説明

誘電性構造体、誘電性構造体の製造方法、誘電性構造体を用いた放電装置、並びに流体改質装置

【課題】低電圧でプラズマを放電空間に発生させることが可能な誘電性構造体を提供する。
【解決手段】誘電性構造体は、互いに対向する表面を備えた2つの誘電体3と、各誘電体の内部にそれぞれ設けられた導電体4と、表面同士の間の空間Sに設けられた複数の誘電性粒子5とを備える。誘電性粒子5は、対向方向における空間の中央部と2つの誘電体3のうち少なくとも一方との間に設けられ、中央部から誘電体3に向かうにつれて、粒径が小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電性構造体、誘電性構造体の製造方法、誘電性構造体を用いた放電装置、並びに流体改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマは、反応器やランプの技術分野など様々な分野で利用されている。例えば、反応系では、NOx分解装置 / HC分解装置、ダイオキシン分解装置、PFC分解装置、脱臭装置、ウイルス除菌装置、オゾン発生装置、またはマイナスイオン発生装置においてプラズマが利用されている。また、光源系では、例えば、プラズマランプ(蛍光灯、ネオン管など)、エッチング装置用光源、レジスト露光装置用光源、またはプラズマディスプレイにおいてプラズマが利用されている。
【0003】
プラズマを発生させる方法としては、高電圧印加時の放電による方法が知られている(例えば特許文献1参照)。すなわち、気体が存在する放電空間の内部又は放電空間の周囲に配置された電極に電圧を印加して放電空間内で放電を行わせることにより、放電空間内の気体からプラズマを生成する方法が知られている。
【0004】
プラズマの発生は、電極間の絶縁が破壊されることにより発生するため、陽極電極と陰極電極と間の誘電率(電極間の静電容量)は高い方が発生しやすい。しかし、一般的な、工業用途、産業用途、および家庭用機器用途では、放電空間は真空状態か気体が存在する状態であり、誘電率は低い状態であるから、低い印加電圧下ではプラズマが発生しにくい状態にある。
【0005】
そこで、放電空間の誘電率(電極間の静電容量)を高める方法として、放電空間に高誘電率材料の球状体を充填することにより、プラズマの発生開始電圧(閾値電圧)を低減する手法が採られている。
【0006】
この場合の閾値電圧は、球状体の集合体の比表面積が大きい程、低くなることが知られている。
【特許文献1】特開2001−162134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような方法では球状体の集合体の比表面積を大きくするために、球状体を小さくする必要がある。この場合、プラズマの放電空間を実質的に狭くしてしまうことから、流れる流体の圧力損失が大きくなり、流体の改質効率が悪化する。その結果、プラズマを発生させる閾値電圧も高くなり、機器に搭載する発電機、バッテリー、および電圧変換機等の小型化が困難になるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、放電空間にプラズマを発生させるための閾値電圧が低い誘電性構造体、およびその誘電性構造体の製造方法、並びにそのような誘電性構造体を用いた放電装置並びに流体改質装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の誘電性構造体は、互いに対向する表面を備えた2つの誘電体と、前記の各誘電体の内部にそれぞれ設けられた導電体と、前記の表面同士の間の空間に設けられた複数の誘電性粒子とを備え、前記の誘電性粒子は、前記の対向方向における前記の空間の中央部と前記の2つの誘電体のうち少なくとも一方との間に設けられ、前記の中央部から前記の誘電体に向かうにつれて、粒径が小さくなっている。この誘電性構造体を第1誘電性構造体という。
【0010】
好ましくは、前記の第1誘電性構造体において、前記の2つの誘電体は、それぞれ平板状である。この誘電性構造体を第2誘電性構造体という。
【0011】
好ましくは、前記の第2誘電性構造体において、前記の2つの誘電体からなる誘電体対が前記の対向方向に複数配列され、隣接する前記の誘電体の対向する表面同士の間の空間に複数の誘電性粒子がそれぞれ設けられ、前記の誘電性粒子は、前記の各空間において、前記の対向方向における前記の空間の中央部と該空間を挟んで隣接する2つの誘電体のうち少なくとも一方との間に設けられ、前記の中央部から前記の誘電体に向かうにつれて、粒径が小さくなっている。この誘電性構造体を第3誘電性構造体という。
【0012】
好ましくは、前記の第1誘電性構造体において、前記の2つの誘電体のうち一方の前記の誘電体は、内部に空洞を有する筒状の外側誘電体であり、他方の前記の誘電体は、前記の空洞内に設けられる中央誘電体である。この誘電性構造体を第4誘電性構造体という。
【0013】
好ましくは、前記の第4誘電性構造体において、kを2以上の自然数とするとき、前記の外側誘電体は、k個の筒状誘電体からなるk重の筒構造を構成し、前記の導電体は、前記の各筒状誘電体の内部にそれぞれ設けられ、隣接する前記の筒状誘電体の対向する表面同士、および隣接する前記の中央誘電体と前記の筒状誘電体の対向する表面同士の間の各空間に複数の誘電性粒子がそれぞれ設けられ、前記の誘電性粒子は、前記の各空間において、前記の対向方向における前記の各空間の中央部と該空間を挟んで隣接する2つの誘電体のうち少なくとも一方との間に設けられ、前記の中央部から前記の誘電体に向かうにつれて、粒径が小さくなっている。この誘電性構造体を第5誘電性構造体という。
【0014】
好ましくは、前記の第1乃至第5誘電性構造体のいずれかにおいて、前記誘電性粒子は、前記空間内において、前記対向方向に積層された複数の誘電体層が設けられを形成し、前記の複数の誘電体層は、該誘電体層毎に粒径が異なる前記の誘電性粒子を有し、前記の対向方向における前記の空間の中央部から前記の誘電体に向かうにつれて、前記の誘電性粒子の粒径が小さくなっている。この誘電性構造体を第6誘電性構造体という。
【0015】
好ましくは、前記の第1乃至第6誘電性構造体のいずれかにおいて、前記の誘電性粒子は、前記の誘電体よりも誘電率が大きい。この誘電性構造体を第7誘電性構造体という。
【0016】
好ましくは、前記の第1乃至第7誘電性構造体のいずれかにおいて、前記の誘電体と前記の誘電性粒子、および前記の誘電性粒子同士が接合されている。この誘電性構造体を第8誘電性構造体という。
【0017】
好ましくは、前記の第1乃至第8誘電性構造体のいずれかにおいて、前記の誘電体および前記の誘電性粒子の表面に、白金またはその合金からなる触媒を有する。この誘電性構造体を第9誘電性構造体という。この誘電性構造体を第9誘電性構造体という。
【0018】
本発明の誘電性構造体の第1の製造方法は、セラミック粉末および有機バインダーをそれぞれ含み、前記の有機バインダーの重量比がそれぞれ異なる第1乃至第3のセラミックグリーンシートを準備する工程と、前記の有機バインダーの重量比が最も小さい複数の前記の第1セラミックグリーンシートのうち任意の第1セラミックグリーンシート上に導体ペーストを塗布する工程と、複数の前記の第1セラミックグリーンシートを積層して第1積層体を得る工程と、前記の第1積層体上に、前記の有機バインダーの重量比が前記の第1セラミックグリーンシートよりも大きい少なくとも1つの前記の第2セラミックグリーンシートと前記の有機バインダーの重量比が最も大きい少なくとも1つの前記の第3セラミックグリーンシートを順に積層して圧着し、グリーンシート積層体を得る工程と、前記のグリーンシート積層体を焼成して、セラミック積層体を得る工程と、複数のセラミック積層体を、隣接する前記のセラミック積層体の一部の表面同士が対向するように、該表面の対向方向に配列する工程とを有する。
【0019】
