説明

調節弁

【課題】材料コスト並びに製造コストを抑えたものでありながら、バルブ性能の信頼性を向上させることができる調節弁を提供する。
【解決手段】流体搬送用の流路3が弁本体2に形成され、流路2の上流側入口から下流側出口に至る中途部に弁室4が形成され、弁室4を開閉する弁プラグ6の表面並びに流路2の内壁面に合成ダイヤモンド粒子をニッケル基材と共に電気的に接着した耐摩耗被膜処理が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性が要求される調節弁に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特許第312165号公報
【特許文献2】特許第2698745号公報
【特許文献3】特開平11−51203号公報
【0003】
従来から、固体粒子を含む液体やキャビテーション、フラッシングが発生するような液体プロセスの調節弁は、耐摩耗性が要求されることが殆どであり、その耐摩耗性を維持するための部位の各種部品にはセラミックや高硬度材料が用いられている。
例えば、偏心回転弁方式の調節弁にはセラミックが用いられており(例えば、特許文献1参照)、アングル弁には超微粒子タングステンカーバイトや焼結ダイヤモンドが用いられている(例えば、特許文献2,3参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した調節弁にあっては、各構成部品において何れの材質を用いたとしても、比較的短期間で摩耗が発生してしまうばかりでなく、例えば、一つの部材における摩耗に伴って圧力流体の流れに変化が発生し、他の部材にも摩耗が発生してしまうといった問題が発生していた。
具体的には、従来の耐摩耗材料には、アルミナ・炭化珪素・窒化珪素・窒化チタン等のセラミックや、超硬合金(WC)+焼結ダイヤモンド・WC+Ti−N(窒化チタンイオンプレーディング)等が用いられてきたが、これらどの材料の場合も金属部品との接合方法が難しく、製造工程の複雑化やそれに伴う材料コスト及び製造コストの高騰の要因となっているばかりでなく、その接合のためのバルブ性能(例えば、Cv値/最大流量、流量制御範囲、弁座漏洩量等)を犠牲にしている場合が殆どで、バルブ性能の信頼性が低いという問題が生じていた。
【0005】
また、焼結ダイヤモンド以外のセラミック材料を用いた場合、厳しい流体条件(例えば、高流速、スラリー高硬度、高温高圧等)では耐摩耗性が不十分であり、結果的にバルブ性能の信頼性が低いという問題が生じていた。
【0006】
さらに、従来の各種耐摩耗性材料にあっては、何れも物理的な衝撃力には弱く、常に割れ等の発生を充分に抑制することができないうえ、急激な温度変化の発生などの熱衝撃に対しても耐久性が低く、結果的にバルブ性能の信頼性が低いという問題が生じていた。
【0007】
しかも、接合に銀ロー付けを採用している場合、その耐熱温度は300℃程度であり、高温高圧環境下で使用される調節弁には不向きで、結果的にバルブ性能の信頼性が低いという問題が生じていた。尚、超硬合金(WC)の場合であっても450℃付近からCoが析出して強度低下してしまう。
【0008】
従って、硬度が高く耐摩耗性が高い材料を用いるほど部品コストが高騰し、特に焼結ダイヤモンドを用いた被膜は直接金属部品に被覆することができないため、サブストレート材に高価な超硬合金(WC)を採用しなくてはならず、その部品コストは最も高価なものとなってしまう。
【0009】
尚、ダイヤモンド膜の施行技術としては、DLC(Diamond−Like Carbon)膜が耐摩耗膜の技術として期待されている(特開2006−107673号公報、特開2005−281727号公報他)が、これらは膜厚1μ前後の厚みのアモルファス膜で、硬度もHv3000前後であり、例えば、固体粒子を大量に含む液体を、100℃〜470℃、50〜250barの高温高圧の状態から数barまで減圧するような高耐久性を要求される構造には適合できない。
