説明

調理器用トッププレート

【課題】欠点を有するガラス基板を用いた場合であっても、高い意匠性を確保し、かつ欠点を隠蔽できる隠蔽効果を有する調理器用トッププレートを提供すること。
【解決手段】調理器の上部に配置するための調理器用トッププレートである。結晶化ガラスよりなるガラス基板と、ガラス基板における被加熱物を設置する調理面上に配設した多数の点状装飾層3とを有してなる。点状装飾層3は、平行な等間隔の複数の直線群を直交させて構成した仮想の基本格子4の格子点401に対応してそれぞれ1個ずつ存在する。点状装飾層3の重心点301が、対応する格子点401からの距離が格子点間距離の1/2以内の範囲内に存在すると共に、重心点301と格子点401との配置関係が隣り合うもの同士で異なっており、かつ、点状装飾層3同士が重なり合わないように配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器の上部に配置する調理器用トッププレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電磁調理器やガス調理器などの調理器の上部には、ガラス板よりなる調理器用トッププレートが設置されている。この調理器用トッププレートには、鍋などの被加熱物が載置され、該被加熱物は調理器内部の加熱装置により加熱調理できる。特に、電磁調理器は、安全性が高いため、近年ますますその需要が増加する傾向にあり、それに伴い調理器用トッププレートの需要も増大している。
【0003】
このような調理器用トッププレートのガラス基板としては、ネオセラム(日本電気硝子株式会社製)等の結晶化ガラスが用いられている(特許文献1)。
結晶化ガラスは、流動性が低い、融点が高い等の特性を有しており、その特性ゆえに、高温で成形する必要がある。そのため、一般的なガラスに比べ成形時に気泡、異物等が混入しやすく、欠点のあるガラスができ易い。そして、成形時の泡、異物の完全な除去は、技術的に解決し難いのが現状である。
【0004】
結晶化ガラスは、その中におよそ1〜3mm程度の気泡が少量混入している場合であっても、調理器用トッププレートの基板ガラスに求められる耐熱性や強度等を有することが通常である。
しかしながら、気泡、異物等の欠点を有する結晶化ガラスは、見栄えが悪く、使用されない。実用上問題のないレベルの欠点のある結晶化ガラスを使用しないことは、コスト・環境負荷の観点から好ましくない。
【0005】
そこで、上記の欠点があるガラスを有効に利用するために、ガラス表面に表絵を印刷する技法で、視覚的に泡、異物の欠点を感知し難くする手段がある。
上記印刷技法の一つに、図8に示すようなランダムドット柄がある。このランダムドット柄は、泡、異物等の欠点を隠蔽ことができ、欠点のあるガラスを有効に利用することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2007−165332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記ランダムドット柄は、比較的広範囲に印刷するものであり、ガラスの質感を低下させるという問題がある。また、昨今では、小さい塗装面積で、かつ規則性のある柄(例えば、等間隔で真円が整列した整列ドット柄等)がデザイン的に好まれているため、その対極にあるランダムドットは好まれない。ただし、上記整列ドットは泡、異物等の欠点が目立ってしまう。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、泡等の欠点を有するガラス基板を用いた場合であっても、高い意匠性を確保し、かつ欠点を隠蔽できる隠蔽効果を有する調理器用トッププレートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、調理器の上部に配置するための調理器用トッププレートであって、
結晶化ガラスよりなるガラス基板と、
該ガラス基板における被加熱物を設置する調理面上に配設した多数の点状装飾層とを有してなり、
該点状装飾層は、平行な等間隔の複数の直線群を直交させて構成した仮想の基本格子の格子点に対応してそれぞれ1個ずつ存在し、
上記点状装飾層の重心点が、対応する格子点からの距離が格子点間距離の1/2以内の範囲内に存在すると共に、上記重心点と格子点との配置関係が隣り合うもの同士で異なっており、
かつ、上記点状装飾層同士が重なり合わないように配列されていることを特徴とする調理器用トッププレートにある(請求項1)。