本発明の誘電性構造体の第2の製造方法は、セラミック粉末および有機バインダーをそれぞれ含み、前記の有機バインダーの重量比がそれぞれ異なる第1乃至第3のセラミックグリーンシートを準備する工程と、前記の有機バインダーの重量比が最も小さい複数の前記の第1セラミックグリーンシートのうち任意の第1セラミックグリーンシート上に導体ペーストを塗布する工程と、複数の前記の第1セラミックグリーンシートを積層して第1積層体を得る工程と、前記の第1積層体上に、前記の有機バインダーの重量比が前記の第1セラミックグリーンシートよりも大きい少なくとも1つの前記の第2セラミックグリーンシートと前記の有機バインダーの重量比が最も大きい少なくとも1つの前記の第3セラミックグリーンシートを順に積層して圧着し、グリーンシート積層体を得る工程と、前記のグリーンシート積層体を焼成して、セラミック積層体を得る工程と、前記のセラミック積層体と、内部に導電体を有するセラミック焼結体とを、前記のセラミック積層体の焼成前の第3セラミックグリーンシート側における少なくとも一部の表面と、前記のセラミック焼結体の少なくとも一部の表面とが対向するように、該表面の対向方向に配列する工程とを有する。
【0020】
本発明の放電装置は、前記の第1乃至第9誘電性構造体のいずれかと、前記の誘電性構造体の前記の導電体間に交流電圧、直流電圧、またはパルス電圧を印加する電源とを有する。
【0021】
本発明の流体改質装置は、前記の放電装置と、前記の誘電性構造体に流体を供給する流体供給源とを備える。
【0022】
好ましくは、前記の流体改質装置は、少なくとも1つの前記の誘電体の内部に設けられたヒータを備える。
【0023】
好ましくは、前記の流体改質装置は、少なくとも1つの前記の誘電体の内部に設けられた温度センサを備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明の誘電性構造体によれば、放電空間にプラズマを発生させるための閾値電圧が低い誘電性構造体を実現できる。
【0025】
本発明の放電装置によれば、放電空間にプラズマを発生させるための閾値電圧が低い放電装置を実現できる。
【0026】
本発明の誘電性構造体の製造方法によれば、放電空間にプラズマを発生させるための閾値電圧が低い誘電性構造体を製造することができる。
【0027】
本発明の流体改質装置によれば、放電空間にプラズマを発生させるための閾値電圧が低い流体改質装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る誘電性構造体の外観を示す斜視図であり、図2は、図1の断面を示す図である。本実施の形態においては、誘電性構造体をプラズマ発生体1aとして説明する。
【0029】
プラズマ発生体1aは、互いに対向する表面を備えた2つの誘電体3と、各誘電体3の内部にそれぞれ設けられた導電体4と、表面同士の間の空間S(以降、放電空間とも呼ぶ)に設けられた複数の誘電性粒子5とを備え、誘電性粒子5は、対向方向における空間Sの中央部から各誘電体3に向かうにつれて粒径が小さくなっている。複数の誘電性粒子5は、例えば、図2に示すように、誘電体3の表面上に積層された複数の誘電性粒子層6を形成している。
【0030】
誘電体3は、それぞれ平板状であり、その上視形状は、例えば、長方形や機器の取付け部形状に応じた多角形状および円形である。
【0031】
誘電性粒子5は、誘電体3よりも誘電率が大きい。例えば、誘電体3にアルミナ材料を用いる場合は、アルミナの誘電率は8程度なので、誘電性粒子5として、誘電率が8よりも大きなチタン酸バリウム等を用いる。
【0032】
誘電体3と誘電性粒子5、および誘電性粒子5同士は互いに接合されている。それらは、例えば、誘電体3と誘電性粒子5の固相焼結、またはSiO、MgO、およびCaO等の焼結助剤を用いた液相焼結により接合されている。
【0033】
例えば、誘電体3および誘電性粒子5は、その表面に、白金またはその合金からなる触媒7を有する。白金またはその合金は、誘電体3および誘電性粒子5と焼結により接合されている。尚、白金またはその合金からなる触媒7は、誘電性粒子5の表面に蒸着法またはめっき法により形成され得る。また、予め誘電性粒子5の原料に添加しておいてもよい。
【0034】
このように、誘電体3および誘電性粒子5の少なくとも一方が触媒7を有する場合には、誘電体3間を流れる流体をプラズマによって改質する際に、活性化エネルギーを低減させることができる。このため流体の改質効率を向上させることが可能になる。
【0035】
ヒータ8は、誘電体3に埋設されたヒータ用導電路を介してヒータ用端子9に接続されている。従って、ヒータ用端子9に電圧を印加することによりヒータ8の周囲を加熱することができる。ヒータ8は、誘電体3の適宜な位置に、適宜な形状で埋設されている。例えば、ヒータ8は、誘電体3に埋設され、蛇行する、または渦巻状に存在するなどして導電体4に沿う平面に広がっている。
【0036】
温度センサ10は、例えば、抵抗体により構成されている。温度センサ10は、誘電体3に埋設されたセンサ用導電路を介して計測用端子11に接続されている。計測用端子11に電圧を印加し、温度センサ10の温度変化に応じた抵抗値の変化を測定することにより、温度センサ10の周囲の温度を検出することができる。温度センサ10は、誘電体3の適宜な位置、例えば、導電体4と放電空間Sとの間に埋設されている。
【0037】
プラズマ発生体1aの側面には、端子等の部材が露出している。具体的には以下のとおりである。
【0038】
プラズマ発生体1aの側面には内部にそれぞれ設けられた導電体4(図2参照)に電圧を印加するための電極端子12が露出し、電極端子12は、例えば平板状の金属により構成され配置されている。この電極端子12には、導電体4に電圧を印加するための電線4Aが取り付けられている。
【0039】
また、プラズマ発生体1aの側面には、内部に設けられたヒータ8(図2参照)に電力を供給するためのヒータ用端子9が露出し、ヒータ用端子9は、例えば線状の金属により構成され配置されている。なお、ヒータ8は、例えばタングステンや白金である。
【0040】
また、プラズマ発生体1aの側面には、内部に設けられた温度センサ10(図2参照)の起電力や電気信号を誘電体3外部で計測するための計測用端子11が露出し、計測用端子11は、例えば線状の金属により構成され配置されている。なお、温度センサ10は、例えばサーミスタや熱電対である。
【0041】
プラズマ発生体1aは、いわゆるコンデンサ型電極により構成されている。すなわち、導電体4は、概ね平板状に形成され、放電空間Sを挟んで対向配置される。そして、放電空間Sを挟んで対向配置された2つの導電体4の電位差により、その挟まれた放電空間Sにおいて放電が行われ、プラズマが発生する。放電は、例えば、1対の導電体4に比較的周波数の高い交流電圧を印加することにより行われる、いわゆる高周波放電である。印加される交流電圧の周波数は、例えば、10KHz〜100MHzである。導電体4は例えば、タングステンやモリブデン、白金、金、パラジウム、銀、または銅などの金属により構成されている。
【0042】
導電体4は、誘電体3に埋設されている。すなわち、互いに対向する面、その背面及び側面が誘電体3により被覆されており、一般的には誘電体バリア放電と呼ばれている。なお、高周波放電では、一方の導電体4から他方の導電体4に電界方向と逆に向かったプラズマ電子が、他方の導電体4を被覆している誘電体3に衝突する前に、電界の極性が逆転される。すなわち、プラズマ電子が誘電体3の表面を浸食することが抑制される。
【0043】
以上の構成を有するプラズマ発生体1aの誘電体3は、例えば、セラミックグリーンシート等の誘電層(絶縁層)を積層して焼成することにより形成される。すなわち、誘電層の積層体により形成されている。導電体4、温度センサ10、およびヒータ8等の導体は、例えば、焼成前の誘電層に導電ペーストが配置され、積層された誘電層と共に焼成されることにより、誘電体3に埋設、固定されて形成される。
【0044】
以下に、プラズマ発生体1aの製造方法について説明する。まず、有機バインダーの重量比がそれぞれ異なる第1から第4のセラミックグリーンシートを準備する。
【0045】
