電体層を3層とするのが限界であった。
【0061】
また、この場合、酸素アニール或いは大気アニールなど、酸素を含んだ雰囲気でのアニールが必須であるため、内部電極材料はPtを用いた。次いで、多層キャパシタの容量、内部電極寸法、インダクタンス、キャパシタ構造(スルービア構造の有無)、信頼性を評価し、結果を図12に示している。
【0062】
比較例3は、比較例2の薄膜キャパシタをスパッタ法により形成したものであり、断面構造は比較例2と同様である。ここでは、比較例1のグリーンシート工法による多層デカップリングキャパシタの表面に、チタン酸バリウム組成に調整したターゲットを用いたスパッタにより、スパッタ膜を形成する。
【0063】
このスパッタ膜の結晶化のためのアニールを600℃で30分間行って膜の外観を観察するとともに、誘電特性、リーク特性を評価した。次いで、作製した多層キャパシタの容量、内部電極寸法、インダクタンス、キャパシタ構造(スルービア構造の有無)、信頼性を評価し、結果を図12に示している。
【0064】
比較例4は、単一のサイズのナノ粒子を用いたナノ粒子成膜法により形成したものであり、単一サイズのナノ粒子として平均粒径が500nmのチタン酸バリウム粒子を用いた以外は、本発明の実施例1のプロセスと全く同様である。図15は、比較例4の断面図であり、本発明の実施例1に比べて内部のビアピッチが狭くなっている。
【0065】
これは、比較例4のように、単一のサイズのナノ粒子を用いた場合には、上記の図2(b)に示したように、誘電膜の膜強度が弱いために、強度を高めるためにビアを密に形成する必要があるためである。
【0066】
図12に示したように、本発明の実施例1と比較例1乃至比較例4を対比すると、各比較例に比べて内部のビアの密度を少なくすることができるので、容量を大きくすることが可能である。また、比較例1乃至比較例3に比べると、誘電体膜の膜厚を薄くすることができるので、この点からも大容量化が可能になる。因みに、比較例1と比べると2倍の容量となり、比較例4と比べると1.25倍の容量となる。
【0067】
なお、上記の実施例1の説明においては、ビアを形成したのち加熱処理を行っているが、銅箔上にチタン酸バリウム層を形成・成膜した後、 窒素雰囲気で1000℃で30分間熱処理したのち、ビアの形成を行っても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 大粒子
2 中粒子
3 小粒子
4 エアロゾル
5 ノズル
6 成膜基板
7 誘電体膜
8 粒子
11 成膜室
12 基板保持部材
13 成膜ノズル
14 エアロゾル用配管
15 エアロゾル発生器
16 キャリアガス供給手段
17 真空ポンプ
18 配管
19 超音波振動器
20 酸素ガスタンク
21 配管
22 流量計
23 窒素ガスタンク
24 配管
25 流量計
26 支柱
27 XYZθステージ
28 開口
29 エアロゾル
30 分級装置
31 分級室
32 衝撃板
33 流入管
34 流出管
35 テーパ部
36 エアロゾル導入部
37 テーパ部
38 エアロゾル取出部
39 ナノ粒子
40 粒子回収部
41 弧状部
50 薄膜キャパシタ要素
51 銅箔
52 誘電体膜
53 ビアホール
54 ビア
60 電源用薄膜キャパシタ片面要素
60 接地用薄膜キャパシタ片面要素
61,61 銅箔
62,62 誘電体膜
63,63 ビアホール
64,64 ビア
65,65 キャパシタ電極
66 信号用ビア
71 実装基板
72 インターポーザ
73 半導体集積回路装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が600nm乃至800nmに分級した第1の母粒子群と、
前記第1の母粒子群と同じ組成で且つ平均粒径が150nm乃至200nmに分級した第2の母粒子群と、
前記第1の母粒子群と同じ組成で且つ平均粒径が50nm以下の第3の母粒子群と
を気体中に浮遊させ、