【0010】
第1の発明の調理器用トッププレートの注目すべき点は、点状装飾層を、一定の範囲内で、不規則に配列をさせることにある。これにより、部分的には不規則な配置であるが、全体としては規則的な印象を与える効果を有する装飾とすることができる。
【0011】
そして、上記の装飾により、広範囲にわたって装飾層を設けることなく、ガラス基板中の欠点を隠す効果やごまかす効果が発現し、隠蔽効果を有することができる。
また、点状装飾層の装飾面積を小さくすることにより、点状装飾層が設けられていない部分を多く確保することができるため、ガラス基板の質感を生かすことができ、かつ、上記点状装飾層がある程度の規則性を維持して配置されることによるデザイン性を得ることができ、高い意匠性を有することができる。
このようにして、高い意匠性及び隠蔽効果を両立させることができる。
【0012】
このように、本発明によれば、泡等の欠点を有するガラス基板を用いた場合であっても、高い意匠性を確保し、かつ欠点を隠蔽できる隠蔽効果を有する調理器用トッププレートを提供することができる。
【0013】
第2の発明は、調理器の上部に配置するための調理器用トッププレートであって、
結晶化ガラスよりなるガラス基板と、
該ガラス基板における被加熱物を設置する調理面上に配設した多数の点状装飾層とを有してなり、
該点状装飾層は、平行な等間隔の複数の直線群を直交させて構成した仮想の基本格子の格子点に対応してそれぞれ1個ずつ存在し、
上記点状装飾層の重心点が、対応する格子点をほぼ一致する位置に存在し、
上記点状装飾層の輪郭形状は重心からの距離が他の部位よりも大きい大径部を有する非円形状を呈しており、
上記格子点に対する上記大径部の配置関係が隣り合うもの同士で異なっており、
かつ、上記点状装飾層同士が重なり合わないように配列されていることを特徴とする調理器用トッププレートにある(請求項2)。
【0014】
第2の発明の調理器用トッププレートの注目すべき点は、上記点状装飾層の輪郭形状を上記のように非円形状とし、その重心点は上記格子点上に一致させるように配置するが、その大径部の格子点に対する配置関係を不規則にすることある。これにより、部分的には不規則な配置であるが、全体としては規則的な印象を与える効果を有する装飾とすることができる。
【0015】
そして、上記の装飾により、広範囲にわたって装飾層を設けることなく、ガラス基板中の欠点を隠す効果やごまかす効果が発現し、隠蔽効果を有することができる。そして、点状装飾層の装飾面積を小さくすることにより、点状装飾層が設けられていない部分を多く確保することができるため、ガラス基板の質感を生かすことができ、かつ、上記点状装飾層がある程度の規則性を維持して配置されることによるデザイン性を得ることができ、高い意匠性を有することができる。
このようにして、高い意匠性及び隠蔽効果を両立させることができる。
【0016】
このように、本発明によれば、泡等の欠点を有するガラス基板を用いた場合であっても、高い意匠性を確保し、かつ欠点を隠蔽できる隠蔽効果を有する調理器用トッププレートを提供することができる。
【0017】
第3の発明は、調理器の上部に配置するための調理器用トッププレートであって、
結晶化ガラスよりなるガラス基板と、
該ガラス基板における被加熱物を設置する調理面上に配設した多数の点状装飾層とを有してなり、
該点状装飾層は、平行な等間隔の複数の直線群を直交させて構成した仮想の基本格子の格子点に対応してそれぞれ1個ずつ存在し、
上記点状装飾層の重心点が、対応する格子点からの距離が格子点間距離の1/2以内の範囲内に存在すると共に、上記重心点と格子点との配置関係が隣り合うもの同士で異なっており、
上記点状装飾層の輪郭形状は重心からの距離が他の部位よりも大きい大径部を有する非円形状を呈しており、
上記格子点に対する上記大径部の配置関係が隣り合うもの同士で異なっており、
かつ、上記点状装飾層同士が重なり合わないように配列されていることを特徴とする調理器用トッププレートにある(請求項3)。
【0018】
第3の発明の調理器用トッププレートは、上記第1の発明における点状装飾層の配置パターンと、上記第2の発明における点状装飾層の配置パターンを組み合わせた配置パターンを有する点状装飾層を有するものである。つまり、点状装飾層の輪郭形状を上記のように非円形状とし、一定の範囲内で不規則に配列させ、さらに、その大径部の格子点に対する配置関係を不規則としている。