有機バインダーの重量比が最も小さい複数の第1セラミックグリーンシートの材料は、セラミック粉末および有機バインダーである。セラミック粉末の材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、コージライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、または炭化ケイ素等が挙げられる。また、フィラー成分としては、例えばAl,SiO,またはZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,またはコージライト)等が挙げられる。また有機バインダーとしては、アクリル樹脂やエチルセルロース樹脂等が挙げられる。
【0046】
なお、放電により発生した熱を外部に放熱するという観点からは、熱伝導性の高い窒化ケイ素または窒化アルミニウムを用いるのがよい。また、誘電体3の破損を抑制するという観点からは、高強度の炭化ケイ素を用いるのがよい。
【0047】
具体的には、第1セラミックグリーンシートとして、所望のセラミック粉末,有機バインダー,可塑剤,および有機溶剤等を添加混合して泥漿状となし、これを従来周知のドクターブレード法またはカレンダーロール法によりシート状に成形する。この第1セラミックグリーンシートは、焼成後に誘電体3となる。
【0048】
また、誘電体3は、放電空間Sに露出した表面において、結晶相の面積率がガラス相の面積率よりも高い方がよい。この構成により、放電空間S内で発生したプラズマによって誘電体3がエッチングされることを有効に抑制できる。すなわち、放電空間Sに露出した誘電体3の表面において、非常に結合力の高い共有結合で結合した結晶相の割合を高めることによって、プラズマによるエッチングに対して抵抗力を高めることができる。
【0049】
より好ましくは、誘電体3の放電空間Sに露出した表面において、結晶相の面積率が90〜100%であるのがよい。ここで、結晶相が100%の場合は、単結晶組成であり、結晶相が100%より小さい場合は、隣り合う結晶相同士がその間に介在する非結晶相によって接合された構成である。結晶相の面積率が90%以上であると、放電空間S内で発生したプラズマによる非結晶相のエッチングが抑制され、誘電体3のエッチングに対する抵抗力が大きくなる。
【0050】
この構成により、放電空間Sに露出した表面のプラズマ対する耐久性を向上できるとともに、誘電体3の熱膨張率を低減して熱応力が生じるのを有効に抑制できる。
【0051】
このような結晶相の割合を高めるためには、誘電体3の材料としてアルミナ、ジルコニア、またはコージライトを用い、原料としての焼結助剤などの添加物の含有量および焼成条件を調整することにより、所望のものとすることができる。
【0052】
なお、高熱環境下で使用され、耐熱衝撃性が必要という観点からは、誘電体3は、少なくとも放電空間Sに露出した部位の主成分がコージライトであるのがよい。コージライトは線熱膨張係数が約2ppm/℃程度であり、プラズマ発生時の熱による誘電体3の熱膨張を低減して、熱応力が生じるのを有効に抑制できる。
【0053】
このような結晶相の面積率は、走査型電子顕微鏡(SEM)等による表面状態観察により求めることができる。また、結晶性の判断については、X線回折を用いることにより分析できる。
【0054】
また、有機バインダーの重量比が第1セラミックグリーンシートよりも大きい第2セラミックグリーンシート、有機バインダーの重量比が第2セラミックグリーンシートよりも大きい第3セラミックグリーンシート、及び有機バインダーの重量比が最も大きい第4セラミックグリーンシートの材料は、セラミック粉末、金属酸化物粉末、および有機バインダーである。セラミック粉末の材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、コージライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、または炭化ケイ素等が挙げられる。また、フィラー成分としては、例えばAl,SiO,またはZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,またはコージライト)等が挙げられる。金属酸化物粉末としてはチタン酸バリウム等が挙げられる。また、有機バインダーとしてはアクリル樹脂またはエチルセルロース樹脂等が挙げられる。
【0055】
次に、第2セラミックグリーンシートとして、所望のセラミック粉末、金属酸化物粉末、可塑剤、および有機溶剤等に、有機バインダーを第1セラミックグリーンシートより重量比より大きくなるように添加混合して泥漿状となし、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法によりシート状に成形して所望の有機バインダー重量比のセラミックグリーンシートを得る。
【0056】
また、第3セラミックグリーンシートとして、所望のセラミック粉末、金属酸化物粉末、可塑剤、及び有機溶剤等に、有機バインダーを第2セラミックグリーンシートより重量比より大きくなるように添加混合して泥漿状となし、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法によりシート状に成形して所望の有機バインダー重量比のセラミックグリーンシートを得る。
【0057】
さらに、第4セラミックグリーンシートとして、所望のセラミック粉末、金属酸化物粉末、可塑剤、及び有機溶剤等に、有機バインダーを第2セラミックグリーンシートより重量比より大きくなるように添加混合して泥漿状となし、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法によりシート状に成形して所望の有機バインダー重量比のセラミックグリーンシートを得る。
【0058】
次に、必要に応じて第1セラミックグリーンシート上に、焼成後、例えば導電体4、温度センサ10、またはヒータ8等となる導体ペーストを塗布する。導体ペーストの塗布は、例えばスクリーン印刷法またはインクジェット印刷法にて行われる。そして、複数の第1セラミックグリーンシートを積層して第1セラミックグリーンシートの積層体を得る。ここで、第1セラミックグリーンシートの圧着は、例えば、熱圧着法または加圧圧着法にて行われる。好適には、第1セラミックグリーンシートを40から150℃に加熱し、10から200kg/cmに加圧して行われる。
【0059】
次に、誘電体3となる第1セラミックグリーンシートの積層体上に、有機バインダーの重量比が第1セラミックグリーンシートよりも大きい少なくとも1つの第2セラミックグリーンシートと有機バインダーの重量比が第2セラミックグリーンシートよりも大きい少なくとも1つの第3セラミックグリーンシートと有機バインダーの重量比が最も大きい少なくとも1つの第4セラミックグリーンシートを順に積層して圧着し、第1から第4のセラミックグリーンシートの積層体を得る。セラミックグリーンシートの圧着は、例えば、熱圧着法や加圧圧着法にて行われる。好適には、セラミックグリーンシートを40から150℃に加熱し、10から200kg/cmに加圧して行われる。
【0060】
次に、第1から第4のセラミックグリーンシートの積層体を焼成する。焼成は、例えば800から1600℃に加熱することで行われる。この焼成の過程においてセラミックグリーンシートに含まれている有機バインダーが熱により炭化を経て気化し、セラミック粉末、および金属酸化物粉末のみからなる仮焼構造体となる。
これにより、有機バインダーの重量比が大きいセラミックグリーンシート程、焼成過程における仮焼構造体の気孔比率が大きくなり、仮焼構造体におけるセラミック粉体どうしの焼結が促進され、誘電性粒子は成長していく。本発明における実施例では、誘電体3となる第1セラミックグリーンシート、誘電性粒子層6となる第2セラミックグリーンシート、および第4セラミックグリーンシートの順に誘電性粒子の大きさが大きく形成される。
【0061】
この焼結過程において、誘電体3となる第1セラミックグリーンシート、誘電性粒子層6となる第2乃至第4のセラミックグリーンシートが互いに焼結し接合されることにより、誘電体3と誘電性粒子層6は焼結し接合される。
【0062】