【0010】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、材料コスト並びに製造コストを抑えたものでありながら、バルブ性能の信頼性を向上させることができる調節弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の調節弁は、流体搬送用の流路が形成された弁本体と、前記流路の上流側入口から下流側出口に至る中途部に形成された弁室と、該弁室を開閉する弁プラグとを備えた調節弁において、前記弁プラグの表面並びに前記流路の内壁面に合成ダイヤモンド粒子をニッケル基材と共に電気的に接着した耐摩耗被膜処理が施されていることを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の調節弁によれば、弁プラグの表面並びに前記圧力調整流路の内壁面に耐摩耗性被膜処理が施されていることにより、材料コスト並びに製造コストを抑えたものでありながら、バルブ性能の信頼性を向上させることができる。
【0013】
この際、耐摩耗被膜処理は、流路の内壁面のうち被膜処理が不要な部分をマスキングにより覆うことも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態に係る調節弁によれば、材料コスト並びに製造コストを抑えたものでありながら、バルブ性能の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の一実施形態に係る調節弁について、図面を参照して説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施形態に係る調節弁としての偏心形回転弁の要部の断面図である。
図1において、偏心形回転弁1は、鋳型等からなる弁本体2と、弁本体2内で直管状に伸びる流路3と、流路3の中途部に形成された弁室4と、流路3の流体の流れ方向と直交する軸線を回転中心とする図示上下一対の弁軸5と、弁軸5に保持された弁プラグ6とを備えている。
【0017】
弁本体2の流体流入側(図1の弁室4よりも図示左側)にはリテナー7とシートリング8とが設けられている。また、弁本体2の流体流入側と流体排出側(図1の弁室4よりも図示右側)にはフランジ部2a,2bが形成されており、このフランジ部2a,2bに配管等(図示せず)が接続される。流路3は実質的にリテナー7とシートリング8によって形成されている。さらに、これら弁室4、リテナー7、シートリング8の内壁面には、CDC(合成ダイヤモンドコーティング/Composite Diamond Coating)処理が施されている。
ここでのCDC処理とは、合成ダイヤモンド粒子をニッケル(Ni)基材と共に電気的に接着した耐摩耗被膜処理を意味する。
【0018】
弁軸5は、ここでは流路3を挟むように2本に分割されており、各一端が弁本体2を貫通して弁本体2又は図示を略する駆動部に保持されている。
弁プラグ6は、流路3の流入口を開閉する弁プラグ本体6aと、この弁プラグ本体6aを弁軸5に固定するための平面視略扇形状のフランジ6bとによって断面略コ字形状に形成されている。弁プラグ6の表面においてもCDC処理が施されている。
【0019】
上記の構成において、偏心形回転弁1では、弁プラグ6が流路3を開いているとき、弁本体2の流路3の内部を硬質の固体粒子を含んだ流体が流れる。
この際、流路3中の構成部品(弁室4、弁プラグ6、シートリング7、スリーブ8)の表面にCDC処理が施されていることにより、その表面平滑化並びに表面高硬度化を実現することができ、流体の通過に伴う構成部品の摩耗を防止することができる。
【0020】
(実施の形態2)
図2は本発明の一実施形態に係る調節弁としてのアングル弁の要部の断面図である。
図2において、アングル弁11は、上流側配管(図示せず)が接続されると共に断面略L字状に連続する経路12を形成した弁本体13と、経路12の中途部に形成された弁室14に一部が臨むガイド15と、ガイド15と対向するように弁室14に一部が臨むケージ16と、ケージ16に保持されたシート17とを備えている。
【0021】
弁本体13には、ガイド15と密着する駆動部ユニット18(一部のみ図示)が連結されている。また、ガイド15には、一端がこの駆動部ユニット18に支持され且つ弁室14内に臨む弁プラグ19が先端に設けられたバルブステム20が貫通している。また、弁本体13には、弁本体13の流体流入側(図2の弁室14よりも図示左側)と流体排出側(図2の弁室14よりも図示下側)には配管(図示せず)接続用のフランジ部13a,13bが形成されている。
一方、弁プラグ19とシート17の表面にはCDC処理が施されている。
【0022】
上記の構成において、アングル弁11では、弁プラグ19が流路12を開いているとき、弁本体13の流路12の内部を流体が流れる。
この際、流路12中の構成部品(弁プラグ19、シート17)の表面にCDC処理が施されていることにより、その表面平滑化並びに表面高硬度化を実現することができ、流体の通過に伴う構成部品の摩耗を防止することができる。