そのため、上述した第1の発明及び第2の発明において記載した効果と同様の効果を得ることができる。
【0019】
このように、本発明によれば、泡等の欠点を有するガラス基板を用いた場合であっても、高い意匠性を確保し、かつ欠点を隠蔽できる隠蔽効果を有する調理器用トッププレートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
第1〜第3の発明の調理器用トッププレートは、上述したように、結晶化ガラスよりなるガラス基板と、該ガラス基板における被加熱物を設置する調理面上に配設した多数の点状装飾層とを有してなる。
上記結晶化ガラスとしては、ネオセラム(日本電気硝子株式会社製)を用いることが好ましい。
【0021】
また、上記点状装飾層は、例えば、ガラスフラックスを73〜99重量部、着色顔料を0〜20重量部、及び有機バインダーを外掛けで70〜150重量部混合してなるペースト材料を上記ガラス基板に塗布し焼成することにより構成されていることが好ましい。
【0022】
上記ペースト材料に用いられるガラスフラックスは、平均粒径が5μm以下であることが好ましい。また、上記ガラスフラックスは、無鉛のものであることが好ましい。
そして、上記ガラスフラックスは、SiO2を56〜69重量%、Al23を0.1〜7重量%、B23を23〜0重量%、Li2Oを0.1〜3重量%、及びNaOを1〜5重量%含有してなることが好ましい。
【0023】
上記ペースト材料に用いられる有機バインダーとしては、例えばアクリル系樹脂、アルキッド系樹脂、ブチル樹脂、エチルセルロース系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、メチルセルロース系樹脂等がある。
【0024】
また、上記ペースト材料に用いられる着色顔料は、平均粒径が2μm以下であることが好ましい。
上記着色顔料としては、色の種類によって例えば下記のような材料を用いることができる。
黒色用としてはCr−Fe、Co−Mn−Cr−Fe、Co−Ni−Cr−Fe、及びCo−Ni−Cr−Fe−Mn等、グレー用としてはSn−Sb、Sn−Sb−V等、黄色用としてはSn−V、Zr−V、Zr−Si−Pr、Ti−Cr−Sb、Zr−Si−Cd−S、CdS等、茶色用としてはZn−Al−Cr−Fe、Zn−Mn−Al−Cr−Fe等、緑色用としてはCa−Cr−Si、Cr−Al、Co−Zn−Al−Cr、Zr−Si−Pr−V等、青色用としてはCo−Al−Zn、Co−Al、Co−Si、Zr−Si−V等、ピンク色用としてはMn−Al、Ca−Sn−Si−Cr、Sn−Cr、Zr−Si−Fe等、赤色用としてはZr−Si−Cd−Se−S、Cd−Se−S等を用いることができる。これらは所望の色を得るように任意の割合で混合して用いることもできる。
【0025】
また、上記点状装飾層用のペースト材料を塗布する際は、例えば、スクリーン印刷法、ロールコート印刷法、スプレー法等により行うことが好ましい。
また、上記焼成の焼成温度は、760℃〜900℃であることが好ましい。
【0026】
また、上記点状装飾層は、平行な等間隔の複数の直線群を直交させて構成した仮想の基本格子の格子点に対応してそれぞれ1個ずつ存在する。
上記格子点に対応する点状装飾層がない場合、また、上記点状装飾層が上記格子点に対して2個以上存在する場合には、点状装飾層の規則性を維持することができず、デザイン性を得ることができない。
また、上記点状装飾層同士は重なり合わないように配列されている。
点状装飾層同士が重なり合って配列される場合には、規則性を維持し難くなり、デザイン性を得ることができない。
【0027】
第1の発明の調理器用トッププレートにおいて、上記点状装飾層の重心点は、対応する格子点からの距離が格子点間距離の1/2以内の範囲内に存在する。
上記点状装飾層の重心点が、対応する格子点からの距離が格子点間距離の1/2よりも外側に存在させる場合には、上記点状装飾層の規則性を維持することが困難になり、デザイン性を得難くなる。
【0028】
また、上記重心点と格子点との配置関係が隣り合うもの同士で異なっている。
上記重心点と格子点との配置関係が隣り合うもの同士で同一の部分が存在すると、ガラス基板中の欠点を隠蔽又はごまかす隠蔽効果を得難くなる。
また、上記点状装飾層の輪郭形状は、それぞれが同一形状であることが好ましく、真円であることが好ましい。
【0029】