前記浮遊した第1乃至第3の母粒子群をノズルにより成膜基板上に吹き付けて、前記成膜基板上に誘電体膜を成膜することを特徴とする誘電体膜の製造方法。
【請求項2】
平均粒径が600nm乃至800nmに分級した第1の母粒子群と、
前記第1の母粒子群と同じ組成で且つ平均粒径が150nm乃至200nmに分級した第2の母粒子群と、
前記第1の母粒子群と同じ組成で且つ平均粒径が50nm以下の第3の母粒子群と
を気体中に浮遊させ、
前記浮遊した第1乃至第3の母粒子群をノズルにより銅箔上に吹き付けて、前記銅箔上に誘電体膜を成膜する工程と
を有することを特徴とするデカップリングキャパシタの製造方法。
【請求項3】
前記銅箔上に誘電体膜を成膜する工程ののちに、
前記誘電体膜にビアホールを形成した工程と、
前記ビアホールを導電体で埋め込んでビアを形成する工程と
を含む下層の薄膜キャパシタ要素を形成する第1の工程と、
前記銅箔上に誘電体膜を成膜する工程ののちに、
前記誘電体膜にビアホールを形成する工程と、
前記ビアホールを導電体で埋め込んでビアを形成する工程と、
前記ビアに接続するキャパシタ電極を形成する工程と
を含む電源用薄膜キャパシタ片面要素或いは接地用薄膜キャパシタ片面要素を形成する第2の工程と、
前記下層の薄膜キャパシタ要素上に、電源用薄膜キャパシタ片面要素或いは接地用薄膜キャパシタ片面要素の一方を、ビア同士が対向するように積層して、加圧した状態で加熱したのち、電源用薄膜キャパシタ片面要素或いは接地用薄膜キャパシタ片面要素の前記銅箔を除去する工程と
を含む第3の工程と、
前記第3の工程で銅箔を除去した電源用薄膜キャパシタ片面要素或いは接地用薄膜キャパシタ片面要素の一方の上に、電源用薄膜キャパシタ片面要素或いは接地用薄膜キャパシタ片面要素の他方を、ビア同士が対向するように積層して、加圧した状態で加熱したのち、電源用薄膜キャパシタ片面要素或いは接地用薄膜キャパシタ片面要素の他方の前記銅箔を除去する工程と
を含む第4の工程と、
前記電源用薄膜キャパシタ片面要素の積層工程と前記接地用薄膜キャパシタ片面要素の積層工程を交互に複数回繰り返すことを特徴とする請求項2に記載のデカップリングキャパシタの製造方法。
【請求項4】
前記表面側に積層した薄膜キャパシタ要素のビア径は30μm乃至200μmであり、ビアピッチは80μm乃至800μmであることを特徴とする請求項3に記載のデカップリングキャパシタの製造方法。
【請求項5】
前記薄膜キャパシタ要素のキャパシタ電極が、金、銀、銅、もしくは、これらの中の一つの金属を含む材料であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のデカップリングキャパシタの製造方法。
【請求項6】
前記薄膜キャパシタ要素の誘電体膜の膜厚が、0.5μm乃至5μmであることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載のデカップリングキャパシタの製造方法。
【請求項7】
平均粒径が300nm乃至800nmの大粒径の第1の粒子群と、
前記第1の粒子群と同じ組成で且つ平均粒径が50nm乃至200nmの中粒径の第2の粒子群と、
前記第1の粒子群と同じ組成で平均粒径が30nm以下の小粒径の第3の粒子群とからなる誘電体膜をキャパシタ誘電体膜とした薄膜キャパシタ要素を多層積層した多層積層構造を有するとともに、
表面側に積層した前記薄膜キャパシタ要素のビア径或いはビアピッチの少なくとも一方が、内部側に積層した前記薄膜キャパシタ要素のビア径或いはビアピッチよりも小さいことを特徴とするデカップリングキャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−209463(P2012−209463A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74801(P2011−74801)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】