さらに、第1乃至第4のセラミックグリーンシートを焼結して得られるセラミック積層体を2つ準備し、それらのセラミック積層体を、隣接するセラミック積層体の焼成前の第4セラミックグリーンシート側における一部の表面同士が対向するように、該表面の対向方向に配列する。その結果、プラズマ発生体1aを得ることができる。
【0063】
なお、誘電体3と誘電体粒子層6は、気孔比率が異なり、気体の通過しやすさが異なる。誘電体3と誘電性粒子層6とは、プラズマ発生体1aの一部を切り出して電子走査型顕微鏡(SEM)によって観察することにより容易に区別できる。
【0064】
また、誘電体3と誘電性粒子層6は吸水率を測定することで区別することも可能である。吸水率の測定は、例えば、日本工業規格(JIS)法によるものが挙げられる。この方法では、まず、プラズマ発生体1aの一部(以下、「測定試料」という。)を切り出して、水に入れて加圧し、その後測定試料の重量(以下、第1の重量Aという。)を測定する。次に、測定試料をオーブンで完全乾燥させ、その乾燥した測定試料の重量(以下、第2の重量Bという。)を測定する。そして、第1の重量と第2の重量の差から吸水率を求める((B−A) ÷ A ×100 )。プラズマ発生体1aでは、誘電体3の吸水率は3%未満であり、誘電性粒子層6の吸水率は3%以上である。吸水率が高いことは、気孔比率が高く、気孔同士が連続してつながっていることを示す。このように、吸水率が高い場合には、気孔同士がつながっており、気体が通過する際の圧力損失が小さいことを表すことから、吸水率を測定することにより、誘電体3と誘電性粒子6とを区別することができる。
【0065】
上述の製造方法によれば、誘電体3と誘電性粒子5、および誘電性粒子5同士が接合されているので、粒径の小さな粒子と中程度の粒子、及び大きな粒子が、振動等で所定の位置から動くことがなく、また導電体4を内蔵した誘電体3の表面には常に粒径の小さな誘電性粒5が配置される。よって、プラズマ発生体1aを長期間使用してもプラズマの発生電圧に変化やばらつきを生じることなく安定したプラズマ発生状態を得ることができる。
【0066】
なお、上述の説明では、誘電体3と3層の誘電性粒子5からなる誘電性粒子層6の構造について記載したが、誘電性粒子層6は、2層でもよく、また4層、5層、それ以上の層数であってもよい。
【0067】
本実施形態によるプラズマ発生体1aによれば、互いに対向する表面を備えた2つの誘電体3と、各誘電体3の内部にそれぞれ設けられた導電体4と、表面同士の間の空間Sに設けられた複数の誘電性粒子5とを備え、誘電性粒子5は、対向方向における空間Sの中央部から各誘電体3に向かうにつれて、粒径が小さくなっている。この構成によれば、プラズマ放電空間Sに誘電性粒子5が存在し、プラズマ放電空間における誘電率(静電容量)が大きくなるので、プラズマを発生させるための開始電圧(閾値電圧)を低くすることができる。
【0068】
また、誘電性粒子5は、導電体4を内蔵する誘電体3の表面に近づくにつれて小さくなっているので、誘電体3に近づくにつれて誘電性粒子5の比表面積が大きくなり、誘電性粒子3の表面に電荷を蓄積しやすい状態となるため、導電体4間に電圧が印加された場合、比較的低い電圧で誘電性粒子5が帯電し、帯電した電荷は、更に隣接した誘電性粒子5へ帯電して、連続的な帯電が発生する。この帯電現象は一度発生すると、粒径が小さい誘電体粒子から、粒径の大きい粒子へ順に発生していく。このため、プラズマの発生開始電圧を低くすることができる。
【0069】
なお、誘電体3よりも誘電性粒子5の誘電率が高い場合には、誘電体3と誘電性粒子5の誘電率が同程度か、誘電性粒子5の誘電率が低い場合と比較して、誘電性粒子5の表面に電荷をより蓄積しやすい状態となるため、電圧が印加された場合、より低い電圧で誘電性粒子5が帯電し、帯電した電荷は、更に隣接した誘電性粒子5へ帯電し、連続的な帯電が発生する。これにより、プラズマ発生の閾値電圧をより低くすることができる。
【0070】
このように、プラズマ発生の閾値電圧を低くすることができれば、プラズマ発生体1aを搭載した機器において、プラズマ発生に関する消費電力量も小さくなる。これは、特にトータル使用可能電力の制限がある自動車や小型発電機、船舶等の移動体において、このプラズマ発生体1aを利用する際に非常に有効である。
【0071】
また、導電体4を内蔵した2つの誘電体3は、それぞれ平板状であるので、誘電体3は、放電空間Sを介して、平行に積み上げることが可能となる。このため放電空間Sを広げることが容易であり、多くの流体を改質することが可能である。尚、この場合には、1つの放電空間を挟んで対向する導電体4の一方が陽極、他方が陰極となるように、各導電体4に電圧が印加されることが望ましい。
【0072】
なお、本実施の形態によるプラズマ発生体1aによれば、誘電性粒子が、空間Sの中央部と各誘電体3との間に設けられ、空間Sの中央部から各誘電体3に向かうにつれて、粒径が小さくなっている。しかし、空間Sを挟んで隣接する2つの誘電体3のうち一方の誘電体3と空間Sの中央部との間に誘電性粒子5が設けられ、その誘電性粒子5が、空間Sの中央部からその一方の誘電体3に向かうにつれて、粒径が小さくなっていてもよい。
【0073】
また、本実施の形態によるプラズマ発生体1aによれば、空間Sの中央部が空洞となっているが、空間Sが誘電性粒子で満たされ、その誘電性粒子の粒径が空間Sの中央部から誘電体3に向かうにつれて小さくなっていてもよい。
【0074】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係るプラズマ発生体1bの外観を示す斜視図であり、図4は図3の断面を示す図である。
【0075】
プラズマ発生体1bは、互いに対向する表面を備えた2つの誘電体3と、各誘電体の内部にそれぞれ設けられた導電体4と、表面同士の間の空間S(以降、放電空間とも呼ぶ)に設けられた複数の誘電性粒子5とを備える。
【0076】
2つの誘電体3のうち一方は、内部に空洞を有する筒状の誘電体3aであり、他方は、空洞内に設けられる棒状の誘電体3bである。
【0077】
図4に示すように、誘電性粒子5は、誘電体3a,3bの対向する表面同士の間の空間Sにおいて、空間Sの中央部と外側の誘電体3aとの間に設けられ、空間Sの中央部から外側の誘電体3aに向かうにつれて粒径が小さくなっている。
【0078】
そして、誘電性粒子5は、例えば、図2に示すように、誘電体3の表面上に積層された複数の誘電性粒子層6を形成している。
【0079】
以下に、プラズマ発生体1bの製造方法について説明する。まず、有機バインダーの重量比がそれぞれ異なる第1から第4のセラミックグリーンシートを準備する。
【0080】
有機バインダーの重量比が最も小さい複数の第1セラミックグリーンシートの材料はセラミック粉末および有機バインダーである。セラミック粉末の材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、コージライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、または炭化ケイ素等が挙げられる。また、フィラー成分としては、例えばAl,SiO,またはZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,またはコージライト)等が挙げられる。また有機バインダーとしてはアクリル樹脂やエチルセルロース樹脂等が挙げられる。
【0081】
なお、放電により発生した熱を外部に放熱するという観点からは、熱伝導性の高い窒化ケイ素または窒化アルミニウムを用いるのがよい。また、誘電体3の破損を抑制するという観点からは、高強度の炭化ケイ素を用いるのがよい。
【0082】
具体的には、第1セラミックグリーンシートとして、所望のセラミック粉末,有機バインダー,可塑剤,および有機溶剤等を添加混合して泥漿状となし、これを従来周知のドクターブレード法またはカレンダーロール法によりシート状に成形する。この第1セラミックグリーンシートは、焼成後に誘電体3aとなる。
【0083】