また、第2の発明の調理器用トッププレートにおいては、上記点状装飾層の輪郭形状は重心からの距離が他の部位よりも大きい大径部を有する非円形状を呈している。
上記点状装飾層の輪郭形状は、重心からの距離が他の部位よりも大きい大径部を有すればよく、楕円、三角形、四角形等の形状とすることができる。また、上記点状装飾層は、上記大径部を中心として線対称の形状であることが好ましい。
【0030】
また、上記格子点に対する上記大径部の配置関係が隣り合うもの同士で異なっている。
上記格子点に対する上記大径部の配置関係が隣り合うもの同士で同一の部分が存在すると、ガラス基板中の欠点を隠蔽する隠蔽効果を得難くなる。
【0031】
上記第1〜第3の発明において、上記基本格子の格子点間距離は、1〜4mmであることが好ましい(請求項4)。
上記格子点間距離を上記範囲内とする場合には、1〜3mm程度の気泡の隠蔽を特に良好に行うことができる。
【0032】
基本格子の格子点間距離が1mm未満の場合には、点状装飾層の密度が高くなり、ガラスの質感を低下させるおそれがある。一方、上記格子点間距離が4mmを超える場合には、点状装飾層の密度が低くなり、ガラス基板中の欠点の隠蔽効果が低下するおそれがある。
【0033】
また、上記点状装飾層の面積は、一点当たり0.1〜1.8mm2であることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記点状装飾層の一点当たりの面積を上記範囲内とする場合には、1〜3mm程度の気泡の隠蔽を特に良好に行うことができる。
【0034】
点状装飾層の1点当たりの面積が0.1mm2未満である場合には、ガラス基板中の欠点を隠蔽する隠蔽効果が十分に得られないおそれがある。一方、点状装飾層の1点当たりの面積が1.8mm2を超える場合には、装飾面積が大きくなるため、ガラスの質感を低下させるおそれがある。
【0035】
また、上記点状装飾層の合計面積が、調理器用トッププレート全体の面積に対して5〜20%であることが好ましい(請求項6)。
上記第1〜第3の発明における点状装飾層の配置パターンを採用すれば、上記点状装飾層の合計面積を上記範囲とし、広範囲に点状装飾層を設けなくても、隠蔽効果を得ることができる。
【0036】
点状装飾層の合計面積が、調理器用トッププレート全体の面積に対して5%未満である場合には、十分な隠蔽効果を得ることができないおそれがある。一方、上記合計面積が調理器用トッププレート全体の面積に対して20%を超える場合には、装飾面積が大きくなるため、ガラスの質感を低下させるおそれがある。
【0037】
上記点状装飾層は、上記基本格子の格子点間距離を、1〜4mmとし、上記点状装飾層の面積は、一点当たり0.1〜1.8mm2とし、かつ、合計面積が調理器用トッププレート全体の面積に対して5〜20%となるように設けることがより好ましい。
【0038】
また、上記調理器用トッププレートは、上記ガラス基板の調理面とは反対側の面である裏側面に、パール調の色調を有する層や、ラスター彩からなる層等を積層させてもよい。この場合には、点状装飾層が設けられておらずガラスの質感が表れる部分に更に色彩を加味し、意匠性を高めることができる。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
本例は、本発明の実施例にかかる調理器用トッププレートについて、図1〜図3を用いて説明する。
図1に示すように、本例の調理器用トッププレート1は、調理器の上部に配置するための調理器用トッププレート1であって、結晶化ガラスよりなるガラス基板2と、該ガラス基板2における被加熱物を設置する調理面21上に配設した多数の点状装飾層3とを有してなる。
【0040】
上記点状装飾層3は、図2及び図3に示すように、平行な等間隔の複数の直線群を直交させて構成した仮想の基本格子4の格子点401に対応してそれぞれ1個ずつ存在し、上記点状装飾層3の重心点301が、対応する格子点401からの距離が格子点間距離L1の1/2以内の範囲内に存在すると共に、上記重心点301と格子点401との配置関係が隣り合うもの同士で異なっており、かつ、上記点状装飾層3同士が重なり合わないように配列されている。
【0041】
上記調理器用トッププレート1を作製するに当たっては、まず、上記ガラス基板2として、厚み4mm、幅600mm、長さ400mmである結晶化ガラスよりなるガラス基板を用意した。
また、点状装飾層3用のペースト材料として、ガラスフラックス80重量部と、有機バインダー100重量部と、着色顔料17重量部とを混合し、ペースト材料を作製した。