【0023】
(実施の形態3)
図3は本発明の一実施形態に係る調節弁としての微小流量調節弁の要部の断面図である。
図3において、微小流量調節弁21は、図示左右に延び且つその中途部で図示上下にオーバーラップした状態で連通された流路22を備えた弁本体23と、流路22の上下にオーバーラップした部分を弁室24としてその弁室24を開閉する弁プラグ25と、弁室24を構成する流路22の上下に跨ると共に実質的に弁プラグ25により開閉されるオリフィス26とを備えている。
【0024】
また、弁本体23には、弁プラグ25を先端に設けたバルブステム27を駆動させる駆動部28が設けられている。
さらに、弁プラグ25とシート26の表面には、CDC処理が施されている。
【0025】
上記の構成において、微小流用調節弁21では、弁プラグ25が流路22を開いているとき、流路22の内部を流体が流れる。
この際、流路22中の構成部品(弁プラグ25、シート26)の表面にCDC処理が施されていることにより、その表面平滑化並びに表面高硬度化を実現することができ、流体の通過に伴う構成部品の摩耗を防止することができる。
【0026】
また、本発明の調節弁としたことにより、このような微小流量調整用の小型な弁プラグ25にはセラミック等の高硬度材料のものを用いることができなかったが、本発明のようにCDC処理を施したことにより、小型なものでありながら、耐摩耗性の高い弁プラグ構造とすることができる。
【0027】
ところで、上記各実施の形態では、調節弁として偏心型回転弁1、アングル弁11、微小流量調節弁21として開示したが、これら以外の調節弁への適用も可能であることは勿論である。また、これら各種調節弁において、流路中の構成部品全般の表面にCDC処理を施すことが可能であり、そのコーティング処理が不能な場合には、さらにそのCDCコーティングが不要な表面部分を覆うようにマスキング処理を施すことも可能である。
【0028】
また、本発明の調節弁とすることにより、キャビテーションやフラッシング、例えば、弁内の縮流部で最大流速、最低圧力となり、ここでキャビティが発生し、その後流で圧壊して弁内表面部が物理的損傷を受けるような圧力受けても、CDCコーティングを施したことにより、摩耗することを防止することができる。
【0029】
さらに、金属部分へのCDCコーティングは、金属メッキと同様の取り扱いで金属部品表面に直接コーティング処理することが可能であり、その材料コスト並びに作業コストも従来の弁構造に用いられていた公知のセラミック部品と略同等のコストで済み、接合(例えば、銀ロー等)を不要としていることから、逆にコストダウンに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る調節弁としての偏心型回転弁の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る調節弁としてのアングル弁の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る調節弁としての微小流量調節弁の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…調節弁
2…流路
3…弁本体
4…弁室
6…弁プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体搬送用の流路が形成された弁本体と、前記流路の上流側入口から下流側出口に至る中途部に形成された弁室と、該弁室を開閉する弁プラグとを備えた調節弁において、
前記弁プラグの表面並びに前記流路の内壁面に合成ダイヤモンド粒子をニッケル基材と共に電気的に接着した耐摩耗被膜処理が施されていることを特徴とする調節弁。
【請求項2】
前記耐摩耗被膜処理は、前記流路の内壁面のうち被膜処理が不要な部分をマスキングにより覆っていることを特徴とする請求項1に記載の調節弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−321883(P2007−321883A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153083(P2006−153083)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(307009414)株式会社本山製作所 (5)
【Fターム(参考)】