また、誘電体3は、放電空間Sに露出した表面において、結晶相の面積率がガラス相の面積率よりも高い方がよい。この構成により、放電空間S内で発生したプラズマによって誘電体3がエッチングされるのを有効に抑制できる。すなわち、放電空間Sに露出した誘電体3の表面において、非常に結合力の高い共有結合で結合した結晶相の割合を高めることによって、プラズマによるエッチングに対して抵抗力を有することとなる。
【0084】
より好ましくは、誘電体3の放電空間Sに露出した表面において、結晶相の面積率が90〜100%であるのがよい。この構成により、放電空間Sに露出した表面のプラズマ対する耐久性を向上できるとともに、誘電体3の熱膨張率を低減して熱応力が生じるのを有効に抑制できる。
【0085】
このような結晶相の割合を高めるためには、誘電体3の材料としてアルミナやジルコニア、またはコージライトを用い、原料としての焼結助剤などの添加物の含有量および焼成条件を調整することにより、所望のものとすることができる。
【0086】
なお、高熱環境下で使用され、耐熱衝撃性が必要という観点からは、誘電体3は、少なくとも放電空間Sに露出した部位の主成分がコージライトであるのがよい。コージライトは線熱膨張係数が約2ppm/℃程度であり、プラズマ発生時の熱による誘電体3の熱膨張を低減して、熱応力が生じるのを有効に防止できる。
【0087】
このような結晶相の面積比率は、SEM等による表面状態観察により求めることができる。また、結晶性の判断については、X線回折を用いることにより分析できる。
【0088】
有機バインダーの重量比が第1セラミックグリーンシートよりも大きい第2セラミックグリーンシート、有機バインダーの重量比が第2セラミックグリーンシートよりも大きい第3セラミックグリーンシート、及び有機バインダーの重量比が最も大きい第4セラミックグリーンシートの材料は、セラミック粉末、金属酸化物粉末、および有機バインダーである。セラミック粉末の材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、コージライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、または炭化ケイ素等が挙げられる。また、フィラー成分としては、例えばAl,SiO,またはZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,またはコージライト)等が挙げられる。金属酸化物粉末としてはチタン酸バリウム等が挙げられる。また、有機バインダーとしてはアクリル樹脂またはエチルセルロース樹脂等が挙げられる。
【0089】
次に、第2セラミックグリーンシートとして、所望のセラミック粉末、金属酸化物粉末、可塑剤及び有機溶剤等に、有機バインダーを第1セラミックグリーンシートより重量比より大きくなるように添加混合して泥漿状となし、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法によりシート状に成形して所望の有機バインダー重量比のセラミックグリーンシートを得る。
【0090】
また、第3セラミックグリーンシートとして、所望のセラミック粉末、金属酸化物粉末、可塑剤及び有機溶剤等に、有機バインダーを第2セラミックグリーンシートより重量比より大きくなるように添加混合して泥漿状となし、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法によりシート状に成形して所望の有機バインダー重量比のセラミックグリーンシートを得る。
【0091】
さらに、第4セラミックグリーンシートとして、所望のセラミック粉末、金属酸化物粉末、可塑剤及び有機溶剤等に、有機バインダーを第2セラミックグリーンシートより重量比より大きくなるように添加混合して泥漿状となし、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法によりシート状に成形して所望の有機バインダー重量比のセラミックグリーンシートを得る。
【0092】
次に、必要に応じて第1セラミックグリーンシート上に、焼成後、例えば導電体4となる導体ペーストを塗布する。導体ペーストの塗布は、例えばスクリーン印刷法またはインクジェット印刷法にて行われる。そして、複数の第1セラミックグリーンシートを積層して第1セラミックグリーンシートの積層体を得る。ここで、第1セラミックグリーンシートの圧着は、例えば、熱圧着法または加圧圧着法にて行われる。好適には、第1セラミックグリーンシートを40から150℃に加熱し、10から200kg/cmに加圧して行われる。
【0093】
次に、誘電体3aとなる第1セラミックグリーンシートの積層体上に、有機バインダーの重量比が第1セラミックグリーンシートよりも大きい少なくとも1つの第2セラミックグリーンシートと有機バインダーの重量比が第2セラミックグリーンシートよりも大きい少なくとも1つの第3セラミックグリーンシートと有機バインダーの重量比が最も大きい少なくとも1つの第4セラミックグリーンシートを順に積層して圧着し、第1から第4のセラミックグリーンシートの積層体を得る。セラミックグリーンシートの圧着は、例えば、熱圧着法または加圧圧着法にて行われる。好適には、セラミックグリーンシートを40から150℃に加熱し、10から200kg/cmに加圧して行われる。
【0094】
次に第1から第4のセラミックグリーンシートの積層体を成形金型にて筒状に成形する。この場合、第1セラミックグリーンシートの積層体を筒の外側に配置し、第4セラミックグリーンシートを筒の内側に配置するように成型を行う。好適には、第1から第4のセラミックグリーンシートの積層体を40から150℃に加熱し成形する。
【0095】
次に、筒状に成型された第1から第4のセラミックグリーンシートの積層体を焼成する。焼成は、例えば800から1600℃に加熱することで行われる。この焼成の過程においてセラミックグリーンシートに含まれている有機バインダーが熱により炭化を経て気化しセラミック粉末、金属酸化物粉末のみからなる仮焼構造体となる。これにより、有機バインダーの重量比が大きいセラミックグリーンシート程、焼成過程における仮焼構造体の気孔が大きくなり、焼成後の誘電性粒子は大きく形成される。
【0096】
本実施の形態によるプラズマ発生体1bでは、誘電体3aとなる第1セラミックグリーンシート、誘電性粒子層6となる第2セラミックグリーンシート、第3セラミックグリーンシート,第4セラミックグリーンシートの順に誘電性粒子の大きさが大きく形成される。この焼結過程において、誘電体3aとなる第1セラミックグリーンシート、誘電性粒子層6となる第2乃至第4セラミックグリーンシートが互いに焼結し接合されることにより、誘電体3と誘電性粒子層6は焼結し接合される。
【0097】
さらに、上述のように第1乃至第4のセラミックグリーンシートを焼結して得られる筒状のセラミック積層体の空洞に、内部に導電体4を有する棒状のセラミック焼結体を配置する。その結果、プラズマ発生体1bを得ることができる。
【0098】
なお、上述の説明では、誘電体3と3層の誘電性粒子5からなる誘電性粒子層6の構造について記載したが、誘電性粒子層6は、2層でもよく、また4層、5層、それ以上の層数であってもよい。
【0099】
本実施形態によるプラズマ発生体1bによれば、互いに対向する表面を備えた2つの誘電体3と、各誘電体3の内部にそれぞれ設けられた導電体4と、表面同士の間の空間Sに設けられた複数の誘電性粒子5とを備え、誘電性粒子5は、対向方向における空間Sの中央部から誘電体3aに向かうにつれて、粒径が小さくなっている。この構成によれば、プラズマ放電空間Sに誘電性粒子5が存在し、プラズマ放電空間における誘電率(静電容量)が大きくなるので、プラズマを発生させるための開始電圧(閾値電圧)を低くすることができる。また、誘電性粒子5は、導電体4を内蔵する誘電体3の表面に近づくにつれて小さくなっているので、誘電体3に近づくにつれて誘電性粒子5の比表面積が大きくなり、誘電性粒子5の表面に電荷を蓄積しやすい状態となるため、導電体4間に電圧が印加された場合、比較的低い電圧で誘電性粒子5が帯電し、帯電した電荷は、更に隣接した誘電性粒子5へ帯電して、連続的な帯電が発生する。この帯電現象は一度発生すると、粒径が小さい誘電体粒子から、粒径の大きい粒子へ順に発生していく。このため、プラズマの発生開始電圧を低くすることができる。