ここで、上記ガラスフラックスとしては、SiO2を65重量部、Al23を5重量部、B23を23重量部、Li2Oを1重量部、及びNa2Oを2重量部、K2Oを2重量部、TiO2を1重量部、ZrO2を1重量部含有するものを用いた。また、有機バインダーとしてはアクリル樹脂、着色顔料としては黒顔料をそれぞれ用いた。
【0042】
そして、上記ガラス基板2の表面21に対して、上記ペースト材料を350メッシュのスクリーンを用いてスクリーン印刷し、乾燥させ、温度800℃にて焼成することにより、輪郭形状が真円形状である多数の点状装飾層3を形成した。
【0043】
本例においては、上記基本格子4の格子点間距離L1は、2.5mmとした。
また、上記点状装飾層3の面積は、一点当たり0.7〜0.8mm2とした。
また、上記点状装飾層3の合計面積は、調理器用トッププレート1全体の面積に対して12%とした。
【0044】
本例の調理器用トッププレート1は、点状装飾層3を、一定の範囲内で、不規則に配列させている。これにより、部分的には不規則な配置であるが、全体としては規則的な印象を与える効果を有する装飾とすることができる。そして、広範囲にわたって装飾層3を設けることなく、ガラス基板2中の欠点を隠す効果やごまかす効果を得ることができ、隠蔽効果を有することができる。また、点状装飾層3の装飾面積を小さくすることにより、点状装飾層3が設けられていない部分を多く確保することができるため、ガラス基板2の質感を生かすことができ、かつ、上記点状装飾層3がある程度の規則性を維持することによりデザイン性を得ることができ、高い意匠性を有することができる。このように、高い意匠性及び隠蔽効果を両立させることができる。
【0045】
このように、本例によれば、欠点を有するガラス基板を用いた場合であっても、高い意匠性を確保し、かつ欠点を隠蔽できる隠蔽効果を有する調理器用トッププレートを提供できることが分かる。
【0046】
(実施例2)
本例は、本発明の実施例にかかる調理器用トッププレートについて、図4、及び図5を用いて説明する。
本例の調理器用トッププレートは、調理器の上部に配置するための調理器用トッププレートであって、結晶化ガラスよりなるガラス基板と、該ガラス基板における被加熱物を設置する調理面上に配設した多数の点状装飾層とを有してなる。
【0047】
そして、図4及び図5に示すように、上記点状装飾層32は、平行な等間隔の複数の直線群を直交させて構成した仮想の基本格子42の格子点に対応してそれぞれ1個ずつ存在し、上記点状装飾層32の重心点321が、対応する格子点をほぼ一致する位置に存在する。
上記点状装飾層32の輪郭形状は重心321からの距離が他の部位よりも大きい大径部322を有する非円形状を呈しており、上記格子点に対する上記大径部322の配置関係が隣り合うもの同士で異なっており、かつ、上記点状装飾層32同士が重なり合わないように配列されている。
【0048】
上記調理器用トッププレートを作製するに当たっては、まず、上記ガラス基板として、厚み4mm、幅600mm、長さ400mmである結晶化ガラスよりなるガラス基板を用意した。
また、点状装飾層用のペースト材料として、ガラスフラックス80重量部と、有機バインダー100重量部と、着色顔料17重量部とを混合し、ペースト材料を作製した。
ここで、上記ガラスフラックスとしては、SiO2を65重量部、Al23を5重量部、B23を23重量部、Li2Oを1重量部、及びNa2Oを2重量部、K2Oを2重量部、TiO2を1重量部、ZrO2を1重量部含有するものを用いた。また、有機バインダーとしてはアクリル樹脂、着色顔料としては黒顔料をそれぞれ用いた。
【0049】
そして、上記ガラス基板の表面に対して、上記ペースト材料を350メッシュのスクリーンを用いてスクリーン印刷し、乾燥させ、温度800℃にて焼成することにより、輪郭形状が楕円形状である多数の点状装飾層32を形成した。
【0050】
本例においては、上記基本格子42の格子点間距離L2は、2.5mmとした。
また、上記点状装飾層32の面積は、一点当たり0.7〜0.8mm2とした。
また、上記点状装飾層32の合計面積は、調理器用トッププレート全体の面積に対して12%とした。
【0051】