【0100】
また、上述の説明では、誘電性粒子5を、誘電体3a,3bの対向方向における空間Sの中央部と誘電体3aとの間に設け、誘電性粒子5の粒径を、空間Sの中央部から誘電体3aに向かうにつれて小さくしたが、誘電性粒子5を、空間Sの中央部と誘電体3bとの間に設け、誘電性粒子5の粒径を、空間Sの中央部から誘電体3bに向かうにつれて小さくしてもよい。その場合の、プラズマ発生体1bの断面図を図5に示す。この場合でも、図4の場合と同様の効果が得られる。
【0101】
さらに、誘電体粒子5を、電体3a,3bの対向方向における空間Sの中央部と誘電体3aとの間、および空間Sの中央部と誘電体3bとの間に設け、誘電性粒子5の粒径を、空間Sの中央部から誘電体3a,3bに向かうにつれて小さくしてもよい。
【0102】
また、導電体4を内蔵した2つの誘電体のうち一方の誘電体3aは、内部に空洞を有する筒状の外側誘電体であり、他方の誘電体3bは、空洞内に設けられる中央誘電体であるので、筒状の誘電体3を、放電空間Sを介して、放射状に外側方向に何重にも配置することが可能である。このため放電空間を広げることが可能であり、多くの流体を改質することが可能である。尚、この場合には、1つの放電空間を挟んで対向する導電体4の一方が陽極、他方が陰極となるように、各導電体4に電圧が印加されることが望ましい。
【0103】
また、kを2以上の自然数とするとき、外側誘電体3aは、k個の筒状誘電体からなるk重の筒構造を構成し、導電体4を、各筒状誘電体の内部にそれぞれ設けてもよい。その場合には、隣接する筒状誘電体の対向する表面同士、および隣接する中央誘電体と筒状誘電体の対向する表面同士の間の各空間Sに複数の誘電性粒子をそれぞれ設け、各空間Sにおいて、対向方向における該各空間の中央部から筒状誘電体および/または中央誘電体に向かうにつれて、粒径を小さくすればよい。このように任意の数の筒状誘電体を重ねると気体を通過させる放電空間を多数形成することができ、多くの気体を処理することができる。尚、この場合にも、1つの放電空間Sを挟んで対向する導電体4の一方が陽極、他方が陰極となるように、各導電体4に電圧が印加されることが望ましい。
【0104】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る反応装置(流体改質装置)100の構造的な構成を示す概念図である。なお、第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態と同一符号を付して説明を省略する。以下では、図2に示した2つの誘電体3をそれら誘電体3の対向方向に複数配列し、かつ誘電体3の間に支持部を設けてなる構成を基体3Aとして説明する。
【0105】
反応装置100は、第1の実施形態のプラズマ発生体1aを備え、プラズマ発生体1aにより被処理流体を処理して排出する装置として構成されている。被処理流体は、例えば、自動車の内燃機関の排気ガスであり、放電空間Sにおける化学変化によりNOxが分解される。また、例えば、被処理流体は、冷蔵庫やエアコンに冷却媒体として使用されたフロンであり、放電空間Sにおける化学変化によりフロンが分解される。なお、以下では、反応装置100のうち、プラズマ発生体1a以外の部分を、反応装置本体部101ということがある。
【0106】
反応装置本体部101は、被処理流体を供給する流体供給源103と、流体供給源103からプラズマ発生体1aに被処理流体を導く供給管105(供給部の一例)と、プラズマ発生体1により処理された被処理流体を排出する排出管107と、被処理流体の流動を制御するための被処理流体用ポンプ109と、冷却媒体を供給する冷媒源111と、冷媒源111からプラズマ発生体1に冷却媒体を導く供給用流動管50A(冷却部の一例)と、プラズマ発生体1aから冷媒源111に冷却媒体を導く排出用流動管50Bと、冷却媒体の流動を制御するための冷却媒体用ポンプ113(冷却部の一例)とを備えている。
【0107】
流体供給源103は、被処理流体としての排気ガスを排出する自動車の内燃機関等、被処理流体を生成するものである。あるいは、流体供給源103は、使用済みの冷蔵庫やエアコンの冷却媒体を保持したタンク等、被処理流体を保持するものである。
【0108】
供給管105は、一端側が、流体供給源103の被処理流体を生成又は保持する空間に連通し、他端側が、プラズマ発生体1aの放電空間Sに連通している。供給管105のプラズマ発生体1a側は、放電空間Sの数に対応して第1分岐部105aA、第2分岐部105aB、第3分岐部105aC(以下、単に「分岐部105a」といい、これらを区別しないことがある。)に分岐し、第1分岐部105aA〜第3分岐部105aCは、それぞれ第1放電空間S1〜第3放電空間S3に連通している。
【0109】
排出管107は、一端側が、プラズマ発生体1aの放電空間Sに、供給管105とは反対側から連通し、他端側が、大気に開放され、又は、処理後の被処理流体を保持若しくは処理後の被処理流体に別の処理を施す不図示の空間に連通している。排出管107のプラズマ発生体1a側は、放電空間Sの数に対応して第1分岐部107aA、第2分岐部107aB、第3分岐部107aC(以下、単に「分岐部107a」といい、これらを区別しないことがある。)に分岐し、第1分岐部107aA〜第3分岐部107aCは、それぞれ第1放電空間S1〜第3放電空間S3に連通している。なお、排出管107は、省略されてもよい。例えば、処理後の被処理流体が放電空間Sから大気へ直接的に排出されてもよい。
【0110】
供給管105及び排出管107は、金属や樹脂などの適宜な材料により形成されている。供給管105及び排出管107は、可撓性を有していてもよいし、有していなくてもよい。分岐部105a及び分岐部107aと、放電空間Sとの接続は、例えば、分岐部105aや分岐部107aの端部を、基体3Aにおける放電空間Sの開口を有していない側面に当接させて、接着剤や螺合部材などの適宜な固定部材により分岐部105aや分岐部107aと基体3Aとを固定することにより行われる。なお、分岐部105aや分岐部107aを放電空間Sに嵌合挿入したり、流出用接続管等の突出した環状部分を放電空間Sの端部に基体3Aと一体的に形成し、その突出部分を分岐部105aや分岐部107aに嵌合挿入することにより行われてもよい。
【0111】
被処理流体用ポンプ109は、供給管105及び排出管107の少なくともいずれかに設けられている。図6では、供給管105に設けられた場合を例示している。なお、流体供給源103が内燃機関である場合など、流体供給源103の動力により被処理流体が流動される場合には、被処理流体用ポンプ109は省略されてもよい。また、被処理流体用ポンプ109は、プラズマ発生体1aに設けることも可能である。被処理流体用ポンプ109は、ロータリーポンプや往復ポンプ等の適宜なポンプにより構成されてよい。
【0112】
冷媒源111は、例えば、熱交換器を含んで構成され、排出用流動管50Bからの冷却媒体の温度を熱交換器により降下させて供給用流動管50Aに供給する。なお、冷媒源111は、冷却媒体を供給することができればよく、排出用流動管50Bからの冷却媒体を受け入れて冷却媒体を循環させるものでなくてもよい。すなわち、排出用流動管50Bからの冷却媒体は、冷媒源111とは異なる場所へ排出されてよい。例えば、冷却媒体として水道水が利用されるような場合に、排出用流動管50Bからの水は、冷媒源111としての水源とは異なる場所へ排出されてよい。逆に、冷却媒体が循環される構成である場合には、冷媒源111は省略されてもよい。
【0113】
供給用流動管50Aは、一端が冷媒源111に連通するとともに、他端が、上述のように、流入用接続管等を介してプラズマ発生体1aの放電空間S(流路)に連通している。排出用流動管50Bは、一端が、基体3Aに一体的に設けられた流出用接続管等を介してプラズマ発生体1aの放電空間Sに連通するとともに、他端が冷媒源111に連通している。流動管50は、金属や樹脂などの適宜な材料により形成されている。流動管50は、可撓性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0114】
冷却媒体用ポンプ113は、供給用流動管50A及び排出用流動管50Bの少なくともいずれかに設けられている。図6では、供給用流動管50Aに設けられた場合を例示している。なお、冷媒源111が高位置にあるタンクであり、重力により冷却媒体を流動させることができるなど、適宜に冷却媒体を流動させる動力が得られる場合には、冷却媒体用ポンプ113は省略されてもよい。また、冷却媒体用ポンプ113は、プラズマ発生体1に設けることも可能である。冷却媒体用ポンプ113は、ロータリーポンプや往復ポンプ等の適宜なポンプにより構成されてよい。
【0115】
図7は、反応装置100の電気系の構成を示すブロック図である。ここでは、例として、誘電体3の内部に誘電体3およびその周囲の温度を検出するための温度センサ10と、誘電体3を加熱するためのヒータ8とが設けられているものする。また、基体3Aの表面に導電体4に電圧を印加するための電極端子12、温度センサ10からの電気信号を出力ための計測用端子11、ヒータ8に電力を供給するためのヒータ用端子9がそれぞれ露出しているものとする。
【0116】
反応装置本体部101は、電極端子12、計測用端子11、ヒータ用端子9に接続される装置側導電体用端子141、装置側センサ用端子143、装置側ヒータ用端子145を備えている。プラズマ発生体1aは、これら端子を介して反応装置本体部101から電力が供給されて駆動制御される。具体的には、以下のとおりである。
【0117】
電源部121は、例えば、バッテリを含んで構成され、バッテリからの直流電力を適宜な電圧の交流電力又は直流電力に変換して供給する。あるいは、商用周波数の交流電力を適宜な電圧の交流電力又は直流電力に変換して供給する。電源部121の電力は、制御部123、放電制御部125、温度検出部127、ヒータ駆動部129、被処理流体用ポンプ109、冷却媒体用ポンプ113に供給される。
【0118】
放電制御部125は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の交流電力に変換し、その変換後の電力を装置側導電体用端子141及び電極端子12を介して導電体4に供給する。放電制御部125は、例えば、インバータや変圧器等の電源回路を含んで構成されている。導電体4では、放電制御部125により印加された電圧に応じた量の放電が行われる。
【0119】
温度検出部127は、例えば、温度センサ10が温度変化により電気抵抗値が変化する抵抗体により構成されている場合、電源部121から供給される電力を適宜な電圧の直流電力又は交流電力に変換し、その変換した電力を装置側センサ用端子143及び計測用端子11を介して温度センサ10に供給する。そして、温度センサ10は、温度センサ10の電気抵抗値を検出し、その検出した電気抵抗値に応じた信号を制御部123に出力する。温度センサ10は、検出した電気抵抗値に基づいて温度センサ10の温度を算出し、その算出値に応じた信号を制御部123に出力してもよい。
【0120】
ヒータ駆動部129は、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の直流電力又は交流電力に変換し、その変換した電力を装置側ヒータ用導電体145及びヒータ用導電体13を介してヒータ8に供給する。ヒータ駆動部129は、例えば、整流回路や変圧器等の電源回路を含んで構成されている。ヒータ8では、ヒータ駆動部129により印加された電圧に応じた量の発熱が行われる。
【0121】
被処理流体用ポンプ109及び冷却媒体用ポンプ113はそれぞれ、例えば、特に図示しないが、ポンプの駆動源としてのモータと、当該モータを駆動するモータドライバとを含んで構成されており、モータドライバは、電源部121から供給される電力を、制御部123からの制御信号に応じた電圧の交流電力又は直流電力に変換してモータに印加する。モータは、印加された電圧に応じた回転数で回転し、ひいては、印加された電圧に応じた力が被処理流体や冷却媒体に加えられる。
【0122】
入力部131は、ユーザの操作を受け付け、ユーザの操作に応じた信号を制御部123に出力する。例えば、入力部131は、反応装置100の駆動開始操作、駆動停止操作、温度設定や流量制御に係る各種のパラメータの設定操作を受け付け、操作に応じた信号を出力する。入力部131は、例えば、各種スイッチを含んだ制御パネルやキーボードにより構成されている。
【0123】
制御部123は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を備えたコンピュータにより構成されている。制御部123は、温度検出部127や入力部131からの信号に基づいて、放電制御部125、ヒータ駆動部129、被処理流体用ポンプ109及び冷却媒体用ポンプ113に制御信号を出力する。
【0124】
例えば、制御部123は、入力部131から反応装置100の駆動開始操作に応じた信号が入力された場合には、導電体4への電力の供給を開始するように放電制御部125に制御信号を出力し、入力部131から反応装置100の駆動停止操作に応じた信号が入力された場合には、導電体4への電力の供給を停止するように放電制御部125に制御信号を出力する。
【0125】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、プラズマ発生体1aが効率的にプラズマを発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、導電体4へ供給する電力を、通常運転時に供給する電力よりも増加させるように、放電制御部125に制御信号を出力し、プラズマ発生体1aが目標温度に到達した場合には、導電体4へ供給する電力を通常運転時に供給する電力に維持するように、放電制御部125に制御信号を出力する。
【0126】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、プラズマ発生体1aが効率的にプラズマを発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、ヒータ8へ電力を供給し、又は、ヒータ8へ供給する電力を増加させるように、ヒータ駆動部129に制御信号を出力する。そして、プラズマ発生体1aが目標温度に到達した場合には、ヒータ8へ供給する電力を減少させ、又は、ヒータ8への電力の供給を停止するように、ヒータ駆動部129に制御信号を出力する。
【0127】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度と、プラズマ発生体1aが効率的にプラズマを発生させることができる温度、あるいは、プラズマ発生体1aや反応装置本体部101が安全に運転される温度として設定された所定の目標温度とを比較し、検出された温度が目標温度よりも高い場合には冷却媒体の流速を高く、低い場合には冷却媒体の流速を低くするように、冷却媒体用ポンプ113へ制御信号を出力する。
【0128】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度が、プラズマ発生体1aが効率的にプラズマを発生させることができる温度として設定された所定の目標温度に達していないと判定した場合は、被処理流体の流速を低く、達したと判定した場合は、被処理流体の流速を高くするように、被処理流体用ポンプ109へ制御信号を出力する。
【0129】
また、例えば、制御部123は、温度検出部127により検出される温度と、プラズマ発生体1aや反応装置本体部101が安全に運転される温度として設定された所定の温度範囲とを比較し、検出された温度が設定された温度範囲を超えた場合には、不図示の表示装置やスピーカ等の報知部に、異常の発生を報知するように制御信号を出力する。
【0130】