本例の調理器用トッププレートは、上記点状装飾層32の輪郭形状を上記のように非円形状とし、その重心点321は上記格子点上に一致させるように配置するが、その大径部322の格子点に対する配置関係を不規則にして配置している。これにより、部分的には不規則な配置であるが、全体としては規則的な印象を与える効果を有する装飾とすることができる。そして、広範囲にわたって装飾層32を設けることなく、ガラス基板中の欠点を隠す効果やごまかす効果を得ることができ、隠蔽効果を有することができる。また、点状装飾層32の装飾面積を小さくすることにより、点状装飾層32が設けられていない部分を多く確保することができるため、ガラス基板の質感を生かすことができ、かつ、上記点状装飾層32がある程度の規則性を維持して配置されることによるデザイン性を得ることができ、高い意匠性を有することができる。このようにして、高い意匠性及び隠蔽効果を両立させることができる。
【0052】
このように、本例によれば、欠点を有するガラス基板を用いた場合であっても、高い意匠性を確保し、かつ欠点を隠蔽できる隠蔽効果を有する調理器用トッププレートを提供できることが分かる。
【0053】
(実施例3)
本例は、本発明の実施例にかかる調理器用トッププレートについて、図6及び図7を用いて説明する。
本例の調理器用トッププレートは、調理器の上部に配置するための調理器用トッププレートであって、結晶化ガラスよりなるガラス基板と、該ガラス基板における被加熱物を設置する調理面上に配設した多数の点状装飾層とを有してなる。
【0054】
図6及び図7に示すように、上記点状装飾層33は、平行な等間隔の複数の直線群を直交させて構成した仮想の基本格子43の格子点431に対応してそれぞれ1個ずつ存在し、上記点状装飾層33の重心点331が、対応する格子点431からの距離が格子点間距離L3の1/2以内の範囲内に存在すると共に、上記重心点331と格子点431との配置関係が隣り合うもの同士で異なっている。
【0055】
また、上記点状装飾層33の輪郭形状は重心331からの距離が他の部位よりも大きい大径部332を有する非円形状を呈しており、上記格子点431に対する上記大径部332の配置関係が隣り合うもの同士で異なっており、かつ、上記点状装飾層33同士が重なり合わないように配列されている。
【0056】
上記調理器用トッププレートを作製するに当たっては、まず、上記ガラス基板として、厚み4mm、幅600mm、長さ400mmである結晶化ガラスよりなるガラス基板を用意した。
また、点状装飾層用のペースト材料として、ガラスフラックス80重量部と、有機バインダー100重量部と、着色顔料17重量部とを混合し、ペースト材料を作製した。
ここで、上記ガラスフラックスとしては、SiO2を65重量部、Al23を5重量部、B23を23重量部、Li2Oを1重量部、及びNa2Oを2重量部、K2Oを2重量部、TiO2を1重量部、ZrO2を1重量部含有するものを用いた。また、有機バインダーとしてはアクリル樹脂、着色顔料としては黒顔料をそれぞれ用いた。
【0057】
そして、上記ガラス基板の表面に対して、上記ペースト材料を350メッシュのスクリーンを用いてスクリーン印刷し、乾燥させ、温度800℃にて焼成することにより、輪郭形状が楕円形状である多数の点状装飾層33を形成した。
【0058】
本例においては、上記基本格子43の格子点間距離L3は、2.5mmとした。
また、上記点状装飾層33の面積は、一点当たり0.7〜0.8mm2とした。
また、上記点状装飾層33の合計面積は、調理器用トッププレート全体の面積に対して12%とした。
【0059】
本例の調理器用トッププレートにおける点状装飾層33の配置パターンは、上記実施例1における点状装飾層3の配置パターンと、上記実施例2における点状装飾層32の配置パターンを組み合わせたものである。つまり、点状装飾層33の輪郭形状を上記のように非円形状とし、一定の範囲内で不規則に配列させ、さらに、その大径部332の上記格子点431に対する配置関係を不規則としている。
そのため、広範囲にわたって装飾層33を設けることなく、ガラス基板中の欠点を隠す効果やごまかす効果を得ることができ、隠蔽効果を有することができる。また、点状装飾層33の装飾面積を小さくすることにより、点状装飾層33が設けられていない部分を多く確保することができるため、ガラス基板の質感を生かすことができ、かつ、上記点状装飾層33がある程度の規則性を維持して配置されることによるデザイン性を得ることができ、高い意匠性を有することができる。
【0060】