以上の第4の実施形態によれば、反応装置100は、第1の実施形態のプラズマ発生体1aと、放電空間Sに被処理流体を供給する供給管105と、放電空間Sでプラズマ発生を行なって被処理流体を化学変化させた反応流体を排出するための排出管107とを備えているから、第1の実施形態と同様に、プラズマ発生体1aの耐久性の向上やプラズマ発生体1aの小型化の効果が得られ、ひいては、反応装置100の耐久性の向上や小型化の効果が得られる。
【0131】
なお、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述においては、自動車、船舶、発電機等に使用されるディーゼルエンジン等の排気ガスの浄化について説明を行っているが、その他の用途に使用されるプラズマ発生体およびその反応装置に適用しても良い。例えば、消臭、ダイオキシン分解、花粉分解等に使用される空気洗浄機器やプラズマエッチング、薄膜装置等に搭載されるプラズマ発生体および反応装置等に適用することができる。また、プラズマ反応により放電空間内を通過する流体を反応または分解させるためのプラズマ発生体およびその反応装置に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプラズマ発生体の外観斜視図である。
【図2】図1の断面を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るプラズマ発生体の外観斜視図である。
【図4】図3の断面を示す図である。
【図5】図3の電極の変形例の断面を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る反応装置の構成を示す概念図である。
【図7】反応装置の電気系の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0133】
1a,1b…プラズマ発生体、
3…誘電性粒子
4…導電体(電極)
5…誘電体(絶縁体)
6…誘電性粒子層
7…触媒
8…ヒータ
9…ヒータ用端子
10…温度センサ
11…計測用端子
12…電極端子
S…放電空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する表面を備えた2つの誘電体と、前記各誘電体の内部にそれぞれ設けられた導電体と、前記表面同士の間の空間に設けられた複数の誘電性粒子とを備え、
前記誘電性粒子は、前記対向方向における前記空間の中央部と前記2つの誘電体のうち少なくとも一方との間に設けられ、前記中央部から前記誘電体に向かうにつれて、粒径が小さくなっている誘電性構造体。
【請求項2】
前記2つの誘電体は、それぞれ平板状である請求項1に記載の誘電性構造体。
【請求項3】
前記2つの誘電体からなる誘電体対が前記対向方向に複数配列され、
隣接する前記誘電体の対向する表面同士の間の空間に複数の誘電性粒子がそれぞれ設けられ、
前記誘電性粒子は、前記各空間において、前記対向方向における前記空間の中央部と該空間を挟んで隣接する2つの誘電体のうち少なくとも一方との間に設けられ、前記中央部から前記誘電体に向かうにつれて、粒径が小さくなっている請求項2に記載の誘電性構造体。
【請求項4】
前記2つの誘電体のうち一方の前記誘電体は、内部に空洞を有する筒状の外側誘電体であり、他方の前記誘電体は、前記空洞内に設けられる中央誘電体である請求項1に記載の誘電性構造体。
【請求項5】
kを2以上の自然数とするとき、前記外側誘電体は、k個の筒状誘電体からなるk重の筒構造を構成し、
前記導電体は、前記各筒状誘電体の内部にそれぞれ設けられ、
隣接する前記筒状誘電体の対向する表面同士、および隣接する前記中央誘電体と前記筒状誘電体の対向する表面同士の間の各空間に複数の誘電性粒子がそれぞれ設けられ、
前記誘電性粒子は、前記各空間において、前記対向方向における前記各空間の中央部と該空間を挟んで隣接する2つの誘電体のうち少なくとも一方との間に設けられ、前記中央部から前記誘電体に向かうにつれて、粒径が小さくなっている請求項4に記載の誘電性構造体。
【請求項6】
前記誘電性粒子は、前記空間内において、前記対向方向に積層された複数の誘電体層を形成し、
前記複数の誘電体層は、該誘電体層毎に粒径が異なる前記誘電性粒子を有し、前記対向方向における前記空間の中央部から前記誘電体に向かうにつれて、前記誘電性粒子の粒径が小さくなっている請求項1から請求項5のいずれかに記載の誘電性構造体。
【請求項7】
前記誘電性粒子は、前記誘電体よりも誘電率が大きい請求項1から請求項6のいずれかに記載の誘電性構造体。
【請求項8】
前記誘電体と前記誘電性粒子、および前記誘電性粒子同士が接合されている請求項1から請求項7のいずれかに記載の誘電性構造体。
【請求項9】
前記誘電体および前記誘電性粒子の表面に、白金またはその合金からなる触媒を有する請求項1から請求項8のいずれかに記載の誘電性構造体。
【請求項10】
セラミック粉末および有機バインダーをそれぞれ含み、前記有機バインダーの重量比がそれぞれ異なる第1乃至第3のセラミックグリーンシートを準備する工程と、
前記有機バインダーの重量比が最も小さい複数の前記第1セラミックグリーンシートのうち任意の第1セラミックグリーンシート上に導体ペーストを塗布する工程と、
複数の前記第1セラミックグリーンシートを積層して第1積層体を得る工程と、
前記第1積層体上に、前記有機バインダーの重量比が前記第1セラミックグリーンシートよりも大きい少なくとも1つの前記第2セラミックグリーンシートと前記有機バインダーの重量比が最も大きい少なくとも1つの前記第3セラミックグリーンシートを順に積層して圧着し、グリーンシート積層体を得る工程と、
前記グリーンシート積層体を焼成して、セラミック積層体を得る工程と
複数の前記セラミック積層体を、隣接する前記セラミック積層体の焼成前の第3セラミックグリーンシート側における少なくとも一部の表面同士が対向するように、該表面の対向方向に配列する工程と
を有する誘電性構造体の製造方法。
【請求項11】
セラミック粉末および有機バインダーをそれぞれ含み、前記有機バインダーの重量比がそれぞれ異なる第1乃至第3のセラミックグリーンシートを準備する工程と、
前記有機バインダーの重量比が最も小さい複数の前記第1セラミックグリーンシートのうち任意の第1セラミックグリーンシート上に導体ペーストを塗布する工程と、
複数の前記第1セラミックグリーンシートを積層して第1積層体を得る工程と、
前記第1積層体上に、前記有機バインダーの重量比が前記第1セラミックグリーンシートよりも大きい少なくとも1つの前記第2セラミックグリーンシートと前記有機バインダーの重量比が最も大きい少なくとも1つの前記第3セラミックグリーンシートを順に積層して圧着し、グリーンシート積層体を得る工程と、
前記グリーンシート積層体を焼成して、セラミック積層体を得る工程と
前記セラミック積層体と、内部に導電体を有するセラミック焼結体とを、前記セラミック積層体の焼成前の第3セラミックグリーンシート側における少なくとも一部の表面と、前記セラミック焼結体の少なくとも一部の表面とが対向するように、該表面の対向方向に配列する工程と
を有する誘電性構造体の製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の前記誘電性構造体と、
前記誘電性構造体の前記導電体間に交流電圧、直流電圧、またはパルス電圧を印加する電源と
を有する放電装置。
【請求項13】
請求項12に記載の放電装置と、
前記誘電性構造体に流体を供給する流体供給源と
を備える流体改質装置。
【請求項14】
少なくとも1つの前記誘電体の内部に設けられたヒータを備える請求項13に記載の流体改質装置。
【請求項15】
少なくとも1つの前記誘電体の内部に設けられた温度センサを備える請求項13または請求項14に記載の流体改質装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−233535(P2009−233535A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81168(P2008−81168)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】