このように、本例によれば、欠点を有するガラス基板を用いた場合であっても、高い意匠性を確保し、かつ欠点を隠蔽できる隠蔽効果を有する調理器用トッププレートを提供できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施例1における、調理器用トッププレートを示す断面図。
【図2】実施例1における、点状装飾層の配置パターンを示す拡大説明図。
【図3】実施例1における、点状装飾層の配置パターンを示す説明図。
【図4】実施例2における、点状装飾層の配置パターンを示す拡大説明図。
【図5】実施例2における、点状装飾層の配置パターンを示す説明図。
【図6】実施例3における、点状装飾層の配置パターンを示す拡大説明図。
【図7】実施例3における、点状装飾層の配置パターンを示す説明図。
【図8】従来のランダムドット柄を示す説明図。
【符号の説明】
【0062】
3 点状装飾層
301 重心
4 基本格子
401 格子点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器の上部に配置するための調理器用トッププレートであって、
結晶化ガラスよりなるガラス基板と、
該ガラス基板における被加熱物を設置する調理面上に配設した多数の点状装飾層とを有してなり、
該点状装飾層は、平行な等間隔の複数の直線群を直交させて構成した仮想の基本格子の格子点に対応してそれぞれ1個ずつ存在し、
上記点状装飾層の重心点が、対応する格子点からの距離が格子点間距離の1/2以内の範囲内に存在すると共に、上記重心点と格子点との配置関係が隣り合うもの同士で異なっており、
かつ、上記点状装飾層同士が重なり合わないように配列されていることを特徴とする調理器用トッププレート。
【請求項2】
調理器の上部に配置するための調理器用トッププレートであって、
結晶化ガラスよりなるガラス基板と、
該ガラス基板における被加熱物を設置する調理面上に配設した多数の点状装飾層とを有してなり、
該点状装飾層は、平行な等間隔の複数の直線群を直交させて構成した仮想の基本格子の格子点に対応してそれぞれ1個ずつ存在し、
上記点状装飾層の重心点が、対応する格子点をほぼ一致する位置に存在し、
上記点状装飾層の輪郭形状は重心からの距離が他の部位よりも大きい大径部を有する非円形状を呈しており、
上記格子点に対する上記大径部の配置関係が隣り合うもの同士で異なっており、
かつ、上記点状装飾層同士が重なり合わないように配列されていることを特徴とする調理器用トッププレート。
【請求項3】
調理器の上部に配置するための調理器用トッププレートであって、
結晶化ガラスよりなるガラス基板と、
該ガラス基板における被加熱物を設置する調理面上に配設した多数の点状装飾層とを有してなり、
該点状装飾層は、平行な等間隔の複数の直線群を直交させて構成した仮想の基本格子の格子点に対応してそれぞれ1個ずつ存在し、
上記点状装飾層の重心点が、対応する格子点からの距離が格子点間距離の1/2以内の範囲内に存在すると共に、上記重心点と格子点との配置関係が隣り合うもの同士で異なっており、
上記点状装飾層の輪郭形状は重心からの距離が他の部位よりも大きい大径部を有する非円形状を呈しており、
上記格子点に対する上記大径部の配置関係が隣り合うもの同士で異なっており、
かつ、上記点状装飾層同士が重なり合わないように配列されていることを特徴とする調理器用トッププレート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、上記基本格子の格子点間距離は、1〜4mmであることを特徴とする調理器用トッププレート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記点状装飾層の面積は、一点当たり0.1〜
1.8mm2であることを特徴とする調理器用トッププレート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、上記点状装飾層の合計面積が、調理器用トッププレート全体の面積に対して5〜20%であることを特徴とする調理器用トッププレート。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−71515(P2010−71515A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237777(P2008−237777)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000244305)鳴海製陶株式会社 (35)
【Fターム(参考)】